パネル吊り具
【課題】大型のコンクリート製パネルを一台の荷役機械で吊り上げて簡単に所望の角度に姿勢保持することができるパネル吊り具を提供すること。
【解決手段】パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、この連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで沿設体4をパネル体3の後面に沿設保持した際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を前記沿設体4の上部に突設し、この吊り上げ用腕部6に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設ける。
【解決手段】パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、この連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで沿設体4をパネル体3の後面に沿設保持した際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を前記沿設体4の上部に突設し、この吊り上げ用腕部6に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築に用いる大型のコンクリート製パネルを、設置箇所へと吊り上げ移送し設置する際に使用するパネル吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築において、残存型枠を用いたコンクリート工法が実施されている。
【0003】
これは、残存パネルと呼ばれる大型のコンクリート製パネル(以下、パネルと称す。)を多数設置して残存型枠を枠組みし、その残存型枠内にコンクリートを打設して固化することでコンクリート構造物を構築する工法(例えば特許文献1)であり、前記残存型枠を施工後に取り外すことなくコンクリート構造物の壁面としてそのまま残存させる工法である。
【0004】
具体的には、所定高さに枠組みした残存型枠内にコンクリートを打設して固化させた後、その残存型枠の上に新たに残存型枠を段重ね状態に枠組みすると共に、例えばこの上側の残存型枠(パネル)を、下側のパネル或いはアンカー部材を介して下側の残存型枠内の固化コンクリートと連結固定し、この上側の残存型枠内にコンクリートを打設して固化させるという作業を順次繰り返すことで、残存型枠を次々と上段へ段重ね状態に枠組みして所望高さの壁を製作する。
【0005】
また、パネルの現場への枠組み設置は、例えばワイヤーを介してパネルをクレーンなどの起重機(荷役機械)で吊り上げて設置箇所へと移動させた後、降下させて設置するという手順により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−185036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のコンクリート工法に用いられる大型コンクリート製パネルは、用途に応じて垂直姿勢あるいは傾斜姿勢で設置されることが多いが、いずれの場合も予め設置姿勢を保ったまま荷役機械で設置箇所まで運ばれるようにした方が、下側に組まれたパネルや設置箇所に設けられた連結部との連結作業などが容易に行われて設置施工性が向上するので望ましい。
【0008】
しかし、従来、パネルを任意の吊り上げ姿勢に角度変更できてその姿勢を荷役機械で吊り上げた際にも保持し続けることができるようなパネル専用の吊り具はなく、例えば、パネルに連結したワイヤーの吊り位置を調整することでパネル角度を変更したり、二台の荷役機械で一枚のパネルを異なる吊り上げ量で吊り上げることでパネル角度を調整するようなことが行われていたが、いずれも所望するパネル角度への変更調整が難しく、現場では改善が要望されていた。
【0009】
本発明は、このような要望に応えようとするためのもので、大型のコンクリート製パネルを一台の荷役機械で吊り上げて簡単に所望の角度に姿勢保持することが可能となる画期的なパネル吊り具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
後面にアンカーなどの固定具1を連結するための連結鉄筋2を突設したコンクリート製のパネル体3を、クレーンなどの荷役機械で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の前記連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、この連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで沿設体4をパネル体3の後面に沿設保持した際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を前記沿設体4の上部に突設し、この吊り上げ用腕部6に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設けて、この複数の接続部8を選択して吊具7を接続することで、荷役機械で沿設体4と共に吊り上げた前記パネル体3の姿勢を変更し得るように構成したことを特徴とするパネル吊り具に係るものである。
【0012】
また、前記沿設体4に、前記パネル体3の後面を当接支持する支持部9を設け、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のパネル吊り具に係るものである。
【0013】
また、前記支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成したことを特徴とする請求項2記載のパネル吊り具に係るものである。
【0014】
また、前記支持部9は、前記連結部5より下方へ間隔を置いた前記沿設体4の下部に設けたことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のパネル吊り具に係るものである。
【0015】
また、前記吊り上げ用腕部6は、前記沿設体4に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部6を前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパネル吊り具に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、簡単にパネル体に連結して沿設状態に保持できる上、複数の接続部から荷役機械の吊具の接続位置を選択することで、吊り上げ時のパネル体の姿勢変更が容易に可能であるから、パネル体をその設置場所へ設置される姿勢を保ったまま一台の荷役機械で吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能で、パネル体の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことができ、しかも、吊り上げ用腕部に接続部を複数並設状態に設け、この複数の接続部から荷役機械の吊具の接続位置を選択することによってパネル体の姿勢を変更する本発明の構成は、簡易に設計実現可能な構成であり、安価に量産可能であるなど、極めて実用性に秀れた画期的なパネル吊り具となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明においては、連結部と支持部とでパネル体の沿設姿勢(角度)を安定的に保持できる上、連結部が単に連結鉄筋に連結できるだけの簡易構造のもので足りるためにこの連結部を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、複数の接続部の選択による角度変更では対応できないようなパネル体の保持角度も、支持部の進退移動調整による角度微調整によって簡易に対応可能となる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0019】
また、請求項4記載の発明においては、パネル体を極めて安定的に姿勢保持できる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0020】
また、請求項5記載の発明においては、現場で格納ラックに重合状態に立て掛けられて準備されているパネル体に対して本発明品を簡単に連結可能となる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例の連結部に連結鉄筋を連結する前の状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図3】図2の状態から、トグルレバーを回動操作して連結鉄筋を連結部に連結しようとする途中の状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図4】図3の状態から、更にトグルレバーを回動操作して連結鉄筋を連結部に連結した状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図5】本実施例のロック機構を示す部分拡大斜視図である。
【図6】本実施例の支持部の進退移動構造を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図7】格納ラックに立て掛けられたパネル体に本実施例のパネル吊り具を沿設保持し、荷役機械で少し吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図8】格納ラックからパネル体を降ろし、吊り上げ用腕部を伏動回動させてロックした状態を示す説明側面図である。
【図9】図8の状態から、荷役機械で少し吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図10】別の接続部を選択して吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図11】本実施例を用いたパネル体の施工例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
連結部5をパネル体3の後面に突設された連結鉄筋2に連結すると、沿設体4をパネル体3の後面に沿設状態に保持することができ、この際、沿設体4の上部に突設した吊り上げ用腕部6が、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設することになる。
【0024】
このパネル体3の前面側に突出している吊り上げ用腕部6の接続部8にクレーンなどの荷役機械の吊具7を接続すると、荷役機械の操作で沿設体4と共にパネル体3を吊り上げて所定の設置位置へと移送することができるが、この際、吊り上げ用腕部6の突出方向に間隔を置いて並設する複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択すると、荷役機械の吊り上げ力が作用する各接続部8はパネル体3の重心との位置関係が夫々異なるために、どの接続部8を選択したかでパネル体3の吊り上げ姿勢が変化することになる。
【0025】
即ち、荷役機械でパネル体3を吊り上げた際には、パネル体3に加わる重力によってこのパネル体3の重心が荷役機械の吊り上げ力が作用している接続部8の略真下方向に位置しようと動作するために、例えば図示したように、吊具7を接続する接続部8が、沿設体4に近い位置にあるものほどパネル体3が垂直あるいは垂直に近い傾斜姿勢で吊り上げられることになり、逆に、吊具7を接続する接続部8が、吊り上げ用腕部6の突出先端部に近い位置にあるものほどパネル体3が大きく傾斜した姿勢で吊り上げられることになる。
【0026】
従って、複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択することで、吊り上げ時のパネル体3の姿勢変更が可能であり、パネル体3の設置場所への設置状況に適応した姿勢を保持可能となる接続部8を適切に選択することにより、その設置場所へ設置される姿勢を保ったまま一台の荷役機械で吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能となるので、パネル体3の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことが可能となる。
【0027】
また、このパネル体3の姿勢変更は、吊り上げ用腕部6に複数並設する接続部8を選択して吊具7を接続するだけの簡単な作業で行うことができるし、この吊り上げ用腕部6に接続部8を複数並設状態に設ける構成は、例えば、吊り上げ用腕部6の伸縮構造により接続部8がパネル体3の重心に対して移動するような構成や、吊り上げ用腕部6の回動構造により接続部8がパネル体3の重心に対して移動するような構成と比べて、簡易構造であるため容易に設計実現可能である。
【0028】
また、例えば、前記沿設体4に、前記パネル体3の後面を当接支持する支持部9を設け、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成すれば、連結部5と支持部9との二点でパネル体3の沿設姿勢(角度)を安定的に保持できる上、パネル体3の姿勢保持を連結部5と支持部9とで分担する構成のため、連結部5にそれ単体でパネル体3の姿勢保持機能まで発揮するような構造を必要とせず、単に連結鉄筋2に連結できるだけの簡易構造のもので足りるためにこの連結部5を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用的となる。
【0029】
また、例えば、前記支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成すれば、複数の接続部8の選択による角度変更では対応できないパネル体3の保持角度も、この支持部9の進退移動調整による角度微調整によって簡易に行われるので、パネル体3をその設置状況に適応した姿勢に確実に保持可能となり、一層実用的となる。
【0030】
また、例えば、前記支持部9は、前記連結部5より下方へ間隔を置いた前記沿設体4の下部に設ければ、パネル体3の後面の連結鉄筋2より下方位置を支持部9が支持することでパネル体3の支持安定性が向上するので、重量のある大型のパネル体3であっても安定的に姿勢保持できる。
【0031】
また、例えば、前記吊り上げ用腕部6は、前記沿設体4に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部6を前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えれば、例えば、この種のパネル体3は、図7に示すように現場では格納ラック11に重合状態にして立て掛けられて準備されているが、吊り上げ用腕部6を起動回動させることでこの立て掛けられたパネル体3に対して本発明品を簡単に連結して沿設保持可能となる。
【0032】
即ち、予めロック機構10を解除して吊り上げ用腕部6を上方へ起動回動させておくことで、重合状態で立て掛けられたパネル体3のうち、最も端側に位置しているそれの後面に沿設体4を沿設することが容易に可能となる。続いて、連結鉄筋2に連結部5を連結してパネル体3を沿設保持した後、例えば接続部8に吊具7を接続して荷役機械で垂直姿勢となるまでパネル体3を起こしてから、吊り上げ用腕部6を伏動回動させてパネル体3の前面側へ向けて突設配設してこの状態をロック機構10によりロックすれば、荷役機械でパネル体3を所望の姿勢に保持して設置位置へと吊り上げ移送することができる。
【実施例】
【0033】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0034】
図示したコンクリート製のパネル体3は、砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築において残存型枠28を形成するために用いるもので、方形板状をなし、残存型枠28の内側面を構成するこのパネル体3の後面には、アンカーなどの固定具1を連結可能であると共に残存型枠28内に打設するコンクリートとの付着性を向上させる連結鉄筋2(トラス筋)を突設したものである。尚、同等の構成を具備する床固工用や護岸工用や流路工用などのパネル体3を採用しても良い。
【0035】
本実施例は、このパネル体3を、クレーンなどの荷役機械(図示省略)で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の前記連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、連結部5より下方へ間隔を置いた沿設体4の下部に、前記パネル体3の後面に当接してパネル体3を沿設体4に対し沿設状態に支持する支持部9を設け、前記連結部5より上方へ間隔を置いた沿設体4の上部に、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に前記支持部9をパネル体3の後面に当接支持して沿設体4にパネル体3を沿設状態とした際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を突設している。
【0036】
具体的には、本実施例の沿設体4は、図1に示すように、間隔を置いて左右に対設された二本の縦フレーム12間の上下二箇所に横フレーム13を架設固定して成る縦長の方形枠状体に構成して、この沿設体4を、その各縦フレーム12の対設方向が前記パネル体3の後面の面方向と略平行となるように配してパネル体3の後面に沿設配設し得るようにしている(図8参照。)。
【0037】
本実施例では、この沿設体4を構成する前記左右の各縦フレーム12の上下方向の中程に夫々前記連結部5を設けている。
【0038】
この連結部5は、前記連結鉄筋2を下方から掛止可能な側面視L字形のフック部14と、このフック部14の上部開口部を開閉自在に閉塞する開閉装置部15とから成る構成としている。
【0039】
更に詳しくは、沿設体4の、前記パネル3後面への沿設側となる各縦フレーム12の中程の側面部に夫々前記フック部14を突出状態に付設し、このフック部14の反対側となる各縦フレーム12の側面部に夫々前記開閉装置部15として採用したトグルクランプ15を突出状態に付設している。
【0040】
このトグルクランプ15は、図2〜図4に示すように、起伏回動可能なトグルレバー16の基端部にリンク部17と共に棒状閉塞体18を連結した構成で、この棒状閉塞体18を各縦フレーム12の中程に水平方向に貫通形成した貫通孔29に挿通することで、トグルレバー16をフック部14の反対側へ突設した構成としている。
【0041】
また、このトグルレバー16を立設状態とした際には、棒状閉塞体18がほとんど貫通孔29内に収容されて(後退移動して)フック部14の上部開放部が開放した状態となって、前記連結鉄筋2を掛止可能となり(図2参照)、トグルレバー16を立設状態から垂下状態に回動操作した際には、棒状閉塞体18が貫通孔29からフック部14の上部開放部を塞ぐように突出して、フック部14に連結鉄筋2を掛止している場合には連結鉄筋2が抜け止め状態(連結状態)となる構成としている(図3,図4参照)。
【0042】
即ち、本実施例では、左右二箇所の連結部5で連結鉄筋2の二箇所を安定的に掛止連結できる構成としている。
【0043】
また、本実施例の前記吊り上げ用腕部6は、図1に示すように、前記縦フレーム12の対設間隔と略同じ間隔を置いて左右に対設された二枚の帯板材20間に数本の横桟21を架設して成る梯子形の枠状体に構成し、この吊り上げ用腕部6の基端部を前記沿設体4の上部に起伏回動自在に枢着している。
【0044】
この吊り上げ用腕部6の沿設体4に対する枢着構造は、沿設体4の前記各縦フレーム12の上端部を夫々前記連結部5のフック部14の突設方向と同方向に略直角に屈曲形成すると共に、この各上端折曲部30の先端を夫々二股形状に形成し、この各上端折曲部30の二股形状部分に夫々前記吊り上げ用腕部6の左右の帯板材20の基端部を挟持状態に配設した上で、この各上端折曲部30と吊り上げ用腕部6の各基端部とに取付軸19を貫通止着することで、この取付軸19を支点軸として吊り上げ用腕部6が起伏回動する構造としている。
【0045】
また、本実施例では、この吊り上げ用腕部6を、前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えている。
【0046】
具体的には、本実施例のロック機構10は、図5に示すように、吊り上げ用腕部6が前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態、即ち、吊り上げ用腕部6を立設状態とした沿設体4に対して側方へ突出する状態(図1の状態)とした際に連通状態となる合わせ孔22を前記各縦フレーム12の上端折曲部30と前記帯板材20の各基端部とに貫通形成し、この連通する合わせ孔22にロックピン23を挿通することにより吊り上げ用腕部6が沿設体4の側方へ突出する状態でロックされ、ロックピン23を合わせ孔22から挿脱することで沿設体4に対し吊り上げ用腕部6を起動回動可能となる構成としている。
【0047】
また、本実施例では、このロック機構10で吊り上げ用腕部6を回動不能状態にロックした際に、吊り上げ用腕部6の突出先端部がパネル体3の上部前面の前方側へやや下がって位置するように、前記合わせ孔22の形成位置を設定構成すると共に、吊り上げ用腕部6を構成する帯板材20を側面視への字状に形成し、これにより万一パネル体3が前方へ倒れようとした際にはこれを吊り上げ用腕部6が防止し得る構成としている。
【0048】
また、本実施例では、この吊り上げ用腕部6の前記左右の各帯板材20には、その長さ方向(沿設体4からの突出方向)に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設けている。
【0049】
具体的には、左右の各帯板材20の長さ方向に所定間隔を置いて、数箇所(図面では六箇所)に貫通孔8を形成してこの複数の貫通孔8を前記接続部8としている。
【0050】
また、この複数の接続部8は、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで前記沿設体4に前記パネル体3の後面を沿設保持した際に、この各接続部8が夫々パネル体3の重心位置から異なる距離に位置するようにして前記吊り上げ用腕部6の帯板材20に並設状態に設けている。
【0051】
この接続部8に荷役機械の吊具7を接続する際には、左右の各帯板材20で、吊り上げ用腕部6の突出方向に対して同じ位置に存する二箇所の接続部8に接続することで、安定的に吊り上げする。
【0052】
尚、図面では、この貫通孔8に荷役機械のワイヤーを吊具7として挿通し接続した場合を示しているが、例えば貫通孔8にシャックルなどの連結金具を接続し、この連結金具に荷役機械のワイヤーや吊り上げ用フックなどを連結するようにしても良いし、その他の接続方法を採用しても良い。
【0053】
また、本実施例の前記支持部9は、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成している。
【0054】
具体的には、図1に示すように、支持部9は前記パネル体3の後面を当接支持し得る円板体24の裏面中心部にボルト杆25を突設した構成とし、このボルト杆25を沿設体4の各縦フレーム12の下端部夫々に形成した取付孔31に挿着することで、円板体24の支持面(表面)を前記フック部14と同方向(パネル体3後面への沿設側)に突設した構成としている。
【0055】
即ち、本実施例では、左右二箇所の支持部9でパネル体3の後面の二箇所を安定的に当接支持できる構成としている。
【0056】
また、この支持部9は、円板体24をボルト杆25に対して傾動自在に設けて、この円板体24の支持面でパネル体3の後面を確実に面接支持し得るように構成し、更に円板体24はゴムなどの弾性を具備するもので構成してパネル体3の後面を傷付けずに支持し得るようにしている。
【0057】
また、本実施例の支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成している。
【0058】
具体的には、図6に示すように、前記各縦フレーム12の下端部に前記取付孔31と連通状態にして前記ボルト杆25を螺着するナット26を回り止め状態に付設し、このナット26にボルト杆25を螺着することで支持部9を沿設体4の下部に突設すると共に、ナット26に対しボルト杆25を回動螺動することで円板体24が沿設体4に対し水平方向へ進退移動する構成としている。
【0059】
即ち、本実施例においては、前記接続部8の形成位置と、前記支持部9の進退移動ストローク長との設定によって、パネル体3吊り上げ時の保持姿勢を幅広く調整可能なものに設計可能であり、例えば、パネル体3を垂直姿勢から水平姿勢まで調整可能となるような構成も簡易に設計実現可能である。
【0060】
また、本実施例では、図1に示すように、前記沿設体4の左右部及び下部の三箇所にコ字枠状の取手27を、前記吊り上げ用腕部6の突設方向と逆方向に向かって突出するように付設し、この取手27を利用して作業者が沿設体4をパネル体3の後面に沿設する作業などを容易に行えるようにしている。また、この取手27は、前記連結部5のトグルレバー16より外方へ突出する大きさに設定して、例えばパネル体3を吊り上げた際などに、トグルレバー16が何かにぶつかって損傷してしまうことを防止する役割も果たすようにしている。
【0061】
次に、本実施例のパネル吊り具の使用方法を、図7〜図11を用いて説明する。また、図面は、格納ラック11に複数重合状態で立て掛けられたパネル体3を吊り上げ移送する場合を示している。
【0062】
ロックピン23を合わせ孔22から挿脱してロック機構10を解除し、吊り上げ用腕部6を上方へ起動回動させておく。
【0063】
続いて、重合状態で立て掛けられたパネル体3の最も端側に位置しているものの後面に沿設体4を沿設した上で、連結鉄筋2に連結部5を連結してパネル体3を沿設保持し、接続部8に吊具7を接続して荷役機械で一旦格納ラック11からパネル体3を降ろし、吊り上げ用腕部6を伏動回動させパネル体3の前面側へ向けて突設配設する(図7,図8参照)。
【0064】
続いて、ロック機構10をロックし、荷役機械でパネル体3の設置位置へと吊り上げ移送するが、この際、図9,図10に示すように、吊り上げ用腕部6の突出方向に間隔を置いて並設する複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択すれば、吊り上げ時のパネル体3を姿勢変更することができる。尚、図9では、吊り上げ用腕部6の最も突出先端側に位置する接続部8に吊具7を接続して最も大きく傾いた姿勢に保持した場合を示し、図10では、沿設体4側から数えて二つ目の接続部8に吊具7を接続して少し傾いた姿勢に保持した場合を示している。
【0065】
また、複数の接続部8の選択による角度変更だけでは適切な角度にできない場合、支持部9の進退移動調整によってパネル体3の角度を微調整することができる。
【0066】
従って、設置場所への設置状況に適応した姿勢を保ったままパネル体3を吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能となるので、パネル体3の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことが可能となる。
【0067】
パネル体3の設置完了後、連結部5の連結鉄筋2への連結状態を解除し、パネル体3から本パネル吊り具を取り去る。
【0068】
このようにして、例えば、設置面(地面や基礎など)上に所定高さにパネル体3を枠組みして残存型枠28を形成し、各パネル体3の後面の連結鉄筋2と設置面とをアンカーなどの固定具1で連結固定してからこの残存型枠28内にコンクリートを打設して固化させ、この残存型枠28の上に新たにパネル体3を設置して二段目の残存型枠28を形成し、二段目の各パネル体3の連結鉄筋2と一段目の残存型枠28内の固化コンクリート32とを固定具1で連結固定してから二段目の残存型枠28内にコンクリートを打設して固化させるという作業を順次繰り返すことで残存型枠28を次々と段重ねして所定高さの砂防ダムや擁壁を構築する(図11参照)。
【0069】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
1 固定具
2 連結鉄筋
3 パネル体
4 沿設体
5 連結部
6 吊り上げ用腕部
7 吊具
8 接続部
9 支持部
10 ロック機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築に用いる大型のコンクリート製パネルを、設置箇所へと吊り上げ移送し設置する際に使用するパネル吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築において、残存型枠を用いたコンクリート工法が実施されている。
【0003】
これは、残存パネルと呼ばれる大型のコンクリート製パネル(以下、パネルと称す。)を多数設置して残存型枠を枠組みし、その残存型枠内にコンクリートを打設して固化することでコンクリート構造物を構築する工法(例えば特許文献1)であり、前記残存型枠を施工後に取り外すことなくコンクリート構造物の壁面としてそのまま残存させる工法である。
【0004】
具体的には、所定高さに枠組みした残存型枠内にコンクリートを打設して固化させた後、その残存型枠の上に新たに残存型枠を段重ね状態に枠組みすると共に、例えばこの上側の残存型枠(パネル)を、下側のパネル或いはアンカー部材を介して下側の残存型枠内の固化コンクリートと連結固定し、この上側の残存型枠内にコンクリートを打設して固化させるという作業を順次繰り返すことで、残存型枠を次々と上段へ段重ね状態に枠組みして所望高さの壁を製作する。
【0005】
また、パネルの現場への枠組み設置は、例えばワイヤーを介してパネルをクレーンなどの起重機(荷役機械)で吊り上げて設置箇所へと移動させた後、降下させて設置するという手順により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−185036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のコンクリート工法に用いられる大型コンクリート製パネルは、用途に応じて垂直姿勢あるいは傾斜姿勢で設置されることが多いが、いずれの場合も予め設置姿勢を保ったまま荷役機械で設置箇所まで運ばれるようにした方が、下側に組まれたパネルや設置箇所に設けられた連結部との連結作業などが容易に行われて設置施工性が向上するので望ましい。
【0008】
しかし、従来、パネルを任意の吊り上げ姿勢に角度変更できてその姿勢を荷役機械で吊り上げた際にも保持し続けることができるようなパネル専用の吊り具はなく、例えば、パネルに連結したワイヤーの吊り位置を調整することでパネル角度を変更したり、二台の荷役機械で一枚のパネルを異なる吊り上げ量で吊り上げることでパネル角度を調整するようなことが行われていたが、いずれも所望するパネル角度への変更調整が難しく、現場では改善が要望されていた。
【0009】
本発明は、このような要望に応えようとするためのもので、大型のコンクリート製パネルを一台の荷役機械で吊り上げて簡単に所望の角度に姿勢保持することが可能となる画期的なパネル吊り具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
後面にアンカーなどの固定具1を連結するための連結鉄筋2を突設したコンクリート製のパネル体3を、クレーンなどの荷役機械で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の前記連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、この連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで沿設体4をパネル体3の後面に沿設保持した際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を前記沿設体4の上部に突設し、この吊り上げ用腕部6に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設けて、この複数の接続部8を選択して吊具7を接続することで、荷役機械で沿設体4と共に吊り上げた前記パネル体3の姿勢を変更し得るように構成したことを特徴とするパネル吊り具に係るものである。
【0012】
また、前記沿設体4に、前記パネル体3の後面を当接支持する支持部9を設け、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のパネル吊り具に係るものである。
【0013】
また、前記支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成したことを特徴とする請求項2記載のパネル吊り具に係るものである。
【0014】
また、前記支持部9は、前記連結部5より下方へ間隔を置いた前記沿設体4の下部に設けたことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のパネル吊り具に係るものである。
【0015】
また、前記吊り上げ用腕部6は、前記沿設体4に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部6を前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパネル吊り具に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、簡単にパネル体に連結して沿設状態に保持できる上、複数の接続部から荷役機械の吊具の接続位置を選択することで、吊り上げ時のパネル体の姿勢変更が容易に可能であるから、パネル体をその設置場所へ設置される姿勢を保ったまま一台の荷役機械で吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能で、パネル体の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことができ、しかも、吊り上げ用腕部に接続部を複数並設状態に設け、この複数の接続部から荷役機械の吊具の接続位置を選択することによってパネル体の姿勢を変更する本発明の構成は、簡易に設計実現可能な構成であり、安価に量産可能であるなど、極めて実用性に秀れた画期的なパネル吊り具となる。
【0017】
また、請求項2記載の発明においては、連結部と支持部とでパネル体の沿設姿勢(角度)を安定的に保持できる上、連結部が単に連結鉄筋に連結できるだけの簡易構造のもので足りるためにこの連結部を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、複数の接続部の選択による角度変更では対応できないようなパネル体の保持角度も、支持部の進退移動調整による角度微調整によって簡易に対応可能となる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0019】
また、請求項4記載の発明においては、パネル体を極めて安定的に姿勢保持できる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【0020】
また、請求項5記載の発明においては、現場で格納ラックに重合状態に立て掛けられて準備されているパネル体に対して本発明品を簡単に連結可能となる一層実用性に秀れた構成のパネル吊り具となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例の連結部に連結鉄筋を連結する前の状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図3】図2の状態から、トグルレバーを回動操作して連結鉄筋を連結部に連結しようとする途中の状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図4】図3の状態から、更にトグルレバーを回動操作して連結鉄筋を連結部に連結した状態を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図5】本実施例のロック機構を示す部分拡大斜視図である。
【図6】本実施例の支持部の進退移動構造を示す一部を切り欠いた部分拡大側面図である。
【図7】格納ラックに立て掛けられたパネル体に本実施例のパネル吊り具を沿設保持し、荷役機械で少し吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図8】格納ラックからパネル体を降ろし、吊り上げ用腕部を伏動回動させてロックした状態を示す説明側面図である。
【図9】図8の状態から、荷役機械で少し吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図10】別の接続部を選択して吊り上げた状態を示す説明側面図である。
【図11】本実施例を用いたパネル体の施工例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
連結部5をパネル体3の後面に突設された連結鉄筋2に連結すると、沿設体4をパネル体3の後面に沿設状態に保持することができ、この際、沿設体4の上部に突設した吊り上げ用腕部6が、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設することになる。
【0024】
このパネル体3の前面側に突出している吊り上げ用腕部6の接続部8にクレーンなどの荷役機械の吊具7を接続すると、荷役機械の操作で沿設体4と共にパネル体3を吊り上げて所定の設置位置へと移送することができるが、この際、吊り上げ用腕部6の突出方向に間隔を置いて並設する複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択すると、荷役機械の吊り上げ力が作用する各接続部8はパネル体3の重心との位置関係が夫々異なるために、どの接続部8を選択したかでパネル体3の吊り上げ姿勢が変化することになる。
【0025】
即ち、荷役機械でパネル体3を吊り上げた際には、パネル体3に加わる重力によってこのパネル体3の重心が荷役機械の吊り上げ力が作用している接続部8の略真下方向に位置しようと動作するために、例えば図示したように、吊具7を接続する接続部8が、沿設体4に近い位置にあるものほどパネル体3が垂直あるいは垂直に近い傾斜姿勢で吊り上げられることになり、逆に、吊具7を接続する接続部8が、吊り上げ用腕部6の突出先端部に近い位置にあるものほどパネル体3が大きく傾斜した姿勢で吊り上げられることになる。
【0026】
従って、複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択することで、吊り上げ時のパネル体3の姿勢変更が可能であり、パネル体3の設置場所への設置状況に適応した姿勢を保持可能となる接続部8を適切に選択することにより、その設置場所へ設置される姿勢を保ったまま一台の荷役機械で吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能となるので、パネル体3の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことが可能となる。
【0027】
また、このパネル体3の姿勢変更は、吊り上げ用腕部6に複数並設する接続部8を選択して吊具7を接続するだけの簡単な作業で行うことができるし、この吊り上げ用腕部6に接続部8を複数並設状態に設ける構成は、例えば、吊り上げ用腕部6の伸縮構造により接続部8がパネル体3の重心に対して移動するような構成や、吊り上げ用腕部6の回動構造により接続部8がパネル体3の重心に対して移動するような構成と比べて、簡易構造であるため容易に設計実現可能である。
【0028】
また、例えば、前記沿設体4に、前記パネル体3の後面を当接支持する支持部9を設け、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成すれば、連結部5と支持部9との二点でパネル体3の沿設姿勢(角度)を安定的に保持できる上、パネル体3の姿勢保持を連結部5と支持部9とで分担する構成のため、連結部5にそれ単体でパネル体3の姿勢保持機能まで発揮するような構造を必要とせず、単に連結鉄筋2に連結できるだけの簡易構造のもので足りるためにこの連結部5を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用的となる。
【0029】
また、例えば、前記支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成すれば、複数の接続部8の選択による角度変更では対応できないパネル体3の保持角度も、この支持部9の進退移動調整による角度微調整によって簡易に行われるので、パネル体3をその設置状況に適応した姿勢に確実に保持可能となり、一層実用的となる。
【0030】
また、例えば、前記支持部9は、前記連結部5より下方へ間隔を置いた前記沿設体4の下部に設ければ、パネル体3の後面の連結鉄筋2より下方位置を支持部9が支持することでパネル体3の支持安定性が向上するので、重量のある大型のパネル体3であっても安定的に姿勢保持できる。
【0031】
また、例えば、前記吊り上げ用腕部6は、前記沿設体4に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部6を前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えれば、例えば、この種のパネル体3は、図7に示すように現場では格納ラック11に重合状態にして立て掛けられて準備されているが、吊り上げ用腕部6を起動回動させることでこの立て掛けられたパネル体3に対して本発明品を簡単に連結して沿設保持可能となる。
【0032】
即ち、予めロック機構10を解除して吊り上げ用腕部6を上方へ起動回動させておくことで、重合状態で立て掛けられたパネル体3のうち、最も端側に位置しているそれの後面に沿設体4を沿設することが容易に可能となる。続いて、連結鉄筋2に連結部5を連結してパネル体3を沿設保持した後、例えば接続部8に吊具7を接続して荷役機械で垂直姿勢となるまでパネル体3を起こしてから、吊り上げ用腕部6を伏動回動させてパネル体3の前面側へ向けて突設配設してこの状態をロック機構10によりロックすれば、荷役機械でパネル体3を所望の姿勢に保持して設置位置へと吊り上げ移送することができる。
【実施例】
【0033】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0034】
図示したコンクリート製のパネル体3は、砂防ダムや道路擁壁などのコンクリート構造物の構築において残存型枠28を形成するために用いるもので、方形板状をなし、残存型枠28の内側面を構成するこのパネル体3の後面には、アンカーなどの固定具1を連結可能であると共に残存型枠28内に打設するコンクリートとの付着性を向上させる連結鉄筋2(トラス筋)を突設したものである。尚、同等の構成を具備する床固工用や護岸工用や流路工用などのパネル体3を採用しても良い。
【0035】
本実施例は、このパネル体3を、クレーンなどの荷役機械(図示省略)で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体3の後面に沿設し得る沿設体4に、このパネル体3後面の前記連結鉄筋2に着脱自在に連結する連結部5を設け、連結部5より下方へ間隔を置いた沿設体4の下部に、前記パネル体3の後面に当接してパネル体3を沿設体4に対し沿設状態に支持する支持部9を設け、前記連結部5より上方へ間隔を置いた沿設体4の上部に、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に前記支持部9をパネル体3の後面に当接支持して沿設体4にパネル体3を沿設状態とした際に、パネル体3の上方からパネル体3の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部6を突設している。
【0036】
具体的には、本実施例の沿設体4は、図1に示すように、間隔を置いて左右に対設された二本の縦フレーム12間の上下二箇所に横フレーム13を架設固定して成る縦長の方形枠状体に構成して、この沿設体4を、その各縦フレーム12の対設方向が前記パネル体3の後面の面方向と略平行となるように配してパネル体3の後面に沿設配設し得るようにしている(図8参照。)。
【0037】
本実施例では、この沿設体4を構成する前記左右の各縦フレーム12の上下方向の中程に夫々前記連結部5を設けている。
【0038】
この連結部5は、前記連結鉄筋2を下方から掛止可能な側面視L字形のフック部14と、このフック部14の上部開口部を開閉自在に閉塞する開閉装置部15とから成る構成としている。
【0039】
更に詳しくは、沿設体4の、前記パネル3後面への沿設側となる各縦フレーム12の中程の側面部に夫々前記フック部14を突出状態に付設し、このフック部14の反対側となる各縦フレーム12の側面部に夫々前記開閉装置部15として採用したトグルクランプ15を突出状態に付設している。
【0040】
このトグルクランプ15は、図2〜図4に示すように、起伏回動可能なトグルレバー16の基端部にリンク部17と共に棒状閉塞体18を連結した構成で、この棒状閉塞体18を各縦フレーム12の中程に水平方向に貫通形成した貫通孔29に挿通することで、トグルレバー16をフック部14の反対側へ突設した構成としている。
【0041】
また、このトグルレバー16を立設状態とした際には、棒状閉塞体18がほとんど貫通孔29内に収容されて(後退移動して)フック部14の上部開放部が開放した状態となって、前記連結鉄筋2を掛止可能となり(図2参照)、トグルレバー16を立設状態から垂下状態に回動操作した際には、棒状閉塞体18が貫通孔29からフック部14の上部開放部を塞ぐように突出して、フック部14に連結鉄筋2を掛止している場合には連結鉄筋2が抜け止め状態(連結状態)となる構成としている(図3,図4参照)。
【0042】
即ち、本実施例では、左右二箇所の連結部5で連結鉄筋2の二箇所を安定的に掛止連結できる構成としている。
【0043】
また、本実施例の前記吊り上げ用腕部6は、図1に示すように、前記縦フレーム12の対設間隔と略同じ間隔を置いて左右に対設された二枚の帯板材20間に数本の横桟21を架設して成る梯子形の枠状体に構成し、この吊り上げ用腕部6の基端部を前記沿設体4の上部に起伏回動自在に枢着している。
【0044】
この吊り上げ用腕部6の沿設体4に対する枢着構造は、沿設体4の前記各縦フレーム12の上端部を夫々前記連結部5のフック部14の突設方向と同方向に略直角に屈曲形成すると共に、この各上端折曲部30の先端を夫々二股形状に形成し、この各上端折曲部30の二股形状部分に夫々前記吊り上げ用腕部6の左右の帯板材20の基端部を挟持状態に配設した上で、この各上端折曲部30と吊り上げ用腕部6の各基端部とに取付軸19を貫通止着することで、この取付軸19を支点軸として吊り上げ用腕部6が起伏回動する構造としている。
【0045】
また、本実施例では、この吊り上げ用腕部6を、前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構10を備えている。
【0046】
具体的には、本実施例のロック機構10は、図5に示すように、吊り上げ用腕部6が前記パネル体3の前面側に向かって突出する状態、即ち、吊り上げ用腕部6を立設状態とした沿設体4に対して側方へ突出する状態(図1の状態)とした際に連通状態となる合わせ孔22を前記各縦フレーム12の上端折曲部30と前記帯板材20の各基端部とに貫通形成し、この連通する合わせ孔22にロックピン23を挿通することにより吊り上げ用腕部6が沿設体4の側方へ突出する状態でロックされ、ロックピン23を合わせ孔22から挿脱することで沿設体4に対し吊り上げ用腕部6を起動回動可能となる構成としている。
【0047】
また、本実施例では、このロック機構10で吊り上げ用腕部6を回動不能状態にロックした際に、吊り上げ用腕部6の突出先端部がパネル体3の上部前面の前方側へやや下がって位置するように、前記合わせ孔22の形成位置を設定構成すると共に、吊り上げ用腕部6を構成する帯板材20を側面視への字状に形成し、これにより万一パネル体3が前方へ倒れようとした際にはこれを吊り上げ用腕部6が防止し得る構成としている。
【0048】
また、本実施例では、この吊り上げ用腕部6の前記左右の各帯板材20には、その長さ方向(沿設体4からの突出方向)に間隔を置いて前記荷役機械の吊具7を着脱自在に接続可能な接続部8を複数並設状態に設けている。
【0049】
具体的には、左右の各帯板材20の長さ方向に所定間隔を置いて、数箇所(図面では六箇所)に貫通孔8を形成してこの複数の貫通孔8を前記接続部8としている。
【0050】
また、この複数の接続部8は、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結することで前記沿設体4に前記パネル体3の後面を沿設保持した際に、この各接続部8が夫々パネル体3の重心位置から異なる距離に位置するようにして前記吊り上げ用腕部6の帯板材20に並設状態に設けている。
【0051】
この接続部8に荷役機械の吊具7を接続する際には、左右の各帯板材20で、吊り上げ用腕部6の突出方向に対して同じ位置に存する二箇所の接続部8に接続することで、安定的に吊り上げする。
【0052】
尚、図面では、この貫通孔8に荷役機械のワイヤーを吊具7として挿通し接続した場合を示しているが、例えば貫通孔8にシャックルなどの連結金具を接続し、この連結金具に荷役機械のワイヤーや吊り上げ用フックなどを連結するようにしても良いし、その他の接続方法を採用しても良い。
【0053】
また、本実施例の前記支持部9は、前記連結部5を前記連結鉄筋2に連結すると共に、この支持部9でパネル体3の後面を当接支持することで、沿設体4に対しパネル体3を所定角度で沿設保持し得るように構成している。
【0054】
具体的には、図1に示すように、支持部9は前記パネル体3の後面を当接支持し得る円板体24の裏面中心部にボルト杆25を突設した構成とし、このボルト杆25を沿設体4の各縦フレーム12の下端部夫々に形成した取付孔31に挿着することで、円板体24の支持面(表面)を前記フック部14と同方向(パネル体3後面への沿設側)に突設した構成としている。
【0055】
即ち、本実施例では、左右二箇所の支持部9でパネル体3の後面の二箇所を安定的に当接支持できる構成としている。
【0056】
また、この支持部9は、円板体24をボルト杆25に対して傾動自在に設けて、この円板体24の支持面でパネル体3の後面を確実に面接支持し得るように構成し、更に円板体24はゴムなどの弾性を具備するもので構成してパネル体3の後面を傷付けずに支持し得るようにしている。
【0057】
また、本実施例の支持部9は、前記沿設体4に沿設保持した前記パネル体3の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部9を進退移動調整することで、沿設体4に対するパネル体3の沿設保持角度を変更し得るように構成している。
【0058】
具体的には、図6に示すように、前記各縦フレーム12の下端部に前記取付孔31と連通状態にして前記ボルト杆25を螺着するナット26を回り止め状態に付設し、このナット26にボルト杆25を螺着することで支持部9を沿設体4の下部に突設すると共に、ナット26に対しボルト杆25を回動螺動することで円板体24が沿設体4に対し水平方向へ進退移動する構成としている。
【0059】
即ち、本実施例においては、前記接続部8の形成位置と、前記支持部9の進退移動ストローク長との設定によって、パネル体3吊り上げ時の保持姿勢を幅広く調整可能なものに設計可能であり、例えば、パネル体3を垂直姿勢から水平姿勢まで調整可能となるような構成も簡易に設計実現可能である。
【0060】
また、本実施例では、図1に示すように、前記沿設体4の左右部及び下部の三箇所にコ字枠状の取手27を、前記吊り上げ用腕部6の突設方向と逆方向に向かって突出するように付設し、この取手27を利用して作業者が沿設体4をパネル体3の後面に沿設する作業などを容易に行えるようにしている。また、この取手27は、前記連結部5のトグルレバー16より外方へ突出する大きさに設定して、例えばパネル体3を吊り上げた際などに、トグルレバー16が何かにぶつかって損傷してしまうことを防止する役割も果たすようにしている。
【0061】
次に、本実施例のパネル吊り具の使用方法を、図7〜図11を用いて説明する。また、図面は、格納ラック11に複数重合状態で立て掛けられたパネル体3を吊り上げ移送する場合を示している。
【0062】
ロックピン23を合わせ孔22から挿脱してロック機構10を解除し、吊り上げ用腕部6を上方へ起動回動させておく。
【0063】
続いて、重合状態で立て掛けられたパネル体3の最も端側に位置しているものの後面に沿設体4を沿設した上で、連結鉄筋2に連結部5を連結してパネル体3を沿設保持し、接続部8に吊具7を接続して荷役機械で一旦格納ラック11からパネル体3を降ろし、吊り上げ用腕部6を伏動回動させパネル体3の前面側へ向けて突設配設する(図7,図8参照)。
【0064】
続いて、ロック機構10をロックし、荷役機械でパネル体3の設置位置へと吊り上げ移送するが、この際、図9,図10に示すように、吊り上げ用腕部6の突出方向に間隔を置いて並設する複数の接続部8から吊具7の接続位置を選択すれば、吊り上げ時のパネル体3を姿勢変更することができる。尚、図9では、吊り上げ用腕部6の最も突出先端側に位置する接続部8に吊具7を接続して最も大きく傾いた姿勢に保持した場合を示し、図10では、沿設体4側から数えて二つ目の接続部8に吊具7を接続して少し傾いた姿勢に保持した場合を示している。
【0065】
また、複数の接続部8の選択による角度変更だけでは適切な角度にできない場合、支持部9の進退移動調整によってパネル体3の角度を微調整することができる。
【0066】
従って、設置場所への設置状況に適応した姿勢を保ったままパネル体3を吊り上げて設置場所へと移送し設置施工することが可能となるので、パネル体3の設置施工を簡易に且つ効率良く行うことが可能となる。
【0067】
パネル体3の設置完了後、連結部5の連結鉄筋2への連結状態を解除し、パネル体3から本パネル吊り具を取り去る。
【0068】
このようにして、例えば、設置面(地面や基礎など)上に所定高さにパネル体3を枠組みして残存型枠28を形成し、各パネル体3の後面の連結鉄筋2と設置面とをアンカーなどの固定具1で連結固定してからこの残存型枠28内にコンクリートを打設して固化させ、この残存型枠28の上に新たにパネル体3を設置して二段目の残存型枠28を形成し、二段目の各パネル体3の連結鉄筋2と一段目の残存型枠28内の固化コンクリート32とを固定具1で連結固定してから二段目の残存型枠28内にコンクリートを打設して固化させるという作業を順次繰り返すことで残存型枠28を次々と段重ねして所定高さの砂防ダムや擁壁を構築する(図11参照)。
【0069】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
1 固定具
2 連結鉄筋
3 パネル体
4 沿設体
5 連結部
6 吊り上げ用腕部
7 吊具
8 接続部
9 支持部
10 ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後面にアンカーなどの固定具を連結するための連結鉄筋を突設したコンクリート製のパネル体を、クレーンなどの荷役機械で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体の後面に沿設し得る沿設体に、このパネル体後面の前記連結鉄筋に着脱自在に連結する連結部を設け、この連結部を前記連結鉄筋に連結することで沿設体をパネル体の後面に沿設保持した際に、パネル体の上方からパネル体の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部を前記沿設体の上部に突設し、この吊り上げ用腕部に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具を着脱自在に接続可能な接続部を複数並設状態に設けて、この複数の接続部を選択して吊具を接続することで、荷役機械で沿設体と共に吊り上げた前記パネル体の姿勢を変更し得るように構成したことを特徴とするパネル吊り具。
【請求項2】
前記沿設体に、前記パネル体の後面を当接支持する支持部を設け、前記連結部を前記連結鉄筋に連結すると共に、この支持部でパネル体の後面を当接支持することで、沿設体に対しパネル体を所定角度で沿設保持し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のパネル吊り具。
【請求項3】
前記支持部は、前記沿設体に沿設保持した前記パネル体の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部を進退移動調整することで、沿設体に対するパネル体の沿設保持角度を変更し得るように構成したことを特徴とする請求項2記載のパネル吊り具。
【請求項4】
前記支持部は、前記連結部より下方へ間隔を置いた前記沿設体の下部に設けたことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のパネル吊り具。
【請求項5】
前記吊り上げ用腕部は、前記沿設体に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部を前記パネル体の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパネル吊り具。
【請求項1】
後面にアンカーなどの固定具を連結するための連結鉄筋を突設したコンクリート製のパネル体を、クレーンなどの荷役機械で吊り上げて所定の設置位置へと移送する際に用いるパネル吊り具であって、前記パネル体の後面に沿設し得る沿設体に、このパネル体後面の前記連結鉄筋に着脱自在に連結する連結部を設け、この連結部を前記連結鉄筋に連結することで沿設体をパネル体の後面に沿設保持した際に、パネル体の上方からパネル体の前面側に向かって突出状態に配設する吊り上げ用腕部を前記沿設体の上部に突設し、この吊り上げ用腕部に、その突出方向に間隔を置いて前記荷役機械の吊具を着脱自在に接続可能な接続部を複数並設状態に設けて、この複数の接続部を選択して吊具を接続することで、荷役機械で沿設体と共に吊り上げた前記パネル体の姿勢を変更し得るように構成したことを特徴とするパネル吊り具。
【請求項2】
前記沿設体に、前記パネル体の後面を当接支持する支持部を設け、前記連結部を前記連結鉄筋に連結すると共に、この支持部でパネル体の後面を当接支持することで、沿設体に対しパネル体を所定角度で沿設保持し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載のパネル吊り具。
【請求項3】
前記支持部は、前記沿設体に沿設保持した前記パネル体の後面に対し進退移動可能に設け、この支持部を進退移動調整することで、沿設体に対するパネル体の沿設保持角度を変更し得るように構成したことを特徴とする請求項2記載のパネル吊り具。
【請求項4】
前記支持部は、前記連結部より下方へ間隔を置いた前記沿設体の下部に設けたことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のパネル吊り具。
【請求項5】
前記吊り上げ用腕部は、前記沿設体に対し上方へ起動回動可能に設けると共に、この吊り上げ用腕部を前記パネル体の前面側に向かって突出する状態にロックするロック解除可能なロック機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパネル吊り具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−190019(P2010−190019A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38456(P2009−38456)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(591273281)株式会社アドヴァンス (18)
【出願人】(591273292)株式会社徳利 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(591273281)株式会社アドヴァンス (18)
【出願人】(591273292)株式会社徳利 (10)
【Fターム(参考)】
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