説明

パワー半導体モジュール

【課題】基板の厚み変更に容易に対応できるパワー半導体モジュールを提供する。
【解決手段】パワー半導体モジュール1のケース2の底面2B側に設けた凹部3の周縁に沿って、複数の基板取り付け面4A,4Bを階段状に形成する。仕様変更や設計変更により基板の厚みを変える場合には、変更後の厚みに対応する基板取り付け面に取り付けられるように、その基板取り付け面に応じたサイズで基板5A,5Bを作成する。また、各基板取り付け面の取り付け位置は、底面からの深さが内側ほど深くなるように形成する。これにより、基板取り付け面4A(4B)に取り付けた基板5A(5B)の非実装面と、ケースの底面2Bと、を同じ高さにすることができ、ヒートシンクにセラミックス基板を密着させて、効率良く放熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワー半導体モジュールに関し、特に基板を取り付ける構成に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールは、内蔵する半導体素子の動作時の自己発熱量が大きい。従来のパワー半導体モジュールは、放熱性を良くするために、半導体素子を実装した基板に放熱部材(ベース)が取り付けられており、放熱部材をヒートシンクや冷却フィンに取り付けて使用されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近時、軽量化やコストダウン等の目的で、放熱部材(ベース)を設けていないパワー半導体モジュールが開発されている。
【0004】
図1(A)は、パワー半導体モジュールを底面側から見た分解図である。図1(B)は、パワー半導体モジュールの底面側から見た外観図である。図1(C)は、ヒートシンクに取り付けたパワー半導体モジュールの上面側から見た外観図である。図1(D)は、ヒートシンクに取り付けたパワー半導体モジュールの正面透過図である。
【0005】
図1(A)に示すように、パワー半導体モジュール101のケース102には、底面102Bに凹部103が設けられている。凹部103には、周縁に沿って、基板取り付け面104が形成されている。セラミックス基板105は、電子部品の非実装面である銅板107を底面側(外側)にして、凹部103に取り付けられる。図1(B)に示すように、パワー半導体モジュール101は、セラミックス基板105の非実装面(銅板107)とケース102の底面102Bに対して、従来のようにベースが取り付けられていない。
【0006】
パワー半導体モジュール101には、セラミックス基板105の一例としてDBC(Direct Bond Copper)基板を示している。DBC基板は、銅とセラミックスが直接接合された基板であり、図1(D)に示すように、セラミックス製の絶縁板106の裏面に銅板107が接合され、絶縁板106の表面に銅製の導体配線108が接合されている。導体配線108の端部は、縁面放電を防止のために、絶縁板106の端部よりも内側に位置する。
【0007】
なお、本例では、銅板107を絶縁板106よりも小さくして、銅板107の端部を絶縁板106の端部よりも内側に配置しているが、銅板107と絶縁板106とを同じ大きさにして端部を揃えるようにしても良い。
【0008】
セラミックス基板105は、電子部品の実装面である導体配線108上に、半導体素子等の電子部品109が複数実装されている。セラミックス基板105は、シリコンゴム等の接着剤110でケース102に接着されている。ケース102の底面102Bとセラミックス基板105の非実装面(銅板107の表面)は、同じ高さ(面一)になっている。
【0009】
図1(C)に示すように、パワー半導体モジュール101は、ケース102の凹部103に充填材が充填されており、上面には複数の端子102Tが設けられている。パワー半導体モジュール101は、ケース102の各コーナーに設けられている孔102E〜孔102Hに挿入したネジ121〜124で、高放熱性を有するヒートシンク120に固定して使用される。図示していないが、複数の端子102Tにケーブルを接続して、このケーブルを介して他の回路または装置に接続する。図1(B)に示すように、セラミックス基板(DBC基板)105の銅板107全体がヒートシンク120に密着するので、動作時に効率良く放熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−142323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2(A)は、薄いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。図2(B)は、厚いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。
【0012】
設計変更や仕様変更により、絶縁板106や銅板107の厚みを変更することで、セラミックス基板105の厚みを変更することがある。例えば、放熱性を改善するために基板を薄くしたり、強度を得るために基板を厚くしたりする。
【0013】
図2(A)に示すパワー半導体モジュール101Aは、図1(D)に示したセラミックス基板105を薄いセラミックス基板105Aに変更したものである。パワー半導体モジュール101Aをヒートシンク120に取り付けると、セラミックス基板105Aの非実装面(銅板107Aの表面)とヒートシンク120の表面との間に隙間111ができ、両者を密着させることができない。そのため、パワー半導体モジュールの動作時の放熱効率が低下するという問題があった。
【0014】
図2(B)に示すパワー半導体モジュール101Bは、図1(D)に示したセラミックス基板105を厚いセラミックス基板に変更したものである。パワー半導体モジュール101Bは、ケース102の底面102Bよりもセラミックス基板105Bの方が高くなり、ケース102からセラミックス基板105Bがはみ出る。そのため、底面102Bがヒートシンク120に接触するように固定してしまうと、セラミックス基板105Bやケース102に負荷が加わり、セラミックス基板105Bやケース102のネジで締め付ける部分が割れてしまったり、ネジの締め付け不良が発生したりするという問題があった。
【0015】
また、セラミックス基板105の厚みを変更した場合、ケース102とセラミックス基板105が同じ高さになるように、ケース102を改造することが考えられる。しかし、ケース102は、PPSやPBT等の樹脂成型品であり、ケース102の金型の改造が必要であり、費用や手間の面から改造を容易に行うことができないという問題があった。
【0016】
そこで、この発明は、基板の厚み変更に容易に対応できるパワー半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明のパワー半導体モジュールは、筐体と基板を備えている。筐体は、底面に凹部が設けられている。基板は、電子部品が実装される実装面と電子部品が実装されない非実装面とを備え、前記非実装面を前記底面側に向けて、前記凹部に取り付けられている。凹部は、その周縁に沿って階段状に形成された複数の基板取り付け面を備えている。また、基板は、複数の基板取り付け面のいずれかに取り付けたときに、非実装面と筐体の底面とが同じ高さになるように、基板取り付け面に応じたサイズ(厚み、長さ、及び幅)で作成されている。
【0018】
この構成により、パワー半導体モジュールの仕様変更や設計変更等により基板の厚みの変更が必要な場合、基板の大きさ(長さと幅)を基板取り付け面の大きさに変更するだけで、非実装面と筐体の底面とが常に同じ高さになる。したがって、パワー半導体モジュールをヒートシンクに取り付けると、基板の非実装面がヒートシンクに密着するので、使用時に効率良く放熱を行うことができる。また、基板の変更時にケースの改造は不要であり、ケースの金型の改造費が発生せず、コストを抑制できる。
【0019】
上記の発明では、基板は、N種類(Nは2以上の整数)の厚みのいずれかで作成されている。また、凹部は、その周縁に沿って、N種類の厚みの基板に対応する深さのN個の基板取り付け面が形成されている。この構成により、設計変更や仕様変更により基板の厚みを変更する場合、N種類の厚みのいずれの基板でも、基板取り付け面に取り付けて、基板の非実装面と筐体の底面とを同じ高さにすることができる。これにより、パワー半導体モジュールをヒートシンクに取り付けると、基板の非実装面がヒートシンクに密着するので、使用時に効率良く放熱を行うことができる。
【0020】
さらに上記の発明では、基板と基板取り付け面の間に、厚み調整材が取り付けられている。この構成においては、基板取り付け面に基板を取り付けたときに、非実装面と筐体の底面とが同じ高さにならない場合には、厚み調整材を取り付けることで、非実装面と筐体の底面を同じ高さにすることができる。したがって、1つの基板取り付け面に、異なる厚みの基板のいずれかを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、基板の厚みを変更する場合、対応する基板取り付け面に取り付けられるように、同時に基板の長さと幅を変更するだけで、ケースに取り付けた基板の非実装面とケースの底面を同じ高さにすることができる。よって、パワー半導体モジュールをヒートシンクに取り付けると、基板の非実装面がヒートシンクに密着するので、使用時に効率良く放熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(A)は、パワー半導体モジュールを底面側から見た分解図である。図1(B)は、パワー半導体モジュールの底面側から見た外観図である。図1(C)は、ヒートシンクに取り付けたパワー半導体モジュールの上面側から見た外観図である。図1(D)は、ヒートシンクに取り付けたパワー半導体モジュールの正面透過図である。
【図2】図2(A)は、薄いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。図2(B)は、厚いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。
【図3】図3(A)は、パワー半導体モジュールのケースの外観図である。図3(B)は、ケースの正面透過図である。図3(C)は、基板の断面図である。図3(D)は、サイズが異なる基板の断面図である。
【図4】図4(A)は、薄いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。図4(B)は、厚いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。
【図5】図5(A)は、ケースの正面透過図である。図5(B)は、基板取り付け面の階段状の部分の拡大図である。図5(C)は、セラミックス基板を取り付けたケースの拡大図である。
【図6】図6(A)、図6(B)、図6(C)は、それぞれ厚みが異なるセラミックス基板を取り付けたケースの拡大図である。
【図7】図7(A)は、基板取り付け面の階段状の部分の拡大図である。図7(B)、図7(C)、図7(D)、図7(E)は、それぞれ厚みが異なるセラミックス基板を取り付けたケースの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図3(A)は、パワー半導体モジュールのケースの外観図である。図3(B)は、ケースの正面透過図である。図3(C)は、基板の断面図である。図3(D)は、サイズが異なる基板の断面図である。図4(A)は、薄いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。図4(B)は、厚いセラミックス基板に変更したパワー半導体モジュールの正面透過図である。第1実施形態及び第2実施形態では、セラミックス基板の絶縁板の厚みを変更する例を述べるが、銅板の厚みを変えることにより、セラミックス基板の厚みを変更することもできる。また、以下の説明では、基板のサイズとは、基板の長さ、幅、及び厚さのことであり、基板の大きさとは、基板の長さと幅のことである。
【0024】
本発明では、パワー半導体モジュールのケースの底面側に設けた凹部の周縁に沿って、複数の基板取り付け面を階段状に形成している。複数の基板取り付け面は、仕様変更や設計変更により基板の厚みを変えた場合に備えて、変更可能な複数の基板の厚みに応じた深さに形成する。各基板取り付け面は、底面からの深さが内側(中心側)ほど深くなるように形成する。これにより、基板の厚みを変更する場合には、ケースの改造は不要であり、基板をその厚みに対応する基板取り付け面の大きさで形成するだけで良い。
【0025】
なお、本発明のパワー半導体モジュールは、従来のパワー半導体モジュール101と同じ部材で作成されているものとし、同様の構成については説明を省略する。
【0026】
図3(A),図3(B)に示すように、パワー半導体モジュールのケース(筐体)2には、一例として、2種類の厚みのセラミックス基板を取り付けることを想定して、2つの基板取り付け面4Aと基板取り付け面4Bを設けた例を示している。基板取り付け面4Aは、凹部3の周縁に沿って形成された枠状の平面であり、外形寸法が長さL1、幅W1で、内形寸法が長さL2、幅W2で、底面2Bから深さD1の位置に形成されている。基板取り付け面4Bも同様の形状であり、外形寸法が長さL2、幅W2で、内形寸法が長さL3、幅W3で、底面2Bから深さD2の位置に形成されている。このとき、各基板取り付け面は、底面2Bからの深さがケース2の内側ほど深くなるように形成する。なお、L1>L2>L3、W1>W2>W3、D1<D2である。
【0027】
基板取り付け面4Aは、セラミックス基板5A(絶縁板6Aと銅板7Aの厚みの合計がD1’)に、接着剤10Aを塗布して取り付けることを考慮して、ケース2の底面2Bからの深さをD1(=D1’+接着剤の厚み)にしている(図3(C)参照)。
【0028】
同様に、基板取り付け面4Bは、セラミックス基板5Bを取り付けるので、ケース2の底面2Bからの深さをD2(=D2’+接着剤の厚み)にしている(図3(D)参照)。
【0029】
セラミックス基板(DBC基板)5Aは、基板取り付け面4Aに応じた大きさ、つまり基板取り付け面4Aに取り付け可能な大きさで作成されている。絶縁板6Aは、長さがL1〜L2の間、幅W1〜W2の間である。また、ケース2にセラミックス基板5Aを取り付けた際に導体配線8Aが、ケース2に接触せずに空間絶縁距離が確保できるように、導体配線8Aは、長さL2未満、幅W2未満である。
【0030】
一方、セラミックス基板(DBC基板)5Bは、基板取り付け面4Bに応じた大きさ、つまり基板取り付け面4Bに取り付け可能な大きさで作成されている。絶縁板6Bは、長さL2〜L3の間、幅W2〜W3の間である。また、ケース2にセラミックス基板5Bを取り付けた際に導体配線8Bが、ケース2に接触せずに空間絶縁距離が確保できるように、導体配線8Bは、長さL3未満、幅W3未満である。
【0031】
なお、接着剤の塗布面が広い方がセラミックス基板5Aやセラミックス基板5Bをケース2により強固に接着できるので、絶縁板6Aや絶縁板6Bの大きさを上記の範囲内でより大きくしておくのが好ましい。
【0032】
ケース2の基板取り付け面4Aに接着剤10Aでセラミックス基板5Aを取り付けると、図4(A)に示すパワー半導体モジュール1Aのように、ケース2の底面2Bとセラミックス基板5Aの銅板7Aの表面(電子部品の非実装面)とが同じ高さになる。すなわち、セラミックス基板5Aの非実装面が、ケース2の底面2Bの一部を構成する。そのため、パワー半導体モジュール1Aをヒートシンク20にネジ121〜124で取り付けると、セラミックス基板5Aの銅板7A全体がヒートシンク20に密着する。
【0033】
同様に、図4(B)に示すパワー半導体モジュール1Bのように、ケース2の底面2Bとセラミックス基板5Bの銅板7Bの表面(非実装面)とが同じ高さになり、セラミックス基板5Bの銅板7B全体がヒートシンク20に密着する。
【0034】
したがって、パワー半導体モジュールの基板を、厚みが異なるセラミックス基板5Aからセラミックス基板5B、またはその逆に変更しても、パワー半導体モジュール1A,1Bの動作時には、効率良く放熱を行うことができる。
【0035】
また、セラミックス基板5Bをケース2に接着する際に、余分な接着剤10Bがセラミックス基板5Bとケース5の間からはみ出して流れ出したとしても、セラミックス基板5Bの周囲にできた溝(空間)3Mで接着剤10Bを吸収できる。すなわち、流れ出した接着剤10Bは、溝3Mに流れ込むので、ケース2の底面2Bやセラミックス基板5Bの銅板7Bの表面に接着剤10Bが付着する(はみ出す)のを防止できる。また、ケースにセラミックス基板を取り付けた後に、ケース内に充填材を封入する際にわずかに生じた隙間から充填材が流れ出した場合にも、溝3Mで充填材を吸収できる。したがって、セラミックス基板の非実装面に充填材や接着剤が付着するのを防止でき、平面性を保てるので、非実装面をヒートシンクに密着させることができる。
【0036】
このように、本発明の第1実施形態に係るパワー半導体モジュールは、基板の厚みを変更する場合、基板の大きさを変更するだけで、基板取り付け面に取り付けた基板の非実装面と、ケースの底面と、を同じ高さにすることができ、ヒートシンクにセラミックス基板を密着させて、効率良く放熱することができる。そのため、パワー半導体モジュールをヒートシンクに取り付けても、セラミックス基板に負荷がかかることが無く、セラミックス基板やケースが割れることが無い。また、基板の厚みを変更する場合、基板の大きさを変更するだけで、ケースの金型を改造しなくても良く、仕様変更に伴う基板の変更が容易でコストも抑制できる。
【0037】
この実施形態は、パワー半導体モジュールに使用する基板の厚みの差が比較的大きい場合や、基板を変更する頻度が高い場合等に、特に適用できる。
【0038】
[第2実施形態]
図5(A)は、ケースの正面透過図である。図5(B)は、基板取り付け面の階段状の部分の拡大図である。図5(C)、図6(A)、図6(B)、図6(C)は、それぞれ厚みが異なるセラミックス基板を取り付けたケースの拡大図である。
【0039】
パワー半導体モジュールに使用するセラミックス基板の厚みがN種類(Nは2以上の整数)あり、これらのいずれかに変更する可能性がある場合には、ケースの凹部の周縁に、予めN種類の厚みの基板のそれぞれに対応する深さで、N個の基板取り付け面を階段状に形成すると良い。
【0040】
例えば、4種類の厚みのいずれかのセラミックス基板をパワー半導体モジュールに使用する場合には、図5(A)に示すように、セラミックス基板の厚みに応じた深さになるように、4つの基板取り付け面14A,14B,14C,14Dを階段状に形成する。このとき、各基板取り付け面は、底面12Bからの深さがケース12の内側ほど深くなるように形成する。
【0041】
基板取り付け面14Aは、凹部13の周縁に沿って形成された枠状の平面であり、外形寸法が長さL11、幅W11で、内形寸法が長さL12、幅W12で、底面12Bから深さD11の位置に形成されている。同様に、基板取り付け面14B、14C、14Dは、(外形長さ,外形幅,内形長さ,内形幅,深さ)が(L12,W12,L13,W13,D12)、(L13,W13,L14,W14,D13)、(L14,W14,L15,W15,D14)である。なお、L11>L12>L13>L14>L15、W11>W12>W13>W14>W15、D11<D12<D13<D14<D15である。
【0042】
なお、一例として、各セラミックス基板15A〜15Dの絶縁板16A、16B、16C、16Dの厚みをそれぞれ、0.25mm、0.28mm、0.32mm、0.64mmとする。また、各セラミックス基板15A〜15Dの銅板17A〜17D及び導体配線18A〜18Dの厚みは同じものとし、例えば0.20mmとする。
【0043】
基板取り付け面14Aには、セラミックス基板15A(絶縁板16Aと銅板17Aの厚みの合計がD11’)に、接着剤20Aを塗布して取り付けることを考慮して、ケース12の底面12Bからの深さをD11(=D11’+接着剤の厚み)にしている(図5(B)参照)。他の基板取り付け面14B,14C,14Dも同様である(図5(B)参照)。
【0044】
セラミックス基板(DBC基板)15Aは、基板取り付け面14Aに応じた大きさで作成されている。すなわち、絶縁板6Aの大きさを、長さをL11〜L12の間、幅をW11〜W12の間にする(図5(C)参照)。同様に、セラミックス基板15B,15C,15Dの(長さ,幅)を(L12〜L13、W12〜W13)、(L13〜L14、W13〜W14)、(L14〜L15、W14〜W15)にする(図6参照)。
【0045】
なお、各セラミックス基板の導体配線は、ケース12にセラミックス基板を取り付けた際に、ケース2に接触せずに空間絶縁距離を確保できる大きさに調整しておく。
【0046】
ケース12の基板取り付け面14Aに接着剤10Aでセラミックス基板15Aを取り付けると、図5(C)に示すように、ケース12の底面12Bとセラミックス基板15Aの銅板17Aの表面(非実装面)とが同じ高さになる。そのため、パワー半導体モジュール11Aをヒートシンク(不図示)にネジ(不図示)で取り付けると、セラミックス基板の非実装面全体をヒートシンクに密着させることができる。
【0047】
セラミックス基板15B〜15Dをケース12に取り付けた場合についても同様の構成となる。
【0048】
したがって、予め複数の基板取り付け面をケースに設けておくことで、厚みの異なるセラミックス基板に変更する場合には、基板の大きさを変更するだけで、ケースの底面とセラミックス基板の非実装面とが同じ高さになり、セラミックス基板の非実装面全体をヒートシンクに密着させることができる。これにより、パワー半導体モジュールの動作時に、効率良く放熱を行うことができる。
【0049】
[第3実施形態]
図7(A)は、基板取り付け面の階段状の部分の拡大図である。図7(B)、図7(C)、図7(D)、図7(E)は、それぞれ厚みが異なるセラミックス基板を取り付けたケースの拡大図である。
【0050】
この実施形態では、セラミックス基板の厚みを変更する可能性がある場合には、複数の基板取り付け面を設けておき、さらに、セラミックス基板と基板取り付け面との間に厚み調整材を取り付ける。これにより、変更する可能性のあるすべてのセラミックス基板と同数の複数の基板取り付け面を予め設けることなく、ケースの底面とセラミックス基板の非実装面とを同じ高さにすることができる。
【0051】
以下の説明では、4種類の基板のいずれかを選択可能である。
【0052】
図7(A)に示すように、初期の設計では、パワー半導体モジュール21には、絶縁板と銅板の合計の厚みがD13’のセラミックス基板25が接着剤30によりケース22の基板取り付け面24Aに取り付けられている。基板取り付け面24Aは、ケース22の底面22Bからの深さD13(=D13’+接着剤の厚み)の位置に形成している。
【0053】
図7(B)に示すように、さらに厚い基板への変更に備えて、すなわち、絶縁板と銅板の合計の厚みがD15’(>D13’)のセラミックス基板25Aへの変更に備えて、ケース22の底面22Bからの深さD15(=D15’+接着剤の厚み)の位置に、予め基板取り付け面24Bを形成しておく。これにより、図7(C)に示すように、セラミックス基板25Aへ変更しても、ケース22の底面22Bとセラミックス基板25Aの被実装面(銅板27の表面)とを同じ高さにすることができる。
【0054】
一方、絶縁板と銅板の合計の厚みがD16’(<D15’,>D13)のセラミックス基板25B、または絶縁板と銅板の合計の厚みがD17’(<D16’,>D13’)のセラミックス基板25Cに変更する場合には、基板取り付け面24Bを用いる。このとき、図7(D)、図7(E)に示すように、ケース22とセラミックス基板(絶縁板)25B(25C)との間に、厚み調整材31Bまたは厚み調整材31Cを取り付けて、これらいずれかの厚み調整材を介してケース22にセラミックス基板を取り付ける。厚み調整材31Bは厚さD21(=D15−D16’)、厚み調整材31Cは厚さD22(=D15−D17’)である。
【0055】
なお、一例として、セラミックス基板25の絶縁板26の厚みを0.32mm、銅板27の厚みを0.20mmとする。また、各セラミックス基板25A、25B、25Cの絶縁板26Aの厚みを0.64mmとし、銅板27A、27B、27Cの厚みをそれぞれ、0.30mm、0.25mm、0.20mmとする。
【0056】
厚み調整材は、例えば、プラスチック板等の硬質の部材を用いても、ゲル状の板材等、軟質の部材を用いても良い。厚み調整材は、ケースの底面とセラミックス基板の非実装面とが同じ高さになるように、予め厚みを調整しておく。
【0057】
また、セラミックス基板をケースに取り付ける接着剤として、粘度が高いものを使用すすれば、この接着剤を厚み調整材として使用することも可能である。
【0058】
また、厚み調整材31B(31C)として接着剤を用いた場合、セラミックス基板25B(25C)とケース22の間からはみ出して流れ出ても、セラミックス基板25B(25C)の周囲にはケース22と銅板27B(27C)により溝23Mが形成されており、この溝23Mで、流れ出した厚み調整材(接着剤)31B(31C)を吸収できる。すなわち、流れ出た厚み調整材(接着剤)31B(31C)は、溝23Mに流れ込むので、厚み調整材(接着剤)31B(31C)がセラミックス基板25B(25C)の銅板27B(27C)の表面やケースの底面22Bに付着するのを防止でき、非実装面を平面に保つことができる。図7(C)に示すように、厚みが厚く長さ(幅)の小さなセラミックス基板ほど、この溝を大きくとれるので、厚み調整材(接着剤)の影響を考慮しなくても良く、比較的厚みの差が小さなセラミックス基板への変更に容易に対応することができる。このように、複数の基板取り付け面24A,24Bと厚み調整材とを組み合わせて用いることで、より多種類の厚みのセラミックス基板に容易に変更でき、ケースの底面とセラミックス基板の非実装面とを、確実に同じ高さにすることができる。
【0059】
以上のように、複数の基板取り付け面を形成し、さらに厚み調整材も用いることで、ある厚みのセラミックス基板用に形成された基板取り付け面に、異なる厚みのセラミックス基板を取り付けても、ケースの底面とセラミックス基板の銅板の表面(非実装面)とを同じ高さにすることができる。これにより、より多くの種類の厚みのセラミックス基板に対応でき、ケースの金型の加工を減らすことができ、コストダウンを図ることができる。
【0060】
なお、厚み調整材は、第2実施形態において説明した構成にも使用できる。例えば、基板の厚みを変更するだけで、長さ(L)や幅(W)を変更したくない場合等に有効である。
【0061】
なお、以上の説明では、セラミックス基板の絶縁板の厚みを変更する例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、セラミックス基板の銅板の厚みを変更することも当然可能である。
【0062】
また、厚みを変更する基板は、セラミックス基板に限るものではなく、パワー半導体モジュールに使用される他の種類の基板であっても良い。例えば、鉄、銅、アルミニウム等を用いた金属基板であっても良い。
【0063】
なお、パワー半導体モジュールのケースとして、底面に設けた凹部が貫通孔である例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、基板が取り付けられる凹部が形成されているのであれば、ケースの上面が塞がっていても当然良い。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,11A,11B,11C,11D,21,21A,21B,21C,101A,101B…パワー半導体モジュール
2,12,22,102…ケース
2B,12B,22B,102B…底面
3,13…凹部
4A,4B,14A,14B,14C,14D,24A,24B…基板取り付け面
5A,5B,15A,15B,15C,15D,25,25A,25B,25C,105,105A,105B…セラミックス基板
6A,6B,16A,16B,16C,16D,106…絶縁板
7A,7B,17A,17B,17C,17D,27,27A,27B,27C,107,107A…銅板
8A,8B,108…導体配線
10A,20A,30,110…接着剤
20,120…ヒートシンク
31B,31C…厚み調整材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に凹部が設けられた筐体と、
電子部品が実装される実装面と電子部品が実装されない非実装面とを備え、前記非実装面を前記底面側に向けて、前記凹部に取り付けられた基板と、
を備えたパワー半導体モジュールにおいて、
前記凹部は、その周縁に沿って階段状に形成された複数の基板取り付け面を備え、
前記基板は、前記複数の基板取り付け面のいずれかに取り付けたときに、前記非実装面と前記筐体の底面とが同じ高さになるように、前記基板取り付け面に応じたサイズで作成されたパワー半導体モジュール。
【請求項2】
前記基板は、N種類(Nは2以上の整数)の厚みのいずれかで作成され、
前記凹部は、その周縁に沿って、前記N種類の厚みの基板に対応する深さのN個の基板取り付け面が形成された請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
前記基板と前記基板取り付け面の間に、厚み調整材が取り付けられた請求項1または2に記載のパワー半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187711(P2011−187711A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51831(P2010−51831)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)