説明

ヒートシンク

【課題】放熱フィンの強度を高め、放熱フィンとヒートパイプの間の熱抵抗が小さく、冷却風の方向を規制することなく、放熱効率の高い薄型・小型のヒートシンクを提供する。
【解決手段】断面が略U字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に形成された開口部7とを備えた薄板フィン4が所定間隔で平行に複数配置された放熱フィン部2と、前記開口部に挿通されて、前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプ3とを備えたヒートシンク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種電気・電子機器に搭載される半導体素子などの発熱体冷却用ヒートシンク、特に、放熱効率に優れた薄型・小型のヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気・電子機器に搭載された半導体素子等の発熱性の素子を冷却するために、放熱フィンおよびヒートパイプを備えたヒートシンクが各種提案され、また実用化されている。ヒートパイプを備えたヒートシンクによると、ヒートパイプによって、放熱すべき電気・電子部品の熱を別の場所に配置された放熱フィンに移動させ、その場所で放熱フィンを伝わって外部に放熱することができる。
【0003】
半導体素子等の発熱性の素子を搭載する各種電気・電子機器は、薄型化、小型化が進み、放熱フィンおよびヒートパイプを備えたヒートシンクを配置するスペースも大幅に制限されている。一方で、発熱素子の発熱量が多くなり、高い放熱効率が要求されている。
【0004】
放熱フィンは、通常所定間隔で複数の薄板が平行に配置され、ヒートパイプの放熱側の端部に熱的に接続される。放熱フィンは一般的に金属製の薄板で形成されているため、容易に変形したり、放熱フィンの間の間隔がずれたりすることが多い。また、ヒートシンクの放熱効率を高めるためには、発熱性の素子からヒートパイプによって移動された熱を、放熱フィンに効果的に伝熱することが必要である。
【0005】
特開2002−246521号公報(特許文献1)には、放熱フィンと断面が円型のヒートパイプ(丸型ヒートパイプ)とからなるヒートシンクが開示されている。図9は、放熱フィンと丸型ヒートパイプを備えた従来のヒートシンクを説明する斜視図である。
【0006】
図9に示すように、従来のヒートシンクでは、断面略コの字形の放熱フィン101の中央にバーリング加工によって開口部103を形成し、開口部103に丸型ヒートパイプ102を挿通している。バーリング加工を施された開口部の周辺部(バーリング加工部)が丸型ヒートパイプの外周面に接して、機械的にかしめられて固定される。コの字形放熱フィンの側面部には、隣接する放熱フィン同士を固定するための凸部、および該凸部に対応する凹部を備えている。
【0007】
しかし、丸型ヒートパイプを用いたヒートシンクでは、所望の熱伝達量を得ようとしても、ヒートパイプの太さ、すなわちヒートパイプの断面積を小さくすることができないため放熱フィン間の流路抵抗を小さくすることができない。
【0008】
一方、特開2001−274304号公報(特許文献2)には、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとからなるヒートシンクが開示されている。図10は、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとを備えた従来のヒートシンクを説明する斜視図である。
【0009】
図10に示すように、断面略コの字形の放熱フィン101は、中央下部に切り起こしによって形成された凹部104と扁平状ヒートパイプ102の上面に接する板状部分103を備えている。扁平状ヒートパイプ102は、凹部104に嵌め込まれて、放熱フィン101の板状部分103が扁平状ヒートパイプ102の上面に接触することによって、放熱フィン101と扁平状ヒートパイプ102が熱的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−246521号公報
【特許文献2】特開2001−274304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載のヒートシンクでは、放熱フィン間に流れる冷却風に対して平行に扁平状ヒートパイプを配置することで流路抵抗を小さくすることができる。しかしながら、扁平状ヒートパイプが放熱フィンの一方の端部に形成された凹部に嵌合されているため、放熱量を向上させるために放熱フィンの面積を大きくすると、放熱フィンの他方の端部(扁平状ヒートパイプから離れた側の端部)への熱の伝達が不十分となり、所望の放熱効率が得られないという問題があった。
【0012】
また特許文献1のように、バーリング加工によって放熱フィンに形成された開口部に扁平状ヒートパイプを固定する場合、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとの間の熱抵抗を低減するために、バーリング加工部を外側からかしめると、扁平状ヒートパイプの扁平部分が凹状に変形して、ヒートパイプ内の蒸気流路が閉塞し、伝熱効率が低下してしまうという問題があった。
【0013】
従って、この発明の目的は、放熱フィンとヒートパイプの間の熱抵抗が小さく、冷却風の流路抵抗が小さい、放熱効率の高いヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、薄板部材(放熱フィン)の中央部に、例えば長手方向に沿って折り曲げて形成される断面がU字形の屈曲部を設け、該屈曲部の中央(U字の底部)に開口部を形成して、開口部に扁平状のヒートパイプを挿通すると、屈曲部によって薄板フィンの強度が高まり、屈曲部の内側の対向する面が扁平状ヒートパイプの上面および下面と密着して接する。このため、放熱フィンと広い面積で、扁平状ヒートパイプが熱的に接続され、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとの間の熱抵抗を低減することができることが判明した。
【0015】
また、屈曲部の開口部以外の部分、即ち、折り曲げて形成された屈曲部の、扁平状ヒートパイプが挿通される開口部以外の部分をかしめることで、扁平状ヒートパイプを直接かしめることなく、扁平状ヒートパイプと放熱フィンとを固定することができる。従って、薄型のヒートパイプを変形させて作動液が通る空間(蒸気流路)を閉塞する恐れがない。この発明は、上述した研究成果に基づいてなされたものである。
【0016】
この発明のヒートシンクの第1の態様は、断面がU字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に形成された開口部とを備えた薄板フィンが所定間隔で平行に複数配置された放熱フィン部と、前記開口部に挿通されて、前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンクである。
【0017】
この発明のヒートシンクの第2の態様は、前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部が嵌め込まれて連結されているヒートシンクである。
【0018】
この発明のヒートシンクの第3の態様は、上辺及び下辺にそれぞれ平らな切り起し部を備えた扁平状の開口部と、前記開口部の長手方向両側に、折り重ねによって形成された屈曲部とを備えた薄板フィンを所定間隔で平行に複数配置した放熱フィン部と、前記切り起し部に上面および下面がそれぞれ接触して前記開口部に挿通されて、前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンクである。
【0019】
この発明のヒートシンクの第4の態様は、前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部が嵌め込まれて連結されているヒートシンクである。
【0020】
この発明のヒートシンクの製造方法の第1の態様は、所定形状の薄板部材に、断面が略U字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に開口部を形成して薄板フィンを調製し、
前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部を嵌め込んで、複数の薄板フィンを連結し、
前記複数の薄板フィンの前記開口部に扁平状ヒートパイプを挿通して製造する、ヒートシンクの製造方法である。
【0021】
この発明のヒートシンクの製造方法の第2の態様は、所定形状の薄板部材に、上辺及び下辺にそれぞれ平らな切り起し部を備えた扁平状の開口部と、前記開口部の長手方向両側に、折り重ねによって形成された屈曲部とを備えた薄板フィンを調製し、
前記切り起こし部の先端が隣接する薄板フィンと接触するように、前記薄板フィンを平行に複数配置して放熱フィン部を形成し、
前記切り起し部に上面および下面にそれぞれ接触して、前記開口部に扁平状ヒートパイプを挿通して製造する、ヒートシンクの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
この発明のヒートシンクによると、薄板部材の中央部に、長手方向に沿って折り曲げて形成される屈曲部を設け、屈曲部の中央に開口部を形成して、開口部に扁平状のヒートパイプを挿通するので、屈曲部によって薄板フィンの強度が高まり、屈曲部の内側の対向する面が扁平状ヒートパイプの上面および下面と密着して接するので、薄板フィンと広い面積で、扁平状ヒートパイプを熱的に接続することができる。
【0023】
薄板部材の中央部に屈曲部を設けるだけで、断面コの字形の薄板フィンのように冷却風の方向を規制されることがない。更に、屈曲部の開口部以外の部分、即ち、折り曲げて形成された屈曲部の、扁平状ヒートパイプが挿通される開口部以外の部分をかしめるので、扁平状ヒートパイプが直接かしめられない。従って、薄型のヒートパイプを変形させて作動液が通る空間を潰す恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、この発明のヒートシンクに用いられる薄板フィンの1つの態様を説明する斜視図である。
【図2】図2は、この発明のヒートシンクの1つの態様を説明するための斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す薄板フィンの製造方法を説明する図である。図3(a)は、薄板部材に開口部を設けた状態を示す平面図である。図3(b)は、薄板フィン4の断面図である。
【図4】図4は、屈曲部の中央に形成された開口部に扁平状ヒートパイプが挿通された状態を説明する断面図である。
【図5】図5は、この発明のヒートシンクの薄板フィンの他の1つの態様を説明する斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す薄板フィンの製造方法を説明する図である。
【図7】図7は、この発明のヒートシンクの他の1つの態様を説明するための斜視図である。
【図8】図8は、この発明の扁平状ヒートパイプの1つの態様を説明する断面図である。
【図9】図9は、放熱フィンと丸型ヒートパイプとを備えた従来のヒートシンクを説明する斜視図である。
【図10】図10は、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとを備えた従来のヒートシンクを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明のヒートシンクの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
この発明のヒートシンクの1つの態様は、断面がU字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に形成された開口部とを備えた薄板フィンが所定間隔で平行に複数配置された放熱フィン部と、前記開口部に挿通されて、前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンクである。
【0026】
図1は、この発明のヒートシンクに用いられる薄板フィンの1つの態様を説明する斜視図である。図1に示すように、薄板フィン4は、所定形状例えば矩形の平らな薄板部材5の概ね中央部に、プレス加工等によって形成された断面が概ねU字形の屈曲部6を備えている。屈曲部6は、例えば、薄板部材5の長手方向に沿って薄板部材の全長にわたって形成されている。
【0027】
屈曲部6の中央には、後述する扁平状ヒートパイプの断面に対応した形状の開口部7が形成されている。即ち、屈曲部6の先端部分が切り取られた状態で開口部7が形成されている。このような屈曲部6を設けることによって、薄板部材5のままの薄板フィン4と比べて、薄板フィン4の強度を高めることができる。開口部7には、扁平状ヒートパイプが、その上面及び下面と屈曲部6の内側の対向する面が接触するように、挿通される。
【0028】
図2は、本発明のヒートシンクの1つの態様を説明する斜視図である。図2に示すように、ヒートシンク1は、複数の薄板フィン4の屈曲部6に形成された開口部7に、断面が扁平形状のヒートパイプ(扁平状ヒートパイプ)が挿通されて固定されている。また、薄板フィン4の屈曲部6の基部6aに、隣接する薄板フィン4の屈曲部6の先端部6bが嵌め込まれて連結される。
【0029】
このように屈曲部の基部6aおよび先端部6bを嵌め合わせることによって、複数の薄板フィン4が固定されて、放熱フィン部が所定の形状を維持することができる。また、この発明のヒートシンクにおいては、薄板フィン4に設けられた屈曲部6によって個々の薄板フィン4は長手方向に沿う強度が高くなっている。
【0030】
図3は、図1に示す薄板フィンの製造方法を説明する図である。図3(a)は、薄板部材に開口部を設けた状態を示す平面図である。図3(a)では、薄板部材5の短辺に沿って開口部7が設けられている。図3(a)に示すように、薄板部材5の概ね中央部に、薄板部材5の短辺に沿って開口部7を設け、開口部7の長手方向に沿った中央を通る線(矢印Aで示す)、開口部7から所定の間隔を隔てた線(矢印B、Cで示す)をそれぞれ山、谷(又は谷、山)となるように折り曲げる。即ち、矢印B、Cで折り曲げ、矢印Aの線が突出するように薄板部材5を加工する。
【0031】
図3(b)は、薄板フィン4の断面図である。図3(b)に示すように、図3(a)に示す部分(矢印A〜C)で折り曲げて形成した薄板フィン4は、平らな薄板部材5の概ね中央部に断面が概ねU字形の屈曲部6を備え、屈曲部6の先端部分(U字形の底部)に開口部が位置している。屈曲部の内側の対向する面8、8は、(図示しない)扁平状ヒートパイプの上面および下面と熱的に接触するため、扁平状ヒートパイプと薄板フィンとの間の熱抵抗を低くすることができる。
【0032】
図4は、屈曲部の中央に形成された開口部に扁平状ヒートパイプが挿通された状態を説明する断面図である。図4に示すように、図3を参照して説明した薄板フィン4の屈曲部6の開口部7に扁平状ヒートパイプ3が挿通されている。薄板フィン4の屈曲部6の内側の対向する面8が、扁平状ヒートパイプ3と熱的に接触する。
【0033】
即ち、屈曲部6を形成することによって、扁平状ヒートパイプ3と薄板フィン4の接触する部分が拡大されている。屈曲部6を有しない薄板フィンの場合は、開口部の壁面(即ち、板厚相当分)がヒートパイプと接触するのに対して、屈曲部6を有する薄板フィン4の場合は、扁平状ヒートパイプ3の上面および下面と、薄板フィン4の屈曲部6の内側の対向する面8とが接触し、扁平状ヒートパイプ3と薄板フィン4の接触面積が大幅に拡大している。
【0034】
なお、上述した図2に示す態様のヒートシンク1は、図3および図4を参照して説明した図1の薄板フィン4が平行に複数配置されて形成された放熱フィン部2の、開口部7に扁平状ヒートシンク3が挿通されている。
【0035】
上述したように、本発明のヒートシンクの1つの態様では、矩形の薄板フィン4の長手方向に沿って屈曲部6を形成しているが、矩形の薄板フィン4の辺に対して所定角度だけ傾斜した方向に沿って屈曲部6を形成してもよく、適宜の方向に屈曲部6を設けることができる。その場合にも、斜めに形成された屈曲部6の中央部に開口部7が設けられて、扁平状ヒートパイプ3が開口部7に密着して挿通される。
【0036】
この場合においても、薄板フィン4の屈曲部6の先端部が隣接する薄板フィン4の屈曲部の基部に嵌め込まれて、所定間隔で平行に配置されている。更に、図1を参照して説明した態様と同様に、薄板フィン4の屈曲部6の内側の対向する面が、扁平状ヒートパイプ3の上面および下面と接触しているので、低い熱抵抗で薄板フィン4と扁平状ヒートパイプ3が熱的に接続されている。
【0037】
また、薄板フィン4を形成する薄板部材5の形状は、矩形に限らず、丸角の四角形、楕円等、放熱のためのスペースの形状に合わせて適宜設定することができる。
【0038】
この発明のヒートシンクの他の1つの態様は、上辺及び下辺にそれぞれ平らな切り起し部を備えた扁平状の開口部と、開口部の長手方向両側に形成された屈曲部とを備えた薄板フィンを所定間隔で平行に複数配置した放熱フィン部と、切り起し部に上面および下面がそれぞれ接触して開口部に挿通されて、放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンクである。
【0039】
図5は、この発明のヒートシンクの薄板フィンの他の1つの態様を説明する斜視図である。図5に示すように、この態様の薄板フィン14は、上辺および下辺にそれぞれ平らな切り起こし部18、19を備えた扁平状の開口部17を備え、そして、開口部17の長手方向両側に、折り重ねによって形成された屈曲部16を備えている。
【0040】
即ち、薄板フィン14の中央部に開口部17が設けられ、開口部17の長手方向に沿ってその両側に屈曲部16が形成されている。この態様においても、薄板フィン14の中央部に長手方向に沿って屈曲部16が設けられて、薄板フィンの強度を高めている。
【0041】
図6は、図5に示す薄板フィンの製造方法を説明する図である。図6(a)は、薄板部材に切り込みを設けた状態を示す平面図である。
図6(a)に示すように、薄板フィン14の中央部には、薄板フィン14の幅方向に所定の長さで概ねH字形に切り込みXを入れて、中央の切り込みから上下方向にそれぞれ切り起こして、平らな切り起こし部18、19が形成されている。切り起こし部18、19は、開口部17の上辺および下辺に沿って概ね薄板フィン14と直角に突き出ている。屈曲部16は、上述したように、開口部17の長手方向両側にそれぞれ形成されている。
【0042】
図6(b)は、薄板フィン14の断面図である。図6(b)に示すように、図6(a)に示す部分(矢印A〜C)で折り曲げて形成した薄板フィン14は、上辺および下辺にそれぞれ平らな切り起こし部18、19を備えた扁平状の開口部17を備え、そして、開口部17の長手方向両側に、折り重ねによって形成された屈曲部16を備えている。切り起こし部18、19は、(図示しない)扁平状ヒートパイプの上面および下面と熱的に接触するため、扁平状ヒートパイプと薄板フィンとの間の熱抵抗を低くすることができる。
【0043】
図7は、この発明のヒートシンクの他の1つの態様を説明するための斜視図である。図7に示すように、ヒートシンク10においては、図5を参照して説明した薄板フィン14が平行に複数配置されて形成された放熱フィン部12の開口部17に、扁平状ヒートパイプ13が、切り起こし部18、19がそれぞれ扁平状ヒートパイプ13の上面および下面に接触して挿通されている。
【0044】
薄板フィン14の屈曲部16の先端部は、図1で説明したヒートシンクと同様に、隣接する薄板フィン14の屈曲部16の基部に嵌め込まれて、固定されて平行に配置されている。更に、切り起こし部の先端面が隣接する薄板フィンに接して固定される。
【0045】
ここで、フィンを扁平状ヒートパイプに固定するときに、フィンとヒートパイプが接している部分を直接機械的にかしめると、扁平状ヒートパイプ内の作動液が移動する通路(蒸気流路)が塞がれて、熱移動機能が著しく低下してしまう。このため、本発明のヒートシンクでは、放熱フィンと扁平状ヒートパイプとは、上述した屈曲部の扁平状ヒートパイプが挿通する開口部以外の部分が、半田、ダボ、かしめ等で接合されることによって固定される。
【0046】
従って、この発明においては、扁平状ヒートパイプを直接かしめることなく、屈曲部(扁平状ヒートパイプが挿通する開口部以外の部分)をかしめることによって、扁平状ヒートパイプ内の上記流路を閉塞させることなく、扁平状ヒートパイプと放熱フィンの接触を強化する。例えば、屈曲部の一方の側にエンボス加工を施し、他方の側にエンボス加工によって形成されたボスを受ける孔を設け、当該ボスを孔に嵌め合わせた後、ボスをかしめて変形させることによって、薄板フィンの強度を高めると共に、薄板フィンと扁平状ヒートパイプの熱的な接続を確実にする。
【0047】
この発明のヒートシンクにおいては、厚さの薄い扁平状ヒートパイプを用いるので、ヒートパイプ内を移動する作動液の流路を確保することが望ましい。このような扁平状ヒートパイプとして次のようなヒートパイプがある。
即ち、扁平かつ管形状の密閉されたコンテナと、コンテナの扁平断面における縦方向または横方向に相互に接触して配列された複数のウイック構造体と、コンテナ内に封入された作動液と、気相の作動液が通る空洞部と、を有し、ウイック構造体同士の接触部が鋭角部を形成している、扁平型ヒートパイプである。ウイック構造体が、対向配置された複数の断面半楕円型焼結金属からなっており、断面半楕円型焼結金属の断面直線部がコンテナの上部内壁および下部内壁にそれぞれ接触し、断面半楕円型焼結金属のそれぞれの頂部が接触し、鋭角の湾曲部が、少なくとも断面半楕円型焼結金属のそれぞれの頂部の接触部からなっている
【0048】
図8は、この発明の扁平状ヒートパイプの1つの態様を説明する断面図である。図8に示すように、この発明の扁平状ヒートパイプ30は、管形状のコンテナを扁平加工して形成された密閉されたコンテナ32と、コンテナ32内に長手方向に配置されたウイック構造体33と、空洞部36と、コンテナ内に封入された作動液とを備えている。
【0049】
上述したウイック構造体33が4つの半円柱状焼結金属33からなっており、半円柱状焼結金属33の上端部および下端部がコンテナ32の上部内壁35および下部内壁35にそれぞれ接触し、半円柱状焼結金属33の頂部が相対する半円柱状焼結金属33の頂部にそれぞれ接触し、鋭角の湾曲部34が、半円柱状焼結金属33のそれぞれの頂部によって形成される接触部34および、半円柱状焼結金属33の側面によって形成される接触部34、半円柱状焼結金属33の側面によって形成される接触部34からなっている。
【0050】
鋭角の湾曲部は、上述したように、特に毛細管力が強く働き、それぞれの頂部によって形成される接触部34、および、側面によって形成される接触部34の部分をコンテナの長手方向に沿って放熱部から吸熱部に作動液が毛細管力によって迅速に移動する。同時に、扁平加工されたコンテナ内の半円柱状焼結金属33の外周面とコンテナ32の内壁面35によって形成される空洞部36を、コンテナの長手方向に沿って吸熱部から放熱部へと蒸発した作動液が流れる流路、即ち、蒸気流路として十分に確保することができる。
【0051】
上述したように、この発明によると、放熱フィンの強度を高め、放熱フィンとヒートパイプの間の熱抵抗が小さく、冷却風の方向を規制することなく、放熱効率の高い薄型・小型のヒートシンクを提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ヒートシンク
2 放熱フィン部
3 扁平状ヒートパイプ
4 薄板フィン
5 薄板部材
6 屈曲部
6a 屈曲部の基部
6b 屈曲部の先端部
7 開口部
8 屈曲部の内側の対向する面
10 ヒートシンク
12 放熱フィン部
13 扁平状ヒートパイプ
14 薄板フィン
15 薄板部材
16 屈曲部
17 開口部
18 切り起こし部
19 切り起こし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がU字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に形成された開口部とを備えた薄板フィンが所定間隔で平行に複数配置された放熱フィン部と、
前記開口部に挿通されて、前記U字形の屈曲部の直線部分が、その上面および下面に接触することにより前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンク。
【請求項2】
前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部が嵌め込まれて連結されている、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
上辺及び下辺にそれぞれ平らな切り起し部を備えた扁平状の開口部と、前記開口部の長手方向両側に形成された屈曲部とを備えた薄板フィンを所定間隔で平行に複数配置した放熱フィン部と、
前記切り起し部に上面および下面がそれぞれ接触して前記開口部に挿通されて、前記放熱フィン部に熱的に接続された扁平状ヒートパイプとを備えたヒートシンク。
【請求項4】
前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部が嵌め込まれて連結されている、請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項5】
所定形状の薄板部材に、断面が略U字形の屈曲部と、前記屈曲部の中央に開口部を形成して薄板フィンを調製し、
前記薄板フィンの前記屈曲部の基部に、隣接する薄板フィンの前記屈曲部の先端部を嵌め込んで、複数の薄板フィンを連結し、
前記複数の薄板フィンの前記開口部に扁平状ヒートパイプを挿通して、前記U字形の屈曲部の直線部分を前記扁平状ヒートパイプの上面および下面に接触させることを特徴とする、ヒートシンクの製造方法。
【請求項6】
所定形状の薄板部材に、上辺及び下辺にそれぞれ平らな切り起し部を備えた扁平状の開口部と、前記開口部の長手方向両側に、折り重ねによって形成された屈曲部とを備えた薄板フィンを調製し、
前記切り起こし部の先端が隣接する薄板フィンと接触するように、前記薄板フィンを平行に複数配置して放熱フィン部を形成し、
前記切り起し部に上面および下面にそれぞれ接触して、前記開口部に扁平状ヒートパイプを挿通することを特徴とする、ヒートシンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−49415(P2011−49415A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197685(P2009−197685)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】