説明

ビニル・シス−ポリブタジエンゴム及びそれを用いたブタジエンゴム組成物

本発明は、1,2−ポリブタジエンと、該1,2−ポリブタジエンより融点の低い、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質とを含有するビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、1,2−ポリブタジエンと高分子物質とが物理的及び/又は化学的に吸着した状態で分散していることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及びその製造方法に関するものであり、これによりダイスウェル比が小さくて、優れた押し出し加工性、作業性などを示し、タイヤのサイド・トレッド等において求められる優れた特性を示す加硫物を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、融点170℃以上の高融点の1,2−ポリブタジエンと、ポリイソプレンや低融点のポリブタジエンなどとが、シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス中に共存して分散してなる新規なビニル・シス−ポリブタジエンゴムに関し、更に、該ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いたブタジエンゴム組成物に関する。
【背景技術】
ポリブタジエンは、いわゆるミクロ構造として、1,4−位での重合で生成した結合部分(1,4−構造)と1,2−位での重合で生成した結合部分(1,2−構造)とが分子鎖中に共存する。1,4−構造は、更にシス構造とトランス構造の二種に分けられる。一方、1,2−構造は、ビニル基を側鎖とする構造をとる。
従来、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム組成物の製造方法は、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、及びこれらのハロゲン化族炭化水素、例えばクロルベンゼンなどの不活性有機溶媒で行われてきた。しかし、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などの溶媒を用いると重合溶液の粘度が高く撹拌、伝熱、移送などに問題があり、溶媒の回収には過大なエネルギーが必要であった。又、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素系の溶媒は毒性の為、発癌作用の為に環境にとって非常に危険性のあるものであった。
上記の製造方法としては、前記の不活性有機溶媒中で水、可溶性コバルト化合物と一般式AlR3−n(但しRは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2の数字)で表せる有機アルミニウムクロライドから得られた触媒を用いて1,3−ブタジエンをシス−1,4重合してシス−ポリブタジエンゴムを製造して、次いでこの重合系に1,3−ブタジエン及び/又は前記溶媒を添加するか或いは添加しないで可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但しRは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表せる有機アルミニウム化合物と二硫化炭素とから得られるシンジオタクチック1,2重合触媒を存在させて1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合(以下「1,2重合」と略す)する方法(例えば、特公昭49−17666号公報(特許文献1)、特公昭49−17667号公報(特許文献2)参照)は公知である。
また、例えば、特公昭62−171号公報(特許文献3)、特公昭63−36324号公報(特許文献4)、特公平2−37927号公報(特許文献5)、特公平2−38081号公報(特許文献6)、特公平3−63566号公報(特許文献7)には、二硫化炭素の存在下又は不在下に1,3−ブタジエンをシス−1,4重合して製造したり、製造した後に1,3−ブタジエンと二硫化炭素を分離・回収して二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンや前記の不活性有機溶媒を循環させる方法などが記載されている。更に特公平4−48815号公報(特許文献8)には配合物のダイスウェル比が小さく、その加硫物がタイヤのサイドウォールとして好適な引張応力と耐屈曲亀裂成長性に優れたゴム組成物が記載されている。
また、特開2000−44633号公報(特許文献9)には、n−ブタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、及びブテン−1などのC留分を主成分とする不活性有機溶媒中で製造する方法が記載されている。この方法でのゴム組成物が含有する1,2−ポリブタジエンは短繊維結晶であり、短繊維結晶の長軸長さの分布が繊維長さの98%以上が0.6μm未満であり、70%以上が0.2μm未満であることが記載され、得られたゴム組成物はシス−1,4−ポリブタジエンゴムの成形性や引張応力、引張強さ、耐屈曲亀裂成長性などを改良されることが記載されている。
しかしながら、用途によっては、種々の特性が改良されたゴム組成物が求められていた。
【特許文献1】 特公昭49−17666号公報
【特許文献2】 特公昭49−17667号公報
【特許文献3】 特公昭62−171号公報
【特許文献4】 特公昭63−36324号公報
【特許文献5】 特公平2−37927号公報
【特許文献6】 特公平2−38081号公報
【特許文献7】 特公平3−63566号公報
【特許文献8】 特公平4−48815号公報
【特許文献9】 特開2000−44633号公報
【発明の開示】
本発明は、タイヤなどの製造に際し、ダイスウェル比が小さくて、優れた押し出し加工性、作業性などを示し、また、加硫したときに、タイヤのサイド・トレッド等において求められる優れた耐破壊特性、耐摩耗性、滑り摩擦抵抗性などを示し、更に耐屈曲亀裂成長性が非常に良好で、且つ高剛性である加硫物となるブタジエンゴム組成物を与えるビニル・シス−ポリブタジエンゴムを提供することを目的とし、更に、上記優れた特性を有するブタジエンゴム組成物、特にタイヤ用ブタジエンゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明は、下記構成により、上記目的を達成した。
1.1,2−ポリブタジエンと、該1,2−ポリブタジエンより融点の低い、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質とを含有するビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、1,2−ポリブタジエンと高分子物質とが物理的及び/又は化学的に吸着した状態で分散していることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
2.ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、前記1,2−ポリブタジエン、及び前記高分子物質が短い結晶繊維状及び/又は粒子状で分散していることを特徴とする上記1.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
3.前記1,2−ポリブタジエンが融点170℃以上の1,2−ポリブタジエンであり、前記高分子物質がポリイソプレン、融点150℃以下の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする上記1.または2.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
4.前記不飽和高分子物質を1,2−ポリブタジエンの結晶繊維とシス−ポリブタジエンゴムの合計に対して0.01〜50質量%の範囲で含まれていることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
5.前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの25℃におけるトルエン溶液粘度が10〜150の範囲にあることを特徴とする上記1.〜4.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
6.前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの[η]が1.0〜5.0の範囲にあることを特徴とする上記1.〜5.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
7.前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの1,4−シス構造含有率が80質量%以上の範囲にあることを特徴とする上記1.〜6.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
8.ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムのムーニー粘度が10〜50の範囲にあることを特徴とする上記1.〜7.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
9.高分子物質が沸騰n−ヘキサン不溶解分であることを特徴とする上記1.〜8.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
10.ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、前記1,2−ポリブタジエンが短い結晶繊維状で、前記高分子物質が粒子状で分散しており、且つ、前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維が前記高分子物質の粒子の中に分散していることを特徴とする上記1.〜9.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
11.前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維が、前記高分子物質の粒子に含有されずに前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中にも分散しており、概マトリックス中に分散している短い結晶繊維の長軸長が0.2〜1,000μmの範囲であり、かつ、該高分子物質の粒子中に分散している前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維の長軸長が0.01〜0.5μmの範囲であることを特徴とする上記11に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
12.上記1.又は2.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムを、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、又はこれらの少なくとも2種のブレンドゴムから選ばれたゴム100重量部に対して、10〜300重量部配合したことを特徴とするブタジエンゴム組成物。
13.上記1.〜11.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及び/又は上記13.に記載のブタジエンゴム組成物を用いたことを特徴とするタイヤ用ブタジエンゴム組成物。
14.1,3−ブタジエンを、炭化水素系溶媒中にて、シス−1,4重合触媒を用いてシス−1,4重合させ、次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を共存させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンを生成せしめ、しかる後、得られた重合反応混合物より生成したビニル・シス−ポリブタジエンゴムを分離回収して取得するビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法において、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質を、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造系内に添加する工程を含むことを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
15.前記高分子物質が、ポリイソプレン、融点0℃〜150℃の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記14.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
16.前記高分子物質の前記製造系内への添加量が、取得されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対して0.01〜50質量%の範囲であることを特徴とする上記14.又は15.に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
17.前記高分子物質を前記製造系内に添加する工程が、前記シス−1,4重合を行う工程から、1,2重合終了後の得られた重合反応混合物より生成したビニル・シス−ポリブタジエンゴムを分離回収する工程までの間の任意の時点で、重合反応混合物中に行われることを特徴とする上記14.〜16.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
18.前記炭化水素系溶媒が、溶解パラメーターが9.0以下の炭化水素系溶媒であることを特徴とする上記14.〜17.のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
19.上記14.〜18.のいずれかに記載の製造方法で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、又はこれらの少なくとも2種のブレンドゴムから選ばれたゴム100質量部に対して、10〜300質量部配合したことを特徴とするブタジエンゴム組成物。
20.上記14.〜18.のいずれかに記載の製造方法で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及び/又は上記12、13または19に記載のブタジエンゴム組成物を用いたことを特徴とするタイヤ用ブタジエンゴム組成物。
本発明のビニル・シス−ポリブタジエンゴム(以下「VCR」と略す)は、好ましい態様では、1,2−ポリブタジエンが、融点170℃以上の1,2−ポリブタジエンであり、この1,2−ポリブタジエンより融点の低い、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質(以下「不飽和高分子物質」と略すことがある)が、ポリイソプレン、融点170℃未満の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種からなるものであって、該融点170℃以上の1,2−ポリブタジエンと、該不飽和高分子物質とが、シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス中に共存して分散してなる新規なVCRである。
この本発明に係るVCRでは、非常に強固なポリマー間の相互作用を発現し、優れた補強成分である高融点の1,2−ポリブタジエンと、ポリイソプレンなどの比較的低融点の不飽和高分子物質とが共存する結果、従来のVCRに比べて、共存する不飽和高分子物質の相溶効果により、高融点の1,2−ポリブタジエンの、マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムへの分散性が著しく向上され、その結果、優れた補強成分である高融点の1,2−ポリブタジエンの含有量を増加することが可能となる。
上記の如き本発明に係るVCRの特性は、タイヤ製品の製造やその他の用途において強く要望される諸物性を著しく向上させることを可能にする。特に本発明に係るVCRをタイヤ用ブタジエンゴム組成物に用いると、該組成物は、タイヤ製造において、ダイスウェル比(押出し時の配合物の径とダイオリフィス径の比)が小さくて、優れた押し出し加工性、作業性などを示す。また、該組成物の加硫物は、タイヤの主にサイド・トレッド等において求められる優れた耐破壊特性、耐摩耗性、滑り摩擦抵抗性などを示す。更に、耐屈曲亀裂成長性が非常に良好で、且つ高剛性であるので、カーボンやシリカ等の補強材の使用量を低減することができ、タイヤの軽量化による低燃費化を可能にする。従って、本発明に係るVCRをサイド・トレッド等の素材として使用したタイヤは、優れた走行安定性、高速耐久性を示し、且つ低燃費化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
図1は不飽和高分子物質の、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維との関連における分散態様の一つの概念図である。
図2は不飽和高分子物質の、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維との関連における分散態様の他の一つの概念図である。
図3は不飽和高分子物質の、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維との関連における分散態様の更に他の一つの概念図である。
図4は不飽和高分子物質の、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維との関連における分散態様のなお更に他の一つの概念図である。
図5は比較例1で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの微細構造を示す電子顕微鏡で見た図である。
図6は実施例1で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの微細構造を示す電子顕微鏡で見た図である。
図7は実施例3で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの微細構造を示す電子顕微鏡で見た図である。
図8は実施例4で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの微細構造を示す電子顕微鏡で見た図である。
なお、図中の符号1はマトリックス、2は融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維、3は不飽和高分子物質の微粒子である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のVCRは、一般に次のような構成となっている。即ち、一般に、(1)融点が170℃以上である1,2−ポリブタジエンが1〜50質量部、(2)シス−ポリブタジエンゴム100質量部、及び(3)上記(1)と(2)の総量に対して0.01〜50質量%の不飽和高分子物質からなっている。また、一般に、(1)成分の融点が170℃以上である1,2−ポリブタジエンは、平均の単分散繊維結晶の短軸長が0.2μm以下、アスペクト比が10以下であり、且つ平均の単分散繊維結晶数が10以上の短繊維状であるところの結晶繊維を形成している。
上記(1)成分の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維としては、平均の単分散繊維結晶の短軸長が0.2μm以下、好ましくは、0.1μm以下であり、また、アスペクト比が10以下、好ましくは、8以下であり、且つ平均の単分散繊維結晶数が10以上、好ましくは、15以上の短繊維状であり、かつ、融点が170℃以上、好ましくは、190〜220℃であることが望ましい。
上記(2)成分のシス−ポリブタジエンゴムとしては、下記の特性を有することが望ましい。即ち、ムーニー粘度(ML1+4100℃、以下「ML」と略す)が好ましくは10〜50、好ましくは10〜40のものとする。そうすることにより、配合時の作業性が向上し、また、上記(1)成分の(2)成分への分散性が向上するなどの効果が得られる。また、(2)成分のシス−ポリブタジエンゴムは、次の特性を有することが望ましい。即ち、トルエン溶液粘度(センチポイズ/25℃、以下「T−cp」と略す)が好ましくは10〜150、より好ましくは10〜100であり、[η](固有粘度)が1.0〜5.0、好ましくは1.0〜4.0であることが望ましい。また、1,4−シス構造含有率が80質量%以上、好ましくは90質量%以上であり、実質的にゲル分を含有しないことが望ましい。ここで、実質的にゲル分を含有しないとは、トルエン不溶解分が0.5質量%以下であることを意味する。
上記のシス−1,4重合によって得られたポリブタジエンゴムの末端及び/又は主鎖を変性してもよい。変性剤として、少なくともアミノ基とアルコキシ基とを含有する有機珪素化合物、アルコキシ基を含有する有機珪素化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ハロゲン系化合物、ヘテロ三員環化合物などを用いることができる。変性剤の使用量は、生成したポリブタジエン(ポリブタジエンゴム)100gに対して0.01〜150ミリモル、変性剤の使用量が少ないと、変性効果が現れにくい。また、使用量が多すぎると、ポリブタジエン中に未反応変性剤が残存しやすくなり、その除去に手間がかかるので、好ましくない。なお、変性物のムーニー粘度が変性前と比較して1以上増加していることが好ましい。反応を促進するために、有機過酸化物を添加することができる。上記の方法により得られる変性ポリブタジエンは、その繰り返し単位の80質量%以上がシス1,4構造を持ち、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20〜80の範囲にあり、ゲルパーミエーション法による重量平均分子量が200,000〜1,000,000の範囲にあることが望ましい。また、ミクロ構造中のビニル構造含有量が15質量%以下であることが好ましい。
ここで、トルエン不溶解分は、試料ゴム10gと400mlのトルエンを三角フラスコに入れてRT(25℃)にて完全溶解させ、その後200メッシュの金網を設置した濾過器を用い上記溶液を濾過し、濾過後に金網に付着したゲル分を言い、上記割合はゲルが付着した金網を真空乾燥し付着量を測定し、試料ゴムに対する百分率で計測した値を指す。
また、[η](固有粘度)は試料ゴム0.1gと100mlのトルエンを三角フラスコに入れ、30℃で完全溶解させ、その後30℃にコントロールされた恒温水槽中で、キャノンフェンスケ動粘度計に10mlの上記溶液を入れ、溶液の落下時間(T)を測定し、下記式により求めた値を[η]とする。
ηsp=T/T−1(T:トルエンだけの落下時間)
ηsp/c=[η]+k’[η]
(ηsp:比粘度、k’:ハギンズ定数(0.37)、C:試料濃度(g/ml))
上記(1)成分の1,2−ポリブタジエン結晶繊維と(2)成分のシス−ポリブタジエンゴムの割合は、上記のとおり(2)成分のシス−ポリブタジエンゴム100質量部に対して(1)成分の1,2−ポリブタジエン結晶繊維が1〜50質量部、好ましくは、1〜30質量部であることが望ましい。上記範囲内であると、50質量部を超えて多量の場合の、シス−ポリブタジエンゴム中の1,2−ポリブタジエン結晶繊維の短繊維結晶が大きくなりやすく、その分散性が悪くなることや、1質量部未満の少量の場合の、短繊維結晶による補強性が低下することを回避でき、したがって、特長となる弾性率・耐屈曲亀裂成長性・酸化劣化性等が発現し難く、また加工性が悪化するなどの問題が起こりにくいため好ましい。また、(3)成分の不飽和高分子物質の割合は、上記のとおりVCRの0.01〜50質量%、好ましくは0.01〜30質量%であることが望ましい。上記範囲内であることは、上記(1)成分の1,2−ポリブタジエン結晶繊維の凝集による分散性低下抑制、それに伴うVCRの諸物性の低下抑制などの点で好ましい。
また、(1)成分の融点が170℃以上である1,2−ポリブタジエンと(3)成分の不飽和高分子物質との割合は、上記のとおり(1)成分100質量部に対して(3)成分0.02〜100質量部、好ましくは0.05〜80質量部であることが望ましく、また、(1)成分と(3)成分の合計量が、上記のとおりマトリックス成分である(2)成分のシス−ポリブタジエンゴム100質量部に対して1.01〜100質量部、好ましくは1.03〜90質量部であることが望ましい。
以下に、本発明のVCRの製造方法について詳細に説明する。
本発明のVCRの製造においては、一般に炭化水素系溶媒を用いて1,3−ブタジエンの重合を行う。この炭化水素系溶媒としは、溶解度パラメーター(以下「SP値」と略す)が9.0以下である炭化水素系溶媒が好ましく、更に好ましくは8.4以下の炭化水素系溶媒である。溶解度パラメーターが9.0以下である炭化水素系溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素であるn−ヘキサン(SP値:7.2)、n−ペンタン(SP値:7.0)、n−オクタン(SP値:7.5)、シクロヘキサン(SP値:8.1)、n−ブタン(SP値:6.6)等が挙げられる。中でも、シクロヘキサンなどが好ましい。
これらの溶媒のSP値は、ゴム工業便覧(第四版、社団法人:日本ゴム協会、平成6年1月20日発行;721頁)などの文献で公知である。
SP値が9.0よりも小さい溶媒を使用することで、シス−ポリブタジエンゴム中への1,2−ポリブタジエン結晶繊維の短繊維結晶の分散状態が本発明で期待する如く形成され、優れたダイスウェル特性や高引張応力、引張強さ、高屈曲亀裂成長性能を発現するので好ましい。
まず、1,3−ブタジエンと前記溶媒とを混合し、次いで、得られた溶液中の水分の濃度を調節する。水分は、該溶液中の、後記シス−1,4重合触媒として用いられる有機アルミニウムクロライド1モル当たり、好ましくは0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜1.0モルの範囲である。この範囲では充分な触媒活性得られて好適なシス−1,4構造含有率や分子量が得られつつ、重合時のゲルの発生を抑制できることにより重合槽などへのゲルの付着を防ぐことができ、連続重合時間を延ばすことができるので好ましい。水分の濃度を調節する方法は公知の方法が適用できる。多孔質濾過材を通して添加・分散させる方法(特開平4−85304号公報)も有効である。
水分の濃度を調節して得られた溶液には、シス−1,4重合触媒の一つとして、有機アルミニウムクロライドを添加する。有機アルミニウムクロライドとしては、一般式AlR3−nで表される化合物が好ましく用いられ、その具体例としては、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、ジシクロヘキシルアルミニウムモノクロライド、ジフェニルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライドなどを好適に挙げることができる。有機アルミニウムクロライドの使用量のとしては、1,3−ブタジエンの全量1モル当たり0.1ミリモル以上が好ましく、0.5〜50ミリモルがより好ましい。
次いで、有機アルミニウムクロライドを添加した混合溶液に、シス−1,4重合触媒の他の一つとして、可溶性コバルト化合物を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合させる。可溶性コバルト化合物としては、用いる炭化水素系溶媒又は液体1,3−ブタジエンに可溶なものであるか、又は、均一に分散できる、例えばコバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体、コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体、コバルトオクトエート、コバルトナフテネート、コバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩、塩化コバルトピリジン錯体、塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などを挙げることができる。可溶性コバルト化合物の使用量は、1,3−ブタジエンの1モル当たり0.001ミリモル以上が好ましく、0.005ミリモル以上であることがより好ましい。また可溶性コバルト化合物に対する有機アルミニウムクロライドのモル比(Al/Co)は10以上であり、特に50以上であることが好ましい。また、可溶性コバルト化合物以外にもニッケルの有機カルボン酸塩、ニッケルの有機錯塩、有機リチウム化合物、ネオジウムの有機カルボン酸塩、ネオジウムの有機錯塩を使用することも可能である。
シス−1,4重合の温度は、一般に0℃を超える温度〜100℃、好ましくは10〜100℃、更に好ましくは20〜100℃までの温度範囲である。重合時間(平均滞留時間)は、10分〜2時間の範囲が好ましい。シス−1,4重合後のポリマー濃度が5〜26質量%となるようにシス−1,4重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽、又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて溶液を攪拌混合して行う。重合に用いる重合槽としては高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号に記載された装置を用いることができる。
本発明のVCRの製造では、シス−1,4重合時に、公知の分子量調節剤、例えばシクロオクタジエン、アレン、メチルアレン(1,2−ブタジエン)などの非共役ジエン類、又はエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。又重合時のゲルの生成を更に抑制するために、公知のゲル化防止剤を使用することができる。また、重合生成物のシス−1,4構造含有率は一般に80質量%以上、好ましくは90質量%以上で、ML10〜50、好ましくは10〜40であり、実質的にゲル分を含有しないようにする。
そして、前記の如くして得られたシス−1,4重合反応混合物に、1,2重合触媒として、一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物と二硫化炭素、必要なら前記の可溶性コバルト化合物を添加して、1,3−ブタジエンを1,2重合させて、VCRを製造する。この際、該重合反応混合物に1,3−ブタジエンを添加してもよいし、添加せずに未反応の1,3−ブタジエンを反応させてもよい。一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウムなどを好適に挙げることができる。有機アルミニウム化合物は、1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上、特に0.5〜50ミリモル以上である。二硫化炭素は特に限定されないが水分を含まないものであることが好ましい。二硫化炭素の濃度は20ミリモル/L以下、特に好ましくは0.01〜10ミリモル/Lである。二硫化炭素の代替として公知のイソチオシアン酸フェニルやキサントゲン酸化合物を使用してもよい。
1,2重合の温度は、一般に0〜100℃、好ましくは10〜100℃、更に好ましくは20〜100℃の温度範囲である。1,2重合を行う際の重合系には、前記のシス−1,4重合反応混合物100質量部当たり1〜50質量部、好ましくは1〜20質量部の1,3−ブタジエンを添加することで、1,2重合時の1,2−ポリブタジエンの収量を増大させることができる。重合時間(平均滞留時間)は、10分〜2時間の範囲が好ましい。1,2重合後のポリマー濃度が9〜29質量%となるように1,2重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽、又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて重合溶液を攪拌混合して行う。1,2重合に用いる重合槽としては、1,2重合中に更に高粘度となりポリマーが付着しやすいので、高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
本発明のVCRの製造においては、前記のようにシス−1,4重合、次いで1,2重合を行ってVCRを製造するに当たり、融点の低い繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質を、VCRの製造系内に添加する工程を含む。VCR製造後、たとえば配合時に添加しても本願発明の効果は得られない。この不飽和高分子物質の製造系内への添加は、前記シス−1,4重合を行う際から、前記1,2重合を行う際までの間の任意の時点で重合反応混合物中に添加することが好ましく1,2重合を行うときがより好ましい。
上記不飽和高分子物質としては、ポリイソプレン、融点170℃未満の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、酸素結合を含有する高分子化合物、及びこれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
ポリイソプレンとしては、通常の合成ポリイソプレン(シス構造90質量%以上のシス−1,4−ポリイソプレン等)、液状ポリイソプレン、トランス−ポリイソプレン等が挙げられる。
融点170℃未満の結晶性ポリブタジエンは、好ましくは融点0℃〜150℃の結晶性ポリブタジエンであり、たとえば、低融点1,2−ポリブタジエン、トランス−ポリブタジエン等が挙げられる。
液状ポリブタジエンとしては、固有粘度[η]=1以下の極低分子のポリブタジエン等があげられる。
酸素結合を含有する高分子化合物としては、エーテル基、エポキシ基、カルボキシル基、エステル基、水酸基、カルボニル基を含有する化合物であることが好ましい。具体的化合物として、例えばフェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、エポキシ化ポリブタジエン、ポリエステル、エポキシ化スチレンブタジエン共重合体、ポリアリールエーテル、アリルエーテルコポリマーなどが挙げられる。酸素結合を含有する高分子化合物を重合系に添加することにより、ビニル・シスポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシスポリブタジエンと1,2−ポリブタジエン結晶繊維の界面親和性が変化し、結果として1,2−ポリブタジエン結晶繊維の繊維結晶の単分散化及びビニル・シスポリブタジエンゴムの諸物性の向上に効果がある。
また、これらの誘導体としては、たとえば、イソプレン・イソブチレン共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、液状エポキシ化ポリブタジエン、液状カルボキシル変性ポリブタジエン等及びこれら誘導体の水添物等が挙げられる。
上記各不飽和高分子物質の中でも、イソプレン、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、融点70℃〜110℃の1,2−ポリブタジエンが好ましく用いられる。また、上記各不飽和高分子物質は、単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
上記のよう不飽和高分子物質を添加すると、前記のとおり、得られるVCRにおいて、不飽和高分子物質の相溶効果により、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの、マトリックス成分のシス−ポリブタジエンゴム中への分散性が著しく向上され、その結果得られるVCRの特性が優れたものとなる。
不飽和高分子物質の添加量は、取得されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対して0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、いずれの時点での添加でも、添加後10分〜3時間攪拌することが好ましく、更に好ましくは10分〜30分間攪拌することである。尚、酸素結合を含有する高分子化合物の場合、添加量は、得られたビニル・シスポリブタジエンゴムに対して好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。その場合の添加方法は特に限定するものでなく、ビニル・シスポリブタジエンゴムを製造するシス1,4重合時あるいは1,2重合時、及び/または、ビニル・シスポリブタジエンゴムの重合終了時でも良い。好ましくは、1,2重合時の添加である。添加後、好ましくは、10分〜3時間攪拌する。好ましくは、10分〜30分である。
上記不飽和高分子物質に加え、酸素結合を含有する有機化合物を添加することも好ましい。酸素結合を含有する有機化合物としては、エーテル基、エポキシ基、カルボキシル基、エステル基、水酸基、カルボニル基を含有する化合物であることが好ましく、たとえば、酸無水物、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族エーテル・芳香族エーテル、脂肪族カルボン酸・芳香族カルボン酸・不飽和カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル・芳香族カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸エステル等があげられる。添加量は、得られたビニル・シスポリブタジエンゴムに対して好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。その場合の添加方法は特に限定するものでなく、ビニル・シスポリブタジエンゴムを製造するシス1,4重合時あるいは1,2重合時、及び/または、ビニル・シスポリブタジエンゴムの重合終了時でも良い。好ましくは、1,2重合時の添加である。添加後、好ましくは、10分〜3時間攪拌する。好ましくは、10分〜30分である。
重合反応が所定の重合率に達した後、常法に従って公知の老化防止剤を添加することができる。老化防止剤の代表としては、フェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP)、硫黄系の4.6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく、老化防止剤の添加はVCR100質量部に対して0.001〜5質量部である。次に、重合停止剤を重合系に加えて重合反応を停止させる。その方法としては、例えば、重合反応終了後、重合反応混合物を重合停止槽に供給し、この重合反応混合物にメタノール、エタノールなどのアルコール、水などの極性溶媒を大量に投入する方法、塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、安息香酸などの有機酸、塩化水素ガスを重合反応混合物に導入する方法などの、それ自体公知の方法が挙げられる。次いで、通常の方法に従い生成したVCRを分離回収し、洗浄、乾燥して目的のVCRを取得する。
このようにして取得される本発明のVCRは、一般に、その各成分比率、即ち融点が170℃以上である1,2−ポリブタジエン、シス−ポリブタジエンゴム、及び不飽和高分子物質の比率が前記のとおりであり、また、シス−ポリブタジエンゴムのミクロ構造は、80質量%以上がシス−1,4−ポリブタジエンであり、その残余がトランス−1,4−ポリブタジエン及びビニル−1,2−ポリブタジエンである。そして、このシス−ポリブタジエンゴムと不飽和高分子物質は、それぞれ単独(すなわち未反応状態)では、沸騰n−ヘキサン可溶分であり、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエン及びそれに不飽和高分子物質が物理的/化学的に吸着したものは、沸騰n−ヘキサン不溶分(以下「H.I」と略す)である。この融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンは、一般に融点が170〜220℃であり、前記のような短繊維状の結晶繊維である。また、シス−ポリブタジエンゴムのMLは、前記のように10〜50、好ましくは20〜40である。
また、本発明のVCRは、前記のとおり、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンと不飽和高分子物質とが、シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス中に均一に分散されてなるものである。
本発明のVCRにおいては、一般に、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンは前記のとおりの結晶繊維として分散されている。また、不飽和高分子物質は、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維との関連において、種々の態様で分散され得る。この分散態様として、図1に概念的に示すように、マトリックス1中に、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維2と、不飽和高分子物質の微粒子3とが、それぞれ別個に分散されている態様、図2に概念的に示すように、マトリックス1中に、不飽和高分子物質の微粒子3が1,2−ポリブタジエンの結晶繊維2に付着した状態で分散されている態様、図3に概念的に示すように、マトリックス1中に、1,2−ポリブタジエンの結晶繊維2が不飽和高分子物質の微粒子3に付着した状態で分散されている態様、図4に概念的に示すように、マトリックス1中に、不飽和高分子物質の微粒子3中に1,2−ポリブタジエンの結晶繊維2が包含、分散された状態で分散されている態様などが挙げられ、図1〜4に示す分散態様の2種又はそれ以上が混在している態様もあり得る。図1〜4中、1はマトリックス、2は融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンの結晶繊維、3は不飽和高分子物質の微粒子を表す。
上記本発明のVCRの製造方法においては、生成したVCRを分離取得した残余の、未反応の1,3−ブタジエン、炭化水素系溶媒及び二硫化炭素などを含有する重合反応混合物母液から、通常、蒸留により1,3−ブタジエン、炭化水素系溶媒を分離し、また、二硫化炭素の吸着分離処理、あるいは二硫化炭素付加物の分離処理によって二硫化炭素を分離除去し、二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと炭化水素系溶媒とを回収する。また、上記重合反応混合物母液から、蒸留によって3成分を回収して、この蒸留物から上記の吸着分離あるいは二硫化炭素付着物分離処理によって二硫化炭素を分離除去することによっても、二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと炭化水素系溶媒とを回収することもできる。前記のようにして回収された二硫化炭素と炭化水素系溶媒とは新たに補充した1,3−ブタジエンを混合して再使用することができる。
尚、本発明のVCRにおける沸騰n−ヘキサン可溶分のポリスチレン換算質量平均分子量は、単分散繊維結晶化が容易に行えるため、好ましくは30万〜80万であり、より好ましくは30万〜60万である。また、VCRの沸騰n−ヘキサン可溶分のトルエン溶液粘度(T−CP)とムーニー粘度(ML)の関係T−CP/MLが1以上であることが好ましく、より好ましくは1〜4である。
上記VCRの製造方法によれば、触媒成分の操作性に優れ、高い触媒効率で工業的に有利に本発明のVCRを連続的に長時間製造することができる。特に、重合槽内の内壁や攪拌翼、その他攪拌が緩慢な部分に付着することもなく、高い転化率で工業的に有利に連続製造できる。
本発明のVCRは、単独で、又は他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要ならばプロセス油で油展し、次いでカーボンブラックなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤その他通常の配合剤を加えて加硫し、タイヤ用として有用であり、タイヤ部材としては特に限定されずサイドウォール、又は、トレッド、スティフナー、ビードフィラー、インナーライナー、カーカス、タイヤコードコーティング、ベーストレッドなどとして、タイヤの種類としては特に限定されず高硬度タイヤ、乗用車タイヤ、バスやトラックなどの大型車両タイヤ、フォークリフトタイヤ、バン・ライトトラックタイヤ、SUV(4X4用)タイヤ、モーターサイクルタイヤ、スタッドレスタイヤ、ラジアルタイヤなどに、その他、ホース、ベルト、ゴルフボール、靴底、接着剤、防振ゴム、防音材、その他ポリマー系複合材、その他の各種工業用品等の機械的特性及び耐摩耗性が要求されるゴム用途に使用される。また、プラスチックスの改質剤として使用することもできる。
本発明のVCRに前記の配合剤を加えて混練した組成物は、従来の方法で得られた従来のVCRに比較してダイスウェル比が指数換算で20以下に低下(値が低下すると優れる)し、押出加工性に優れている。
また、本発明のVCR組成物(配合物)を加硫すると硬度や引張応力が向上する。特に100%引張応力の向上が著しく、前記従来の方法で得られた従来のVCRに比較して指数換算で40前後増加(値が増加すると優れる)し、補強効果が大幅に改善される。更に屈曲亀裂成長が著しく改善され、指数換算で30前後増加(値が増加すると優れる)し、屈曲亀裂を抑制する効果を発現する。また、ランフラットタイヤ等で要求される耐熱物性としては酸素等のガス透過性が、同様に従来の方法で得られた従来のVCRに比較して指数換算で5前後低下(値が低下すると優れる)し、酸化劣化に伴う発熱を抑制する効果を示す。
そして、上記の諸物性の発現には、VCR中に分散した1,2−ポリブタジエン結晶繊維は、シス−ポリブタジエンゴム(以下「BR」と略す)のマトリックス中に微細な結晶として単分散化した形態で部分的に分散し、凝集構造を有する大きな1,2−ポリブタジエン結晶繊維と共存していることが好ましい。即ち、BRマトリックス中の単分散化1,2−ポリブタジエン結晶繊維は、平均の単分散繊維結晶の短軸長が0.2μm以下であり、また、アスペクト比が10以下であり、且つ平均の単分散繊維結晶数が10以上の短繊維状であり、且つ、融点が170℃以上であることが好ましい。また、上記融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエン結晶繊維に加えて、上記不飽和高分子物質がBRマトリックス中に分散していることが好ましい。この不飽和高分子物質は、BRマトリックス中に、1,2−ポリブタジエン結晶繊維と高い親和性を持し、該結晶繊維近傍に物理的、化学的に吸着した状態で分散されていること(図2〜4の分散態様)が好ましい。上記のように、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエン結晶繊維と不飽和高分子物質とが共存してBRマトリックス中に分散されることによって、上記の諸物性が優れたものとなり、好ましい。
本発明に係るVCRを他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合したゴム組成物について詳記する。このゴム組成物は、本発明のVCRを、天然ゴム、合成ゴム若しくはこれらの任意の割合のブレンドゴム100質量部に対して、10〜300質量部配合したもの、好ましくは50〜200質量部配合したものが適当である。上記合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが好ましく挙げられる。また、上記VCR及び/又はそれを配合したブタジエンゴム組成物を用いてタイヤ用ブタジエンゴム組成物を好適に製造できる。
本発明のゴム組成物は、前記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得ることができる。
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが用いられる。
加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
充填剤としては、無水珪酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫化鉄、酸化鉄、ベントナイト、亜鉛華、珪藻土、白土、クレイ、アルミナ、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等の無機充填材が挙げられ、また、再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。
上記プロセスオイルとしては、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
【実施例】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。
[実施例1]
窒素ガスで置換した内容30Lの攪拌機付ステンレス製反応槽中に、脱水シクロヘキサン18kgに1.3−ブタジエン1.6kgを溶解した溶液を入れ、コバルトオクトエート4mmol、ジエチルアルミニウムクロライド84mmol及び1.5−シクロオクタジエン70mmolを混入、25℃で30分間攪拌し、シス重合を行った。得られたポリマーのMLは33、T−cpは59、ミクロ構造は1,2構造0.9質量%、トランス−1,4構造0.9質量%、シス−1,4構造98.2質量%であった。シス重合後、得られた重合生成液に、ポリイソプレン(IR)(ML=87、シス−1,4構造98質量%)からなる不飽和高分子物質を5質量%(得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対する百分率)加え、25℃で1時間攪拌を行った。その後直ちに重合液にトリエチルアルミニウム90mmol及び二硫化炭素50mmolを加え、25℃で更に60分間攪拌し、1,2重合を行った。重合終了後、重合生成液を4,6−ビス(オクチルチオメチル)−O−クレゾール1質量%を含むメタノール18Lに加えて、ゴム状重合体を析出沈殿させ、このゴム状重合体を分離し、メタノールで洗浄した後、常温で真空乾燥した。この様にして得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの収率は80%であった。その後、このビニル・シス−ポリブタジエンゴムを沸騰n−ヘキサンで処理、不溶分と可溶分を分離乾燥した。得られた沸騰n−ヘキサン可溶分ポリマーのMLは31、T−cpは57でT−cp/MLの関係は約1.8、ミクロ構造はビニル−1,2構造1.0質量%、トランス−1,4構造0.9質量%、シス−1,4構造98.1質量%であった。また、ポリスチレン換算質量平均分子量は42×10、[η]は1.7であった。ビニル・シス−ポリブタジエンゴムに含まれる短軸長0.2μm以下の短分散繊維結晶の数は400μmあたり100個以上で、アスペクト比は10以下、融点は202℃であった。
このようにして得られたVCRゴムを下記および表1に記載のごとく配合して物性評価に供した。
評価項目と実施条件
混練方法
下記手順に準じて混練する。
[一次配合]
混練装置:バンバリーミキサー(容量1.7L)
回転数:77rpm
スタート温度:90℃
混練手順:
0分;VCR/NR(天然ゴム)投入
0分;フィラー投入
3分;ラムを上げて掃除(15秒)
5分;ダンプ
ダンプ物は引き続き10インチロールにて1分間巻き付け、3回丸め通し後、シート出しした。コンパウンドは2時間以上冷却後、次の手順に準じて二次配合を行った。
[二次配合]
前記一次配合終了後、下記手順に準じて二次配合を行った。
混練装置:10インチロール
ロール温度:40〜50℃
ロール間隙:2mm
混練手順:
(1)0分;ダンプ物の巻き付け及び硫黄・加硫促進剤の投入
(2)2分;切り返し
(3)3分;三角取り・丸め通し後、シート出し
加硫時間
測定装置;JSRキュラストメーター2F型
測定温度;150℃
測定時間;t90×2,×3を加硫時間とした。
加硫条件
加硫装置;プレス加硫
加硫温度; 150℃
[素ゴム物性評価]
ミクロ構造は、赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm−1、トランス967cm−1、ビニル910cm−1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
ムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K6300に準拠して測定した。
トルエン溶液粘度(Tcp)は、ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計 No.400を使用して、25℃で測定した。
100:加硫ゴムの試料サンプルが伸び率100%を示したときの引張り応力
JIS K6301に準じて測定した値
:加硫ゴムの試料サンプルの破断時の引張り強さ
JIS K6301に準じて測定した値
1,2−ポリブタジエン結晶繊維の融点は、示差走査熱量計(DSC)の吸熱曲線のピークポイントにより決定した。
[配合物物性]
ダイスウェル
測定装置;モンサント社製加工性測定装置(MPT)
ダイ形状;円形
L/D;1,10(D=1.5mm)
測定温度;100℃
せん断速度;100sec−1
[加硫物物性]
硬度、反撥弾性及び引張強度は、JIS−K−6301に規定されている測定法に従って測定した。
動的粘弾性のtanδは、レオメトリックス社製RSA2を用いて、温度70℃、周波数10Hz、動歪2%の条件で測定した。
発熱特性およびPS(永久歪)はグッドリッチフレクソメーターを用い、ASTMD623に従い、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、100℃ 25分の条件で測定した。
圧縮永久歪は上島製作所製の圧縮永久歪測定器を用いて、JIS K6301又はASTM D395に従い、温度70℃で22時間の条件で圧縮し、永久歪を測定した。
屈曲亀裂成長性は上島製作所製の亀裂試験機を用いて、ASTM D813に従い、試験片の亀裂が15mm以上の長さに成長するまでの屈曲回数を測定した。
ガス透過性はJISK7126に規定されている測定法に従って測定した。
動的粘弾性のTanδは、レオメトリックス社製RSA2を用いて、温度70℃、周波数10Hz、動歪2%の条件で測定した。

[実施例2]
添加する不飽和高分子物質(添加剤)を表2に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。
比較例1〜4
不飽和高分子物質(添加剤)を添加しなかったこと、あるいは不飽和高分子物質を重合時に添加せず、VCRゴム合成後の配合時に添加した(不飽和高分子物質添加量はVCRに対して不飽和高分子物質10質量%となるような量とした)こと以外は、実施例1と同様にして合成・配合を行った。
表2にビニル・シス−ポリブタジエンゴム組成物の素ゴムデータを示した。表中、単分散繊維結晶数は、観察して短軸長0.2μ以下の結晶を単分散SPB繊維結晶とし、400μmあたりの数を指標とした。
尚、比較例1における高融点SPBのミクロ構造はビニル−1,2構造98.8質量%、トランス−1,4構造0.6質量%、シス−1,4構造0.6質量%、沸騰n−ヘキサン可溶分である(A)マトリックスBRと沸騰n−ヘキサン不溶分である(B)高融点SPBとの比(A/B)は88/12であった。また比較例1において沸騰n−ヘキサン不溶分ポリマーのηsp/cは1.5であった。(ηsp/c:1,2−ポリブタジエン結晶繊維の分子量の尺度、測定温度は135℃、使用溶媒はオルトジクロルベンゼン)
表中、IRはIR2200(JSR(株)製ポリイソプレン)、1,2−PBはRB820(JSR(株)製1,2−ポリブタジエン)である。

[実施例3〜12・比較例3〜5]
添加する高分子物質や溶媒を表3に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。
表中、IRはIR2200(JSR(株)製ポリイソプレン)、液状PBはハイカーCTBN1300×8(宇部興産(株)製、分子量3,500の液状ポリブタジエン、)、エポキシ化PBはエポリードPB3600(ダイセル化学工業(株)製、粘度:45℃−33パスカル秒のエポキシ化ポリブタジエン)、アリルエーテルポリマーはマリアリムAWS−0851(日本油脂(株)製、粘度:100℃−400ストークス)である。

以下にビニル・シス−ポリブタジエンゴム組成物の配合物及び加硫物データを示した。但し、実施例8〜12、比較例4・5については、一次配合時にVCR/NR=100/0、即ちNR(天然ゴム)を加えずに配合した。
100sec、ガス透過性、発熱特性、PS、圧縮永久歪、tanδは指数が少ないほうが優れている。
硬度、M100、TB、EB、TR、ランボーン摩耗、屈曲亀裂成長、反撥弾性は指数が大きいほうが優れている。




図5〜8は、実際に得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの微細構造を示す電子顕微鏡で見た図である。図5は、比較例1のものであり、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンがヒゲ状の結晶となり、マトリックス中に凝集を形成していることがわかる。図6は実施例3、図7は実施例2、図8は実施例4に相当するものであり、それぞれ、図5と比べるとヒゲ状の結晶が形成する凝集が小さく、良好に分散していることがわかる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2−ポリブタジエンと、該1,2−ポリブタジエンより融点の低い、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質とを含有するビニル・シス−ポリブタジエンゴムであって、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、1,2−ポリブタジエンと高分子物質とが物理的及び/又は化学的に吸着した状態で分散していることを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項2】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、前記1,2−ポリブタジエン、及び前記高分子物質が短い結晶繊維状及び/又は粒子状で分散していることを特徴とする請求項1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項3】
前記1,2−ポリブタジエンが融点170℃以上の1,2−ポリブタジエンであり、前記高分子物質がポリイソプレン、融点150℃以下の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項4】
前記不飽和高分子物質を1,2−ポリブタジエンの結晶繊維とシス−ポリブタジエンゴムの合計に対して0.01〜50質量%の範囲で含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項5】
前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの25℃におけるトルエン溶液粘度が10〜150の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項6】
前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの[η]が1.0〜5.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項7】
前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムの1,4−シス構造含有率が80質量%以上の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項8】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴムのムーニー粘度が10〜50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項9】
高分子物質が沸騰n−ヘキサン不溶解分であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項10】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムのマトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中に、前記1,2−ポリブタジエンが短い結晶繊維状で、前記高分子物質が粒子状で分散しており、且つ、前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維が前記高分子物質の粒子の中に分散していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項11】
前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維が、前記高分子物質の粒子に含有されずに前記マトリックス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中にも分散しており、概マトリックス中に分散している短い結晶繊維の長軸長が0.2〜1,000μmの範囲であり、かつ、該高分子物質の粒子中に分散している前記1,2−ポリブタジエンの短い結晶繊維の長軸長が0.01〜0.5μmの範囲であることを特徴とする請求項11に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムを、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、又はこれらの少なくとも2種のブレンドゴムから選ばれたゴム100重量部に対して、10〜300重量部配合したことを特徴とするブタジエンゴム組成物。
【請求項13】
請求項1〜11に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及び/又は請求項12に記載のブタジエンゴム組成物を用いたことを特徴とするタイヤ用ブタジエンゴム組成物。
【請求項14】
1,3−ブタジエンを、炭化水素系溶媒中にて、シス−1,4重合触媒を用いてシス−1,4重合させ、次いで、得られた重合反応混合物中に1,2重合触媒を共存させて、1,3−ブタジエンを1,2重合させて、融点が170℃以上の1,2−ポリブタジエンを生成せしめ、しかる後、得られた重合反応混合物より生成したビニル・シス−ポリブタジエンゴムを分離回収して取得するビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法において、繰り返し単位当たり少なくとも1個の不飽和二重結合を有する高分子物質を、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造系内に添加する工程を含むことを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項15】
前記高分子物質が、ポリイソプレン、融点0℃〜150℃の結晶性ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、及びそれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項14に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項16】
前記高分子物質の前記製造系内への添加量が、取得されるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対して0.01〜50質量%の範囲であることを特徴とする請求項14又は15に記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項17】
前記高分子物質を前記製造系内に添加する工程が、前記シス−1,4重合を行う工程から、1,2重合終了後の得られた重合反応混合物より生成したビニル・シス−ポリブタジエンゴムを分離回収する工程までの間の任意の時点で、重合反応混合物中に行われることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項18】
前記炭化水素系溶媒が、溶解パラメーターが9.0以下の炭化水素系溶媒であることを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、又はこれらの少なくとも2種のブレンドゴムから選ばれたゴム100質量部に対して、10〜300質量部配合したことを特徴とするブタジエンゴム組成物。
【請求項20】
請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及び/又は請求項12、13、19のいずれかに記載のブタジエンゴム組成物を用いたことを特徴とするタイヤ用ブタジエンゴム組成物。

【国際公開番号】WO2005/056663
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516182(P2005−516182)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018417
【国際出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】