説明

ピストンリング張力測定装置

【課題】安定的に適正な張力をピストンリングについて測定できるピストンリング張力測定装置を提供する。
【解決手段】ピストンリング張力測定装置は、被測定ピストンリング5を支持する定盤1と、前記被測定ピストンリング5の外周部分に巻回され、両端側が固定治具4,6で固定される第1のバンド3と、前記被測定ピストンリング5の前記第1のバンド3が巻回されない外周部分に巻回される第2のバンド8と、前記第2のバンド8の一端側を固定する固定治具11と、前記被測定ピストンリング5を縮径させる方向に前記第2のバンド8を移動させる張力付与手段14,15,16と、前記第2のバンド8に付与された張力を測定するロードセル10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等のシリンダに挿入されるピストンリングの張力を測定する張力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンリングの張力を測定する装置として、従来、次の装置が知られている(特許文献1)。ピストンリングを装着したリング保持具を振動板及び上下動板の上に載置し、帯鋼保持具に一端を固定した帯状体をピストンリングの外周に巻回し、片端をロードセルに固定し、ロードセルを移動させ、ピストンリングがシリンダ内周に装着されている状態の合口隙間になるまで縮径させた後、張力を測定する。この際、上下動板でピストンリングに衝撃を与えて、帯状体とピストンリングとの間に生じる巻回時の大きな摩擦力を除去し、振動板を振動させることで、帯状体とピストンリングとの間等に生じる小さな摩擦力を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−311763公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、一本の帯状体をピストンリングの外周に巻回してピストンリングを帯状体で絞り、振動させた後に張力を測定するため、振動を停止した時、ピストンリングが振動を開始した位置からずれやすく、安定的に適正な張力値を得ることができない。また、従来、手動で振動を与えて摩擦力を除去している場合もあるが、上記同様の問題がある。
【0005】
本発明は、安定的に適正な張力をピストンリングについて測定できるピストンリング張力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のピストンリング張力測定装置は、被測定ピストンリングを支持する支持盤と、前記被測定ピストンリングの外周部分に巻回され、両端側が固定手段で固定される第1のバンドと、前記被測定ピストンリングの前記第1のバンドが巻回されない外周部分に巻回される第2のバンドと、前記第2のバンドの一端側を固定する固定手段と、前記被測定ピストンリングを縮径させる方向に前記第2のバンドを移動させる張力付与手段と、前記第2のバンドに付与された張力を測定する張力測定手段とを備えていることを特徴とする。前記第1のバンドと第2のバンドは対向して配置されるのが望ましい。
【0007】
前記支持盤に振動を与える振動発生装置を有していることが好ましい。
【0008】
前記第1のバンドと第2のバンドの交差部分において、一方のバンドに孔が開いており、他方のバンドが前記孔に通されることが好ましい。
【0009】
前記被測定ピストンリングを装着し前記支持盤に載置されるリング保持具を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2本のバンドを使用しているため、1本のバンドを使用した場合に比べ、手動又は自動でピストンリングに振動を与えた後においてもピストンリングの位置が変化せず、安定的に適正な張力をピストンリングについて測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】第1のバンドと第2のバンドの交差部分を示す斜視図である。
【図4】ピストンリングを装着したリング保持具の一部分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1及び図2において、定盤1は平坦な上面を有している平盤で、下面の中央に設けられている振動発生装置2によって定盤1が振動するように構成されている。
【0014】
3は第1のバンドで、薄鋼帯からなる。第1のバンド3は一端側が固定治具4に固定され、被測定ピストンリング5の外周の周方向半分に巻回された状態で、他端側が固定治具6に固定される。2つの固定治具4,6は支持台7上に配置固定されている。
【0015】
8は第2のバンドで、薄鋼帯からなる。第2のバンド8は、一端側が移動治具9を介してロードセル10に接続される。すなわち、移動治具9はロードセル10に固定されており、第2のバンド8のロードセル10側の端部が移動治具9に固定される。この第2のバンド8は被測定ピストンリング5の外周の第1のバンド3が巻回されない周方向半分に巻回された状態で、他端側が固定治具11に固定される。固定治具11は支持台12上に配置固定されている。
【0016】
移動治具9とロードセル10の下方の支持台12部分には、第2のバンド8が延在する方向に長孔13が設けられている。ロードセル10は長孔13内を挿通する連結シャフト14を介して進退ロッド15に連結されている。進退ロッド15は操作ハンドル16の回転によって第2のバンド8が延在する方向に進退自在に構成され、支持台12に支持されている。したがって、操作ハンドル16を回すことでロードセル10が第2のバンド8が延在する方向に移動するように構成されている。これにより、第2のバンド8が引っ張られて移動し、第2のバンド8によりピストンリング5が縮径する。
【0017】
第1のバンド3と第2のバンド8が交差する部分は、図3に示されているように、第1のバンド3に孔17が形成されており、この孔17に第2のバンド8が干渉せずに挿通している。
【0018】
18はリング保持具である。リング保持具18はリング状部材で外周面に環状溝19を有しており、被測定ピストンリング5を環状溝19に装着する。
【0019】
以下、上記のピストンリング張力測定装置を使用してピストンリングの張力を測定する手順を説明する。
【0020】
被測定ピストンリング5を環状溝19に装着したリング保持具18を定盤1に載置する。片側を固定治具4で固定した第1のバンド3をピストンリング5の外周の周方向半分に巻き付け、もう一方の片側を固定治具6に固定する。次に、片側を移動治具9に固定した第2のバンド8を、ピストンリング5の外周の第1のバンド3が巻かれていない残りの周方向半分に巻き付け、もう一方の片側を固定治具11に固定する。この状態で、振動発生装置2により定盤1を振動させながら、操作ハンドル16を回してロードセル10を第2のバンド8を引っ張る方向に移動させると、第2のバンド8によりピストンリング5が縮径する。ピストンリング5の合口隙間がシリンダに挿入されている状態の合口隙間になるまで、操作ハンドル16を回してロードセル10を移動させ、ピストンリング5を縮径させる。この状態で振動発生装置2は停止する。このときロードセル10にかかる荷重がピストンリング5の張力として計測される。
【0021】
上記において、被測定ピストンリング5が振動した場合でも、ピストンリング5は対向する二本のバンド3,8で支持されているため、ピストンリング5が振動を受けた後においてもピストンリング5の位置が変化せず、安定的に適正な張力をピストンリング5について測定できる。
【0022】
なお、上記実施形態では、ロードセル10を第2のバンド8の移動端側に連結したが、固定端側に連結して張力を測定するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1・・定盤、2・・振動発生装置、3・・第1のバンド、4・・固定治具、5・・被測定ピストンリング、6・・固定治具、7・・支持台、8・・第2のバンド、9・・移動治具、10・・ロードセル、11・・固定治具、12・・支持台、13・・長孔、14・・連結シャフト、15・・進退ロッド、16・・操作ハンドル、17・・バンド挿入孔、18・・リング保持具、19・・環状溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ピストンリングを支持する支持盤と、前記被測定ピストンリングの外周部分に巻回され、両端側が固定手段で固定される第1のバンドと、前記被測定ピストンリングの前記第1のバンドが巻回されない外周部分に巻回される第2のバンドと、前記第2のバンドの一端側を固定する固定手段と、前記被測定ピストンリングを縮径させる方向に前記第2のバンドを移動させる張力付与手段と、前記第2のバンドに付与された張力を測定する張力測定手段とを備えていることを特徴とするピストンリング張力測定装置。
【請求項2】
前記第1のバンドと第2のバンドが対向して配置されることを特徴とする請求項1記載のピストンリング張力測定装置。
【請求項3】
前記支持盤に振動を与える振動発生装置を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のピストンリング張力測定装置。
【請求項4】
前記第1のバンドと第2のバンドの交差部分において、一方のバンドに孔が開いており、他方のバンドが前記孔に通されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のピストンリング張力測定装置。
【請求項5】
前記被測定ピストンリングを装着し前記支持盤に載置されるリング保持具を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のピストンリング張力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−18044(P2012−18044A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154795(P2010−154795)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000215785)TPR株式会社 (80)
【Fターム(参考)】