説明

ピロー包装体

【課題】積層フィルムの孔の発生を防止すると共に、十分な強度を維持することができるピロー包装体を提供する。
【解決手段】このピロー包装体10は、二層以上の樹脂層を有する積層フィルム20で形成され、積層フィルム20には二層以上に剥離可能な部分である剥離ニス層30が部分的に設けられている。この剥離ニス層30はピロー包装体10のエンドシール部の角Aをカバーするように配置されている。したがって、外側の樹脂層に孔が開いても、内側の樹脂層までは孔が開きにくく、積層フィルム20を貫通する孔の発生を防止できる。また、エンドシール部の角A以外の他の部分は剥離可能でなくてもよいため、ピロー包装体10の強度を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムで、菓子、加工食品等の物品を、ピロー包装してなるピロー包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、菓子、加工食品等の物品の包装として、ピロー包装は幅広く利用されている。ピロー包装に用いられる積層フィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPと略称する)、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム等からなる基材層と、接着層と、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるシーラント層とを有するものが一般的に利用されており、ピロー包装機を用いて物品を積層フィルムでシーラント層を内面にして包むと共に、積層フィルムの端縁部を熱溶着させることにより、ピロー包装体を製造している。
【0003】
しかしながら、このようなピロー包装体においては、エンドシール部により折り曲げられる部分(以下「エンドシール部の角」という)や、積層フィルムの被包装物の角部に当たる部分や、被包装物の重さがかかって折れ曲がる部分などに、屈曲して包装体内外に尖った部分(以下「屈曲点」という)が形成される。上記エンドシール部の角は、製品の搬送中に搬送装置や梱包用箱体などに接触して擦れ、また、上記屈曲点には、屈曲疲労が発生する。したがって、これらの部分には、ピンホールが生じやすいという問題があった。
【0004】
一方、下記特許文献1には、複数の材料層が積層された包装用積層フィルムにおいて、最内層フィルムに対してその上に積層される第2層フィルムが、該第2層フィルムの単位幅当りのT型剥離強度が、最内層フィルムの降伏点強度と最内層フィルムの厚みの積よりも小となるような層間接着強度で接着されていることを特徴とする包装用積層フィルムが開示されている。この包装用積層フィルムは、フィルムに屈曲などが作用したときに、最内層フィルムと第2層フィルムとが剥がれるため、最内層フィルムへのピンホールの発生が防止できることが記載されている。
【特許文献1】特開昭61−58730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、最内層フィルムに対してその上に積層される第2層フィルムを剥離しやすくすることによりピンホールの発生が防止できることが記載されているが、上記特許文献1の積層フィルムではフィルム全面が剥離しやすくなっているため、基材フィルムが剥離して剥がれ落ちたり、ピロー包装機等によって応力がかかる部分が剥離して、シワが発生するという問題があった。また、開封時において、最内層フィルムが不用意に剥離してしまい、開封しにくくなる可能性もあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、エンドシール部の角や積層フィルムの屈曲点となる部分で、複数の樹脂層を貫通するような孔の発生を防止すると共に、エンドシール部の角や積層フィルムの屈曲点以外の部分では通常の積層フィルムとして機能することができるピロー包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のピロー包装体は、二層以上の樹脂層を有する積層フィルムで形成されたピロー包装体において、
前記積層フィルムには、二層以上に剥離可能な部分が部分的に設けられており、この剥離可能な部分は、前記包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記発明によれば、積層フィルムに剥離可能な部分が部分的に設けられ、この剥離可能な部分がピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように配置されているので、エンドシール部の角及び/又は屈曲点における屈曲疲労や、搬送手段や箱体内壁との擦れなどによって、外側の樹脂層に孔が開いても、内側の樹脂層までは孔が開きにくく、積層フィルムを貫通する孔が発生するのを防止することができる。したがって、例えば食品のように密封状態を維持する必要があるような被包装物であっても、安心して使用することができる。
【0009】
また、剥離可能な部分がピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように部分的に設けられているだけなので、ピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点以外は、通常の積層フィルムとして機能することができ、積層フィルムをピロー包装機にかけたときに応力が集中する箇所などで、二層以上に剥離してシワが発生したり、フィルム全面が剥離することにより基材フィルムが剥がれ落ちたりすることを防止できる。更に、ピロー包装体を開封するときに、積層フィルムが二層以上に剥離して開封しにくくなったりすることを防止できる。
【0010】
本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムの樹脂層間に剥離ニス層を有する部分で形成されていることが好ましい。これによれば、剥離ニス層を設ける箇所によって、剥離可能な領域を明確に設定することができる。
【0011】
また、本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分は、前記ピロー包装体の幅方向の両側部であって、前記ピロー包装体の両端溶着部であるエンドシール部に近接した4箇所に形成されていることが好ましい。これによれば、剥離可能な部分が、ピロー包装体の幅方向の両側部であって、エンドシール部に近接した4箇所に形成されていることにより、エンドシール部により折り曲げられる上記4箇所をカバーすることができ、フィルムに孔が開いたりすることをより効果的に防止することができる。なお、本発明における「近接」とは、前記エンドシール部から0〜25mm程度離れた位置を意味するが、剥離可能な部分は、エンドシール部と一部重なるように形成されていてもよい。
【0012】
本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分は、前記エンドシール部に向かうに従って、幅狭の形状をなしていることが好ましい。これによれば、包装体のエンドシール部の角をカバーしつつ、剥離可能な部分をなるべく小さく形成することができるので、剥離可能な部分を広く設けることによるピロー包装体の強度の低下や、積層フィルムの開封時の剥がれなどを防止することができる。
【0013】
本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムを展開したときに、エンドシール部に向かって幅狭となる略三角形状をなしていることが好ましい。これによれば、剥離可能な部分が略三角形状をなしていて、ピロー包装体のエンドシール部の角をカバーしつつ、その領域をできるだけ狭めることができるので、積層フィルムの強度を維持しつつ、エンドシール部の角における孔開きを効果的に防止できる。
【0014】
本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムを展開したときに、四角形又は六角形の一辺と、台形の下底が向かいあう、四角形又は六角形と台形とが結合した略六角形状をなし、前記台形の上底がエンドシール部方向に向かって配置されていることが好ましい。これによれば、剥離可能な部分が、上記のような略六角形状をなすことにより、ピロー包装体のエンドシール部の角と積層フィルムの屈曲点を同時にカバーすることができる。更に、ピロー包装する際のブレによって、積層フィルムのシール部に多少の位置ずれが生じても、ピロー包装体のエンドシール部の角と屈曲点を確実にカバーすることができる。
【0015】
本発明のピロー包装体においては、前記剥離可能な部分に、積層された樹脂層同士が剥離しない非剥離部が、線状又はドット状をなして設けられていることが好ましい。これによれば、積層フィルムを用いてピロー包装する際のブレによって、剥離可能な部分でシールがなされた場合であっても、非剥離部が存在することによりシール状態が維持されるので、該剥離可能な部分の全体が剥離して見苦しくなったりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のピロー包装体によれば、積層フィルムに剥離可能な部分が部分的に設けられ、この剥離可能な部分がピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように配置されているので、外側の樹脂層に孔が開いても、内側の樹脂層までは孔が開きにくく、積層フィルムを貫通する孔が発生するのを防止することができ、食品のように密封状態を維持する必要がある被包装物でも安心して使用することができる。また、剥離可能な部分がピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように部分的に設けられているだけなので、ピロー包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点以外では、通常の積層フィルムとして機能することができる。更に、ピロー包装体を開封するときに、積層フィルムが二層以上に剥離して開封しにくくなったりすることを防止できる。更に、ピロー包装体を製造する際にかかる応力によるシワの発生をも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明のピロー包装体の実施形態について説明する。図1〜7には、本発明によるピロー包装体の一実施形態が示されている。
【0018】
まず、本発明のピロー包装体に用いられる積層フィルムについて説明する。この積層フィルムは、二層以上の樹脂層を積層して形成されており、かつ、二層以上に剥離可能な部分が部分的に設けられている。剥離可能な部分は、前記特許文献1(特開昭61−58730号公報)に記載されているように、最内層とその上に積層された第2層との層間接着強度を弱めるなどの手段によって形成することもできるが、例えば特開平9−11053号公報に記載されているように、積層フィルムの樹脂層間に剥離ニス層を設けることによって形成することが好ましい。剥離ニス層を設けることにより、剥離可能な領域を明確に設定できる。
【0019】
図3には、本発明のピロー包装体に用いられる積層フィルムの好ましい一例が示されている。この積層フィルム20は、基材層23と、接着層25と、シーラント層21とで基本的に構成されているが、基材層23の内面に剥離ニス層30が部分的に設けられている点が、従来の積層フィルムと相違している。また、基材層23の内面には必要により印刷層27が設けられ、剥離ニス層30が印刷層27と重なる部分においては、剥離ニス層30が印刷層27の上から基材層23の内面を覆うように形成されている。なお、印刷層27は、シーラント層21の内面に形成することもできる。
【0020】
基材層23としては、特に限定されないが、例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ナイロン、ポリエステルなどのフィルム等を用いることができる。また、基材層23は単層でもよく、上述したプラスチックフィルムや紙、金属箔等を適宜に組み合わせた多層構造であってもよい。
【0021】
接着層25としては、特に限定されないが、例えばウレタン系接着剤、メタクリル酸エチル(EMMA)樹脂等を用いることができる。
【0022】
剥離ニス層30としては、基材層23と接着層25との接着性を調整する働きを有するものであればよく、例えばポリアミド樹脂系、シリコーン樹脂系等の表面濡れ適性の低いものが好ましく使用できる。但し、接着層との組み合わせによりアクリル樹脂系、変成ポリオレフィン樹脂系等も使用できる。なお、剥離ニス層30は、シーラント層21と接着層25との間に設けてもよく、基材層23が多層構造からなる場合には基材層23を構成する層間に設けてもよい。剥離ニス層30を設けた部分が、本発明における剥離可能な部分となる。
【0023】
シーラント層21としては、熱融着性を有する樹脂層であればよく、例えば未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム等を用いることができる。
【0024】
本発明のピロー包装体は、上記積層フィルム20を用いて、菓子、加工食品等の被包装物を、ピロー包装機により包装することによって得ることができる。
【0025】
図1(a),(b)には、ラムネ、飴玉等の粒状の菓子からなる被包装物Cを上記積層フィルム20で包装してなる、本発明の一実施形態によるピロー包装体10が示されている。このピロー包装体10は、積層フィルム20の長さ方向の両側辺を重ね合わせて縦シールすることにより形成されるセンターシール部12を有すると共に、開口した両端部を横シールすることにより形成されるエンドシール部14を有している。一般にピロー包装体は、上記エンドシール部14の幅方向に沿って比較的扁平な形状になる傾向があり、エンドシール部14の幅方向が本発明におけるピロー包装体の幅方向を意味している。
【0026】
そして、被包装物Cを包む積層フィルム20によって形作られているピロー包装体10には、エンドシール部14の幅方向に沿った上下面17、18と、エンドシール部14の両端方向に位置する側面16が設けられる。これら、上面17、下面18、側面16がエンドシール部の両端に収束する位置にエンドシール部の角Aが形成される。このエンドシール部の角Aは、通常は、ピロー包装体10の幅方向の両端部であって、エンドシール部14に近接した4箇所に形成される。
【0027】
本発明の特徴は、上記エンドシール部の角Aをカバーするように、積層フィルム20の前記剥離ニス層30が存在している点にある。
【0028】
図2には、上記ピロー包装体10に用いられる積層フィルム20をロールから引き出した状態が示されている。
【0029】
図2中、符号L2で示す線分は、一つのピロー包装体10の上下端部を示す境界線であり、この線分L2を中心として、横方向に溶着シールされてカッターによって、この線でカットされることにより、エンドシール部14が形成される。
【0030】
また、符号Mで示す印は、レジマークであり、ピロー包装体10を製造する際に、後述するピロー包装機50(図4参照)のセンサによって検知される。ピロー包装機50は、レジマークの検知によって積層フィルム20の位置を正確に把握し、エンドシール部14、剥離ニス層30を施す位置や切断の位置が正確なピロー包装体10を製造できる。
【0031】
そして、積層フィルム20の上記線分L2に近接した4箇所に前記剥離ニス層30が形成されている。この場合、剥離ニス層30は、前記エンドシール部14となる部分から0〜25mm程度離れた位置に形成されることが好ましい。
【0032】
この実施形態における剥離ニス層30は、積層フィルム20の展開状態で見たときに、エンドシール部14に向かって幅狭となった略三角形状をなしている。この実施形態によれば、剥離ニス層30が略三角形状をなしているので、ピロー包装体10のエンドシール部の角をカバーしつつ、その領域をできるだけ狭めることができ、積層フィルム20の強度を維持しつつ、エンドシール部の角における孔開きを効果的に防止できる。
【0033】
図4には、上記実施形態のピロー包装体10の製造に用いられる縦形ピロー包装機の一例が示されている。このピロー包装機50(以下、「包装機50」という)は、シート状の積層フィルム20が巻回されたロール51を有しており、このロール51から積層フィルム20が順次引き出されて、フォーマ53(後述する)に導かれるようになっている。
【0034】
また、包装機50には、筒状のシリンダ52が上下方向(縦方向)に配設され、このシリンダ52の上方から、ラムネ、飴玉等の粒状の菓子からなる被包装物C(図1参照)が投入されるようになっている。シリンダ52の上方の外周には、セーラーカラーのような形状をなすフォーマ53が装着され、このフォーマ53とシリンダ52外周との間には小さな隙間が形成されていて、積層フィルム20はこの隙間を通して、その長さ方向の両側辺が縦方向に重ね合わせられて、シリンダ52の外周に筒状にして巻き付けられるようになっている。前記フォーマ53よりも下方であって、シリンダ52の側方には、筒状に形成された積層フィルム20の縦方向の合せ目を、縦方向に溶着シールして、センターシール部12を形成するセンターシーラ54が配設されている。
【0035】
更に、積層フィルム20が巻回されたロール51とフォーマ53との間の任意の位置には、積層フィルム20に付されたレジマークM(図2参照)を読み取るセンサ(図示していない)と、シート送り装置55とが縦方向に配設されていて、該シート送り装置55が間欠的に動作して、積層フィルム20をレジマークMを目印にして所定寸法ずつ下方に引張るようになっている。シリンダ52の下方には、筒状に形成された積層フィルム20の開口した両端部を、横方向に溶着シールしてエンドシール部14を形成すると共に、該エンドシール部14の中間部(図2中、線分L2の箇所)を切断するエンドシーラ56が配設されている。
【0036】
上記ピロー包装体10は、例えば上記包装機50を用いて、以下のような方法で製造することができる。
【0037】
まず、積層フィルム20は、ロール51から引き出されて、シリンダ52とフォーマ53との隙間に導入されて、積層フィルム20の長さ方向の両側辺が縦方向に重ね合わされて、シリンダ52の外周に筒状に巻き付けられる。
【0038】
この状態で、シート送り装置55は、前記レジマークMを目印にしてピロー包装体10を一袋分製造するために必要な長さ分ずつ、間欠的に積層フィルム20を引き出す。積層フィルム20を所定の長さ引き出すと、シート送り装置55は停止し、そして、センターシーラ54は、筒状に巻き付けられた積層フィルム20の縦方向の合せ目を縦シールしてセンターシール部12を形成する。それと同時に、エンドシーラ56は、筒状に形成された積層フィルム20の横方向の合せ目を横シールしてエンドシール部14を形成すると共に、エンドシール部14の中間部で積層フィルム20をカットする。このとき、レジマークMを目印にすることにより、積層フィルム20の剥離ニス層30が存在する部分を包装体10のエンドシール部14の角Aに合わせることができる。
【0039】
上記工程によって、既に包装物が収容された下方のピロー包装体10は、上端部が横シールされるとともにカットされて分離され、下方に落下する。一方、まだ、被包装物Cが収容されていない上方のピロー包装体10は、エンドシーラ56によって下端部が横シールされて底部が形成され、その状態でシリンダ52の上方から被包装物Cが投入されて、シリンダ52の内側を通って、ピロー包装体10内に収容されることとなる。この工程を繰り返すことにより、被包装物Cが収容されたピロー包装体10を連続して製造することができる。
【0040】
なお、ピロー包装機は、図4に示されるものに限定されず、本発明のピロー包装体10は、公知の各種のピロー包装機を用いて製造することができる。
【0041】
図6,7には、本発明によるピロー包装体の他の実施形態が示されている。
【0042】
このピロー包装体10’では、クッキーやビスケット等の板状の被包装物Dを包んでいる。すなわち、図6に示すように、積層フィルム20によってビスケット等の板状の被包装物Dを包んだピロー包装体10’には、エンドシール部14の幅方向に沿った上下面17、18と、エンドシール部14の両端方向に位置する側面16が設けられている。そして、上下面17,18と、側面16との境界部には、必ずしも明瞭ではないが、稜線L1が形成される。すなわち、この稜線L1が形成される位置は、側面16の厚さ方向の両端の境界部となる。また、上面17は、被包装物Dの上面に平行に接していて、下面18は、被包装物Dの下面に平行に接しているので、側面16の厚さ方向の長さは、被包装物Dの厚さに依存し、被包装物Dの厚さとほぼ等しくなるようになる。このため、稜線L1は、被包装物Dの上面および下面とほぼ水平の位置に形成される。以上のことから、稜線L1の形成される位置は、側面16の厚さ方向の両端の境界部で、かつ、被包装物Dの上面および下面とほぼ水平の位置である。
【0043】
そして、この稜線L1は、エンドシール部14付近で、内側にくの字に折れ曲がる屈曲点Bを経て、エンドシール部の角Aに至る。この場合、1つの稜線L1は、その両端がピロー包装体10’の2つのエンドシール部14の角Aに至るため、屈曲点Bは、2箇所形成されることになる。ここで、ピロー包装体10’には、2つの側面16を持つので、各側面16の厚さ方向の両端部に2本の稜線L1が形成される。したがって、1つのピロー包装体10’には、合計8箇所の屈曲点Bが形成されることになる。
【0044】
上記のピロー包装体10’の特徴は、エンドシール部14の角A及び上記屈曲点Bをカバーするように、積層フィルム20に剥離ニス層30が存在している点にある。ただし、被包装物Dが三角錐状や、円筒状をなす場合には、上記8箇所の屈曲点Bの他にも、それらの形状に応じた屈曲点Bが形成されるので、そのような場合の剥離ニス層30の存在位置は、それぞれの屈曲点Bをカバーするように設けることが望ましい。
【0045】
図7には、上記ピロー包装体10’に用いられる積層フィルム20をロールから引き出した状態が示されている。
【0046】
図7中、線分L1’は、ピロー包装体10’に被包装物Dが収容されたときに形成される前記稜線L1が形成される部分である。また、符号L2で示す線分は、一つのピロー包装体10’の上下端部を示す境界線であり、この線分L2を中心として、横方向に溶着シールされてカッターによって、この線でカットされることにより、エンドシール部14が形成される。
【0047】
そして、積層フィルム20の上記線分L1’の上記線分L2に近接した4箇所に前記剥離ニス層30が形成されている。この場合、剥離ニス層30は、前記エンドシール部14となる部分から0〜25mm程度離れた位置に形成されることが好ましい。
【0048】
この実施形態では、剥離ニス層30が、図7に示す積層フィルム20の展開状態で見たときに、六角形32の一辺と台形34の下底が向かいあい、六角形32と台形34とが結合した略六角形状をなしている。また、六角形状をなした各剥離ニス層30は、幅狭の台形34の上底が、エンドシール部14に向かって配設されている。
【0049】
また、剥離ニス層30は、積層フィルム20の展開状態で見たときに、稜線となる線分L1’,L1’の間隔よりも幅広に形成されている。したがって、積層フィルム20の所定箇所に部分的に設けられた剥離ニス層30は、ピロー包装体10’が製造されたとき、ピロー包装体10’の幅方向の両側部であって、エンドシール部14に近接した8箇所に形成される前記屈曲点B及びエンドシール部の角Aをカバーするようになっている。
【0050】
更に、剥離ニス層30の六角形32と台形34との間の部分には、積層フィルム20の幅方向に対して平行に伸びる、線状の非剥離部36が設けられている。非剥離部36は、その部分だけ剥離ニス層30を形成しないことによって形成できる。この非剥離部36が設けられた部分においては、基材層23の下面側に直接、接着層25が接着されていて、積層フィルム20が引張られたりしても、シーラント層21から基材層23が剥離しないようになっている。もっとも、非剥離部36は、ピロー包装体10のような略三角形状であっても設けることができる。なお、非剥離部36は、線状だけでなく、ドット状等の形状で形成されていてもよい。
【0051】
なお、上記ピロー包装体10’は、図4に示した縦型ピロー包装機ではなく、図示しない横形ピロー包装機によって製造される。この横形ピロー包装機は、製袋機と、供給手段と、センターシーラと、エンドシーラとを有しており、製袋機により積層フィルムを略筒状に成形すると共に、略筒状に成形された積層フィルムの下方の合せ目をセンターシーラによりシールして、略筒状の積層フィルムを水平方向に送り出し、該積層フィルム内にコンベア等の供給手段により被包装物Dを水平方向から供給し、その後、前後の開口部をシールして、ピロー包装体10’を製造するものである。横形ピロー包装機は、例えば特開平6−179419号公報、特開平8−91307号公報、特開平8−91319号公報などに示されるように周知であり、上記ピロー包装体10’は一般的な横形ピロー包装機を用いて製造できる。
【0052】
次に、上記構成からなる本発明のピロー包装体10(図1)及び10’(図6)の作用について説明する。
【0053】
前述したように、ピロー包装体10及び10’の積層フィルム20には、ピロー包装体10及び10’の幅方向の両側部であって、エンドシール部14に近接した4箇所にエンドシール部の角Aが形成される。このエンドシール部の角Aにおいては、積層フィルムが屈曲応力を受け、搬送工程や、箱詰め工程や、物流輸送時において、コンベヤなどの搬送手段や、梱包用箱体の内壁等に接触して擦れが発生する。更に、ピロー包装体10’においては、この包装体10’の4本の稜線L1上にそれぞれ2箇所であって、エンドシール部に近接した合計8箇所に屈曲点Bが形成される。この屈曲点Bにおいては、積層フィルムが屈曲応力を受ける。これらの結果、これらエンドシール部の角A及び屈曲点Bにおいてピンホールが発生しやすくなる。
【0054】
しかし、本発明のピロー包装体10及び10’においては、これらエンドシール部の角Aや屈曲点Bをカバーするように前記剥離ニス層30が形成されているので、例えば屈曲点Bの状態を示す図5に示されるように、剥離ニス層30によって積層フィルム20の基材層23と接着層25との間で剥離し、基材層23と、シーラント層21とが剥離した状態となる。
【0055】
このため、屈曲応力や擦れによって外側の基材層23にピンホールが生じても、その応力や擦れの影響が内側のシーラント層21には及ばないため、積層フィルム20を貫通するピンホールが生じることを防止することができる。したがって、被包装物C又はDとして、菓子等の食品を包んだ場合でも、ピンホールの発生を確実に防止して、密封状態を維持することができ、食品衛生上の安全性を高めることができる。
【0056】
更に、本発明のピロー包装体10及び10’によれば、剥離ニス層30が部分的に設けられているので、ピロー包装体10及び10’を開封するときに、積層フィルム20が二層以上に剥離して開封しにくくなったり、エンドシール部14の端縁から積層フィルム20が二層以上に剥がれて見苦しくなったりすることを防止できる。
【0057】
更にまた、ピロー包装機による包装の際に、積層フィルム20には、様々な応力がかかる。例えば、図4に示した縦型ピロー包装機50について説明すれば、積層フィルム20を縦シールする前に、積層フィルム20を引張りながらロール51から引き出したりするときや、積層フィルム20をフォーマ53によって曲げながら引張って、シリンダ52とフォーマ53との隙間に導入させていくときや、センターシーラ54によって縦シールする際に、シリンダ52の外周に沿って積層フィルム20の両側辺を引張るとき、更に、エンドシーラ56によって横シールする際に、積層フィルム20を挟み込みつつ引張るときなどに応力がかかる。このとき、本発明においては、剥離可能な部分である剥離ニス層30が、ピロー包装体10及び10’のエンドシール部の角A及び屈曲点Bをカバーする部分にだけ存在しているので、その他の部分では剥離が生じることはなく、通常の積層フィルムの強度を維持することができる。したがって、積層フィルム20を包装機50にかけて、積層フィルム20に応力がかかっても、積層フィルム20が二層以上に剥離することがないので、シワの発生を防止できる。
【0058】
ところで、一般的にピロー包装機による製造の際には、各種の理由により、積層フィルム20のシール位置に僅かなブレが生じることがある。例えば、図4に示した縦型ピロー包装機50について説明すれば、フォーマ53により積層フィルム20を筒状に形成する際に、積層フィルム20の長さ方向の両側辺同士がずれた状態で重ね合わされてセンターシーラ54により接合されたり、エンドシーラ56による横シール位置がずれたりすることがある。このように、ピロー包装機にブレが生じた場合には、各シール部12,14に位置ずれが生じる結果となる。
【0059】
これに関して、上記各実施形態においては、各シール部12,14に位置ずれが生じて、ピロー包装体10、10’にしたときに形成されるエンドシール部の角A及び屈曲点Bの位置がずれた場合を考慮して、前記剥離ニス層30の形状を前述したような略三角形状や略六角形状にしたので、エンドシール部の角A及び屈曲点Bの位置が積層フィルム20の幅方向及び長さ方向に多少ずれたとしても、剥離ニス層30内に入るように確実にカバーすることができる。
【0060】
更に、上記ピロー包装機のブレにより、本来シールすべきでない剥離ニス層30の部分がシールされる可能性もある。その場合であっても、図6,7の実施形態においては、剥離ニス層30に線状の非剥離部36を設けたので、シール状態が維持される。よって、シール箇所で積層フィルム20において、エンドシール部14の端縁から積層フィルム20が二層以上に剥がれて見苦しくなったりすることを防止でき、ひいては、包装体の強度や密閉性が損なわれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のピロー包装体の一実施形態を示し、(a)は背面側から見た斜視図、(b)は表面側から見た斜視図である。
【図2】同ピロー包装体を構成する積層フィルムの平面図である。
【図3】同ピロー包装体を構成する積層フィルムの部分断面図である。
【図4】同ピロー包装体を製造するピロー包装機を示す斜視図である。
【図5】本発明のピロー包装体の他の実施形態を構成する積層フィルムにおいて、二層以上に剥離した状態を示す部分断面図である。
【図6】同ピロー包装体を示しており、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
【図7】同ピロー包装体に用いられる積層フィルムの平面図である。
【符号の説明】
【0062】
10,10’ ピロー包装体
14 エンドシール部
16 側面
20 積層フィルム
30 剥離ニス層(剥離可能な部分)
32 四角形
34 台形
36 非剥離部
B 屈曲点
C,D 被包装物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層以上の樹脂層を有する積層フィルムで形成されたピロー包装体において、
前記積層フィルムには、二層以上に剥離可能な部分が部分的に設けられており、この剥離可能な部分は、前記包装体のエンドシール部の角及び/又は屈曲点となる部分をカバーするように配置されていることを特徴とするピロー包装体。
【請求項2】
前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムの樹脂層間に剥離ニス層を有する部分で形成されている請求項1記載のピロー包装体。
【請求項3】
前記剥離可能な部分は、前記ピロー包装体の幅方向の両側部であって、前記ピロー包装体の両端溶着部であるエンドシール部に近接した4箇所に形成されている請求項1又は2記載のピロー包装体。
【請求項4】
前記剥離可能な部分は、前記エンドシール部に向かうに従って、幅狭の形状をなしている請求項3記載のピロー包装体。
【請求項5】
前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムを展開したときに、エンドシール部に向かって幅狭となる略三角形状をなしている請求項4記載のピロー包装体。
【請求項6】
前記剥離可能な部分は、前記積層フィルムを展開したときに、四角形又は六角形の一辺と、台形の下底が向かいあう、四角形又は六角形と台形とが結合した略六角形状をなし、前記台形の上底がエンドシール部方向に向かって配置されている請求項4記載のピロー包装体。
【請求項7】
前記剥離可能な部分に、積層された樹脂層同士が剥離しない非剥離部が、線状又はドット状をなして設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載のピロー包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−24361(P2008−24361A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202011(P2006−202011)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】