説明

フック装置、記録装置及び液体噴射装置

【課題】係止フックと被係止部との形状及び構造を工夫することによって垂直1軸方向に加えて水平2軸方向の移動を同時に規制する。
【解決手段】本発明のフック装置1は連結する2物品の一方に形成されている係止フック50と、連結する2物品の他方に形成されている被係止部51とを備え、係止フック50の係止爪52が被係止部51の係止作用面53に係止されることによって連結する2物品の垂直1軸方向Zへの移動を規制し、係止フック50の係合誘導部55が被係止部51の係合作用面54と係合することによって垂直1軸方向Zと直交する水平2軸方向Xへの物品の移動を同時に規制するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結する2物品の一方に形成されている係止フックと、連結する2物品の他方に形成されている被係止部とを備え、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって連結する2物品の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置及びフック装置をハウジング本体に対するハウジングロア部の係止手段として適用した記録装置に関する。
更に本発明は、インク等の液体をそのヘッドから吐出(噴射)して被記録材(被液体噴射材)に記録を実行する(液体を付着する)インクジェット式記録装置などの液体噴射装置及び該液体噴射装置におけるハウジング本体に対するハウジングロア部の係止手段として適用できるフック装置に関するものである。
【0002】
ここで液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録材に記録を行うプリンタ、プロッタ、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録材に相当する被液体噴射材に噴射して、前記液体を前記被液体噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0003】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0004】
位置決め機構を備えたフック装置の従来技術として、特開2005−301964号公報(特許文献1)が挙げられる。また、別体の締結具等を使用することなく、連結する2物品のそれぞれに形成されている係止フックと被係止部のみを使用して連結する2物品の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置が存在する。このような従来のフック装置は、係止フックの一部に設けられた係止爪が被係止部の係止作用面に係止されることによって上記連結する2物品の連結方向ないし連結解除方向である垂直1軸方向への移動を規制している。
【0005】
一方、上記連結する2物品の垂直1軸方向と直交する水平2軸方向に目を向けると、係止フックと被係止部との間にはクリアランスがあり、上記連結する2物品はそのクリアランスの分、水平2軸方向へ移動可能であり、両者の間にはガタが生じていた。従って、連結する2物品の水平2軸方向への移動を規制するために別途の固定構造が設けられており、連結する2物品の水平2軸方向の位置出しを行うために別途の位置誘導構造が設けられていた。
【0006】
しかし、上記別途の固定構造や位置誘導構造を設けることは部品点数の増加をもたらし、部品、組立て、製品コストの増大を招いてしまう。また上記係止フックと被係止部との間には上記垂直1軸方向及び水平2軸方向と直交する水平3軸方向にもクリアランスが生じており、該クリアランスによって生ずる係止フックと被係止部との間のガタを防止するために他の別途の固定構造と位置誘導構造が必要であり、一層の部品、組立て、製品コストの増大を招いていた。
【0007】
【特許文献1】特開2005−301964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、係止フックと被係止部との形状及び構造を工夫することによって垂直1軸方向だけでなく、垂直1軸方向と直交する水平2軸方向ないし水平3軸方向についても同時に連結する2物品間の移動を規制することができる部品点数の削減と、部品、組立て、製品コストの削減に寄与し得る画期的で汎用性に富む新規なフック装置及び該フック装置をハウジング本体に対するハウジングロア部の係止手段として適用した記録装置等を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様に係るフック装置は、連結する2物品の一方に形成されている係止フックと、連結する2物品の他方に形成されている被係止部とを備え、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって連結する2物品の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置であって、前記係止フックの他の一部には前記被係止部の他の一部に形成されている係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向と直交する水平2軸方向への物品の移動を同時に規制するようにした係合誘導部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、別途の固定構造や位置誘導構造等を設けることなく、係止フックと被係止部との形状及び構造のみを工夫することによって連結する2物品の垂直1軸方向の固定と水平2軸方向の固定を同時に実行することが可能になる。従って、部品点数の削減、部品、組立、製品コストの削減に寄与し得るようになり、種々の分野でのフック装置の適用が可能になる。
【0011】
本発明の第2の態様に係るフック装置は、前記第1の態様において、前記係合誘導部は先端が窄まったテーパ形状を呈しており、係合作用面と係合する係合当初の段階では係合作用面との間にクリアランスが形成されており、当該係合が進むに連れて徐々にクリアランスが小さくなり、係合完了時においてクリアランスがなくなって連結する2物品の水平2軸方向の位置出しと移動の規制とが同時に実行されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、係止フックと被係止部との位置出しを厳格に行わなくても係止フックが被係止部に向けて相対的に進入し、係止される過程で係止フックないし被係止部の位置は正規の位置に自動的に誘導されて至ることができる。従って、組立てが容易になり、組立てコストの削減が図られる。
【0013】
本発明の第3の態様に係るフック装置は、前記第2の態様において、前記係合作用面は先端が窄まったテーパ溝形状の係合溝部の左右の内側面に対して設けられており、前記係合誘導部は開口面積の広い係合溝部の基端部側から進入して係合完了時において係合作用面に楔様に作用して水平2軸方向に固定されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、係止フックと被係止部との位置出しを更にルーズに行ったとしても係合誘導部と係合作用面の誘導案内作用によって係止フックないし被係止部の位置は正規の位置に至ることができる。また係合誘導部が楔様に作用して係合作用面に係合することにより、両者の間にはガタは全く生じなくなり、連結する2物品の水平2軸方向の固定が一層強固になる。
【0015】
本発明の第4の態様に係るフック装置は、前記第1の態様〜第3の態様のいずれか1つの態様において、前記係止フックの更に他の一部には前記被係止部の更に他の一部に形成されている第2係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向及び水平2軸方向と直交する水平3軸方向への物品の移動を同時に規制するようにした係合凸部が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、連結する2物品は垂直1軸方向と水平2軸方向に加えて水平3軸方向にも同時に固定されることになるから、連結する2物品はすべての方向でガタがなくなり、部品点数の一層の削減、部品、組立て、製品コストの一層の削減に寄与し得るようになる。
【0017】
本発明の第5の態様に係るフック装置は、前記第1の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様において、前記連結する2物品は電子機器の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、電子機器の外観を構成するハウジング本体と、該ハウジング本体の底板部を構成するハウジングロア部とが別体に構成されている場合において、ハウジングロア部をハウジング本体に対して垂直1軸方向と水平2軸方向が同時に固定された状態で容易且つ正確に取り付けることが可能となる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る記録装置は、記録装置の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部と、前記ハウジング本体に形成されている係止フックと前記ハウジングロア部に形成されている被係止部とを有し、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって、前記ハウジング本体に対するハウジングロア部の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置とを備えた記録装置であって、前記フック装置は前記第1〜第5のいずれか1つの態様のフック装置であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、係止フックと被係止部との形状及び構造を工夫することによって垂直1軸方向だけでなく、垂直1軸方向と直交する水平2軸方向ないし水平3軸方向についても連結する2物品間の移動を同時に規制することができる部品点数の削減と、部品、組立て、製品コストの削減に寄与し得る画期的で汎用性に富む新規なフック装置をハウジング本体に対するハウジングロア部の係止手段として適用した記録装置を提供することが可能になる。従って記録装置のハウジング本体とハウジングロア部との組立てが容易になり組立てコストの削減が図られる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る液体噴射装置は、液体噴射装置の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部と、前記ハウジング本体に形成されている係止フックと前記ハウジングロア部に形成されている被係止部とを有し、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって、前記ハウジング本体に対するハウジングロア部の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置とを備えた液体噴射装置であって、前記係止フックの他の一部には前記被係止部の他の一部に形成されている係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向と直交する水平2軸方向へのハウジング本体に対するハウジングロア部の移動を同時に規制するようにした係合誘導部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明に係るフック装置及び該フック装置をハウジング本体に対するハウジングロア部の係止手段として適用した液体噴射装置の一例である記録装置について説明する。最初に本願発明の液体噴射装置、そしてその一例である記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は使用時のインクジェットプリンタの外観を示す斜視図、図2はハウジング本体とハウジングロア部を分解して示す斜視図である。尚、ここで説明するインクジェットプリンタ100は、例えば4×6インチ以下の被液体噴射材の一例である被記録材P(以下単に用紙Pともいう)を対象にした極めてコンパクトで持ち運びが容易な比較的シンプルな構造のインクジェットプリンタである。また、このインクジェットプリンタ100は、パーソナルコンピュータに接続しなくても直接用紙Pに記録の実行ができる、いわゆるダイレクトプリンタと呼ばれているタイプのインクジェットプリンタである。
【0024】
このインクジェットプリンタ100は、図1、図2に示すような角箱状の電子機器本体、液体噴射装置本体、そして記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備えている。プリンタ本体3はプリンタ本体3の前面、後面、左右の側面及び底面を閉塞する深底容器状のハウジング本体4と、ハウジング本体4の開口された底板部25に対して取り付けられるハウジング本体4と別体のハウジングロア部42と、持ち運び時の状態においてプリンタ本体3の上面を閉塞し、図1に示す使用時の状態において給送用トレイ5の上方に張り出した用紙Pの上片部を支持するペーパーサポートとしても機能するカバー部材6と、持ち運び時の状態において上記カバー部材6の下方に位置し、ハウジング本体4の上部開口を閉塞する操作パネル7と、上記ハウジング本体4の前面の一部を開口し、当該前面開口を閉塞するように開閉自在に設けられる前面カバーを兼ねた排出用スタッカ8と、上記ハウジング本体4の左右の側面に対して回動可能な状態で接続される門型をした手提げハンドル9とを備えている。
【0025】
そして、上記操作パネル7上には複数の窓部が設けられており、中央の大きな窓部には液晶モニタ11、他の窓部には各種の操作ボタン12a、12b、12c、・・・12nがそれぞれ下方から上方に向けて突出するように取り付けられている。また、操作パネル7の後部の中央部は大きく矩形状に切り欠かれており、該切り欠かれた部分が自動給送ユニット2に対して用紙Pを供給するための給送用開口13になっている。また、排出用スタッカ8は下部の左右のコーナー部に回動支点を備えており、この回動支点を中心にして約90°の範囲に亘って上下に回動できるようになっている。また、排出用スタッカ8の裏面は、図1に示す使用時の状態では上面に位置するように構成されており、記録実行後の用紙Pを受け取る被液体噴射材受け部の一例である排出用スタッカ8の載置面14になっている。この他、ハウジング本体4の前面開口の上部には、デジタルカメラ等で撮影した画像データを収録したメモリーカード等を挿入するためのメモリー挿入口15が設けられている。
【0026】
そして、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100に対して用紙Pが供給されると、用紙Pは給送用開口13から自動給送ユニット2における給送用トレイ5上に至り、図示しない給送用ローラとホッパとの挟圧送り作用によって最上位の用紙Pから順番に用紙搬送経路に向けて給送されるようになる。また、用紙搬送経路に給送された用紙Pは、記録ポジションに向けて案内され、図示しないプラテンによって下面が支持された状態で図示しない搬送用ローラからの駆動力を受けて搬送される。そして、図示しない記録ヘッドが図示しないキャリッジによって保持された状態で液体の一例であるインクを吐出しながら主走査方向Aに往復する動作と、該主走査方向Aと直交する副走査方向B(用紙Pの搬送方向と一致する)に所定の搬送量で用紙Pを搬送する動作とを相互に繰り返すことによって、用紙Pの被記録面全体に亘って所望の記録が実行されるようになっている。また、記録実行後の用紙Pは、図示しない排出用ローラからの駆動力を受けて更に用紙搬送方向の下流側に向けて排出され、上述した拡開状態の排出用スタッカ8の載置面14に至り、保持されるようになっている。
【0027】
[実施例]
次に、このようなインクジェットプリンタ100の外観構成部材であるハウジング本体4と、該ハウジング本体4の開口された底板部25に取り付けられるハウジング本体4とは別体のハウジングロア部42との間に適用される本発明のフック装置1について図面に基づいて具体的に説明する。尚、図3は本発明のフック装置の実施例を示す斜視図、図4は同上、側断面図である。また図5は係合誘導部と係合作用面の係合当初の状態を示す正面図、図6は同上、係合途中の状態を示す正面図、図7は同上、係合完了時の状態を示す正面図である。
【0028】
本発明のフック装置1は、連結する2物品(本実施例ではハウジング本体4とハウジングロア部42)の一方(本実施例ではハウジング本体4)に形成されている係止フック50と、連結する2物品の他方(本実施例ではハウジングロア部42)に形成されている被係止部51とを備えている。そして、上記係止フック50の先端部には鉤状をした係止爪52が設けられており、該係止爪52が上記被係止部51における上端面に形成されている係止作用面53に当接し、係止されることによって連結する2物品の連結ないし連結解除方向である垂直1軸方向Zへの移動を規制している。
【0029】
更に、本発明のフック装置1の特徴的構成として係止フック50の他の一部(本実施例では上記係止爪52の下方の部分)には、上記被係止部51の他の一部(本実施例では被係止部51の内側面)に形成されている係合作用面54と係合することによって上記垂直1軸方向Zと直交する水平2軸方向Xへの物品(本実施例ではハウジングロア部42)の移動を同時に規制するようにした係合誘導部55が設けられている。
【0030】
係止フック50は、ハウジング本体4の開口された底板部25の外周縁から上方に立ち上げられた水平3軸方向Yに弾性変形可能な舌片状をした部材であり、例えば底板部25の外周縁のコーナー部付近に1個ずつ計4個設けられている。また、係止爪52の支持部材でもある上記係合誘導部55は、図5〜図7に示すように正面から視た状態で先端が窄まったテーパ形状を呈しており、図5に示すように係合作用面54と係合する係合当初の段階では係合誘導部55の左右の側面に形成された誘導傾斜面56、56と被係止部51における係合作用面54、54との間にはクリアランスCが形成されている。
【0031】
また、図6に示す係合途中の段階では上記クリアランスCは係合が進むに連れて徐々に小さくなり、図7に示す係合完了時の段階では上記クリアランスCがなくなって誘導傾斜面56、56と係合作用面54、54が密着し、連結する2物品の水平2軸方向Xの位置出しと移動の規制とが同時に実行されるようになる。
【0032】
被係止部51は、ハウジングロア部42の外周部の例えばコーナー部付近に1個ずつ計4個設けられている。被係止部51には、上記係止フック50を受け入れるテーパ溝形状の係合溝部57が設けられており、該係合溝部57の左右の内側面が上述した係合作用面54、54になっている。また、係合溝部57の奥面58の上辺から更に奥部側に連なっている被係止部51の上端面が上記係止フック50の係止爪52と当接し、係止される係止作用面53になっている。そして、上記係合誘導部55は開口面積の広い係合溝部57の基端部59側から進入して係合完了時において、左右の係合作用面54、54に誘導傾斜面56、56が楔様に作用して水平2軸方向Xに固定されるようになっている。
【0033】
次に、このようにして構成される本発明のフック装置1を使用してハウジング本体4の開口している底板部25に対して、上方からハウジングロア部42を取り付ける場合の手順と併せて本発明のフック装置1の作動態様を説明する。
【0034】
作業者は、ハウジングロア部42を持って、大まかに位置合わせをしてハウジング本体4の開口している底板部25上にハウジングロア部42をセットする。この状態でハウジングロア部42の上面を押さえて下方に力を加えると、誘導傾斜面56と係合作用面54が摺接し、両者の有する位置誘導作用によって、係止フック50と被係止部51は正規の位置に誘導され、位置出しが自動的に行なわれる。
【0035】
また、係止爪52は係合溝部57内に進入すると、最初に係合溝部57の奥面58の下部に形成されている案内傾斜面60に当接する。そして、係止爪52は該案内傾斜面60によって水平3軸方向Yの手前側に案内されて奥面58に摺接した状態になる。尚この時、係合誘導部55は水平3軸方向Yの手前側に撓み変形した状態になっており、該撓み変形によって上記係止爪52の水平3軸方向Y手前側への移動を可能にしている。そして、係止フック50の係合溝部57への進入が進み、係止爪52が奥面58の上辺に達すると、係止爪52は奥面58からの押圧力から解放されて水平3軸方向Yの奥部側に移動するようになり、図4に示すように係止作用面53に当接し、係止された状態になる。
【0036】
このようにして係止フック50が被係止部51に係止された状態では、係止爪52が係止作用面53に当接しているため、ハウジングロア部42ないしハウジング本体4の垂直1軸方向Zへの移動が規制され、両者の間にはガタが生じない。また、左右の誘導傾斜面56、56が係合作用面54、54に当接し、係合することによってハウジングロア部42ないしハウジング本体4の水平2軸方向Xへの移動も規制され、両者の間にガタは生じない。
【0037】
[他の実施例]
本願発明に係るフック装置1及び該フック装置1をハウジング本体4とハウジングロア部42に適用した記録装置100等は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行なうことも勿論可能である。例えば、フック装置1は前記記録装置に限らず、他の液体噴射装置や電子機器、あるいは2部材によって構成されている容器等種々の対象の連結する2物品に適用可能である。また、係止フック50と被係止部51の形状、構造、個数、配置は前記実施例のものに限定されることはなく、適用する対象の種類や目的に応じて適宜調整することが可能である。
【0038】
また、前記実施例の場合には連結する2物品の垂直1軸方向Zと水平2軸方向Xの同時固定を図るフック装置1の構成を説明したが、垂直1軸方向Zと水平2軸方向Xに加えて、これらと直交する水平3軸方向Yへの移動も規制する3軸同時固定を図るフック装置1を適用することも可能である。図8は3軸同時固定を図るフック装置1の他の実施例を示している。
【0039】
具体的には係止フック50の基端部(係合誘導部55のハウジング本体4に対する付け根部分)に係合凸部61を設け、一方、被係止部51に図示のように内側面に第2係合作用面62、62を有する係合凹部ないし係合穴部を設けることで係合凸部61の前・後面を上記第2係合作用面62、62に当接させて水平3軸方向Yへのハウジング本体4ないしハウジングロア部42の移動を規制するようにすることも可能である。尚、第2係合作用面62と係合凸部61の前、後面をテーパ状に形成して、前記係合作用面54と誘導傾斜面56と同様の位置誘導機能を持たせる構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】使用時のインクジェットプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】ハウジング本体とハウジングロア部を分解して示す斜視図。
【図3】フック装置の実施例を示す斜視図。
【図4】フック装置の実施例を示す側断面図。
【図5】係合誘導部と係合作用面の係合当初の状態を示す正面図。
【図6】同上、係合途中の状態を示す正面図。
【図7】同上、係合完了時の状態を示す正面図。
【図8】フック装置の他の実施例を示す側断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 フック装置、2 自動給送ユニット、3 プリンタ本体、4 ハウジング本体、5 給送用トレイ、6 カバー部材、7 操作パネル、8 排出用スタッカ、9 手提げハンドル、11 液晶モニタ、12a、12b、12c・・・12n 操作ボタン、13 給送用開口、14 載置面、15 メモリー挿入口、25 底板部、42 ハウジングロア部、50 係止フック、51 被係止部、52 係止爪、53 係止作用面、54 係合作用面、55 係合誘導部、56 誘導傾斜面、57 係合溝部、58 奥面、59 基端部、60 案内傾斜面、61 係合凸部、62 第2係合作用面、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、P 用紙(被記録材)、A 主走査方向、B 副走査方向、Z 垂直1軸方向、X 水平2軸方向、Y 水平3軸方向、C クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結する2物品の一方に形成されている係止フックと、連結する2物品の他方に形成されている被係止部とを備え、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって連結する2物品の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置であって、
前記係止フックの他の一部には前記被係止部の他の一部に形成されている係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向と直交する水平2軸方向への物品の移動を同時に規制するようにした係合誘導部が設けられていることを特徴とするフック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフック装置において、前記係合誘導部は先端が窄まったテーパ形状を呈しており、係合作用面と係合する係合当初の段階では係合作用面との間にクリアランスが形成されており、当該係合が進むに連れて徐々にクリアランスが小さくなり、係合完了時においてクリアランスがなくなって連結する2物品の水平2軸方向の位置出しと移動の規制とが同時に実行されるように構成されていることを特徴とするフック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフック装置において、前記係合作用面は先端が窄まったテーパ溝形状の係合溝部の左右の内側面に対して設けられており、前記係合誘導部は開口面積の広い係合溝部の基端部側から進入して係合完了時において係合作用面に楔様に作用して水平2軸方向に固定されるように構成されていることを特徴とするフック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフック装置において、前記係止フックの更に他の一部には前記被係止部の更に他の一部に形成されている第2係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向及び水平2軸方向と直交する水平3軸方向への物品の移動を同時に規制するようにした係合凸部が設けられていることを特徴とするフック装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフック装置において、前記連結する2物品は電子機器の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部であることを特徴とするフック装置。
【請求項6】
記録装置の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部と、前記ハウジング本体に形成されている係止フックと前記ハウジングロア部に形成されている被係止部とを有し、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって、前記ハウジング本体に対するハウジングロア部の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置とを備えた記録装置であって、
前記フック装置は請求項1〜5のいずれか1項に記載したフック装置であることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
液体噴射装置の外観構成部材であるハウジング本体と、該ハウジング本体の開口された底板部に取り付けられるハウジング本体と別体のハウジングロア部と、前記ハウジング本体に形成されている係止フックと前記ハウジングロア部に形成されている被係止部とを有し、前記係止フックの係止爪が前記被係止部の係止作用面に係止されることによって、前記ハウジング本体に対するハウジングロア部の垂直1軸方向への移動を規制するようにしたフック装置とを備えた液体噴射装置であって、
前記係止フックの他の一部には前記被係止部の他の一部に形成されている係合作用面と係合することによって前記垂直1軸方向と直交する水平2軸方向へのハウジング本体に対するハウジングロア部の移動を同時に規制するようにした係合誘導部が設けられていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−39151(P2008−39151A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217377(P2006−217377)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】