説明

フラッシュランプ

【課題】電極リード棒が封止された発光管端部における強度を向上する。
【解決手段】フラッシュランプ10は、内部にキセノンガスが封入された石英ガラスから成る管型発光管11と、発光管の両端部の内側に対向配置された電極13,17と、電極に先端が接合され中間が発光管の端部に気密封止されて基端が発光管の外側に導出する金属製電極リード棒14,18とを備える。金属製電極リード棒に嵌入された段継ぎガラス管26が発光管の端部に挿入され、段継ぎガラス管の一端が電極リード棒18に溶着され、段継ぎガラス管の他端が発光管に溶着される。段継ぎガラス管26は、電極リード棒を包囲して電極17に臨む一端が電極リード棒に溶着されたガラス外套体27と、ガラス外套体の他端に同軸に接合されて発光管11の端部に溶着された石英ガラスビーズ28とを備え、石英ガラスビーズ28は電極リード棒18が僅かな隙間を空けて嵌入可能な内径に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスによる紫外線殺菌の光源として利用されるフラッシュランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線殺菌の光源としては、殺菌に有効とされる波長254nmの紫外線を効率良く放射し、ランプ寿命も長い低圧水銀ランプが一般的に使用されている。けれども、この低圧水銀ランプは、紫外線出力が低いため短時間で大量の被処理物を殺菌処理することができず、また、高出力を得ようとすればランプの使用本数を多くしなければならないので、その設置スペースが大きくなり、更に、被処理物の光透過率が低い場合や、菌が高濃度で存在して被処理物の表面等に重なり合って付着している場合、菌がバイオフィルムを生成してその中に潜んでいる場合、あるいは厚い皮膜で覆われた芽胞菌等のように紫外線の被照射耐性が高い菌の場合には、滅菌レベル(99.9999%以上の殺菌)の殺菌効果を得ることができないという欠点があった。
【0003】
このため、加熱殺菌に適さない食品、飲料、医薬品等やその容器、包装資材等の殺菌処理は、薬液を用いて行なうのが一般的であるが、薬液を使用すると、殺菌処理した被処理物の表面に付着残存する薬液を洗浄除去しなければならないので、被処理物を無菌水で洗浄する洗浄設備や、その無菌水を作って供給する給水設備、使用済みの薬液が含まれた排水を無害化する排水処理設備等が必要となり、それらの設備費やランニングコストが嵩むと同時に、設備の設置スペースも著しく大きくなるという問題があった。また、近時は、世界的な環境保全運動の高まりに伴って、薬液を使用しない無公害な殺菌処理技術の開発が待望されている。
【0004】
このような事情に鑑みて、低圧水銀ランプよりも高出力、高照度の紫外線を放射するフラッシュランプ(閃光放電灯)を用いた殺菌処理技術が種々提案されている。この技術は、例えば図5(b)に示すようなキセノンフラッシュランプ40によって瞬間的に高照度の紫外線を照射するもので、このランプ40は、紫外線透過率の高い石英ガラスによって円筒形に成形され希ガスのキセノンガスが封入されたガラス製発光管41の両端に一対の電極ユニット42,43が対向して配置された構造になっている。
【0005】
発光管41の両端に配置される各電極ユニット42,43は、発光管41の両端部の内側に対向配置された電極48,49と、それらの電極48,49に先端が接合された金属製電極リード棒44,45とをそれぞれ備える。一対の電極48,49及び電極リード棒44,45はそれぞれタングステンにより形成され、陰極となる電極49の先端には、図示しない電子放出性物質の燒結体が固着される。夫々電極リード棒44,45の中間部における外周には封止用ガラス材46,47がそれぞれ溶着され、その封止用ガラス材46,47に発光管41の端縁を溶着することにより、キセノンガスが封入された発光管41の端部を気密に封止すると同時に、その発光管41の端部に電極リード棒44,45を固定するようになっている。
【0006】
このように構成されたキセノンフラッシュランプ40は、電極リード棒44,45に、点灯回路のコンデンサに蓄えられたエネルギーを瞬時に供給すると、発光管41内に生ずる瞬間的な放電プラズマ中のキセノンガスが励起されて、殺菌効果を奏する200〜300nmの短波長紫外線を強力に発するようになっている。これにより、例えば発光長250mm、発光管外径10mm(内径8mm)のキセノンフラッシュランプ40を用いた殺菌試験では、該ランプの中心から被処理物の表面までの照射距離を100mmとしたときに、その被処理物の表面に付着した微生物の滅菌処理に必要なランプ出力と照射回数は、枯草菌芽胞の場合には500Jを6回又は2000Jを1回で足り、また、黒麹カビの場合には500Jを16回又は2000Jを3回で足り、その処理時間も、僅か数秒〜数十秒で足りるという優れた殺菌効果を奏することが確認されている。
【0007】
ここで、このような光パルス殺菌に用いられるフラッシュランプ40の封止用ガラス材46,47を用いた発光管41の端部の封止は従来から行われており(例えば、特許文献1参照。)、この具体的な封止手順は、図5(a)に示すように、タングステンからなる電極リード棒44,45を不活性ガス雰囲気中で高周波又は発熱体で加熱して、その表面に先ず封止用ガラス材46,47をガラス巻き加工する。一方、発光管41を不活性ガス雰囲気中で回転させながら、プロパンと水素又は水素と酸素の混合ガスで加熱し、発光管41の端部の封着用ガラス51,52の開口部に電極ユニット42,43を電極48,49の側から挿入し、電極リード棒44,45の周囲に形成された封止用ガラス材46,47と、発光管41の端部における封着用ガラス51,52とを上記混合ガスで加熱して接続することにより、図5(b)に示すフラッシュランプ40を得ている。そして、近年では石英ガラスから成る発光管41とタングステンから成る電極リード棒44,45の熱膨張率の相違から、保存時と使用時の熱変化によりその接合部分が破損することを防止するために、封着用ガラス51,52として軸方向に熱膨張率が変化する段継ぎガラス管が用いられることが多い。
【0008】
また、このような光パルス殺菌に用いられるフラッシュランプ40は、1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上になると、その発熱量が比較的多くなるために、循環する冷却水により冷却しつつ使用される。そして、フラッシュランプ40の冷却器への挿着及びその冷却器からの離脱に際して、その挿着及び離脱を行う作業員は、ランプ40における発光管41の端部又はその端部から外部に突出する電極リード棒44,45を把持して行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2723573号公報(第1−3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、石英ガラスから成る発光管41とタングステンから成る電極リード棒44,45ではその熱膨張率が相違することから、その電極リード棒44,45を発光管41の端部に密着封止する際に加えられる熱ストレスが発光管41と電極リード棒44,45との接合部分に残存し、石英ガラス単体から成る発光管41の機械的強度に比較して、その接合部分の機械的強度は低下する。このような接合部分の強度の低下は、その接合箇所に段継ぎガラス管を介装させた場合であっても生じる傾向にある。
【0011】
ここで、1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上となるフラッシュランプ40では、冷却器に装着された状態で使用されるけれども、その装着にあっては冷却水の漏れを防止するパッキンが設けられた冷却器にフラッシュランプ40を挿入し、フラッシュランプ40の交換にあっては、発光管に嵌入して密着する冷却器のパッキンから既に使用されたフラッシュランプ40を引き抜く必要もある。このため、フラッシュランプ40の挿脱等のために、作業員がフラッシュランプ40における発光管41の端部又はその端部から外部に突出する電極リード棒44,45を把持すると、その作業員が把持する力が、その接合箇所又はその接合箇所に存在する段継ぎガラス管に直接的に加えられ、又は電極リード棒44,45を介してその接合箇所に間接的に加えられ、その加えられた力により接合箇所が破損するような不具合が生じる。
【0012】
また、発光管41の内部には放電の補助のためのバッファーガスが封入されているけれども、その純度はフラッシュランプ40の光学的・電気的性能や寿命特性に大きく影響する。一方、このフラッシュランプ40は使用時に比較的高温になるものであり、発光管41を構成する石英ガラスはそれまでに取り込んだ不純物ガスを高温において放出する性質がある。このため、フラッシュランプ40の製造にあっては、発光管41を真空状態で加熱し、発光管41を構成する石英ガラスに含まれる不純物ガスを予め取り除く脱ガス処理が行われる。この脱ガス処理にあっては、発光管41の内部を真空にした状態で行う必要があるため、発光管41の両端に電極リード棒44,45が密着封止された状態で行われる。そして、電極リード棒44,45がタングステンである場合には、その外周に設けられる封止用ガラス材46,47はタングステンと同等の熱膨張係数を有するタングステンガラスが用いられる。
【0013】
しかし、封止用ガラス材46,47として用いられるタングステンガラスの軟化点は約775℃と比較的低く、その軟化点が比較的高い約1600℃〜1700℃である石英ガラスと相違する。このため、脱ガス処理時に、電極リード棒44,45を密着封止するタングステンガラスが融解することを防止するために、その脱ガス処理の処理温度はタングステンガラスの軟化点以下に抑える必要がある。よって、従来のフラッシュランプ40では、その脱ガス処理時に、封止用ガラス材46,47の周囲の温度を高めることができずに、その周囲の発光管41に含まれる不純物ガスを十分に取り除くことができないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0014】
本発明の目的は、作業員の作業時に生じ得る電極リード棒と石英ガラスから成る発光管との接合部における破損の発生を未然に防止し得るフラッシュランプを提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、発光管内の不純ガスを極力少なくして、長寿命化を図り得るフラッシュランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内部にキセノンガスが封入された石英ガラスから成る管型発光管と、発光管の両端部の内側に対向配置された電極と、電極が先端に接合され中間が発光管の端部に気密封止されて基端が発光管の外側に導出する金属製電極リード棒とを備えるキセノンフラッシュランプの改良である。
【0017】
その特徴ある構成は、金属製電極リード棒を嵌入する段継ぎガラス管が発光管の端部に挿入され、段継ぎガラス管の一端が電極リード棒に溶着され、段継ぎガラス管の他端が発光管に溶着されて、電極リード棒が発光管の端部に気密封止されたところにある。
【0018】
この場合、段継ぎガラス管は、電極リード棒を包囲して電極に臨む一端が電極リード棒に溶着されたガラス外套体と、ガラス外套体の他端に同軸に接合されて発光管の端部に溶着された石英ガラスビーズとを備え、石英ガラスビーズは電極リード棒が僅かな隙間を空けて嵌入可能な内径に形成されたことが好ましい。
【0019】
また、電極が円柱状幹部を有し、電極と電極リード棒との接合点から段付きガラス管の一端までは所定の距離だけ隔離されると共に、円柱状幹部をその外側面が発光管の壁面に密着するようにシュリンクシールにより発光管に固定することもできる。そして、電極と電極リード棒との接合点から段付きガラス管の一端までの所定の距離が15mm以上であれば、1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上のフラッシュランプとして使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフラッシュランプでは、発光管の端部に挿入された段継ぎガラス管を介して電極リード棒を発光管の端部に気密封止するので、機械的強度が小さい電極リード棒と段継ぎガラス管との融着固定部及び段継ぎガラス管接合箇所を、機械的強度が比較的強い発光管の端部内側に収めることができる。このため、フラッシュランプの挿脱等のために、作業員がフラッシュランプにおける発光管の端部を把持したとしても、その発光管の端部内側に存在する電極リード棒と段継ぎガラス管との融着固定部及び段継ぎガラス管接合箇所が直接的に作業員の手によって把持されるようなことはない。このため、作業員が把持することにより生じる外力が、発光管と電極リード棒との接合部分に直接的に加えられることに起因する破損を防止することができる。
【0021】
また、段継ぎガラス管における石英ガラスビーズが僅かな隙間を空けて電極リード棒に嵌入可能な内径であれば、発光管に融着された機械的強度がある石英ガラスビーズによって、そのビーズに挿通された電極リード棒がそのビーズの内部で著しく振れるようなことは防止される。このため、作業員がフラッシュランプにおける発光管の端部から外部に突出する電極リード棒を把持しても、その電極リード棒が著しく揺動するようなことはなく、その電極リード棒が著しく揺動することに起因して、発光管と電極リード棒との接合部分が破損するようなことを回避することができる。そして、このビーズの内径が電極リード棒の外径に著しく近づくと、その電極リード棒はこのビーズにより実質的に把持されて固定されるものとなり、電極リード棒が封止された発光管端部における強度を著しく向上することができる。
【0022】
また、電極における円柱状幹部をシュリンクシールにより発光管に固定すれば、シュリンクシールにより電極が発光管壁に密着するので、ランプ動作時の電極冷却が促進され、電極の酸化及び電極物質の蒸発が防止される。また、電極から生じるプラズマ放電が電極のリード棒側に回り込んでその電極リード棒と段継ぎガラス管との融着固定部及びその周辺部が破損することを防止することもできる。更に、発光管に電極を固定すれば、その電極に先端が接合された電極リード棒もその電極を介して発光管に固定されることになる。このため、その電極リード棒が移動又は揺動するようなことはなく、その電極リード棒の移動又は揺動に起因する発光管と電極リード棒との接合部分の破損を有効に防止することができる。そして、電極と電極リード棒との接合点から段付きガラス管の一端までを所定の距離だけ隔離させることにより、シュリンクシール時の熱により電極リード棒と段継ぎガラス管との接合部が破損することを回避することができる。
【0023】
一方、本発明のフラッシュランプでは、段継ぎガラス管を融着固定前の発光管の端部に挿入可能に構成したので、発光管の内部に挿入された段継ぎガラス管はその内部において移動可能になる。このため、比較的長い発光管を用いることにより、発光管の脱ガス処理に際して、その段付きガラス管を本来的位置から外して発光管の端部近傍に待避させておくことができる。すると、その段継ぎガラス管が本来的に設けられる部分を加熱しても、その熱は待避位置にある段継ぎガラス管に達しないので、脱ガス処理時に、発光管の段継ぎガラス管が本来的に設けられる部分であっても十分に高い温度での加熱が可能になり、製造時における発光管の脱ガス処理を十分に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施形態のフラッシュランプの断面図である。
【図2】そのフラッシュランプの製造手順を示す図である。
【図3】本発明実施例に用いたフラッシュランプの点灯回路を示す図である。
【図4】その実施例におけるフラッシュランプの点灯回数と残存率との関係を示す図である。
【図5】従来のフラッシュランプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1及び図2に、本発明のフラッシュランプ10を示す。このフラッシュランプ10は、内部にキセノンガスが封入された石英ガラスから成る管型発光管11と、その発光管11の両端に対向して配置された一対の電極ユニット12,16を備える。発光管11は、紫外線透過率の高い石英ガラスによって円筒形に成形され、その両端に配置される一対の電極ユニット12,16は、発光管11の両端部の内側に対向配置されたタングステンからなる電極13,17と、その電極13,17の基端面に先端側が同軸状に接合された金属製電極リード棒14,18とをそれぞれ備える。
【0027】
陽極となる電極13は、断面が円形であって、発光管の内径より僅かに小さな外径を有するバルク状の円柱状幹部のみから成り、陽極用電極リード棒14は電極13の基部に接合されたタングステンロッドにより形成される。また、陰極となる電極17は、断面が円形であって、発光管の内径より僅かに小さな外径を有するバルク状の円柱状幹部17aを有し、その幹部17aの陽極側電極13に臨む先端部には、タングステンを主成分とする電子放出性物質からなる焼結体17bが固着される。陰極用電極リード棒18は電極17の幹部17aが先端に接合されたタングステンロッドにより形成される。そして、それらの電極13,17が先端に接合されたそれぞれの電極リード棒14,18は、それらの中間が発光管11の端部に気密封止されて、基端が発光管11の外側にそれぞれ導出される。このように両端が封止された発光管11の内部には、キセノンガスが封入される。
【0028】
電極リード棒14,18の発光管11の端部への気密封止は段継ぎガラス管21,26を介して行われ、本発明は、発光管11の両端又は片端における段継ぎガラス管が発光管11の端部に挿入されたことを特徴とする。この実施の形態では、発光管11の片側である陰極電極17側における端部に段継ぎガラス管26が挿入される場合を示し、陽極電極13側における端部に段継ぎガラス管21は挿入しない。即ち、この実施の形態における陽極電極ユニット12は、フラッシュランプ10の外部に表出する外部段継ぎガラス管21を介して従来の方法により発光管11の端部に取付けられ、陰極電極ユニット16が、本発明の構成要素となる内部段継ぎガラス管26を介して発光管11の端部に取付けられるものとする。
【0029】
外部段継ぎガラス管21を介して陽極電極ユニット12を発光管11の端部に取付ける具体的な手順を説明すると、先ず、陽極電極リード棒14を不活性ガス雰囲気中で高周波又は発熱体で加熱して、その表面に膨張率がタングステンと同等のタングステンガラスを馴染ませたガラス巻き15を形成する。一方、発光管11を回転させながら、プロパンと酸素又は水素と酸素の混合ガスで加熱し、発光管11の端縁に外部段継ぎガラス管21を溶接する。この外部段継ぎガラス管21は、石英ガラスから成るリング22とタングステンガラスから成るリング23がそれぞれ端部に設けられ、それらの間に複数のガラスリング24a,24bが設けられたものであって、軸方向に熱膨張率が順次変化するように連接されたものである。そして、段継ぎガラス管21の一方の端部における石英ガラスから成るリング22が、石英ガラスからなる発光管11の端縁に溶接され、段継ぎガラス管21の他方の端部におけるタングステンガラスから成るリング23が、電極リード棒14の周囲に形成されたガラス巻き15に溶接される。すると、発光管11の内側に配置された陽極電極13に先端が接合された陽極電極リード棒14の中間は発光管11の端部に気密封止され、その基端が発光管11の外側に導出することになる。このようにして、陽極電極リード棒14は発光管11の端部に外部段継ぎガラス管21を介して気密封止される。
【0030】
一方、陰極電極リード棒18の発光管11の端部への気密封止は、陰極電極17側における発光管11の端部に挿入された内部段継ぎガラス管26を介して行われる。この陰極側における内部段継ぎガラス管26は、電極リード棒18を包囲して一端が電極リード棒18に溶着されたガラス外套体27と、そのガラス外套体27の基端に同軸に接合されて発光管11の端部に溶着された石英ガラスビーズ28とを備える。ガラス外套体27は、石英ガラスから成るリング27aとタングステンガラスから成るリング27bがそれぞれ端部に設けられ、それらの間に複数のガラスリング27c,27d,27eが設けられたものであって、軸方向に熱膨張率が順次変化するように連接されたものである。ガラス外套体27及び石英ガラスビーズ28のそれぞれの外径は発光管11に挿入可能な大きさに形成される。また、ガラス外套体27は電極リード棒18に余裕を持って嵌入可能な内径に形成され、石英ガラスビーズ28は比較的厚肉であって電極リード棒18が僅かな隙間を空けて嵌入可能な内径に形成される。この僅かな隙間とは、0.1mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることが更に好ましい。そして、このガラス外套体27の端部における石英ガラスから成るリング27aが石英ガラスビーズ28に溶接されて内部段継ぎガラス管26が形成される。
【0031】
この陰極における内部段継ぎガラス管26は、ガラス外套体27が陰極電極17に臨むように陰極電極リード棒18を嵌入し、陰極電極リード棒18には、陽極電極リード棒14と同様に、その周囲にタングステンガラスのガラス巻き19が予め形成される。そして、内部段継ぎガラス管26の陰極電極17に臨む一端、即ち、ガラス外套体27のタングステンガラスから成るリング27bの先端部が、電極リード棒18の周囲に形成されたガラス巻き19に溶接される。このとき、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から内部段継ぎガラス管26の一端までは所定の距離Lだけ隔離される。この所定の距離Lは15mm以上であることが好ましく、22mm以上であることが更に好ましい。このように電極リード棒18に一端が接合された内部段継ぎガラス管26を介して、この陰極電極リード棒18は発光管11の端部に気密封止されるけれども、その封止は、陽極電極ユニット12が設けられて発光管11の陽極側端部が封止された後に行われる。
【0032】
図2に、発光管11の陽極側端部が封止された後に行われる発光管11の陰極側端部における気密封止を示す。図2(a)に示すように、発光管11は、陰極電極ユニット16が設けられる部分を越えるような長さのものが準備され、その一方の端部に陽極電極ユニット12が設けられて封止される。この発光管11には、この発光管11の内部のガスを排気するための排気管11aが陰極電極ユニット16が正規に設けられる位置と他方の暫定的端縁との間に設けられる(図2(c))。内部段継ぎガラス管26は、陰極電極リード棒18を嵌入して、電極17に臨むそのガラス外套体27における一端部が予め電極リード棒18に溶接される。このように内部段継ぎガラス管26が電極リード棒18に溶接された陰極電極ユニット16を、電極17が陽極電極13に対向するように発光管11の端部にその内部段継ぎガラス管26とともに挿入し、図2(b)に示すように、その後に発光管11の他方の暫定的端部を熱封止する。
【0033】
次に、いわゆる脱ガス処理を行う。図2(b)に示すように、この脱ガス処理に際して、陰極電極ユニット16は、本来設けられる位置から外して、発光管11の封止された他方の暫定的端部近傍に待避させる。また、陽極電極ユニット12の近傍には、発光管11の一方の端部に連接された外部段継ぎガラス管21が過熱されることを防止する防熱壁32が設けられる。発光管11を加熱する発熱体31は、防熱壁32が設けられた部分から排気管11a近傍の陰極電極ユニット16が本来的に設けられる部分までを十分に加熱可能なものが用いられる。この発熱体31により発光管11を加熱するとともに、排気管11aを介して発光管11内部のガスを外部に排気して、その発光管11を構成する石英ガラスに含まれた不純物ガスを取り除く。そして、この脱ガス処理が完了した後に、排気管11aから真空状態の発光管11の内部にキセノンガスを所定量送り込んで、その排気管11aを封止することにより(図2(c))、発光管11の内部にキセノンガスを封入する。
【0034】
その後、図2(c)に示すように、陰極電極ユニット16を正規の位置に発光管11を傾けるなどして移動させ、そのユニット16ともに移動する内部段継ぎガラス管26の石英から成る石英ガラスビーズ28の周囲を加熱する。そして、石英ガラスビーズ28の周囲における発光管11を溶融軟化させて、内部が減圧状態にあるために、その部分が縮径することを利用して、石英ガラスビーズ28に溶着させる。こうして、前記の通り、ガラス外套体27を構成する熱膨張係数がタングステンに近いリング27bが陰極電極リード棒18に融着すると共に、そこから隔離した場所で、内部段継ぎガラス管26の、熱膨張係数が石英ガラスと同じ石英ガラスビーズ28が、発光管11に融着することになる。
【0035】
その後、石英ガラスビーズ28の基端縁に沿って発光管11を切断し、その基端縁を越える部分を排気管11aとともに除去する。すると、図2(d)に示すように、発光管11の内側に配置された陰極電極17に先端が接合された陰極電極リード棒18は、その中間が発光管11の端部に気密封止され、その基端が発光管11の外側に導出されることになる。これにより、陰極電極リード棒18が発光管11の端部に気密封止される。そして、排気管11aは切断除去された発光管11の端部とともに除去されるので、排気管11aを取り除いた痕跡である排気チップ部11b(図2(c))がフラッシュランプ10における発光管11に残存するようなことはない。
【0036】
図1に戻って、最後の工程として、一対の電極13,17はいずれも少なくとも円柱状幹部13,17aを有するので、この円柱状幹部13,17aはその外側面が全長に亘って発光管11の壁面に密着するようにシュリンクシールによりその発光管11に固定される。即ち、電極ユニット12,16が発光管11の両端部に設けられて、その発光管11の両端部が気密封止された後に、電極13,17を構成する各円柱状幹部13,17aの周囲をそれぞれ加熱する。そして、各円柱状幹部13,17aの周囲における発光管11を溶融軟化させて、内部が減圧状態にあるために、その部分が縮径することを利用して、各円柱状幹部13,17aに溶着させる。このようにすることにより、1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上のフラッシュランプ10を完成させることができる。
【0037】
このように構成されたフラッシュランプ10では、発光管11の端部に挿入された内部段継ぎガラス管26を介して陰極電極リード棒18を発光管11の端部に気密封止するので、機械的強度が小さい陰極電極リード棒18と内部段継ぎガラス管26との融着固定部及び段継ぎガラス管接合箇所は、機械的強度が比較的強い発光管11の端部における内側に収められる。ここで、「段継ぎガラス管接合箇所」とは、内部段継ぎガラス管26における複数のガラスリング27c,27d,27eが接合された部分を示し、従来から外力により破損しやすいと言われている箇所である。このため、フラッシュランプ10の挿脱等のために、作業員がフラッシュランプ10における発光管11の端部を把持したとしても、その発光管11の端部内側に存在する陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との融着固定部及び段継ぎガラス管接合箇所が直接的に作業員の手によって把持されるようなことはない。このため、作業員が把持することにより生じる外力は機械的強度が比較的強い発光管11により受け止められ、その外力が発光管11と陰極電極リード棒18との接合部分に直接的に加えられることに起因する破損を防止することができる。
【0038】
また、内部段継ぎガラス管26における石英ガラスビーズ28が僅かな隙間を空けて陰極電極リード棒18に嵌入可能な内径であるので、発光管11に融着された機械的強度がある石英ガラスビーズ28によって、そのビーズ28に挿通された陰極電極リード棒18はそのビーズ28の内部で著しく振れるようなことは防止される。このため、作業員がフラッシュランプ10における発光管11の端部から外部に突出する陰極電極リード棒18を把持しても、その陰極電極リード棒18が著しく揺動するようなことはなく、その陰極電極リード棒18が著しく揺動することにより、発光管11と陰極電極リード棒18との接合部分が破損するようなことを回避することができる。そして、このビーズ28の内径が陰極電極リード棒18の外径に近づいて、石英ガラスビーズ28と電極リード棒18との間の隙間が0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下になると、その陰極電極リード棒18はこのビーズ28により実質的に把持されて固定されるようなものとなり、その電極リード棒18が封止された発光管11端部における強度を更に高めることができる。この結果、作業員の作業時に生じ得る電極リード棒18と石英ガラスから成る発光管11との接合部における破損の発生を未然に防止することが可能になる。
【0039】
また、電極13,17におけるそれぞれの円柱状幹部13,17aをシュリンクシールにより発光管11に固定しているので、そのシュリンクシールにより電極13,17の外側面は発光管11の内壁に密着することになる。そして、使用条件における1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上であると、このフラッシュランプ10は循環する冷却水により冷却しつつ使用されることになる。すると、このランプ10の動作時に発光管11の外部を流通する冷却水は、その発光管11に密着する電極13,17をも冷却するので、それら電極13,17の酸化及び電極13,17物質の蒸発を防止することができる。
【0040】
また、電極13,17におけるそれぞれの円柱状幹部13,17aをシュリンクシールにより発光管11に固定しているので、円柱状幹部13,17aの外周と発光管11の内周との間に隙間はない。このため、その隙間を介して電極13,17から生じるプラズマ放電が電極13,17のリード棒14,18側に回り込むことはなく、プラズマ放電の回り込みに起因する電極リード棒14,18の融着固定部及びその周辺部が破損することを防止することもできる。
【0041】
更に、発光管11に陰極電極17が固定されるので、その電極17に先端が接合された陰極電極リード棒18もその電極17を介して発光管11に固定されることになる。すると、この電極リード棒18は、発光管11に固定された先端と石英ガラスビーズ28に包囲された部分の間が内部段継ぎガラス管26に溶着される結果となり、作業員がこの陰極電極リード棒18を把持しても、その陰極電極リード棒18が軸方向に移動したり又は揺動するようなことを防止することができる。よって、その陰極電極リード棒18の移動又は揺動に起因する発光管11と陰極電極リード棒18との接合部分の破損を効果的に防止することができる。
【0042】
ここで、電極17と陰極電極リード棒18との接合点から内部段付きガラス管26の一端までを所定の距離Lだけ隔離させるので、シュリンクシール時の熱が電極17から陰極電極リード棒18に伝達され、その陰極電極リード棒18と内部段継ぎガラス管26との接合部がその熱により破損することは無い。
【0043】
一方、本発明のフラッシュランプ10においても、発光管11を構成する石英ガラスに含まれる不純物ガスを取り除くための脱ガス処理が行われる。けれども、本発明のフラッシュランプ10にあっては、段継ぎガラス管26を発光管11の端部に挿入可能に構成したので、発光管11の両端部を封止した状態であっても、段継ぎガラス管26は発光管11の内部において移動可能になる。このため、図2(a)に示すように、陰極電極ユニット16が設けられる部分を越えるような長さの発光管11を用いることにより、図2(b)に示すように、この脱ガス処理に際して、その段付きガラス管26を陰極電極ユニット16とともに発光管11の封止された端部近傍に待避させておくことができる。すると、発光管11の陰極電極ユニット16が本来的に設けられる部分を加熱しても、その熱は待避位置にある段継ぎガラス管26に達しない。よって、本発明のフラッシュランプ10では、その脱ガス処理時に、発光管11の陰極電極ユニット16が本来的に設けられる部分であっても十分に高い温度での加熱が可能になり、発光管11の製造時における脱ガス処理を十分に行うことができる。この結果、発光管11内の不純ガスを極力少なくすることができ、得られたフラッシュランプ10の長寿命化を図ることができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、発光管11の片側である陰極電極17側における端部に本発明の構成要素である段継ぎガラス管26を挿入し、陽極電極13側における端部に従来技術に属する段継ぎガラス管21を設ける場合を説明したけれども、図示しないが、陰極電極17側における発光管11の端部に段継ぎガラス管26を挿入するとともに、陽極電極13側における端部にも段継ぎガラス管26を挿入しても良い。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0046】
<実施例1>
図1に示すようなフラッシュランプ10を製造した。即ち、発光管11と、その発光管11の両端部の内側に対向配置された一対の電極13,17と、その一対の電極13,17に先端が接合された一対の電極リード棒14,18とを備え、発光管11の片側である陰極電極17側における端部に段継ぎガラス管26が挿入され、陽極電極13側における端部に段継ぎガラス管21を挿入しないフラッシュランプ10を準備した。発光管11は、紫外線透過率の良い石英ガラスで成形され、その内径が8mmのものを準備した。
【0047】
陽極電極13は、直径7.5mmであって長さが30mmのタングステンから成る円柱状のものを使用した。陰極電極17は、直径7.5mであって長さが25mmのタングステンから成る円柱状幹部17aと、その幹部17aの先端部に固着されたタングステンを主成分とする電子放出性物質からなる焼結体17bとを備えるものを使用した。一対の電極リード棒14,18はそれぞれ外径が2.4mmのタングステンロッドを用いた。
【0048】
電極リード棒14,18の発光管11の端部への気密封止は段継ぎガラス管21,26を介して行った。陽極電極13にあっては、その電極13と電極リード棒14との接合箇所からの距離Hが35mmのところの電極リード棒14の表面にガラス巻き15を形成した。その一方で、発光管11の端縁に外部段継ぎガラス管21を接続した。そして、外部段継ぎガラス管21のタングステンガラスから成る端部をガラス巻き15に溶接して陽極電極リード棒14の中間を発光管11の端部に気密封止した。
【0049】
一方、発光管11の片側である陰極電極17側における端部には、ガラス外套体27と石英ガラスビーズ28からなる内部段継ぎガラス管26を挿入した。石英ガラスビーズ28は外径が7.6mmのものを使用した。但し、石英ガラスビーズ28の内径は、電極リード棒18が僅かな隙間を空けて嵌入可能な2.5mmとした。このため、石英ガラスビーズ28との内面と電極リード棒18の外面との間に形成されるこの僅かな隙間は、計算上0.05mmになる。
【0050】
陰極電極リード棒18には、ガラス巻き19を予め形成し、内部段継ぎガラス管26の陰極電極17に臨む一端をそのガラス巻き19に溶接した。このとき、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から内部段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを22mmとした。
【0051】
内部段継ぎガラス管26が電極リード棒18に溶接された陰極電極ユニット16を発光管11の端部に挿入し、脱ガス処理及びキセノンガスの封入を行った。キセノンガスは発光管11の内部に300Torrの圧力で封入した。その後、この陰極電極ユニット16を正規の位置に移動させ、そのユニット16ともに移動する内部段継ぎガラス管26の石英から成る石英ガラスビーズ28の周囲を加熱して、その周囲における発光管11を溶融軟化させて石英ガラスビーズ28に溶着させた。このとき、一対の電極13,17の間の距離Dを330mmとした。その後、石英ガラスビーズ28の基端縁に沿って発光管11を切断し、その基端縁を越える部分を除去した。
【0052】
その後、最後の工程として、一対の電極13,17の周囲をそれぞれ加熱して、その周囲における発光管11を溶融軟化させて縮径させ、各円柱状幹部13,17aに溶着させた。即ち、電極13,17の外側面を発光管11の壁面に密着させて、フラッシュランプ10を完成させた。このように、シュリンクシールにより電極13,17が発光管11に固定されたフラッシュランプ10を8本準備した。この8本のフラッシュランプ10を実施例1とした。
【0053】
<比較例1>
陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から内部段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを12mmとしたことを除いて、実施例1と同一の材料及び同一の手順により、シュリンクシールにより電極13,17が発光管11に固定された図1に示すフラッシュランプ10を15本得た。この15本のフラッシュランプ10を比較例1とした。
【0054】
<比較試験>
図3に示す点灯回路60及び冷却器70を準備した。図3に示す点灯回路は、充電用コンデンサ61、充電用電源62、波形調整用インピーダンズ63、半導体スイッチ64、シマー放電用電源65、シマー放電電流制御用インピーダンス66とで構成され、シマー放電用電源65から2000Vの直流電圧が印加されるとランプが絶縁破壊しシマー点灯する。このときシマー放電電流制御用インピーダンス17によって100mAのシマー電流が流れ、ランプはフラッシュ点灯の待機状態になり、次に、充電用電源62からコンデンサ61に直流電圧が印加されて、2000Jの充電エネルギーが蓄えられる(充電電圧4000V、コンデンサ容量250μF)。そして、半導体スイッチ64に点灯信号が入力されると、発光管11にコンデンサ61に蓄えられた電荷が一気に流れて、瞬間的に高強度の光パルスが発せられる。なお、電流は波形調整用インピーダンズ63で制御されるが、本寿命試験におけるピーク電流は2600A、半値幅400μsとした。
【0055】
一方、冷却器70は、フラッシュランプ10を包囲する水冷ジャケット71と、その水冷ジャケット71に冷却水を供給する冷却器本体76とを備える。水冷ジャケット71は、フラッシュランプ10の両端における電極13,17を包囲するように装着される循環子機72,73と、それらの循環子機72,73の間に設けられてフラッシュランプ10をその外面から所定の間隔を空けて包囲するガラス管74とを備えるものを用いた。そして、フラッシュランプ10の陰極電極17の周囲に設けられた一方の循環子機72に冷却器本体76からの供給管77を接続し、フラッシュランプ10の陽極電極13の周囲に設けられた他方の循環子機73から冷却器本体76へ排出管78を接続した。
【0056】
冷却器本体76は、冷却水を所定の温度に調整して、その温度が調整された冷却水を供給管77を介して一方の循環子機72に供給し、ガラス管74を通過して他方の循環子機73に流入した冷却水を、その他方の循環子機73から排出管78を介して回収可能に構成した。
【0057】
そして、冷却器本体76により20℃に調整された冷却水を毎分5リットルの割合で循環子機72に供給し、フラッシュランプ10とガラス管74の間を通過する冷却水によりフラッシュランプ10の周囲を冷却しつつ、図3に示す点灯回路を用いて実施例1及び比較例1におけるフラッシュランプ10を1秒間に2回の頻度でそれぞれ点灯させた。この点灯を100万回繰り返し、点灯回数が50万回の時と、100万回の時に、フラッシュランプ10における陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分を10〜20倍の拡大鏡を用いて目視により観察した。この観察は、陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分のクラック及び剥離の有無の確認を目的として行った。
【0058】
その結果、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを22mmとした実施例1における8本のフラッシュランプ10の全ては、点灯回数が50万回の時と、100万回の時の何れにあっても、陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分にクラック及び剥離を観察することはできなかった。
【0059】
一方、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを12mmとした比較例1における15本のフラッシュランプ10は、1秒間に2回の頻度で更に点灯を繰り返し、点灯回数が50万回の時に、その内の7本において陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分にクラックや剥離は観察されなかったけれども、8本においてはその部分に剥離が観察された。そして、クラックや剥離が観察されなかった7本のフラッシュランプ10であっても、その点灯回数が100万回に達した段階では、その内の4本において陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分にクラックや剥離は観察されなかったけれども、3本においてはその部分に剥離が新たに観察された。この結果を図4に示す。なお、比較例1における15本のフラッシュランプ10の内の11本において剥離が観察されたことになるけれども、その内の6本については、更にクラックが発生して不点灯となり、点灯回数が100万回に達しなかった。
【0060】
<評価>
図4から明らかなように、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを12mmとした比較例1におけるフラッシュランプにのみ、陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分に剥離が観察されている。一方、陰極電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端までの所定の距離Lを22mmとした実施例1におけるフラッシュランプ10では、そのような剥離が観察されていない。これは、シュリンクシール時に発光管11の周囲に与えられる熱が電極17から陰極電極リード棒18に伝達され、その陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部にその熱ストレスが加わることに起因するものと考えられる。
【0061】
このため、シュリンクシールにより電極13,17を発光管11に固定するフラッシュランプ10にあっては、電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端まで所定の距離Lだけ隔離させる必要があり、その所定の距離Lは長い方が好ましいことが判る。そして、その所定の距離Lにあっては、比較例1の12mmでは好ましく無く、実施例1の22mmであれば十分であることも判る。してみると、その中間は15mm程度と推測でき、電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端まで所定の距離Lは15mm以上であることが好ましいと推測できる。そして、実施例1の結果から、その所定の距離Lは22mm以上であれば、陰極電極リード棒18と段継ぎガラス管26との接合部分における剥離等を確実に回避することができるので、更に好ましいことも判る。
【0062】
このことは、換言すれば、図1に示すように、電極17と陰極電極リード棒18との接合点から段継ぎガラス管26の一端まで所定の距離Lだけ隔離させることを条件に、シュリンクシールにより電極17を発光管11に固定することが可能になることを意味する。すると、このようなフラッシュランプ10にあっては、循環する冷却水により電極13,17の冷却を促進できるので、冷却を条件とする1回の閃光の発光エネルギーが単位発光長当たり15J/cm以上のフラッシュランプ10としての使用が可能になることも判る。
【符号の説明】
【0063】
10 フラッシュランプ
11 発光管
17 電極
17a 円柱状幹部
18 電極リード棒
26 段継ぎガラス管
27 ガラス外套体
28 石英ガラスビーズ
L 所定の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にキセノンガスが封入された石英ガラスから成る管型発光管(11)と、前記発光管(11)の両端部の内側に対向配置された電極(13,17)と、前記電極(13,17)が先端に接合され中間が前記発光管(11)の端部に気密封止されて基端が前記発光管(11)の外側に導出する金属製電極リード棒(14,18)とを備えるキセノンフラッシュランプにおいて、
前記金属製電極リード棒(18)を嵌入する段継ぎガラス管(26)が前記発光管(11)の端部に挿入され、前記段継ぎガラス管(26)の一端が前記電極リード棒(18)に溶着され、前記段継ぎガラス管(26)の他端が前記発光管(11)に溶着されて、
前記電極リード棒(18)が前記発光管(11)の端部に気密封止された
ことを特徴とするフラッシュランプ。
【請求項2】
段継ぎガラス管(26)は、電極リード棒(18)を包囲して電極(17)に臨む一端が前記電極リード棒(18)に溶着されたガラス外套体(27)と、前記ガラス外套体(27)の他端に同軸に接合されて発光管(11)の端部に溶着された石英ガラスビーズ(28)とを備え、
前記石英ガラスビーズ(28)は前記電極リード棒(18)が僅かな隙間を空けて嵌入可能な内径に形成された請求項1記載のフラッシュランプ。
【請求項3】
電極(17)が円柱状幹部(17a)を有し、前記電極(17)と電極リード棒(18)との接合点から段継ぎガラス管(26)の一端までは所定の距離(L)だけ隔離されると共に、前記円柱状幹部(17a)はその外側面が発光管(11)の壁面に密着するようにシュリンクシールにより前記発光管(11)に固定された請求項1又は2記載のフラッシュランプ。
【請求項4】
1回の閃光の発光エネルギーは単位発光長当たり15J/cm以上であり、電極(17)と電極リード棒(18)との接合点から段継ぎガラス管(26)の一端までの所定の距離(L)が15mm以上である請求項3記載のフラッシュランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−199153(P2012−199153A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63466(P2011−63466)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】