説明

フラビウイルス科ファミリーのウイルスに対して抗ウイルス特性を有するキメラペプチド分子

本発明は、フラビウイルス科ファミリーのウイルスのNS3proプロテアーゼの活性化を阻害する少なくとも1つの部分及び細胞透過性部分を含有する一次構造を有し、ウイルスによる感染を阻害するか、又は軽減することができるキメラペプチドに関する。本発明はまた、前記キメラペプチドを含有し、フラビウイルス科ファミリーのウイルスが原因である感染を予防及び/又は治療するための医薬化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬業界に関し、より具体的には、一次構造がフラビウイルス科ファミリーのウイルスのNS3プロテアーゼを阻害する少なくとも1個の部分を保持するキメラペプチドに関し、これらのキメラペプチドは細胞透過性部分も含み、ウイルス感染を阻害又は軽減することができる。本発明はまた、フラビウイルス科ファミリーのウイルスが原因の感染を予防及び/又は治療するためのキメラペプチドを含有する医薬化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルス科ファミリーは、3種類の属、フラビウイルス、ヘパシウイルス及びペスチウイルスの1種に属するエンベロープ型プラス一本鎖RNAウイルスによって構成される。フラビウイルス属は、70種を上回るウイルスを含み、それらの多くがヒト及びその他の種の関連疾患を引き起こす。この属の構成要素は、黄熱病ウイルス(YFV)、デング熱ウイルス(DV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBE)、西ナイルウイルス(WNV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)及びその他である。C型肝炎ウイルス(HCV)は、ヘパシウイルスの原型である。ペスチウイルス属の構成要素として、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、ボーダー病ウイルス(BDV)及びその他が発見されている。
【0003】
フラビウイルス科ファミリーの異なる属に属するウイルスは、抗原の交差反応を示さず、異なる生物学的特性を示すが、ウイルス粒子形態、ゲノム組成及び複製方法などの面では明らかな類似性を示す(Leyssen,P.、De Clercq,E.、Neyts,J.2000「フラビウイルス科による感染治療の展望(Perspectives for the treatment of infections with Flaviviridae.)」Clin Microbiol Rev.、3:67〜82;Rice,C.M.1996.「フラビウイルス科:ウイルス及び複製(Flaviviridae:the viruses and their replication)」931〜960頁;B.N.Fields、D.M.Knipe及びP.M.Howley編、Fields virology、3版、1巻、Lippincott−Raven Publishers、Philadelphia、Pa.;Westaway,E.G.1987.「フラビウイルス複製方法(Flavivirus replication strategy)」Adv.Virus Res.33:45〜90)。
【0004】
HCVは、世界的に重要な健康問題となっている。WHOによると、世界人口の約3%がこのウイルスに感染しており、慢性的キャリアの1億7000万人超が肝硬変及び/又は肝臓癌を発症する危険があることが指摘されている(Consensus Panel.EASL International Consensus Conference on Hepatitis C、Paris,26〜28 February 1999、Consensus Statement.J.Hepatol.、1999、30、956)。毎年約3〜400万例のHCVによる新たな感染が世界中で発生している(Tan,S.L.、Pause,A.、Shi,Y.& Sonenberg,N.(2002)Nat.Rev.Drug Discov.1、867〜881)。感染した患者の少なくとも85%が慢性的感染に進行する(Alter,M.J.、E.E.Mast、L.A.Moyer及びH.S.Margolis.1998.Hepatitis C.infect.Dis.Clin.North Am.12:13〜26)。慢性C型肝炎は、症候性にせよ無症候性にせよ肝硬変及び/又は癌になることが多い。10〜20年間実施した追跡研究によって、患者の20〜30%が肝硬変を発症し、これらの患者の1〜5%がさらに10年後には癌を発症し得ることが示された(Dutta,U.、J.Kench,K.Byth,M.H.Khan,R.Lin,C.Liddle及びG.C.Farrell.1998.「肝細胞の増殖及び肝細胞癌の発症:慢性C型肝炎における症例対照研究(Hepatocellular proliferation and development of hepatocellular carcinoma:a case−control study in chronic hepatitis C.)」Hum.Pathol.29:1279〜1284;Pontisso,P.、C.Belluco,R.Bertorelle,L.De Moliner,L.Chieco Bianchi,D.Nitti,M.Lise及びA.Alberti.1998.「ヒト肝細胞癌に関係するC型肝炎ウイルス感染:コーカサス人患者におけるp53異常との関連性の欠如(Hepatitis C virus infection associated with human hepatocellular carcinoma:lack of correlation with p53 abnormalities in Caucasian patients.)」Cancer 83:1489〜1494)。合衆国ではHCVが原因の年間死亡数は、2008年で35000件に至り得る見込みである(Dutta,U.、J.Kench、K.Byth、M.H.Khan、R.Lin、C.Liddle及びG.C.Farrell.1998.「肝細胞の増殖及び肝細胞癌の発症:慢性C型肝炎における症例対照研究(Hepatocellular proliferation and development of hepatocellular carcinoma:a case−control study in chronic hepatitis C.)」Hum.Pathol.29:1279〜1284;Pontisso,P.、C.Belluco、R.Bertorelle、L.De Moliner、L.Chieco Bianchi、D.Nitti、M.Lise及びA.Alberti.1998.「ヒト肝細胞癌に関係するC型肝炎ウイルス感染:コーカサス人患者におけるp53異常との関連性の欠如(Hepatitis C virus infection associated with human hepatocellular carcinoma:lack of correlation with p53 abnormalities in Caucasian patients.)」Cancer 83:1489〜1494)。
【0005】
現在、FDAによって認可された抗HCV治療は、インターフェロン単独療法及びインターフェロン−リバビリン併用療法である(Dymock,B.W.Emerging Drugs 2001、6(1)、13及びその中の参考文献)。最近、ペグ化されたインターフェロン変種の使用が承認され、これらの治療の治療効果が増大しているが、まだ理想からは遠くかけ離れている。この疾患は重篤であるため、より効果的な新規治療が必要とされている。
【0006】
ヒトに感染するフラビウイルスは、マダニ及び蚊などの節足動物によって伝染し、そのことがこれらの疾患の根絶を困難にしている(Monath,T.P.及びF.X.Heinz.1996.Flaviviruses、961〜1034頁、In B.N.Fields、D.M.Knipe及びP.M.Howley編、Fields virology、3版、1巻、Lippincott−Raven Publishers、Philadelphia、Pa.)。黄熱病は、今もなお出血熱の重要な原因であり、ワクチンが既に使用できるにもかかわらず、死亡率は50%と高い。
【0007】
デングウイルスは、熱帯地方で大流行しており、その再出現は、ますます世界的な公衆衛生問題である。年間約1億のデングウイルス感染が起こっており、25億人が流行地域に居住している、と推定される(Gubler,D.J.1998.Clin.Microbiol.Rev.11、480〜496;Monath,T.P.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91、2395〜2400)。1990〜1998の期間、WHOに報告されたデング出血熱(DHF)の平均症例数は、15000例の死亡を含めて1年当たり514139例であったが、実際の罹患数は数倍であると考えられる。しかし、ワクチンも特異的な抗ウイルス治療薬も市販されていない。デングウイルス複合体は、遺伝的及び抗原的に関連した4種類の異なるウイルス又は血清型(VD1〜VD4)によって構成されている。DVは、蚊、主にネッタイシマカによってヒトに伝染する。感染は、無症候性及び良性から未分化型熱性疾患又はDHFのようなより重度の徴候及び致死性デングショック症候群(DSS)まで様々な異なる臨床徴候を引き起こす。最も重度の臨床徴候は、2種類の異なる血清型の連続感染に関連していることが多い(Halstead,S.B.「デングウイルスの中和及び抗体依存性増強(Neutralization and antibody−dependent enhancement of dengue viruses.)」Adv.Virus Res.60:421〜67、421〜467、2003.Hammon WMc.「フィリピン及びタイの子供達の新規出血熱(New haemorragic fever in children in the Philippines and Thailand.)」Trans Assoc Physicians 1960;73:140〜155)。疫学的研究が実施され、異なる血清型による連続感染が重度の疾患の危険因子である証拠が示された(Halstead,S.B.「デングウイルスの中和及び抗体依存性増強(Neutralization and antibody−dependent enhancement of dengue viruses.)」Adv.Virus Res.60:421〜67、421〜467、2003。Hammon WMc.「フィリピン及びタイの子供達における新規出血熱(New haemorragic fever in children in the Philippines and Thailand.)」Trans Assoc Physicians 1960;73:140〜155)。この現象は、「抗体依存性増強(ADE))の理論によって説明されており、感染力の増加が感染細胞のFC受容体によって媒介されるウイルスのより効果的な細胞侵入と関連することを指摘している(Halstead SB.「デング熱の病変形成:分子生物学への挑戦(Pathogenesis of dengue:challenges to molecular biology.)」Science 1988;239:476〜481)。
【0008】
その他のフラビウイルスは、世界的なウイルス性脳炎の主な原因であるJEVである。アジアでは1年間に約50000例が生じ、死亡率は30%と高く、症例の30%において長期間持続する神経性疾患が生じる(Kalita,J.、及びU.K.Misra.1998.「日本脳炎におけるEEG:臨床放射線学的関連(EEG in Japanese encephalitis:a clinicoradiological correlation.)」Electroencephalogr.Clin.Neurophysiol.106:238〜243;Kaluzova,M.、E.Eleckova,E.Zuffova,J.Pastorek,S.Kaluz,O.Kozuch及びM.Labuda.1994.「弱毒化マダニ媒介性脳炎ウイルス変異体の復帰病原性は、推定ウイルスエンベロープタンパク質のアミノ酸配列における変化を伴わない(Reverted virulence of attenuated tick−borne encephalitis virus mutant is not accompanied with the changes in deduced viral envelope protein amino acid sequence.)」Acta Virol.38:133〜140)。
【0009】
重症の脳炎はまた、TBEVのようなその他のフラビウイルスによって引き起こされ、このウイルスには2種類のサブタイプ、関連死亡率が20%である東型及び1〜2%である西型がある(Heinz,F.X.及びC.W.Mandl.1993.「マダニ媒介性脳炎ウイルスの分子生物学(The molecular biology of tick−borne encephalitis virus.)」APMIS 101:735〜745);オーストラリアにおけるマレー渓谷脳炎(MVE)(Mackenzie,J.S.、及びA.K.Broom.1995.「オーストラリアのX疾患、マレー渓谷脳炎及びフランスの関係(Australian X disease,Murray Valley encephalitis and the French connection.)」Vet.Microbiol.46:79〜90);合衆国西部におけるSLEV並びにアフリカ、中東及び地中海で流行するWNVはまた、最近合衆国で大流行した。1999年に合衆国に出現してから、非常に迅速に拡大し、約15000人が感染し、死者は600人を上回った。しかし、現在のところ、有用なワクチンや、WNVを防御する薬物はない(van der Meulen,K.M.、Pensaert,M.B.及びNauwynck,H.J.(2005)「脊椎動物界における西ナイルウイルス(West Nile virus in the vertebrate world.)」Arch.Virol.150、637〜657)。
【0010】
出血性の徴候は、死亡率が0.5〜3%であるロシアのオムスク出血熱ウイルス(OHFV)及びインドのキャサヌール森林病ウイルス(KFDV)のようなその他のフラビウイルスによって引き起こされる(Monath,T.P.及びF.X.Heinz.1996.Flaviviruses、961〜1034頁、In B.N.Fields、D.M.Knipe及びP.M.Howley編、Fields virology、3版、1巻、Lippincott−Raven Publishers、Philadelphia、Pa.)。
【0011】
その他のフラビウイルス、跳躍病ウイルス(LIV)は主にヒツジに感染するが、時折ヒト感染も報告されてきた(Davidson,M.M.、H.Williams及びJ.A.Macleod.1991.「人における跳躍病:忘れられた病気(Louping ill in man:a forgotten disease.)」J.Infect.23:241〜249)。
【0012】
ペスチウイルスBVDV、CSFV及びBDVは、動物において重大な疾患を引き起こす。これらのウイルスは、その他の宿主においてはより軽度の疾患を引き起こすが、それぞれの宿主においては、通常死に至る重度の疾患を引き起こす。しばしば、感染は、口腔鼻又は胎盤経路によって生じる。後者は、残りの家畜にとって脅威となる持続性感染に関与する(Edwards,S.、P.M.Roehe及びG.Ibata.1995.「実験用ブタ及びヒツジにおけるボーダー病及び近縁ウイルス感染の比較研究(Comparative studies of border disease and closely related virus infections in experimental pigs and sheep.)」Br.Vet.J.151:181〜187)。
【0013】
いくつかのフラビウイルス科ファミリーは、類似の複製方法を共有すると推定される。ウイルス複製サイクルは、宿主細胞表面へのウイルスの付着によって開始する。デングウイルスの場合、ウイルスは、細胞との相互作用の最初の部位であり得るグリコサミノグリカンに結合することが示された。ウイルスがDC−SIGNに結合することも示されたが、これらの分子の役割は、細胞表面上又はin vivoにおける第2の複製部位に広がったウイルスのウイルス濃度に関係するようである。ウイルスは最初に結合した後、エンドサイトーシスによるウイルスの細胞内侵入を媒介する親和性の高い受容体及び/又は共受容体と相互作用する。WNVの場合、αβインテグリンが、これらの手段として役立つことができると仮定された(Chu,J.J−H.及びNg,M.−L.、2004.「西ナイルウイルスと、αβインテグリンとの相互作用は、ウイルスの細胞内侵入を媒介する(Interaction of West Nile Virus with αβ Integrin Mediates Virus Entry into Cells.)」J.Biol.Chem 279、54533〜54541)。HCVは細胞受容体CD81に結合することも示された(Pileri,P.、Y.Uematsu、S.Campagnoli,G.Galli、F.Falugi、R.Petracca、A.J.Weiner、M.Houghton、D.Rosa、G.Grandi及びS.Abrignani.1998.「C型肝炎ウイルスのCD81への結合(Binding of hepatitis C virus to CD81.)」Science 282:938〜941)。ウイルスが一旦エンドサイトーシス区画に局在すると、この区画のpHが下降してウイルスと細胞膜との間の融合プロセスを誘導し、このプロセスはウイルスエンベロープの融合タンパク質の構造変化によって媒介される。このプロセスによって、ウイルスキャプシドが細胞質中に解放され、その後細胞質にウイルスRNAが放出される。
【0014】
細胞質中で、ウイルスのゲノムRNAは非翻訳5′領域(5′UTR)を介してリボソームと相互作用し、ウイルス固有のオープンリーディングフレームの翻訳を引き起こす。このように、フラビウイルスの場合では、3種類の構造タンパク質(C、プレM及びE)及び5種類の非構造タンパク質(NS1〜5)を含む前駆体ウイルスポリタンパク質が合成される。次に、このポリタンパク質は、翻訳と同時に、及び翻訳後に修飾され、ウイルスの個々の成熟した機能的タンパク質が形成される。関連補因子と共にウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼは、マイナス一本鎖RNAのコピーを生成し、これはその後ゲノムプラス一本鎖ウイルスRNAの合成の鋳型として使用される。複製に関連するウイルスタンパク質は、小胞体(ER)に関連すると考えられる膜状構造と結合する。
【0015】
複製完了後、ゲノムRNAはヌクレオキャプシドと結合し、未熟なウイルス粒子がERの内腔に発芽し(発芽はERの膜又はウイルスによって誘導された関連膜状構造で生じる)、ウイルスタンパク質を含有する脂質エンベロープによって覆われる。細胞外経路を通過して、エンベロープタンパク質はグリコシル化され、成熟して、成熟したウイルス粒子を最終的に細胞外空間へ放出する。
【0016】
フラビウイルス科の複製には、前駆体ポリタンパク質が正確にプロセシングされるためにNS3proプロテアーゼ(非構造タンパク質NS3の最初の180個の残基の近隣に局在している)が必要であり、これは抗ウイルス薬の設計に関して魅力的な潜在的標的を構成する(Chappell,K.J.、Nall,T.A.、Stoermer,M.J.、Fang,N.X.、Tyndall,J.D.、Fairlie,D.P.及びYoung,P.R.(2005)「西ナイルウイルスNS3プロテアーゼの部位特異的変異誘発及び動態の研究は、鍵となる酵素−基質相互作用を明らかにする(Site−directed mutagenesis and kinetic studies of the West Nile Virus NS3 protease identify key enzyme−substrate interactions.)」J.Biol.Chem.280、2896〜2903.SHIRYAEV,S.A.、RATNIKOV,B.I.、CHEKANOV,A.V.、SIKORA,S.、ROZANOV,D.V.、GODZIK,A.、WANG,J.、SMITH,J.W.、HUANG,Z.、LINDBERG,I.、SAMUEL,M.A.、DIAMOND,M.S.及びAlex Y.STRONGIN,A.Y.、2006.「西ナイルウイルスNS3プロセシングプロテイナーゼの切断標的及びD−アルギニンをベースにした阻害剤(Cleavage targets and the D−arginine−based inhibitors of the West Nile virus NS3 processing proteinase.)」Biochem.J.393、503〜511.Kolykhalov,A.A.;Mihalik,K.;Feinstone,S.M.;Rice、C.M.J.Virol.2000、74、2046;Bartenschlager,R.;Lohmann,V.J.Gen.Virol.2000、81、1631.Matusan,A.E.、Kelley,P.G.、Pryor,M.J.、Whisstock,J.C.、Davidson,A.D.及びWright,P.J.(2001)J.Gen.Virol.82、1647〜1656)。
【0017】
フラビウイルスでは、このプロテアーゼは接合部、NS2A/NS2B、NS2B/NS3、NS3/NS4A及びNS4N/NS5でのタンパク質分解性切断並びにC、NS3及びNS4Aでの内部切断を担う(Chambers,T.J.、Nestorowicz,A.、Amberg,S.M.及びRice,C.M.(1993)「黄熱病ウイルスNS2Bタンパク質の変異誘発:タンパク質分解性プロセシング、NS2B−NS3複合体形成及びウイルス複製に対する影響(Mutagenesis of the yellow fever virus NS2B protein:effects on proteolytic processing,NS2B−NS3 complex formation,and viral replication.)」J.Virol.67、6797〜6807.Jan,L.R.、Yang,C.S.、Trent,D.W、Falgout,B.及びLai,C.J.(1995)「日本脳炎ウイルス非構造タンパク質:NS2B−NS3複合体のプロセシング及び異種プロテアーゼ(Processing of Japanese encephalitis virus non−structural proteins:NS2B−NS3 complex and heterologous proteases.)」J.Gen.Virol.76、573〜580.Lobigs,M.(1993)「フラビウイルスのプレメンブレン(premembrane)タンパク質切断及びスパイクヘテロ2量体分泌にはウイルスプロテイナーゼNS3の機能が必要である(Flavivirus premembrane protein cleavage and spike heterodimer secretion require the function of the viral proteinase NS3.)」Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90、6218〜6222.Yamshchikov,V.F.及びCompans,R.W.(1994)「西ナイルウイルスキャプシドタンパク質細胞内型のウイルスNS2B−NS3プロテアーゼによるプロセシング:in vitro研究(Processing of the intracellular form of the west Nile virus capsid protein by the viral NS2B−NS3 protease:an in vitro study.)」J.Virol.68、5765〜5771)。
【0018】
HCVでは、NS3proは、タンパク質NS2−NS5Bの間に含まれる部分のウイルスポリタンパク質のタンパク質分解性プロセシングを媒介する(R.Bartenschlager、1999「C型肝炎ウイルスのNS3/4Aプロテイナーゼ:異常酵素の構造及び機能及び抗ウイルス治療のための主要標的の解明(The NS3/4A proteinase of the hepatitis C virus:unravelling structure and function of an unusual enzyme and a prime target for antiviral therapy.)」J.Viral Hepat.6、165〜)。
【0019】
ウイルスタンパク質をプロセシングするウイルス複製サイクルにおいてNS3proプロテアーゼが果たす中心的役割の他に、このタンパク質はまた、サイトゾルをプロセシングすることができるので、細胞損傷及び病理発生の様々な機構に関与することができるであろう(Shiryaev,S.A.、Ratnikov,B.I.、Chekanov,A.V.、Sikora,S.、Rozanov,D.V.、Godzik,A、Wang,J.、Smith,J.W.、Huang,Z.、Lindberg,I.、Samuel,M.A.、Diamond,M.S.及びStrongin,A.Y.(2005)「西ナイルウイルスNS3プロセシングプロテイナーゼの切断標的及び(D)−アルギニンをベースにした阻害剤(The cleavage targets and the(D)−arginine−based inhibitors of the West Nile virus NS3 processing proteinase.)」Biochem.J.393、503〜511)。
【0020】
こうして、WNVのNS3プロテアーゼが神経ミエリン塩基性タンパク質(MBP)のタンパク質分解性切断を引き起こすことが示された。DV及びWNVに関して、NS3はウイルス媒介性アポトーシスの誘導に関与することが示唆された(Ramanathan,M.P.、Chambers,J.A.、Pankhong,P.、Chattergoon,M.、Attatippaholkun,W.、Dang,K.、Shah,N.及びWeiner,D.B.(2005)Virology doi:10/1016/j.virol.2005.08.043)。
【0021】
最適な機能のためには、NS3プロテアーゼは、その他のウイルス性タンパク質又は補因子、フラビウイルスではNS2Bタンパク質、並びにヘパシウイルス及びペスチウイルスではNS4Aとの相互作用が必要である。DVでは、NS2Bが存在すると、NS3のタンパク質分解活性の3300倍から6600倍の増大が誘導される(Yusof,R.、Clum,S.、Wetzel,M.、Murthy,H.M.& Padmanabhan,R.、2000.J.Biol.Chem.275、9963〜9969)。
【0022】
HCVでは、NS3のNS4Aへの結合には、NS3/4A、NS4A/B及びNS4B/5Aでのタンパク質分解性切断が必要で、接合部NS5A/Bでのプロセシングの効率が増大する(Bartenschlager R、Ahlborn LL、Mous J、Jacobsen H.「C型肝炎ウイルスポリタンパク質プロセシングの動態及び構造分析(Kinetic and structural analyses of hepatitis C virus polyprotein processing.)」J Virol 1994;6:5045〜5055.Failla C、Tomei L、De Francesco R.「NS3及びNS4AはいずれもC型肝炎ウイルス非構造タンパク質のタンパク質分解性プロセシングに必要である(Both NS3 and NS4A are required for proteolytic processing of hepatitis c virus nonstructural proteins.)」J Virol 1994;6:3753〜3760.Lin C、Pragai BM, Grakoui A、Xu J、Rice CM.「C型肝炎ウイルスNS3セリンプロテイナーゼ:トランス切断の必要性及びプロセシングの動態(Hepatitis C virus NS3 serine proteinase:trans−cleavage requirements and processing kinetics.)」J Virol 1994;6:8147〜8157.Tanji Y、Hijikata M、Satoh S、Kaneko T、Shimotohno K.「C型肝炎ウイルスがコードする非構造タンパク質NS4Aはウイルスタンパク質プロセシングにおいて多種多様な機能を有する(Hepatitis C virus−encoded nonstructural protein NS4A has versatile functions in viral protein processing.)」J Virol 1995;6:1575〜1581)。NS4A断片をNS3proに10倍モル過剰で付加すると、触媒効率係数Kcat/Kが約40倍増加する(SHIMIZU,Y、YAMAJI,K.、MASUHO,Y.、YOKOTA,T.、INOUE,H.、SUDO,K.、SATOH,S.y SHIMOTOHNO,K.1996.「NS5A/5B部位のC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼによる切断増強に必要なNS4Aの配列の同定(Identification of the Sequence on NS4A Required for Enhanced Cleavage of the NS5A/5B Site by Hepatitis C Virus NS3 Protease.)」J.Virol 70、127〜132)。
【0023】
NS3pro及びDVのNS3pro−NS2B複合体及びWNVのNS3−NS2Bとペプチド阻害剤によって形成された複合体の結晶構造が実験的に決定された(Murthy,H.M.、Clum,S.& Padmanabhan,R.、1999.J.Biol.Chem.274、5573〜5580.Murthy,H.M.、Judge,K.、DeLucas,L.& Padmanabhan,R.、2000.J.Mol.Biol.301、759〜767.Erbel P、Schiering N、D’Arcy A、Renatus M、Kroemer M、Lim SP、Yin Z、Keller TH、Vasudevan SG、Hommel U.、2006.「デングウイルス及び西ナイルウイルスのフラビウイルスNS3プロテアーゼの活性化の構造的基盤(Structural basis for the activation of flaviviral NS3 proteases from dengue and West Nile virus.)」Nat.Struct Mol.Biol.)。同様に、HCVのNS3pro及びNS3pro/NS4A複合体の結晶構造も決定された(Love,R.A.、Parge,H.E.、Wickersham,J.A.、Hostomsky,Z.、Habuka,N.、Moomaw,E.W.、Adachi,T.、Hostomska,Z.、1996.「C型肝炎ウイルスNS3プロテイナーゼの結晶構造によって、トリプシン様折り畳み構造及び亜鉛結合部位の構造が明らかになる(The crystal structure of hepatitis C virus NS3 proteinase reveals a trypsin−like fold and a structural zinc binding site.)」Cell.87、331〜342.Kim,J.L.、Morgenstern,K.A.、Lin,C.、Fox,T.、Dwyer,M.D.、Landro,J.A.、Chambers,S.P.、Markland,W、Lepre,C.A.、O’Malley,E.T.、Harbeson,S.L.、Rice,C.M.、Murcko,M.A.、Caron,P.R.、Thomson,J.A.、1996.「合成NS4A補因子ペプチドと結合したC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼドメインの結晶構造(Crystal structure of the hepatitis C virus NS3 protease domain complexed with a synthetic NS4A cofactor peptide.)」Cell.87、343〜535.Erratum in:Cell、89:159、1997)。
【0024】
NS3proプロテアーゼは、2個のベータバレル及びこれらのドメインの間に生じた隙間に位置する触媒性のHis51−Asp75−Ser1353連構造を含むキモトリプシン様折り畳み構造をとる。NS2Bタンパク質の結合は、NS3proの三次構造に大きな変化を誘導し、N及びC末端ドメインの両方に影響を及ぼし、位置及び二次構造部分の範囲の変化が含まれる。
【0025】
NS3pro−NS2B活性化プロテアーゼとペプチド阻害剤によって形成された複合体の構造は、NS2BがNS3proの周りにベルトを形成し、主に伸長した構造をとり、5本のベータ鎖を含むことを示している。
【0026】
最初の3本の鎖は、NS3タンパク質のベータ鎖に関連し、鎖Trp53−Ala58(WNVでの番号)は、N末端ベータバレルに対応するNS3ベータ鎖Gly21−Met26と逆平行にあり、ベータ鎖Glu67−Ile68及びArg75−Asp76はNS3C末端ベータバレルのベータ鎖B2ayB2bと平行である。
【0027】
鎖4及び5はベータヘアピンを形成し、これはN末端ベータバレルのE1b−F1ループを含有する基質結合部位と相互作用する。C末端バレルのE2b−F2ベータヘアピンの下のNS2Bの折り畳み構造は、基質認識に重要な残基(Gly151、Gly153及びTyr161)の配置をもたらすNS3のこの領域での立体的変化を誘導する。残基Tyr161は、P1位のアルギニンとカチオン−パイ相互作用を形成する。残基Asp82−Gly83の主鎖カルボニル基及びNS2BのAsn84の原子Od1に関連した負の静電ポテンシャルは、P2位のアルギニンのグアニジニウム基の正の電荷との相互作用に有利となる。このように、これらはS2部位の構造に関与している。したがって、NS3にNS2Bが結合することによって、酵素活性部位の必須要素が完全になり、タンパク質折り畳み構造の熱力学的な安定性にも寄与する。これらの事実は、このプロテアーゼの活性化プロセスを理解するための構造的基盤となる。
【0028】
HCVの場合、NS3活性化は、フラビウイルスのNS2Bの鎖1と構造的に対応するNS4Aのベータ鎖Thr20−Leu31の結合によって媒介される(SHIMIZU,Y.、YAMAJI,K.、MASUHO,Y.、YOKOTA,T.、INOUE,H.、SUDO,K.、SATOH,S.y SHIMOTOHNO,K.1996.「NS5A/5B部位のC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼによる切断増強に必要なNS4Aの配列の同定(Identification of the Sequence on NS4A Required for Enhanced Cleavage of the NS5A/5B Site by Hepatitis C Virus NS3 Protease.)」J.Virol 70、127〜132)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
フラビウイルス科に対する抗ウイルス分子を得るために実施されている最近の取り組みの中で、NS3阻害に基づいた取り組みは、活性部位を標的とする阻害剤の開発に主に焦点が当てられている。これらの取り組みは、非常に期待が持たれるものと思われ、HCVに対する薬剤を開発する中で達成された最近の結果によって支持される。しかし、これらの経験によってまた、これらの取り組みに固有の問題が明白に示された。より重要なものの1つは、エスケープ変異体の発生である。RNAウイルスのポリメラーゼは、忠実度が比較的低く、HCVの場合、ウイルスゲノムコピー当たり1個の変異を導入する。この手段によって開発された分子は非常に強力であるが、有用な存続期間は限られているという事実が生じる。抗ウイルス治療に必要な薬剤カクテルに基づいた治療的介入が導入された。1薬剤に対して生じたエスケープ変異体は、同一活性部位を標的とするその他の薬剤の抗ウイルス活性からしばしば免れることができることも観察された。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、NS3プロテアーゼ活性化プロセスを阻害する概念に基づいたフラビウイルス科に対する抗ウイルス薬の設計を目的とする新規方法について記載する。この概念の鍵となる取り組みは、NS3とその補因子(NS2B又はNS4A)との間の相互作用を遮断し、したがって活性型NS3プロテアーゼの正確な折り畳み構造を妨害することができるペプチド性分子及び/又は薬剤を設計することである。このような分子は、補因子との相互作用に関与するNS3プロテアーゼの領域に結合して、補因子と競合し、かつ/又は不活性型プロテアーゼの構造を安定化することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の利点は、これらの分子に対するエスケープ変異体の生じる確率が、活性部位に対して基質と競合する活性型プロテアーゼの阻害剤と比較して低いことが予測されることである。本発明の分子は、ウイルス複製サイクルに必須のタンパク質−タンパク質相互作用に関与するNS3の結合部位に結合し、したがって、NS3のこれらの領域で生じた変異はさらに、補因子を代償的に変異させるはずである。
【0032】
その他の利点は、これらの分子が示す阻害活性の高い特異性である。これは、NS3上の結合部位はウイルス性プロテアーゼに本質的に特異的であり、宿主セリンプロテアーゼには存在しないという事実に基づく。さらに、宿主のリンプロテアーゼは、NS3に非常に類似した特異性を示す活性部位を有し、したがって、活性部位遮断薬剤の毒性の潜在的な標的となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】NP3proプロテアーゼ活性化のペプチド阻害剤の設計。フラビウイルスのNS2Bタンパク質配列の複数の配列のアラインメント。本明細書で記載した活性化阻害剤部分は、二重矢印で強調し、薄い(濃い)灰色の矢印はNS3proのN末端(C末端)ベータバレルドメインに結合した部分に相当する。
【図1B】NP3proプロテアーゼ活性化のペプチド阻害剤の設計。フラビウイルスのNS2B−NS3pro複合体の3次元構造モデル。NS3proのN末端ベータバレルドメインに結合したDV2のNS2BのD50−E62部分及びC末端ドメインに結合したDV2のNS2BのS70−G82部分を強調している。
【図1C】NP3proプロテアーゼ活性化のペプチド阻害剤の設計。NS3proプロテアーゼ活性化阻害部分D50−E62及びS70−I86−GGGGRR。後のペプチドのC末端伸長部分は、プロテアーゼの活性部位に結合し、プロテアーゼとその基質との相互作用を遮断する。
【図1D】NP3proプロテアーゼ活性化のペプチド阻害剤の設計。不活性型立体構造のNS3pro(NS2Bを有さないタンパク質の構造)及び本発明のコンピュータによって設計されたペプチドによって形成された複合体のモデル。
【図2】ベロ細胞におけるデング2ウイルスによる感染の阻害のアッセイ。A:ウイルスを細胞に添加する前にプレインキュベートした、及びプレインキュベートしなかったペプチドNS2Bden2+TATの存在によるプラークの数の減少割合。B:プレインキュベートした(pre)、及びプレインキュベートしなかった(no pre)様々な濃度のペプチドTAT及びNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性のアッセイ。
【図3】ペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性に対するインキュベーション時間の影響。PX1:関連のない陰性対照ペプチド(関連のない配列とのTATペプチド融合物、P10:ペプチドNS2Bden2+TAT(DVのNS2BのペプチドとのTAT融合物、表1のペプチド番号1)。アッセイしたプレインキュベーション時間は、0、30、60及び180分であった。
【図4】ペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性に対する内部移行の役割。A:ペプチドと共にプレインキュベーションした後、ウイルスを細胞に添加した時点でペプチドは培地中に残存している。B:ペプチドは、ウイルスを細胞に添加する前に様々な洗浄によって培地から回収する。pNR+TAT:表1のペプチド18番。pNR+TATペプチドは、実験の陰性対照である。その一次構造は、ペプチドNS2Bden2+TATの類似体で、[I]部分はペプチドNS2Bden2+TATと同一のアミノ酸組成を有するが、配列は入れ替わっていた(表1のペプチド18)。
【図5】ペプチドの抗ウイルス活性に対する固有の透過性ペプチド及びER保持シグナルの効果。NS2Bden2+TAT:表1のペプチド1、NS2Bden2+pP2:表1のペプチド2、細胞透過性部分はペネトラチンである。NS2Bden2+pRR:表1のペプチド3、細胞透過性ペプチドとしてのデカアルギニン、NS2Bden2+TAT+KDEL:表1のペプチド4、pNR+TAT:表1のペプチド18、陰性対照:NS2Bden2、ペプチドNS2Bden2+TATの部分[I]。
【図6】同種及び異種のDVの血清型に対するペプチドの抗ウイルス活性。ペプチドの抗ウイルス活性は、VD1(A)、VD3(B)及びVD2(C)の存在下でウイルスプラークの数の減少によって試験した。ロゼッタ:DV2のNS3proのN末端ドメインに結合するようにコンピュータによって設計されたペプチド(表1のペプチド5);NS2Bden2+poliR:表1のペプチド3、細胞透過性ペプチドとしてのデカアルギニン;NS2Bden2+TAT:表1のペプチド1;NS2Bden1+TAT:表1のペプチド6、NS2Bpermutado+TAT;表1のペプチド18、実験の陰性対照。NS2Bpermutado+TATの一次構造はペプチドNS2Bden2+TATの類似体であり、[I]部分は、NS2Bden2+TATと同一なアミノ酸組成を有するが、この配列は入れ替わっていた。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明では、フラビウイルス科による感染を阻害し、一次構造が以下の式によって記載することができるキメラペプチド様分子を記載する。
[P]−[L]−[I]−[L]−[T]又は[I]−[L]−[P]−[L]−[T]
(式中、[P]は「細胞透過性ペプチド」のアミノ酸配列で、通常10〜30個のアミノ酸であり、ペプチド様分子全体を細胞の細胞質内に内部移行させ、粗面小胞体(RER)近傍に接近させることができ、[L1、L2、L3、L4]は0〜6個の残基のリンカー配列であり、[I]はNS3pro活性化阻害剤配列であり、活性型又は不活性型立体構造のフラビウイルスのNS3proタンパク質のC末端ベータバレルのベータ鎖B2a及びB2b又はN末端ベータバレルのベータ鎖A1(又はペスチウイルス若しくはヘパシウイルスの構造的に対応する領域)の少なくとも1個のアミノ酸と接触する残基を含有し、[T]は0〜10個の残基のアミノ酸配列であり、通常ER中における(配列KDEL、KKXX及びLRRRRLのような)1個若しくは2個の保持シグナルであり、又はフラビウイルスのNS3proプロテアーゼのP1及びP2基質結合部位に結合する能力を有する配列XRRである。
【0035】
より具体的には、本発明によって設計されたペプチドはDVによるウイルス感染を阻害できることを示した。
【0036】
陽イオン細胞透過性ペプチド
本発明は、フラビウイルス科ファミリーのウイルスのウイルス感染を阻害することができるキメラペプチドの設計について記載する。設計されたペプチドは、ウイルスNS3proプロテアーゼの活性化を阻害する[I]部分を含有する。しかし、本発明では、部分[I]に対応するアミノ酸配列を有する合成ペプチドは、標的細胞を透過することができず、したがって、細胞系及びin vivoにおいてウイルス感染を阻害しないことを示している。ウイルス感染の阻害は、[I]部分と細胞を透過する[P]部分を組み合わせて実現される。
【0037】
ある種のタンパク質から得られたいくつかのペプチドは、細胞を透過し、細胞質及び核に接近する能力を備えている。これらのペプチドは、細胞透過性ペプチド又はタンパク質導入ドメイン(PTD)として知られている(Joliot,A.及びProchiantz,A.(2004)「導入ペプチド」:技術から生理学まで(Transduction peptides:from technology to physiology.))Nat.Cell Biol.6、189〜96.Snyder,E.L.及びDowdy,S.F.(2004)「薬剤送達における細胞透過性ペプチド(Cell penetrating peptides in drug delivery.)」Pharm.Res.21、389〜93.Deshayes,S.、Morris,M.C.、Divita,G.及びHeitz,F.(2005)「細胞透過性ペプチド:治療薬細胞内送達のための手段(Cellpenetrating peptides:tools for intracellular delivery of therapeutics.)」Cell.Mol.Life Sci.62、1839〜49)。最も研究されたPTDは、HIV転写因子TAT、キイロショウジョウバエのホメオボックスアンテナペディア(ペネトラチン)及び単純疱疹ウイルスのタンパク質VP22などのタンパク質から得られた陽イオンペプチドである。これらのペプチドは、生物学的活性を高めるために、細胞中にカーゴ分子を導入するため有望な担体として非常に興味が高まっており、これらのカーゴは薬剤様低分子又は遺伝子及びタンパク質のように天然では多種多様である。治療上関心の持たれる分子のための媒介物としてのPTDの可能性が細胞系及び動物モデルでも示された(Beerens,A.M.、Al Hadithy,A.F.、Rots,M.G.及びHaisma,H.J.(2003)「タンパク質伝達ドメイン及び遺伝子治療におけるそれらの用途(Protein transduction domains and their utility in gene therapy.)」Curr.Gene Ther.3、486〜94.Wadia,J.S.及びDowdy,S.F.(2003)「完全長タンパク質のTAT媒介伝達による細胞機能の調節(Modulation of cellular function by TAT mediated transduction of full length proteins.)」Curr.Protein Pept.Sci.4、97〜104.)。Wadia,J.S.及びDowdy,S.F.(2005)「癌の治療におけるTAT媒介伝達によるタンパク質及びペプチド薬剤の膜透過送達(Transmembrane delivery of protein and peptide drugs by TAT−mediated transduction in the treatment of cancer.)」AdV.Drug DeliVery ReV.57、579〜96.Rudolph,C.、Schillinger,U.、Ortiz,A.、Tabatt,K.、Plank,C.、Muller,R.H.及びRosenecker,J.(2004)「in vitro及びin vivoにおける2量体HIV−1 TATペプチドをベースにした新規の固形脂質ナノ粒子(SLN)遺伝子ベクター製剤の適用(Application of novel solid lipid nanoparticle(SLN)−gene vector formulations based on a dimeric HIV−1 TAT−peptide in vitro and in vivo.)」Pharm.Res.21、1662〜9)。
【0038】
これらのペプチドが原形質膜、エンドサイトーシス区画及び核の膜などの細胞膜系によって形成された生物学的障壁を通って細胞質及び核に接近することができる機構を解明するために膨大な量の研究が行われてきた。近年、以前に報告された低温及び生理学的温度でのPTDの細胞局在及び細胞侵入に関する培養細胞におけるいくつかの観察は、固定方法及びペプチドの原形質膜への非特異的結合によって生じた人為的結果によるものであることが示された(Richard,J.P.、Melikov,K.、Vives,E.、Ramos,C.、Verbeure,B.、Gait,M.J.、Chernomordik,L.V.及びLebleu,B.(2003)「細胞透過性ペプチド。細胞摂取機構の再評価(Cellpenetrating peptides.A reevaluation of the mechanism of cellular uptake.)」J.Biol.Chem.278、585〜90.Vives,E.、Richard,J.P.、Rispal,C.及びLebleu,B.(2003)「TATペプチド内部移行:侵入機構の探索(TAT peptide internalization:seeking the mechanism of entry.)」Curr.Protein Pept.Sci.4、125〜32)。最新の結果では、エンドサイトーシスがPTDの細胞内侵入において必須の役割を果たすことを示唆している。しかし、これらのペプチドの細胞内輸送の詳細で一般的に受け入れられている説明はまだなされていない。
【0039】
TATペプチド融合タンパク質が原形質膜カベオラを介して中性カベオソームを通過し細胞内へ侵入することが最初に報告されたが、より最近の研究では、カベオラは必要なく、TATペプチド細胞侵入はマクロピノサイトーシスによって生じることが示された(Ferrari,A.、Pellegrini,V.、Arcangeli,C.、Fittipaldi,A.、Giacca,M.及びBeltram,F.(2003)「実時間で視覚化した細胞外HIV−1tat融合タンパク質のカベオラ媒介性内部移行(Caveolaemediated internalization of extracellular HIV−1 tat fusion proteins visualized in real time.)」Mol.Ther.8、284〜94。Wadia,J.S.、Stan,R.V.及びDowdy,S.F.(2004)「伝達可能なTAT−HA膜融合性ペプチドは、マクロピノサイトーシス後の脂質ラフトのTAT融合タンパク質の脱出を増大させる(Transducible TAT−HA fusogenic peptide enhances escape of TAT−fusion proteins after lipid raft macropinocytosis.)」Nat.Med.10、310〜5)。仮定されたエンドサイトーシス媒介性細胞侵入と矛盾せず、PTDは初期及びリサイクリングエンドソーム内に認められた。しかし、PTDに結合した分子によって示された生物学的活性は、これらのペプチドがサイトゾルに接近する未知の機構によってエンドサイトーシス区画から少なくとも部分的に脱出することを示している。内部移行したTATペプチドとゴルジマーカーBODIPY−セラミドとの共存が報告されており、リソトラッカーで標識した後期エンドソーム及びリソソームでは視覚化が不十分であることと一致している(Fischer,R.、Kohler,K.、Fotin−Mleczek,M.及びBrock,R.2004.「陽イオン細胞透過性ペプチドの細胞内での動態の段階的解析(A stepwise dissection of the intracellular fate of cationic cellpenetrating peptides.)」J.Biol.Chem.279、12625〜35)。
【0040】
これらのデータは、これらのペプチドが初期エンドソームから直接ゴルジ体に輸送され得ることを示唆しており、これはゴルジ体からペプチドが逆方向輸送された後、ERからサイトゾルにペプチドが侵入する可能性と一致する。しかし、その他の研究では、酸性の後期エンドサイトーシス構造及びリソソームにおけるペプチドの共存が報告されている。このような結果は、TATペプチド、オクタアルギニン、TATタンパク質及びリポソームとTATペプチドの結合体が報告されている(Al−Taei,S.、Penning,N.A.、Simpson,J.C.、Futaki,S.、Takeuchi,T.、Nakase,I.及びJones,A.T.2006.「タンパク質伝達ドメインHIV−1 TATペプチド及びオクタアルギニンの細胞内輸送及び動態。薬剤送達媒体としてそれらを利用する意義(Intracellular Traffic and Fate of Protein Transduction Domains HIV−I TAT Peptide and Octaarginine.Implications for Their Utilization as Drug Delivery Vectors.)」Bioconjugate Chem.17、90〜100.Fretz,M.M.、Koning,G.A.、Mastrobattista,E.、Jiskoot,W.及びStorm,G.(2004)「OVCAR−3細胞はエンドサイトーシスによってTAT−ペプチド修飾リポソームを内部移行する(OVCAR−3 cells internalize TAT−peptide modified liposomes by endocytosis.)」Biochim.Biophys.Acta 1665、48〜56.Vendeville,A.、Rayne,F.、Bonhoure,A.、Bettache,N.、Montcourrier,P.及びBeaumelle,B.(2004)「HIV−1 Tatは、細胞膜被覆小窩を使用してT細胞に侵入した後で、酸性化エンドソームから移動し生物学的応答を惹起する(HIV−1 Tat enters T cells using coated pits before translocating from acidified endosomes and eliciting biological responses.)」Mol.Biol.Cell 15、2347〜60)。
【0041】
しかし、PTDは、細胞の種類、PTDの性質、温度、カーゴなどのいくつかの要素に応じて、細胞侵入及び細胞内輸送の様々な異なる機構を利用し得る可能性がある。
【0042】
(発明の詳細な説明)
本発明は、フラビウイルス科によるウイルス感染を阻害するキメラペプチドの2種類の形態的変種、
[P]−[L]−[I]−[L]−[T]又は[I]−[L]−[P]−[L]−[T]
について記載する。
【0043】
[P]として透過性ペプチドは、カーゴ分子を細胞内に輸送する能力を備えた陽イオンペプチドから選択されることが好ましいが、それだけに限定はされない。可能性のある陽イオンペプチドとして、ペネトラチン、R9ノナペプチド又はR10デカペプチド又はTATペプチドなどの7〜10個の残基のポリアルギニンを選択することができるが、類似の透過能力を示す10〜30個の残基のその他の任意のペプチド配列を選択することができる。これらの透過性陽イオンペプチドは、エンドサイトーシスによって細胞の細胞質に透過する能力を有し、ERによる輸送に関与している可能性がある。この特性は、前駆体ポリタンパク質合成及びプロセシングが実施され、ペプチド抗ウイルス活性の標的の場となるRERの近傍にペプチドが局在することを保証するので、これらのペプチドの生物学的活性に有利である。
【0044】
或いは、その他の細胞透過性ペプチドも、タンパク質分解に非常に耐性がある陽イオンデンドリマー型ペプチド又はD−アミノ酸を含むペプチドのような[P]部分として使用することができよう。陽イオンペプチドはまた、本発明のペプチドのin vivoにおける良好な体内分布を保証し、フラビウイルス科に感染した器官及び組織における有利な有効濃度がモノクローナル抗体のような大きな分子と比較して高レベルになるようにする。1つの例として、TBE、WNV、JEV、SLEV及びKVのような脳炎を引き起こすフラビウイルス科感染を治療するために、血液脳関門(BBB)を通過できるペプチドの使用を挙げることができる。BBBを通過する分子輸送は、脳内疾患の治療を目的とした小分子薬物にとっても手強い問題である(Temsamani,J.及びVidal,P.2004.「薬剤送達のための細胞透過性ペプチドの使用(The use of Cell penetrating peptides for drug delivery.)」Drug Discov.Today 9、1012〜1019)。
【0045】
NS3proプロテアーゼ阻害配列[I]は、タンパク質NS3とフラビウイルスのNS2B(又はNS3とヘパシウイルス及びペスチウイルスのNS4Aの間)との間の相互作用を阻害又は変更する能力を有し、このようにして、プロテアーゼ活性化プロセスに必要なNS3proの正確な折り畳み構造に影響を及ぼす。本発明の一実施形態では、[I]はDV2のタンパク質のNS2Bの配列Asp50−Glu62、又はその他のフラビウイルスの相同な配列である。この配列は、活性NS3proタンパク質のN末端ベータバレルに位置する残基と接触するタンパク質NS2Bのベータ鎖1に対応する残基を含有する。したがって、本発明で記載した形態によるペプチドは、NS3proタンパク質が折り畳まれる間、その活性型構造の使用について補因子NS2Bタンパク質の天然の配列と競合する。完全な活性化にはN末端ドメインだけでなく、C末端ベータバレルの構造の再編成も必要なので、不活性型NS3pro−ペプチド複合体の形成がもたらされる。プロテアーゼ活性化には、タンパク質NS2BのGlu66−Ile86領域がNS3proのC末端ドメインにさらに結合することが必要であろう。さらに、部分[I]の結合は、これらのペプチドのN又はC末端伸長がNS3の表面形態を変化させ、ウイルス及び/又は宿主タンパク質の相互作用を妨害することができるように、タンパク質NS3に対する本発明のペプチドのアンカーとして役立つ。このような相互作用には、基質認識及び/又はウイルス複製複合体の立体構造及び/又は機能に関連したその他の相互作用が含まれる。したがって、本発明の一実施形態では、第一の形態変種に対応する[P]部分は、細胞透過特性を有する以外に、フラビウイルスNS3proプロテアーゼの阻害剤でもあるポリ−D−アルギニンである(SHIRYAEV,S.A.、RATNIKOV,B.I.、CHEKANOV,A.V.、SIKORA,S.、ROZANOV,D.V.、GODZIK,A.、WANG,J.、SMITH,J.W.、HUANG,Z.、LINDBERG,I.、SAMUEL,M.A.、DIAMOND,M.S.及びAlex Y.STRONGIN,A.Y.、2006.「西ナイルウイルスNS3プロセシングプロテイナーゼの切断標的及びD−アルギニンをベースにした阻害剤(Cleavage targets and the D−arginine−based inhibitors of the West Nile virus NS3 processing proteinase.)」Biochem.J.393、503〜511)。したがって、[I]部分/アンカーのNS3proへの結合は、プロテアーゼの基質結合部位におけるポリArgペプチドの適合性を高め、ペプチドによって固定された同じ鎖(シス阻害)又は異なる鎖(トランス阻害)によく対応する。類似の方法で、ヘパシウイルス及びペスチウイルスの阻害ペプチドには、フラビウイルスのNS2Bタンパク質のベータ鎖1と構造的に類似したNS4Aタンパク質のThr20−Leu31領域(HCVの番号)に対応する部分が[I]配列として組み込まれる。
【0046】
フラビウイルスに適用した第2の実施形態では、[I]部分はNS2B配列のいかなる特定の部分にも関係しないが、NS3proタンパク質に結合し、不活性型立体構造でN末端バレルを安定化する能力を備えたペプチド配列である。この場合、ペプチド配列はDV2のNS3proタンパク質のTyr23−Tyr33に対応する部分、又はその他のフラビウイルスの対応する相同な領域と接触する。さらに、[I]部分はまた、タンパク質NS3proのAla1−Gly14及びAla56−Met59部分の残基との構造的接触を安定化させる。したがって、これらのペプチドはタンパク質NS3の天然の折り畳み構造を妨害することによって阻害効果を促進し、プロテアーゼの不活性型構造を導く折り畳み経路を誘導する。
【0047】
このような[I]配列は、コンビナトリアルライブラリーを使用する理論的方法及び/又は実験的方法によって得ることができよう。理論的方法による設計の場合、本発明には、コンピュータによる分子モデリングの1種又は様々な方法の使用及び不活性型立体構造のタンパク質NS3proの三次構造モデルの使用が含まれる。コンピュータモデリング及び不活性型NS3proタンパク質の3D構造モデルの空間座標を使用すると、N末端ベータバレルのベータ鎖A1に対応する部分を備えた逆平行ベータ鎖を形成する伸長型立体構造のポリペプチド主鎖を設計することができる。さらに、側鎖及びそのコンホマーの化学的特性がエネルギー的に有利な原子接触を意味するように、ポリペプチド鎖の側鎖を設計することができる。本発明には、ペプチド配列及び立体構造空間、ペプチド、さらにプロテアーゼの側鎖回転異性体空間をコンピュータ手段によって探索することと、得られたモデルのエネルギー評価によって、ペプチド−タンパク質相互作用の親和性が潜在的に高いことを示す最も有利なペプチド変種を選択することを組み合わせることが必要である。不活性型NS3pro構造モデルに対応する座標は、x線回折及び/又はNMRの方法によって、又はコンピュータモデリング法によって得られたモデルを使用することによって得られた実験データから引き出すことができた。DV2の場合、座標はタンパク質データバンク(PDB)の1BEFファイルから入手することができた。その他のフラビウイルスについては、相同性モデリングの方法によって3Dモデルを得ることができる。
【0048】
本発明では、本発明のこの第2の実施形態にしたがって設計した[I]配列:QWPALPKIEAQDGを記載する。図1Dは、この実施形態に対応するNS3pro−[I]複合体の3次元構造のコンピュータモデルを示している。このモデルによれば、[I]部分は、NS3pro(DV2番号付け)の部分Gly29−Y33に関連して伸長型ベータ鎖構造をとる。
【0049】
さらに、本発明の第2の実施形態で記載したペプチドと類似の特性を有する[I]配列を得るために、合成ペプチドのコンビナトリアルライブラリー又はファージディスプレイペプチドライブラリーを使用することができよう。この場合、組換えNS3proタンパク質は、リガンド選択又はバイオパニングの標的として使用される。
【0050】
本発明のその他の実施形態では、[I]部分はDV2のタンパク質NS2Bの配列Ser70−Gly82、又はその他のフラビウイルスの相同な配列にある。この配列は、活性型NS3proプロテアーゼの一部と接触し、形成するタンパク質NS2Bのベータ鎖3及び4を含有する。したがって、本発明で記載した形態によるペプチドは、NS3proタンパク質が活性型立体構造に折り畳まれる間に補因子NS2Bタンパク質の対応する部分と競合し、接合部NS2B−NS3でのタンパク質分解性プロセシングを阻止する。これらのペプチドは基質結合部位、特に酵素触媒活性に必須のP2部位での正確な立体配置を妨害するので、不活性型NS3pro−ペプチド複合体の形成を誘導する。
【0051】
さらに、本発明のペプチドに対応する[I]部分の結合は、これらのペプチドのN末端又はC末端伸長がNS3の表面形態を変更し、このタンパク質とその他のウイルス又は宿主タンパク質との相互作用を妨害することができるように、タンパク質NS3に対するアンカーとして作用する。
【0052】
以前のペプチド(表1のペプチド10)に関連した実施形態では、[I]部分はDV2のNS2Bタンパク質の配列Ser70−Ile86又はその他のフラビウイルスの相同配列にある。この領域には、ベータ鎖3及び4の他に、NS2Bのベータ鎖5も含まれる。この場合、最初の形態学的変種に対応するペプチドには、C末端カルボキシル基と共に、3個又は4個の残基の[L2]部分及びトリペプチドXRRから成る[T]部分を含むC末端伸長が含まれる。これらのペプチドの配列は、活性型立体構造をとるNS3タンパク質への結合と矛盾せず、ベータ鎖5及び鎖4と5の間のループはP2部位の正確な形成を保証する。
【0053】
さらに、部分[I]の結合は、活性化に必要なC末端ベータバレルにおける構造変化、例えば、Gly151、Gly153及びTyr161のような基質認識に関与する重要な残基を配置させるE2b−F2ベータヘアピンの方向の変化を促進する。しかし、形成された複合体は、[L2]部分が、位置S1及びS2を占めるジペプチドRRと共に[T]部分の基質結合部位へのさらなる結合を可能にする安定化リンカーとして作用するので、不活性である。したがって、プロテアーゼ活性部位は、ペプチドによって遮断される。
【0054】
本発明の部分[L1]、[L2]、[L3]及び[L4]は、形態学的変形形態に応じて、部分[P]、[I]及び[T]を連結する0〜6個の残基のリンカー配列である。これらのリンカー部分は、柔軟性をもたらす、主に小さな、かつ/又は極性のアミノ酸(Gly、Ser、ベータAla)を含有する。これらのリンカー部分はまた、NS3proタンパク質の残基と有利に相互作用することができる配列から成ることができ、本発明のペプチドにさらなる安定化効果をもたらす。
【0055】
本発明の[T]部分は、ペプチドのC末端に位置する、アミノ酸0個から10個の配列である。一実施形態では、[T]部分は、KDEL配列のようなER保持シグナルである。このシグナルを付加することによって、ERへの逆方向輸送によるペプチドの輸送が促進される。ER内のペプチド濃度の増加は、サイトゾルへのペプチドの輸送の増加に寄与する。ER近傍における効果的なペプチド濃度の増加が引き起こされ、ウイルスポリタンパク質の合成、特にNS3proの合成が生じる。
【0056】
KDELシグナルのペプチド配列への組み込みは、ERによる逆方向輸送が陽イオンペプチドのサイトゾルへの透過経路であると推定されるので、[P]部分としての陽イオン細胞透過性ペプチドの存在と適合する。この透過方法には、初期エンドソームからERへのトランス−ゴルジネットワーク(TGN)を介したペプチドの輸送が関与する。配列KDELは、ペプチドをERに輸送するTGNに存在するKDEL受容体と相互作用し、ERでペプチドは放出される。ER内腔からサイトゾルへのペプチド輸送は効率のよいプロセスで、トランスロコン複合体のSec61タンパク質によって形成されたER膜に存在するチャンネルを通じて行われる。サイトゾルへのこの透過方法は、コレラ毒素、リシン及びシュードモナスの外毒素Aなどのような細菌毒素によって利用される。
【0057】
細胞透過性ペプチドとしてのFGヘアピンベース部分の使用。DVの細胞侵入に対するこの部分の阻害効果。
本発明の斬新さは、様々な機能を備えた部分又はモジュール、すなわち、抗ウイルス活性を備えた部分、細胞透過性ペプチド、輸送及び細胞内局在のためのシグナル、脂質付加などのシグナルを組み合わせたこれらのペプチドによって表されるモジュラー構造である。したがって、細胞及びin vivoにおいてペプチドの機能的活性を最大限にする非常に様々な情報を配列に組み込むために、20〜30個の残基のペプチドの能力を利用することができる。本発明では、ペプチド設計において二機能又は多機能モジュールも組み入れた。
【0058】
本発明のペプチドによって表された抗ウイルス活性は、主にNS3プロテアーゼ活性化プロセスの阻害に基づいている。ウイルスプロテアーゼ活性化プロセスの阻害剤として本発明で記載した[I]部分又はモジュールは、NS3proタンパク質に結合し、このタンパク質と、プロテアーゼの活性化に必要なフラビウイルスのウイルスタンパク質NS2B(ヘパシウイルスのNS4A)との間の相互作用を遮断する能力を有する。しかし、この部分の存在は、ペプチドがin vitro及びin vivoにおいてウイルス感染を遮断できることを保証はしない。したがって、実施例3において、DV2のタンパク質NS2Bに対応する部分Ser70−Gly82が、細胞透過性ペプチドと一緒に同じポリペプチド鎖内に存在する場合にのみ、in vitroにおいてウイルス感染を阻害できることを示す。ウイルス感染を阻害するために、本発明のペプチドは細胞を透過し、サイトゾルに接近し、ER膜のサイトゾル面で折り畳みが生じるNS3proタンパク質に結合することが必要である。
【0059】
本発明の一実施形態では、細胞透過性部分として、DV1−4のエンベロープタンパク質のドメインIIIのFGベータヘアピンに対応する配列を使用する。本発明では、これらの配列をベースにした[P]部分が細胞内に様々なペプチドカーゴを輸送できることを示している。以前に、DV1−2のFGヘアピンの配列に基づいた環状ペプチドが細胞受容体LRP1と相互作用することが示された(特許出願:「フラビウイルス感染を予防及び治療するための方法及び分子(Metodos y moleculas para la prevencion y el tratamiento de la infeccion con Flavivirus.)」CU 2006−0091.Huerta V、Chinea G、Fleitas N、Martin AM、Sarria M、Guirola O、Toledo PG、Sanchez A、Besada VA、Reyes O、Garay HE、Cabrales A、Musacchio A、Padron GR、Gonzalez LJ)。
【0060】
LRP1受容体は約30個の天然のリガンド、中でも百日咳外毒素Aと相互作用し、細胞内へ内部移行させることが知られている(Herz J、Strickland DK.(2001):「LRP:多機能捕捉剤及びシグナル伝達受容体(LRP:a multifunctional scavenger and signaling receptor.)」J Clin Invest.108:779〜84.Kounnas MZ、Morris RE、Thompson MR、FitzGerald DJ、Strickland DK、Saelinger CB、1992.「アルファ2−マクログロブリン受容体/低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質はシュードモナス外毒素Aと結合し内部移行させる(The alpha 2−macroglobulin receptor/low density lipoprotein receptor−related protein binds and internalizes Pseudomonas exotoxin A.)」J Biol Chem 267:12420〜12423)。この受容体は、大多数の細胞の種類、組織及び器官で発現している。DVはまた、多くの細胞系及び器官に感染する能力を有し、したがって、感染の疑いのある細胞への効果的な内部移行を実現するために、FGヘアピンの配列に基づいた細胞透過性ペプチドを含有するペプチドを使用することは非常に好ましい。LRP1の発現は、フラビウイルス科によって引き起こされる疾患の主要な標的器官である肝臓及び脳で高い。例えば、TBE及びJEV複合体のウイルスは脳炎を引き起こし、YFVは主に内臓親和性で肝炎を引き起こす。同じ理由で、この部分はまた、本発明で記載した抗HCVペプチドに見られるように、HCVに対して効果的であろう。
【0061】
特にデング感染の阻害剤として本発明で記載したキメラペプチドの場合、FGヘアピンをベースにしたモジュールは二機能特性を有する。細胞透過性部分として既に記載された役割の他に、この部分はまた、それ自体抗DV抗ウイルス活性を示す。以前に、FGヘアピンをベースにしたペプチドは、ウイルスが原形質膜に付着した後に起こるステップが関与する機構によって、DVの感染増殖性細胞侵入を阻害することが示された(特許出願:「フラビウイルス感染を予防及び治療するための方法及び分子(Metodos y moleculas para la prevencion y el tratamiento de la infeccion con Flavivirus.)」CU 2006−0091.Huerta V、Chinea G、Fleitas N、Martin AM、Sarria M、Guirola O、Toledo PG、Sanchez A、Besada VA、Reyes O、Garay HE、Cabrales A、Musacchio A、Padron GR、Gonzalez LJ)。これらのペプチドは、ウイルスが細胞内に侵入するとき溶液中に存在すると、高い効率でウイルス感染を阻害する。さらに、実施例2で示したように、FGヘアピンをベースにした細胞透過性部分を有さず、その抗ウイルス効果がNS3プロテアーゼ阻害モジュールのみに基づいている本発明のペプチドは、ウイルスと同時に媒体に投与された場合、効果は弱い。(FGヘアピン部分が欠落した)これらのペプチドは、ウイルスを添加する前に細胞とプレインキュベーションした場合、最大限の抗ウイルス活性を示し、NS3プロテアーゼの活性化を阻害するために、阻害機構は細胞透過性及び効果的な細胞内局在を必要とすることと一致している。
【0062】
したがって、本発明の新規要素は、細胞侵入阻害剤(細胞透過性ペプチドでもある)及びウイルスプロテアーゼ活性化阻害部分の組み合わせにある。
【0063】
したがって、これらのキメラペプチドは、ウイルス感染の開始に対するペプチド添加時点間の関係を考慮すると、これらの部分の1つのみをベースにしたペプチドと比較してより有利な生物学的活性特性を有する。
【0064】
細胞透過性及び細胞内動態。N末端脂質付加及びERにおける保持。
本発明はまた、既に記載したキメラペプチドの脂質付加に適用される。本明細書で記載した脂質付加は一般的に、ペプチドのN末端のミリストイル化又はパルミトイル化である。本特許では、ミリストイル化として、アミド結合の手段によってペプチドのN末端基にミリスチン酸CH(CH12COHを共有結合させることによってペプチドを化学修飾し、化学構造CH(CH12CO−NH−P(Pはミリストイル化されたペプチドのアミノ酸配列である)を得ることを意味する。同様に、パルミトイル化によって、CH(CH14COHパルミチン基の付加が生じる。脂質付加として、本明細書ではまた、ペプチドのN末端伸長として付加されたアミノ酸残基SER及び/又はTYRの側鎖への脂質鎖の共有結合を意味する。主にNS3プロテアーゼの活性化阻害に基づいた抗ウイルス活性を発揮させるために、本発明のペプチドは、細胞の種々の膜系から成る様々な生物学的障壁を通過することが必要である。
【0065】
これらのペプチドは、細胞外空間から、抗ウイルス効果に最適な最終目的地、ERのサイトゾル面に移行することが必要である。一般的に、脂質付加は、生物学的膜との相互作用に関して有利な特性であるペプチド親脂質性を高める。本発明では当初、ペプチドの脂質付加と、ペプチドの生物学的活性を高めるいくつかの輸送及び細胞局在シグナル(配列)の付加とを組み合わせた。したがって、この設計は、細胞に対するペプチド抗ウイルス活性の発現に関与した様々なステップ、原形質膜への吸着、細胞透過性、細胞内輸送/逆方向輸送、ER膜への細胞内局在及びNS3proタンパク質との相互作用の効果を高めることが目的である。
【0066】
ペプチド脂質付加に適した脂質(類)の化学的性質の選択は、小さなことではない。本発明のキメラペプチド設計の1つの前提は、化学修飾が抗ウイルス作用に関与する様々なプロセス、すなわち、原形質膜への結合、細胞透過性/エンドサイトーシス、細胞内輸送/逆方向輸送、サイトゾルへの輸送及びNS3proへの結合に関するペプチドの物理化学的及び機能的特性に有利な影響を及ぼすように、ペプチドに対する化学結合に特異的な脂質(類)を選択することである。このプロセスの間、ペプチドは様々な生物物理学的特性の膜と相互作用し、様々な細胞内区画間の輸送に関与するであろう。個々のステップに関して最適な脂質がその他のステップに関しては有害であり得るので、本発明の抗ウイルスペプチドの脂質付加は指示されない。一例として、ER膜との相互作用を考慮すると、モノ飽和グリセロ脂質が潜在的に有利である。これらの脂質は、膜にはよくあり(Keenan T.W.及びMorrea,D.J.「ラット肝臓から単離したゴルジ体のリン脂質の種類及び脂肪酸組成並びにその他の細胞画分との比較(Phospholipid class and fatty acid composition of Golgi apparatus isolated from rat liver and comparison with other cell fractions.)」Biochemistry 9:19〜25、1970)、スフィンゴ脂質、ステロール及び二飽和リン脂質の豊富な原形質膜と比較して高い流動性及び厚みの薄さが特徴である。したがって、ER膜への挿入に適した比較的短い鎖の不飽和脂質は、原形質膜では好ましくないであろう。この種類の脂質は、エンドサイトーシスに関与する脂質ラフトなどのスフィンゴ脂質及びコレステロールに富んだドメインから分離された原形質膜の最も流動性のあるドメインに局在すると有利である。疎水性尾部の性質が異なる脂質類似体のエンドサイトーシス経路の今までの様々な分析によって、短い尾部のある不飽和脂質は、エンドサイトーシス後、エンドサイトーシスリサイクリング区画(ERC)を介して原形質膜に効率よく再利用され、長い尾部のある飽和脂質はエンドサイトーシス経路によって後期エンドソーム及びリソソームに送り出されることが示された(Mukherjee,S.、Soe,T.T及びMaxfield,F.R.1999.J.Cell Biol.、144、1271〜1284;Koval,M.及びR.E.Pagano、1989.J.Cell Biol.108:2169〜2181;Mayor,S.、J.F.Presley及びF.R.Maxfield、1993.J.Cell Biol.121:1257〜1269;Sandhoff,K.及びA.Klein.、1994.FEBS Lett.346:103〜107)。
【0067】
以前の研究で、細胞透過性及び対応する細胞内標的におけるペプチドの生物学的活性を促進するペプチドミリストイル化の例が報告されている(P.J.Bergman,K.R.Gravitt,C.A.O’Brian「ヒト乳癌細胞において多剤耐性回復薬として作用するN−ミリストイル化タンパク質キナーゼC−アルファ偽基質ペプチドはP−糖タンパク質基質ではない(An N−myristoylated protein kinase C−alpha pseudosubstrate peptide that functions as a multidrug resistance reversal agent in human breast cancer cells is not a P−glycoprotein substrate)」Cancer Chemother.Pharmacol.40(1997)453〜456.B.R.Kelemen、K.Hsiao、S.A.Goueli、「細胞透過性ペプチドを使用したマイトジェン活性化タンパク質キナーゼのin vivoにおける選択的阻害(Selective in vivo inhibition of mitogen−activated protein kinase activation using cell−permeable peptides)」J.Biol.Chem.277(2002)8741〜8748.T.Eichholtz、D.B.de Bont、J.de Widt、R.M.Liskamp、H.L.Ploegh、「ミリストイル化偽基質ペプチド、新規のタンパク質キナーゼC阻害剤(A myristoylated pseudosubstrate peptide, a novel protein kinase C inhibitor)」J.Biol.Chem.268(1993)1982〜1986)。
【0068】
しかし、ミリストイル化自体は、ペプチドの細胞への透過性を保証しない。実際に、細胞内に透過しないミリストイル化ペプチドの例があり、透過性はまた、ペプチドの性質に依存し、正味の電荷が正で、酸と疎水性残基の間に塩基性残基が均一に分布した特性が有利である、と仮定している(Carrigan,C.N.、Imperiali,B.2005、Anal.Biochem.341 290〜298)。
【0069】
本発明のペプチドと細胞との相互作用における最初の段階は、原形質膜への付着及び/又は膜上に存在する分子への結合である。ミリストイル基又はパルミトイル基の付加は、本発明のペプチドの親脂質性を高め、原形質膜へのペプチドの結合を促進する。脂質の存在の他に、本発明のペプチドは、膜中に存在する分子と相互作用する細胞透過性ペプチドの配列を含有する。一例は、グルコサミノグリカン、特にヘパリン様ヘパラン硫酸と相互作用する陽イオン細胞透過性ペプチドの場合である。
【0070】
ヘパラン硫酸への結合は、陽イオンペプチドの細胞透過性に必須であることが示された。それらはまた、陰イオン脂質及びタンパク質のような原形質膜のその他の負に荷電した分子と相互作用することができる。同様に、エンドサイトーシスの細胞受容体と相互作用するその他のペプチドは、担体又は細胞内へのカーゴ分子の侵入を促進する細胞透過性ペプチドとして機能することができる。したがって、本発明のペプチドの脂質付加は、原形質膜への結合親和性を高め、さらにアンカー部位を提供する。
【0071】
一般的に、ミリストイル化シグナルと並置して塩基性残基の集団を含有するミリストイル化タンパク質は、コレステロール及びスフィンゴ脂質の豊富な膜と有利に相互作用し(McCabe,J.B及びBerthiaume,L.G.(1999)「細胞内局在における脂肪アシル化アミノ末端ドメインの機能的役割(Functional roles for fatty acylated amino−terminal domains in subcellular localization.)」Mol.Biol.Cell 10、3771〜3786.McCabe,J.B.及びBerthiaume,L.G.(2001)「N末端タンパク質のアシル化は、コレステロール、スフィンゴ脂質の豊富な膜に対する局在をもたらすが、脂質ラフト/カベオラへの局在はもたらさない(N−Terminal Protein Acylation Confers Localization to Cholesterol, Sphingolipid−enriched Membranes But Not to Lipid Rafts/Caveolae.)」Mol.Biol.Cell 12、3601〜3617)、コレステロール及びスフィンゴ脂質はエンドサイトーシスプロセス及びタンパク質の様々な細胞内小器官及び細胞の特定の膜への輸送に関与する脂質ラフトの成分である(JOOST C.M.HOLTHUIS、THOMAS POMORSKI、RENEA’J.RAGGERS、HEIN SPRONG及びGERRIT VAN MEER.2001.「細胞内膜輸送におけるスフィンゴ脂質の構成能力(The Organizing Potential of Sphingolipids in Intracellular Membrane Transport.)」Physiol.Rev.81、1689〜1723.Simons,K.及びIkonen,E.1997.「細胞膜における機能的ラフト(Functional rafts in cell membranes.)」Nature、387:569〜572)。したがって、ミリストイル化は、本発明のペプチド、特に、陽イオン細胞透過性ペプチド及び/又はER膜のサイトゾル面で保持するためのシグナルとしてのポリアルギニンを含有するペプチドの細胞透過能力に有利である。実際に、ある種の正電荷を含有する脂質付加されたペプチドは、細胞を透過することができることが示された(Carrigan,C.N.、Imperiali,B.2005、Anal.Biochem.341 290〜298)。
【0072】
スフィンゴ糖脂質及びコレステロールが豊富な膜の界面活性剤不溶性の特殊微小領域(DRM)は、様々な細菌毒(コレラ毒素、リシン、滋賀毒素など)の細胞内への内部移行に必要で、GM1ガングリオシド及びスフィンゴ脂質Gb3のようなこれらのDRMに結合した分子は、エンドサイトーシスによって細胞を透過するこれらの毒素のいくつかの受容体である(Spangler,B.D.(1992)Microbiol.Rev.56、622〜647.Fujinaga Y、Wolf AA、Rodighiero C、Wheeler TE、Tsai B、Allen L、Jobling MG、Rapoport TA、Holmes RK、Lencer WI.2003.「脂質ラフトに結合するガングリオシドは、コレラ及び関連毒素の原形質膜から小胞体への輸送を媒介する(Gangliosides that associate with lipid rafts mediate transport of cholera and related toxins from the plasma membrane to endoplasmic reticulum.)」Mol Biol Cell 14:4783〜4793.Falguieres T、Mallard F、Baron C、Hanau D、Lingwood C、Goud B、Salamero J、Johannes L.2001.「滋賀毒素Bサブユニットの界面活性剤不溶性膜領域に関連した逆方向輸送経路へのターゲティング(Targeting of Shiga toxin B−subunit to retrograde transport route in association with detergent−resistant membranes.)」Mol Biol Cell 12:2453〜2468)。
【0073】
これらの毒素は、エンドソームからERへの輸送に直接又はTGNを介して関連する逆方向輸送プロセスを通過した後、サイトゾルにおいて活性を発揮する(Sandvig K、van Deurs B.2002.「タンパク質毒素によって利用される膜輸送(Membrane traffic exploited by protein toxins.)」Annu Rev Cell Dev Biol 18:1〜24)。次に、これらの毒素は、また逆方向輸送によってERからサイトゾルへ通過し、見かけ上ER関連分解機構(ERAD)を使用する(Lord,J.M.及びRoberts,L.M.(1998)J.Cell Biol.140、733〜736.Lord,J.M.、Deeks,E.、Marsden,C.J.、Moore,K.、Pateman,C.、Smith,D.C.、Spooner,R.A.、Watson,P.及びRoberts,L.M.(2003)Biochem.Soc.Trans.31、1260〜1262.AbuJarour,R.J.、Dalal,S.、Hanson,P.I.及びDraper,R.K.2005.J.Biol.Chem.280、15865〜15871)。
【0074】
したがって、スフィンゴ脂質の豊富な膜ドメインにおいて本発明の脂質付加ペプチドが共存する可能性は、細菌毒素によって使用される前述の脂質依存性逆方向輸送に基づいた細胞透過機構を使用するそれらの潜在的能力と一致するだろう。
【0075】
本発明のその他の実施形態では、設計されたペプチドは、細胞透過性ペプチドとして、DV3のエンベロープタンパク質のドメインIIIのFGヘアピン又は血清型1、2及び4の相同ペプチドを使用する。以前に、これらのペプチドは細胞受容体LRP1に結合することが示された(特許出願:「フラビウイルス感染を予防及び治療するための方法及び分子(Metodos y moleculas para la prevencion y el tratamiento de la infeccion con Flavivirus.)」CU 2006−0091.Huerta V、Chinea G、Fleitas N、Martin AM、Sarria M、Guirola O、Toledo PG、Sanchez A、Besada VA、Reyes O、Garay HE、Cabrales A、Musacchio A、Padron GR、Gonzalez LJ)。この受容体は、約30個のリガンドのエンドサイトーシスを媒介し、百日咳外毒素PTxによる細胞侵入に使用される(Herz J、Strickland DK.(2001)「LRP:多機能捕捉剤及びシグナル伝達受容体(LRP:a multifunctional scavenger and signaling receptor.)」J Clin Invest.108:779〜84.Kounnas MZ、Morris RE、Thompson MR、FitzGerald DJ、Strickland DK、Saelinger CB.「アルファ2−マクログロブリン受容体/低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、シュードモナス外毒素Aに結合し内部移行させる(The alpha 2−macroglobulin receptor/low density lipoprotein receptor−related protein binds and internalizes Pseudomonas exotoxin A.)」J Biol Chem 1992;267:12420〜12423)。
【0076】
本発明では、FGヘアピンに対応するペプチドが、ペプチドカーゴの細胞侵入を媒介できることを示した。これらのFGヘアピンを含有するペプチドの脂質付加(ミリストイル化又はパルミトイル化)は、脂質膜におけるペプチドの分配を増強することによって細胞受容体への効果的な親和性を高めるだろう。このペプチド脂質付加はまた、LRP1受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを介したペプチドの細胞透過能力の上昇と一致する。
【0077】
1つの可能性として、これらのペプチドはPTxと類似の方法で細胞に透過する。この毒素は、エンドソームから、TGN、ERを順次通過してサイトゾルまで逆方向輸送されてサイトゾルに接近する。PTxは、LRP1相互作用によって媒介される少なくとも2種類の逆方向輸送経路、a)脂質依存性経路及びb)脂質独立経路を使用する能力を有する(Smith,D.C.、Spooner,R.A.、Watson,P.D.、Murray,J.L.、Hodge,T.W、Amessou,M.、Johannes,L.、Lord,J.M.及びRoberts,L.M.、2006.「内部移行したシュードモナス外毒素Aは、小胞体に到達するために複数の経路を使用することができる(Internalized Pseudomonas Exotoxin A can Exploit Multiple Pathways to Reach the Endoplasmic Reticulum.)」Traffic、7:379〜393)。脂質依存性経路は、原形質膜の脂質ラフトのLRP1分子の20%の局在に関与するものと考えられる。脂質付加され、LPR1と相互作用する能力を備えた本発明のペプチドは、より効果的に脂質依存性経路を使用できる可能性があり、特に(ER保持シグナルとして付加された)ポリアルギニンの塩基性集団を含むペプチドは、コレステロール及びスフィンゴ脂質の豊富なラフト隣接膜ドメインに局在するために有利な組成を有する。
【0078】
本発明のその他の実施形態は、C末端にKDELシグナルを有するペプチドである。これらのペプチドは、ERの内腔での保持に機能的なKDELシグナルを形成するために、カルボキシC末端を含んで合成される(Teasdale,R.D.& Jackson,M.R.、1996.Annu.Rev.Cell Dev.Biol.12、27〜54)。このシグナルのペプチド配列への付加は、ゴルジ体からERへの逆方向輸送及びERの内腔におけるこれらのペプチドの保持に有利に関与する。したがって、このシグナルは、逆方向輸送経路の少なくとも一部を使用するペプチドのサイトゾルへの透過性に関与する。効率の高い輸送は、ペプチドの高いサイトゾル濃度をもたらし、したがって、NS3プロテアーゼ活性化の阻害活性がより強くなる。実施例3において、本発明のペプチドにKDELシグナルを付加すると、ペプチドの抗ウイルス活性の増加をもたらすことができることを示した。
【0079】
KDELシグナルの付加は、N末端に脂質が結合した又は結合していない本発明のペプチドに有効である。これは、このシグナルがERの可溶性タンパク質及びII型膜タンパク質の両方に見出されたという事実と一致する。ERの内腔に存在する本発明の脂質付加されたペプチドは、II型膜タンパク質と類似の形態をとる。
【0080】
FGヘアピン関連細胞透過性部分を有する本発明のペプチドの場合、KDELシグナルの付加は、これらのペプチドに受容体LRP1の順方向輸送を妨害する能力をさらにもたらし、したがって、原形質膜上のそれらの受容体発現レベルの減少を導く。したがって、これらの配列/シグナルの組み合わせは、原形質膜の受容体の発現が減少している細胞へのウイルスの侵入に対して間接的な負の効果を有し、この効果はウイルスの細胞侵入を遮断する前述したFGヘアピンをベースにしたペプチドの直接的効果に付け加えられる。以前の証明によって、FGヘアピンをベースにしたペプチドは、LRP1とそのシャペロン受容体関連タンパク質RAPとの相互作用に有利に働くことが示された(特許出願:「フラビウイルス感染を予防及び治療するための方法及び分子(Metodos y moleculas para la prevencion y el tratamiento de la infeccion con Flavivirus.)」CU2006−0091.Huerta V、Chinea G、Fleitas N、Martin AM、Sarria M、Guirola O、Toledo PG、Sanchez A、Besada VA、Reyes O、Garay HE、Cabrales A、Musacchio A、Padron GR、Gonzalez LJ)。これらのペプチドは、原形質膜通過中に細胞外への経路に存在する細胞内LRP1と相互作用することができることを意味する。これらのペプチドはまた、KDELシグナルを含有するので、細胞内複合体ペプチド−LRP1及び/又はペプチド−LRP1/RAPはKDEL受容体に結合することができ、したがってゴルジ体からERに通過し、LRP1の原形質膜への輸送に影響を及ぼし、LRP1が媒介するウイルスの細胞侵入に間接的に影響を及ぼす。
【0081】
本発明のペプチドの一般的な特性は、それらがNS3プロテアーゼ活性の阻害に基づいて抗ウイルス活性を表すことである。プロテアーゼ活性化の阻害は、タンパク質NS2B(ヘパシウイルスではNS4A)とNS3proドメインとの相互作用を特異的に遮断することによって実施され、この相互作用はプロテアーゼの正確な折り畳み及び完全な活性に必要な条件である。
【0082】
プロテアーゼNS3のタンパク質折り畳み及び活性化並びにコアタンパク質及び非構造タンパク質の残部の折り畳み及びプロセシングは、ER膜のサイトゾル面で生じる。したがって、本発明のペプチドの抗ウイルス活性の増強方法は、ER膜での細胞内局在の増加にある。この目的で、ペプチドのN末端に化学的に脂質付加することができた(ミリストイル化又はパルミトイル化)。脂質付加されたペプチドは、脂質膜と有利に相互作用する能力を有する。(脂質部分に支持された)脂質付加されたペプチドとER膜の良好な結合によって、ペプチドとNS3proタンパク質との間の相互作用の見かけの効果的な親和性、すなわち、以下の要素、1)局所ペプチド濃度の増加、2)(膜の平面の)2方向で生じる生体分子の相互作用及び3)膜での脂質付加されたペプチドの迅速な外側への拡散に関連した効果が増大する。さらに、ER膜のサイトゾル面に関連するとき、N末端が脂質付加されたペプチドはI型膜タンパク質と形態学的に類似し、したがって、正確な局在だけでなく、ウイルスNS2Bタンパク質(ヘパシウイルスのNS4A)に類似した膜に関する方向性も獲得する。
【0083】
一般的に、パルミトイル化及び/又は塩基性集団のような他のシグナルがないとき、サイトゾルタンパク質のミリストイル化は、主にER膜でのこれらのタンパク質の局在を誘導する(McCabe,J.B.及びBerthiaume,L.G.(1999).「細胞内局在における脂肪アシル化アミノ末端ドメインの機能的役割(Functional roles for fatty acylated amino−terminal domains in subcellular localization.)」Mol.Biol.Cell 10、3771〜3786)。ミリスチン酸自体の膜への結合は余り強くなく、ER膜中のペプチドの保持全体を保証しない。しかし、ER膜は細胞内膜の60%を構成し、膜の残部に関してペプチドの著しく有効な濃度が保証される。ミリストイル化に加えて、塩基性集団も存在すると、サイトゾルタンパク質は主に原形質膜の内面及びエンドソーム内に局在する。
【0084】
本発明の様々なペプチドは、原形質膜の外面に局在する負に荷電した分子との有利な相互作用も保証する細胞透過性ペプチドとして陽イオン部分を含有する。本発明のいくつかのペプチドは、ER保持/方向変更シグナルでもある陽イオン部分としてアルギニンの集団を含有する(Teasdale,R.D.& Jackson,M.R.(1996)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.12、27〜54.Zerangue,N.、Schwappach,B.、Jan,Y.N.& Jan,L.Y.(1999)Neuron 22、537〜548.Schutze,M.P.、Peterson,P.A.& Jackson,M.R.(1994)EMBO J.13、1696〜1705)。これらのペプチドは、同時に両方の特性、効率的な細胞透過性及び主にER膜のサイトゾル面における細胞内局在を表す目的で設計された。ERへのアルギニンをベースにした輸送シグナルは、効率が高く、膜タンパク質の品質管理機構に重要な役割を果たす(Chang,X.B.、Cui,L.、Hou,Y.X.、Jensen,T.J.、Aleksandrov,A.A.、Mengos,A.& Riordan,J.R.(1999)Mol.Cell 4、137〜142.Margeta−Mitrovic,M.、Jan,Y.N.& Jan,L.Y.(2000)Neuron 27、97〜106)。
【0085】
I型膜タンパク質のC末端に限定されているジリシンシグナルとは異なり、アルギニンをベースにしたシグナルは、N末端及びC末端並びにサイトゾル面に局在した内部ループを含む、一連の膜タンパク質の多くの位置で見出される。アルギニンをベースにした保持シグナルの多用途性は、それらとC末端KDELシグナルを一緒にしたペプチドを設計するために、本発明で使用した。したがって、これらのシグナルを含有する本発明のいくつかの脂質付加されたペプチドは、細胞内に侵入し、逆方向輸送によってサイトゾルに移行し、ERに移行する間にKDELシグナルに有利で、その後アルギニンをベースにしたシグナルによって支持されるER膜のサイトゾル面に保持される。
【0086】
本発明の一実施形態では、配列がER膜のサイトゾル面に保持されるための2個の連続した推定保持シグナルを含有する、脂質付加されたペプチドの設計を含めた。得られた配列は、LRRRRLRRRRLで、中央のLeu残基で重複した2個の連続したLRRRRL配列に相当する。疎水性残基が前にある4個の連続したアルギニンの配列は、RE保持配列の典型である(Zerangue,N.、Malan,M.J.、Fried,S.R.、Dazin,P.F.、Jan,Y.N.、Jan,L.Y.及びSchwappach,B.2001.PNAS、98:2431〜2436)。これらに関して、本発明の新規態様の1つは、得られた配列が効果的なRE保持シグナル及び細胞透過性ペプチドでもある二様性を有することである。得られた配列の細胞透過特性は、ポリアルギニン配列と類似した非常に効果的な陽イオンPTDである8個のアルギニン残基によってもたらされる。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
フラビウイルス科感染のキメラペプチド阻害剤の設計及び合成
本発明で記載したフラビウイルス科感染のキメラペプチド阻害剤は、以下の形態による一次構造を有し、
[P]−[L]−[I]−[L]−[T]又は[I]−[L]−[P]−[L]−[T]
式中、[P]は通常10〜30個の残基の細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列であり、ペプチド分子全体の細胞の細胞質内への内部移行を促進し、RER近傍に接近させる能力を備えており、[L1、L2、L3、L4]は0〜6個の残基のリンカー配列であり、[I]はNS3proプロテアーゼの活性化を遮断するアミノ酸配列であり、この部分の残基はフラビウイルスのNS3proタンパク質のC末端ベータバレルドメインのベータ鎖B2a及びB2b又はN末端ベータバレルドメインのベータ鎖A1(又はヘパシウイルス若しくはペスチウイルスの構造的に対応する領域)の少なくとも1個のアミノ酸と接触し、NS3proタンパク質は活性型又は不活性型立体構造であり(図1)、[T]は、通常、配列KDEL及びLRRRRLのようなER中における1個若しくは2個の保持シグナルである0〜10個の残基の配列又はプロテアーゼ活性部位に結合する能力を示す配列XRRである。
【0088】
表1及び2は、形態1及び2それぞれによるキメラペプチドの配列を示す。基本的なペプチドの設計は、プロテアーゼ活性化阻害剤部分[I]及び細胞透過性部分[P]の存在に基づく。[I]として、部分には、DV1〜4のNS2Bタンパク質の配列D50−E62、S70−G82及びS70−I86が含まれる。WNV及びHCVの対応する配列も含まれる。部分D50−E62は、NS3proのN末端ドメインに結合し、部分S70−G82及びS70−I86はC末端ドメインに結合する(図1A〜C)。
表1 形態[P]−[L]−[I]−[L]−[T]によるキメラペプチドの設計
【表1】


:カルボキシルC末端。Myr−:ミリストイル基のペプチドのN末端への共有結合。Pal−:パルミトイル基のペプチドのN末端への共有結合。bA:ベータ−アラニン。FG−den3:DV3のエンベロープタンパク質のドメインIIIのFGヘアピンに対応する配列、ジスルフィド結合によって結合した2個のシステインがこの部分のN及びC末端に付加されている。
表2 形態[I]−[L]−[P]−[L]−[T]によるキメラペプチドの設計
【表2】


:カルボキシルC末端。Myr−:ミリストイル基のペプチドのN末端への共有結合。Pal−:パルミトイル基のペプチドのN末端への共有結合。bA:ベータ−アラニン。FG−den3:DV3のエンベロープタンパク質のドメインIIIのFGヘアピンに対応する配列、ジスルフィド結合によって結合した2個のシステインがこの部分のN及びC末端に付加されている。
【0089】
本発明はまた、フラビウイルス科ファミリーのその他のメンバーに対する抗ウイルスキメラペプチドの設計に関する。その他のフラビウイルス科に対するペプチド阻害剤には、[I]部分として、NS2Bタンパク質配列(フラビウイルス)又はNS4A(ヘパシウイルス)に対応する類似部分が含まれる。本発明の配列のリストには、[I]部分がその他のフラビウイルス(YFV、JEV、TBE、WNV)及びヘパシウイルスHCVに対応する、表1及び2に示されたものの他のキメラペプチド類似体が含まれる。
【0090】
[P]部分として、TATペプチド、R10、ペネトラチン、陽イオン配列LRRRRLRRRRL及びLRRRRL−bAla−RRRRL及びDV3のエンベロープタンパク質の部分S376−W391(ドメインIIIのループFG)が考えられる。後者の部分は、N末端及びC末端にシステインを含み、ジスルフィド結合を形成し、エンベロープタンパク質の3次元構造に認められるベータヘアピン構造を安定化する。
【0091】
末端[T]部分として、ER保持シグナルLRRRRL、KDEL及びそれらの組み合わせLRRRRLKDELが含まれる。これらのシグナルの存在は、ERにおけるペプチドの効果的な局在を高め、抗ウイルス活性に有利な影響を与える。[T]部分として、トリペプチドGGGによって配列S70〜I86の[I]部分に結合した配列GRRも含まれる。図1Cに示したように、この一次構造を有するペプチドは、NS3proタンパク質のC末端ドメインに結合し、GRR部分はプロテアーゼ活性部位に局在し、基質との相互作用を遮断する。リンカー部分として、表1及び2にトリペプチドGGG、ジペプチドGG及びアミノ酸ベータアラニンが含まれる。
【0092】
N末端がミリストイル化及びパルミトイル化されたペプチドも含まれる。これらのペプチドの脂質付加は、原形質膜への付着効率、細胞侵入及び最終的なRE膜への局在を高める。脂質付加は、化学的方法によって実施される。表1及び2において、脂質は、N末端又はN末端ベータアラニン残基に直接結合する。
【0093】
表1及び2に含まれる様々なペプチド部分は、複数のシグナル機能を表す。部分LRRRRLRRRRL及びLRRRRL−bAla−RRRRLは、細胞透過性ペプチドである以外に、2個の連続したER保持シグナルを含む。
【0094】
DV3のエンベロープタンパク質の領域S376−W391の配列に対応する[P]部分はまた、細胞透過性ペプチドである以外に、細胞内へのウイルス侵入の阻害剤である。したがって、本発明のペプチドにおけるこれらの部分の使用は、これらのペプチドの阻害効果を高める。
【0095】
本発明のペプチドは、単独で、又は融合タンパク質の一部として、化学合成又は組換えDNA技術によって得ることができた。融合タンパク質として発現させると、発現レベル及び宿主プロテアーゼによる分解に対するペプチドの安定性を高めることができる。これらのペプチド配列は、特定のプロテアーゼの基質配列に対応するリンカーによって融合タンパク質に結合させることができ、したがって、このペプチドは、連続したタンパク質分解及び精製によって単離することができる。
【0096】
ペプチド合成
固相ペプチド合成は、Fmoc/tBu方法を使用して、Fmoc−AM−MBHAで実施した(Barany,G及びMerrifield,R.B.J Am Chem Soc.99(1977)7363〜7365)。合成は、多孔性フリットを装着した10mlシリンジで手動によって実施し、反応物及び溶媒は全て真空濾過によって廃棄した。アミノ酸は、DIC/HOBtで活性化して結合させ、ニンヒドリンアッセイによって結合反応の完了をモニターした(Kaiser,E.、Colescott,R.L.、Bossinger,C.D.、Cook,P.I.Anal Biochem.34(1970)595〜598)。
【0097】
合成したペプチドは、TFA/EDT/H2O/TIS(94%/2.5%/2.5%/1%)の溶液で処理することによって樹脂から脱離させ、エーテルで沈殿させ、72時間凍結乾燥した。ジスルフィド結合の形成によるペプチドの環化は、DMSOで酸化させることによって実施した(Andreu,D.、Albericio,F.、Sol,N.A.、Munson,M.C.、Ferrer,M.及びBarany,G.、Pennington,M.W.及びDunn,B.M.編、「ペプチド合成方法、分子生物学的方法(Peptide Synthesis Protocols,Methods in Molecular Biology)」Totowa、NJ、1994、91〜169頁)。いずれの場合も、ペプチドはRP−HPLCによって精製し、収集した画分は分析用RP−HPLCによって再度分析した。各ペプチドの最終調製物は、クロマトグラフィーによる純度が99%以上である画分を収集することによって得られた。各最終調製物のペプチドの量は、ESI−MS質量分析によって確認した。
【0098】
質量スペクトルは、Zスプレー電子噴霧イオン化源を装着した、八角型(octagonal geometry)QTOF−2TMを有するハイブリッド質量分析計(Micromass、UK)で取得した。
【0099】
スペクトルの獲得及びプロセシングのために使用したソフトウェアは、MassLinx、バージョン3.5(Waters、USA)であった。
【0100】
(実施例2)
ベロ細胞におけるウイルス感染の阻害
本発明で記載したキメラペプチドのin vitroにおける抗ウイルス活性を検証するために、ペプチドをベロ細胞におけるプラーク減少中和アッセイ(PRNT)で試験した。ベロ細胞は、24ウェルプレートで約90%コンフルエンスまで増殖させ、FCSを含まないMEM培地で2回洗浄した。ペプチド希釈物は、特定のアッセイにしたがって添加し、通常37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウイルスは感染効率0.1で添加し、その後37℃で1時間引き続きインキュベートした。ある種の実験では、ペプチドは(プレインキュベーションしないで)ウイルスと同時に添加するか、又はペプチドプレインキュベーション時間を変更した。2回目のインキュベーションの終了時に、未結合のウイルスを洗浄によって排除し、溶解性プラークの出現を抑えるために、細胞を高密度培地(非必須アミノ酸、1%FCS、1%カルボキシメチルセルロースを補給したMEM)で37℃で5日間インキュベートした。プラークは、酢酸ナトリウム0.15Mol/Lに溶かした0.1%ナフトールブルーブラックで染色することによって視覚化した。各アッセイの実験点毎に複製を2つ使用して、3回の独立した測定を実施した。阻害割合は、式、
【化1】


にしたがって計算した。
【0101】
図2は、ペプチドNS2Bden2+TAT(表1のペプチド1)が、用量依存的に、DV2による感染を阻害し、IC50が約50〜60μMであることを示している。このペプチドは、このアッセイ条件で、細胞に対して毒性の徴候を示さなかった。ペプチドNS2Bden2+TATの配列は、2個の必須のモジュール、細胞透過性部分TAT及びプロテアーゼのC末端ドメインを標的化するプロテアーゼNS3pro活性化阻害剤部分を含有する。TATペプチドは、抗ウイルス活性を示さず、プラークの数の増加を引き起こす(図2B)。この結果は、ペプチド設計と矛盾せず、抗ウイルス活性は、VD2(S16803株)に特異的に関連した部分に存在する。TATペプチドの存在下で認められたウイルス感染増強は、このペプチドのPTD特性によって促進されたウイルスの細胞への侵入の増加が関連し得る。PTDによって媒介されるウイルスの細胞透過性増加は、その他の系で既に観察されている(Gratton JP,Yu J、Griffith JW他、「細胞透過性ペプチドは、細胞摂取及び細胞内及びin vivoにおける複製欠損ウイルスの治療遺伝子輸送を高める(Cell−permeable peptides improve cellular uptake and therapeutic gene delivery of replication−deficient viruses in cells and in vivo.)」Nat Med 2003;9:357〜63)。
【0102】
ペプチドNS2Bden2+TATの配列におけるTATペプチド部分の存在は、NS3proプロテアーゼ活性化阻害剤部分[I]自体がin vitroにおいて抗ウイルス活性を示さないので、抗ウイルス活性に必要である(図5)。
【0103】
図2は、キメラペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性は、ウイルスを添加する前にペプチドを細胞と1時間プレインキュベートすれば増大することを示している。この結果は、ペプチドの抗ウイルス活性の標的が細胞内現象であり、プレインキュベーションによって大量のペプチドを細胞内に透過させ、ウイルス複製開始前にER膜に局在させるという事実と一致する。
【0104】
ペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性に対するプレインキュベーションの効果を特徴付けるために、プラーク減少中和、プレインキュベーション時間とペプチド用量との間の関係を研究した。陰性対照として、NS2Bden2+TATに類似した構造を表す非関連キメラペプチドを使用した。このペプチドは、N末端にTATペプチドの配列、C末端にヒト乳頭腫ウイルスのタンパク質E7に結合を示した配列を含有する。図3は、ペプチド濃度が100μM未満の場合、プレインキュベーションが抗ウイルス活性に必要で、この活性はプレインキュベーション時間が0時間と1時間との間で増加することを示している。この結果は、抗ウイルス効果の標的が細胞内に局在すること、及び細胞外空間からサイトゾルへペプチドを輸送することが必要であることと一致する。
【0105】
しかし、プレインキュベーションの1時間と3時間との間には、大きな差は認められない。可能性のある1つの説明は、これらの時間で、サイトゾル中のペプチド蓄積の動態とペプチドの細胞内分解との間が平衡に達するということであろう。
【0106】
陰性対照ペプチドは、アッセイした条件のいずれにおいても抗ウイルス活性を示さず、ペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス効果が特にNS2Bタンパク質に対応する部分の配列によることを示している。
【0107】
図4は、ペプチドNS2Bden2+TATの抗ウイルス活性が細胞内効果に関連していることを示す他の証拠を示す。この場合、既に記載された通常のアッセイ条件の他に(図4A)、ウイルスを添加する前に、細胞を連続的に洗浄することによってペプチドを培地から回収したとき、ペプチドの抗ウイルス活性も測定した(図4B)。両方のアッセイ条件下において、ペプチドの抗ウイルス活性は非常に類似しており、抗ウイルス効果は既に内部移行したペプチドに左右されることを示している。これらのアッセイにおいて、表1のペプチド18は陰性対照として使用された。このペプチドは、ペプチドNS2Bden2+TATと類似した設計であるが、C末端部分はNS2Bden2+TATのNS3proプロテアーゼ活性化阻害剤[I]部分と同じ長さ及びアミノ酸組成の配列から成っているが、元の配列がランダム化されていた。このペプチドは、いずれの条件においても抗ウイルス活性を示さず、NS2Bden2+TATの抗ウイルス活性は、NS2Bの選択された配列断片に左右されることを示している。
【0108】
(実施例3)
ペプチドの抗ウイルス活性に対する細胞透過性ペプチドの性質及びER保持シグナルの効果
細胞透過性ペプチド及びER保持シグナルの本発明のペプチドの抗ウイルス活性に対する役割を決定するために、表1のペプチド番号1、2、3及び4のベロ細胞のVD2によるウイルス感染の阻害を実施例2で記載したアッセイを使用して試験した。
【0109】
ペプチド2及び3は、ペプチドNS2Bden2+TAT(ペプチド1)と類似の一次構造を有するが、細胞透過性部分としてそれぞれペネトラチン及びデカアルギニンを表す。ペプチド4は、ペプチドNS2Bden2+TATのC末端にKDELシグナルが付加されている。ペプチド4のC末端基は、ER保持シグナルを機能させるために、カルボキシである。
【0110】
図5及び表3は、ペプチドNS2Bden2−pRR(表1のペプチド3)がより高い抗ウイルス活性、すなわち、ペプチドNS2Bden2+TATよりほとんど一桁大きな効力を表すことを示している。可能性のある1つの説明は、デカアルギニンペプチドは、細胞の細胞内環境においてタンパク質分解により耐性であることである(Fischer,R.、Kohler,K.、Fotin−Mleczek,M.及びBrock,R.2004.「陽イオン細胞透過性ペプチドの細胞内での動態の段階的分析(A stepwise dissection of the intracellular fate of cationic cell−penetrating peptides.)」J.Biol.Chem.279、12625〜35)。ペプチドNS2Bden2−pP2(ペプチド2)は、NS2Bden2+TATと類似の抗ウイルス活性を示すが、顕著な細胞傷害性を示す。KDELシグナルを付加すると、ペプチドの抗ウイルス活性が少し増加し、ペプチドNS2Bden2+TATはサイトゾルに接近するために少なくとも部分的に逆方向輸送を使用することが示唆される。
【0111】
細胞透過性部分を欠落したペプチドNS2Bden2は、抗ウイルス活性を阻害せず、この種類の部分の包含が本発明のペプチドに必要であることを示している。
表3 ベロ細胞におけるペプチドのPRNT50及び細胞傷害性(CTE)
【表3】


CTE:細胞傷害性効果、値は、単層の50%まで障害を与えるペプチド濃度を示す。
【0112】
(実施例4)
同種及び異種ウイルスに対するペプチドの抗ウイルス活性
抗ウイルス薬に期待される特性は、少なくとも関連する最も類似したウイルスに対して、広範囲の抗ウイルス活性を有することである。デングウイルスに対する抗ウイルス分子の開発においてもこのことは事実で、1)デングは実際に4種の異なるウイルスの複合体であり、2)早期の特異的な診断には困難があり、3)感染した国では、デングはしばしば風土性があり、複数の血清型の同時循環が生じる。
【0113】
4種類のデング血清型は、構造的及び非構造的タンパク質が類似のアミノ酸配列(同一性70〜80%)を有する関連ウイルスである。したがって、NS2B及び/又はNS3proのアミノ酸配列の違いが本発明のペプチドの異種ウイルスに対する感染阻害能力に影響を及ぼし得ることは合理的である。
【0114】
本発明のペプチドの抗ウイルス活性の交差反応性及び血清型特異性を評価するために、表1のペプチド1、3及び6のベロ細胞のDV1〜3によるウイルス感染の阻害を実施例2で記載したアッセイを使用して試験した。試験したウイルス株は、DV1のWest Pac 74、DV2のS16803及びDV3のCH53489であった。ペプチド6(NS2Bden1+TAT)は、NS2Bden2+TATと類似の一次構造を有するが、DV1のタンパク質NS2Bに対応するNS3活性阻害剤部分を有する。コンピュータ方法によって設計されたペプチド5の分析も含めた。
【0115】
図6は、ペプチドNS2Bden2+pRR(表1のペプチド3)が3種類の血清型に対して同等の効力であることを示している。ペプチドNS2Bden2+TATはまた、抗ウイルス活性が低いが血清型1〜3を阻害する。しかし、ペプチドNS2Bden1+TAT(ペプチド6)は、血清型1及び3に対して部分的な阻害しか示さない。この結果は、血清型1及び3が互いに系統学的に近く、それらのタンパク質はより類似している事実と一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラビウイルス科(Flaviviridae)ファミリーのウイルスのNS3proプロテアーゼ活性化の少なくとも1個の部分阻害剤及び細胞透過性部分を含む一次構造を有し、ウイルスによる感染を阻害するか、又は軽減することができることを特徴とするキメラペプチド。
【請求項2】
NS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有し、前記部分がNS3proに結合し、NS2Bとフラビウイルス(Flavivirus)のNS3pro又はヘパシウイルス(Hepacivirus)のタンパク質NS4Aとの相互作用を遮断又は妨害することができるペプチドであり、前記遮断又は妨害が、減少したタンパク質分解活性を示すか又はタンパク質分解活性を示さないNS3タンパク質の形成をもたらすことを特徴とする請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項3】
NS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有し、前記部分がNS3proに結合し、DV2のNS3proタンパク質のN末端ドメインのGly21−Lys28領域に含まれる少なくとも1個の残基又はその他のフラビウイルス(Flavivirus)のNS3proタンパク質の構造的対応残基と接触することができるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項4】
NS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有し、前記部分がNS3proに結合し、DV2のNS3proタンパク質のC末端ドメインのGly114−Thr118領域、Ser127及びVal162に含まれる少なくとも1個の残基又はその他のフラビウイルス(Flavivirus)のNS3proタンパク質の構造的対応残基と接触することができるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項5】
NS3proプロテアーゼ活性化の前記部分阻害剤が、HCVのNS3proタンパク質のN末端ドメインのGlu32−Thr38領域に含まれる少なくとも1個の残基又はその他のヘパシウイルス(Hepacivirus)のNS3proタンパク質の構造的対応残基と接触する、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項6】
DV2のNS2Bタンパク質のAsp50−Glu62領域又はその他のフラビウイルス(Flavivirus)のタンパク質NS2Bの構造的対応部分を含むNS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有するか、或いは同一性80%以上の配列類似性を示すアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項7】
DV2のNS2Bタンパク質のSer70−Gly82領域又はその他のフラビウイルス(Flavivirus)のタンパク質NS2Bの構造的対応部分を含むNS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有するか、或いは同一性80%以上の配列類似性を示すアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項8】
HCVのNS4Aタンパク質のThr20−Leu31領域又はその他のヘパシウイルス(Hepacivirus)のタンパク質NS4Aの構造的対応部分を含むNS3proプロテアーゼ活性化の部分阻害剤を含有するか、或いは同一性80%以上の配列類似性を示すアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項9】
フラビウイルス科(Flaviviridae)ファミリーの前記ウイルスが以下のフラビウイルス(Flavivirus)、西ナイルウイルス(West Nile virus)、セントルイス脳炎ウイルス(St Louis Encephalitis Virus)、DV1、DV2、DV3、DV4、日本脳炎ウイルス(Japanese Encephalitis virus)、黄熱病ウイルス(Yellow Fever virus)、クンジンウイルス(Kunjin virus)、キャサヌール森林病ウイルス(Kyasanur Forest Disease virus)、ダニ媒介脳炎ウイルス(Tick−borne Encephalitis virus)、マレー渓谷脳炎ウイルス(Murray Valley virus)、LANGATウイルス、跳躍病ウイルス(Louping ill virus)、ポワッサンウイルス(Powassan virus)の1種である、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項10】
フラビウイルス科(Flaviviridae)ファミリーの前記ウイルスがヘパシウイルス(Hepacivirus)であり、具体的にはHCVである、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項11】
以下の陽イオンPTD、TATペプチド、ヘプタアルギニン、オクタアルギン、ノナアルギニン、デカアルギニン、又は配列LRRRRLRRRRL若しくはLRRRRL−bAla−LRRRRLのペプチドの1つである細胞透過性部分を含有することを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項12】
DV2のエンベロープタンパク質のSer376−Trp391領域又はデングウイルスのその他の血清型の構造的対応部分を含む細胞透過性部分を含有することを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項13】
小胞体における保持及び/又は局在のシグナルを含有し、このシグナルの存在が前記ペプチドの抗ウイルス活性を高めることを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項14】
脂質付加されており、前記脂質付加が前記ペプチドの抗ウイルス活性を高めることを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項15】
配列表に含まれる一次構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項16】
請求項1に記載の1個又は複数のペプチドを含有し、フラビウイルス科(Flaviviridae)ファミリーの1種又は複数のウイルスによる感染に対する予防的及び/又は治療的処置に有効であることを特徴とする医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−526022(P2010−526022A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534979(P2009−534979)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/CU2007/000020
【国際公開番号】WO2008/052490
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】