説明

フロアユニットの揚重装置および揚重方法

【課題】低コストな構成のフロアユニットの揚重装置および揚重方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一対の柱部材2とこれら柱部材2の上側に設けられる上側部材4とから構成される架構6内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニット10を揚重機12で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重装置100であって、フロアユニット10を支持するためにこのフロアユニット10の下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビーム14に沿って架設したワイヤロープ16の一端を上側部材4に吊り下げ固定するとともに、他端を揚重機12に接続し、揚重機12でワイヤロープ16を巻き上げることによりリフトアップビーム14を吊り上げ、フロアユニット10を揚重する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事務所ビル等の建設工事などで用いられるフロアユニットの揚重装置および揚重方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の事務所ビル等の建設工事において、鉄骨小梁とデッキとからなるユニットに耐火被覆、スプリンクラー配管、設備ダクト、保温材等を組み込んだフロアユニットを多段に積層してストックし、これを上段から順次上方へ揚重するフロアユニット積層生産システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。図7および図8に例示するように、このシステムは、建設中の建物1内の上部四隅に4台の電動チェーンブロック3を設け、その下方に平行配置してある2本の長尺状のリフトアップビーム5の両端をチェーン7を介して各電動チェーンブロック3で吊り上げることにより、その上側に載せたフロアユニット10を揚重するものである。こうすることで、狭隘な敷地条件下におけるフロア施工コストの低減と工期短縮とに寄与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−249980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来のフロアユニット積層生産システムを中小規模の建設工事現場に適用する場合には、フロアユニットのストック枚数(段数)を減らし、中間階からの揚重をしない方法を採用することでコストダウンが可能である。しかしながら、システムを構成する4台の電動チェーンブロックに掛かる費用が高く、十分なコストメリットを得にくいことから、より低コストで実現可能な揚重技術の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストな構成のフロアユニットの揚重装置および揚重方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るフロアユニットの揚重装置は、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重装置であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るフロアユニットの揚重装置は、上述した請求項1において、前記リフトアップビームは両端にシーブが設けられた角型鋼管からなり、前記ワイヤロープはこの鋼管を挿通し前記シーブを介して前記上側部材および前記揚重機に接続してあることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係るフロアユニットの揚重装置は、上述した請求項1または2において、前記揚重機をラフター型クレーンまたは前記上側部材に固定される電動チェーンブロックで構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係るフロアユニットの揚重方法は、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重方法であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続し、前記揚重機で前記ワイヤロープを巻き上げることにより前記リフトアップビームを吊り上げ、前記フロアユニットを揚重することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に係るフロアユニットの揚重方法は、上述した請求項4において、前記リフトアップビームは両端にシーブが設けられた角型鋼管からなり、前記ワイヤロープはこの鋼管を挿通し前記シーブを介して前記上側部材および前記揚重機に接続してあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に係るフロアユニットの揚重方法は、上述した請求項4または5において、前記揚重機をラフター型クレーンまたは前記上側部材に固定される電動チェーンブロックで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフロアユニットの揚重装置によれば、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重装置であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続したので、リフトアップビーム1本を揚重機1台で揚重することができる。したがって、本発明によれば、2本のリフトアップビームを2台の揚重機で揚重可能であることから、電動チェーンブロックなどの揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて2台の揚重機を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重装置を提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係るフロアユニットの揚重方法によれば、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重方法であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続し、前記揚重機で前記ワイヤロープを巻き上げることにより前記リフトアップビームを吊り上げ、前記フロアユニットを揚重するので、リフトアップビーム1本を揚重機1台で揚重することができる。したがって、本発明によれば、2本のリフトアップビームを2台の揚重機で揚重可能であることから、電動チェーンブロックなどの揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて2台の揚重機を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係るフロアユニットの揚重装置の実施例1を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明に係るフロアユニットの揚重装置の実施例1を示す正面図である。
【図3】図3は、実施例1の要部を示す側面図である。
【図4】図4は、図3のA部分の拡大図である。
【図5】図5は、本発明に係るフロアユニットの揚重装置の実施例2の要部を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明に係るフロアユニットの揚重装置の実施例2を示す正面図である。
【図7】図7は、従来のフロアユニット積層生産システムの構成を示す正面図である。
【図8】図8は、従来のフロアユニット積層生産システムの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るフロアユニットの揚重装置および揚重方法の実施の形態(実施例1および2)を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、実施例1は揚重機として電動チェーンブロック2台を使用する場合、実施例2はラフター型クレーンを使用する場合について記述したものである。なお、これら実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
[実施例1]
まず、実施例1(電動チェーンブロック2台を使用する場合)について図1〜図4を参照しながら説明する。図1は実施例1のフロアユニットの揚重装置の側面図、図2は正面図、図3は要部の側面図、図4は図3のA部分の拡大図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、本発明の実施例1に係るフロアユニットの揚重装置100は、少なくとも一対の柱部材2とこれら柱部材2の上側に設けられる上側部材4とから構成される架構6内の下方に略水平に積層配置された平面状のフロアユニット10を、2本のリフトアップビーム14を介して2台の電動チェーンブロック12(揚重機)で鉛直上方に揚重する装置である。
【0018】
リフトアップビーム14は、フロアユニット10を支持するためにこのフロアユニット10の下側に略水平に配置される長尺状の角型鋼管であり、上側部材4に固定された2台の電動チェーンブロック12の各下方に設けてある。図3および図4に示すように、リフトアップビーム14の鋼管の両端にはシーブ18が設けてあり、この鋼管内にはワイヤロープ16が挿通してある。ワイヤロープ16の一端はシーブ18を介して上側部材4に吊り下げ固定され、他端は、シーブ18、接続部20およびチェーン22を介して電動チェーンブロック12に接続されている。
【0019】
また、図2に示すように、柱部材2にはフロアユニット10を支持するための荷重受けアーム24が各階ごとに取り付けてある。この荷重受けアーム24は軸部24a周りに一方向に回動可能に構成されており、上昇中のフロアユニット10の端部が荷重受けアーム24の内端を押し上げると回動退避してフロアユニット10の上昇進路をあけるようになっている。
【0020】
本実施例1の動作および作用を説明する。
2台の電動チェーンブロック12でチェーン22を巻き上げると、上側部材4に吊り下げ固定されたワイヤロープ16を介して2本のリフトアップビーム14が上昇する。こうすることで、リフトアップビーム14の上側に積載されたフロアユニット10が揚重される。
【0021】
このように、本実施例1のフロアユニットの揚重装置および揚重方法によれば、リフトアップビーム1本を電動チェーンブロック1台で揚重することができるので、2本のリフトアップビームを2台の揚重機で揚重可能である。このため、揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて2台の揚重機を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重装置および揚重方法を提供することができる。
【0022】
なお、上記の実施の形態においては、ワイヤロープ1本あたりに作用する荷重は、上記の従来の4台の電動チェーンブロックを用いた揚重装置と比較すると1/2になるが、各電動チェーンブロック12の揚程は従来の装置の2倍必要となる。
【0023】
また、上記の実施の形態においては、リフトアップビーム14の角型鋼管内部にワイヤロープ16を挿通する場合について説明したが、リフトアップビーム14に沿って架設する態様であればこれに限るものではなく、例えば角型鋼管の外側に長手方向に沿って複数のシーブを設置してこの間にワイヤロープ16を架設するようにしてもよい。
【0024】
[実施例2]
次に、実施例2(ラフター型クレーンを使用する場合)について図5および図6を参照しながら説明する。図5は実施例2のフロアユニットの揚重装置の要部の側面図、図6は正面図である。
【0025】
図5および図6に示すように、本発明の実施例2に係るフロアユニットの揚重装置200は、上記の実施例1において、2台の電動チェーンブロック12の代わりに1台のラフター型クレーン26を揚重機として用いたものである。
【0026】
ワイヤロープ16の他端は1本の吊ビーム28に固定されており、吊ビーム28は、チェーン22を介してラフター型クレーン26に吊り下げられている。また、図6に示すように、吊ビーム28の両端にはガイドローラ32が設けてあり、このガイドローラ32は、一対の柱部材2の内側に立設されたガイドレール30に嵌め込まれている。このため、吊ビーム28はガイドレール30に沿って上下方向に移動可能である。
【0027】
本実施例2の動作および作用を説明する。
1台のラフター型クレーン26でチェーン22を巻き上げると、吊ビーム28がガイドレール30に沿って上昇する。これにより、上側部材4に吊り下げ固定されたワイヤロープ16を介して2本のリフトアップビーム14が上昇する。こうすることで、リフトアップビーム14の上側に積載されたフロアユニット10が揚重される。
【0028】
このように、本実施例2のフロアユニットの揚重装置および揚重方法によれば、リフトアップビーム2本を吊ビーム28を介してラフター型クレーン1台で揚重することができる。このため、揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて揚重機台数を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重装置および揚重方法を提供することができる。
【0029】
なお、上記の実施の形態においては、揚重機としてラフター型クレーンを使用する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば鉄骨合番用のラフター型クレーンやクローラー型クレーンなどの揚重機を使用するようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、本発明に係るフロアユニットの揚重装置によれば、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重装置であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続したので、リフトアップビーム1本を揚重機1台で揚重することができる。したがって、本発明によれば、2本のリフトアップビームを2台の揚重機で揚重可能であることから、電動チェーンブロックなどの揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて2台の揚重機を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重装置を提供することができる。
【0031】
また、本発明に係るフロアユニットの揚重方法によれば、少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重方法であって、前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続し、前記揚重機で前記ワイヤロープを巻き上げることにより前記リフトアップビームを吊り上げ、前記フロアユニットを揚重するので、リフトアップビーム1本を揚重機1台で揚重することができる。したがって、本発明によれば、2本のリフトアップビームを2台の揚重機で揚重可能であることから、電動チェーンブロックなどの揚重機が4台必要となっていた上記の従来のフロアユニット積層生産システムの構成に比べて2台の揚重機を省略できるので、低コストな構成のフロアユニットの揚重方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係るフロアユニットの揚重装置および揚重方法は、事務所ビル等のフロア施工に有用であり、特に、フロアユニットを低コストで揚重するのに適している。
【符号の説明】
【0033】
2 柱部材
4 上側部材
6 架構
10 フロアユニット
12 電動チェーンブロック(揚重機)
14 リフトアップビーム
16 ワイヤロープ
18 シーブ
20 接続部
22 チェーン
24 荷重受けアーム
24a 軸部
26 ラフター型クレーン(揚重機)
28 吊ビーム
30 ガイドレール
32 ガイドローラ
100 フロアユニットの揚重装置(実施例1)
200 フロアユニットの揚重装置(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重装置であって、
前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続したことを特徴とするフロアユニットの揚重装置。
【請求項2】
前記リフトアップビームは両端にシーブが設けられた角型鋼管からなり、前記ワイヤロープはこの鋼管を挿通し前記シーブを介して前記上側部材および前記揚重機に接続してあることを特徴とする請求項1に記載のフロアユニットの揚重装置。
【請求項3】
前記揚重機をラフター型クレーンまたは前記上側部材に固定される電動チェーンブロックで構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のフロアユニットの揚重装置。
【請求項4】
少なくとも一対の柱部材とこれら柱部材の上側に設けられる上側部材とから構成される架構内の下方に略水平に配置された平面状のフロアユニットを揚重機で鉛直上方に揚重するフロアユニットの揚重方法であって、
前記フロアユニットを支持するためにこのフロアユニットの下側に略水平に配置される長尺状のリフトアップビームに沿って架設したワイヤロープの一端を前記上側部材に吊り下げ固定するとともに、他端を前記揚重機に接続し、前記揚重機で前記ワイヤロープを巻き上げることにより前記リフトアップビームを吊り上げ、前記フロアユニットを揚重することを特徴とするフロアユニットの揚重方法。
【請求項5】
前記リフトアップビームは両端にシーブが設けられた角型鋼管からなり、前記ワイヤロープはこの鋼管を挿通し前記シーブを介して前記上側部材および前記揚重機に接続してあることを特徴とする請求項4に記載のフロアユニットの揚重方法。
【請求項6】
前記揚重機をラフター型クレーンまたは前記上側部材に固定される電動チェーンブロックで構成したことを特徴とする請求項4または5に記載のフロアユニットの揚重方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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