説明

フロート弁装置

【課題】ハウジング側壁の貫通孔に燃料しぶき等が侵入することを防止できると共に、同貫通孔を開口した状態に保持することができる、フロート弁装置を提供する。
【解決手段】このフロート弁装置1は、隔壁12を介してフロート室R1及び通気室R2を設け、下方開口部に装着されるロアキャップ30を有するハウジングと、フロート弁50と、フロート弁50が接離する弁座13aをなす連通口13とを備え、ハウジングの側壁には、フロート室R1と前記燃料タンク内とを連通させる貫通孔20が形成され、ロアキャップ30には、その外周から上方に向かって延出され、側壁との間に所定の間隙を保って貫通孔20の外側に配置される障壁35が形成され、ハウジングの側壁には、貫通孔20の上方から立ち上がり、障壁35の先端部を支持する支持片25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、カットオフバルブ等に好適なフロート弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクには、燃料蒸気をキャニスタに逃がすと共に、自動車が走行中に大きく揺れたり、自動車が転倒したりしたときには、キャニスタに連通する開口を閉じて燃料が外部に漏れるのを防止するため、カットオフバルブ(ロールオーバーバルブともいう)が設けられている。
【0003】
従来のカットオフバルブとしては、例えば、隔壁を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室、上方にタンク外部に連通する通気室が設けられ、下方開口部に装着されるロアキャップを有するハウジングと、前記フロート室に上下昇降可能に配置されたフロート弁と、前記フロート室と前記通気室とを連通するように前記隔壁に形成され、その下面周縁が、前記フロート弁が接離する弁座をなす連通口とを備え、前記ハウジングの側壁には、前記フロート室と前記燃料タンク内とを連通させる貫通孔が形成されたものが使用されている。
【0004】
しかしながら、上記カットオフバルブでは、自動車が旋回等して燃料タンク内の燃料が大きく揺れた場合に、燃料が貫通孔から勢いよく入り込み、しぶき等となって連通口を通して通気室側に侵入してしまうことがあった。そして、進入した燃料が、タンク内外の圧力差によってキャニスタ側に流されてしまい、燃料漏れの一因となることがあった。
【0005】
このような燃料漏れの原因となる燃料の通気室側への侵入を抑制するための技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、フロート弁を収納するハウジング(ケース)を設けて、燃料タンク内の油面が所定以上に上昇した場合にフロート弁が上昇して、弁座開口部を閉塞することで燃料タンク内の生燃料の流出を阻止し、かつ、前記ハウジングの側壁の上端付近に貫通孔(排出穴)を貫通形成し、更に、前記ハウジングの上部裏面から、ハウジング側壁に対して所定隙間を設けて、障壁(横波防御壁)が垂設されており、この障壁が前記貫通孔の外側開口部より下方位置まで伸びた構造とされた、カットオフバルブが開示されている。
【特許文献1】特許第3337739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1における障壁は、その上端がハウジングの上部に連結されていて、下端は自由端部となっていて、障壁の下端内周と、ハウジングの側壁外周との間は開口しているので、この下方開口部から燃料しぶきが入り込んで貫通孔に侵入し、ハウジング内に入り込んでしまうことがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ハウジング側壁の貫通孔から燃料が勢いよく入り込むことをより効果的に防止し、燃料しぶき等が連通口を通して通気室側に侵入することを抑制できるようにしたフロート弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、隔壁を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室、上方にタンク外部に連通する通気室が設けられ、下方開口部に装着されるロアキャップを有するハウジングと、
前記フロート室に上下昇降可能に配置されたフロート弁と、
前記フロート室と前記通気室とを連通するように前記隔壁に形成され、その下面周縁が、前記フロート弁が接離する弁座をなす連通口とを備え、
前記ハウジングの側壁には、前記フロート室と前記燃料タンク内とを連通させる貫通孔が形成され、
前記ロアキャップには、その外周から上方に向かって延出され、前記側壁との間に所定の間隙を保って前記貫通孔の外側に配置される障壁が形成され、
前記ハウジングの側壁には、前記貫通孔の上方から立ち上がり、前記障壁の先端部を支持する支持片が形成されていることを特徴とするフロート弁装置を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、燃料タンク内の燃料液面が所定高さ以上になると、燃料がフロート室内に流入して浮力によりフロート弁が上昇して、隔壁に形成された弁座に当接して開口部を閉塞し、燃料が連通口を通して通気室内に流入することを防止することができる。
【0010】
また、ハウジング側壁に形成された貫通孔の外側に、所定の間隙を設けて障壁が形成されているので、車両が揺動したり、旋回したりして、燃料タンク内の燃料が揺動して、側壁に衝突しても、障壁によって貫通孔に直接衝突することを防止でき、貫通孔から燃料がフロート室内に勢い良く入り込んで、燃料しぶきとなって隔壁に設けられた連通口から通気室側に侵入してしまうことを防止できる。
【0011】
また、障壁は、ロアキャップの外周から上方に向かって延出され、貫通孔の外側に配置されていることから、貫通孔の下方も障壁で覆われているので、車両の揺動や旋回などによって、燃料が揺動して下方から燃料しぶきが上がっても、貫通孔に入るのを防止できる。
【0012】
更に、貫通孔の上方から支持片が立ち上がっているので、車両の傾きに伴って弁装置が傾いて、弁装置上方が燃料液面に近づいたり、或いは、燃料が大きく上下に揺動したりした場合等に、貫通孔の上方から燃料が侵入するのも防止することができる。
【0013】
また、障壁は、その先端部が、ハウジングの側壁に形成された支持片によって支持されているので、障壁が折れ曲がって破損したりすることを防止できる。
【0014】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記支持片には、前記障壁の先端部が嵌合するスリット又は凹部が形成されているフロート弁装置を提供するものである。
【0015】
上記発明によれば、障壁の先端部が支持片に形成されたスリット又は凹部に嵌合しているので、障壁の内方への倒れ込みや、外方への折れ曲がりを確実に防止して、障壁と貫通孔との間隙を確実に保持することができる。このため、障壁がハウジングの側壁側に倒れて、ハウジング側壁の貫通孔を塞いでしまうという不都合も回避できる。
【0016】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明において、前記支持片は、前記ハウジングの側壁からひさし状に突出し、その先端が下方に折曲されて、前記側壁との間に所定の間隙を保ちつつ、前記貫通孔の外側を覆うように延出されたカバー壁を有し、このカバー壁の一側は前記側壁に連結され、他側は開口しているフロート弁装置を提供するものである。
【0017】
上記発明によれば、ひさし状に突出した部分と、貫通孔の外側を覆うように延出されたカバー壁と、カバー壁の一側を覆う連結壁とによって、障壁の剛性を高めてハウジングの側壁と障壁との間の空隙を確保すると共に、燃料が貫通孔から勢いよく入り込むことをより効果的に防止できる。
【0018】
また、カバー壁の一側が連結壁により連結されているので、その剛性を向上させることができ、障壁の先端部をしっかりと支持することができる。また、カバー壁の他側は開口しているので、貫通孔を通して空気や燃料が通過しやすくすることができる。
【0019】
本発明の第4は、前記第3の発明において、前記側壁のカバー壁よりも下方であって、前記障壁の両側には、前記障壁と前記ハウジングの側壁との隙間を覆うリブが立設されているフロート弁装置を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、障壁の両側には、障壁とハウジングの側壁との隙間を覆うリブが立設されているので、障壁の両側から燃料のしぶき等が貫通孔に侵入しにくくなる。
【0021】
本発明の第5は、前記第1〜4のいずれか1つの発明において、前記障壁の基端部は、前記ハウジングの側壁の下部外周に密接しており、同障壁の前記貫通孔の外側に位置する部分は、前記ハウジングの側壁に対して所定間隙を有しているフロート弁装置を提供するものである。
【0022】
上記発明によれば、障壁の基端部は、ハウジングの側壁の下部外周に密接しているので、ハウジングに対してロアキャップをガタ付きなく装着させることができると共に、貫通孔の外側に位置する部分では、側壁に対して所定間隙を有していることにより、貫通孔を通しての燃料や空気の出入りを確保することができる。
【0023】
本発明の第6は、前記第1〜5のいずれか1つの発明において、前記ハウジングの側壁の外周には、ハウジングの内径方向に所定深さで窪んだ窪み部が形成されており、該窪み部に前記貫通孔が形成されているフロート弁装置を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、貫通孔の形成位置を、ハウジングの内径側にずらすことができるので、障壁と貫通孔との間隙を保持しつつ、障壁をハウジングの内径寄りに形成することができ、障壁のコンパクト化を図ることができる。また、貫通孔は、所定深さで窪んだ窪み部に形成されているので、燃料しぶきや燃料を、貫通孔に一層入りにくくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ハウジング側壁の貫通孔の外側に障壁が形成されており、かつ、貫通孔の下方も障壁で覆われているので、燃料が揺動して下方からしぶきが上がっても、貫通孔に入るのを防止できる。また、障壁の先端部が支持片によって支持されているので、障壁の折れ曲がりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜7を参照して本発明のフロート弁装置をカットオフバルブに適用した一実施形態について説明する。
【0027】
図1に示すように、このフロート弁装置1(以下、「弁装置1」という)は、ハウジング本体10と、このハウジング本体10の下方開口部に装着されるロアキャップ30と、ハウジング本体10の上方に装着されるアッパーキャップ40とを備える、ハウジング5を有している。
【0028】
図4,5に示すように、ハウジング本体10及びロアキャップ30により画成される内部空間が、後述するフロート弁50が上下昇降可能に配置されるフロート室R1をなし、ハウジング本体10及びアッパーキャップ40により画成される内部空間が、通気室R2をなしている。前記フロート室R1は燃料タンク内に連通し、前記通気室R2は、燃料タンク外部に配置されたキャニスタに至る流路に連通している。以下、各構成部材について説明する。
【0029】
図1,4,5に示すように、ハウジング本体10は、下方が開口した円筒状の側壁11と、その上面を閉塞する隔壁12とを有し、この隔壁12の中央には連通口13が貫通して形成されており、前記フロート室R1と通気室R2とが連通されている。また、前記連通口13の下面周縁は所定高さで円筒状に突設し、後述するフロート弁50の弁頭51が接離する弁座13aをなしている。
【0030】
ハウジング本体10の外周一個所には、箱状の弁体収容部15が設けられている。この弁体収容部15の底壁には、ボール弁Vが接離する開口部15aが形成されている(図4参照)。この弁体収容部15内にボール弁Vが収容されると共に、第1付勢バネS1が収容され、ボール弁Vが開口部15a側へ付勢されて、開口部15aが常時閉塞されている。また、弁体収容部15には、図示しないキャニスタに連結される配管を接続するための接続管16が、弁体収容部15の内部空間に連通して一体形成されている。そして、前記ボール弁Vは、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高まったときに、第1付勢バネS1の付勢力に抗して開口部15aから離れて、燃料蒸気を燃料タンク外へ排出する機能を果たすようになっている。
【0031】
ハウジング本体10の隔壁12の上面、及び、前記弁体収容部15の上方には、枠状のキャップ取付部17が突設されている。このキャップ取付部17の上方開口部に、アッパーキャップ40が装着される。また、キャップ取付部17の前記接続管16とは反対側からは、ブラケット係合片18が延設されており、その先端下方から突設した係合爪18aが、図1に示すブラケットBの外側縁に係合して、同ブラケットBを介して燃料タンクTに弁装置1が取付けられるようになっている。
【0032】
また、ハウジング本体10の側壁11の下方には、ロアキャップ30の係合孔37a(後述する)に係合する係合突起19が、周方向に沿って複数突設されている。
【0033】
図2及び図5〜7に示すように、このハウジング本体10の側壁11には、前記フロート室R1と燃料タンク内とを連通させる貫通孔20が形成されている。この実施形態では、円筒状の側壁11の周方向に対向する2箇所であって、前記接続管16及びブラケット係合片18に直交する位置に、円形状をなした複数の貫通孔20が形成されている。
【0034】
図2に示すように、貫通孔20は、側壁11の上記対向する2箇所に、左右2列をなして上下に並んで形成されており、最上部の貫通孔20a,20aと、その下方に配列された貫通孔20bとを有し、側壁11の上記対向する2箇所のそれぞれに合計6個ずつ設けられている。
【0035】
そして、ハウジング本体10の側壁11には、後述するロアキャップ30の障壁35を支持する支持片25が形成されている。図2に示すように、この支持片25は、側壁11の上部貫通孔20aよりも上方の外周面から、ひさし状に突出した、ひさし状突片26を有しており、更にこのひさし状突片26の先端が下方に折曲され、側壁11との間に所定の間隙を保ちつつ、上部貫通孔20aを覆うように延出されたカバー壁27を有している。
【0036】
この実施形態のひさし状突片26は、側壁11の周方向に沿った幅が、左右一対の上部貫通孔20a,20aを覆う大きさとされ、側壁11の外周面から外径方向に向けて垂設されている。更に、前記カバー壁27は、ひさし状突片26と同じ幅で、同ひさし状突片26に対し直交して折曲されて、下方に延出されており、側壁11との間に一定幅の間隙が形成されている。
【0037】
また、図1に示すように、ひさし状突片26には、その幅方向に沿って、障壁35の先端部が嵌合する、スリット26aが貫通して形成されている。なお、このスリット26aは、ひさし状突片26の下面から所定深さで形成された凹部であってもよく、障壁35の先端部が嵌合可能であればよい。更に、前記カバー壁27は、その一側27aが前記側壁11に連結されて閉塞しており、他側27bは側壁11に連結されずに開口している(図2,7参照)。また、カバー壁27には、側壁11に設けた一対の上部貫通孔20a,20aに整合した位置に、一対の孔27c,27cが形成されている。
【0038】
障壁35は、その先端部がひさし状突片26に形成されたスリット26aに嵌合するようになっている(図5,6参照)。これに関連して、前記側壁11のカバー壁27よりも下方であって、障壁35の、側壁11の周方向に沿った両側には、障壁35とハウジング本体10の側壁11との隙間を覆うリブ28,28がそれぞれ立設されている。この実施形態におけるリブ28,28は、障壁35の幅方向両側から所定隙間離れた位置であって、左右一対ずつ上下に配置された2組の下部貫通孔20bを覆う高さで形成されている。
【0039】
上記構造をなしたハウジング本体10の下方開口部に装着されるロアキャップ30は、燃料を通過可能な透孔31aが形成された、円形状の底板31を有しており、この底板31の中央からは、第2付勢バネS2の一端部を支持するバネ支持突起33が突設されている。
【0040】
そして、底板31には、その外周縁から上方に向かって延出され、前記側壁11との間に所定の間隙を保って、複数の貫通孔20の外側に配置される障壁35が形成されている。この実施形態では、底板31の外周縁の周方向に対向した位置から、一対の障壁35,35が上方に向かって延出されている。
【0041】
各障壁35は、前記ハウジング本体10の側壁11の下部外周に密接する基端部35aと、この基端部35aの上端外周から、側壁11との間に所定間隙を確保しつつ上方に伸び、前記貫通孔20の外側に位置する部分をなす延出部35bとを有している。この延出部35bは、ハウジング本体10の軸心と平行に上方に伸びており、前記側壁11との間に一定の間隙を保っている。この延出部35bの先端部が、前記支持片25のスリット26aに嵌合して、障壁35が支持されるようになっている。
【0042】
また、底板31の外周縁であって、前記一対の障壁35,35の間からは、ハウジング本体10の側壁11の下部外周に被さると共に、前記係合突起19に係合する係合孔37aを有する、複数の係合壁37が立設されている。
【0043】
前記フロート室R1内に、スライド可能に収容されるフロート弁50は、略円柱形状をなし、その上面中央から前記弁座13aに接離する弁頭51が突設し、その外周に上下に伸びるガイドリブ52が複数形成され、これがハウジング本体10の側壁11内周に摺接して、フロート弁50のスライド動作がガイドされるようになっている。
【0044】
そして、上記フロート弁50は、次のようにしてフロート室R1内に配置される。すなわち、フロート弁50の底部中央に設けた凹部53内に、第2付勢バネS2を挿入した状態で、ハウジング本体10のフロート室R1内にフロート弁50を挿入する。
【0045】
次いで、第2付勢バネS2の一端部をバネ支持突起33で支持させ、ロアキャップ30をハウジング本体10の下方開口部に向けて押し込む。そして、ハウジング本体10の側壁11の下部外周に係合壁37を被せると共に障壁35の基端部35aを密接させ、ロアキャップ30の係合孔37aにハウジング本体10の係合突起19を係合させ、更に障壁35の先端部をひさし状突片26のスリット26aに嵌合させる(図5,6参照)。その結果、障壁35が、側壁11の外側に所定間隙を設けた状態で配置されて、その延出部35bによって複数の貫通孔20a,20bの外側が覆われると共に、側壁11の外周に密接した基端部35aによって、貫通孔20の下方を覆った状態で、ハウジング本体10の下方開口部にロアキャップ30が装着される(図2,5,6参照)。
【0046】
上記のように、この実施形態における障壁35の基端部35aは、ハウジング本体10の側壁11の下部外周に密接しているので、ハウジング本体10に対してロアキャップ30をガタ付きなく装着させることができる。
【0047】
また、障壁35の先端部は、支持片25に形成されたスリット26aに嵌合するようになっているので、障壁35の内方(ハウジング本体10の側壁11に近づく方向)への倒れ込みや、外方(ハウジング本体10の側壁11から遠ざかる方向)への折れ曲がりを確実に防止して、障壁35と貫通孔20との間隙を確実に保持することができる。
【0048】
更に、障壁35の先端部を支持する、支持片25を構成するカバー壁27は、その一側がハウジング本体10の側壁11に連結されているので(図2,7参照)、支持片25の剛性を向上させることができ、障壁35の先端部をしっかりと支持することができる。
【0049】
また、障壁35は、その基端部35aがハウジング本体10の側壁11の下部外周に密接して支持されていると共に、先端部が支持片25によって支持されているので、その両端部が支持されていることとなり、障壁35の外方への折れ曲がりや内方への倒れ込み等の変形や、撓み等を確実に防止することができ、障壁35と貫通孔20との間隙をしっかりと確保することができる。
【0050】
上記のように、ハウジング本体10にロアキャップ30が装着されることによって、フロート弁50はフロート室R1内にスライド可能に収容配置され、それと共に、フロート弁50とロアキャップ30の底板31との間に、第2付勢バネS2が介装される。フロート弁50は、燃料に浸漬しない状態では、自重により第2付勢バネS2を圧縮して、底板31上に載置される。また、第2付勢バネS2は、車両の傾き等により燃料が上昇し、フロート弁50が燃料に浸漬されたとき、フロート弁50に生じる浮力と合わせて、フロート弁50に上向きの付勢力を与える。
【0051】
次に、この弁装置1の作用効果を説明する。
【0052】
弁装置1は、燃料タンクTに溶接されたブラケットBの外側縁に、ブラケット係合片18の係合爪18aを係合させることにより、ブラケットBに装着されて、燃料タンクTの内部に弁装置1が取付けられるようになっている。また、弁装置1の接続管16には、燃料タンクTの外部に配置された図示しないキャニスタに連結された配管が接続される。
【0053】
そして、車両が揺れず、燃料タンク内の燃料の液面が傾かずに、フロート弁50が燃料に浸漬されていない状態では、フロート弁50の自重により、第2付勢バネS2が圧縮され、フロート弁50の弁頭51が、弁座13aから離れて、連通口13が開いている(図4,5参照)。
【0054】
上記状態で、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料Fの液面が上昇し、フロート弁50に燃料が所定高さ以上浸漬すると、フロート弁50に浮力が作用すると共に、第2付勢バネS2の付勢力によって、フロート弁50が浮き上がり、図6に示すように、弁頭51が弁座13aに当接して連通口13が閉塞される。その結果、燃料が連通口13を通って、通気室R2内に流入することが阻止されて、燃料タンクTの外部への燃料漏れを確実に防止することができる。
【0055】
また、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりした場合には、燃料タンクT内の燃料Fが揺動したり、図5に示すように、燃料液面から微細な飛沫状の燃料しぶきFaが立ち上がったりして、これらがハウジング本体10の側壁11に衝突してしまうことがあった。
【0056】
これに対して、この弁装置1においては、ハウジング本体10の側壁11に形成された複数の貫通孔20a,20bの外側に、所定の間隙を設けて障壁35が形成されているので、図5に示すように、揺動した燃料Fや燃料しぶきFaがハウジング本体10の側壁11に衝突しても、それらが複数の貫通孔20a,20bに直接衝突することを防止できる。その結果、複数の貫通孔20a,20bから燃料がフロート室R1内に勢い良く進入して、隔壁12に設けられた連通口13から通気室R2側に入ってしまうことを防止できる。
【0057】
また、上述したように、障壁35は、ハウジング本体10の下方に装着される、ロアキャップ30の外周から上方に向かって延出され、複数の貫通孔20a,20bの外側に配置されていることから、複数の貫通孔20a,20bの下方も障壁35で覆われているので、車両の揺動や旋回などによって、燃料Fが揺動して下方から燃料しぶきFaが上がっても、複数の貫通孔20a,20bに入るのを防止できる。
【0058】
更に、この実施形態ではひさし状突片26が、上部貫通孔20aの上方から立ち上がって、同上部貫通孔20aを覆っているので、車両の傾きに伴って、燃料Fが大きく上下に揺動して、ひさし状突片26の上方から燃料が降りかかったとしても、貫通孔20a、20bに燃料Fが勢い良く直接侵入するのを防止することができる。
【0059】
また、障壁35は、その先端部が、ハウジング本体10の側壁11に形成された支持片25によって支持されているので、障壁35が外方へ折れ曲がることを防止できる。その結果、障壁35の破損を抑制して貫通孔20が露出するのを防止でき、貫通孔20からの燃料しぶきFa等の侵入を防止できる。更に、障壁35が内方へ倒れ込むのも防止できるので、障壁35とハウジング本体10の側壁11との間隙を確保して、貫通孔20を開口した状態に保持することができる。その結果、貫通孔20を開口した状態に保持することができ、図7の矢印に示すように、貫通孔20を、フロート室R1内に流入した液体状の燃料Fの排出や、燃料蒸気や空気の出入口等として確実に機能させることができる。
【0060】
また、この実施形態の支持片25は、ひさし状突片26と、貫通孔20の外側を覆うカバー壁27とによって、燃料Fや燃料しぶきFaが貫通孔20からハウジング本体10のフロート室R1内に入り込むのを防ぐことができる。更に前記カバー壁27は、一側27aはハウジング本体10の側壁11に連結されているものの、他側27bは開口しているので、図7に示すように、燃料や空気の出入口がしっかりと確保されていて、貫通孔20を通して燃料や燃料蒸気或いは空気を通過しやすくすることができる。
【0061】
更に、この実施形態では、ハウジング本体10の側壁11の、前記カバー壁27よりも下方であって、障壁35の幅方向両側には、リブ28,28が立設されていて、障壁35とハウジング本体10の側壁11との隙間が覆われているので、障壁35の両側から燃料Fや燃料しぶきFaを貫通孔20に侵入させにくくすることができる。
【0062】
ところで、燃料Fの液面が上昇して、フロート弁50により連通口13が閉塞された状態で、なおも燃料タンクT内の圧力が高まる場合がある。この場合、弁体収容部15の開口部15aを常時閉じたボール弁Vが、第1付勢バネS1の付勢力に抗して上方にスライドして開口部15aを開き、燃料蒸気が燃料タンク外に排出されるので、燃料タンク内の圧力が所定値に保持される。
【0063】
また、上記構造をなした弁装置1は、満タン規制バルブと組み合わせて、燃料タンクに配置されることがある。すなわち、燃料タンク内に、カットオフバルブとして機能する弁装置1の他に、満タン規制バルブが配置され、給油時に燃料液面が一定の高さになると満タン規制バルブが閉じて、図示しないベントチューブを通して燃料が給油管の所定箇所に返送され、燃料の供給が停止するようになっている。
【0064】
そして、満タン規制バルブが閉じる液面の高さに対して、弁装置1(カットオフバルブ)が閉じる液面の高さが所定距離だけ高くなるように設定され、満タン規制バルブが閉じる前に弁装置1(カットオフバルブ)が閉じてしまうことを防止するようにしている。すなわち、満タン規制バルブが閉じて給油が停止されるまでは、ハウジング5のフロート室R1を通して、燃料蒸気や空気を排出できる状態に維持すること、つまり、貫通孔20を開口した状態に維持することが必要となる。
【0065】
このような要請に対して、本発明に係る弁装置1においては、上述したように、障壁35とハウジング5の側壁11との間隙を確保して、貫通孔20を開口した状態に保持することができる。
【0066】
図8,9には、本発明のフロート弁装置の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
【0067】
この実施形態のフロート弁装置1a(以下、「弁装置1a」という)は、ハウジング5を構成するハウジング本体10の側壁11の外周に、ハウジング本体10の内径方向に所定深さで窪んだ窪み部11aが形成され、この窪み部11aの底部に前記貫通孔20が形成されている。この窪み部11aに対応して、ハウジング本体10の側壁11内周の、窪み部11aが形成された位置は、内径方向に所定高さで出っ張った形状をなしている。
【0068】
上記実施形態によれば、貫通孔20の形成位置を、前記実施形態に比べて、ハウジング本体5の内径側にずらすことができるので、障壁35と貫通孔20との間隙を保持しつつ、障壁35の延出部35bをハウジング本体5の内径寄りに形成することができ、その結果、障壁35のコンパクト化を図ることができる。また、貫通孔20は、所定深さで窪んだ窪み部11aの底部に形成されているので、燃料しぶきFaや燃料を、貫通孔20に一層入りにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のフロート弁装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同フロート弁装置の要部拡大斜視図である。
【図3】同フロート弁装置を構成するロアキャップの拡大斜視図である。
【図4】同フロート弁装置の断面図である。
【図5】同フロート弁装置の、図4とは直交した切断面における断面図である。
【図6】同フロート弁装置の、図5と同一の切断面において、フロート弁が最大原上昇した状態を示す断面図である。
【図7】図5のVII−VII矢示線における断面図である。
【図8】本発明のフロート弁装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】同フロート弁装置の要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1a フロート弁装置(弁装置)
5 ハウジング
10 ハウジング本体
11 側壁
12 隔壁
13 連通口
13a 弁座
20 貫通孔
25 支持片
26 ひさし状突片
26a スリット
27 カバー壁
28 リブ
30 ロアキャップ
35 障壁
35a 基端部
40 アッパーキャップ
50 フロート弁
R1 フロート室
R2 通気室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁を介して、下方に燃料タンク内に連通するフロート室、上方にタンク外部に連通する通気室が設けられ、下方開口部に装着されるロアキャップを有するハウジングと、
前記フロート室に上下昇降可能に配置されたフロート弁と、
前記フロート室と前記通気室とを連通するように前記隔壁に形成され、その下面周縁が、前記フロート弁が接離する弁座をなす連通口とを備え、
前記ハウジングの側壁には、前記フロート室と前記燃料タンク内とを連通させる貫通孔が形成され、
前記ロアキャップには、その外周から上方に向かって延出され、前記側壁との間に所定の間隙を保って前記貫通孔の外側に配置される障壁が形成され、
前記ハウジングの側壁には、前記貫通孔の上方から立ち上がり、前記障壁の先端部を支持する支持片が形成されていることを特徴とするフロート弁装置。
【請求項2】
前記支持片には、前記障壁の先端部が嵌合するスリット又は凹部が形成されている請求項1記載のフロート弁装置。
【請求項3】
前記支持片は、前記ハウジングの側壁からひさし状に突出し、その先端が下方に折曲されて、前記側壁との間に所定の間隙を保ちつつ、前記貫通孔の外側を覆うように延出されたカバー壁を有し、このカバー壁の一側は前記側壁に連結され、他側は開口している請求項1又は2記載のフロート弁装置。
【請求項4】
前記側壁のカバー壁よりも下方であって、前記障壁の両側には、前記障壁と前記ハウジングの側壁との隙間を覆うリブが立設されている請求項3記載のフロート弁装置。
【請求項5】
前記障壁の基端部は、前記ハウジングの側壁の下部外周に密接しており、同障壁の前記貫通孔の外側に位置する部分は、前記ハウジングの側壁に対して所定間隙を有している請求項1〜4のいずれか1つに記載のフロート弁装置。
【請求項6】
前記ハウジングの側壁の外周には、ハウジングの内径方向に所定深さで窪んだ窪み部が形成されており、該窪み部に前記貫通孔が形成されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のフロート弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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