説明

ブレーキシステム

【課題】パイロット圧通路のエア抜きが十分に行われるブレーキシステムを提供する。
【解決手段】ブレーキ装置20に対して駆動圧通路83とドレン通路88とを信号圧に応じて選択的に開通させる油圧切換弁30と、この油圧切換弁30に信号圧を導くパイロット圧通路82とを備え、油圧切換弁30は信号圧が上昇するのに伴ってドレン通路88が開通する制動位置(ニ)から駆動圧通路83を開通する解除位置(ホ)に切り換わる構成としたブレーキシステムであって、パイロット圧通路82内の加圧作動油をドレンするパイロットドレン通路49を備え、油圧切換弁30は制動位置(ニ)にてパイロットドレン通路49を閉塞する一方、解除位置(ホ)にてパイロットドレン通路49を開通させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータ等に用いられるブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧モータに用いられる摩擦制動式のブレーキシステムとして、非回転体に設けられた固定プレートと、回転体に設けられた回転プレートと、ピストンを介して回転プレートを固定プレートに対して押圧するコイルばねとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このブレーキ装置は、コイルばねの付勢力によって回転プレートと固定プレートとの間に摩擦ブレーキ力を発生させて回転体を停止させる。また、ブレーキ力の解除は、油圧を用いてピストンをコイルばねの付勢力に抗して移動させることによって行われる。
【0004】
このため特許文献1では、ブレーキ力の解除を制御するブレーキ解除用油圧切換弁が設けられる。この油圧切換弁は、供給される信号圧に応じて移動するスプールの位置に応じてポンプからの油圧をブレーキ装置のピストンに作用させる。
【0005】
このように、ブレーキ力の解除は、油圧切換弁の作用によりコイルばねを圧縮させ、回転プレートと固定プレートとの間の摩擦力を解除することによって行われる。
【特許文献1】特開2002−39047
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧切換弁のスプールに信号圧を供給するパイロット圧通路は、油圧ポンプからの駆動圧が供給されていない場合には、加圧作動油がタンクにドレンされる構成となっている。しかしながら、パイロット圧通路は一端がタンク内に開口しているのみであり、パイロット圧通路内に残留した空気を抜く、いわゆるエア抜きが不十分となることがある。エア抜きが不十分な場合には、信号圧の立ち上がりが遅れることに伴いブレーキ力の解除タイミングが遅れ、油圧モータの回転により、ブレーキの摩耗が促進され、寿命が低下するという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、パイロット圧通路のエア抜きが十分に行われるブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加圧作動流体が供給されることによって制動力を解除するとともに加圧作動流体がドレンされることによって制動力を発生するブレーキ装置と、このブレーキ装置に加圧作動流体を供給する駆動圧通路と、ブレーキ装置から加圧作動流体をドレンするドレン通路と、ブレーキ装置に対して駆動圧通路とドレン通路とを信号圧に応じて選択的に開通させる油圧切換弁と、この油圧切換弁に信号圧を導くパイロット圧通路とを備え、油圧切換弁は信号圧が上昇するのに伴ってドレン通路が開通する制動位置から駆動圧通路を開通する解除位置に切り換わる構成としたブレーキシステムであって、パイロット圧通路内の加圧作動流体をドレンするパイロットドレン通路を備え、油圧切換弁は制動位置にてパイロットドレン通路を閉塞する一方、解除位置にてパイロットドレン通路を開通させる構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、油圧切換弁の解除位置にてパイロット圧通路内の加圧作動流体をエアと共にパイロットドレン通路を通して逃がすことにより、パイロット圧通路内のエア抜きを十分に行われる。これにより、パイロット圧通路内に残留するエアに起因して信号圧の立ち上がりが遅れることを防止して、ブレーキ力の解除が的確に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、図1を参照して本発明が適用可能な油圧モータ1の全体構成について説明する。油圧モータ1は、例えば、建設機械等の旋回装置に用いられる斜板式の油圧モータである。
【0011】
油圧モータ1は、負荷(図示せず)に連結される出力軸2と、出力軸2に連結され出力軸2と一体に回転するシリンダブロック3とを備える。出力軸2は油圧モータ1のケース11とカバー12に軸受17、18を介して回転可能に支持されている。
【0012】
シリンダブロック3における出力軸2を中心とする同心円上には、出力軸2と平行に複数のシリンダ4が開口している。それぞれのシリンダ4には、容積室5を画成するピストン6が往復摺動自在に挿入されている。
【0013】
ピストン6の先端には球面座10を介してシュー9が連結されている。シュー9は、ケース11に固定された斜板7に面接触している。シリンダブロック3が回転するのに伴って、各シュー9が斜板7に摺接し、各ピストン6が斜板7の傾転角度に応じたストローク量で往復動する。
【0014】
カバー12には、シリンダブロック3の基端面が摺接するバルブプレート8が取り付けられている。バルブプレート8は図示しない油圧ポンプに連通するポートと、タンク側に連通するポートとを有する。油圧ポンプから各ポートを介して各容積室5に導かれる油圧によって各ピストン6がシリンダ4から突出し、各ピストン6がシュー9を介して斜板7を押すことによってシリンダブロック3が回転する。そして、シリンダブロック3の回転が出力軸2を介して負荷に伝達される。
【0015】
油圧モータ1には、摩擦制動式のブレーキ装置20が内蔵されている。ブレーキ装置20について以下に説明する。
【0016】
ブレーキ装置20は、シリンダブロック3と共に回転する複数(本実施の形態では3枚)のディスクプレート21と、ケース11に回転不能に設けられ、ディスクプレート21と当接することによってディスクプレート21との間にて摩擦ブレーキ力を発生する摩擦部材としての複数(本実施の形態では2枚)のフリクションプレート22と、ディスクプレート21とフリクションプレート22とを互いに押し付けることによって双方のプレート21、22の間にて摩擦ブレーキ力を発生させると共に、その押し付けを解除することによって摩擦ブレーキ力を解除可能なブレーキ作動機構25とを備える。
【0017】
各ディスクプレート21は、シリンダブロック3の外周にスプライン係合している。各ディスクプレート21は、円環形状であり、内周には歯(図示せず)が形成されている。シリンダブロック3の外周には、出力軸2の軸方向に延在して形成されたスプライン3aが形成されている。ディスクプレート21の歯とシリンダブロック3のスプライン3aとが噛み合うことによって、ディスクプレート21は、シリンダブロック3の回転に伴って回転し、かつ出力軸2の軸方向に移動することができる。
【0018】
各フリクションプレート22は、ディスクプレート21と同様にケース11の内周にスプライン係合している。各フリクションプレート22は、円環形状であり、ケース11の内周に対して、ケース11と相対回転不能で、かつ出力軸2の軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0019】
各フリクションプレート22は、隣合うディスクプレート21の間に挟まれるようにして配置されている。
【0020】
ブレーキ作動機構25は、ケース11の内周に支持され出力軸2の軸方向に移動可能な環状のブレーキピストン27と、カバー12とブレーキピストン27との間に介装されブレーキピストン27をディスクプレート21に向かって付勢する付勢部材としての複数のブレーキスプリング26と、ブレーキ解除用油圧切換弁30から加圧作動油(作動流体)が供給されることによってブレーキスプリング26の付勢力に抗してブレーキピストン27を移動させるブレーキ解除用チャンバ28とを備える。
【0021】
ブレーキピストン27は、ケース11の内周壁11aに沿って摺動する摺動部27aと、摺動部27aに一体に設けられ対向するディスクプレート21を押圧することによってフリクションプレート22との間にて摩擦ブレーキ力を発生させるピストン部27bとからなる。ブレーキピストン27には、カバー12に植設したピン13が挿通し、出力軸2周りの回転が阻止される。
【0022】
ピストン部27bは、摺動部27aと比較して外径が小さく形成され、ピストン部27bの外周面27cとケース11の内周壁11aとの間には空間が存在する。
【0023】
その空間には、ピストン部27bの外周面27cとケース11の内周壁11aとの双方に当接して配置されたリング体29が配置されている。これにより、ピストン部27bの外周面27cとケース11の内周壁11aとリング体29の基端面とによって、ブレーキ解除用チャンバ28が画成される。なお、ケース11の内周壁11aには、リング体29の先端部が係合する段部11bが形成されている。
【0024】
ブレーキピストン27の摺動部27aには基端面に開口する複数の穴27dが同一円上に形成されており、各穴27d内にブレーキスプリング26がそれぞれ収装されている。
【0025】
ブレーキ解除用チャンバ28内は、油圧切換弁30を介して図示しないタンク又は油圧供給源(パイロットポンプ50)に選択的に接続されている。油圧切換弁30により、その選択を切り換えることによってブレーキ解除用チャンバ28内への圧油の給排が行われ、それに伴いブレーキピストン27が前進後退し、ブレーキ動作とその解除が行われる。
【0026】
ケース11の内壁には、ブレーキピストン27がブレーキスプリング26の付勢力によって前進した際に、各ディスクプレート21及び各フリクションプレート22における出力軸2の軸方向の所定以上の移動を規制する規制部材としての受部11cが形成されている。このように、ディスクプレート21及びフリクションプレート22は、ブレーキピストン27と受部11cとの間にて互いに押し付けられ、ディスクプレート21とフリクションプレート22との間にて摩擦ブレーキ力を発生する。
【0027】
図2は、油圧モータ1を備える油圧ショベルの旋回用油圧回路を示す。図において、油圧モータ1は油圧ショベルの上部旋回体(図示せず)を遊星歯車機構90を用いた減速機等を介して旋回駆動するものである。また、油圧モータ1には前述のブレーキ装置20が設けられ、このブレーキ装置20は上部旋回体の旋回停止時に制動力を発生する。
【0028】
前述したように油圧切換弁30の駆動圧ポート39及びスプール40に駆動圧を供給するパイロットポンプ50を備えるとともに、タンク52から加圧作動油を吸い上げた加圧作動油を油圧モータ1に供給する油圧ポンプ51を備える。パイロットポンプ50と油圧ポンプ51は車両に搭載される図示しないエンジンによって駆動される。
【0029】
油圧ポンプ51は一対のメイン管路54A、54Bを介して油圧モータ1に接続される。メイン管路54A、54Bの途中には手動切換式の方向切換弁55が設けられている。
【0030】
方向切換弁55は操作レバー58を作業者が操作することで中立位置(イ)から切換位置(ロ)、(ハ)に切換えられ、中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切り換えられた場合には、吐出した加圧作動油はメイン管路54Aから油圧モータ1に供給され、メイン管路54Bからタンク52にドレンされる。一方、中立位置(イ)から切換位置(ハ)に切り換えられた場合には、吐出した加圧作動油はメイン管路54Bから油圧モータ1に供給され、メイン管路54Aからタンク52にドレンされる。また、中立位置(イ)の場合には、油圧ポンプ51からの加圧作動油は、油圧モータ1へ供給されることなくタンク52へドレンされる。このようにして、油圧ポンプ51から油圧モータ1に給排する圧油の方向を切換え、油圧モータ1の回転方向を切り換え、あるいは停止する構成となっている。
【0031】
油圧モータ1と方向切換弁55との間でメイン管路54A、54B間を連通する分岐管路57A、57B、58A、58Bを設け、タンク管路56は分岐管路57A、57Bとの接続部、分岐管路58A、58Bとの接続部に接続し、タンク52に開口する。
【0032】
分岐管路57A、57Bの途中にはそれぞれチェック弁59A、59Bが配設され、このチェック弁59A、59Bはタンク52からメイン管路54A、54B側に向けて加圧作動油が流通するのを許容することにより、メイン管路54A、54B内が負圧状態になるのを防止する。
【0033】
分岐管路58A、58Bの途中にそれぞれ一対のリリーフ弁60A、60Bが設けられ、リリーフ弁60A、60Bは圧力設定ばね61A、61Bによって高圧のリリーフ設定圧Phが予め決められ、一方で後述のアキュムレータ62A、62Bにより低圧リリーフ時の開弁圧力Plが設定されている。そして、リリーフ弁60A、60Bは油圧モータ1の回転時等にメイン管路54Aまたは54B内に、例えばリリーフ設定圧Ph以上の圧力(過剰圧)が発生すると、リリーフ弁60A、60Bの弁体が開弁することにより、この圧力(過剰圧)をタンク管路56側へとリリーフさせる。
【0034】
リリーフ弁60A、60Bに付設するアキュムレータ62A、62Bを備え、例えば油圧モータ1の慣性回転時等にメイン管路54A、54Bからの加圧作動油が絞り67A、67B等を介してアキュムレータ62A、62B内に供給されると、加圧作動油が一時的に蓄油され、このときにリリーフ弁60A、60Bは開弁圧力Plで低圧リリーフする。
【0035】
この結果、アキュムレータ62A、62Bはリリーフ弁60A、60Bにショックレス機能を与え、リリーフ弁60A、60Bが高圧のリリーフ設定圧Phで開弁するときの衝撃を緩和するようになる。
【0036】
さらに油圧モータ1に制動力を作用させる前述のブレーキ装置20を備え、チャンバ28内の加圧作動油がドレンされている場合はブレーキスプリング26によりブレーキピストン27がディスクプレート21をフリクションプレート22側に押付け、油圧モータ1の出力軸2等に制動力を発生する。そして、ブレーキ装置20は油圧モータ1の回転駆動時等にブレーキ管路73からチャンバ28内にブレーキ解除圧(駆動圧)となる加圧作動油がパイロットポンプ50から供給されると、このときの圧力でブレーキスプリング26を圧縮させることにより、油圧モータ1の制動を解除する。
【0037】
ブレーキ解除用油圧切換弁30は、ブレーキ管路73の接続先をパイロットポンプ50とタンク52とに選択的に切り換える。ここで、ブレーキ解除用油圧切換弁30はその信号圧としてドレン圧が導かれる場合には、リターンスプリング36の付勢力によりチャンバ28内の加圧作動油をドレンしてブレーキ装置20が制動力を生じる制動位置(ニ)に保持される。一方、ブレーキ解除用油圧切換弁30はその信号圧として駆動圧が供給される場合は、ブレーキ解除用油圧切換弁30は制動位置(ニ)から解除位置(ホ)に切換えられ、パイロットポンプ50からブレーキ装置20のチャンバ28にブレーキ管路73を介して駆動圧、つまりブレーキ解除圧を供給する。
【0038】
ブレーキ解除用油圧切換弁30への信号圧を切り換えるために2位置切換弁のパイロット圧切換弁80を備える。パイロット圧切換弁80の位置を切り換える操作レバー81を備え、この操作レバー81は操作レバー58と連動するものである。
【0039】
作業者が操作レバー58を操作することによって、操作レバー81を介してパイロット圧切換弁80が解除位置(ヘ)に切り換えられた場合には、パイロットポンプ50からの駆動圧が駆動圧通路83から分岐したパイロット圧通路82を通じてブレーキ解除用油圧切換弁30のスプール40に作用し、油圧切換弁30はリターンスプリング36の付勢力により制動位置(ニ)に切り換わる。
【0040】
一方、作業者が操作レバー58を操作することによって、操作レバー81を介してパイロット圧切換弁80が制動位置(ト)に切り換えられた場合には、パイロット圧通路82がタンク52に連通することで、ドレン圧がブレーキ解除用油圧切換弁30のスプール40に作用し、油圧切換弁30はリターンスプリング36の付勢力に抗して解除位置(ホ)に切り換わる。
【0041】
以上のように、ブレーキ解除用油圧切換弁30は、スプール40に信号圧を導くパイロット圧通路82がタンク52に連通する解除位置(ホ)に切り換えられた作動状態にて、パイロット圧通路82内の作動油がタンク52にドレンされる構成となっている。
【0042】
しかしながら、実際には、パイロット圧通路82の一端がブレーキ解除用油圧切換弁30のスプール40によって閉塞されているため、パイロット圧通路82内の作動油がタンク52内に流下することはほとんどなく、作動油の中に混入したエアがパイロット圧通路82内に残留し、いわゆるエア抜きが十分に行われないという問題点がある。パイロット圧通路82内の作動油にエアが残留した場合には、信号圧の立ち上がりが遅れるため、ブレーキ解除用油圧切換弁30が制動位置(ニ)から解除位置(ホ)に切り換えられるタイミングが遅れ、ブレーキ装置20のブレーキ力が解除されない状態で、油圧モータ1が回転作動してしまい、ブレーキ装置20の摩耗が進み、寿命が低下する。
【0043】
これに対処して、本発明は、図3に示すように、ブレーキ解除用油圧切換弁30の解除位置(ホ)にてパイロット圧通路82の一端をタンク52に連通させるパイロットドレン通路49を備え、パイロット圧通路82内の加圧作動油をエアと共にパイロットドレン通路49を通ってドレン通路88からタンク52にドレンする構成とする。
【0044】
図4において、(a)は本発明のブレーキ解除用油圧切換弁30の断面図であり、(b)はブレーキ解除用油圧切換弁30の油圧回路図である。油圧切換弁30は、図1に示すように油圧モータ1のケース11に締結されるバルブボディ31と、このバルブボディ31の中心軸方向に形成された穴部に摺動可能に収められるスプール40と、スプール40の一端によって画成されるパイロットポート33と、スプール40を図中右方向へ付勢するリターンスプリング36とを備える。
【0045】
パイロットポンプ50の吐出圧が信号圧としてパイロット圧通路82を通ってパイロットポート33に導かれると、リターンスプリング36の付勢力に抗してスプール40を図において左方向へ移動する。
【0046】
スプール40は、その鍔部がバルブボディ31の内周面に形成された段部43に当接することよって右方向への移動が規制される一方、その端面が閉止栓34に当接することによって左方向への移動が規制される。
【0047】
バルブボディ31は、パイロットポンプ50からの加圧作動油が図3に示す駆動圧通路83を通じて供給される駆動圧ポート39と、ブレーキ作動機構25のブレーキ解除用チャンバ28に図3に示すブレーキ管路73を介して連通するブレーキ解除用ポート38と、油圧モータ1のケース11内に連通するドレンポート37とを備える。
【0048】
円柱状のスプール40には、両端から中心軸に沿って形成される孔部40a、40bと、この孔部40a、40bを連通するオリフィス40cと、スプール40の外周面に形成された環状の溝部41a、41bと、孔部40bと溝部41bとを連通するオリフィス42bとが形成される。
【0049】
スプール40が図4に示す制動位置(ニ)にあるとき、ブレーキ解除用ポート38に一対の溝部41bとオリフィス42bとを介してドレンポート37を連通させる。なお、一対の溝部41bは絞り部を介して常時連通している。
【0050】
スプール40が図5〜7に示す解除位置(ホ)にあるとき、ブレーキ解除用ポート38に溝部41aを介して駆動圧ポート39を連通させる。すなわち、溝部41aは、解除位置(ホ)にてブレーキ解除用ポート38に駆動圧ポート39を連通させるブレーキ駆動通路48を構成する。
【0051】
ブレーキ解除用油圧切換弁30は、スプール40の孔部40aに摺動可能に嵌合するロッド45を備え、このロッド45を介してパイロットドレン通路49が開閉される。
【0052】
ロッド45の基端部に環状に拡がる鍔部45aが形成され、この鍔部45aがストッパリング46を介してスプール40内に固定される。ロッド45には鍔部45aの両側を連通する通孔45bが形成されている。
【0053】
ロッド45には、その先端から中心軸に沿って延びる孔部45cと、この孔部45cに連通しロッド45の外周面に開口するオリフィス45dとが形成される。
【0054】
スプール40が図4、5に示すストローク位置にあるとき、オリフィス45dはスプール40によって閉塞される一方、スプール40が解除位置(ホ)にて図6に示すストローク位置に来ると、オリフィス45dはスプール40によって開かれ、パイロットドレン通路49を開通させる。
【0055】
パイロットドレン通路49は、通孔45b、オリフィス45d、孔部45c、孔部40b、オリフィス40c、孔部40a、リターンスプリング36が収められるスプリング室47によって構成され、パイロットポート33に導かれる加圧作動油をドレンポート37へと導く。
【0056】
次に、ブレーキ解除用油圧切換弁30の動作についてブレーキ装置20の作動状態に応じて説明する。
【0057】
まず、ブレーキ装置20が制動力を生じる場合には、パイロット圧切換弁80を制動位置(ト)に切り換える。これにより、油圧切換弁30のスプール40の端部にはドレン圧が作用し、油圧切換弁30は、図4に示すように、リターンスプリング36の付勢力により制動位置(ニ)に切り換わる。これにより、チャンバ28内の加圧作動油がブレーキ解除用ポート38、ドレンポート37を介してドレンポート88からタンク52にドレンされ、ブレーキスプリング26の付勢力がチャンバ28内の圧力より大きくなる。このため、ブレーキピストン27が移動して、ディスクプレート21がフリクションプレート22に圧接し、ディスクプレート21とフリクションプレート22との間に制動力が発生する。
【0058】
このとき、オリフィス45dがスプール40によって閉塞されており、パイロットドレン通路49が閉じている。
【0059】
一方、ブレーキ装置20の制動力を解除する場合には、パイロット圧切換弁80を解除位置(ヘ)に切り換える。これに伴い、パイロットポンプ50から供給される駆動圧がパイロット圧切換弁80からパイロット圧通路82を通じてパイロットポート33に導かれ、スプール40がリターンスプリング36の付勢力に抗して移動し、油圧切換弁30が解除位置(ホ)に切り換わる。これにより、駆動圧ポート39に導入される加圧作動油はブレーキ解除用ポート38よりブレーキ装置20のチャンバ28に供給され、チャンバ28内の圧力上昇によってブレーキピストン27がブレーキスプリング26の付勢力に抗して移動し、ディスクプレート21とフリクションプレート22との圧接が解かれ、ブレーキ装置20の制動力が解除される。
【0060】
上記したように油圧切換弁30がリターンスプリング36の付勢力に抗して制動位置(ニ)から解除位置(ホ)へと切り換わるとき、スプール40が図4〜7に示すように移動し、ブレーキ駆動通路48を開通させた後、パイロットドレン通路49を開通させ、パイロット圧通路82内の加圧作動油の一部をエアと共にパイロットドレン通路49を通ってタンク52にドレンする。
【0061】
図5に示すように、スプール40が移動し、スプール40の溝部41aを介してブレーキ解除用ポート38に駆動圧ポート39を連通させ、ブレーキ駆動通路48が開通し始めるとき、ロッド45のオリフィス45dはスプール40の内周面によって閉塞され、パイロットドレン通路49が閉じている。
【0062】
これにより、チャンバ28内の圧力上昇によってブレーキピストン27が移動する前に、パイロット圧通路82内の加圧作動油がパイロットドレン通路49を通ってタンク52に流出することがなく、パイロットポート33に導かれる信号圧が速やかに上昇する。このため、油圧切換弁30のスプール40は信号圧により速やかに制動位置(ニ)から解除位置(ホ)へと切り換わり、制動力を速やかに解除することができる。
【0063】
その後、図6に示すように、スプール40が移動し、ロッド45のオリフィス45dがスプール40の内周面によって開かれ、パイロットドレン通路49が開通する。
【0064】
図7に示すように、スプール40が閉止栓34に当接するストロークエンドに移動しても、ロッド45のオリフィス45dがスプール40の内周面によって開かれており、パイロットドレン通路49が開通している。
【0065】
図6から図7にかけてのストローク域では、パイロットドレン通路49が開通し、パイロットポート33内の加圧作動油が、図中矢印で示すように、通孔45、オリフィス45d、孔部40b、オリフィス40c、孔部40a、スプリング室47、ドレンポート37を通って油圧モータ1のケース11内へと流出し、このケース11を経てタンク52へと戻される。
【0066】
パイロットドレン通路49を通ってドレンされる作動油の流れは、オリフィス45dとオリフィス40cによって2段階に絞られることにより、パイロットポート33の信号圧が設定値より低下することが回避され、スプール40が図7に示すようにストロークエンドに移動した状態が保たれ、パイロット流量不足を防ぐ。
【0067】
これにより、パイロット圧通路82内に入ったエアは、パイロットドレン通路49を通ってドレンされる作動油と共に排出され、加圧作動油がパイロット圧通路82を満たされ、パイロット圧切換弁80を解除位置(ヘ)に切り換えるのに伴い、パイロットポンプ50から供給された加圧作動油により急速に信号圧が上昇する。このため、油圧切換弁30のスプール40は信号圧により速やかに制動位置(ニ)から解除位置(ホ)へと切り換わり、制動力を速やかに解除することができる。これにより、ブレーキ装置20の制動が解除されない間に油圧モータ1が回転作動することが回避され、ブレーキ装置20の摩耗を抑えられる。
【0068】
本実施の形態において、加圧作動油が供給されることによって制動力を解除するとともに加圧作動油がドレンされることによって制動力を発生するブレーキ装置20と、このブレーキ装置20に加圧作動油を供給する駆動圧通路83と、ブレーキ装置20から加圧作動油をドレンするドレン通路88と、ブレーキ装置20に対して駆動圧通路83とドレン通路88とを信号圧に応じて選択的に開通させる油圧切換弁30と、この油圧切換弁30に信号圧を導くパイロット圧通路82とを備え、油圧切換弁30は信号圧が上昇するのに伴ってドレン通路88が開通する制動位置(ニ)から駆動圧通路83を開通する解除位置(ホ)に切り換わる構成としたブレーキシステムであって、パイロット圧通路82内の加圧作動油をドレンするパイロットドレン通路49を備え、油圧切換弁30は制動位置(ニ)にてパイロットドレン通路49を閉塞する一方、解除位置(ホ)にてパイロットドレン通路49を開通させる構成としたため、パイロット圧通路82内の加圧作動油をエアと共にパイロットドレン通路49を通して逃がすことにより、パイロット圧通路82内のエア抜きを十分に行われる。これにより、パイロット圧通路内に残留するエアに起因して信号圧の立ち上がりが遅れることを防止して、ブレーキ力の解除が的確に行われる。
【0069】
本実施の形態において、油圧切換弁30は制動位置(ニ)から解除位置(ホ)に切り換わる過程で駆動圧通路83を開通させた後にパイロットドレン通路49を開通させる構成したため、駆動圧通路83が開通することによってブレーキ装置20の制動が解除された後に、パイロットドレン通路49が開通することによってパイロット圧通路82が開通する。これによりブレーキ装置20の制動が解除される前に、パイロット圧通路82内の加圧作動油がパイロットドレン通路49を通ってドレンされることがなく、信号圧が速やかに上昇して、ブレーキ力の解除が的確に行われる。
【0070】
本実施の形態において、パイロットドレン通路49に作動油の流れを絞る絞り手段(オリフィス40c、45d)を設けたため、駆動圧通路83が開通することによってブレーキ装置20の制動が解除された後に、油圧切換弁30の解除位置(ホ)にてパイロットドレン通路49が開通してもパイロット圧通路82の信号圧が高く保たれるとともに、絞り手段(オリフィス40c、45d)を通してエアが排出され、ブレーキ力の解除が的確に行われる。
【0071】
本実施の形態において、油圧切換弁30はパイロット圧通路82によって導かれる信号圧に応じて移動するスプール40を備え、このスプール40にパイロットドレン通路49を画成する孔部40bを形成し、この孔部40bに摺動可能に嵌合するロッド45を備え、スプール40の移動に伴ってパイロットドレン通路49がロッド45を介して開閉される構成としたため、パイロットドレン通路49をスプール40の内側に設けることが可能となり、油圧切換弁30の大型化が避けられる。
【0072】
次に図8に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図4に示す実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0073】
図8において、(a)はブレーキ解除用油圧切換弁30の断面図であり、(b)はブレーキ解除用油圧切換弁30の油圧回路図である。
【0074】
パイロットドレン通路49をバルブボディ31に形成される通孔31a、31b、31cによって画成し、通孔31aの開口端がスプール40によって開閉される。
【0075】
パイロットドレン通路49に作動油の流れを絞る絞り手段として、通孔31bにはオリフィス91、92が介装される。パイロットドレン通路49を通ってドレンされる作動油の流れは、オリフィス91、92によって2段階に絞られることにより、パイロットポート33の信号圧が設定値より低下することが回避され、スプール40が図7に示すようにストロークエンドに移動した状態が保たれ、パイロット流量不足を防ぐ。
【0076】
次に、ブレーキ解除用油圧切換弁30の動作についてブレーキ装置20の作動状態に応じて説明する。
【0077】
まず、ブレーキ装置20が制動力を生じる場合には、通孔31aがスプール40によって閉塞されており、パイロットドレン通路49が閉じている。
【0078】
一方、ブレーキ装置20の制動力を解除する場合には、リターンスプリング36の付勢力に抗してスプール40が制動位置(ニ)から解除位置(ホ)へと移動するとき、スプール40の溝部41aを介してブレーキ駆動通路48を開通させた後、通孔31aがスプール40によって開かれてパイロットドレン通路49を開通させ、パイロット圧通路82内の加圧作動油をエアと共にパイロットドレン通路49を通ってタンク52にドレンする。
【0079】
本実施の形態において、油圧切換弁30は、パイロット圧通路82によって導かれる信号圧に応じて移動するスプール40と、スプール40が摺動可能に収められるバルブボディ31とを備え、このバルブボディ31にパイロットドレン通路49を画成する通孔31a、31b、31cを形成し、スプール40の移動に伴ってパイロットドレン通路49が開閉される構成としたため、パイロットドレン通路49をバルブボディ31の内側に設けられ、オリフィス91、92等の配置に対する自由度を高められる。
【0080】
なお、作動油としてオイルの代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いても良い。
【0081】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明が適用される油圧モータの断面図。
【図2】同じくブレーキシステムの油圧回路図。
【図3】本発明の実施の形態を示すブレーキシステムの油圧回路図。
【図4】同じく油圧切換弁の断面図及び油圧回路図。
【図5】同じく油圧切換弁の動作を示す断面図。
【図6】同じく油圧切換弁の動作を示す断面図。
【図7】同じく油圧切換弁の動作を示す断面図。
【図8】他の実施の形態を示す油圧切換弁の断面図及び油圧回路図。
【符号の説明】
【0083】
1 油圧モータ
20 ブレーキ装置
30 油圧切換弁
31 バルブボディ
31a、31b、31c 通孔
33 パイロットポート
36 リターンスプリング
37 ドレンポート
38 ブレーキ解除用ポート
39 駆動圧ポート
40 スプール
40b 孔部
40c、45d オリフィス(絞り手段)
48 ブレーキ駆動通路
49 パイロットドレン通路
50 パイロットポンプ
52 タンク
82 パイロット圧通路
83 駆動圧通路
88 ドレン通路
91、92 オリフィス(絞り手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧作動流体が供給されることによって制動力を解除するとともに加圧作動流体がドレンされることによって制動力を発生するブレーキ装置と、
このブレーキ装置に加圧作動流体を供給する駆動圧通路と、
前記ブレーキ装置から加圧作動流体をドレンするドレン通路と、
前記ブレーキ装置に対して前記駆動圧通路と前記ドレン通路とを信号圧に応じて選択的に開通させる油圧切換弁と、
この油圧切換弁に信号圧を導くパイロット圧通路とを備え、
前記油圧切換弁は信号圧が上昇するのに伴って前記ドレン通路が開通する制動位置から前記駆動圧通路を開通する解除位置に切り換わる構成としたブレーキシステムであって、
前記パイロット圧通路内の加圧作動流体をドレンするパイロットドレン通路を備え、
前記油圧切換弁は前記制動位置にて前記パイロットドレン通路を閉塞する一方、前記解除位置にて前記パイロットドレン通路を開通させる構成としたことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記油圧切換弁は前記制動位置から前記解除位置に切り換わる過程で前記駆動圧通路を開通させた後に前記パイロットドレン通路を開通させる構成したことを特徴とする請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記パイロットドレン通路に作動流体の流れを絞る絞り手段(を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記油圧切換弁は前記パイロット圧通路によって導かれる信号圧に応じて移動するスプールを備え、
このスプールに前記パイロットドレン通路を画成する孔部を形成し、
この孔部に摺動可能に嵌合するロッドを備え、
このロッドを介して前記パイロットドレン通路が前記スプールの移動に伴って開閉される構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記油圧切換弁は前記パイロット圧通路によって導かれる信号圧に応じて移動するスプールと、
前記スプールが摺動可能に収められるバルブボディとを備え、
このバルブボディに前記パイロットドレン通路を画成する通孔を形成し、
前記スプールの移動に伴って前記パイロットドレン通路が開閉される構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−180120(P2009−180120A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18778(P2008−18778)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】