説明

ブローチ

【課題】加工負荷を低減させることにより、工具寿命を延ばすことができるブローチを提供する。
【解決手段】軸方向に複数設けられ、ワークWに対して径方向外側に向けて切削加工を行うスプライン刃21と、スプライン刃21の後方において軸方向に複数設けられ、当該スプライン刃21により切削されたワークWの被加工部Wbに対して周方向に向けて塑性加工を行い、当該被加工部Wbを歯溝Wdに仕上げる塑性仕上刃31とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面に溝形状を加工するブローチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建設車両、工作機械等に使用される部品の中には、その表面にキー溝、スプライン溝、セレーション溝、歯車用の歯溝等の複雑な溝形状を有する部品が多数ある。このような複雑な溝形状を、ワンパスで荒加工から仕上げ加工までを行うものとしてブローチ加工が実施されている。
【0003】
ブローチ加工はブローチと称せられる軸状の工具を用いて溝加工を行うものである。そして、このブローチはその軸方向に多段に配置される各種切刃を有しており、ブローチ加工を行う場合には、ブローチを被加工物に予め加工された下孔に挿入した後、引き抜き、または、押し込んで、その軸方向に移動させることにより、被加工物の表面に溝を加工することができる。
【0004】
しかしながら、ブローチ加工においては、被加工物の下孔にブローチを貫通移動させることから、ブローチの外径はその下孔の内径よりも小径に設定されている。これにより、ブローチと下孔との間には僅かな隙間が生じてしまい、この隙間の分だけ被加工物の心出しが不十分になっていた。
【0005】
そこで、従来から、加工時において被加工物との同心度の向上を図ったブローチが種々提供されており、このような従来のブローチは、例えば、特許文献1,2に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−160559号公報
【特許文献2】特開2004−322271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のブローチにおいては、被加工物の内周面全周に亘り塑性加工を行っているので、塑性加工領域が広範囲となり、ブローチに対して大きな加工負荷が作用してしまう。また、特許文献2のブローチにおいては、塑性加工のみで溝形状を形成させているので、特許文献1と同様に、大きな加工負荷が作用してしまう。この結果、特許文献1,2のブローチにおいては、度重なる使用において破損してしまい、工具寿命の短縮を招くおそれがあった。
【0008】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、加工負荷を低減させることにより、工具寿命を延ばすことができるブローチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係るブローチは、
軸方向に複数設けられ、被加工物に対して径方向外側に向けて切削加工を行う切れ刃と、
前記切れ刃の後方において軸方向に複数設けられ、前記切れ刃により切削された前記被加工物の被加工部に対して周方向に向けて塑性加工を行い、前記被加工部を所定の溝形状に仕上げる仕上げ刃とを備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係るブローチは、
第1の発明に係るブローチにおいて、
前記仕上げ刃の後部に逃げ面を形成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明に係るブローチによれば、仕上げ刃の加工代を小さくすることができるので、塑性加工時における負荷が低減され、工具寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るブローチについて図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の第1実施例に係るブローチの概略構成図、図2(a)は図1のA−A矢視断面図、図2(b)は同図(a)のP部拡大図、図3は切削刃部の縦断面図、図4(a)は図1のB−B矢視断面図、図4(b)は同図(a)のQ部拡大図、図5は塑性刃部の縦断面図、図6は各段の塑性仕上刃のピッチ円上における断面形状を示した図、図7は塑性仕上刃の側方斜視図、図8(a)はワーク正面図、図8(b)は同図(a)のR部拡大図、図9(a)は各段のスプライン刃により順次切削加工されたときのワークの加工状態を示した図、図9(b)は各段の塑性仕上刃により順次塑性加工されたときのワークの加工状態を示した図、図10は他の塑性仕上刃の形状を示した側方斜視図である。
【0014】
図1に示すブローチ1は、ワーク(被加工物)Wに予め加工された下孔Waに挿入されることで、当該ワークWの内周面に歯溝Wdを加工する工具である(図8(a),(b)参照)。このブローチ1は、その前方から後方に亘り、前部シャンク部10、切削刃部20、塑性刃部30、及び後部シャンク部40を備えている。
【0015】
図1に示すように、前部シャンク部10は、その前端に設けられる前方支持部11と、その後端に設けられる前方案内部12とを有している。前方支持部11は図示しないブローチ盤に支持されるものである。また、前方案内部12は前案内部12a及び後案内部12bを有している。前案内部12aは、その外径が前方から後方にかけて漸次大きくなるようにテーパ状に形成されている。一方、後案内部12bは、前案内部12aの後端から連続的に形成されると共に、その外径寸法が前案内部12aの後端と同一の円柱状をなしている。即ち、加工時に後案内部12bがワークWの下孔Waに挿入されることで、ワークWの心出しが行われる。
【0016】
図1乃至図3に示すように、切削刃部20には複数のスプライン刃21が設けられている。スプライン刃21は、ブローチ1(切削刃部20)の軸部外周面における周方向において等角度間隔で、且つ、ブローチ軸方向において等間隔にSn段(nはスプライン刃21の段数に対応)設けられている。そして、ブローチ軸方向において配列されるSn段のスプライン刃21は、1段目からSn段目に向かうに従って、その高さが漸次高くなるように形成されている。即ち、前段からのその高さの増加分が各段のスプライン刃21における切込量となる。
【0017】
図1及び図4乃至図7に示すように、塑性刃部30には複数の塑性仕上刃31が設けられている。塑性仕上刃31は、ブローチ1(塑性刃部30)の軸部外周面における周方向において等角度間隔で、且つ、ブローチ軸方向において等間隔にBn段(nは塑性仕上刃31の段数に対応)設けられている。そして、ブローチ軸方向において配列されるBn段の塑性仕上刃31は、その高さが同じになるように形成されると共に、1段目からBn段目に向かうに従って、その歯厚が漸次大きくなるように形成されている。更に、各段の塑性仕上刃31においては、各歯面長さ(ランド幅)が同じ長さに形成されており、これら各歯面は、当該歯面とブローチ軸に平行な面とがなす角度であるアプローチ角度がαで形成されている。
【0018】
また、塑性仕上刃31は、前傾斜面31a、上傾斜面31b、後鉛直面31c、左右のアプローチ面31d、及び左右のストレートランド31eを有している。前傾斜面31aは後方に向かうに従って高くなるように傾斜している。上傾斜面31bは前傾斜面31aの後端から後方に向かうに従って高くなるように傾斜している。後鉛直面31cはブローチ軸と直交するように形成されている。左右のアプローチ面31dは上記アプローチ角度αで形成されている。左右のストレートランド31eはブローチ軸と平行、即ち、アプローチ角度が0度で形成されており、アプローチ面31dと共にワークWを塑性加工する歯面を構成している。
【0019】
図1に示すように、後部シャンク部40は、その前端に設けられる後方案内部41と、その後端に設けられる後方支持部42とを有している。後方案内部41は加工終了時にワークWの開口部内に配置され、当該ワークWを保持するものである。また、後方支持部42は図示しないブローチ盤に支持されるものである。
【0020】
次に、上述したブローチ1を用いて加工するときの動作について説明する。
【0021】
先ず、図8(a)に示すように、ワークWにブローチ1の後案内部12bが貫通できる程度の下孔Waを形成した後、当該ワークWをブローチ盤上に設置する。一方、ブローチ1をワークWの下孔Waと対向するように、その後方支持部42を介してブローチ盤に固定する。
【0022】
次いで、ワークWをブローチ1に向けて移動させながら下孔Waに当該ブローチ1を貫通させる。このとき、ワークWはブローチ盤上に固定されずに設置されているので、ワークWの下孔Waに前方案内部12の前案内部12a及び後案内部12bが順次貫通されることになり、ワークWが滑らかに移動してその心出しが行われる。
【0023】
次いで、ワークWがブローチ1に貫通した状態で、ブローチ1の前方支持部11をブローチ盤に固定する。そして、ブローチ1を前方に押し出すことにより、切削刃部20がワークWの下孔Waに移動して切削加工が行われる。このとき、図9(a)に示すように、ワークWの下孔Waには1段目のスプライン刃21からSn段目のスプライン刃21が順次通過することになり、最終的にSn段目のスプライン刃21の歯形と略同一の断面形状をした被加工部Wbが、ワークWの内周面の周方向において等角度間隔で、且つ、直線状に形成される。即ち、切削刃部20においては、ワークWに対し、ブローチ1の径方向外側への切削加工のみ行われる。
【0024】
次いで、更に、ブローチ1を前方に押し出すことにより、塑性刃部30がワークW内に移動して塑性加工が行われる。このとき、図9(b)に示すように、ワークWの被加工部Wbには1段目の塑性仕上刃31からBn段目の塑性仕上刃31が順次通過することになり、当該ワークWの被加工部Wbにおける両側の塑性加工代Wcが同時に順次塑性加工される。そして、図8(b)に示すように、Bn段目の塑性仕上刃31における塑性加工が終了すると、ワークWに所定形状の歯溝Wdが形成される。即ち、塑性刃部30においては、ワークWに対し、ブローチ1の周方向への塑性加工のみ行われる。
【0025】
なお、図10に示すように、ストレートランド31eの後方において、面取りされた逃げ面31fを形成させても構わない。これにより、塑性仕上刃31の強度が向上され、ストレートランド31eの破損が防止される。
【0026】
従って、本発明に係るブローチによれば、スプライン刃21によりワークWに対して径方向外側に向けて切削加工を行って被加工部Wbを形成した後、塑性仕上刃31によりこのワークWの被加工部Wbに対して周方向に向けて塑性加工を行って、ワークWの内周面に歯溝Wdを形成することにより、ワークWの塑性加工代Wcを小さくすることができる。この結果、塑性仕上刃31への加工負荷が低減されるので、ブローチ1の工具寿命を延ばすことができる。また、塑性仕上刃31の後部に逃げ面31fを形成させることにより、塑性仕上刃31の強度が向上されるので、更に工具寿命を延ばすことができる。
【実施例2】
【0027】
図11は本発明の第2実施例に係るブローチの概略構成図、図12(a)は図11のC−C矢視断面図、図12(b)は同図(a)のS部拡大図、図13は切削刃部の縦断面図、図14(a)は図11のD−D矢視断面図、図14(b)は同図(a)のT部拡大図、図15は塑性刃部の縦断面図、図16は各段の塑性仕上刃のピッチ円上における断面形状を示した図、図17は塑性仕上刃の側方斜視図、図18(a)はワーク正面図、図18(b)は同図(a)のU部拡大図、図19(a)は各段のスプライン刃により順次切削加工されたときのワークの加工状態を示した図、図19(b)は各段の塑性仕上刃により順次塑性加工されたときのワークの加工状態を示した図、図20は他の塑性仕上刃の形状を示した側方斜視図である。
【0028】
図11に示すブローチ2は、ワーク(被加工物)Wに予め加工された下孔Waに挿入されることで、当該ワークWの内周面に歯筋がねじれた歯溝Wgを加工する工具である(図18(a),(b)参照)。このブローチ2は、その前方から後方に亘り、前部シャンク部60、切削刃部70、塑性刃部80、及び後部シャンク部90を備えている。
【0029】
図11に示すように、前部シャンク部60は、その前端に設けられる前方支持部61と、その後端に設けられる前方案内部62とを有している。前方支持部61は図示しないブローチ盤に支持されるものである。また、前方案内部62は前案内部62a及び後案内部62bを有している。前案内部62aは、その外径が前方から後方にかけて漸次大きくなるようにテーパ状に形成されている。一方、後案内部62bは、前案内部62aの後端から連続的に形成されると共に、その外径寸法が前案内部62aの後端と同一の円柱状をなしている。即ち、加工時に後案内部62bがワークWの下孔Waに挿入されることで、ワークWの心出しが行われる。
【0030】
図11乃至図13に示すように、切削刃部70には複数のスプライン刃71が設けられている。スプライン刃71は、ブローチ2(切削刃部70)の軸部外周面における周方向において等角度間隔で、且つ、ブローチ軸方向において等間隔にSn段(nはスプライン刃71の段数に対応)設けられている。そして、ブローチ軸方向において配列されるSn段のスプライン刃71は、1段目からSn段目に向かうに従って、その高さが漸次高くなるように形成されている。即ち、前段からのその高さの増加分が各段のスプライン刃71における切込量となる。
【0031】
図11及び図14乃至図17に示すように、塑性刃部80には複数の塑性仕上刃81が設けられている。塑性仕上刃81は、ブローチ2(塑性刃部80)の軸部外周面における周方向において等角度間隔で、且つ、ブローチ軸方向において等間隔にBn段(nは塑性仕上刃81の段数に対応)設けられている。そして、ブローチ軸方向において配列されるBn段の塑性仕上刃81は、その高さが同じになるように形成されると共に、1段目からBn段目に向かうに従って、その歯厚が漸次大きくなるように形成されている。更に、各段の塑性仕上刃81においては、各歯面長さ(ランド幅)が同じ長さに形成されており、これら各歯面は、当該歯面とブローチ軸に平行な面とがなす角度であるアプローチ角度がαで形成されている。
【0032】
なお、塑性仕上刃81は、少なくとも左右どちらか一方の歯面がアプローチ角度αを有している。本実施例においては、図16に示すように、3段ずつ交互にアプローチ角度αを有するように塑性仕上刃81の歯面を形成し、その3段目から反対側の歯面にもアプローチ角度αが付与されている。そして、最終的には、Bn段の塑性仕上刃81においては、左右両側の歯面にアプローチ角度αが付与されている。
【0033】
ここで、各段の塑性仕上刃81の中から代表してBn段目の塑性仕上刃81について説明する。図17に示すように、Bn段目の塑性仕上刃81は、前傾斜面81a、上傾斜面81b、後鉛直面81c、左右のアプローチ面81d、及び左右のストレートランド81eを有している。前傾斜面81aは後方に向かうに従って高くなるように傾斜している。上傾斜面81bは前傾斜面81aの後端から後方に向かうに従って高くなるように傾斜している。後鉛直面81cはブローチ軸と直交するように形成されている。左右のアプローチ面81dは上記アプローチ角度αで形成されている。左右のストレートランド81eはブローチ軸と平行、即ち、アプローチ角度が0度で形成されており、アプローチ面81dと共にワークWを塑性加工する歯面を構成している。
【0034】
なお、図16に示すように、塑性仕上刃81においてアプローチ角度αが0度の場合には、その歯面はストレートランド81eのみで形成されている。即ち、ストレートランド81eからなる歯面においては塑性加工は行われず、このストレートランド81eがガイド面となる。
【0035】
図11に示すように、後部シャンク部90は、その前端に設けられる後方案内部91と、その後端に設けられる後方支持部92とを有している。後方案内部91は加工終了時にワークWの開口部内に配置され、当該ワークWを保持するものである。また、後方支持部92は図示しないブローチ盤に支持されるものである。
【0036】
次に、上述したブローチ2を用いて加工するときの動作について説明する。
【0037】
先ず、図18(a)に示すように、ワークWにブローチ2の後案内部62bが貫通できる程度の下孔Waを形成した後、当該ワークWをブローチ盤上に設置する。一方、ブローチ2をワークWの下孔Waと対向するように、その後方支持部62を介してブローチ盤に固定する。
【0038】
次いで、ワークWをブローチ2に向けて移動させながら下孔Waに当該ブローチ2を貫通させる。このとき、ワークWはブローチ盤上に固定されずに設置されているので、ワークWの下孔Waに前方案内部62の前案内部62a及び後案内部62bが順次貫通されることになり、ワークWが滑らかに移動してその心出しが行われる。
【0039】
次いで、ワークWがブローチ2に貫通した状態で、ブローチ2の前方支持部61をブローチ盤に固定する。そして、ブローチ2を回転駆動させながら前方に押し出すことにより、切削刃部70がワークWの下孔Waに移動して切削加工が行われる。このとき、図19(a)に示すように、ワークWの下孔Waには1段目のスプライン刃71からSn段目のスプライン刃71が順次通過することになり、最終的にSn段目のスプライン刃71の歯形と略同一の断面形状をした被加工部Weが、ワークWの内周面の周方向において等角度間隔で、且つ、らせん状に形成される。即ち、切削刃部70においては、ワークWに対し、ブローチ2の径方向外側への切削加工のみ行われる。
【0040】
次いで、更に、ブローチ2を回転駆動させながら前方に押し出すことにより、塑性刃部80がワークW内に移動して塑性加工が行われる。このとき、図19(b)に示すように、ワークWの被加工部Weには1段目の塑性仕上刃81からBn段目の塑性仕上刃81が順次通過することになり、当該ワークWの被加工部Weにおける両側の塑性加工代Wfが順次塑性加工される。また、左右いずれか一方の歯面がストレートランド81eのみで形成される塑性仕上刃81においては、その歯面がガイド面となるので、ブローチ2が回転してねじれた歯溝を加工する場合であっても、安定した塑性加工が行われる。そして、図18(b)に示すように、Bn段目の塑性仕上刃81における塑性加工が終了すると、ワークWに所定形状の歯溝Wgが形成される。即ち、塑性刃部80においては、ワークWに対し、ブローチ2の周方向への塑性加工のみ行われる。
【0041】
なお、図20に示すように、ストレートランド81eの後方において、面取りされた逃げ面81fを形成させても構わない。これにより、塑性仕上刃81の強度が向上され、ストレートランド81eの破損が防止される。
【0042】
従って、本発明に係るブローチによれば、スプライン刃71によりワークWに対して径方向外側に向けて切削加工を行って被加工部Weを形成した後、塑性仕上刃81によりこのワークWの被加工部Weに対して周方向に向けて塑性加工を行って、ワークWの内周面に歯溝Wgを形成することにより、ワークWの塑性加工代Wfを小さくすることができる。この結果、塑性仕上刃81への加工負荷が低減されるので、ブローチ2の工具寿命を延ばすことができる。また、塑性仕上刃81の後部に逃げ面81fを形成させることにより、塑性仕上刃81の強度が向上されるので、更に工具寿命を延ばすことができる。
【0043】
しかも、塑性仕上刃81により塑性加工を行うことにより、ワークWの被加工面に圧縮応力が付加されるので、面精度が向上されるだけでなく、被加工面が硬く成形される。従って、本実施例のように、ワークWの内周面に歯溝Wgを形成する場合には、塑性加工される被加工面は内歯車の歯面となるので、高精度の歯厚寸法を有する内歯車を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
加工面粗さの向上を図ることができるブローチ加工に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施例に係るブローチの概略構成図である。
【図2】(a)は図1のA−A矢視断面図、(b)は(a)のP部拡大図である。
【図3】切削刃部の縦断面図である。
【図4】(a)は図1のB−B矢視断面図、(b)は(a)のQ部拡大図である。
【図5】塑性刃部の縦断面図である。
【図6】各段の塑性仕上刃のピッチ円上における断面形状を示した図である。
【図7】塑性仕上刃の側方斜視図である。
【図8】(a)はワーク正面図、(b)は(a)のR部拡大図である。
【図9】(a)は各段のスプライン刃により順次切削加工されたときのワークの加工状態を示した図、(b)は各段の塑性仕上刃により順次塑性加工されたときのワークの加工状態を示した図である。
【図10】他の塑性仕上刃の形状を示した側方斜視図である。
【図11】本発明の第2実施例に係るブローチの概略構成図である。
【図12】(a)は図11のC−C矢視断面図、(b)は(a)のS部拡大図である。
【図13】切削刃部の縦断面図である。
【図14】(a)は図11のD−D矢視断面図、(b)は(a)のT部拡大図である。
【図15】塑性刃部の縦断面図である。
【図16】各段の塑性仕上刃のピッチ円上における断面形状を示した図である。
【図17】塑性仕上刃の側方斜視図である。
【図18】(a)はワーク正面図、(b)は(a)のU部拡大図である。
【図19】(a)は各段のスプライン刃により順次切削加工されたときのワークの加工状態を示した図、(b)は各段の塑性仕上刃により順次塑性加工されたときのワークの加工状態を示した図である。
【図20】他の塑性仕上刃の形状を示した側方斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1,2 ブローチ
10,60 前部シャンク部
20,70 切削刃部
30,80 塑性刃部
40,90 後部シャンク部
11,61 前方支持部
12,62 前方案内部
21,71 スプライン刃
31,81 塑性仕上刃
41,91 後方案内部
42,92 後方支持部
31a,81a 前傾斜面
31b,81b 上傾斜面
31c,81c 後鉛直面
31d,81d アプローチ面
31e,81e ストレートランド
31f,81f 逃げ面
W ワーク
Wa 下孔
Wb,We 被加工部
Wc,Wf 塑性加工代
Wd,Wg 歯溝
α アプローチ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に複数設けられ、被加工物に対して径方向外側に向けて切削加工を行う切れ刃と、
前記切れ刃の後方において軸方向に複数設けられ、前記切れ刃により切削された前記被加工物の被加工部に対して周方向に向けて塑性加工を行い、前記被加工部を所定の溝形状に仕上げる仕上げ刃とを備える
ことを特徴とするブローチ。
【請求項2】
請求項1に記載のブローチにおいて、
前記仕上げ刃の後部に逃げ面を形成する
ことを特徴とするブローチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−161971(P2008−161971A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353782(P2006−353782)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】