説明

プラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置

【課題】ホール底部の線幅及び深さのウェハ面内均一性に優れたプラズマエッチング方法及び装置を提供する。
【解決手段】プラズマエッチング装置において、処理容器と、基板を保持する保持部105と、前記保持部と対向する電極板120と、前記保持部と前記電極板とに挟まれた空間で、前記基板の径方向に対して各々異なる位置に配置された複数の処理ガス供給部143と、前記保持部又は前記電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給して、前記空間の処理ガスをプラズマ化する高周波電源116と、前記複数の供給部の各々に対応して、処理ガスの供給条件を調節する調節手段130と、前記基板上における、プラズマ化された処理ガスに含まれる活性種の濃度分布について、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流れの影響が支配的である位置とで、前記供給条件を変えるように前記調節手段を制御する制御部190とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にプラズマエッチングを行うプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウェハ等の基板(以下「ウェハ」という。)を加工する装置として、プラズマをウェハに照射することによって、ウェハにエッチングを行うプラズマエッチング装置がある。
【0003】
プラズマエッチングでは、フッ素、塩素、酸素等を含むガスを処理ガスとして用いてプラズマ化する。プラズマには、荷電粒子(以下「イオン」という。)及び中性粒子(以下「ラジカル」という。)等の活性種が含まれている。ウェハの表面がイオンとラジカルとを含むプラズマと反応して反応生成物が生じ、生じた反応生成物が揮発することによってエッチングが進行する。
【0004】
近年、半導体デバイスの製造工程において、ウェハが大口径化している。ウェハの大口径化に伴い、エッチング時のウェハの面内における、ホール(及びトレンチ)底部の線幅(Critical Dimension;CD)及び深さの面内均一性を確保することが難しくなってきている。
【0005】
そこで特許文献1では、ウェハ面内の中心部と周辺部領域とのラジカルの密度分布の制御を、上部電極からの処理ガス供給量を調整することにより制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4358727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウェハ面内の中心部と周辺部領域とでは、ラジカルの拡散具合が不均一であり、特許文献1で開示されるプラズマエッチング装置では、面内均一性を確保することができないという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ウェハの面内における、ホール(及びトレンチ)底部の線幅及び深さの面内均一性に優れたプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第1の形態によると、プラズマ化された処理ガスにより基板をエッチングするプラズマエッチング装置において、
プラズマ化された処理ガスにより基板をエッチングするプラズマエッチング装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部と、
前記処理容器内に設けられた、前記保持部と対向する電極板と、
前記保持部と前記電極板とに挟まれた空間に処理ガスを供給するための、前記基板の径方向に対して各々異なる位置に配置された複数の供給部と、
前記保持部又は前記電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給することによって、前記複数の供給部により前記空間に供給された処理ガスをプラズマ化する高周波電源と、
前記複数の供給部の各々に対応して、処理ガスの供給条件を調節する調節手段と、
前記基板上における、プラズマ化された処理ガスに含まれる活性種の濃度分布について、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流れの影響が支配的である位置とで、前記供給条件を変えるように前記調節手段を制御する制御部と、
を有する、プラズマエッチング装置が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の形態によると、プラズマ化された処理ガスにより基板をエッチングするプラズマエッチング方法において、
処理容器内に設けられた保持部により基板を保持する保持ステップと、
前記処理容器内に設けられた、前記保持部と対向する電極板と前記保持部とに挟まれた空間に、前記基板の径方向に対して各々異なる位置に配置された複数の供給部により処理ガスを供給する処理ガス供給ステップと、
前記保持部又は前記電極板の少なくとも一方に、高周波電源により高周波電力を供給することによって、前記複数の供給部により前記空間に供給された処理ガスをプラズマ化する高周波電力供給ステップと、
を有し、
前記処理ガス供給ステップは、
前記基板上における、処理ガスに含まれるラジカルの濃度分布について、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流れの影響が支配的である位置とで、前記供給条件を変えるように、前記複数の供給部の各々に対応して処理ガスの供給条件を調節する調節手段を制御するものである、プラズマエッチング方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウェハの面内における、ホール(及びトレンチ)底部の線幅及び深さの面内均一性に優れたプラズマエッチング方法及びプラズマエッチング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施の形態に係るプラズマエッチング装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のプラズマエッチング装置のガス供給装置の構成の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、図1のシャワーヘッドの構造の一例を説明するための概略図である。
【図4】図4は、本実施形態におけるウェハの、径方向の位置におけるペクレ数を示す概略図である。
【図5】図5は、本実施形態における処理ガスの供給条件を変更した場合の、エッチレートの変化を示す概略図である。
【図6】図6は、実施例及び比較例のプラズマエッチング条件において、深さ及びボトムCDを制御可能であることを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
【0015】
(プラズマエッチング装置の概略構成)
始めに、図1を参照し、本実施の形態に係るプラズマエッチング装置の一例の概略構成について説明する。
【0016】
図1に、本実施の形態に係るプラズマエッチング装置の構成の一例を示す概略図を示す。また、図2に、図1のプラズマエッチング装置のガス供給装置150の構成の一例を示す概略図を示す。なお、図2でガス供給装置150について詳細に説明するため、図1におけるガス供給装置150の周辺は、簡略化して示している。
【0017】
本実施の形態に係るプラズマエッチング装置100は、プラズマエッチング装置の一例として、平行平板型のプラズマエッチング装置として構成されている。
【0018】
プラズマエッチング装置100は、例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形されたチャンバ(処理容器)102を有している。チャンバ102は接地されている。
【0019】
チャンバ102内の底部には、セラミック等の絶縁板103を介して略円柱状のサセプタ支持台104が設けられている。また、サセプタ支持台104の上には、下部電極を構成するサセプタ105が設けられている。サセプタ105には、ハイパスフィルタ(HPF)105aが接続されている。
【0020】
サセプタ105は、その上側中央部が凸状の円板状に成形され、その上に、被処理体の一例であるウェハWと略同形の、静電チャック111が設けられている。静電チャック111は、絶縁材の間に静電電極112が介在する構成となっている。また、静電チャック111は円板状のセラミックス部材で構成され、静電電極112には直流電源113が接続されている。
【0021】
静電電極112に正の直流電圧が印加されると、ウェハWにおける静電チャック111側の面(以下、「裏面」という。)に負の電位が生じる。これにより、静電電極112とウェハWの裏面との間に電位差が生じる。この電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウェハWは静電チャック111に吸着保持される。この時、静電チャック111には、静電電極112に接続された直流電源113から、例えば、1.5kVの直流電圧が印加される。
【0022】
サセプタ105には、第1の高周波電源114及び第2の高周波電源116が、各々、第1の整合器115及び第2の整合器117を介して接続されている。第1の高周波電源114は、比較的低い周波数、例えば、13.6MHzの高周波電力であるバイアス電力をサセプタ105に印加する。第2の高周波電源116は、比較的高い周波数、例えば、40MHzの高周波電力であるプラズマ生成電力をサセプタ105に印加する。これにより、サセプタ105は、チャンバ102の内部にプラズマ生成電力を印加する。
【0023】
絶縁板103、サセプタ支持台104、サセプタ105、及び静電チャック111には、ウェハWの裏面に伝熱媒体(例えばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路118が形成されている。この伝熱媒体を介して、サセプタ105とウェハWとの間の熱伝達がなされ、ウェハWが所定の温度に維持される。
【0024】
サセプタ105の上端周縁部には、静電チャック111上に支持されたウェハWを囲むように、環状のフォーカスリング119が配置されている。フォーカスリング119は、セラミックス又は石英等の誘電材料、若しくは、導電体、例えば、ウェハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンなどの導電性材料によって構成されている。
【0025】
プラズマの分布域をフォーカスリング119上まで拡大することで、ウェハWの外周側におけるプラズマの密度を、ウェハWの中心側におけるプラズマの密度と同程度に維持することができる。これにより、ウェハWの面内におけるプラズマエッチングの均一性を向上することができる。
【0026】
サセプタ105の上方には、サセプタ105と平行に対向して上部電極120が設けられている。上部電極120には、直流電源123が接続されている。また、上部電極120には、ローパスフィルタ(LPF)124が接続されている。
【0027】
また、上部電極120は、上部電極駆動部200によって、例えば鉛直方向に駆動可能に構成されている。上部電極120を鉛直方向に駆動可能に構成することにより、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(以下、「ギャップ」という。)Gを調整することができる。本発明のプラズマエッチング方法で詳細に説明するが、ギャップGは、処理ガスの拡散及び流れに大きく影響を与えるパラメータである。そのため、ギャップGを調整可能な構造とすることにより、後述するように、チャンバ102の内部の上部電極120とサセプタ105との間のプラズマ分布を制御することができる。
【0028】
上部電極駆動部200により駆動される上部電極120の鉛直方向に沿った移動量は、特に制限はない。一例として、上部電極120の鉛直方向に沿った移動量を70mmとし、ギャップGを20mm以上90mm以下に調整可能な構造とすることができる。本発明は、この点において制限されない。なお、プラズマエッチング装置100は、図1に示す構成を90°回転して横に倒した構成にしてもよく、上下反転した構成にしてもよい。
【0029】
上部電極120は、チャンバ102の上部内壁にベローズ122を介して支持されている。ベローズ122はチャンバ102の上部内壁に環状の上部フランジ122aを介してボルトなどの固定手段により取付けられるとともに、上部電極120の上面に環状の上部フランジ122bを介してボルトなどの固定手段により取付けられる。
【0030】
ギャップGを調節するための、上部電極駆動部200の構成について、詳細に説明する。上部電極駆動部200は、上部電極120を支持する略円筒状の支持部材204を有する。支持部材204は上部電極120の上部略中央にボルトなどで取付けられている。
【0031】
支持部材204は、チャンバ102の上壁の略中央に形成された孔102aを出入自在に配設される。具体的には、支持部材204の外周面はスライド機構210を介してチャンバ102の孔102aの内部に支持されている。
【0032】
スライド機構210は、例えばチャンバ102の上部に断面L字状の固定部材214を介して固定部材214の鉛直部に固定された案内部材216と、この案内部材216に摺動自在に支持され、支持部材204の外周面に一方向(本実施形態では鉛直方向)に形成されたレール部212と、を有する。
【0033】
スライド機構210の案内部材216を固定する固定部材214は、その水平部が環状の水平調整板218を介してチャンバ102の上部に固定される。この水平調整板218により、上部電極120の水平位置が調整される。
【0034】
水平調整板218は、例えば、水平調整板218の周方向に等間隔で配置した複数のボルト等によりチャンバ102に固定される。また、水平調整板218の水平方向に対する傾き量は、これらのボルトの突出量により、調整可能な構成であっても良い。水平調整板218が水平方向に対する傾きを調整し、上記スライド機構210の案内部材216が鉛直方向に対する傾きが調整することで、上部電極120の水平方向の傾きを調整することができる。即ち、上部電極120を常に水平位置に保つことができる。
【0035】
チャンバ102の上側には、上部電極120を駆動するための空気圧シリンダ220が、筒体201を介して取付けられている。即ち、筒体201の下端は、チャンバ102の孔102aを覆うようにボルト等で気密に取付けられており、筒体201の上端は、空気圧シリンダ220の下端に気密に取付けられている。
【0036】
上記空気圧シリンダ220は、一方向に駆動可能なロッド202を有している。ロッド202の下端は、支持部材204の上部略中央にボルト等で連設されている。ロッド202が駆動されることにより、上部電極120は支持部材204によりスライド機構210に沿って駆動する。ロッド202は、例えば円筒状に構成され、ロッド202の内部空間が支持部材204の略中央に形成された中央孔と連通して大気開放されるようになっている。これにより、上部電極120とローパスフィルタ(LPF)124を介して接地する配線、及び上部電極120に直流電源123から直流電圧を印加するための給電線は、ロッド202の内部空間から支持部材204の中央孔を介して上部電極120に接続するように配線することができる。
【0037】
また、空気圧シリンダ220の側部には、例えばリニアエンコーダ205等の、上部電極120の位置を検出する位置検出手段が設けられている。一方、ロッド202の上端には、ロッド202から側方に延出する延出部207aを有する上端部材207が設けられている。上端部材207の延出部207aとリニアエンコーダ205の検出部205aとが当接している。上端部材207は上部電極120の動きに連動するため、リニアエンコーダ205により上部電極120の位置を検出することができる。
【0038】
空気圧シリンダ220は、筒状のシリンダ本体222、上部支持板224及び下部支持板226を含む。筒状のシリンダ本体222は、上部支持板224と下部支持板226とにより挟まれる構成となっている。ロッド202の外周面には、空気圧シリンダ220内を上部空間232と下部空間234に区画する環状の区画部材208が設けられている。
【0039】
空気圧シリンダ220の上部空間232には、上部支持板224の上部ポート236から圧縮空気が導入されるようになっている。また、空気圧シリンダ220の下部空間234には、下部支持板226の下部ポート238から圧縮空気が導入されるようになっている。上部ポート236及び下部ポート238から上部空間232及び下部空間234へと導入する空気量を制御することにより、ロッド202を一方向(例えば鉛直方向)へと駆動制御することができる。この空気圧シリンダ220へ導入する空気量は、空気圧シリンダ220の近傍に設けられた空気圧回路300により制御される。
【0040】
また、上部電極駆動部200は、制御部290を有しており、制御部290は、装置制御部190と接続されている。装置制御部190からの制御信号は制御部290に伝えられ、制御部290により、上部電極駆動部200の各部が駆動制御される。
【0041】
サセプタ支持台104の内部には、ウェハWの面内における温度分布を調節可能とする、温度分布調製部106が配置されている。温度分布調整部106は、ヒータ106a、106b、ヒータ用電源106c、106d、温度計106e、106f、冷媒流路107a、107bを有する。
【0042】
サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとが設けられている。中心側ヒータ106aには、中心側ヒータ用電源106cが接続され、外周側ヒータ106bには、外周側ヒータ用電源106dが接続されている。中心側ヒータ用電源106c、外周側ヒータ用電源106dは、各々、中心側ヒータ106a、外周側ヒータ106bに投入する電力を独立に調節することができる。これにより、サセプタ支持台104及びサセプタ105に、ウェハWの径方向に沿った温度分布を発生させることができる。即ち、ウェハWの径方向に沿った温度分布を調節することができる。
【0043】
また、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側温度計106e及び外周側温度計106fが設けられている。中心側温度計106e及び外周側温度計106fは、各々、サセプタ支持台104の中心側及び外周側の温度を計測し、これによりウェハWの中心側及び外周側の温度を導出できる。中心側温度計106e及び外周側温度計106fで計測された温度は、後述する装置制御部190に送られる。装置制御部190は、計測された温度から導出されたウェハWの温度が目標温度となるように、中心側ヒータ用電源106c及び外周側ヒータ用電源106dの出力を調整する。
【0044】
更に、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側冷媒流路107a及び外周側冷媒流路107bを設けても良い。そして、各々に異なる温度の、例えば冷却水、フルオロカーボン系の冷媒を循環させても良い。冷媒を循環させる場合、冷媒は、中心側導入管108aを介して中心側冷媒流路107aに導入され、中心側排出管109aから排出される。一方、外周側冷媒流路107bには、外周側導入管108bを介して冷媒が導入され、外周側排出管109bから排出される。
【0045】
サセプタ105は、ヒータ106a、106bによる加熱と、冷媒からの冷却と、により、温度が調整される。したがって、ウェハWは、プラズマからの輻射やプラズマに含まれるイオンの照射などによる加熱分と、前述のサセプタ105との熱量の授受と、により、所定の温度になるように調整される。また、サセプタ支持台104は、中心側ヒータ106a(及び中心側冷媒流路107a)並びに外周側ヒータ106b(及び外周側冷媒流路107b)を有する。そのため、ウェハWは、中心側と外周側とで独立して温度を調整することができる。
【0046】
また、図1には図示していないが、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は、中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間に、断熱層として断熱材又は空間を設けても良い。断熱層を設けることにより、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間が熱的に遮断される。即ち、ウェハWの中心側と外周側との間に、より大きな温度分布を生じさせることができる。
【0047】
チャンバ102の底部には排気管131が接続されており、排気管131には排気装置135が接続されている。排気装置135は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、チャンバ102内を所定の減圧雰囲気(例えば0.67Pa以下)に調整する。また、チャンバ102の側壁にはゲートバルブ132が設けられている。ゲートバルブ132が開くことによって、チャンバ102内へのウェハWの搬入、及び、チャンバ102内からのウェハWの搬出が可能となる。なお、ウェハWの搬送には例えば搬送アームが用いられる。
【0048】
(処理ガスの供給条件を調節する調節部の概略構成)
次に、図2及び図3を参照し、サセプタ105に支持されたウェハWに供給されるプラズマガスの供給条件を調整する、ガス供給条件調節部130の一例について説明する。なお、ガス供給条件調節部130は、本発明における、処理ガスを供給する複数の供給部及び、該複数の供給部における処理ガスの供給条件を調節する調節手段に対応する。
【0049】
図2に、図1のプラズマエッチング装置のガス供給装置150の一例を示す概略図を示す。また、図3に、図1のシャワーヘッド140の構造の一例を説明するための、概略図を示す。
【0050】
ガス供給条件調節部130は、上部電極120と一体で構成されているシャワーヘッド140と、ガス供給装置150とを有する。
【0051】
シャワーヘッド140は、サセプタ105に支持されたウェハW上に、所定の処理ガス(混合ガスであっても良い)を噴出するものである。シャワーヘッド140は、多数のガス噴出孔141aを有する円形状の電極板141(上部電極120)と、電極板141の上面側を着脱自在に支持する電極支持体142を備えている。電極支持体142は、電極板141と同じ径の円盤形状に形成され、内部に円形状のバッファ室143が形成されている。電極板141には、処理ガス等のガスをウェハWに供給するための、ガス噴出孔が設けられている(以後ガス噴出孔141と呼ぶことがある)。
【0052】
バッファ室143内には、例えば図3に示すように、Oリングから成る1つ以上の環状隔壁部材145が設けられている。1つ以上の環状隔壁部材145は、各々、シャワーヘッドの径方向に対して異なる位置に配置される。図3では、環状隔壁部材145は、シャワーヘッドの径方向に対して中心側から、第1の環状隔壁部材145a、第2の環状隔壁部材145b、第3の環状隔壁部材145cで示されている。これにより、バッファ室143は、中心側から第1のバッファ室143a、第2のバッファ室143b、第3のバッファ室143c、第4のバッファ室143dに分割されている。
【0053】
環状隔壁部材145の数は、1つ以上であれば特に制限されないが、例えば、図3で示すように3つとすることができる。直径300mmのウェハWを使用してプラズマエッチングする場合、処理ガスの制御の容易さと、後述するプラズマエッチング方法によるエッチングの面内均一性とを両立する観点から、環状隔壁部材145の数は3つ(即ち、4つに分割されたバッファ室を有する)とすることが好ましい。なお、N個の環状隔壁部材145を配置することにより、N+1個に分割されたバッファ室を設置することができる。
【0054】
各々のバッファ室143a、143b、143c、143dには、ガス供給装置150により、所定の処理ガスが供給される。
【0055】
また、各々のバッファ室143a、143b、143c、143dの下面には、1つ以上のガス噴出孔141が連通しており、このガス噴出孔141を介して、ウェハW上に所定の処理ガスを噴出することができる。ガス噴出孔141の配置及び配置する数については、ウェハWに対し、均一に処理ガスが噴出される配置となることが好ましい。
【0056】
具体的な例として、直径300mmのウェハWを使用して、3つの環状隔壁部材145によりバッファ室を4つのゾーンに分割した場合についての、ガス噴出孔141の配置例について説明する。この時、第1のバッファ室143aには、シャワーヘッドの中心から11mmの円周上に4つのガス噴出孔141aを(例えば等距離毎に)配置し、33mmの円周上に12個のガス噴出孔141bを(例えば等距離毎に)配置する。第2のバッファ室143bには、シャワーヘッドの中心から55mmの円周上に24個のガス噴出孔141cを(例えば等距離毎に)配置し、77mmの円周上に36個のガス噴出孔141dを(例えば等距離毎に)配置する。第3のバッファ室143cには、シャワーヘッドの中心から99mmの円周上に48個のガス噴出孔(図不示)を(例えば等距離毎に)配置し、121mmの円周上に60個のガス噴出孔(図不示)を(例えば等距離毎に)配置する。第4のバッファ室143dには、シャワーヘッドの中心から143mmの円周上に80個のガス噴出孔(図不示)を(例えば等距離毎に)配置し、165mmの円周上に100個のガス噴出孔(図不示)を(例えば等距離毎に)配置する。
【0057】
次に、図2を参照することにより、ガス供給装置150及び、各々のバッファ室に個別に、所定の処理ガスを供給するための、バルブ構成及び流量調節手段について説明する。ここでも、3つの環状隔壁部材145によりバッファ室を4つのゾーンに分割した場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0058】
ガス供給装置150は、第1のガスボックス161と、第2のガスボックス160とを備えている。第1のガスボックス161には、複数のガス供給源及び第1のバルブ303が収容されており、第2のガスボックスには、ガス供給源側から、第2のバルブ302、例えばマスフローコントローラ等の流量制御器301及び第3のバルブ300が収容されている。
【0059】
本実施の形態において、ガス供給源には、例えば、フロロカーボン系のフッ素化合物(CF系)、例えばCF、C、C、CH、CHF等の処理ガスが封入されている。他にも、例えばCF系の反応生成物の付着を制御するガスとして例えば酸素(O)ガスが封入されている。さらに、キャリアガスとして例えばArガス、Nガス、Heガスが封入されている。
【0060】
第1のガスボックス161内において、各々のガス供給源は配管と接続されている。配管は、各ガス供給源からのガスを各バッファ室に供給するために、分岐した構造となっている。即ち、図2の例においては、各ガス供給源に接続される配管は、配管170〜173のように4つに分岐されている。また、配管は第1のバルブ303が接続されており、所望するプロセスに応じて、ガス種を切り替えることが可能な構造となっている。このような構造にすることにより、新たなガス供給源を追加する場合や、プロセスにより不要な処理ガスのガス供給を停止する場合も、簡易な操作で実行することができる。
【0061】
また、配管170〜173は、第2のガスボックス160を介して、各々、第1のバッファ室〜第4のバッファ室へと接続され、各バッファ室に所定のガスが供給される。
【0062】
第2のガスボックス160内には、ガス供給源側から、第2のバルブ302、流量制御器301(又はマスフローコントローラ等を用いても良い)及び第3のバルブ300が収容されている。この時、第2のバルブ302、第3のバルブ303及び流量制御器301は、各バッファ室に供給される、各ガス種の配管全てに設けられている。このような構成にすることにより、各ガス供給源から供給された特定のバッファ室への処理ガスの流量を増減するだけでなく、特定のバルブを閉めることにより、特定のバッファ室(即ち、特定のゾーン)だけに、特定の処理ガスの供給を停止することもできる。
【0063】
配管170〜173は、第3のバルブの下流側で各々の処理ガス毎に合流し、各々、第1のバッファ室〜第4のバッファ室に、混合された処理ガスが導入される。なお、図示していないが、各々の処理ガスが合流した後の配管に追加のバルブを配置し、このバルブの開閉により、各々のバッファ室への処理ガスの供給の有無を制御できる構造であっても良い。
【0064】
また、第2のガスボックス160には、圧力調整部(図不示)として圧力計及び追加のバルブが設けられていても良く、圧力調整部の圧力計による計測結果に基づき、処理ガスの流量比を制御できる構造であっても良い。
【0065】
第2のガスボックス160における流量制御器301の動作は、例えばプラズマエッチング装置100の後述する装置制御部190により制御されている。したがって、装置制御部190により、第1のガスボックス161及び第2のガスボックス160からの各種ガスの供給の開始と停止、各種ガスの供給量を制御できる。
【0066】
前述の通り、プラズマエッチング装置100は、装置制御部190を有する。装置制御部190は、例えばCPUよりなる図示しない演算処理装置と、例えばハードディスクよりなる図示しない記録媒体を備えている。装置制御部190は、前述した、第1の高周波電源114、第2の高周波電源116、温度分布調整部106、上部電極駆動部200、ガス供給条件調整部130の各部の動作を制御する。そして、装置制御部190は、上記各部を動作させる際は、例えば装置制御部190のCPUが、例えば装置制御部190のハードディスクに記録されている、それぞれのエッチング処理に対応するプログラムに応じて、各部を制御する。
【0067】
なお、装置制御部190は、本発明における制御部に相当する。
【0068】
(プラズマエッチング方法)
次にプラズマエッチング装置100を用いた、プラズマエッチング方法の例について説明する。
【0069】
ガス噴出孔から、上部電極120とサセプタ105との間の空間に、ガスが供給されると、ガスは排気方向(排気装置135が接続されている方向)に拡散されながら流れていく。「拡散」と「流れ」により輸送されるガス成分(例えば、ラジカル)の濃度分布は、ガス噴出孔の位置などにより、「拡散」と「流れ」のどちらの因子に依存しているかが異なる。「拡散」と「流れ」のどちらの因子に、どの程度依存しているかを定性的に示す、無次元数としてペクレ数(Pe)が知られている。ペクレ数は、ガスの流速u(m/s)、ガス種の相互拡散係数DAB(m/s)、代表長さL(m)を用いて、下記式(1)で表される。
【0070】
Pe=uL/DAB 式(1)
ペクレ数は、1を境として、Peが1より小さい場合、ガスの輸送は「拡散」が支配的であるとされ、Peが1より大きい(又は1の)場合、ガスの輸送は「流れ」が支配的であるとされる。
【0071】
具体的な例により、詳細に説明するために、図4(a)に、本実施形態におけるウェハの、径方向の位置におけるペクレ数を示す。図4(a)は、ガス種としてArとCの混合ガス(相互拡散係数DABは1.23×10−1/sとなる)を使用した場合で、代表長さL(即ち、サセプタ105と上部電極120との間のギャップG)を0.03mとし、ガスの流速uを計算により算出して、ペクレ数を求めた。また、図4aの横軸は、直径300mmのウェハの中心を0mmとし、径方向に対するペクレ数を示している。
【0072】
図4(a)よりウェハの中心から径が86mmに位置を境界に、「拡散」が支配的である領域と「流れ」が支配的である領域とに区分されることがわかる。
【0073】
また、図4(b)に、直径300mmのウェハを使用した場合の、ウェハの位置に対するエッチレート比を示す。具体的には、直径300mmのウェハWを使用して、3つの環状隔壁部材によりバッファ室を4つのゾーン(Center、Middle、Edge、Very Edge)に分割して、各々のゾーンからガスを噴出してプラズマエッチングし、ウェハ位置に対するエッチレート比を求めた。なお、Centerのゾーンに対応するガス噴出孔は、シャワーヘッドの中心から11mmの円周上に4つのガス噴出孔を、33mmの円周上に12個のガス噴出孔を配置した。Middleのゾーンには、シャワーヘッドの中心から55mmの円周上に24個のガス噴出孔を、77mmの円周上に36個のガス噴出孔を配置した。Edgeのゾーンには、シャワーヘッドの中心から99mmの円周上に48個のガス噴出孔を、121mmの円周上に60個のガス噴出孔を配置した。Very Edgeのゾーンには、シャワーヘッドの中心から143mmの円周上に80個のガス噴出孔を、165mmの円周上に100個のガス噴出孔を配置した。以後、Center、Middle、Edge、Very Edgeからのガスの供給に関する記載は、上述のガス噴出孔の配置のことを指す。
【0074】
また、図4(b)の縦軸は、最もエッチレートが大きい位置を1として、規格化して示している。
【0075】
図4(b)から、Center及びMiddleのゾーンからガスを供給した場合、概ね、ガスが供給された位置に対応する位置において、エッチレートが大きくなっていることがわかる。これは、Center及びMiddleのゾーンでは、ガスの輸送は「拡散」が支配的であるため(図4(a)参照)である。また、Center及びMiddleのゾーンから供給されたガスは、Edge及びVery Edgeのゾーンのエッチレートにも影響が及ぶと推察される。
【0076】
一方、Edge(及びVery Edge)のゾーンからガスを供給した場合、エッチレート影響範囲が、外周側にシフトしていることがわかる。これは、Edge(及びVery Edge)のゾーンでは、ガスの輸送は「流れ」が支配的であり(図4(a))、Edgeゾーンから導入されたガスが、外周側に流されたからであると推察される。また、Edge及びVery Edgeのゾーンから供給されたガスは、Center及びMiddleのゾーンのエッチレートには、ほとんど影響を及ぼさない。
【0077】
つまり、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流速の影響が支配的である位置とでは、ガスの供給条件を変えて制御することが重要となる。具体的には、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置なら、その位置に対応する(略真上にある)ガス噴出孔のガス供給条件を調整し、供給された処理ガスの拡散の流れが支配的である位置なら、その位置よりもウェハの中心方向にあるガス噴出孔のガス供給条件を調整することで、プラズマエッチング時の面内均一性を向上させることができる。より具体的には、u、L、DAB等により、Edge(Very Edge)ゾーンから供給された処理ガスの拡散の影響が支配的な場合には、Edge(Very Edge)ゾーンからの処理ガスの条件を調整し、流れの影響が支配的な場合には、ウェハ中心方向側のCenter(Middle)のゾーンからの処理ガスの条件を調整する。
【0078】
次に、ガスの供給条件がガスの輸送に与える影響について説明する。即ち、供給ガスのどのようなパラメータが、ウェハ面内形状における、面内均一性の向上に与えるかについて説明する。
【0079】
供給ガスの拡散は、拡散分子(ガス分子)の平均自由行程l(m)とガスの流速u(m/s)に依存する。この時、拡散分子の平均自由行程lは、ガスが理想気体であり、拡散分子の速度がマスクウェル分布に従うと仮定される場合、下記の式(2)で表される。
【0080】
l=(T×C)/(d×P) 式(2)
式(2)中、Cは定数であり、dは拡散分子の衝突分子径(m)であり、Pは系内の圧力(atm)であり、Tは系内の温度(K)である。
【0081】
一方、供給ガスの流速uも、ガスが理想気体であると仮定した場合、下記の式(3)で表される。
【0082】
u=(Q×C)/PV 式(3)
式(3)中、Cは定数であり、Qは1気圧での流量(m/s)であり、Pは系内の圧力であり、Vは系内の体積(m)である。
【0083】
この時、供給ガスの拡散領域dareaは、平均自由行程l/流速uに比例するため、式(2)及び式(3)より、式(4)が導出される。
【0084】
area∝l/u=(T×V×C)/(dQ) 式(4)
式(4)中、Cは定数である。
【0085】
即ち、供給ガスの拡散領域は、系内の体積、供給ガスの流量、系内の温度及び衝突分子径に依存することがわかる。なお、系内の体積とは、本実施の形態では、上部電極120とサセプタ105との間の空間の体積に近似されるが、プラズマエッチング中には被処理体の径は変化しないため、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(ギャップG)を指す。また、供給ガスの流量は、系内の圧力とも相関がある。さらに、衝突分子径は、供給ガスの種類(即ち、供給ガスの分子量)によって異なるため、供給ガスの拡散領域は、供給ガスの分子量にも依存する。
【0086】
供給ガスの拡散領域は、供給ガスの流量(及び供給ガスの圧力)、供給ガスの分子量、及びギャップG等のパラメータ(供給条件)に依存することを確認した実験について、図5を参照して説明する。
【0087】
図5に、本実施形態における処理ガスの供給条件を変更した場合の、エッチレートの変化を示す概略図を示す。前述と同様に、3つの環状隔壁部材によりバッファ室を4つのゾーン(Center、Middle、Edge、Very Edge)に分割して、各ガス噴出孔から供給されるガス分圧(後述のエッチング条件参照)が一定になるようにした。さらに、Very Edgeのゾーンの最外周(シャワーヘッドの中心から径方向に、165mmの円周上)のガス噴出孔からは、下記のエッチング条件で示す量の追加ガスを供給し、各ウェハ位置におけるエッチレートをプロットした。なお、図5の縦軸は、シリコンウェハ上にハードマスクとしてシリコン酸化物が堆積された被処理体の、BEOL(Back End of Line)トレンチパターンにおける、シリコン酸化物のエッチレートを示している。
【0088】
図5(b)の縦軸は、最もエッチレートが大きい位置(最外周)を1として、規格化して示している。
【0089】
詳細なエッチング条件を下記に示す。
【0090】
エッチング装置内圧力 :80mTorr(圧力変更時:30〜150mTorr)
ギャップG:30mm(ギャップ変更時:22mm〜50mm)
高周波電源パワー(40MHz/13MHz):700/1000W
上部電極の電位 :0V
処理ガスの流量(全圧換算) :C/Ar/N/O=30/1200/70/17sccm(ただし、最外周領域には、C(分子量変更時には、O又はCH)=20sccmを添加し、流量変更時は、上記流量×0.33〜×1.5の範囲で行った。また、)
処理時間 :60秒
図5のエッチレートのプロットより、各々のパラメータが、供給ガスの拡散に対してどのような影響を及ぼすかがわかる。即ち、供給ガスの流量を低くする、供給ガスの分子量を小さくする、系内圧力を大きくする、ギャップGを広くすることにより、供給ガスの拡散が広くなることがわかる。即ち、これらのパラメータを制御することにより、ガス(即ち、ラジカル)の濃度分布を制御することができるため、プラズマエッチング時におけるウェハの面内形状について、面内均一性を向上できることがわかった。
【0091】
(本実施の形態のプラズマエッチング装置及び方法の効果を確認した実験)
次に、本実施の形態のプラズマエッチング装置及びプラズマエッチング方法の効果を確認した実験について、図6を参照して説明する。
【0092】
図6に、実施例及び比較例のプラズマエッチング条件において、ライン部の深さ及び底部の線幅(ボトムCD)を均一に制御することが可能であることを説明するための、概略図を示す。前述と同様に、3つの環状隔壁部材によりバッファ室を4つのゾーン(Center、Middle、Edge、Very Edge)に分割した。この時、比較例においては、各ガス噴出孔から供給されるガス分圧(後述のエッチング条件参照)が一定になるようにした。実施例においては、Edgeゾーンの処理ガス(C)のガス供給分圧を増加させ、Very Edgeゾーンの処理ガス(C)のガス供給分圧を0とした。なお、図6の縦軸は、シリコンウェハ上にハードマスクとしてシリコン酸化物を堆積し、エッチングした後のBEOL(Back End of Line)トレンチパターンにおける、トレンチの深さとボトムCDを示している。
【0093】
詳細なエッチング条件を下記に示す。
【0094】
≪共通≫
エッチング装置内圧力 :80mTorr
ギャップG:30mm
高周波電源パワー(40MHz/13MHz):400/200W
上部電極の電位 :700V
処理時間 :95秒
≪実施例の処理ガスの流量≫(各々のゾーン内での、各ガス噴出孔からの分圧は一定である)
Centerゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=1.3/53/3.1/1.0sccm
Middleゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=4.9/198/12/3.8sccm
Edgeゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=13.4/356/21/6.8sccm
Very Edgeゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=0/593/35/11sccm
≪比較例の処理ガスの流量≫(全てのゾーン内での、各ガス噴出孔からの分圧は一定である)
Centerゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=1.3/53/3.1/1.0sccm
Middleゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=4.9/198/12/3.8sccm
Edgeゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=8.9/356/21/6.8sccm
Very Edgeゾーンの分圧合計:C/Ar/N/O=14.8/593/35/11sccm
図6(a)より、比較例のように、全てのガス噴出孔において、処理ガスの供給分圧を一定にした場合、ウェハ面内の、トレンチの深さの差が20nmであった。特に、Very Edgeゾーンにおいて、面内深さが小さくなった。一方、実施例のように、Edgeゾーンでの処理ガスの供給分圧を上げ、Very Edgeゾーンでの処理ガスの供給分圧を下げた場合においては、面内深さの差は10nmであった。特に、Very Edgeゾーンでの面内深さは、Center及びMiddleゾーンと同程度であり、面内深さの面内均一性を向上することができた。また、図6(b)より、比較例のように、全てのガス噴出孔において、処理ガスの供給分圧を一定にした場合、面内ボトムCDの差が15nmであった。しかしながら、実施例のように、Edgeゾーンでの処理ガスの供給分圧を上げ、Very Edgeゾーンでの処理ガスの供給分圧を下げた場合においては、面内ボトムCDの差は3nmであった。即ち、面内ボトムCDの面内均一性を向上することができた。
【0095】
図4に関して説明したように、Very Edgeのゾーンからガスを供給した場合、エッチレート影響範囲が、外周側にシフトする。即ち、これらのゾーンでは、ガスの輸送は「流れ」が支配的であり、Very Edgeゾーンから導入されたガスが、さらに外周側に流される。Very Edgeのゾーンより内側のゾーンであるEdgeゾーンのガスの供給量を増やすことにより、Very Edgeゾーンのエッチレートが向上し、面内深さの面内均一性が向上したと考えられる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本発明のプラズマエッチング装置でエッチング可能である被処理体は、特に限定されない。具体的には、例えば、シリコン基板よりなるウェハであって、そのウェハ上に二酸化ケイ素(SiO)膜、ポリシリコン膜よりなる被エッチング膜、1層又は複数層よりなるマスク層、反射防止膜(Bottom Anti−Reflective Coating; BARC)及びフォトレジスト膜等が形成されているもの等が使用できる。この時、レジスト膜は、予め露光、現像が行われ、所定のパターンが形成されている。
【符号の説明】
【0097】
10、W ウェハ
105 サセプタ(支持部)
106 温度分布調整部
120 上部電極(電極)
122 ベローズ
130 調節部
140 シャワーヘッド
143 バッファ室
145 環状隔壁部材
150 ガス供給装置
190 装置制御部
200 上部電極駆動部(間隔調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ化された処理ガスにより基板をエッチングするプラズマエッチング装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、基板を保持する保持部と、
前記処理容器内に設けられた、前記保持部と対向する電極板と、
前記保持部と前記電極板とに挟まれた空間に処理ガスを供給するための、前記基板の径方向に対して各々異なる位置に配置された複数の供給部と、
前記保持部又は前記電極板の少なくとも一方に高周波電力を供給することによって、前記複数の供給部により前記空間に供給された処理ガスをプラズマ化する高周波電源と、
前記複数の供給部の各々に対応して、処理ガスの供給条件を調節する調節手段と、
前記基板上における、プラズマ化された処理ガスに含まれる活性種の濃度分布について、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流れの影響が支配的である位置とで、前記供給条件を変えるように前記調節手段を制御する制御部と、
を有する、プラズマエッチング装置。
【請求項2】
前記複数の供給部は、前記基板の径方向中心側の部分に処理ガスを供給する第1の供給部と、前記中心側の部分よりも前記基板の径方向外周側の部分に処理ガスを供給する第2の供給部と、
を有し、
前記第2の供給部により処理ガスが供給される前記基板部分の活性種濃度分布において、前記供給された処理ガスの拡散の影響が支配的であるなら、前記制御部は、前記第2の供給部により供給される処理ガスの第1の供給条件を調整するように前記調節手段を制御するものであり、
前記第2の供給部より処理ガスが供給される前記基板部分の活性種濃度分布において、前記供給された処理ガスの流れの影響が支配的であるなら、前記制御部は、前記第1の供給部により供給される処理ガスの第2の供給条件を調整するように前記調節手段を制御するものである、
請求項1に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項3】
前記第2の供給部により処理ガスが供給される前記基板部分における、処理ガスの流速をuとし、処理ガスの拡散係数をDとし、前記保持部と前記電極板との間隔をLとしたときに、
前記処理ガスの拡散の影響が支配的である条件は、uL/Dにより演算されるペクレ数が1より小さいときであり、
前記処理ガスの流れの影響が支配的である条件は、uL/Dにより演算されるペクレ数が1以上のときである、
請求項2に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項4】
前記第1の供給条件と前記第2の供給条件とは、いずれも処理ガスの供給流量である、請求項2又は請求項3に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項5】
前記第1の供給部と前記第2の供給部とは、いずれも2つ以上の処理ガスを混合して供給するものであり、
前記第1の供給条件と前記第2の供給条件とは、いずれも前記2つ以上の処理ガスを混合する混合比である、請求項2又は請求項3に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項6】
前記第1の供給部は、前記電極板であって、前記保持部に保持されている前記基板の中心に対向する位置を中心として同心円状に区画された複数の部分のうち、一の部分に形成された第1の供給口を含み、前記第1の供給口を介して前記空間に処理ガスを供給するものであり、
前記第2の供給部は、前記電極板であって、前記複数の部分のうち、前記一の部分よりも前記基板の径方向外周側の部分に形成された第2の供給口を含み、前記第2の供給口を介して前記空間に処理ガスを供給するものである、請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項7】
前記電極板の前記保持部と反対側に設けられた、前記電極板を支持する電極支持板を有し、
前記第1の供給部及び前記第2の供給部の各々は、前記電極支持板の内部又は前記電極支持板と前記電極板との間に、前記保持部に保持されている前記基板の中心に対向する位置を中心として同心円状に区画されるように形成された、第1のバッファ室及び第2のバッファ室の各々を有し、
前記第1の供給口は、前記第1のバッファ室と連通されており、
前記第2の供給口は、前記第2のバッファ室と連通されている、請求項6に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項8】
プラズマ化された処理ガスにより基板をエッチングするプラズマエッチング方法において、
処理容器内に設けられた保持部により基板を保持する保持ステップと、
前記処理容器内に設けられた、前記保持部と対向する電極板と前記保持部とに挟まれた空間に、前記基板の径方向に対して各々異なる位置に配置された複数の供給部により処理ガスを供給する処理ガス供給ステップと、
前記保持部又は前記電極板の少なくとも一方に、高周波電源により高周波電力を供給することによって、前記複数の供給部により前記空間に供給された処理ガスをプラズマ化する高周波電力供給ステップと、
を有し、
前記処理ガス供給ステップは、
前記基板上における、プラズマ化された処理ガスに含まれる活性種の濃度分布について、供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である位置と、供給された処理ガスの流れの影響が支配的である位置とで、前記供給条件を変えるように、前記複数の供給部の各々に対応して処理ガスの供給条件を調節する調節手段を制御するものである、プラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記複数の供給部は、前記基板の径方向中心側の部分に処理ガスを供給する第1の供給部と、前記中心側の部分よりも前記基板の径方向外周側の部分に処理ガスを供給する第2の供給部と、
を有し、
前記処理ガス供給ステップは、
前記第2の供給部により処理ガスが供給される前記基板部分の活性種濃度分布において、前記供給された処理ガスの拡散の影響が支配的であるなら、前記第2の供給部により供給される処理ガスの第1の供給条件を調整するように前記調節手段を制御するものであり、
前記第2の供給部より処理ガスが供給される前記基板部分の活性種濃度分布において、前記供給された処理ガスの流れの影響が支配的であるなら、前記第1の供給部により供給される処理ガスの第2の供給条件を調整するように前記調節手段を制御するものである、
請求項8に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記処理ガス供給ステップは、
前記第2の供給部により処理ガスが供給される前記基板部分における、処理ガスの流速をuとし、処理ガスの拡散係数をDとし、前記保持部と前記電極板との間隔をLとしたときに、
前記供給された処理ガスの拡散の影響が支配的である条件とは、uL/Dにより演算されるペクレ数が1より小さいときであり、
前記供給された処理ガスの流れの影響が支配的である条件とは、前記ペクレ数が1以上のときである、
請求項9に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記第1の供給条件と前記第2の供給条件とは、いずれも処理ガスの供給流量である、請求項9又は請求項10に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項12】
前記第1の供給部と前記第2の供給部とは、いずれも2つ以上の処理ガスを混合して供給するものであり、
前記第1の供給条件と前記第2の供給条件とは、いずれも前記2つ以上の処理ガスを混合する混合比である、請求項9又は請求項10に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項13】
前記第1の供給部は、前記電極板であって、前記保持部に保持されている前記基板の中心に対向する位置を中心として同心円状に区画された複数の部分のうち、一の部分に形成された第1の供給口を含み、前記第1の供給口を介して前記空間に処理ガスを供給するものであり、
前記第2の供給部は、前記電極板であって、前記複数の部分のうち、前記一の部分よりも前記基板の径方向外周側の部分に形成された第2の供給口を含み、前記第2の供給口を介して前記空間に処理ガスを供給するものである、請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項14】
前記第1の供給部及び前記第2の供給部の各々は、前記電極板の前記保持部と反対側に設けられた、前記電極板を支持する電極支持板の内部又は前記電極支持板と前記電極板との間に、前記保持部に保持されている前記基板の中心に対向する位置を中心として同心円状に区画されるように形成された、第1のバッファ室及び第2のバッファ室の各々を有し、
前記第1の供給口は、前記第1のバッファ室と連通されており、
前記第2の供給口は、前記第2のバッファ室と連通されている、請求項13に記載のプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51315(P2013−51315A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188600(P2011−188600)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】