説明

プリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置

【課題】プリプレグシートの裁断端末部に跳ね上がりが生じることを確実に防止して、0度層のプリプレグシートを好適に積層することを可能にするプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置を提供する。
【解決手段】一方向T1に繊維方向を向けてプリプレグシート8を積層するためのプリプレグ積層ヘッド26が、プリプレグシート8を被積層体Wに積層するように一方向T1に案内する第1ローラ12と、この第1ローラ12を通過したプリプレグシート8を一面側から押圧するとともに剥離紙7をプリプレグシート8の一面から引き剥がすように案内する第2ローラ13とを備えるとともに、第1ローラ12と第2ローラ13の間でプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がし、引き剥がした剥離紙7を第2ローラ13でプリプレグシート8を押圧するとともにプリプレグシート8の一面に戻すように案内する剥離紙先行剥離手段27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シートに樹脂を含浸させたプリプレグシートを積層してプリプレグ積層体を形成するためのプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維シートに樹脂を含浸させたプリプレグシート(FRPシート)を複数積層してプリプレグ積層体を製造し(複合材を形成し)、このプリプレグ積層体を用いて、航空機の胴体や主翼などを製作(形成)することが行われている。また、繊維として、軽量、且つ高強度・高弾性といった優れた特長を有することから炭素繊維が多用されている。
【0003】
また、プリプレグシートは、繊維シートが多数の繊維の繊維方向を揃えて形成され、且つ含浸樹脂に紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用い、繊維シートに含浸させた状態で樹脂を半硬化(不完全硬化、未硬化)の状態にして形成されている。このため、プリプレグシートには、その一面(あるいは両面)に剥離紙が取り付けられている。
【0004】
そして、プリプレグ積層体は、プリプレグシートから剥離紙を取り除き、繊維方向を交差させながら複数のプリプレグシートを一体に積層して製造(形成)される。すなわち、繊維方向を0度方向に向けたプリプレグシート(0度層)の上に、繊維方向を例えば45度方向や90度方向に向けたプリプレグシート(角度層)を、さらにその上に繊維方向を0度方向に向けたプリプレグシート(0度層)を積層してゆき、このように先行して積層したプリプレグシートで一体形成されたワーク(被積層体)に順次繊維方向を交差させながら所要枚数のプリプレグシートを積層することによってプリプレグ積層体が製造される。
【0005】
一方、高速で効率よく平板状のプリプレグ積層体を製造するために、プリプレグ自動積層装置が提案、実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
このプリプレグ自動積層装置Aは、例えば図2に示すように、架台1上に設けられ、一方向T1に進退自在に載置された積層テーブル2と、積層テーブル2を間にして架設され、一方向T1に間隔をあけて配設された一対の門型支柱3、4と、一方の門型支柱3に支持されて積層テーブル2の上方に配設された0度層用積層ヘッド(プリプレグ積層ヘッド)5と、他方の門型支柱4に上下方向に延びる軸線周りに回転可能に支持されて積層テーブル2の上方に配設された角度層用積層ヘッド6とを備えて構成されている。
【0007】
また、0度層用積層ヘッド5は、一面に剥離紙7を取り付けた状態のプリプレグシート8が巻き回された供給ローラ9と、供給ローラ9から繰り出されたプリプレグシート8を巻き掛けて支持する支持ローラ10と、供給ローラ9と支持ローラ10の間に設けられ、剥離紙7を裁断することなく、プリプレグシート8のみを所定の長さ毎に(ワークの積層対象ピースの大きさに合わせて)裁断するダイカッター11と、支持ローラ10から送られたプリプレグシート8を積層テーブル2上のワークに積層するように一方向T1に案内するとともに、このプリプレグシート8を一面側から押圧してワークに貼り付けるための前押さえローラ(第1ローラ)12と、前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8を再度押圧しつつプリプレグシート8から剥離紙7を剥離させるための後押さえローラ(第2ローラ)13と、プリプレグシート8から剥離した剥離紙7を回収する剥離紙回収ローラ14とを備えて構成されている。
【0008】
一方、角度層用積層ヘッド6は、一面に剥離紙7を取り付けた状態のプリプレグシート8が巻き回された供給ローラ15と、供給ローラ15から繰り出されたプリプレグシート8を巻き掛けて支持する支持ローラ16と、供給ローラ15と支持ローラ16の間に設けられ、剥離紙7を裁断することなく、プリプレグシート8のみを所定の長さ毎に(ワークの積層対象ピースの大きさに合わせて)裁断するダイカッター17と、支持ローラ16から送られたプリプレグシート8をワーク上に重ねるように案内するガイドローラ18aと、ガイドローラ18aとともにプリプレグシート8をワーク上に重ねるように案内し、且つプリプレグシート8から剥離紙7を剥離させるためのスクレーパーローラ(ガイドローラ)18bと、ガイドローラ18aとスクレーパーローラ18bの間に進退自在に設けられ、支持ローラ16から送られたプリプレグシート8を押圧して積層テーブル2上のワークに貼り付けるための積層シュー19と、剥離紙7を回収する剥離紙回収ローラ20とを備えて構成されている。
【0009】
そして、0度層用積層ヘッド5でワークにプリプレグシート8を積層する際には、剥離紙回収ローラ14を回転させるとともに剥離紙7が引っ張られ、供給ローラ9からプリプレグシート8が繰り出される。また、供給ローラ9から繰り出すとともに、ダイカッター11によってプリプレグシート8のみが所定の長さ毎に裁断される。このように裁断したプリプレグシート8が支持ローラ10を通じてワークの上面に沿うように送られ、前押さえローラ12によって剥離紙7側からワークに押圧(一次転圧)される。これにより、ダイカッター11で裁断して分割したプリプレグシート8の裁断ピースがワークの積層対象ピースに重ねて貼り付けられ、一体に積層される。また、後押さえローラ13を通過するとともに、ワークに貼り付けられたプリプレグシート8が再度押圧(二次転圧)され、且つプリプレグシート8から剥離紙7が引き剥がされて剥離紙回収ローラ14に巻き取られる。このようにして、繊維方向をワークの長さ方向(プリプレグ積層体の長さ方向、積層テーブル2の搬送方向、一方向T1)に向けた0度層のプリプレグシート8が0度層用積層ヘッド5によってワークに積層される。
【0010】
一方、0度層用積層ヘッド5でプリプレグシート8を積層したワークは、積層テーブル2によって角度層用積層ヘッド6側に搬送される。そして、この角度層用積層ヘッド6でワークにプリプレグシート8を積層する際には、角度層用積層ヘッド6を回転させ、ワークの長さ方向(積層テーブル2の搬送方向、一方向T1)に対して例えば45度や90度の所定の交差角度になるように配設し、この状態で剥離紙回収ローラ20を回転させる。これとともに剥離紙7が引っ張られて供給ローラ15からプリプレグシート8が繰り出され、ダイカッター17によってプリプレグシート8のみが所定の長さ毎に裁断される。このとき、ワークの積層対象ピースに応じた形状(例えば45度層をワークに積層形成する場合には菱形状)で分割するように、プリプレグシート8が裁断される。
【0011】
このようにプリプレグシート8が支持ローラ16からガイドローラ18a及びスクレーパーローラ18bによってワークWの上面に沿うように送られた段階で、積層シュー19がプリプレグシート8を押圧しつつプリプレグシート8の繊維方向(交差方向T2)に移動する。これにより、ダイカッター17で裁断して分割したプリプレグシート8の裁断ピースS1がワークWの積層対象ピースR1に重ねて貼り付けられ、一体に積層される。また、スクレーパーローラ18bを通過するとともに、ワークWに貼り付けたプリプレグシート8から剥離紙7のみが引き剥がされ、剥離紙回収ローラ20に巻き取られる。このようにして、ワークWの長さ方向(ひいては0度層のプリプレグシート8の繊維方向T1)に対して繊維方向T2が交差する角度層のプリプレグシート8が角度層用積層ヘッド6によってワークWに積層される。
【0012】
そして、上記のように0度層用積層ヘッド5と角度層用積層ヘッド6によって順次プリプレグシート8を繊維方向T1、T2を交差させながら積層してプリプレグ積層体が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−17625号公報
【特許文献2】特開2004−17633号公報
【特許文献3】特開2004−181683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のプリプレグ自動積層装置Aにおいては、0度層用積層ヘッド(プリプレグ積層ヘッド)5でプリプレグシート8をワークW(あるいは積層テーブル2(被積層体))に積層する際に、プリプレグシート8と剥離紙7の粘着性が強いため、図3に示すように、後押さえローラ13を通過して剥離紙7が引き剥がされるとともに、プリプレグシート8(裁断ピース21)の裁断端末部Sが引き剥がされてしまい、跳ね上がりが発生する場合があった。
【0015】
そして、このようにプリプレグシート8の裁断端末部Sに跳ね上がりが生じたワークWに次のプリプレグシート8を積層することになるため、表面が凸凹状のプリプレグ積層体が製造(形成)されてしまい、製品の品質を確保できなくなるという問題があった。
【0016】
また、裁断端末部Sに跳ね上がりが生じたワークWに次のプリプレグシート8を積層すると、加圧によって裁断端末部Sの0度層(プリプレグシート8)が折れ曲がってしまうおそれもある。そして、特に炭素繊維はせん断力に弱いため、プリプレグシート8が折れ曲がると所定の力学特性が得られなくなり、この点からも製品の品質を確保できなくなるおそれがあった。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑み、プリプレグシートの裁断端末部に跳ね上がりが生じることを確実に防止して、0度層のプリプレグシートを好適に積層することを可能にするプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0019】
本発明のプリプレグ積層ヘッドは、繊維シートに樹脂を含浸させたプリプレグシートを複数積層してプリプレグ積層体を形成する際に用いられ、前記プリプレグ積層体の長さ方向に沿う一方向に繊維方向を向けて前記プリプレグシートを積層するためのプリプレグ積層ヘッドであって、前記プリプレグシートは、一面に剥離紙が取り付けられており、被積層体の前後方向に配設され、前記プリプレグシートを前記被積層体に積層するように前記一方向に案内する第1ローラと、該第1ローラを通過した前記プリプレグシートを前記一面側から押圧するとともに前記剥離紙を前記プリプレグシートの一面から引き剥がすように案内する第2ローラとを備えるとともに、前記第1ローラと前記第2ローラの間で前記プリプレグシートの一面から前記剥離紙を引き剥がし、引き剥がした前記剥離紙を前記第2ローラで前記プリプレグシートを押圧するとともに前記プリプレグシートの一面に戻すように案内する剥離紙先行剥離手段を備えていることを特徴とする。
【0020】
この発明においては、第1ローラと第2ローラの間に剥離紙先行剥離手段が設けられていることにより、第2ローラで剥離紙を引き剥がす前に、第1ローラと第2ローラの間で剥離紙を引き剥がすことができる。また、このように剥離紙先行剥離手段で一度引き剥がした剥離紙が第2ローラに戻すように案内され、第2ローラでプリプレグシートを押圧するとともにプリプレグシートの一面に貼り付けられるため、従来と同様にこの剥離紙を介してプリプレグシートを第2ローラで押圧し、被積層体(ワーク)に一体に積層することが可能になる。
【0021】
そして、第2ローラで案内されてプリプレグシートの一面から剥離紙を引き剥がす際には、剥離紙先行剥離手段によって、一度、剥離紙がプリプレグシートから引き剥がされているため、プリプレグシートと剥離紙の粘着力が弱められ、容易に剥離紙をプリプレグシートの一面から剥離させることが可能になる。このため、従来のように第2ローラ(後押さえローラ)を通過して剥離紙が引き剥がされるとともにプリプレグシート(裁断ピース)の裁断端末部が被積層体から引き剥がされ、跳ね上がりが発生することを防止できる。
【0022】
また、本発明のプリプレグ積層ヘッドにおいては、前記剥離紙先行剥離手段が、前記第1ローラと前記第2ローラよりも上方に配設され、前記第1ローラと前記第2ローラの間の前記剥離紙を巻き掛けて設けられた第3ローラを備えて構成されていることが望ましい。
【0023】
この発明においては、第1ローラと第2ローラの間に第3ローラを設け、この第3ローラに剥離紙を巻き掛けることによって、第1ローラを通過するとともにプリプレグシートの一面から剥離紙を引き剥がすことが可能になる。また、第3ローラで剥離紙を案内させて確実且つ容易に第2ローラに剥離紙を戻すことが可能になる。
【0024】
さらに、本発明のプリプレグ積層ヘッドにおいては、前記剥離紙先行剥離手段が、前記第3ローラを備えるとともに、前記第1ローラと第3ローラの前記一方向の間に、且つ前記第3ローラよりも下方に配設され、前記第1ローラを通過した前記プリプレグシートの一面から前記剥離紙を引き剥がして前記第3ローラに案内するスクレーパーを備えて構成されていることがより望ましい。
【0025】
この発明においては、第1ローラと第3ローラの間に、且つ第3ローラよりも下方にスクレーパーを設けることで、第1ローラを通過したプリプレグシートの一面から剥離紙をより確実に引き剥がすことが可能になる。
【0026】
本発明のプリプレグ自動積層装置は、繊維シートに樹脂を含浸させて形成したプリプレグシートを複数積層してプリプレグ積層体を形成するためのプリプレグ自動積層装置であって、上記のいずれかのプリプレグ積層ヘッドを備えるとともに、前記被積層体が前記プリプレグ積層ヘッドに対して前記一方向に相対的に進退自在に載置される積層テーブルを備えており、前記積層テーブルが、前記被積層体を載置する上面に開口した複数の吸着孔を備えて形成され、前記吸着孔を通じて空気を吸引することによって前記被積層体を吸着状態で保持するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
この発明においては、上記いずれかのプリプレグ積層ヘッドを備えることで、従来のように第2ローラ(後押さえローラ)を通過して剥離紙が引き剥がされるとともにプリプレグシート(裁断ピース)の裁断端末部が被積層体から引き剥がされ、跳ね上がりが発生することを防止できる。また、これとともに、積層テーブルが複数の吸着孔を備えて形成され、吸着孔を通じて空気を吸引して被積層体を吸着状態で保持するように構成されているため、裁断端末部に跳ね上がりが生じたとしても、吸着孔を通じて空気を吸引するとともに裁断端末部を積層テーブル側(被積層体側)に吸引して元の位置に戻すことが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプリプレグ積層ヘッド及びプリプレグ自動積層装置においては、第1ローラと第2ローラの間に剥離紙先行剥離手段が設けられていることにより、第2ローラで剥離紙を引き剥がす前に、第1ローラと第2ローラの間で剥離紙を引き剥がすことができる。また、このように剥離紙先行剥離手段で一度引き剥がした剥離紙を第2ローラに戻し、従来と同様にこの剥離紙を介してプリプレグシートを第2ローラで押圧し、被積層体(ワーク)に一体に積層することが可能になる。
【0029】
そして、第2ローラで案内されてプリプレグシートの一面から剥離紙を引き剥がす際には、剥離紙先行剥離手段によって、一度、剥離紙がプリプレグシートから引き剥がされているため、従来のように第2ローラ(後押さえローラ)を通過して剥離紙が引き剥がされるとともにプリプレグシート(裁断ピース)の裁断端末部が被積層体から引き剥がされ、跳ね上がりが発生することを防止できる。
【0030】
また、本発明のプリプレグ自動積層装置においては、裁断端末部に跳ね上がりが生じたとしても、吸着孔を通じて空気を吸引するとともに裁断端末部を積層テーブル側(被積層体側)に吸引して元の位置に戻すことが可能になる。
【0031】
よって、本発明のプリプレグ積層ヘッド及びプリプレグ自動積層装置によれば、プリプレグシートの裁断端末部の跳ね上がりに起因して表面が凸凹状で形成されたり、裁断端末部に折れ曲がりが生じることがなく、高品質の製品を製造(プリプレグ積層体を形成)することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリプレグ積層ヘッド(0度層用積層ヘッド)及びプリプレグ自動積層装置を示す図である。
【図2】プリプレグ自動積層装置を示す斜視図である。
【図3】従来のプリプレグ積層ヘッド(0度層用積層ヘッド)及びプリプレグ自動積層装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係るプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置について説明する。本実施形態は、繊維シートに樹脂を含浸させたプリプレグシートを積層してプリプレグ積層体を製造(形成)するためのプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置に関するものである。なお、本実施形態では、図2及び図3に示した0度層用積層ヘッド5及びプリプレグ自動積層装置Aと同様の構成に対して同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態のプリプレグ自動積層装置Bは、図2に示したプリプレグ自動積層装置Aと同様に、架台1上に設けられ、一方向T1に進退自在に載置された積層テーブル25と、積層テーブル25を間にして架設され、一方向T1に間隔をあけて配設された一対の門型支柱3、4と、一方の門型支柱3に支持されて積層テーブル25の上方に配設された0度層用積層ヘッド(本発明に係るプリプレグ積層ヘッド)26と、他方の門型支柱4に上下方向に延びる軸線周りに回転可能に支持されて積層テーブル25の上方に配設された角度層用積層ヘッド6とを備えて構成されている。
【0035】
一方、本実施形態のプリプレグ自動積層装置Bにおいては、図1に示すように、積層テーブル25が多孔質板を用いて形成され、上面に開口する複数(多数)の吸着孔25aを備えて形成されている。そして、例えば、真空吸引装置に接続して架台1に吸引管が設けられ、この吸引管と複数の吸着孔25aが繋げられている。これにより、本実施形態の積層テーブル25は、真空吸引装置を駆動し、吸着孔25aを通じて空気を吸引することにより、積層テーブル25上に離型フィルムを介して載置されたワークW(被積層体)を吸着状態で保持できるように構成されている。
【0036】
また、0度層用積層ヘッド26は、プリプレグ積層体の長さ方向に沿う一方向T1に繊維方向を向けてプリプレグシート8をワークW(あるいは積層テーブル25;被積層体)に積層するためのプリプレグ積層ヘッドである。
【0037】
そして、本実施形態の0度層用積層ヘッド26は、供給ローラ9と、供給ローラ9から繰り出されたプリプレグシート8を巻き掛けて支持する支持ローラ10と、剥離紙7を裁断することなく、プリプレグシート8のみを所定の長さ毎に(ワークWの積層対象ピースの大きさに合わせて)裁断するロータリーダイカッター11と、前押さえローラ(第1ローラ)12と、後押さえローラ(第2ローラ)13と、プリプレグシート8から剥離した剥離紙7を回収する剥離紙回収ローラ14とを備えて構成されている。
【0038】
また、前押さえローラ12と後押さえローラ13は、ワークWの前後方向(一方向T1)に配設されている。前押さえローラ12は、支持ローラ10から送られたプリプレグシート8をワークWに積層するように一方向T1に案内するとともに、プリプレグシート8を一面側から押圧してワークWに貼り付けるためのものである。一方、後押さえローラ13は、前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8を再度一面側から押圧するとともに剥離紙7をプリプレグシート8の一面から引き剥がすように案内するためのものである。
【0039】
さらに、本実施形態の0度層用積層ヘッド26は、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間でプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がし、引き剥がした剥離紙7を後押さえローラ13でプリプレグシート8を押圧するとともにプリプレグシート8の一面に貼り付けて戻すように案内する剥離紙先行剥離手段27を備えて構成されている。
【0040】
そして、本実施形態の剥離紙先行剥離手段27は、剥離紙ガイドローラ(第3ローラ)28とスクレーパーローラ(スクレーパー)29とを備えて構成されている。剥離紙ガイドローラ28は、前押さえローラ12と後押さえローラ13よりも上方に配設され、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間の剥離紙7を巻き掛けて設けられている。
【0041】
スクレーパーローラ29は、前押さえローラ12と剥離紙ガイドローラ28の前記一方向T1の間に、且つ剥離紙ガイドローラ28よりも下方に配設され、前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がして剥離紙ガイドローラ28に案内するように配設されている。
【0042】
上記構成からなる本実施形態の0度層積層ヘッド26及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置Bを用いてプリプレグ積層体を製造(形成)する際には、積層テーブル25を一方向T1の前方に向けて進出させるとともにこれに同期させて剥離紙回収ローラ14を回転させると、供給ローラ9からプリプレグシート8が繰り出され、ダイカッター11によって所定の長さ毎に裁断される。このように裁断したプリプレグシート8が支持ローラ10を通じてワークWの上面に沿うように送られ、このプリプレグシート8が前押さえローラ12によって剥離紙7側からワークWに押圧(一次転圧)される。
【0043】
そして、本実施形態では、剥離紙ガイドローラ28が前押さえローラ12と後押さえローラ13よりも上方に配設され、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間の剥離紙7を巻き掛けて設けられているため、前押さえローラ12を通過するとともに、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間で、ワークWに貼り付けられたプリプレグシート8の一面から剥離紙7が剥離紙ガイドローラ28によって引き剥がされる。さらに、この剥離紙ガイドローラ28によって、引き剥がした剥離紙7が案内されて後押さえローラ13に戻される。
【0044】
また、前押さえローラ12と剥離紙ガイドローラ28の前記一方向T1の間に、且つ剥離紙ガイドローラ28よりも下方にスクレーパーローラ29が配設されているため、このスクレーパーローラ29によって、前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8の一面から剥離紙7が確実に引き剥がされる。そして、スクレーパーローラ29によって引き剥がされた剥離紙7が剥離紙ガイドローラ28に案内されるとともに、この剥離紙ガイドローラ28によって後押さえローラ13に戻される。
【0045】
このように剥離紙ガイドローラ28とスクレーパーローラ29を備えてなる剥離紙先行剥離手段27によって一度引き剥がした剥離紙7が後押さえローラ13に戻すように案内されるため、後押さえローラ13でプリプレグシート8を押圧する際に、剥離紙7が再度プリプレグシート8の一面に貼り付けられる。これにより、従来と同様にこの剥離紙7を介してプリプレグシート8が後押さえローラ13で押圧され、確実にワークWに一体に積層されることになる。
【0046】
そして、後押さえローラ13で案内されてプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がし、剥離紙回収ローラ14で剥離紙7を巻き取る際には、剥離紙先行剥離手段27によって、一度、剥離紙7がプリプレグシート8から引き剥がされているため、プリプレグシート8と剥離紙7の粘着力が弱められている。このため、容易に剥離紙7がプリプレグシート8の一面から引き剥がされ、従来のように剥離紙7が引き剥がされるとともにプリプレグシート8(裁断ピース21)の裁断端末部SがワークWから引き剥がされて、跳ね上がりが発生するようなことがない。
【0047】
また、積層テーブル25が複数の吸着孔25aを備えて形成され、吸着孔25aを通じて空気を吸引してワークWを吸着状態で保持している。このため、万一、裁断端末部Sに跳ね上がりが生じたとしても、吸着孔25aを通じて空気を吸引するとともに裁断端末部Sが積層テーブル25側(ワークW側)に吸引されて元の位置に戻り、この点からも跳ね上がりの発生が防止される。
【0048】
したがって、本実施形態のプリプレグ積層ヘッド(0度層用積層ヘッド)26及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置Bにおいては、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間に剥離紙先行剥離手段27が設けられていることにより、後押さえローラ13で剥離紙7を引き剥がす前に、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間で剥離紙7を引き剥がすことができる。また、このように剥離紙先行剥離手段27で一度引き剥がした剥離紙7が後押さえローラ13に戻すように案内され、後押さえローラ13でプリプレグシート8を押圧するとともにプリプレグシート8の一面に貼り付けられるため、従来と同様にこの剥離紙7を介してプリプレグシート8を後押さえローラ13で押圧し、ワークWに一体に積層することが可能になる。
【0049】
そして、後押さえローラ13で案内されてプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がす際には、剥離紙先行剥離手段27によって、一度、剥離紙7がプリプレグシート8から引き剥がされているため、プリプレグシート8と剥離紙7の粘着力が弱められ、容易に剥離紙7をプリプレグシート8の一面から剥離させることが可能になる。このため、従来のように後押さえローラ13を通過して剥離紙7が引き剥がされるとともにプリプレグシート8の裁断端末部SがワークWから引き剥がされ、跳ね上がりが発生することを防止できる。
【0050】
また、本実施形態のプリプレグ自動積層装置Bにおいては、万一、裁断端末部Sに跳ね上がりが生じたとしても、積層テーブル25が複数の吸着孔25aを備えて形成され、吸着孔25aを通じて空気を吸引してワークWを吸着状態で保持するように構成されているため、吸着孔25aを通じて空気を吸引するとともに裁断端末部Sを積層テーブル25側(ワークW側)に吸引して元の位置に戻すことが可能になる。
【0051】
よって、本実施形態のプリプレグ積層ヘッド26及びプリプレグ自動積層装置Bによれば、プリプレグシート8の裁断端末部Sの跳ね上がりに起因して表面が凸凹状で形成されたり、裁断端末部Sに折れ曲がりが生じることがなく、高品質の製品を製造(プリプレグ積層体を形成)することが可能になる。
【0052】
また、本実施形態のプリプレグ積層ヘッド26及びプリプレグ自動積層装置Bにおいては、剥離紙先行剥離手段27が、前押さえローラ12と後押さえローラ13よりも上方に配設され、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間の剥離紙7を巻き掛けて設けられた剥離紙ガイドローラ28を備えて構成されているため、前押さえローラ12を通過するとともにプリプレグシート8の一面から剥離紙7を確実に引き剥がすことが可能になる。また、剥離紙ガイドローラ28で剥離紙7を案内させて確実且つ容易に後押さえローラ13に剥離紙7を戻すことが可能になる。
【0053】
さらに、前押さえローラ12と剥離紙ガイドローラ28の間に、且つ剥離紙ガイドローラ28よりも下方にスクレーパーローラ29が設けられているため、より確実に前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8の一面から剥離紙7を引き剥がすことが可能になる。
【0054】
以上、本発明に係るプリプレグ積層ヘッド及びこれを備えたプリプレグ自動積層装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明に係る剥離紙先行剥離手段のスクレーパーがスクレーパーロール29であるものとしたが、本発明に係るスクレーパーは、前押さえローラ12と剥離紙ガイドローラ13の間に、且つ剥離紙ガイドローラ28よりも下方に設けられて、前押さえローラ12を通過したプリプレグシート8から剥離紙7を引き剥がすことが可能であれば、必ずしもローラに限定しなくてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、剥離紙先行剥離手段27が剥離紙ガイドローラ28とスクレーパーローラ29の2つのローラを備えて構成されているものとしたが、剥離紙ガイドローラ28のみで剥離紙先行剥離手段27を構成するようにしてもよい。この場合においても、前押さえローラ12を通過するとともに、前押さえローラ12と後押さえローラ13の間で剥離紙7を一度引き剥がすことができ、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0056】
さらに、本発明に係る第1ローラが前押さえローラ12であるものとし、第1ローラ12によって、支持ローラ10から送られたプリプレグシート8をワークWに積層するように一方向T1に案内するとともに、プリプレグシート8を一面側から押圧してワークWに貼り付けるものとして説明を行った。これに対し、本発明に係る第1ローラは、プリプレグシート8をワークWに積層するように一方向T1に案内することが可能であればよく、必ずしもプリプレグシート8を押圧してワークWに貼り付ける機能を備えていなくてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、プリプレグ積層ヘッド(0度層用積層ヘッド)26が供給ローラ9と支持ローラ10とダイカッター11と前押さえローラ(第1ローラ)12と剥離紙先行剥離手段27と後押さえローラ(第2ローラ)13と剥離紙回収ローラ14とを備えて構成されているものとしたが、本発明に係るプリプレグ積層ヘッドは、第1ローラ12と第2ローラ13と剥離紙先行剥離手段27を備えていればよく、その他の構成は本実施形態のように限定する必要はない。
【0058】
また、本実施形態では、積層テーブル26が架台1上を一方向T1に進退するように構成されているが、門型支柱3、4が積層テーブル26に対して一方向T1に進退するように構成してもよい。すなわち、ワークWは、プリプレグ積層ヘッド26に対して一方向T1に相対的に進退自在に積層テーブル25に載置されていればよい。
【符号の説明】
【0059】
1 架台
2 従来の積層テーブル
3 一方の門型支柱
4 他方の門型支柱
5 従来の0度層用積層ヘッド(プリプレグ積層ヘッド)
6 角度層用積層ヘッド
7 剥離紙
8 プリプレグシート
9 供給ローラ
10 支持ローラ
11 ダイカッター
12 前押さえローラ(第1ローラ)
13 後押さえローラ(第2ローラ)
14 剥離紙回収ローラ
15 供給ローラ
16 支持ローラ
17 ダイカッター
18a ガイドローラ
18b スクレーパーローラ(ガイドローラ)
19 積層シュー
20 剥離紙回収ローラ
21 裁断ピース
25 積層テーブル
25a 吸着孔
26 0度層用積層ヘッド(プリプレグ積層ヘッド)
27 剥離紙先行剥離手段
28 剥離紙ガイドローラ(第3ローラ)
29 スクレーパーローラ(スクレーパー)
A 従来のプリプレグ自動積層装置
B プリプレグ自動積層装置
S 裁断端末部
T1 一方向(プリプレグ積層体の長さ方向、前後方向)
T2 交差方向
W ワーク(被積層体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートに樹脂を含浸させたプリプレグシートを複数積層してプリプレグ積層体を形成する際に用いられ、前記プリプレグ積層体の長さ方向に沿う一方向に繊維方向を向けて前記プリプレグシートを積層するためのプリプレグ積層ヘッドであって、
前記プリプレグシートは、一面に剥離紙が取り付けられており、
被積層体の前後方向に配設され、前記プリプレグシートを前記被積層体に積層するように前記一方向に案内する第1ローラと、該第1ローラを通過した前記プリプレグシートを前記一面側から押圧するとともに前記剥離紙を前記プリプレグシートの一面から引き剥がすように案内する第2ローラとを備えるとともに、
前記第1ローラと前記第2ローラの間で前記プリプレグシートの一面から前記剥離紙を引き剥がし、引き剥がした前記剥離紙を前記第2ローラで前記プリプレグシートを押圧するとともに前記プリプレグシートの一面に戻すように案内する剥離紙先行剥離手段を備えていることを特徴とするプリプレグ積層ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載のプリプレグ積層ヘッドにおいて、
前記剥離紙先行剥離手段が、前記第1ローラと前記第2ローラよりも上方に配設され、前記第1ローラと前記第2ローラの間の前記剥離紙を巻き掛けて設けられた第3ローラを備えて構成されていることを特徴とするプリプレグ積層ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載のプリプレグ積層ヘッドにおいて、
前記剥離紙先行剥離手段が、前記第3ローラを備えるとともに、前記第1ローラと第3ローラの前記一方向の間に、且つ前記第3ローラよりも下方に配設され、前記第1ローラを通過した前記プリプレグシートの一面から前記剥離紙を引き剥がして前記第3ローラに案内するスクレーパーを備えて構成されていることを特徴とするプリプレグ積層ヘッド。
【請求項4】
繊維シートに樹脂を含浸させて形成したプリプレグシートを複数積層してプリプレグ積層体を形成するためのプリプレグ自動積層装置であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプリプレグ積層ヘッドを備えるとともに、前記被積層体が前記プリプレグ積層ヘッドに対して前記一方向に相対的に進退自在に載置される積層テーブルを備えており、
前記積層テーブルが、前記被積層体を載置する上面に開口した複数の吸着孔を備えて形成され、前記吸着孔を通じて空気を吸引することによって前記被積層体を吸着状態で保持するように構成されていることを特徴とするプリプレグ自動積層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−177939(P2011−177939A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42316(P2010−42316)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】