説明

プリント回路板搭載用の接続用金具

【目的】通電容量の増大ができて相対的に寸法の縮小化が可能なプリント回路板搭載用の接続用金具の提供。
【構成】この発明によるプリント回路板搭載用の接続用金具1は、接続用導体であるブスバー3の接続部31が装着される導体装着部11と、導体装着部11の矩形状の相対する辺の部位に連接されて導体装着部11の素材から一体に形成され,導体装着部11の接続部31の装着面111に対し直角状に折り曲げられて配置された繋止部12,12を有する。プリント回路板2には繋止部12用の貫通孔22、接続用金具1が搭載される側に接続用導体3に通流する電流を通流させる導電パターン21が形成される。接続用金具1は繋止部12を貫通孔22に挿入し、装着面111の反対側の接合面112を導電パターン21に当接させプリント回路板2に配設されたうえで、繋止部12の部位で導電パターン21とはんだ接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばブスバーなどの比較的大きな値の電流を取り扱う接続用導体を、プリント回路板に形成されたプリント回路へ接続するために用いられるプリント回路板搭載用の接続用金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置などのパワー半導体素子応用の電子装置等では、パワー半導体素子等の主要構成部品をプリント回路板に搭載することで装置全体の小形・低コスト化を図るようにしたものが知られている。そうして、このような装置には、装置に供給または装置から供給される電力値に数kVA級のものが出現するようになってきており、このような電力値に対応する比較的に大きな値の電流の授受を行う必要がでてきている。このために、これ等の装置のプリント回路板には、プリント回路板搭載用の接続用金具として、ブスバーなどの比較的大きな値の電流を通流できる接続用導体の接続が可能なものが用いられるようになってきている(例えば、特許文献1参照。)。
以下、図2により従来のプリント回路板搭載用の接続用金具について説明する。図2は、従来例のプリント回路板搭載用の接続用金具を説明する説明図であり、(a)はプリント回路板に搭載された接続用金具およびこの接続用金具への接続用導体の接続状況を示し、(b)は図2の(a)に示した接続用金具の拡大図である。図2において、9はプリント回路板7に搭載される接続用金具、8は接続用金具9に接続される接続用導体としてのブスバーである。ブスバー8は、この事例の場合には、その先端部位に接続用金具9との接続部81が形成され、この接続部81に締結体装填部としての貫通孔82を有し、この貫通孔82に装填される締結体としてのおねじ89を用いて接続用金具9に接続される。
【0003】
接続用金具9は、この事例の場合には、金属板材を逆U字状に折り曲げた形状を持ち、その中央上部にブスバー8の接続部81が装着される矩形状の導体装着部91が設けられている。この導体装着部91の両側のそれぞれに連接される折り曲げ部93,93の先端角部には、段付き部94を経て合計4本の接続片部95が形成されている。そうして、接続用金具9は、この接続片部95をプリント回路板7に形成された貫通孔(図示せず)に挿入し、プリント回路板7と導体装着部91との間隔を段付き部94により確保したうえで,接続片部95をプリント回路板7の導電パターン(図示せず)とはんだ接合することで、プリント回路板7と電気的かつ機械的に接続されている。
【特許文献1】特開平7−335288号公報(第3−4頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来技術によるプリント回路板搭載用の接続用金具9では、接続用金具9とプリント回路板7との電気的・機械的接続は、接続用金具9の接続片部95の導電パターンとのはんだ接合のみでなされている。ところで、パワー半導体素子等の主要構成部品をプリント回路板に搭載するようにした前述装置では、その容量がしだいに増大される状況にあり、装置が扱う電力値としては数kVA級のものの中でも数値の大きい範疇のものが既に現れ始めており、そうして、さらに電力値が増大される機運も出てきている。このために、比較的に大きな値の電流を通流させる接続用金具としては、前記構造を持つ接続用金具9では、接続用金具9と導電パターンとの接合面積の不足が起こりえることが明らかになってきている。この接合面積の増大を図るためには、接続用金具9を大形化して接続片部95と導電パターンとの接合面積を増大すれば対処はできるが、しかしながら、装置全体の小形・低コスト化を意図する,パワー半導体素子等の主要構成部品をプリント回路板に搭載するようにした装置では、接続用金具9の大形化は装置全体の大形化を招くことになるので、是非とも避けなければならないことである。そのことに加えて、接続用金具9の大形化は、接続用金具9とプリント回路板7の導電パターンとのはんだ接合作業時に、はんだ鏝などの接合用工具の持つ熱が接続用金具9に奪われ易くなるために、はんだ接合作業時間の増大、さらには、接続用金具9の寸法・形状によっては、はんだ接合の不可能化を招くことにもなってきている。したがってこの発明の目的は、通電容量(許容通電電流)の増大ができて相対的に寸法の縮小化が可能なプリント回路板搭載用の接続用金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明では前述の目的は、
1)接続用導体をプリント回路板に形成されたプリント回路へ接続するために用いられるプリント回路板搭載用の接続用金具において、前記接続用導体の接続部位が装着される導体装着部が前記接続用導体の装着側に対する反対側の部位で、接続用導体に通流する電流を通流させる前記プリント回路の導電パターンと接合されること、または、
2)前記1項に記載の手段において、前記導体装着部の前記接続用導体の装着側に対する反対側の部位の前記導電パターンに接合される面積が、前記導体装着部の前記接続用導体の接続部位に対する接触面積と少なくともほぼ同等の面積を有すること、さらにまたは、
3)前記1項または2項に記載の手段において、前記導体装着部を前記プリント回路板に繋止する繋止部を備えることにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
この発明によるプリント回路板搭載用の接続用金具では、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることで、次記の効果を得られる。
(1)接続用金具の接合面と導電パターンとの間に、電流および熱流が直接に通流できる広い面積の通流路が形成されることで、この部位で発生するジュール熱の熱量が大幅に低減されると共に、このジュール熱による接続用金具の温度上昇を低減することが可能になる。この結果、接続用金具の通電容量を従来技術の場合よりも大幅に増大できることで、この発明による接続用金具の装着面の面積を、同一の通電容量の従来技術の接続用金具と対比して、例えば、20%程度縮小することが可能になる。また、
(2)接続用金具を従来比で小型化することが可能になったことで、その製造原価を低減することができると共に、接続用金具とプリント回路板とのはんだ接合作業時に、はんだ鏝などの接合用工具の持つ熱で接続用金具やプリント回路板を所要の温度条件に容易に加熱することができるようになり、その接合作業時間の短縮を図ることが可能になる。さらにまた、
(3)パワー半導体素子等の主要構成部品をプリント回路板に搭載するようにした前述装置を、接続用金具をさしたる大形化すること無しに、その大容量化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下この発明を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態の一例によるプリント回路板搭載用の接続用金具を説明する説明図であり、(a)はプリント回路板に搭載された接続用金具およびこの接続用金具への接続用導体の接続状況を示し、(b)は図1の(a)におけるA−A断面図である。図1において、1は、プリント回路板2に搭載される接続用金具、3は接続用金具1に接続される接続用導体としてのブスバーである。ブスバー3は、この事例の場合には、その先端部位に接続用金具1との接続部31が形成され、この接続部31に締結体装填部としての貫通孔32を有し、この貫通孔32に装填される締結体としてのおねじ39を用いて接続用金具1に接続される。
接続用金具1は、この事例の場合には、ブスバー3の接続部31が装着される矩形平板状の導体装着部11を有し、また、この導体装着部11の矩形状の相対する辺の部位のそれぞれに連接された繋止部12,12を有している。それぞれの繋止部12は、例えば、導体装着部11を形成する素材から一体に形成され、導体装着部11のブスバー3の接続部31の装着面111に対して図1に図示したようにほぼ直角となるように折り曲げられて配置されている。プリント回路板2は接続用金具1が搭載される側の面に、接続用導体3に通流する電流を通流させる導電パターン21が形成され、また、接続用金具1が搭載される部位には、繋止部12,12を挿入させる貫通孔22,22が形成されている。そうして、導電パターン21の貫通孔22,22が形成されている部位には周知のランドが一体に形成されている。
【0008】
接続用金具1は、それぞれの繋止部12をそれぞれの貫通孔22に挿入し、装着面111に対する反対側の面となる接合面112を導電パターン21に当接させて、プリント回路板2に配設される。この接続用金具1は、プリント回路板2に挿入された繋止部12の部位で、例えば、はんだ鏝などの接合用工具を用いて導電パターン21とはんだ接合され、プリント回路板2と電気的かつ機械的に接続される。なお、この接続用金具1とプリント回路板2の導電パターン21とのはんだ接合作業時の作業条件は、はんだが接合面112と導電パターン21との接触部にも流れ込むように設定されることが、接合面112と導電パターン21との間の接合状態が一層安定化されることで好ましい。そうして、接続用金具1の装着面111の面積は、同一の通電容量(許容通電電流)とした場合に、従来技術の接続用金具9の導体装着部91の場合よりも20%程度縮小することができている。
【0009】
図1に示すこの発明の実施の形態の一例によるプリント回路板搭載用の接続用金具1では前述の構成としたことで、接続用金具1の接合面112と導電パターン21との間に、電流および熱流が直接に通流できる通流路が形成される。そうして、この電流・熱流の通流路は、従来技術の場合の接続用金具9の接続片部95とプリント回路板7の導電パターンとを結ぶ通流路の場合と対比して、その面積が格段に広いことがこの発明の大きな特長である。このことにより、接続用金具1と導電パターン21との間を通流する電流の電流密度が、従来技術の場合よりも格段に低減されるので、この結果、接続用金具1および接続用金具1と接合しあう導電パターン21の部位で発生する,前記電流の通流面積に関する単位面積当たりのジュール熱の熱量が大幅に低減される。また、接続用金具の温度上昇値については、接続用金具1および接続用金具1と接合する導電パターン21で発生した熱の放散に関わる熱流密度も支配的要因の一つであるが、この熱流密度も前記した電流密度の場合と同様に、大幅に低減される。
【0010】
接続用金具の通電容量は、通電による接続用金具の温度上昇値が所定値を超えない範囲で設定されることが一般的であるので、前記したことは、この発明による接続用金具1の通電容量が、従来技術の接続用金具9の場合よりも大幅に増大できることを示唆している。このことが、接続用金具1の装着面111の面積を、同一の通電容量の従来技術の接続用金具9の導体装着部91の場合よりも縮小することができた理由であり、前記したことから、接続用金具1の装着面111の面積を従来のものと対比して20%程度縮小したことは、十分に余裕のある数値になっている。そうして、この発明によって接続用金具1を従来比で小型化することが可能になったことで、その製造原価を低減することができると共に、接続用金具1とプリント回路板2の導電パターン21とのはんだ接合作業時に、はんだ鏝などの接合用工具の持つ熱で接続用金具1やプリント回路板2を所要の温度条件に容易に加熱することができるようになり、その接合作業時間の短縮も図ることができるようになっている。
【0011】
また、パワー半導体素子等の主要構成部品をプリント回路板に搭載するようにした前述装置を、接続用金具をさしたる大形化すること無しに、その大容量化を可能にすることができるようになった。さらに、この接続用金具1とプリント回路板2との接続に関する技術は、パワー半導体素子等を搭載するプリント回路板に広く適用できる技術であることから、これ等のプリント回路板にもこの発明による技術を共通に適用することで、接続用金具1の製造原価、接続用金具1とプリント回路板2とのはんだ接合作業に関わる製造原価の一層の低減を可能にすることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態の一例によるプリント回路板搭載用の接続用金具を説明する説明図であり、(a)はプリント回路板に搭載された接続用金具およびこの接続用金具への接続用導体の接続状況を示し、(b)は図1の(a)におけるA−A断面図である。
【図2】従来例のプリント回路板搭載用の接続用金具を説明する説明図であり、(a)はプリント回路板に搭載された接続用金具およびこの接続用金具への接続用導体の接続状況を示し、(b)は図2の(a)に示した接続用金具の拡大図である。
【符号の説明】
【0013】
1 接続用金具
11 導体装着部
111 装着面
112 接合面
12 繋止部
2 プリント回路板
21 導電パターン
22 貫通孔
3 接続用導体(ブスバー)
31 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続用導体をプリント回路板に形成されたプリント回路へ接続するために用いられるプリント回路板搭載用の接続用金具において、
前記接続用導体の接続部位が装着される導体装着部が前記接続用導体の装着側に対する反対側の部位で、接続用導体に通流する電流を通流させる前記プリント回路の導電パターンと接合されることを特徴とするプリント回路板搭載用の接続用金具。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント回路板搭載用の接続用金具において、
前記導体装着部の前記接続用導体の装着側に対する反対側の部位の前記導電パターンに接合される面積が、前記導体装着部の前記接続用導体の接続部位に対する接触面積と少なくともほぼ同等の面積を有することを特徴とするプリント回路板搭載用の接続用金具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリント回路板搭載用の接続用金具において、
前記導体装着部を前記プリント回路板に繋止する繋止部を備えることを特徴とするプリント回路板搭載用の接続用金具。

【図1】
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【図2】
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