説明

プレセニリン活性化に関与するプロテアーゼ、プレセニリネース及びその用途

【課題】
アルツハイマー病治療剤をスクリーニングする新規な方法を確立すること。
【解決手段】
以下の工程からなる、被験物質のアルツハイマー病治療又は予防効果を測定する方法、
(I)被験物質の存在下または非存在下でプレセニリネース及び基質ポリペプチドを接触させる工程、
(II)該基質ポリペプチドの切断により生じた基質断片の産生量を測定し、被験物質の存在下及び非存在下における該産生量を比較する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレセニリンの活性化に関与するプロテアーゼであるプレセニリネースを用いてアルツハイマー病に代表される神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病などの神経変性疾患は、神経細胞の変性・細胞死が原因となって起こる病気であり、前脳基底野のコリン作動性神経細胞や海馬・大脳皮質の錐体細胞の変性・脱落が認められており、このことが痴呆症状の原因となっていると考えられている。アルツハイマー病などの神経変性疾患を根本的に治療する薬物は現在までに見出されて折らず、症状を一時的に緩和する代償療法のみが行なわれているのが現状である。
【0003】
ベータアミロイド(以下「Aβ」という)は、アルツハイマー病患者の脳に特徴敵に認められる老人斑に含まれる40乃至42アミノ酸からなるペプチドであり、特に40個のアミン酸からなるAβ40と42個のアミノ酸からなるAβ42の老人斑中の比率がアルツハイマー病の進行に深く関与することは広く知られている(非特許文献1)。Aβは、その前駆体であるアミロイド前駆体蛋白(APP)が、ベータセクレテース(非特許文献2)およびガンマーセクレテース(非特許文献3)により切断されることにより生体内で生成され、アルツハイマー病の進行と密接な関係があるというAβ40とAβ42の比率は、ガンマーセクレテースにより調節されることが知られている。このため、ガンマーセクレテースがアルツハイマー病において重要な役割を持つと考えられている(非特許文献4)。
【0004】
プレセニリンは、ガンマーセクレテースの活性本体である多重膜貫通型蛋白質であり、現在までプレセニリン1(以下、「PS1」という)およびプレセニリン2(以下「PS2」という)の二つのアイソフォームが報告されている。遺伝性の家族性アルツハイマー病患者においてPS1及びPS2に種々の変異が見出されたことが報告されており(非特許文献4)、さらに、プレセニリンが活性型ガンマーセクレテースを形成するには、ニカストリン、APH−1およびPen-2などの蛋白質との会合が必要であることが明らかにされている(非特許文献5)。
また、ガンマセクレテースの活性化には、プレセニリンとこれら蛋白質との会合のほかに、プレセニリンがプロテアーゼによる切断を受けて、活性化されることが必要であることが知られている。すなわち、前駆体プレセニリンは、プレセニリネースと呼ばれる未同定のプロテアーゼにより切断され、この切断末端のN端側のNフラグメントとC端側のCフラグメントによって形成される活性化型プレセニリンが、上記ニカストリンなどの蛋白質と会合して活性型ガンマーセクレターゼを構成している(非特許文献6)。活性化されたPS1とPS2の配列解析より、プレセニリネースは、プレセニリン分子中に存在する8つの膜貫通ドメインのうち、N端側から6番目と7番目の膜貫通ドメインの間にある、細胞内に局在する領域を切断することが明らかにされている(非特許文献4)。これらの解析により、プレセニリネースとよばれるプロテアーゼの存在は想定されているが、実際にその活性を同定し、またその分子を特定したという報告はなされていない。
【0005】
さらに、プレセニリンには、家族性アルツハイマー病の患者において多数の変異が報告されており、そのうち多くがプレセニリネースによる切断をうける領域付近に集中しているが(非特許文献4)、これらの変異と疾患との因果関係やメカニズムを直接証明するには至っていない。
【非特許文献1】Selkoe,DJ., Physiological Rev.,2001, 81, 741-766)
【非特許文献2】Vassar, R., et. al., Science, 1999, 286, 735-741
【非特許文献3】Steiner, H and Haass, C., Nature Rev., 2000, 217-224
【非特許文献4】Hardey, J., Ternds in Neuroscience, 1997, 154-159
【非特許文献5】Takasugi, N., et. al., Nature, 2003, 422, 438-441
【非特許文献6】Xia, W., Drug News Perspect, 2003, 16, 69-74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プレセニリンの活性化に関与するプロテアーゼである、プレセニリネースを特定し、その活性、又は、発現量を調節する化合物のスクリーニング法を提供することにある。より具体的には、アルツハイマー病を含む様々な神経変性疾患の治療または予防剤を試験するため方法および該方法において用いられるポリペプチド、ポリヌクレオチド等が提供される。また同時に本発明では、PSおよびガンマーセクレテースの作用機構や情報伝達機構の解析に有用なDNAが提供される。
【0007】
本発明者等は、プレセニリンの活性化に関与するプロテアーゼを見出すため、鋭意探索研究を進め、ヒト腎臓由来細胞Hek293細胞に発現するプレセニリネースAおよびヒト骨格筋に発現するそのホモログであるプレセニリネースBを同定し、さらに、これらが、PS-1およびPS-2の活性化に関与していることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、
(1)以下の工程からなる、被験物質のアルツハイマー病治療又は予防効果を測定する方法、
(I)被験物質の存在下または非存在下で下記のA1乃至B4から選択されるいずれかのポリペプチド及び下記のS1乃至S6から選択されるいずれかの基質ポリペプチドを接触させる工程、
(II)該基質ポリペプチドの切断により生じた基質断片の産生量を測定し、被験物質の存在下及び非存在下における該産生量を比較する工程。
[A1]配列表配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド、
[A2]配列表配列番号15に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[A3]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[A4]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[B1]配列表配列番号18に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド、
[B2]配列表配列番号18に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[B3]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[B4]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
(基質ポリペプチド)
[S1]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド、
[S2]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド、
[S3]配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[S4]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド、
[S5]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド、
[S6]配列表の配列番号33に記載のアミノ酸配列からなる基質ポリペプチド。

(2)ポリペプチドが、A1乃至A4から選択されるいずれかのポリペプチドであり、且つ、基質ポリペプチドがS1乃至S3から選択されるいずれか1つの基質ポリペプチドであることを特徴とする、(1)に記載の方法。

(3)ポリペプチドが、B1乃至B4から選択されるいずれかのポリペプチドであり、且つ、基質ポリペプチドがS4乃至S6から選択されるいずれか1つの基質ポリペプチドであることを特徴とする、(1)に記載の方法。

(4) 下記の工程(i)乃至(iii)を含むことからなる、被験物質のアルツハイマー病治療効果を測定する方法、
(i)被験物質の存在下又は非存在下において、配列表の配列番号15又は配列番号18に記載のヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを保持する細胞を一定時間培養する工程、
ii)該細胞における該ポリヌクレオチドの転写量又は該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの翻訳量を測定する工程。
(iii)被験物質の存在下及び非存在下において前記翻訳量又は転写量を比較する工程。に関する。
【0009】
本発明において、前駆体プレセニリン1(以下、「前駆体PS1」又は「PS1」という)とは、配列番号32に記載のアミノ酸配列からなる、8回膜貫通蛋白質を指す。また、本発明において、前駆体プレセニリン2(以下、「前駆体PS2」又は「PS2」という)とは、配列番号33に記載のアミノ酸配列からなる、8回膜貫通蛋白質をさす。本発明において,これら前駆体PS1,前駆体PS2を総称して「前駆体プレセニリン」又は「プレセニリン」という。
【0010】
活性型プレセニリンとは、前駆体プレセニリンにおいてN末端から6番目と7番目の膜貫通ドメインにはさまれた細胞内局在領域がプレセニリネースにより切断されて生成するN末側及び/又はC末側断片をいう。ガンマーセクレテース活性においては、N側断片とC側断片の両方が必要であると考えられる。前駆体PS1は、配列番号32の263番目乃至381番目の間において切断され、この時生成される断片を「活性型PS1」という。また、前駆体PS2は、配列番号33の269番目乃至362番目の間において切断され、この時生成される断片を「活性型PS1」という。
【0011】
本発明において、「プレセニリネース」とは、細胞膜上に発現した前駆体PS1及び/又は前駆体PS2のN末側から6番目と7番目の膜貫通ドメインにはさまれた細胞内局在領域を切断する活性(以下、「プレセニリネース活性」という)を有するポリペプチドを指すものとし、「本発明のポリペプチド」と呼称する場合もある。このようなプレセニリネースの好ましい態様としては、以下のA1乃至A4及びB1乃至B4に示されるようなポリペプチドを挙げることができ、また、該ポリペプチドを含むことからなるポリペプチド、又は、該ポリペプチドの活性断片も本発明のプレセニリネースに含まれるものとする。本発明のプレセニリネースとして好ましくは、A1乃至A4及びB1乃至B4からなる群から選択されるいずれかのポリペプチドであり、更に好ましくは、A3又はB3に記載のポリペプチドである。
[A1]:配列表配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド。
[A2]配列表配列番号15に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド。
[A3]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[A4]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド。
[B1]配列表配列番号18に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド。
[B2]配列表配列番号18に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド。
[B3]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[B4]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド。
【0012】
本発明において、「断片」とは、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド又の断片を意味する。また、「活性断片」とは、本発明のポリペプチドの断片であり且つプレセニリネース活性を有するもの又は本発明のポリヌクレオチドの断片であり且つプレセニリネース活性を有するポリペプチドをコードするものであり、それらも本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体にそれぞれ包含される。
【0013】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及びそれらの断片は、それぞれ単離されたものであることが好ましい。
【0014】
本発明において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」とは、6倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)、5% デンハート(Denhardt)溶液及び0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」という)を含むプレハイブリダイゼーション溶液中における、55℃、4時間以上の保温によりハイブリダイズすること、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(クローンテック社製)中、68℃でハイブリダイズすること、又は、DNAを固定したフィルターを用いて0.7乃至1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1乃至2倍濃度のSSC溶液を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件若しくはそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
【0015】
本発明において、「ポリヌクレオチド」とは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はその断片であり、ゲノムDNA断片、ゲノムDNAを鋳型としてRNAポリメラーゼにより合成されるRNA(メッセンジャーRNA)、該RNAを鋳型として逆転写酵素(reverse transcriptase、以下RT)により合成される相補的DNA(complementary DNA:以下、cDNA)のいずれであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖のいずれでもよく、二本鎖にはDNA−DNA会合体、DNA−RNA会合体及びRNA−RNA会合体が含まれる。本発明においては、二本鎖ポリヌクレオチドの一方をセンス鎖と呼ぶ場合、他方すなわち該センス鎖が有するヌクレオチド配列と完全に相補的なヌクレオチド配列を含むことからなる一本鎖ポリヌクレオチドをアンチセンス鎖と呼ぶ。そのような本発明のポリヌクレオチドとしては、好適に配列番号11又は配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであり、より好適には配列番号15又は配列番号18に記載のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである。
【0016】
本発明のポリペプチドは、天然型及び組換型のいずれでもよい。天然型のポリペプチドは、組織、臓器又は細胞から、プレセニリネース活性を指標として抽出、精製及び/又は単離され得る。天然型のポリペプチドの分離源としては、プレセニリネースを発現している限りにおいて特に限定はないが、例えば、大脳等を挙げることができる。そのような分離源から本発明のポリペプチドを抽出、精製及び/又は単離する手段としては、細胞分画、塩溶、塩析、透析、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、電気泳動等を例示することができ、それらの手段を適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
組換型のポリペプチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離し、次いで該ポリヌクレオチドを適当な発現プラスミドDNAへ挿入し、次いで得られた組換発現プラスミドDNAで宿主細胞を形質転換し、次いで該宿主細胞を培養することにより、その培養物より、プレセニリネース活性又はアフィニティ・タグを指標として抽出、精製及び/又は単離され得る。本発明は、そのような、組換型ポリペプチドの製造方法をも提供する。また、該製造方法により得られるポリペプチドも、本発明のポリペプチドに包含される。
【0018】
配列表の配列番号11又は12に記載のアミノ酸配列と80%以上、好適には90%以上、より好適には95%以上同一なアミノ酸配列を含むことからなり、且つプレセニリネース活性を有する単離されたポリペプチドは、例えば、配列表の配列番号1で示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチド又はその断片をプローブとして、ヒト又はヒト以外の哺乳動物に由来するcDNAライブラリーより発現クローニングし、プレセニリネース活性を指標として選別することにより、組換型のポリペプチドとして得ることができる。
【0019】
配列表の配列番号11又は12に記載のアミノ酸配列において1つ又は数個(上限は好ましくは10であり、より好ましくは8であり、更に好ましくは5である)のアミノ酸が置換、欠失、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列を含むことからなり、且つプレセニリネース活性を有する単離されたポリペプチドは、例えば、配列表の配列番号15又は18に記載のヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを、エキソヌクレアーゼBal31等を用いて末端から削る方法(高浪満ら編、続生化学実験講座1 遺伝子研究法II 組換えDNA技術、1986年に東京化学同人より刊行、p.335−354)、カセット変異法(村松正実ら編、新生化学実験講座2 核酸III 組換えDNA技術、1992年に東京化学同人より刊行、p.242−251)、変異プライマーを用いたPCR法、部位特異的変異誘発法等により変異が導入されたポリヌクレオチドを取得し、次いで得られたポリヌクレオチドにコードされているポリペプチドを発現させることにより、組換型のポリペプチドとして取得することができる。ちなみに、天然型のインターロイキン2(以下、IL−2)のアミノ酸配列上に存在するシステインがセリンに置換されたものは、天然型のIL−2と同等の生物活性を保持する(Wang, A. et al. (1984) Science 224, 1431-1433)。
【0020】
本発明のポリペプチドの活性断片は、該ポリペプチドをそのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端から除去すること等により得られる。具体的には、例えば、配列表の配列番号1で示されるヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを、エキソヌクレアーゼBal31(BAL31 Nuclease)等を用いて本発明のポリヌクレオチドを末端から削る方法(前述)等に基づいてポリペプチドを短鎖化し、プレセニリネース活性を保持していることを確認することにより得ることができる。
【0021】
本発明のポリペプチドの多量体は、当業者に周知の方法に従って取得することができる(WO98/49305号:WO2001/18203号)。
【0022】
また、本発明のポリペプチドの活性誘導体も、当業者に周知の方法に従って取得することができる(US4179337号:EP0401384号:Malikら、Exp.Hematol., 20, p1028-1035(1992):WO2000/24416号)。
【0023】
本発明は、被験物質のプレセニリネース活性阻害活性を測定する方法に関する。
【0024】
このような方法としては、例えば下記工程(I)乃至(II)を含む方法をあげることができる。
(I)被験物質の存在下又は非存在下において、本発明のポリペプチドと基質ポリペプチドを接触させる工程、
(II)プレセニリネースによる基質ポリペプチドの切断によって生じる基質断片の産生量を測定し、被験物質の存在下及び非存在下における該基質断片の産生量を比較する工程。
【0025】
また、工程(II)において、被験物質存在下において基質断片の産生量が少ない被験物質を選択する工程を更に含む、プレセニリネース活性阻害剤のスクリーニング方法に関する。
【0026】
本発明において、「基質ポリペプチド」とは、前駆体プレセニリンにおいてN末側から6番目と7番目の膜貫通ドメインに挟まれる細胞内局在領域に相当するポリペプチドを含む事からなるポリペプチドを指す。本発明の基質ポリペプチドとしては、このような特徴を有するものであれば特に限定されないが、具体的には下記のS1乃至S6に記載される基質ポリペプチドが挙げられる。この中で、好ましくは、S2、S3、S5又はS6であり、より好ましくはS3又はS6である。
[S1]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド。
[S2]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド。
[S3]配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[S4]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド。
[S5]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド。
[S6]配列表の配列番号33に記載のアミノ酸配列からなる基質ポリペプチド。
【0027】
このような本発明の基質ポリペプチドには、放射性物質等で標識されたものも含まれる。また、発色試薬、ビオチン等、通常使用される検出可能な試薬により修飾されたものも本発明の基質ポリペプチドに含まれるものとする。また、これらの基質ポリペプチドがプレセニリネース活性により切断されて生成したN末端断片又はC末端断片を基質断片という。
【0028】
本発明のプレセニリネース活性の測定方法又はスクリーニング方法に供される本発明の基質ポリペプチドは、特に限定されるものではなく、該基質ポリペプチドを発現している細胞、該基質ポリペプチドの粗画分、細胞膜画分、部分精製画分、精製標品等でもよい。粗画分には、本発明の基質ポリペプチドを内在性に発現している動物、該動物に由来する細胞と組織、本発明の基質ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されたヒト又はヒト以外の哺乳動物に由来する組織や細胞の抽出物、破砕物、ホモジネート、該ポリヌクレオチドが直接導入された細胞の抽出物、破砕物、ホモジネート等が含まれる。細胞膜画分は、粗画分を遠心分離操作に供した際の沈殿部分として得られる。部分精製画分は、粗画分又は細胞膜画分を各種クロマトグラフィー等に供して部分精製することにより得られる。精製標品は、部分精製画分を更に各種クロマトグラフィー等に供することにより均一な画分として得ることができる。そのような各種単離、分離、精製の方法については、本発明の他の箇所において詳細に記載されている。好ましくは、該基質ポリペプチドを発現している細胞、該基質ポリペプチドの粗画分又は細胞膜画分である。
【0029】
本発明の基質ポリペプチドは、プレセニリネースによる切断を受けていない前駆体の形で調整される必要がある。このような基質を調整するには、プレセニリネースを発現せず、且つ、基質ポリペプチドを発現する細胞を用いる必要がある。このような細胞は、例えば、限界希釈培養法によりプレセニリネース活性が弱い細胞を選択することで取得することができるし、又、プレセニリネース遺伝子に対するアンチセンス核酸、siRNA等のプレセニリネースの発現を抑制する試薬で細胞を処理することによっても取得することができる。また、プレセニリネースが発現しない、又は、発現量が少ない組織を元に本発明の基質ポリペプチドを調整することによっても取得することができる。
【0030】
本発明のプレセニリネース活性の測定方法又はスクリーニング方法に供される本発明のポリペプチドは、特に限定されるものではなく、該ポリペプチドの粗画分、部分精製画分、精製標品、該ポリペプチドを発現している細胞等でもよい。粗画分には、本発明のポリペプチドを内在性に発現している動物、該動物に由来する細胞と組織、本発明のポリヌクレオチドが導入されたヒト又はヒト以外の哺乳動物に由来する組織や細胞の抽出物、破砕物、ホモジネート、本発明のポリヌクレオチドが直接導入された細胞の抽出物、破砕物、ホモジネート等が含まれる。部分精製画分は、粗画分を各種クロマトグラフィー等に供して部分精製することにより得られる。精製標品は、部分精製画分を更に各種クロマトグラフィー等に供することにより均一な画分として得ることができる。そのような各種クロマトグラフィー等については、本発明の他の箇所において詳細に記載されている。ポリペプチドを発現している細胞には、本発明のポリヌクレオチドを内在性に保有している細胞、本発明のポリヌクレオチドが導入されたヒト又はヒト以外の哺乳動物に由来する細胞等が含まれる。
【0031】
本発明において、「本発明のポリペプチドと基質ポリペプチドを接触させる」とは、同一系内に両物質が共存している状態を意味し、特に限定されるものではない。各々を試料として調整したものを混ぜ合わせてもよく、一方の物質をコードするDNAを含むプラスミドで形質転換した細胞に別に調整した他方の物質を加えてもよく、又は、両方の物質につき各々をコードするDNAを含むプラスミドを用いて1つの細胞に両物質を共発現させてもよい。
【0032】
本発明のポリペプチドと基質ポリペプチドの組み合わせは特に限定されず、どのような組み合わせによってもプレセニリネース活性を測定することができるが、好ましくは、本発明のポリペプチドとしてA1乃至A4から選択されるいずれかのポリペプチドを用いる場合に基質ポリペプチドとしてS1乃至S3から選択されるいずれかの基質ポリペプチドを使用し、本発明のポリペプチドとしてB1乃至B4から選択されるいずれかのポリペプチドを用いる場合に基質ポリペプチドとしてS4乃至S6から選択されるいずれかの基質ポリペプチドを使用しする。
【0033】
本発明のポリペプチドと基質ポリペプチドを接触させる際の条件は、水溶液中であれば特に限定されないが、pH条件は通常pH3乃至10、好適にはpH4乃至9、より好適にはpH4.5乃至6.5であり、温度条件は通常0乃至50℃、好適には4乃至40℃、より好適には20乃至37℃である。接触時間は通常30秒間乃至6時間、好適には1乃至60分間である。
【0034】
本発明のプレセニリネース活性によって産生される基質断片の産生量の測定方法としてはペプチドの検出に通常用いられる各種の方法を適用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、基質断片又は基質ポリペプチドに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングにより検出される蛋白質の分子量により検出する方法、又は、プレセニリネース活性により精製する切断面を特異的に認識する抗体を用いたウェスタンブロッティング法、免疫沈降法等の各種方法を挙げることができる。
【0035】
ウェスタンブロッティング法等に使用される一次抗体としては、用いる基質ポリペプチド又はプレセニリネース活性により産生される基質断片に対する抗体であればどんなものでも使用でき、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であっても良い。このような抗体は、本発明の基質ポリペプチド、又は基質断片を抗原として、常法に従って作製することができる。また、一次抗体が検出可能な試薬により直接標識されていてもよく、検出可能に標識された二次抗体を用いて検出してもよい。
【0036】
放射性物質により標識された基質ポリペプチドや検出可能な試薬により修飾された基質ポリペプチドを用いた場合においては、通常の電気泳動と各種標識に適した通常の検出方法を適用することにより、基質断片の産生を検出することができる。
【0037】
また、本発明のプレセニリネース活性によって産生される基質断片の産生量の測定方法の別の態様としては、反応液をHPLC等により分析し、所望の基質断片に該当するピークを検出する手法が挙げられる。
【0038】
また、本発明のプレセニリネース活性による基質ペプチド切断活性の測定方法として、Nma/Dnpなどの消光性蛍光基質(Bickett M. et al, Anal. Biochem.1993, 212, 58)を用いて基質ペプチドの切断量を簡便に測定することが可能である。すなわち、基質ペプチドの両端付近をNma及びDnpにより修飾し、反応液中のEm460 nm/Ex355 nmを、例えばEnVison(パーキンエルマー社製)等を用いて測定し、その蛍光量から、該基質ペプチドの切断量を検出することが可能である。ここで、消光性蛍光試薬としてはNma/Dnpに限定されず、このような検出に通常用いられる試薬であれば使用することができる。
【0039】
このような方法により選別されるプレセニリネース活性阻害剤は、各種神経変性疾患、特にアルツハイマー病の治療薬として有用である。
【0040】
また本発明は、本発明のポリペプチドの発現量を指標として被験物質の神経変性症(特にアルツハイマー病)治療及び/又は予防活性を測定する方法に関する。このような方法としては、例えば下記の工程(i)乃至(ii)を含む方法をあげることができる。
(i)被験物質の存在下又は非存在下において、本発明のポリヌクレオチドを保持する細胞を一定時間培養する工程、
ii)該細胞における該ポリヌクレオチドの転写量又は該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの翻訳量を測定する工程、
(iii)被験物質の存在下及び非存在下において前記翻訳量又は転写量を比較する工程。
【0041】
また本発明は、前記工程(i)乃至(ii)に加えて、さらに下記の工程(iv)を含むことからなる、神経変性症(特にアルツハイマー病)の治療又は予防活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。
(iv)被験物質非存在下に比べて、被験物質存在下において前記翻訳量又は転写量が少ない被験物質を選択する工程。
【0042】
本発明において、本発明のポリヌクレオチドを保持する細胞としては、天然に該ポリヌクレオチドを保持し、プレセニリネースを発現している細胞であっても良く、また遺伝子工学的に該ポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換された細胞であってもよい。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドの転写量は、当業者に周知のいずれの方法によっても測定することができ、そのような方法として、全RNA、mRNA又はそれを鋳型として作製されたcDNAライブラリーに対する、本発明のポリヌクレオチド又はその断片をプローブとしたドットブロット、スロットブロット、ノーザンブロット(northern blotting)等のハイブリダイゼーション法、それらを鋳型として作製されたcDNAライブラリーを鋳型とし、且つ本発明のポリヌクレオチド又はその断片を増幅させるべく設計されたオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ鎖伸張反応(polymerase chain reaction:以下、PCR)、逆転写PCR(reverse transcription PCR:以下、RT−PCR)、タックマン(Taqman)PCR、競合PCR、マイクロアレイ法、遺伝子チップ(genechip)法等を例示することができる。また、前記プローブを用いて組織切片に対するイン・サイチュー(in situ)ハイブリダイゼーションを行うことにより、組織における本発明のポリヌクレオチドの転写を検出又は測定することができる。
【0044】
本発明のポリペプチドの翻訳量は、当業者に周知のいずれの方法によっても測定することができ、そのような方法として、ヒト又はヒト以外の哺乳動物に由来する細胞、組織、体液等の試料又はその分画物に対する、本発明のポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体、その断片若しくはその一本鎖抗体(scFv)、ポリクローナル抗体又は抗血清を用いた、各種免疫アッセイ(immunoassay)やウェスタンブロット(western blotting)法等を例示することができる。免疫アッセイとしては、ELISA、EIA、サンドウィッチEIA、RIA等を例示することができる。また、組織切片を染色することにより、組織における本発明のポリペプチドを検出又は測定することができる。
【0045】
本発明は、本発明のポリペプチドの発現を抑制又は阻害する活性を有するヌクレオチド断片を有効成分として含有する医薬組成物、特に神経変性症(特にアルツハイマー病)の治療又は予防剤に関する。このような用途に使用されるポリヌクレオチド断片としては、アンチセンスヌクレオチド、ショート・ヘアピン(short hairpin)RNA(以下「shRNA」という)、スモール・インターフィアリング(small interfering)RNA(以下「siRNA」という)等が挙げられる。
【0046】
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド又はそれと完全に相補的なヌクレオチド配列と80%以上同一なヌクレオチド配列からるなるポリヌクレオチド中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチドであり、且つ本発明のポリヌクレオチドと会合することにより、その転写を抑制又は阻害するヌクレオチドであれば特に限定されない。好適なアンチセンスヌクレオチドには、その3’−末端のヌクレオチドは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド中の対応するヌクレオチドと同一である。より好適なアンチセンスヌクレオチドは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列又はそれと完全に相補的なヌクレオチド配列からるポリヌクレオチド中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチドである。
【0047】
本発明のshRNAは、通常、互いに相補的な2つのヌクレオチド領域が数塩基からなるリンカーヌクレオチドにより結合された一本鎖RNAであり、一方のヌクレオチド領域は、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列と80%以上同一なヌクレオチド配列中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチドからなり、且つ、当該本発明のポリヌクレオチドとの会合を介して本発明のポリヌクレオチドを不活性化せしめる。好適なshRNAにおける一方のヌクレオチド領域は、その5’及び/又は3’末端のヌクレオチドは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド中の対応するヌクレオチドと同一である。より好適なshRNAは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチド領域、及び、該ヌクレオチド領域と完全に相補的なヌクレオチド配列からなる他方のヌクレオチド領域が数塩基からなるリンカーにより連結されたshRNAである。1つのヌクレオチド領域の塩基長は、10塩基以上であり、より好適には10塩基乃至30塩基であり、更に好適には21塩基乃至25塩基である。
【0048】
本発明のsiRNAは、通常、互いに相補的な二本鎖ヌクレオチドからなり、そのうち一方のヌクレオチド鎖は、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチドと完全に相補的なヌクレオチド配列と80%以上同一なヌクレオチド配列中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチドからなり、且つ、当該本発明のポリヌクレオチドとの会合を介して本発明のポリヌクレオチドを不活性化せしめる。好適なsiRNAには、その5’及び/又は3’末端のヌクレオチドは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド中の対応するヌクレオチドと同一である。より好適なsiRNAは、配列表の配列番号15又は配列番号18で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド中に存在する、連続する少なくとも10のヌクレオチド鎖、及び、該ヌクレオチド鎖と完全に相補的なヌクレオチド配列からなる他方のヌクレオチド鎖が会合してなるsiRNAである。1つのヌクレオチド鎖の塩基長は、10塩基以上であり、より好適には10塩基乃至30塩基であり、更に好適には21塩基乃至25塩基である。
【0049】
本発明のスクリーニング方法により得られる物質、アンチセンスヌクレオチド、shRNA又はsiRNA(以下、「本発明の医薬成分」という。)は、医薬組成物としてヒト又はヒト以外の動物に対し、経口又は非経口により安全に投与され得る。本発明のスクリーニングにより得られる物質を含有する医薬組成物も、本発明に含まれる。医薬組成物としての投与形態は、疾患の種類、疾患の程度、症状、年齢、性別、体重等に応じて適宜選択することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤は経口投与され、注射剤は単独で若しくはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与されるか又は単独で筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与され、貼付剤は経皮投与され、点鼻剤は経鼻投与され、粘膜適用剤は経粘膜投与若しくは口腔内投与され、坐剤は直腸内投与される。これらの製剤は、常法に従い、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、着色剤、pH緩衝剤、防腐剤、ゲル化剤、界面活性剤、コーティング剤等、医薬の製剤分野において通常使用し得る公知の補助剤を用いて製剤化することができる。そのような医薬組成物に含まれる本発明のスクリーニング方法により得られる物質の量は、特に限定されるものではないが、通常0.1乃至70重量%であり、好適には1乃至30重量%である。
【0050】
本発明の医薬成分の投与量は、症状、年齢、体重、投与形態、剤形等に依存するが、例えば、通常成人に対する1日当たりの投与量の上限が10乃至1000mg、下限が0.001乃至0.1mgである。該物質の投与回数は、投与形態、剤形等に依存するが、数日に1回、1日1回、又は1日数回である。
【0051】
また、本発明の医薬成分を有効成分として含有する医薬組成物は、プレセニリネース活性阻害剤、ガンマーセクレテース活性阻害剤、ベータアミロイド40/ベータアミロイド42比率正常化剤、神経変性症治療若しくは予防剤又はアルツハイマー病治療若しくは予防剤として有用である。
【発明の効果】
【0052】
以上述べたように、本発明は、プレセニリンの活性化に関与するプロテアーゼであるプレセニリネースの活性を阻害する物質のスクリーニング法、プレセニリネース野発現を抑制する物質のスクリーニング方法を提供する。このような方法で選択される物質は、アルツハイマー病を含んだ様々な神経変性疾患の治療または予防剤として有効であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例を記載し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0054】
<実施例1.ヒトPS1、PS2発現プラスミドの構築>
a)プラスミドpIREShyg/PS1の構築
PS1の公知のヌクレオチド配列(GeneBank:L42110.1)を基に設計した下記のヌクレオチド配列からなるPS1プライマー1(配列番号1)、PS1プライマー2(配列番号2)をPCRプライマーとして作成した。
5'- atcgaaggatccgccaccatgacagagttacctgcaccgttgtc-3' (PS1プライマー1:配列表の配列番号1)および
5'- aagcttggatccctagatataaaattgatggaatgctaattg-3' (PS1プライマー2:配列表の配列番号2)
Human Brain cDNA (Clontech社製)1 ngを鋳型として上記プライマー(終濃度各0.2 μM)とKODポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用い、添付のプロトコールに従ってPCRを行なった。すなわち、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社製))を使用して98℃で1分間加熱後、温度サイクル(98℃で15秒、64℃で5秒、74℃で90秒)を30回繰り返し、さらに74℃で10分加熱した後、4℃に冷却した。得られたPCR反応物よりPCR産物精製キット(QIAquick PCR Purification Kit(QiAGEN社製)以下、「PCR産物精製キット」といい、特に断りが無い限りキットに添付のプロトコールに従って使用した。)を用いて目的のDNA断片を精製し、約1.4 kbpのDNA断片を取得した。
【0055】
次に、得られたDNA断片を制限酵素BamHIで消化し、反応産物精製キット(QIAquick Reaction Purification Kit(QiAGEN社製:以下、「反応産物精製キット」といい、特に断りが無い限りキットに添付のプロトコールに従って使用した。))を用いて目的のBamH1処理DNA断片を精製した。一方、pIREShyg(clontech社製)を同様にBamHIで消化し、末端をウシ小腸アルカリホスファターゼ(TAKARA社製)を用いて脱リン酸化した後、フェノール・クロロホルム抽出を行い、さらに反応産物精製キットを用いることによりBamH1処理pIREShygを精製した。これらBamH1処理したDNA断片とベクターをそれぞれ、2.0%、1.0%のアガロースゲルで電気泳動し、約1.4 kbp及び約4.8 kbpに相当するバンド部分を剃刀刃を用いて分離した。このゲル中に含まれるDNAを、抽出精製キット(QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製:以下、「抽出精製キット」といい、特に断りが無い限りキットに添付のプロトコールに従って使用した。))を用いることにより精製した。得られたDNA断片とベクターDNAをDNAライゲーションキット(TAKARA社製)を用いて連結し、pIREShyg-PS1連結プラスミドを得た。このプラスミドで大腸菌DH5αのコンピテント細胞(TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリン耐性のコロニーを得た。
【0056】
いくつかのコロニーの培養菌体からプラスミドを抽出して、制限酵素BamHIで切断処理し、約1.4 kbpの断片が生じることを指標として、ヒトPS1 cDNAが挿入されたプラスミドDNA、pIREShyg/PS1を取得した。得られたpIREShyg/PS1に挿入されているヌクレオチド配列を、DNAシークエンサー(Model 3700 (Applied Biosystems))を用いて解析した結果、報告されているPS1遺伝子ヌクレオチド配列(配列番号3)と一致していた。また、GenBankデータベースに登録されているPS1遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号32に示す。

b)プラスミドpRKSK/PS1の構築
PS1のヌクレオチド配列に基づき設計された、以下のヌクレオチド配列からなるPS1プライマー3(配列番号4)を作成した。
5'- ggattagctagcgccaccatgacagagttacctgcaccgttgtc-3' (PS1プライマー3:配列表の配列番号4)
Human Brain cDNA (Clontech)1 ngを鋳型とし、PS1プライマー3、PS1プライマー2を用いてa)と同様の方法によりPCR及びDNA断片の精製を行った。得られたDNA断片をNheIとBamHIで切断処理し、得られたDNA断片をa)と同様の方法によりアガロースゲルで精製した。一方、pRKSK(pRK5ベクター(Eaton, D. et al., Biochemistry,1986, 25,8343-8347)のマルチクロニングサイトの配列をpBluescriptSK(Stratagene)のマルチクローニングサイトの配列に置き換えたもの)をXbaI、BanHIで消化した後抽出精製キットで精製した。得られた酵素処理されたDNA断片とベクターDNAよりa)と同様の方法を用いてpRKSK/PS1プラスミドを取得した。なお、目的プラスミドが導入されたコロニーの選別には、制限酵素BamHIで切断処理した際約6.1 kbpの断片が生じることを指標とした。得られたプラスミドDNAに挿入されているヌクレオチド配列を、DNAシークエンサー(Model 3700 (Applied Biosystems製))を用いて解析し、得られたヌクレオチド配列を配列番号3に示す。この配列は、報告されているPS1遺伝子ヌクレオチド配列と一致した。

c)プラスミドpRKSK/PS2の構築
公知のPS2のヌクレオチド配列(GeneBank:L44577.1)に基づき設計されたオリゴヌクレオチド(PS2プライマー1(配列番号5)、PS2プライマー2(配列番号6))を作成した。
5'- ggattagctagcgccaccatgctcacattcatggcctctgac -3' (プライマー4:配列表の配列番号5)および
5'- atagttggatcctcagatgtagagctgatgggaggccagg -3' (プライマー5:配列表の配列番号6)
PCRプライマーとして、プライマー4及びプライマー5を用いて、b)と同様の手法により、pRKSK/PS2プラスミドを取得した。
【0057】
なお、目的とするDNA断片は約1.4 kbpであり、目的とするプラスミドが導入されたコロニーの選別には、制限酵素BamHIで切断処理した際約6.1 kbpの断片が生じることを指標とした。得られたpRKSK/PS2プラスミドDNAに挿入されているヌクレオチド配列を、DNAシークエンサー(Model 3700 (Applied Biosystems社製))を用いて解析した結果、報告されているPS2遺伝子ヌクレオチド配列(配列番号7と一致していた。また、GenBankデータベースに登録されているPS2遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号33に示す。

<実施例2.PS1を安定に高発現しているが、プレセニリネースによって活性型PS1が産生されない細胞株293/PS1-ΔPSA19株の単離>
ヒト腎臓由来Hek293細胞を、10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc.製)と一倍濃度ペニシリン・ストレプトマイシンを含む高グルコース濃度DMEM培地(INVITROGEN社製:以下、「DMEM・FBS(+))とする)中で、37℃、5%炭酸ガスのインキュベーター内で培養(以下、特に断りが無い限り、培養にはこの条件を用いた。)し、細胞を洗浄及び回収し、新たに10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc.製)と抗生物質を含まない高グルコース濃度DMEM培地(INVITROGEN社製:以下、「DMEM・FBS(-)」とする)を加えて縣濁し、細胞縣濁液(2.5 x 10 cell/ml)を調製した。該細胞懸濁液を12ウェルプレート(Corning製)に0.8 mlずつ分注し、16時間培養した後、トランスフェクション試薬、リポフェクトアミン2000(INVITROGEN社製)を用い、添付のプロトコールに従って実施例1で作製したプラスミドpIREShyg/PS1でトランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を24時間培養した後、洗浄及び回収し、得られた細胞を20 mlのDMEM・FBS(+)に縣濁し、それを原液の細胞濃度の10、100、1000および10000倍にそれぞれ希釈して10 cmシャーレ(Corning製)に接種し、100 μg/mlハイグロマイシンを含んだDMEM・FBS(+)で一週間培養した。これら希釈系列培養よりピペットマンで吸引することにより、十分に分離している細胞のコロニー100個を分離した。

b)ウエスタンブロッティングによる293/PS1-ΔPSA19細胞の選択
a)で得られた上記100個のシングルコロニー由来の細胞を24wellプレート(Corning製)に分注し、100 μg/mlハイグロマイシンを含んだDMEM・FBS(+)中でコンフルエントの状態まで培養した。その後、培地を取り除き、細胞を100 μlの5 %β-メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファー(BioRad社製)で溶解し、電気泳動用サンプルとし、10-20%グラジエント-アクリルアミドゲル(第一化学製)により電気泳動した。得られた電気泳動ゲルをPVDF膜(Milipore社製)にブロッティングし、一次抗体としてanti-PS1抗体(Zang YW. et al., J Biol Chem. 2005,280,17020-17026.)、二次抗体としてHRP標識anti-rabbit IgG抗体(Amersham Biosciences社製、製品番号:NA9310)を用い、ECL試薬(ECL Western Blotting Detection Reagents:Amersham Biosciences社製、製品番号:RPN-2109)を用いてPS1に相当するバンドを検出した(図1)。ここで、前駆体PS1が高発現しており、且つ、活性型PS1に由来する断片がほとんど検出されない細胞株を選択し、293/PS1-ΔPSA19株とした。上記100株の単離細胞のうち、多くの細胞株では、全長の前駆体PS1に加えて、プレセニリネースにより切断を受けた、活性型PS1に由来する切断物の一つ、N端フラグメントが生じたのに対し、293/PS1-ΔPSA19株では、PS1の前駆体が蓄積し、活性型PS1に由来するN端フラグメントがほとんど生じていないことが確認された。つまり、293/PS1-ΔPSA19株の細胞内では、プレセニリネース活性、あるいはその活性に必須な因子に何らかの変異が生じた結果、PS1の正常なプロセッシングが行なわれないこと考えられる。

<実施例3.プレセニリネース活性の同定>
a) 基質の調製
上記実施例2で作製した293/PS1-ΔPSA19株は、前駆体PS1のみが蓄積し、プレセニリネース反応により生じるPS1のフラグメントを持たないことから、前駆体PS1が局在する細胞膜画分を以下の通り調製し、酵素反応の基質とした。
【0058】
293/PS1-ΔPSA19株を、100 μg/mlのハイグロマイシンを含むDMEM・FBS(+)中で継代培養し、5枚の15 cmシャーレ(Corning社製)に90%コンフルエントとなるように培養した293/PS1-ΔPSA19株を回収し、500 mlのDMEM・FBS(+)培地に懸濁し、500 cm2細胞培養用セルトレー(Nunc社製)1枚につき、100 mlを分注し、5枚作製した。このセルトレーを72時間培養後、各トレーを10 mlのPBS(-)で洗浄した後、氷冷した10 mlの20 mM Tris-HCl(pH7.2)、1M NaClを各トレーに加え細胞を懸濁した。その後、この懸濁液を50 ml容量のテフロン(登録商標)・グラスホモジナイザーで10往復ホモジナイズし、細胞を破砕した。上記細胞破砕液を4℃、30分間、10,000×gで遠心分離し、不溶の膜画分を回収した。この膜画分に、100mlの20mM Tris-HCl (pH7.2)、1M NaClを加え、前述の方法で同様にホモジナイズし、膜画分を再懸濁させた。上記膜画分懸濁液を4℃、30分間、100,000×gで遠心分離し、不溶の膜画分を回収した。この操作をさらに2回繰り返した後、洗浄液を20mM Tris-HCl (pH7.2)に交換し、さらに3回膜画分の洗浄操作を繰り返した。最終的に得られた膜画分を、7.5 mlの20mM Tris-HCl (pH7.2)を加えて同様にホモジナイズして懸濁させ、0.5 ml ずつ分注して-80℃で保存した。酵素アッセイ時には、上記保存液を融解させ、超音波破砕機で30秒処理して、均一な懸濁液として酵素反応の基質に使用した。

b)Hek293細胞抽出液の調製
Hek293細胞をDMEM・FBS(+)中で継代培養し、15 cm細胞培養用シャーレ(Corning社製)(90%コンフルエント)20枚分から細胞を回収した。この細胞を3.2 LのDMEM・FBS(+)培地に懸濁し、500 cm2セルトレー1枚ににつき、80 mlを分注し、40枚を作製し、96時間培養後、細胞を回収及び洗浄した。こうして得られた細胞に、氷冷した400mlの20mM Tris-HCl (pH7.2)を加えた後、超音波破砕機で処理して細胞を破砕した(目盛7で30秒)。得られた抽出液を、4℃、30分間、100,000×gで遠心分離し、上清を回収した。この上清を、ConAアガロースカラム(カラム容量:内径0.5cm×長さ5.5cm、生化学工業製)に、毎分3 mlの速度で流してその非吸着画分を回収し、酵素抽出液として使用した。

c)プレセニリネース活性の測定
上記a)の基質5 μl、b)の酵素抽出液2 μl、0.5 M MES-NaOH(pH5.5)10 μlおよび水83 μlを混合し、37℃で30分間反応させた。反応後、100 μlの5% β-メルカプトエタノールを含んだSDSサンプルバッファー (BioRad社製)を添加し反応を停止した。こうして得られた反応液10 μl中に生成されたPS1 N末フラグメントを実施例3と同様にしてウエスタンブロッティングで解析した(図2)。
【0059】
その結果、得られた反応液中に活性型PS1のN末端フラグメントに相当する切断物が検出され、b)で調整した酵素抽出液が、293/PS1-ΔPSA19株の膜画分中の前駆体PS1から活性型のN末フラグメントに相当する切断物を生成するプレセニリネース活性を有する事が確認された。またその活性は、アスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤であるペプスタチンA(1 μg/ml)で阻害されたことから、プレセニリネースは、アスパラギン酸プロテアーゼに属するものと結論した。

<実施例4.プレセニリネース蛋白質の精製>
実施例3のb)で得られた酵素抽出液を、Redアガロースカラム(カラム容量:内径2.6 cm×長さ15 cm、ミリポア社製)に、毎分3 mlの速度で流し、蛋白質を吸着させ、その後、毎分3 mlの流速で、洗浄緩衝液(20 mM トリスヒドロキシアミノメタン;塩酸でpHを7.2に調製済み)にて60分間洗浄した。洗浄操作後、毎分3 mlの流速で、溶出用緩衝液(20 mM トリスヒドロキシアミノメタン、1.0 M 塩化ナトリウム、3 M尿素;塩酸でpHを7.2に調整済み)で、カラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出操作開始0分より、4分間隔で分画し、分画番号7から16番までを回収し、Redアガロースカラム画分とした。
【0060】
得られたRedアガロースカラム画分を、MES緩衝液A(20 mM MES;水酸化ナトリウムでpHを5.4に調整済み)で16時間透析した。透析したRedアガロースカラム画分を、4℃、15分間、10,000×gで遠心分離し、上清を回収した。得られた上清を、OrangeAカラム(カラム容量:内径1 cm×長さ15 cm、ミリポア社製)に、毎分1 mlの流速で流し、蛋白質を結合させた。その後、MES緩衝液Aにて、毎分1 mlの流速で、60分間洗浄した。洗浄操作後、以下の溶出操作を100分間行った。毎分1 mlの流速で、MES緩衝液AとMES緩衝液B(20 mM MES、0.3 M 塩化ナトリウム;水酸化ナトリウムでpHを5.4に調整済み)を組み合わせ、MES緩衝液Bの比率を100分間で0%から100%に到達する直線的濃度勾配を作製し、カラムに結合した蛋白質を溶出した。溶出操作開始0分より、12分間隔で分画し、分画番号10から11番までを回収し、OrangeAカラム画分とした。
【0061】
得られたRedアガロースカラム画分を、MES緩衝液A(20 mM MES;水酸化ナトリウムでpHを5.4に調整済み)で16時間透析した。得られたOrangeAカラム画分24 mlは、ResourceS(カラム容量:6ml、アマシャムファルマシア社製)に、毎分1 mlの流速で流し、蛋白質を結合させた。その後、MES緩衝液Aにて、毎分1 mlの流速で、60分間洗浄した。洗浄操作後、毎分1 mlの流速で、MES緩衝液AとMES緩衝液C(20 mM MES、0.4 M 塩化ナトリウム;水酸化ナトリウムでpHを5.4に調整済み)を組み合わせ、MES緩衝液Cの比率を60分間で0%から100%に到達する直線的濃度勾配を作製し、カラムに結合した蛋白質を溶出した。溶出操作開始0分より、5分間隔で分画し、分画番号10から11番までを回収し、ResourceSカラム画分とした。
【0062】
得られたResourceSカラム画分10 mlに、TritonX-100を終濃度0.1%となるように添加したのち、ペプスタチンアガロース(Pierce社製)50 μlを添加して4℃で3時間、穏やかに攪拌した。攪拌後、4℃、1分間、1,000×gで遠心分離し、上清とペプスタチンアガロースを分離した。図3aに示したように、ResourceSカラム画分中のプレセニリネース活性は、酵素抽出液中のプレセニリネース活性と同様にペプスタチン感受性であり、ペプスタチンアガロース処理によって消失することから、酵素抽出液中に含まれるプレセニリネースは、ペプスタチンアガロースカラムに吸着したと結論した。そこで、回収したペプスタチンアガロースに、0.5 mlのMES緩衝液D(20 mM MES、0.5M 塩化ナトリウム,0.1% TritonX-100;水酸化ナトリウムでpHを5.4に調整済み)を添加し、4℃で5分間、穏やかに攪拌した。攪拌後、4℃、1分間、1,000×gで遠心分離し、上清を捨てて、ペプスタチンアガロースを回収した。このペプスタチンアガロースの洗浄を合計5回繰り返した後、SDSサンプルバッファー(バイオラッド社製)0.1 mlを加えて、吸着した蛋白質を溶出した。このうち20μlを4-20%グラジエント-アクリルアミドゲル(第一化学)を用いて電気泳動後、ゲルをCBB染色した(図3b)。ペプスタチンアガロース溶出画分には、分子量約120kDの単一な蛋白質が存在した。以上の結果よりこの約120kDの蛋白質がプレセニリネース蛋白質であると結論した。

<実施例5.精製プレセニリネースのポリペプチドの部分配列の決定>
実施例4で得られたSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動上の約120kDaのプレセニリネースに相関するバンド(図3b)をゲルより切り出し、得られたゲル片に緩衝液1[組成:50%(容量/容量)アセトニトリル、50%(容量/容量)20 mM炭酸水素アンモニウム(pH 8.0)]を加え、ゲルを室温にて振とうしつつ10分間脱色した。溶液を交換し、さらに5分間脱色を行なった。脱色されたゲル片にアセトニトリルを添加し、室温にて1分間振とうし脱水した。アセトニトリルを交換し、さらに5分間脱水を行なった後、遠心エバポレター(東京理科機械(株)社製)にて完全に乾燥させた。回収された乾燥ゲル片に、50μlの1.5 mg/ml DTTを含む緩衝液2[20 mM 炭酸水素アンモニウム(pH 8.0)]を加え、50℃にて20分間振とうしゲル内の蛋白質を還元した。次いで、ゲル片に50μlの10 mg/mlのヨードアセトアミドを含む緩衝液2を加え、室温で遮光下20分間振とうしつつゲル内の蛋白質をアルキル化した。次いで、ゲル片を緩衝液2で室温にて5分間振とうしつつ洗浄した後、アセトニトリルを添加し、室温にて1分間振とうし脱水した。溶液を交換し、さらに5分間脱水を行なった後、遠心エバポレターにて完全に乾燥させた。乾燥ゲル片に20μlの10ng/μlのトリプシン(modified trypsin sequencing grade:プロメガ社製)を含む緩衝液2を加え、37℃にて一晩ゲル内蛋白質の消化反応を行なった。10%(容量/容量)トリフルオロ酢酸、90% 蒸留水を1μl加えて酸性とした後、反応上清に溶出された消化ペプチドを回収し、液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析装置に供した。
【0063】
液体クロマトグラフィーシステム(CapLC:ウォーターズ社製)を用い、スプリッターにより250 nl/minの流速で運用した。逆相樹脂(Develosil:野村化学製)を、エレクトロスプレーニードルに充填したものを、カラムとして用いた。質量分析装置としては、マイクロマス社製Q-Tof2を用いた。上記反応上清のうち5mlを、緩衝液3[組成:0.05% (容量/容量)ギ酸、99.95% 蒸留水]で予め平衡化した前記カラムに供与した。10mlの緩衝液3でカラムを洗浄した後、緩衝液3: 緩衝液4[(組成:0.05%(容量/容量)ギ酸、99.95%アセトニトリル)=100%:0%から緩衝液3:緩衝液4=40%:60%(容量/容量)まで直線的に変化するよう、流速250 nl/minにて60分間を要する濃度勾配を作成し、カラム吸着成分を溶出させ、タンデム質量分析装置に直接導入した。得られた質量スペクトルデータはデータベース検索ソフトウェア(Mascot:マトリックス・サイエンス社製)により解析した。データベースとして米国NCBIにより編集されたnr (Genbank)データベースを用いた。その結果、プレセニリネース活性と相関する図3上の約120 kDaのバンドで、前駆体イオンとしてモノアイソトピック質量がm/z = 416.75, 628.90および743.91のMS/MSスペクトル(図4参照)等が、共通のヒトの公知アミノ酸配列(Genbankアクセション番号BAA74852.1)にヒットした。それぞれのMS/MSスペクトルは、BAA74852.1の予想トリプシン消化断片に対し良好に帰属された(図4参照)。前駆体イオンとしてモノアイソトピック質量がm/z = 416.75のMS/MSスペクトルは配列表の配列番号8で示されるアミノ酸配列に(図4a:配列番号8)、m/z = 628.90のMS/MSスペクトルは配列表の配列番号9で示されるアミノ酸に(図4b:配列番号9)、m/z = 743.91のMS/MSスペクトルは配列表の配列番号10で示されるアミノ酸に(図4c:配列番号10)にそれぞれ対応していた。これらの結果より、得られたヒト配列はプレセニリネース活性を有するポリペプチドの全長または断片のアミノ酸配列であるものと推定された。この公知アミノ酸配列(Genbankアクセション番号BAA74852.1)は、転写調節因子あるいはユビキチン系調節因子として報告されているTIP120Aであった(Yogisawa S. et al.,Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996, 229, 612-617, Zheng J. et al. Molecular Cell. 2002, 10, 1519-1526)。以後本蛋白質をプレセニリネースAと称し、全長アミノ酸配列を配列番号11に示した。またTIP120AのアイソフォームとしてTIP120Bが知られており(Aoki T. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996, 261, 911-916)、このTIP120Bを以後プレセニリネースBと称し、全長アミノ酸配列を配列番号12に示した。

<実施例6.プレセニリネースA,B遺伝子のクローニング>
a)プレセニリネースA発現プラスミド(pRKSK/A)の構築
プレセニリネースA遺伝子特異的であり、ORFの全長を増幅するようにデザインした、プライマーA1(配列番号13)及びプライマーA2(配列番号14)を作成した。
5'- aatgaagtcgacgccaccatggcgagcgcctcgtaccacatttc-3' (プライマーA1:配列表の配列番号13)および
5'-aagtcagcggccgcctaactagtgtccattgattccaagttag-3' (プライマーA2:配列表の配列番号14)
Human testis cDNA (Clontech社製)1 ngを鋳型として上記プライマーA1及びA2(終濃度各0.2 μM)とKODポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用い、添付のプロトコールに従って以下のPCRを行った。サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社製))を使用して98℃で1分間加熱後、温度サイクル(98℃で15秒、64℃で5秒、74℃で240秒)を30回繰り返し、さらに74℃、10分加熱した後、4℃に冷却した。この反応物をPCR産物精製キット用いることによりDNA断片を精製した。
【0064】
次に、得られたDNA断片を制限酵素としてSalIとNotIを用い、ベクターとしてpRKKS(pRK5ベクター(Eaton, D. et al., Biochemistry,1986, 25,8343-8347)のマルチクロニングサイトの配列をpBluescriptKS(Stratagene)のマルチクローニングサイトの配列に置き換えたもの)を用いて、実施例1と同様の操作により、プレセニリネースA遺伝子ORF(配列番号15)を含むクローンpRKKS/Aを取得した。なお、目的のコロニーの選別には、コロニーから抽出したプラスミドを制限酵素SalIとNotIで切断処理し、約3.7 kbpの断片が生じることを指標とした。

b)プレセニリネースB発現プラスミドの構築
プレセニリネースB遺伝子特異的であり、ORFの全長を増幅するようにデザインした、プライマーB1(配列番号16)及びプライマーB2(配列番号17)を作成した。
5'- aatgaatctagagccaccatgagcaccgccgccttccacatc-3' (プライマー8:配列表の配列番号16)および
5'-ttacaagtcgacctagctgagctccattgagtctgtg-3' (プライマー9:配列表の配列番号17)
Human skeletal muscle cDNA (Clontech社製)1 ngを鋳型として上記プライマーB1及びB2(終濃度各0.2 μM)を用いて、実施例6−a)と同様の手法により、pRKSKベクターにプレセニリネースB遺伝子ORF(配列番号18)を含むクローンpRKSK/Bを取得した。なお、制限酵素としては、XbaI及びSalIを用いた。また、目的のコロニーを選択する際には、コロニーから抽出したプラスミドを制限酵素XbaIとSalIで切断処理し、約3.7 kbpの断片が生じることを指標とした。

<実施例7. shRNAによるプレセニリネースAの発現抑制と酵素活性の測定>
a)細胞内プレセニリネースA発現抑制用shRNA発現レンチウイルスの作製
shRNA発現レンチウイルスの作製は、BLOCK-iT Lentiviral RNAi Expression System(Invitrogen社製)を用いて行った。まず、下記のようなプレセニリネースA特異的に発現を抑制するための配列を有するオリゴヌクレオチドであるトッププライマー1(配列番号19)及びボトムプライマー1(配列番号20)を作製した。
5'- caccgcacagctcttactcataagccgaagcttatgagtaagagctgtgc-3' (トッププライマー1:配列表の配列番号19)および
5'-aaaagcacagctcttactcataagcttcggcttatgagtaagagctgtgc-3' (ボトムプライマー1:配列表の配列番号20)
上記二つのプライマーを用いてキットに添付のマニュアルに従い、pENTR/U6ベクター(キットに添付)に挿入し、pENTR/U6/A2360とした。この作製したコンストラクトとpLenti6/BLOCK-iT-DES(キットに添付)でキットに添付のマニュアルに従いLRクロナーゼ反応を行い、発現コンストラクト、pLenti6/BLOCK-iT-DEST/A2360を作製した。 このpLenti6/BLOCK-iT-DEST/A2360とパッケージングミックス(Invitrogen社製)とを、キットに添付のマニュアルに従い293FT細胞(Invitrogen社製)にトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後に、培養液を回収しレンチウイルス液とした。

b)プレセニリネースAをノックダウンしたHek293細胞、Hek293/2360-1株の作製
Hek293細胞を1×10cell/mlの細胞濃度で1 mlずつ12ウェルプレート(スミロン社製)に撒きDMEM・FBS(+)で16時間培養した。培養後、培地を取り除いた後に、ポリブレン(Sigma社製)を終濃度6 μg/mlの濃度で添加した上記レンチウイルス液1 mlを細胞に添加した。7時間後、レンチウイルス液を取り除き、DMEM・FBS(+)1 mlを添加して、24時間培養した。培養後、感染したHek293細胞を100倍に希釈して15 cmシャーレ(スミロン社製)に撒き、10 μg/mlのブラストサイジンS(Invitorgen社製)を培地に加えて、さらに2週間培養し、ブラストサイジンS耐性細胞のクローンを30個選択した。
得られた上記30個のシングルコロニー由来の細胞を24ウェルプレート(Corning社製)に分注し10 μg/mlブラストサイジンSを含んだDMEM・FBS(+)でコンフルエントの状態まで培養した。その後、培地を取り除き、細胞を100 μlの5%β-メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファー(BioRad社製)で溶解し、電気泳動用サンプルとした。この電気泳動用サンプル20 μlを、4-20%グラジエント-アクリルアミドゲル(第一化学社製)を用いて電気泳動後、PVDF膜にブロッティングし、一次抗体としてanti-Tip120A抗体(サンタクルーズ社製)、二次抗体としてHRP標識anti-goat IgG抗体を用いてECL試薬(Amersham Biosciences社製、RPN-2109)を用いてプレセニリネースAに相当するバンドを検出した。この結果、最もプレセニリネースAの発現が低い細胞株、Hek293/2360-1株では、プレセニリネースAの蛋白量がHek293細胞に比べ80%低下していた(図5a)。

c)Hek293細胞およびHek293/2360-1細胞株からのプレセニリネース画分の調製
Hek293細胞をDMEM・FBS(+)中で継代培養し、15 cm細胞培養用シャーレ(90%コンフルエント)10枚分を回収した後、800 mlのDMEM・FBS(+)培地に懸濁し、500 cm2セルトレー10枚に30 ml/枚で分注した。このセルトレーを96時間培養後、細胞を回収した。こうして得られた細胞に、氷冷した40 mlの20 mM Tris-HCl (pH7.2)を加えた後、超音波破砕機で処理して細胞を破砕した(目盛7で30秒)。得られた抽出液を、4℃、30分間、100,000×gで遠心分離し、上清を回収した。この上清を、ConAアガロースカラム(カラム容量:内径0.5 cm×長さ5.5 cm、生化学工業社製)とRedAアガロースカラム(カラム容量:内径1.2 cm×長さ10 cm、ミリポア社製)の二つのカラムを連結させ、毎分1 mlの速度で流した。その後、毎分3 mlの流速で、洗浄緩衝液(20mM トリスヒドロキシアミノメタン;塩酸でpHを7.2に調製済み)にて、連結した二つのカラムをそのまま60分間洗浄した。洗浄操作後、ConAアガロースカラムを取り外し、毎分1 mlの流速で、溶出用緩衝液(20 mM トリスヒドロキシアミノメタン、1.0 M 塩化ナトリウム、3 M尿素;塩酸でpHを7.2に調整済み)で、RedAアガロースカラムに結合した蛋白質を溶出した。溶出操作開始0分より、5分間隔で分画し、分画番号2から3番までを回収し、プレセニリネース画分とした。得られた画分を、20 mM トリスヒドロキシアミノメタン(塩酸でpHを7.2に調製済み)2 Lに対して、16時間透析後、蛋白量を1 mg/mlに調製した。
【0065】
Hek293/2360-1細胞からも同様の方法で、プレセニリネース画分を調製した。

d)Hek293細胞およびHek293/2360-1細胞から精製したプレセニリネース画分中の酵素活性の測定
実施例3−a)の基質5 μl、上記c)の酵素抽出液1 μl、0.5 M MES-NaOH(pH5.5)10 μlおよび水83 μlを混合し、37℃で30分間反応させた。反応後、100 μlの5%のβ-メルカプトエタノールを含んだSDSサンプルバッファー(BioRad社製)を添加し反応を停止した。こうして得られた反応液10 μl中に生成された活性型PS1のN末フラグメントを実施例3と同様にしてウエスタンブロッティングで解析した。
【0066】
その結果、図5bに示したように、Hek293/2360-1細胞から調整した酵素抽出液中では、Hek293細胞から調整した酵素液に比べて活性型PS1のN端フラグメントの生成が抑制されており、プレセニリネース活性が低下していた。

<実施例8.プレセニリネースA発現をshRNAで抑制した細胞内でのPS1,2の切断>
a)APH1α、NicastrinおよびPen2発現プラスミドの構築
活性型プレセニリンと会合してガンマセクレテースを構成する分子であるAPH1α、Nicastrin、及びPen2を高発現する細胞を取得することを目的として、以下の通り実験を行なった。
【0067】
APH1α cDNA(GeneBank:BCO17699)単離のためのPCRプライマーとして、プライマーAPH-1(配列番号21)及びプライマーAPH-2(配列番号22)を作製した。
5'- ttagctgcggccgccaccatgggggctgcggtgtttttcggctg-3' (プライマーAPH-1:配列表の配列番号21)および
5'-aagcttgcggccgcgtccaggtagtcagtccttac -3' (プライマーAPH-2:配列表の配列番号22)
Nicastrin cDNA(GeneBank:Q92542)単離のためのPCRプライマーとして、プライマーNic-1(配列番号23)及びプライマーNic-2(配列番号24)を作製した。
5'- aattaagcggccgccaccatggctacggcagggggtggctctgg -3' (プライマーNic-1:配列表の配列番号23)および
5'- ttaagtgcggccgcgtatgacacagctcctggctccc -3' (プライマーNic-2:配列表の配列番号24)
Pen2 cDNA(GeneBnak:NM 172341)単離のためのPCRプライマーとして、プライマーPen-1(配列番号25)及びプライマーPen-2(配列番号26)を作製した。
5'- ttagtagcggccgccaccatgaacctggagcgagtgtccaatgag-3' (プライマーPen-1:配列表の配列番号25)および
5'- aagcttgcggccgcgggggtgcccaggggtatggtg-3' (プライマーPen-2:配列表の配列番号26)
Human Brain cDNA (Clontech)1 ngを鋳型として上記三種類の組み合わせのプライマー(終濃度各0.2 μM)とKODポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用い、実施例1と同様の方法により、PCR(30回温度サイクルは、98℃で15秒、64℃で5秒、74℃で150秒の条件)及び、制限酵素処理(制限酵素としてはNotIを使用)を行なった。一方、pcDNA5mycHis(Invitrogen社製)とpRKSKを、同様にNotIで消化し、末端をウシ小腸アルカリホスファターゼ(TAKARA社製)を用いて脱リン酸化した後、反応産物精製キットを用いて精製した。これら酵素処理したDNA断片とベクターをそれぞれ、実施例1と同様にして、アガロースゲル電気泳動し、それぞれに対応するバンド(APH1α:0.7 kbp、Nicastrin:2.1 kbp、Pen2:0.3 kbp、pcDNA5mycHis:4.8 kbpおよびpRKSK:4.7 kbp)を切り出した。このゲル中に含まれるDNAを、抽出精製キットを用いて精製し、得られたDNA断片を基に、実施例1と同様の手法により、プラスミドDNApcDNA5mycHis/APH1α、pRKSK/Nicastrin、pRKSK/Pen2を取得した。なお、コロニーの選別には、制限酵素NotIで切断処理した際、それぞれ、APH1αでは0.7 kbp、Nicastrinでは2.1 kbp、Pen2では0.3 kbpの断片が生じることを指標とした。得られたプラスミドに挿入された、APH1α、Nicastrin及びPen2遺伝子のヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号27、28、29に示した。

b)APH1α、Nicastrin、Pen2を安定に発現するU2OS細胞、U2OS-11株の作成
次に、以下の通り、上記a)で得られたプラスミドを全て安定に高発現させる細胞を作製した。
【0068】
ヒト骨由来U2OS細胞を、10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc.)と一倍濃度ペニシリン・ストレプトマイシンを含むマッコイ5A培地(INVITROGEN社製:以下、「マッコイ・FBS(+)」とする)中でコンフルエントとなるまで培養し、細胞を回収し、新たに10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc.)と抗生物質を含まないマッコイ5A培地(INVITROGEN社製:以下、「マッコイ・FBS(-)」とする)を加え懸濁した。細胞数を調べ、細胞縣濁液(2.5 × 10 cell/ml)を調製し、12ウェルプレート(スミロン社製)に0.8 mlずつ分注した。このプレートを16時間培養した後、トランスフェクション試薬、Fugene6(Roche社製)を用い、添付のプロトコールにしたがってプラスミドpcDNA5mycHis/APH1αでトランスフェクションした。トランスフェクション後、24時間培養した後、細胞を洗浄し回収した。この細胞を20 mlのマッコイ・FBS(+)に懸濁し、それを原液の細胞濃度の10、100、1000および10000倍に希釈して10 cmシャーレ(Corning社製)に接種し、一週間200 μg/mlゼオシン(INVITROGEN社製)を含んだマッコイ・FBS(+)で培養した。これら希釈系列より、十分に分離している細胞のコロニー48個をピペットマンで吸引することにより分離した。
上記48個のシングルコロニー由来の細胞を24ウェルプレート(Corning社製)に分注し200 μg/mlゼオシンを含んだマッコイ・FBS(+)でコンフルエントの状態まで培養した。その後、培地を取り除き、細胞を100 μlの5% β-メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファー(BioRad社製)で溶解し、電気泳動用サンプルとした。この電気泳動用サンプルを10-20%グラジエント-アクリルアミドゲル(第一化学製)で電気泳動後、PVDF膜(ミリポア社製)にブロッティングし、一次抗体としてanti-myc抗体(INVITROGEN社製)、二次抗体としてHRP標識anti-mouse IgG抗体(Amersham Biosciences社製)を用いて、ECL試薬によりバンドを検出した。この方法により、もっともAPH1αを安定に高発現している細胞株を選択した。
【0069】
このAPH1α高発現U2OS細胞に、同様の方法でpRKSK/NicastrinとpPURO(Clonetech社製)の10:1の混合物でトランスフェクションし、0.3 μg/mlのpuromycin(Clontech社製)で生育してくるコロニーを選択した。上記と同様にして一次抗体としてanti-Nicastrin抗体(Zang YW. et al., J Biol Chem. 2005,280,17020-17026.)、二次抗体としてHRP標識anti-rabbit IgG抗体(Amersham Biosciences)を用いたウエスタンブロッティングによりAPH1α/Nicastrin高発現株を選択した。さらにこの細胞を、pRKSK/Pen2とpRSVneoの10:1の混合物でトランスフェクションし、250 μg/mlのG418(INVITROGEN社製)で生育してくるコロニーを選択した。上記と同様にして一次抗体としてanti-Pen2抗体(Zang YW. et al., J Biol Chem. 2005,280,17020-17026.)、二次抗体としてHRP標識anti-rabbit IgG抗体(Amersham Biosciences社製)を用いたウエスタンブロッティングにより、最終的にAPH1α、Nicastrin、Pen2を同時に高発現するU2OS細胞株、U2OS-11細胞を選択した。

c)shRNAによりプレセニリネースAの発現を抑制した細胞株、U2OS11-4株の作製
上述の通り作製したU2OS-11細胞を1×10cell/mlの細胞濃度で1 mlずつ12ウェルプレート(スミロン社製)に撒き、マッコイ・FBS(+)で16時間培養した。培養後、培地を取り除いた後に、実施例7-a)で作成したレンチウィルス液にポリブレンを終濃度6 μg/mlの濃度で添加した溶液1 mlを細胞に添加した。7時間後、ウイルス液を取り除き、マッコイ・FBS(+)1 mlを添加して、24時間培養した。培養後、感染したU2OS-11細胞を50 μg/mlゼオシン(INVITROGEN社製)、0.1 μg/ml puromycin(Clontech社製)および100 μg/ml G418(INVITROGEN社製)を含んだマッコイ・FBS(+)で100倍に希釈して15 cmシャーレに撒き、5 μg/mlのブラストサイジンS(INVITROGEN社製)を培地に加えて、さらに二週間培養し、ブラストサイジンS耐性細胞のクローンを100個選択した。各々を拡大培養し、実施例7で示した方法と同様にして、anti-TIP120A抗体(サンタクルーズ社製)を用いたウエスタンブロッティングによる解析で、最もプレセニリネースA発現量が低い細胞株、U2OS11-4株を得た。U2OS11-4株では、APH1α、Nicastrin、Pen2の発現量は、U2OS-11株での発現量と等しかったが、プレセニリネースAの発現量は1/10以下に抑制されていた(図6)。

d) U2OS-11株およびU2OS11-4株におけるプレセニリネース活性測定
U2OS-11細胞またはU2OS11-4細胞を、マッコイ・FBS(+)中で培養した細胞を回収し、マッコイ・FBS(-)に懸濁して1 × 10 cell/mlの細胞縣濁液を調製し、60 mmシャーレ(スミロン社製)に4 mlずつ分注した。この細胞を3時間培養した後、トランスフェクション試薬、Fugene6(Roche社製)を用い、添付のプロトコールにしたがって実施例1で作製したプラスミドpRKSK/PS1またはpRKSK/PS2でトランスフェクションした。24時間後、培地を取り除き、マッコイ・FBS(+)1mlを添加して、さらに24時間培養した。
【0070】
培養終了後、細胞をPBS(-)で洗浄した後回収し、プロテアーゼインヒビター(Roche社製)を含む20 mM トリスヒドロキシアミノメタン(塩酸でpHを7.2に調製済み)を加えた後、超音波破砕機で目盛10で10秒間細胞を破砕した。この細胞抽出液の蛋白濃度をプロテインアッセイキット(BioRad社製)で測定し、蛋白濃度をSDSサンプルバッファー(BioRad社製)で0.1 mg/mlに調製し電気泳動用サンプルとした。
【0071】
この様に調整した電気泳動用サンプル3μlを用いて、実施例2-b)と同様の方法でウエスタンブロッテイングを行い、U2OS-11株とU2OS11-4株とで、発現しているPS1、PS2の発現量を比較した。なお、PS2のウエスタンブロッテイングにおいて、一次抗体としてanti-PS2抗体(サンタクルーズ社製)を使用した。その結果、U2OS-11株では、PS1、PS2発現細胞でともに、前駆体PS1、PS2に加えて、活性型PS1、PS2に見られるN端フラグメントが生成していた。一方U2OS11-4株では、活性型PS1、PS2のN端フラグメントと前駆体PS1、PS2の両方の蛋白量が減少していた(図7)。このことから、プレセニリネースAは、PS1、PS2の活性化だけでなく、前駆体プレセニリンの安定化にも関与していることがわかった。

<実施例9.U2OS11-4株でのプレセニリネースA、B強制発現による、プレセニリン活性化能の回復>
a) shRNAで発現が抑制されない、プレセニリネースA発現プラスミドの作製
U2OS11-4株では、定常的なshRNAの発現によりプレセニリネースAの発現が抑制されており実施例6で作製した野生型のプレセニリネースAを発現させるプラスミドでトランスフェクトしても、その発現が抑制されてしまう。そこで、U2OS11-4株でプレセニリネースAを発現させるために、実施例7で作製したshRNAでは発現が抑制されないよう塩基配列を改変し、且つ、アミノ酸配列は野生型と変わらない発現プラスミドを作製した。すなわち、変異導入のためのPCRプライマーとして、プライマーA3(配列番号30)及びプライマーA4(配列番号31)を作製した。
5'- gtttactctcagagcacagcattgacacataagcagtcttattattc-3' (プライマーA3:配列番号30)
5'- gaataataagactgcttatgtgtcaatgctgtgctctgagagtaaac-3' (プライマーA4:配列番号31)
実施例6−a)で作製したpRKKS/A 10 ngを鋳型として上記プライマー(終濃度各0.2 μM)を用い、QuickChange site-directed mutagenesis kit(Stratagene社製)を用いて、添付のプロトコールに従ってPCRを行った。すなわち、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems社製))を使用して98℃で1分間加熱後、温度サイクル(98℃で1分、55℃で1分、65℃で17分)を12回繰り返した後、4℃に冷却した。この反応物をDpnI処理した後、大腸菌XL1Blueのコンピテント細胞(Stratagene社製)を形質転換し、アンピシリン耐性のコロニーを得た。
【0072】
いくつかのコロニーの培養菌体からプラスミドを抽出して、プラスミドDNAに挿入されているヌクレオチド配列を、DNAシークエンサー(Model 3700 (Applied Biosystems社製))を用いて解析した。その結果、shRNA設計に使用した配列部分に予定通りの変異が導入されているが、その他の配列には変異が導入されていないpRKKS/A2360mutを得た。

b) U2OS11-4株でのプレセニリネースA、B発現による、PS活性化能の回復
U2O11-4株をマッコイ・FBS(+)中でコンフルエントとなるまで培養し、細胞を回収し、新たにマッコイ・FBS(-)を加え懸濁した。細胞数を調べ、細胞縣濁液(2.5 × 10 cell/ml)を調製し、12ウェルプレート(スミロン社製)に0.8 mlずつ分注した。このプレートを16時間培養した後、トランスフェクション試薬、Fugene6(Roche社製)を用い、添付のプロトコールにしたがってプラスミドpRKKS/A2360mutあるいはpRKSK/BとpTKhyg(Clonetech社製)の10:1の混合物でトランスフェクションし、50 μg/mlのHygromycin(Clontech社製)で生育してくるコロニーを選択した。シングルコロニー由来の細胞を24ウェルプレート(Corning社製)に分注し50 μg/mlHygromycinを含んだマッコイ・FBS(+)でコンフルエントの状態まで培養した。その後、培地を取り除き、細胞を100 μlの5% β-メルカプトエタノールを含むSDSサンプルバッファー(BioRad社製)で溶解し、電気泳動用サンプルとした。この電気泳動用サンプルを10-20%グラジエント-アクリルアミドゲル(第一化学製)で電気泳動後、PVDF膜(ミリポア社製)にブロッティングし、一次抗体としてanti-TIPA抗体(サンタクルーズ社製)、二次抗体としてHRP標識anti-goat IgG抗体(サンタクルーズ社製)を用いて、ECL試薬によりバンドを検出した。この方法により、もっともプレセニリネースAあるいはBを安定に高発現している細胞株を選択し、それそれU2OS11-4/A(以下「11-4/A」ともいう)、U2OS11-4/B(以下、「11-4/B」ともいう)とした。それぞれの細胞でのプレセニリネースA、Bの発現のウエスタンブロッテイングによる解析結果を図8aに示す。これらの細胞では、APH1-α(α)、Nicastrin(N)およびPen2(P)の発現量は、USOS11株あるいはU2OS11-4株と同一であたった(図8b)。
【0073】
上記U2OS11-4、11-4/Aおよび11-4/B細胞を、マッコイ・FBS(+)中で培養し、細胞を洗浄、回収し、マッコイ・FBS(-)に懸濁して1 × 10 cell/mlの細胞縣濁液を調製し、60 mmシャーレ(スミロン社製)に4 mlずつ分注した。この細胞を3時間培養後、トランスフェクション試薬、Fugene6(Roche社製)を用い、添付のプロトコールにしたがってpRKSK/PS1るいはpRKSK/PS2によりトランスフェクションした。48時間後、おける前駆体プレセニリンの発現量及びプレセニリネース活性を実施例8−d)と同様の方法で検出した。結果を図8bに示す。 その結果、プレセニリネースの発現を抑制しているU2OS11-4株に比べて、プレセニリネースAを発現している11-4/A株、あるいはBを発現している11-4/B株では、前駆体プレセニリンおよび活性型プレセニリンに由来するN端フラグメントの発現が共に回復していた。
【0074】
このことより、shRNA発現により生じたプレセニリンの安定化とと活性化の抑制が、プレセニリネースAの抑制による特異的な現象であることが証明された。さらにPS1及びPS2両方の前駆体の発現及び活性化の抑制が、プレセニリネースA及びBのどちらの発現によっても回復したことから、プレセニリネースAとBのどちらも、PS1とPS2の両方の活性化能を有することがわかった。生体内ではPS1の発現パターンは、プレセニリネースAと、PS2の発現は、プレセニリネースBの発現パターンと一致していることから(Yogisawa S. et al.,Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996, 229, 612-617, Aoki T. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996, 261, 911-916)、生体内ではPS1の活性化・安定化には主にプレセニリネースAが、PS2の活性化・安定化にはプレセニリネースBが主に関与していると考えられる。

<実施例10.ペプチド基質を用いたプレセニリネース活性の測定>
a) 各種細胞に由来するプレセニリネース抽出液の調製
U2OS11、U2OS11-4、11-4/Aおよび11-4/B株をマッコイ・FBS(+)中で10cmシャーレ(スミロン社製)5枚でコンフルエントとなるまで培養した。2 mM EDTAを含むPBS(-)で細胞を回収したのち、10 mlのPBS(-)で遠心により2回洗浄した。こうして得られた細胞に、氷冷した1 mlのComplete EDTA free(Roche社製)をふくむ20 mM Tris-HCl (pH7.2)を加えた後、超音波破砕機で処理して細胞を破砕した(目盛7で30秒)。得られた抽出液を、4℃、30分間、100,000×gで遠心分離し、上清を回収した。この上清に、200μlのConAアガロース(50%スラリー)を加えて一時間攪拌したのち、4℃、3分間、500×gで遠心分離し、ConAアガロースと上清を分離した。このConA処理した上清を酵素抽出液として使用した。
【0075】

b)ペプチド基質を用いたプレセニリネース活性の測定
プレセニリネースの活性はPS1またはPS2のN末側から第6番目と7番目の膜貫通ドメインの間の、配列の一部を利用したペプチドの切断活性により測定することができる。すなわち、実施例3で示した、293/PS1-ΔPSA19株の膜画分のかわりに、PS1のCys263とLeu381の間の配列ペプチド、あるいはPS2のCys269とLeu362の間の配列ペプチドを用いて、実施例3と同様にして酵素反応を実施し、切断物をHPLC等で解析することができる。また、Nma/Dnpなどの消光性蛍光基質(Bickett M. et al, Anal. Biochem.1993, 212, 58)を用いて選択された配列の切断を簡便に測定することが可能である。このようなペプチド基質として、Nma−IYSSTMVWLVK(Dnp)rr-NH2を前記文献の記載に基づき合成した。
【0076】
上記プレセニリネース抽出液5 μl(蛋白量5 μgに相当する)と15 μlの0.5 M MES-NaOH (pH 5.5)、DMSOで0.1 mg/mlに調製したNma−IYSSTMVWLVK(Dnp)rr-NH2を1 μl、および水29 μlを混合し37℃で60分間反応させた。反応後、反応液中のEm460 nm/Ex355 nmをEnVison(パーキンエルマー社製)により測定し、その蛍光量から、プレセニリネースの切断活性を測定した(図9)。その結果、U2OS11-4株では、U2OS11株に比べると、上記ペプチドの切断活性が減少していたが、プレセニリネースAあるいはBを高発現させた、11-4/A株あるいは11-4/B株では、ペプチド切断活性がU2OS11株より高かった。
【0077】
例えば、11-4/A株あるいは11-4/B株由来の酵素抽出液を用い、前記反応液中に被験物質物質を加え、基質ペプチドの切断活性を披験物質の存在下と被存在下で比較することにより、該披験物質のプレセニリネース活性に対する作用を測定することができる。
【0078】
また、96ウェルプレート等のマルチウェルプレートを用い、反応液中に多様な被験物質を加えて、該プレセニリネース活性を測定し、その中からプレセニリネース活性を低下させる物質を選別することにより、プレセニリネース活性阻害剤をスクリーニングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】293/PS1-ΔPSA19株で発現するPS1のウエスタンブロッテイングによる解析。レーン1:pIREShyg/PS1により安定にPS1を高発現させた通常のHek293細胞株、レーン2:293/PS1-ΔPSA19株に発現しているPS1。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。通常の細胞では、PS1高発現により、前駆体のPS1(F)とプレセニリネースによって切断活性化され生じたN端フラグメント(N)の発現がみられるが、293/PS1-ΔPSA19株では前駆体のみが蓄積しており、PS1の活性化能が消失していた。
【図2】Hek293細胞抽出液中のプレセニリネース活性のウェスタンブロッティングによる同定。レーン1:基質のみ、レーン2:基質と酵素液、レーン3:ペプスタチンA(1μg/ml)存在下で基質と酵素液。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。
【図3】Hek293細胞抽出液からのプレセニリネースの精製。 a) ResourceSカラム活性画分のプレセニリネース活性測定、レーン1:基質のみ、レーン2:ResourceSカラム活性画分3μlと基質、レーン3: ResourceSカラム活性画分をペプスタチンアガロース処理し、その非吸着画分3μlと基質。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。b) ペプスタチンアガロースから溶出した精製プレセニリネースのSDS−PAGEにより解析。約120kDaの蛋白質がペプスタチンアガロースに吸着し、溶出された。
【図4a】精製プレセニリネーストリプシン消化物(モノアイソトピック質量m/z=416.75の前駆体イオン)の質量分析による部分アミノ酸配列の解析。
【図4b】精製プレセニリネーストリプシン消化物(モノアイソトピック質量m/z=628.90の前駆体イオン)の質量分析による部分アミノ酸配列の解析。
【図4c】精製プレセニリネーストリプシン消化物(モノアイソトピック質量m/z=743.91の前駆体イオン)の質量分析による部分アミノ酸配列の解析。
【図5】shRNAによりプレセニリネース発現を抑制したHek293細胞の作成と、そのプレセニリネース活性の低下。 a) Hek293細胞とHek293/2360-1株での、プレセニリネースA発現量のウエスタンブロッティングによる比較。レーン1:Hek293細胞、レーン2:Hek293/2360-1株。b) 各細胞株から調整した部分精製プレセニリネースを用いたPS1切断活性の測定。レーン1:基質のみ、レーン2:Hek293細胞、レーン3:Hek293/2360-1株。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。
【図6】U2OS11株とU2OS11-4株での、APH1α、Nicastrin、Pen2およびプレセニリネースAの発現量の比較。レーン1:U2OS11株、レーン2:U2OS11-4株。α:APH1α、N:Nicastrin、P:Pen2、A:プレセニリネースA。
【図7】各種細胞株にプレセニリンを発現させた時の、プレセニリネース活性の比較。a)プレセニリンとしてPS1を発現させた。b)プレセニリンとしてPS2を発現させた。レーン11:U2OS11株、レーン11-4:USOS11-4株。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。
【図8】U2OS11-4株でのプレセニリネースA、B発現による、PS活性化能の回復。a)各種細胞株でのプレセニリネースの発現。 b) 各種細胞株での各種蛋白質の発現。α:APH1α、N:Nicastrin、P:Pen2 c)各種細胞株にPS1またはPS2を発現させた時のプレセニリネース活性の比較。F:前駆体PS1に相当するバンド、活性型PS1のN端フラグメントに相当するバンド。レーン11:U2OS11株、レーン11-4:U2OS11-4株、レーンA:11-4/A株、レーンB:11-4/B株。
【図9】各種細胞株より抽出したプレセニリネースによる消光性蛍光ペプチド(Nma−IYSSTMVWLVK(Dnp)rr-NH2)の切断活性。11:U2OS11株、11-4:U2OS11-4株、A:11-4/A株、B:11-4/B株。ΔEm460は、酵素液存在下でのEm460と基質のみを反応液中でインキュベーションしたときのEm460との差をあらわす。
【配列表フリーテキスト】
【0080】
配列番号1:ヒトPS1プライマー1
配列番号2:ヒトPS1プライマー2
配列番号4:ヒトPS1プライマー3
配列番号5:ヒトPS2プライマー1
配列番号6:ヒトPS2プライマー2
配列番号8:精製プレセニリネースの部分アミノ酸配列
配列番号9:精製プレセニリネースの部分アミノ酸配列
配列番号10:精製プレセニリネースの部分アミノ酸配列
配列番号13:プライマーA1
配列番号14:プライマーA2
配列番号16:プライマーB1
配列番号17:プライマーB2
配列番号19:トッププライマー1
配列番号20:ボトムプライマー1
配列番号21:プライマーAPH-1
配列番号22:プライマーAPH-2
配列番号23:プライマーNic-1
配列番号24:プライマーNic-2
配列番号25:プライマーPen-1
配列番号26:プライマーPen-2
配列番号30:プライマーA3
配列番号31:プライマーA4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなる、被験物質のアルツハイマー病治療又は予防効果を測定する方法、
(I)被験物質の存在下または非存在下で下記のA1乃至B4から選択されるいずれかのポリペプチド及び下記のS1乃至S6から選択されるいずれかの基質ポリペプチドを接触させる工程、
(II)該基質ポリペプチドの切断により生じた基質断片の産生量を測定し、被験物質の存在下及び非存在下における該産生量を比較する工程。
[A1]配列表配列番号15に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド、
[A2]配列表配列番号15に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[A3]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[A4]配列表配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[B1]配列表配列番号18に記載の塩基配列からなるDNAにコードされるポリペプチド、
[B2]配列表配列番号18に記載の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされ、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
[B3]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[B4]配列表配列番号12に記載のアミノ酸配列において、1つ又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は、付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、プレセニリネース活性を有するポリペプチド、
(基質ポリペプチド)
[S1]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド、
[S2]配列表の配列番号32の263番目のアミノ酸乃至381番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド、
[S3]配列番号32に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[S4]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸を含むことからなる基質ポリペプチド、
[S5]配列表の配列番号33の269番目のアミノ酸乃至362番目のアミノ酸からなる基質ポリペプチド、
[S6]配列表の配列番号33に記載のアミノ酸配列からなる基質ポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドが、A1乃至A4から選択されるいずれかのポリペプチドであり、且つ、基質ポリペプチドがS1乃至S3から選択されるいずれか1つの基質ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチドが、B1乃至B4から選択されるいずれかのポリペプチドであり、且つ、基質ポリペプチドがS4乃至S6から選択されるいずれか1つの基質ポリペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下記の工程(i)乃至(iii)を含むことからなる、被験物質のアルツハイマー病治療効果を測定する方法、
(i)被験物質の存在下又は非存在下において、配列表の配列番号15又は配列番号18に記載のヌクレオチド配列を含むことからなるポリヌクレオチドを保持する細胞を一定時間培養する工程、
ii)該細胞における該ポリヌクレオチドの転写量又は該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドの翻訳量を測定する工程。
(iii)被験物質の存在下及び非存在下において前記翻訳量又は転写量を比較する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−74940(P2007−74940A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264658(P2005−264658)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】