説明

プレート型振動締固め機及びこのプレート型振動締固め機を用いる締固め方法

【課題】締固め対象箇所を効率良く高密度に締固めることが可能なプレート型振動締固め機及びこのプレート型振動締固め機を用いた締固め方法を提供する。
【解決手段】プレート型振動締固め機1は、エンジン又は電動機等である駆動源2と、この駆動源2の回転によって振動を発生させる起振装置3と、機体本体の下方の締固め対象箇所を締固めるためのプレート4と、プレート4と起振装置3とを結合して起振装置3による振動をプレート4に伝達するための伝達手段5とを備える。プレート4は、締固め対象箇所側の表面4aに凹凸部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイト粒状体の締固めや転圧・整形等に用いられるプレート型振動締固め機及び締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、路盤の土・砕石の締固めやアスファルト舗装面の転圧・整形等において、プレート型振動締固め機が用いられている。このプレート型振動締固め機は、例えば、特許文献1に示すように、駆動源としてガソリンエンジンを搭載し、この駆動源の回転によって起振装置の偏心荷重を高速回転することにより振動を発生させ、この振動をプレートを介して路面等に伝達して、締固めや転圧等を行うものである。
【特許文献1】特開2003−138515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のプレート型振動締固め機のプレート表面は平坦で滑らかなので、締固め対象箇所に転圧力を効率良く伝達できずに長時間にわたって締固め作業を行わなければならず、作業効率が悪いという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、締固め対象箇所を効率良く高密度に締固めることが可能なプレート型振動締固め機及びこのプレート型振動締固め機を用いた締固め方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明のプレート型振動締固め機は、振動を発生させるための起振装置を搭載し、この起振装置による振動をプレートを介して締固め対象箇所に伝達して締固めを行うプレート型振動締固め機であって、前記プレートの締固め対象箇所側の表面に凹凸部を備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0006】
本発明のプレート型振動締固め機によれば、プレートの締固め対象箇所側の表面に凹凸部を備えるので、締固め対象箇所に撒き出されている砕石等に振動を損失無く伝えることができ、効率良く締固めることができる。したがって、短時間で締固め対象箇所を高密度に締固めることができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記凹凸部は、前記プレートの表面に研磨材を接着剤で固着することにより形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明のプレート型振動締固め機によれば、凹凸部は、プレートに研磨材を接着剤で固着するだけなので、短時間で容易に凹凸部をプレートの表面に取り付けることができる。
【0009】
第3の発明の路面等を締固める方法は、振動を発生させるための起振装置と、表面に凹凸部を有し、前記起振装置による振動を締固め対象箇所に伝達するプレートとを備えたプレート型振動締固め機を用いて当該締固め対象箇所を締固める締固め方法において、前記プレートの前記凹凸部を有する面で前記締固め対象箇所に撒き出されているベントナイト粒状体を締固めることを特徴とする。
【0010】
本発明のプレート型振動締固め方法によれば、プレートの締固め対象箇所側の表面に設けられた凹凸部で締固め対象箇所に撒き出されているベントナイト粒状体を締固めるので、効率良く高密度に締固めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレート型振動締固め機及びこのプレート型振動締固め機を用いた締固め方法によれば、短時間で締固め対象箇所を高密度に締固めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプレート型振動締固め機1の概略側面図であり、図2は、図1のA矢視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、プレート型振動締固め機1は、エンジン又は電動機等である駆動源2と、この駆動源2の回転によって振動を発生させる起振装置3と、機体本体の下方の締固め対象箇所を締固めるためのプレート4と、プレート4と起振装置3とを結合して起振装置3による振動をプレート4に伝達するための伝達手段5とを備える。
【0014】
起振装置3は、駆動源2の回転によって偏心荷重を高速回転させることにより振動を発生させる。
【0015】
プレート4は、締固め対象箇所側の表面4aに凹凸部を備えている。この凹凸部は、例えば、接着剤が塗布された表面4aに炭化珪素や溶融アルミナ等の研磨材4bを吹き付けることにより形成される。本実施形態においては、研磨材4bの粒度分布は、JIS:R6252に規定されている研磨紙の40番程度になるように形成した。また、接着剤は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の合成樹脂接着剤を用いた。
【0016】
伝達手段5は、起振装置3の支持台14と、この支持台14とプレート4との間に挟持される台座15とから構成されている。
【0017】
上述したプレート型振動締固め機1のプレート4を締固め対象箇所に撒き出されているベントナイト粒状体9に押しあてた状態で起振装置3を振動させてベントナイト粒状体9を締固める。ベントナイト粒状体9は、ベントナイト鉱石を破砕して粒径を10mm以下に揃えたものを用いた。プレート4の表面4aは、凹凸状なので、ベントナイト粒状体9に接する面積が増大して起振装置3の振動を効率良くベントナイト粒状体9に伝達することができ、ベントナイト粒状体9を短時間で締固めることができる。
【0018】
次に、プレート4の表面4aに研磨材4bを設けた効果について検証した結果を示す。
【0019】
プレート4の表面4aに研磨材4bを設けた場合を模擬した紙やすり7aをプレート4に貼り付けた紙やすりプレート7(詳細は後述する)の締固め性能を、プレート4の表面4aに何も設けない平滑プレート8(詳細は後述する)及びプレート4の表面4aに材質及び形状の異なる材料を設けたゴム板プレート6(詳細は後述する)の締固め性能と比較した。
【0020】
図3〜図5は、締固め性能を比較するための比較試験用に作製した試験用プレートで、それぞれ平滑な表面4aの平滑プレート8、表面部がゴム板6bのゴム板プレート6、表面部が紙やすり7aの紙やすりプレート7を示す図である。
【0021】
図3に示すように、平滑プレート8は、プレート4を円盤状にしたものであり、平滑な表面4aを有する。この平滑プレート8を振動締固め機に連結した。
【0022】
図4に示すように、ゴム板プレート6は、プレート4の表面4aに木材6aを貼り付け、さらに、その上にゴム板6bを貼り付けたものである。そして、このゴム板プレート6を振動締固め機に連結した。
【0023】
図5に示すように、紙やすりプレート7は、プレート4の表面4aに紙やすり7aを貼り付けたものである。紙やすり7aは、粒度分布が研磨材4bと同じ40番のものを用いた。そして、紙やすりプレート7を振動締固め機に連結した。
【0024】
図6は、ベントナイト粒状体9を内部に入れた試験用土槽10を示す図である。
図6に示すように、試験用土槽10内にベントナイト粒状体9を入れる。本実施形態においては、含水比21%のベントナイト粒状体9を7Kg入れた。
【0025】
平滑プレート8、ゴム板プレート6及び紙やすりプレート7をそれぞれ用いて試験用土槽10内のベントナイト粒状体9を締固めるとともに、ベントナイト粒状体9の層の厚さを測定した。具体的には、まず、各プレート6、7、8でそれぞれ締固め作業を1分間行ったら一旦停止し、そのときのベントナイト粒状体9の層の厚さを測定した。そして、再び、締固め作業を1分間行って層の厚さを測定するという一連の作業を繰り返し行い、層の厚さの変化がなくなった時点で締固めを終了した。
【0026】
次に、平滑プレート8、ゴム板プレート6及び紙やすりプレート7で、試験用土槽10内のベントナイト粒状体9をそれぞれ締固めた結果について説明する。
【0027】
図7は、平滑プレート8、ゴム板プレート6及び紙やすりプレート7で締固めを行った時間とベントナイト粒状体9の層の厚さとの関係を示す図である。
【0028】
図7に示すように、紙やすりプレート7を用いた場合は、締固める前の層の厚さは11.50mmで、締固めを1分間行うと7.70mmとなった。また、ゴム板プレート6を用いた場合は、締固める前の層の厚さが11.00mmで、締固めを1分間行うと8.25mmとなった。そして、平滑プレート8を用いた場合は、締固める前の層の厚さが10.50mmで、締固めを1分間行うと7.90mmとなった。これらの結果より、紙やすりプレート7を用いた場合は、ゴム板プレート6及び平滑プレート8を用いた場合よりもベントナイト粒状体9を効率良く締固めていることがわかる。
【0029】
また、ゴム板プレート6及び平滑プレート8を用いた場合の層の厚さは9分後及び10分後の値がほぼ同じになったので、10分以降の締固め作業を終了した。そして、紙やすりプレート7を用いた場合の層の厚さは14分後及び15分後の値がほぼ同じになったので、15分以降の締固め作業を終了した。
【0030】
次に、平滑プレート8、ゴム板プレート6及び紙やすりプレート7で締固めた各時間におけるベントナイト粒状体9の湿潤密度を算出した。各時間におけるベントナイト粒状体9の湿潤密度ρは(1)式となる。
ρ=m/V より
=m/π・r・h ・・・(1)式
ここで、湿潤密度:ρ、ベントナイト粒状体9の重量:m、ベントナイト粒状体9の体積:V、試験用土槽10の半径:r、試験用土槽10内におけるベントナイト粒状体9の層厚:hである。
【0031】
図8は、平滑プレート8、ゴム板プレート6及び紙やすりプレート7で締固めた時間と(1)式より算出された湿潤密度との関係を示す図である。
【0032】
図8に示すように、紙やすりプレート7を用いた場合は、締固める前の湿潤密度が0.850g/cmで、締固めを1分間行うと1.280g/cmとなった。また、ゴム板プレート6を用いた場合は、締固める前の湿潤密度が0.900g/cmで、締固めを1分間行うと1.190g/cmとなった。そして、平滑プレート8を用いた場合は、締固める前の湿潤密度が0.950g/cmで、締固めを1分間行うと1.240g/cmとなった。これらの結果より、紙やすりプレート7を用いた場合は、ゴム板プレート6及び平滑プレート8を用いた場合よりもベントナイト粒状体9を高密度に締固めている。
【0033】
上述したように、本実施形態のプレート型振動締固め機1によれば、プレート4の表面4aに研磨材4bからなる凹凸部を備えるので、ベントナイト粒状体9を効率良く短時間でベントナイト粒状体9を高密度に締固めることができる。
【0034】
さらに、研磨材4bの取り付けは、プレート4の表面4aに接着剤を塗布した後に吹き付けるだけなので、短時間で容易に行うことができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、研磨材4bをプレート4の表面4aに吹き付けて凹凸部を形成する場合について示したが、これに限定されるものではなく、耐久性及び耐水性を有する研磨布をプレート4の表面4aに接着剤で固着してもよく、このときの研磨布は、例えば、上述した研磨材4bと同程度の粒度分布を示す研磨布の40番(JIS:R6251)のものを用いる。
【0036】
また、本実施形態においては、研磨材4bの粒度分布がJIS:R6252に規定の研磨紙の40番程度になるように形成したが、この粒度分布に限定されるものではなく、ベントナイト粒状体9等の締固め対象材の粒径に応じて適宜決定される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るプレート型振動締固め機の概略側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】締固め性能を比較するための比較試験用に作製した試験用プレートで、平滑な表面の平滑プレートを示す図である。
【図4】締固め性能を比較するための比較試験用に作製した試験用プレートで、表面にゴム板を貼り付けたゴム板プレートを示す図である。
【図5】締固め性能を比較するための比較試験用に作製した試験用プレートで、表面に紙やすりを貼り付けた紙やすりプレートを示す図である。
【図6】ベントナイト粒状体を内部に入れた試験用土槽を示す図である。
【図7】平滑プレート、ゴム板プレート、及び紙やすりプレートで締固めを行った時間とベントナイト粒状体の層の厚さとの関係を示す図である。
【図8】平滑プレート、ゴム板プレート、及び紙やすりプレートで締固めた時間と(1)式より算出された湿潤密度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 プレート型振動締固め機
2 駆動源
3 起振装置
4 プレート
4a 表面
4b 研磨材
5 伝達手段
6 ゴム板プレート
6a 木材
6b ゴム板
7 紙やすりプレート
7a 紙やすり
8 平滑プレート
9 ベントナイト粒状体
10 試験用土槽
14 支持台
15 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を発生させるための起振装置を搭載し、この起振装置による振動をプレートを介して締固め対象箇所に伝達して締固めを行うプレート型振動締固め機であって、
前記プレートの締固め対象箇所側の表面に凹凸部を備えることを特徴とするプレート型振動締固め機。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記プレートの表面に研磨材を接着剤で固着することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のプレート型振動締固め機。
【請求項3】
振動を発生させるための起振装置と、表面に凹凸部を有し、前記起振装置による振動を締固め対象箇所に伝達するプレートとを備えたプレート型振動締固め機を用いて当該締固め対象箇所を締固める締固め方法において、
前記プレートの前記凹凸部を有する面で前記締固め対象箇所に撒き出されているベントナイト粒状体を締固めることを特徴とする締固め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−133064(P2009−133064A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307775(P2007−307775)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】