説明

プロジェクタおよび画像投射システム

【課題】 複数台のプロジェクタの投射画面を重ねて表示した場合でも、OSDの視認性を損なわないことを可能にしたプロジェクタを提供すること。
【解決手段】 本発明におけるプロジェクタは、他のプロジェクタと通信可能な通信手段を備え、オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)を表示するOSD表示手段を備え、他のプロジェクタのOSD情報を、前記通信手段を介して取得する他機OSD情報取得手段を備え、前記他機OSD情報取得手段により取得された他機OSD情報により、他機がOSD表示状態にあると判断された場合、前記他機OSD情報におけるOSD表示範囲にあたる自機の画像輝度を下げる手段を備えたことを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関し、特に複数台の投射画像を重ねて投射するプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数台のプロジェクタの投射映像を重ね合わせて、投射画面の輝度を上げる方法が用いられている。しかしながら、このような投射状態において、何れかのプロジェクタでメニュー画面を表示すると、他のプロジェクタの投射映像と重なり、メニューの視認性が低下してしまうという問題があった。
【0003】
例えば、特許文献1では複数台のプロジェクタの投射画面を重ね合わせ、投射画像の輝度を上げる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-107639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、メニュー画面等のオン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)を表示する際に、他のプロジェクタの投射画像と重なり、OSDの視認性が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数台のプロジェクタの投射画面を重ねて表示した場合でも、OSDの視認性を損なわないことを可能にしたプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明におけるプロジェクタは、
他のプロジェクタと通信可能な通信手段と、
オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)を表示するOSD表示手段と、
他のプロジェクタのOSD情報を、前記通信手段を介して取得する他機OSD情報取得手段と、を備え、
前記他機OSD情報取得手段により取得された他機OSD情報により、他機がOSD表示状態にあると判断された場合、
前記他機OSD情報におけるOSD表示範囲にあたる自機の画像輝度を下げる手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数台のプロジェクタの投射画面を重ねて表示した場合でも、OSDの視認性を損なわないプロジェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の一形態にかかるプロジェクタの構成
【図2】本発明の実施の一形態にかかる複数プロジェクタによる投射画像重畳の概略
【図3】自機OSD情報送信の手順を示すフローチャートならびに、OSD情報パケットの構成
【図4】他機OSD表示領域に相当する自機画像の輝度を低減させる処理手順
【図5】複数プロジェクタのOSD表示位置制御の概念
【図6】複数プロジェクタのOSD表示可能領域排他制御の概念
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
[実施例1]
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施例におけるプロジェクタの構成について説明する。
【0012】
本発明におけるプロジェクタ100は、入力信号処理部101、他のプロジェクタと通信することが可能な通信部103、他機OSD情報取得部104、自機OSD情報送信部106、OSD制御部105を備える。
【0013】
画像処理部102では入力信号処理部101からの画像信号および、OSD制御部からのOSD情報または、所定領域輝度低減指示を受け、これらを合成した画像情報を画像表示素子駆動部107へ送信する。
【0014】
光源部108で出力された光は、画像表示素子駆動部107によって駆動された画像表示素子109によって変調され、投射レンズ110を介して外界へと投射される。
【0015】
[実施例2]
以下、図2を参照して、本発明の第2の実施例による、プロジェクタの画像制御の概略を説明する。
【0016】
図2において、(A)は、プロジェクタ201とプロジェクタ202の投射画像を重ねて重畳画像204を形成する時の概念を示している。
【0017】
プロジェクタ201とプロジェクタ202は通信手段203で接続され、相互に通信可能である。尚、通信手段203としては、物理的なケーブルによるものでも良いし、無線による通信であっても良い。
【0018】
ここで、何れか一方のプロジェクタにおいて、メニュー画面表示操作を行うと、操作が行われたプロジェクタは、(B)のようにメニュー画面が投射画像に重畳された画像を投射する。メニュー画面表示操作が行われなかったプロジェクタは、通信手段203を介して、他方のプロジェクタがメニュー表示状態にあることを知ると、(C)のように他機のメニュー画面表示領域に相当する領域の画像輝度を低減する。
【0019】
(B)と(C)の投射画像が重畳されると、205に示すように一方のプロジェクタで投射したメニュー画面の視認性が他方のプロジェクタの投射画像重畳によって損なわれるのを防ぐことができる。
【0020】
[実施例3]
以下、図3を参照して、本発明の第3の実施例による、プロジェクタの通信制御の概略を説明する。
【0021】
図3(A)は自機OSDの表示状態変化に応じて、通信手段で接続された他機に対し、OSD情報を送信する手順を示すフローチャートである。
【0022】
S301は自機OSD状態変化判断ステップであり、自機のOSD表示状態が変化したか否かを判断する。OSD表示状態の変化としては、表示・非表示状態の切り替え、表示位置の変更、OSDサイズの異なる画面を表示する等が考えられる。
【0023】
ステップS301において、自機OSD表示状態が検出された場合、ステップS302において、自機OSD情報を他機に向けて送信する。
【0024】
他機へ送信するOSD情報パケットの一例を図3(B)に示す。Packet Headerは、パケットがOSD表示情報であることを示すIDを含む。OSD Display StatusはOSD表示・非表示状態を示す情報であり、例えば0の場合、OSDは非表示、1の場合はOSD表示中とすることができる。
【0025】
OSD Area Left, OSD Area Top, OSD Area Right, OSD Area Bottomはそれぞれ、OSD表示領域の左、上、右、下を示す座標情報が格納される。OSD Display StatusがOSD非表示を示す場合、OSD Area Left, OSD Area Top, OSD Area Right, OSD Area Bottomはどのような値が入っていてもかまわないが、ゼロを格納しておくことが好ましい。
【0026】
[実施例4]
以下、図4を参照して、本発明の第4の実施例による、プロジェクタの所定領域輝度低減手順の概略を説明する。
【0027】
図4は通信手段から受信される、他機のOSD表示情報に基づいて、自機表示画像の所定領域の輝度を低減する手順を示すフローチャートである。
【0028】
S401は他機OSD情報取得判断部であり、新たに他機OSD情報パケットが受信されているか否かを判断し、OSD情報パケットが受信済みである場合は、他機OSD表示状態判断ステップS402へと遷移する。S402において、他機OSD情報パケットを解析し、OSDが表示状態である場合、パケット内のOSD座標情報を元に、他機OSD表示領域に相当する自機の画像領域の輝度を低減する処理を行う(S404)。一方、S402において、他機がOSD表示状態でないと判断された場合、それまで画像輝度を低減させていた所定領域の画像輝度を通常状態に復帰させる(S403)。
【0029】
[実施例5]
以下、図5を参照して、本発明の第5の実施例による、重畳投射を行う複数のプロジェクタにおけるOSD表示位置制御の概略を説明する。
【0030】
図5(A)は、OSD表示位置制御を行う前の、複数のプロジェクタのOSD表示位置を示している。501は所定のプロジェクタのOSD表示位置、502は別のプロジェクタのOSD表示位置を示している。
【0031】
これらのプロジェクタの投射画面を重畳して表示すると、503で示した部分において、双方のOSDが重なって表示されてしまう。
【0032】
このような問題を回避する為に、自機のOSDを表示する際に、通信手段によって取得される他機OSD情報により、他機がOSD表示状態にあると判断された場合、他機OSD表示位置と自機OSD表示位置とが重なる部分503が小さくなるように、自機OSD表示位置を移動する。画面端まで移動しても、双方のOSD表示領域の重なる部分がなくならない場合、他機に対し、移動後の自機OSD情報を送信する。
【0033】
OSD情報を受け取った他機は、OSD表示位置の重なり合う部分503が小さくなるように、OSD表示位置を移動する。
【0034】
このようにして、図5(B)に示すように複数のプロジェクタのOSDがそれぞれ重なりあわないように制御することができる。
【0035】
[実施例6]
以下、図6を参照して、本発明の第6の実施例による、OSD表示可能領域が重ならないように制御する画像表示システムについて説明する。
【0036】
図6(A)は、OSD表示可能領域が設定されていない状態での、プロジェクタにおけるOSD表示箇所を示している。OSDは画面上の左上や中央、右下等、任意の位置に表示される。
【0037】
代表的なOSD表示位置として、左上に表示されるOSD A、中央に表示されるOSD B、右下に表示されるOSD Cが表示されている。
【0038】
図6(B)は、OSD表示可能領域を画面の右半分に限定した場合のOSD表示位置を示している。601は、設定されたOSD表示可能領域である。
【0039】
OSD A, OSD B, OSD C はそれぞれ、OSD表示可能領域601内での、左上、中央、右下の位置に表示される。
【0040】
複数のプロジェクタが相互に通信可能である場合、自機において、OSD表示可能領域601が設定されると、他機のOSD表示可能領域を、自機のOSD表示可能領域と重ならないように制御する。
【0041】
このような制御を行うことによって、複数のプロジェクタで画像を重畳して投射したときに、相互にOSD領域が重ならないシステムを提供することが可能になる。
【0042】
また、本実施例では、OSD表示可能領域が、それぞれのプロジェクタで異なるため、投射画面に表示されているOSDがどちらのプロジェクタから出力されたものかを判断することができるという利点もある。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
101 入力信号処理部、102 画像処理部、 103 通信部、104 他機OSD情報取得部、105 OSD制御部、106 自機OSD情報送信部、107 画像表示素子駆動部、108 光源部、109 画像表示素子、110 投射レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のプロジェクタと通信可能な通信手段と、
オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)を表示するOSD表示手段と、
他のプロジェクタのOSD情報を、前記通信手段を介して取得する他機OSD情報取得手段と、を備え、
前記他機OSD情報取得手段により取得された他機OSD情報により、他機がOSD表示状態にあると判断された場合、
前記他機OSD情報におけるOSD表示範囲にあたる自機の画像輝度を下げる手段を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
他のプロジェクタと通信可能な通信手段と、
オン・スクリーン・ディスプレイ(OSD)を表示するOSD表示手段と、を備え、
自機のOSDが表示状態にある場合に、前記通信手段を介して、自機OSD表示範囲に当たる領域の画像輝度を下げるように他機に指示する手段を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
複数のプロジェクタから構成され、投射画像を重ねて表示する画像投射システムであって、
複数のプロジェクタが同時にOSDを表示する場合、
それぞれのOSD表示領域が重ならないように制御する手段を備えたことを特徴とする画像投射システム。
【請求項4】
複数のプロジェクタから構成され、投射画像を重ねて表示する画像投射システムであって、
プロジェクタ毎にOSDを表示可能な領域を指定するOSD表示可能領域指定手段を備え、
前記OSD表示可能領域指定手段は、それぞれのプロジェクタのOSD表示可能領域が重ならないように制御することを特徴とする画像投射システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109180(P2013−109180A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254589(P2011−254589)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】