説明

プローブ、測定装置、および、回路基板

【課題】高周波信号を正確に測定すること。
【解決手段】測定対象から信号を取得し、接続ケーブルを介して測定装置に供給するプローブ10において、測定対象と接続ケーブルの間に設けられたLC直列共振回路(導体板12)を有し、かつ、測定対象のグランド配線と、接続ケーブルの外側導体とを接続するための接地機構を有し、当該LC直列共振回路の共振周波数は、測定対象となる信号の周波数とは異なる周波数であって、信号の周波数におけるLC直列共振回路のインピーダンスと測定装置の入力インピーダンスとの比が、当該プローブの所望の減衰比と等しくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ、測定装置、および、回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プローブを用いて信号線を伝播する信号を測定する場合、プローブ自体が有するインピーダンス(信号線と測定装置の間のインピーダンス)の周波数特性の乱れによって、測定信号の周波数特性が影響を受けてしてしまい、正確な測定ができない場合がある。また、プローブを接続することで、プローブ自体が有するインピーダンスと測定装置の入力インピーダンスとが信号線の入出力間に新たに付加されるため、測定対象のインピーダンスが変化するので、正確な測定ができない場合がある。
【0003】
前者の影響を防ぐ方法として、例えば、特許文献1では、プローブピンと測定器の配線とを帯状の配線によって接続し、インピーダンスが過大になることを防ぐことで、インピーダンスの影響を低減する技術が開示されている。
【0004】
後者の影響を防ぐ方法として、比較的抵抗値が大きいチップ抵抗をプローブピンに直列接続し、測定対象のインピーダンスの変化を低減することで、測定対象に与える影響を少なくする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−258454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前者の技術では、信号線を伝播する信号の一部分を取り出して計測する用途には対応していないという問題点がある。
【0007】
また、後者の技術では、チップ抵抗自体のインピーダンスが高周波帯域において変化するため、正確な測定ができなくなるという問題点がある。詳細に説明すると、チップ抵抗自体の抵抗値およびインダクタンス値は周波数によって変動する。図11はチップ抵抗の抵抗値の周波数による変動を示している。この図に示すように、チップ抵抗の抵抗値は周波数によって大きく変動する。このため、このようなチップ抵抗を用いたプローブの減衰率は、図12に示すように、理想的なチップ抵抗、つまり周波数に依らず抵抗値が一定である場合にはYで示すように直線であるが、実際にはXで示すように周波数に応じて大きく変動してしまう。
【0008】
このため、図13(A)の上側に示す信号を、20dBの電力減衰率を有し、特性がフラットな(理想的な)プローブを用いて測定した場合、図13(A)の下側のような測定結果を得る。一方、図11に示す特性を有するチップ抵抗を用いて20dBの電力減衰率のプローブを構成し、図13(A)の上側に示す信号を測定した場合、チップ抵抗を接続することによって信号自体が影響を受けて波形が変化してしまうため、信号波形が図13(B)の上側の図のように変化し、このため、測定波形も図13(B)の下側のようになる。つまり、正確な測定ができなくなるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、高周波信号を正確に測定することを可能とするプローブ、測定装置、および、回路基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、測定対象から信号を取得し、接続ケーブルを介して測定装置に供給するプローブにおいて、前記測定対象と前記接続ケーブルの間に設けられたLC直列共振回路を有し、かつ、前記測定対象のグランド配線と、前記接続ケーブルの外側導体とを接続するための接地機構を有し、当該LC直列共振回路の共振周波数は、測定対象となる信号の周波数とは異なる周波数であって、前記信号の周波数における前記LC直列共振回路のインピーダンスと前記測定装置の入力インピーダンスとの比が、当該プローブの所望の減衰比と等しくなるように設定されていることを特徴とする。
このような構成によれば、高周波信号を正確に測定することが可能となる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記LC直列共振回路のC成分は、前記信号が伝播される信号線と対向する位置に配置された導体板と、前記信号線と前記導体板との間に配置された誘電体ブロックと、を有していることを特徴とする。
このような構成によれば、適切な誘電体を選択することで、高周波信号を正確に測定することができる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記LC直列共振回路のL成分は、前記導体板に一端が接続され、他端が前記接続ケーブルの中心導体に接続されたマイクロストリップラインを有していることを特徴とする。
このような構成によれば、簡潔な構造によって、精度良くL成分を構成することができる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記LC直列共振回路は、Q値を調整するための抵抗成分を有していることを特徴とする。
このような構成によれば、Q値を調整し、インピーダンス特性の信号周波数付近の傾きを緩やかにすることで、精度良く測定を行うことができる。
【0014】
また、他の発明は、上記プローブを備えることを特徴とする測定装置である。
このような構成によれば、高周波信号を正確に測定することが可能となる。
【0015】
また、他の発明は、上記プローブの測定対象となる回路基板であって、測定を行う際に前記接地機構が接触されるグランド構造を有することを特徴とする回路基板である。
このような構成によれば、高周波信号を正確に測定することが可能となる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記グランド構造は、測定対象となる信号線の近傍に配置されたグランドパッドであることを特徴とする。
このような構成によれば、高周波信号を正確に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高周波信号を正確に測定することが可能なプローブおよび測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るプローブの構成例を示す図である。
【図2】図1に示すプローブの等価回路を示す図である。
【図3】図1に示すプローブのインピーダンスの周波数特性である。
【図4】図1に示すプローブのインピーダンスのスミスチャートである。
【図5】図1に示す基板のport1からport2への線路損失の周波数特性である。
【図6】プローブを当てた場合の基板のport1からport2への線路損失の周波数特性である。
【図7】図1に示す基板のport1からport3への線路損失の周波数特性である。
【図8】プローブの測定対象となる基板の一例である。
【図9】図8に示す基板の回路構成を示す図である。
【図10】グランドパッドの他の構成を示す図である。
【図11】チップ抵抗の抵抗値とインピーダンス値の周波数特性である。
【図12】チップ抵抗を用いたプローブの減衰率の周波数特性である。
【図13】理想的なプローブと、チップ抵抗を用いたプローブによって信号を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るプローブの構成例を示す図である。この図において、プローブ10は、誘電体ブロック11、導体板12,13、および、グランドピン14を有し、プローブ10と図示しない測定装置とを接続する接続ケーブル20の先端に設けられている。
【0021】
ここで、誘電体ブロック11は、厚さDのブロック形状を有する、例えば、テフロン(登録商標)またはABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)系樹脂等によって構成される。誘電体ブロック11の上面11aには、導体板12および導体板13が設けられている。また、誘電体ブロック11の下面11bは、測定時には測定対象となる信号線に接触される。導体板12は、凸状形状を有する、例えば、銅箔によって構成される。ここで、導体板12の大きい方の矩形を主板12aとし、小さい方の矩形を副板12bと呼ぶ。主板12aは面積Sを有し、後述するように信号線との間でキャパシタを形成する。副板12bは長さLを有し、後述するように前述のキャパシタと直列接続されたインダクタとして機能する。
【0022】
導体板13には、接続ケーブル20の外側導体22が接続されるとともに、導体板13には4つのグランドピン14が電気的に接続されている。グランドピン14は、導体板13に一端が接続され、他端が誘電体ブロック11の下面11bから所定の長さだけ突出している。なお、グランドピン14のそれぞれは、図示しないバネ機構によって図の下方向に付勢されており、誘電体ブロック11が測定対象である基板30上に配置された場合には、グランドパッド33,34に押圧され、グランドパッド33,34との電気的な接続が図られる。これにより、接続ケーブル20の外側導体22と基板30のグランドとが電気的に接続される。
【0023】
接続ケーブル20は、外側被覆21、外側導体22、内側被覆23、および、中心導体24を有しており、図示しない他端は測定装置の入力端に接続される。ここで、外側被覆21および内側被覆23は、絶縁性の樹脂によって構成されている。外側導体22および中心導体24は、例えば、導電性の高い銅等によって構成される。図1の例では、接続ケーブル20の一端は、外側被覆21が除外され、外側導体22が導体板13に接触されて固定されている。また、中心導体24は、副板12bに電気的に接触されて固定されている。
【0024】
基板30は、測定対象となる基板である。この例では、基板30は、誘電体板31、信号線32、グランドパッド33,34、および、グランド層35を有している。誘電体板31は、例えば、エポキシ樹脂、セラミックス等によって構成されている。誘電体板31の上面31aには信号線32、グランドパッド33,34が構成され、下面31bにはグランド層35が形成されている。信号線32は、例えば、銅によって構成され、測定対象となる信号が伝播される。グランドパッド33,34は、信号線32を挟んだ両側に配置され、プローブ10が信号線32上に配置された場合に、4つのグランドピン14が当接する位置に配置される。また、グランドパッド33,34は、基板30の裏面に配置されているグランド層35に対して、例えば、ビアホール(Via Hole)等を介して電気的に接続されている。
【0025】
図2は、図1に示すプローブ10の等価回路を示す図である。図1に示すプローブ10では、面積Sの主板12aが信号線32と誘電体ブロック11を挟んで対向配置されることから、これらによって図2に示すキャパシタ40が構成される。また、長さLの副板12bによって図2に示すインダクタ41が構成される。すなわち、図1に示す導体板12によって、キャパシタ40およびインダクタ41からなるLC直列共振回路が構成される。
【0026】
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本実施形態の動作について説明する。なお、以下では、図1に示す回路の信号線32の特性インピーダンスは50Ωであり、信号の周波数は30GHzであり、プローブの減衰率は電圧比で1:10であり、測定装置の入力抵抗は50Ωであるとして説明する。
【0027】
測定装置の入力抵抗が50Ωである場合に、電圧比1:10の減衰率を得るためには、プローブ10のインピーダンスは450Ωである必要がある。すなわち、直列接続されたプローブ10のインピーダンスと測定装置の入力抵抗が信号線32に対して接続されるので、入力抵抗に印加される電圧が信号線32の電圧の1/10であるためには、プローブ10のインピーダンスは450Ω(50/(450+50)=1/10)である必要がある。
【0028】
図1に示す実施形態のインピーダンスを450Ωに設定する場合、主板12aの面積Sを調整するとともに、副板12bの長さLを調整することによって、図2に示す等価回路のキャパシタとインダクタによって構成されるLC直列共振回路の共振周波数を調整する。そして、図3に示すように、測定対象となる信号の周波数である30GHzにおいて、LC直列共振回路のインピーダンスが450Ωになるように設定する。なお、図3の横軸は周波数を示し、縦軸はLC直列共振回路のインピーダンスを示す。図3の例では、LC直列共振回路の共振周波数は4GHz付近とれさている。すなわち、共振周波数(4GHz)と信号周波数(30GHz)は異なっている。
【0029】
なお、LC直列共振回路のインピーダンスZは以下の式(1)によって求めることができるので、信号周波数、減衰率、および、測定装置の入力インピーダンスから、キャパシタとインダクタの値を計算することができる。具体的には、信号周波数が30GHzで、目的とするインピーダンスが450Ωの場合、L=2.4nHおよびC=1pFを得る。
【0030】

・・・(1)
【0031】
図4は、LC直列共振回路のスミスチャートである。この例では、周波数0〜4GHzの範囲ではLC直列共振回路は容量性となるので図に実線で示す軌跡の下半分を時計方向に移動し、周波数4〜40GHzの範囲では誘導性となるので図に実線で示す軌跡の上半分を時計方向に移動する。
【0032】
以上のように設定されたプローブ10を用いて、図1に示す基板30を測定する場合について説明する。図5はプローブ10を接続しない場合における線路損失とリターンロスを示している。具体的には、図1に示す基板30の左端をport1とし、右端をport2とした場合に、図中四角い点で示すグラフ(S12)がport1からport2への線路損失を示し、丸い点で示すグラフ(S11)がリターンロスを示している。
【0033】
図6は、図1に示す基板30にプローブ10を接触させた場合の図5と同様の状態における測定結果を示している。図6と図5の比較から、10GHz以下の特性は、プローブ10を接触させる前と後で特性が異なっているが、信号周波数である30GHz付近では接触の前後で特性が殆ど変化していない。すなわち、プローブ10を当てることにより、測定対象は影響を殆ど受けない。
【0034】
図7は、プローブ10の出力端をport3とした場合において、port1からport3への電力の減衰量の周波数特性を示している。この例では、信号周波数である30GHz付近では、電力の減衰率が−20dBとなっており、目的値である電圧における減衰率1:10となっていることが分かる。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態によれば、プローブ10にLC共振回路を設け、その共振周波数を信号周波数とは異なる値に設定するとともに、信号周波数においてLC共振回路のインピーダンスが減衰率に応じた所定の値になるようにしたので、例えば、チップ抵抗を使用した場合のように周波数特性が乱れて精度よい測定ができなくなることを防止できる。すなわち、インダクタおよびキャパシタは、高い周波数帯域での素子値が抵抗の場合に比較すると安定しているので、このような素子を使用することにより、安定かつ精度良い測定を可能とすることができる。
【0036】
つぎに、実際の基板を用いて測定する場合について説明する。図8は、測定対象となる基板の一例である。図8の基板130では、誘電体板131の左右(図の左右方向)の両端には入力端子140および出力端子141が設けられている。入力端子140から入力された信号は、信号線132を介して増幅器142に入力され、そこで、所定の利得で増幅された後、信号線132を介して出力され、フィルタ143に入力される。フィルタ143では、入力した信号に対してフィルタリング処理を施した後、信号線132を介して出力する。フィルタ143から出力された信号は、出力端子141を介して後段の装置に供給される。
【0037】
図9は、図8に示す基板130の詳細な回路図である。この図に示すように、入力端子140から入力される信号は、図の左下に示すように、所定の帯域幅と振幅を有している。このような信号が増幅器142に供給されると、そこで増幅され、図の中央下に示すように振幅が大きくなって出力される。フィルタ143は、増幅器142から出力された信号の帯域幅を狭くするような帯域特性を有しており、フィルタ143を通過した後の信号は、図の右下に示すように、帯域幅が狭くなる。なお、図8,9に示す回路の信号線132の特性インピーダンスは50Ωであり、信号の周波数は30GHzであり、プローブの減衰率は電圧比で1:10であり、測定装置の入力インピーダンスは50Ωであるとして以下説明する。図中破線で囲まれているインピーダンス素子および抵抗素子はプローブ10のインピーダンスと、測定装置の入力インピーダンスを示している。
【0038】
このような基板130に対して、従来のチップ抵抗を有するプローブを用いて増幅器142から出力される信号を測定する場合、図11に示すチップ抵抗のインピーダンス特性により、図13(B)に示すように、測定結果が実際の信号波形から大きく乖離してしまう。一方、図1に示す本実施形態のプローブ10を用いて測定した場合、図3に示すようにプローブ10のLC直列共振回路のインピーダンスは、信号周波数である30GHz付近では多少の値の傾きは存在するものの、図12に示すような大きな変動はない。このため、本実施形態のプローブ10によって測定される波形は、図13(A)に示す波形に限りなく近い波形となる。このため、従来のプローブに比較すると、本実施形態のプローブ10によれば、測定対象を擾乱することなく、また、精度良く測定することが可能になる。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態のプローブ10によれば、LC共振回路を用いて測定を行うようにしたので、抵抗素子に比較して素子値の安定性が高いキャパシタおよびインダクタを用いることで、対象に影響を与えたり、測定した信号に影響を与えたりすることなく、測定を行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、LC直列共振回路を構成するキャパシタおよびインダクタを、誘電体ブロック11と導体板12を用いて構成するようにした。このため、例えば、誘電体ブロック11の材質を調整したり、導体板12の形状を調整したりすることにより、測定信号の周波数帯域における素子値の安定性を高め、これによって、測定精度を高めることが可能になる。
【0041】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、誘電体ブロック11と導体板13等を用いてインダクタとキャパシタを構成するようにしたが、例えば、コンデンサ素子や、コイル素子を用いてLC直列共振回路を構成するようにしてもよい。なお、コンデンサ素子およびコイル素子として、チップコンデンサおよびチップコイルを用いた場合、チップ抵抗とは異なり、これらの素子は高周波特性を予め考慮して素子が構成されているので、チップ抵抗の場合のように特性が乱れることが少なく、安定したインピーダンスを得ることができる。なお、コンデンサ素子およびコイル素子のいずれか一方のみを採用し、他方を図1の構成としてもよい。
【0042】
また、以上の実施形態では、LC共振回路のQ値については言及していないが、Q値が極端に高い場合(例えば、数百以上の場合)には、図3に示す曲線の傾きが非常に急峻となってしまうことから、キャパシタまたはインダクタの素子値の微妙なずれによって共振周波数が変化し、LC共振回路のインピーダンスが目的値からずれてしまう場合が想定される。このため、Q値についてはある程度小さい値(例えば、10前後から100程度の範囲の値)になることが望ましい。そこで、誘電体ブロック11として、tanδが大きい値を取る誘電体(損失が大きい誘電体)を用いたり、あるいは、抵抗素子を接続してLCR直列共振回路とするようにしたりしてもよい。なお、抵抗素子としては高周波特性が良好な素子を使用することが望ましい。また、抵抗素子を設ける位置としては、例えば、中心導体24と副板12bの間に設けたり、主板12aと副板12bとを分割し、これらの間に設けたりすることができる。
【0043】
また、以上の実施形態では、測定対象となる回路の特性インピーダンスが50Ωの場合であって、減衰率が1:10の場合を例に挙げて説明したが、これ以外の場合であっても本発明を適用可能であることはいうまでもない。例えば、特性インピーダンスが100Ωの場合には減衰率に応じてLC共振回路のインピーダンスを設定すればよい。また、減衰率が、例えば、1:100の場合も同様である。
【0044】
また、以上の実施形態では、図1に示すようにプローブ10はむき出しの状態としたが、周囲に存在する導体等の影響を受けることが想定されるので、例えば、プローブ10を図示しないシールドケース等に収容するようにしてもよい。
【0045】
また、以上の実施形態では、プローブ10と基板30との位置決め機構については言及していないが、これらの位置関係によってはキャパシタの素子値が変化することが考えられるので、これらに対して位置決め機構を設けるようにしてもよい。具体的には、グランドパッド33,34に対して4つのグランドピン14が挿入される4つの凹部を設け、これら4つの凹部と4つのグランドピン14とが係合することにより、位置決めがなされるようにしてもよい。そのような構成によれば、素子値を安定化することにより、より正確に測定を行うとこができる。
【0046】
また、以上の実施形態では、測定対象基板の信号線、グランドパッド133,134が、図10(A)に示される形状の場合を例に挙げて説明したが、例えば、図10(B)に示されるような、特定の周波数でショートと見なせる、ラディアルスタブを用いたものでも良い。その際グランドパッドについては、測定対象が、インピーダンス変化によって発振等の不具合を起こさないように適宜形状を定める。
【0047】
また、以上の実施形態では、共振周波数を測定対象となる信号の周波数とは異なる周波数としているが、測定対象がインピーダンス変化によって発振等の不具合を起こさないようにプローブ10、信号線132、または、グランドパッド133,134の形状を適宜定めることが望ましい。
【0048】
また、以上の実施形態では、LC共振回路を用いた数値の設計を説明したが、λ/4線路を用いたカプラの手法を用いて各部品の寸法を決めても良い。
【0049】
なお、以上の実施形態では、測定装置については言及していないが、プローブ10の接続ケーブル20が接続される測定装置としては、例えば、スペクトラムアナライザやオシロスコープ等がある。もちろん、これ以外の測定装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 プローブ
11 誘電体ブロック
12 導体板(LC共振回路)
12a 主板(C成分)
12b 副板(L成分)
13 導体板
14 グランドピン(接地機構)
20 接続ケーブル
22 外側導体
24 中心導体
30 基板
32 信号線
33,34 グランドパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から信号を取得し、接続ケーブルを介して測定装置に供給するプローブにおいて、
前記測定対象と前記接続ケーブルの間に設けられたLC直列共振回路を有し、かつ、前記測定対象のグランド配線と、前記接続ケーブルの外側導体とを接続するための接地機構を有し、
当該LC直列共振回路の共振周波数は、測定対象となる信号の周波数とは異なる周波数であって、前記信号の周波数における前記LC直列共振回路のインピーダンスと前記測定装置の入力インピーダンスとの比が、当該プローブの所望の減衰比と等しくなるように設定されていることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記LC直列共振回路のC成分は、前記信号が伝播される信号線と対向する位置に配置された導体板と、前記信号線と前記導体板との間に配置された誘電体ブロックと、を有していることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記LC直列共振回路のL成分は、前記導体板に一端が接続され、他端が前記接続ケーブルの中心導体に接続されたマイクロストリップラインを有していることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記LC直列共振回路は、Q値を調整するための抵抗成分を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項を有するプローブを備えることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載するプローブの測定対象となる回路基板であって、測定を行う際に前記接地機構が接触されるグランド構造を有することを特徴とする回路基板。
【請求項7】
前記グランド構造は、測定対象となる信号線の近傍に配置されたグランドパッドであることを特徴とする請求項6に記載の回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−208019(P2012−208019A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74054(P2011−74054)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】