説明

ペットフード

【課題】 歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫であっても、食べ易いペットフードを提供する。
【解決手段】原材料を膨化することにより製造されるセミモイストタイプのペットフードであって、ペットフードの製品水分率が13〜23重量%、膨化の膨張率が200〜350%である。また、ペットフードの原材料は、食肉類が10〜35重量%、澱粉類が30〜70重量%、植物性蛋白質が0〜30重量%、柔軟剤が3〜15重量%、発泡助剤が1〜6重量%の含有率により配合され、この原材料を二軸エクストルーダ1に供給して加熱・加圧しながら混合・搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出すことにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードに関し、詳しくは、原材料を膨化することにより製造されるセミモイストタイプのペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライタイプのペットフード(例えば、製品水分率が10重量%以下のもの)は硬く、犬や猫などのペットにとって、食べ難いものである。特に、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫にあっては、ドライタイプのペットフードを噛み砕くのは困難で、そのまま食べるのが難しい。
【0003】
このため、ドライタイプのペットフードであっても、容易に噛み砕くことができるように、発泡体で形成したペットフードが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
特許文献1記載のペットフードは、原材料をエクストルーダ(押出成形機)から押し出して、膨化が終わった後に原材料の切断を行うことにより、切断面の硬化を防いで、噛み砕きやすくなるようになされたものである。
【0005】
一方、特許文献2記載のペットフードは、特定の原材料を特定の割合で用い、低含水率で低密度の発泡体に成形することにより、サクっとして噛み砕き易くしたものである。
【特許文献1】特開2002−238469号公報
【特許文献2】特開2003−274868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2記載のペットフードは、いずれもドライタイプであるために、依然として硬く、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫にとっては食べ難いものである。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫であっても、食べ易いペットフードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原材料を膨化することにより製造されるセミモイストタイプのペットフードであって、前記ペットフードの製品水分率が13〜23重量%、膨化の膨張率が200〜350%であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、柔らかく、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫であっても食べ易いペットフードを提供することができる。
【0010】
ペットフードの製品水分率が13重量%未満であれば、硬くて食べ難いペットフードとなる。一方、製品水分率が23重量%を超える場合は、ペットフードの保存中に、ペットフードが互いに付着したり、保存袋に付着してしまい、商品価値のないペットフードとなってしまう。したがって、ペットフードの製品水分率は、13〜23重量%、好ましくは、15〜20重量%である。
【0011】
また、膨張率が200%未満では、空気含有量が少なくてペットフードの柔らかさを確保することができない。また、膨張率が350%を超える場合は、原材料が押し出された直後は膨張しているが、時間の経過とともに収縮してしまい、所望の大きさのペットフードを提供することができない。したがって、膨張率は、200〜350%、好ましくは、225%〜325%である。
【0012】
なお、ここで、膨張率とは、原材料を押し出す押出機の出口ノズル直径に対するペットフードの胴直径の比率をいう。
【0013】
本発明は、前記ペットフードの原材料は、食肉類が10〜35重量%、澱粉類が30〜70重量%、植物性蛋白質が0〜30重量%、柔軟剤が3〜15重量%、発泡助剤が1〜6重量%の含有率により配合されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、嗜好性が高くて犬や猫の食いつきが良く、柔らかくて食べ切り易く、安定して好適に膨化形成されるペットフードを提供することができる。
【0015】
食肉類が10重量%未満では犬や猫の食いつきが悪く、35重量%を超えると原材料調合後の水分値が高くなり、押出機に安定した原材料を供給することができない。したがって、配合割合は、10〜35重量%、好ましくは、15〜30重量%である。
【0016】
食肉としては、鶏肉、鶏ササミ、牛肉、ラム肉、豚肉、馬肉、チーズが挙げられ、好ましくは、鶏肉、鶏ササミ、牛肉、チーズである。
【0017】
また、澱粉類は、膨化する過程で発生する気泡を受け止め、安定した膨化形成を可能とする効果を奏し、配合割合は、30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%である。
【0018】
なお、本発明に係る膨化したペットフードを製造するためには、生肉など澱粉類以外の原材料を使用するため、澱粉類の配合割合の上限は70重量%である。
【0019】
澱粉類としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦粉、米粉、もち米粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉が挙げられ、好ましくは、コーンスターチ又は/及び小麦粉である。
【0020】
さらに、植物性蛋白質は、澱粉類で形成されている膨化の網目構造に入り込み、澱粉類のみで製造した場合と比して、ペットフードを食べ切り易い性状にする効果を奏し、配合割合は、0〜30重量%、好ましくは5〜25重量%である。
【0021】
植物性蛋白質としては、大豆蛋白質、小麦蛋白質が挙げられる。
【0022】
さらにまた、柔軟剤は、膨化形成された澱粉の網目構造に入り込み、ペットフードを柔らかくして食べ易くする効果を奏し、例えば、油脂又は/及びグリセリンが用いられる。
【0023】
柔軟剤が、3重量%未満では、ペットフードを所望の柔らかさにすることができず硬くなり、15重量%を超えると油脂・グリセリンの消泡作用により澱粉の膨化形成が妨げられるので、配合割合は、3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%である。
【0024】
なお、油脂としては、ラード、ヘッド、植物油脂が挙げられる。
【0025】
また、発泡助剤としては、小さな気泡を含んでいる多孔質の物質であって、食品に適しているものであればよく、例えば、卵殻カルシウム、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0026】
本発明は、前記ペットフードは、原材料を二軸エクストルーダに供給して加熱・加圧しながら混合・搬送し、二軸エクストルーダから押し出すことにより製造されることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、原材料の混合、搬送等の工程を加熱・加圧しながら連続的に行うことができるので、比較的短時間でクッキング、殺菌を行うことができる。
【0028】
上記の場合において、二軸エクストルーダから押し出される原材料の温度を、90〜160℃、押し出し圧力を2〜8MPaとしてもよい。
【0029】
また、前記二軸エクストルーダから押し出された直後に原材料を切断すると、切断後に膨化して、丸みを帯びた粒状体に形成される。
【0030】
本発明は、前記ペットフードが、球状、繭状、カール状、ドーナツ状のいずれかの形状に成形されていることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、種々の形状のペットフードを製造することができるので、犬や猫の嗜好に合わせたペットフードを提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るペットフードによれば、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫であっても、容易に食べることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0034】
使用する原材料は、以下のとおりに配合され、ササミ味に調整されている。
(1)鶏肉 10.0重量%
(2)鶏ササミ 15.0重量%
(3)コーンスターチ 40.0重量%
(4)小麦粉 15.0重量%
(5)大豆蛋白質 10.0重量%
(6)グリセリン 3.0重量%
(7)ラード 4.0重量%
(8)卵殻カルシウム 3.0重量%
(9)色素 微量
この原材料を図1に示す二軸エクストルーダ1に供給して、加熱・加圧しながら連続的に混合、搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断する。
【0035】
なお、二軸エクストルーダ1に原材料を供給する際、水は添加しない。
【0036】
このように、原材料は、加圧・加熱処理を経て、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断されるので、切断後に膨化し、丸みを帯びた粒子状(本実施例では、繭形状)に成形される。
【0037】
なお、ペットフードの形状は、二軸エクストルーダ1のノズル2形状の相違により、球状(図2(a)参照)、繭状(図2(b)参照)、カール状(図2(c)参照)、ドーナツ状(図2(d)参照)に成形される。
【0038】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を135℃、出口圧力を2.8Mpaとして実施した。
【0039】
この結果、ペットフードの胴径は10mmとなり、膨張率は250%、製品水分値は19重量%であった。
【0040】
このペットフードは、所望の柔らかさが確保されて良好な状態であり、歯の弱った高齢犬5匹に食べさせたところ、5匹とも好んで食べた。
【実施例2】
【0041】
本実施例は、上記した第1実施例と、原材料が異なるものであって、製造工程は同様であるため、異なる部分のみ説明し、同じ部分については説明を省略する。
【0042】
使用する原材料は、以下のとおりに配合され、ビーフ味に調整されている。
(1)鶏肉 10.0重量%
(2)牛肉 15.0重量%
(3)コーンスターチ 40.0重量%
(4)小麦粉 15.0重量%
(5)大豆蛋白質 10.0重量%
(6)グリセリン 3.0重量%
(7)ラード 4.0重量%
(8)卵殻カルシウム 3.0重量%
(9)色素 微量
この原材料を二軸エクストルーダ1に供給して、加熱・加圧しながら連続的に混合、搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断する。
【0043】
なお、エクストルーダ1に原材料を供給する際、水は添加しない。
【0044】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を135℃、出口圧力を3.0Mpaとして実施した。
【0045】
この結果、ペットフードは繭形状で、その胴径は12mmとなり、膨張率は300%、製品水分値は18重量%であった。
【0046】
このペットフードは、所望の柔らかさが確保されて良好な状態であり、歯の弱った高齢犬5匹に食べさせたところ、5匹とも好んで食べた。
【実施例3】
【0047】
本実施例は、上記した第1実施例と、原材料が異なるものであって、製造工程は同様であるため、異なる部分のみ説明し、同じ部分については説明を省略する。
【0048】
使用する原材料は、以下のとおりに配合され、チーズ味に調整されている。
(1)チーズ 20.0重量%
(2)コーンスターチ 40.0重量%
(3)小麦粉 15.0重量%
(4)大豆蛋白質 15.0重量%
(5)グリセリン 3.0重量%
(6)ラード 4.0重量%
(7)卵殻カルシウム 3.0重量%
(8)色素 微量
この原材料を二軸エクストルーダ1に供給して、加熱・加圧しながら連続的に混合、搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断する。
【0049】
なお、エクストルーダ1に原材料を供給する際、水は添加しない。
【0050】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を150℃、出口圧力を4.1Mpaとして実施した。
【0051】
この結果、ペットフードは球形状で、その胴径は12mmとなり、膨張率は300%、製品水分値は17重量%であった。
【0052】
このペットフードは、所望の柔らかさが確保されて良好な状態であり、歯の弱った高齢犬5匹に食べさせたところ、4匹が好んで食べ、1匹が食べなかった。
【実施例4】
【0053】
本実施例は、上記した第1実施例と同じ原材料を使用し、エクストルーダ1に原材料を供給する際に水を添加したものである。
【0054】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を135℃、出口圧力を2.4Mpaとして実施した。
【0055】
この結果、ペットフードは繭形状で、その胴径は14mmとなり、膨張率は350%、製品水分値は24重量%であった。
【0056】
このペットフードは、表面にベタツキが生じ、製品として不良な状態であり、犬への試食は行わなかった。
【実施例5】
【0057】
本実施例は、上記した第2実施例と同じ条件で製造し、ペットフードを乾燥機で乾燥させて製品水分率を調整したものである。
【0058】
この結果、ペットフードは繭形状で、その胴径は11mmとなり、膨張率は275%、製品水分値は12重量%であった。
【0059】
このペットフードは、製品水分値が12重量%と低いために硬く、歯の弱った高齢犬5匹に食べさせたところ、2匹が食べにくそうにしながら食べ、3匹が食べなかった。
【実施例6】
【0060】
本実施例は、原材料の食肉比を低く、澱粉比を高く配合したものである。
【0061】
使用する原材料は、以下のとおりに配合されている。
(1)鶏ササミ 10.0重量%
(2)コーンスターチ 40.0重量%
(3)小麦粉 30.0重量%
(4)大豆蛋白質 10.0重量%
(5)グリセリン 3.0重量%
(6)ラード 4.0重量%
(7)卵殻カルシウム 3.0重量%
(8)色素 微量
この原材料を二軸エクストルーダ1に供給して、加熱・加圧しながら連続的に混合、搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断する。
【0062】
なお、エクストルーダ1に原材料を供給する際、水を添加する。
【0063】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を155℃、出口圧力を7.0Mpaとして実施した。
【0064】
この結果、ペットフードは繭形状で、その胴径は14mmとなり、膨張率は350%、製品水分値は22重量%であった。
【0065】
このペットフードは、所望の柔らかさが確保され、外観は良好な状態であった。しかし、犬の食いつきが悪く、歯の弱った高齢犬5匹に食べさせたところ、1匹が好んで食べ、1匹が食べにくそうにしながら食べ、3匹が食べなかった。
【実施例7】
【0066】
本実施例は、原材料の食肉比率を高く配合したものである。
【0067】
使用する原材料は、以下のとおりに配合されている。
(1)鶏ササミ 15.0重量%
(2)鶏肉 20.0重量%
(3)コーンスターチ 20.0重量%
(4)小麦粉 10.0重量%
(5)大豆蛋白質 25.0重量%
(6)グリセリン 3.0重量%
(7)ラード 4.0重量%
(8)卵殻カルシウム 3.0重量%
(9)色素 微量
この原材料を二軸エクストルーダ1に供給して、加熱・加圧しながら連続的に混合、搬送し、二軸エクストルーダ1から押し出された直後に切断する。
【0068】
なお、エクストルーダ1に原材料を供給する際、水は添加しない。
【0069】
本実施例では、二軸エクストルーダ1のノズル2直径を4mmとし、出口温度を160℃、出口圧力を7.5Mpaとして実施した。
【0070】
しかし本実施例では、原材料の水分が高いために、安定した原材料を二軸エクストルーダ1に供給することができず、そのため、安定した膨化製品を得ることができなかった。
【0071】
以上、本発明の各実施例について説明したが、ペットフードの製品水分率が13〜23重量%、原材料と膨化されたペットフードとを対比した膨張率が200〜350%であり、原材料が、食肉類が10〜35重量%、澱粉類が30〜70重量%、植物性蛋白質が0〜30重量%、柔軟剤が3〜15重量%、発泡助剤が1〜6重量%の含有率により配合されている場合に良好なペットフードを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、歯の弱い高齢期の犬・猫や、噛む力の弱い幼齢期の犬・猫であっても、食べ易いペットフードに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係るペットフードの製造に使用される二軸エクストルーダを示す概略図である。
【図2】本発明に係るペットフードの形状の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0074】
1 二軸エクストルーダ
2 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料を膨化することにより製造されるセミモイストタイプのペットフードであって、
前記ペットフードの製品水分率が13〜23重量%、膨化の膨張率が200〜350%であることを特徴とするペットフード。
【請求項2】
前記ペットフードの原材料は、食肉類が10〜35重量%、澱粉類が30〜70重量%、植物性蛋白質が0〜30重量%、柔軟剤が3〜15重量%、発泡助剤が1〜6重量%の含有率により配合されていることを特徴とする請求項1記載のペットフード。
【請求項3】
前記柔軟剤が、油脂又は/及びグリセリンであることを特徴とする請求項2記載のペットフード。
【請求項4】
前記ペットフードは、原材料を二軸エクストルーダに供給して加熱・加圧しながら混合・搬送し、二軸エクストルーダから押し出すことにより製造されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載のペットフード。
【請求項5】
前記二軸エクストルーダから押し出される原材料の温度が90〜160℃、押し出し圧力が2〜8MPaであることを特徴とする請求項4記載のペットフード。
【請求項6】
前記二軸エクストルーダから原材料が押し出された直後に切断されることを特徴とする請求項4または5記載のペットフード。
【請求項7】
前記ペットフードが、球状、繭状、カール状、ドーナツ状のいずれかの形状に成形されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか記載のペットフード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−158265(P2006−158265A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352786(P2004−352786)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(591009255)株式会社ヤマヒサ (70)
【Fターム(参考)】