説明

ホーゼル角を調節できるゴルフクラブ

【課題】ライ角、ロフト角、フェース角およびこれらの組合せ等のパラメータに対する調節を可能にするゴルフクラブの製造方法および調節方法を提供することにある。
【解決手段】フェース、クラウン、ソール、トウ、ヒール、キャビティ、ホーゼルおよびシャフトを備えたボディを有し、キャビティは外側シェルおよび充填材料を備え、充填材料はガラス転移温度を有し、ホーゼルは、充填材料がガラス転移温度に到達するとキャビティ内で調節できることを特徴とするゴルフクラブヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調節可能なホーゼルを備えたゴルフクラブヘッドに関し、より詳しくは、フェース角、ライ角およびロフト角を変えることによりホーゼル角に修正を加えることを可能にする材料を収容するキャビティを備えたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、一般に、平均的寸法を有する平均的な人にフィットするように製造される。したがって、特定ゴルファーの要望の有無にかかわらず、同じクラブが製造される。このことは、全てのゴルファーが同じ体格ではなくかつ全てのゴルファーが同じスウィングをしないという事実から問題がある。また、製造公差のため、特定のライ角、ロフト角またはフェース角をもつことを要求する多くのゴルフクラブは1°程度の修正が限界である。ゴルフスウィング、ゴルファーおよび製造欠陥および/または公差のばらつきのため、個々のゴルファーは、ライ角、フェース角、ロフト角またはこれらの任意の組合せを最適化することにより利益が得られる。
【0003】
ゴルフクラブのライ角とは、クラブがその適正プレー位置(アドレス位置)にソールされたときに、シャフトの中心とクラブのグラウンドラインとの間に形成される角度をいう。したがって、背の高いゴルファーは、ライ角を大きくして、快適かつ適正にボールにアドレスすることを可能にすることにより利益が得られる傾向を有する。同様に、背の低いゴルファーは、多分、ライ角を小さくすることから利益が得られるであろう。
【0004】
フェース角とは、ターゲットに対するクラブヘッドのフェースの角度をいう。クラブヘッドが「スクウェア」であるときは、クラブのフェースは、アドレス時に直接ターゲットを向くであろう。「クローズド」フェースは、ターゲットの左側に整合されるであろう(右利きのプレーヤの場合)。「オープン」フェースの場合には、フェースは、ターゲットの右側に整合されるであろう。
【0005】
ロフト角とは、完全な垂直面に対してクラブのフェースが位置する角度の測定値(°)をいう。大きいロフト角を有するクラブを使用すると、一般に、高い初期トラジェクトリをもつゴルフショットが得られるであろう。これに対し、小さいロフト角を有するクラブを用いると、低い初期トラジェクトリをもつゴルフショットが得られるであろう。
【0006】
ゴルフクラブセットは、一般に、個々のゴルファーのスウィングおよびボールの飛行経路を最適化するため、クラブフェースについて異なるロフト角、異なるシャフト角すなわちホーゼル角、異なるクラブマス等をもつように構成される。しかしながら、クラブ間の有限の差異、例えば5番アイアンと6番アイアンとのロフト角の差異は、両アイアンの間の特性をもつクラブを必要とする上級ゴルファーにとっては大き過ぎるものとなる。同様に、ライ角(ライ角は、クラブシャフトの長さおよびゴルフクラブの高さおよびスタンスにより変えなくてはならない)は、鋭い認識力を有するゴルファーにはかなり大きい制限を与える。
【0007】
同様に、メタルウッドのライ角およびロフト角についての現在の製造業者の公差は、一般に±1°である。このため、9°および10°の両ロフトに利用できるドライバを販売する会社は、もしかすると、規格内にあるが実際には9°のロフトを有する10°のドライバ、および規格内にあるが実際には10°のロフトを有する9°のドライバを販売する可能性が生じる。
【0008】
このため、これらのクラブを使用する個人に適したファインチューニングを行った特性をもつクラブを製造すべく、ゴルフクラブのヘッドのホーゼルすなわちシャフトアタッチメントを曲げる多くの装置が開発されている。これらの装置は、一般に、或る形態のバイス(万力)またはクランプを有し、かつ曲げ工具および/または少なくとも1つの軸線または平面内の角度または曲がりを測定する曲げ工具および/またはゲージを有している。
【0009】
下記特許文献1には、ゴルフクラブヘッドのライ角および/またはロフト角を変えるべく、クラブヘッドのホーゼル領域に力を加えるための慣用クランピング装置に組み合わせて使用される曲げプレートが概略的に開示されている。この特許文献1に開示されているように、ホーゼルへの力は、ゴルフクラブ製造産業で良く知られた工具を用いて加えられる。
【0010】
製造業者はまた、ゴルフクラブのライ角、フェース角および外観に影響を与えるべく互換可能かつ着脱可能に使用できるゴルフクラブの1組のホーゼルを創出することを試みている。例えば下記特許文献2に開示されているように、複数のホーゼル(各ホーゼルは、ほぼ同じ重量であるが異なる長さおよび構造を有している)が、ゴルフクラブの打ち上げ条件(launch condtions)を変えることができる。しかしながら、この特許文献2において論じられているように、このような設計は、キャビティ内へのホーゼルの適正な取付けを必要とし、このため、装着および取外しにかなりのトルクを必要とする。
【0011】
かくして、個々のゴルファーは、特殊工具を用いることなくまたはクラブヘッドに損傷を与えることなく、ゴルファー自身でクラブヘッドにこのような調節を行なわないので、このような調節による利益は大幅に制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,260,250号明細書
【特許文献2】米国特許公報第2008/0167137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、当業界では、より厳格な公差に容易に調節できるゴルフクラブが要望されている。また、最終的にクラブ性能およびボール性能に影響を与えるパラメータに関して調節できるクラブヘッドにアフターマーケット修正を行う要望が存在する。特に、ライ角、ロフト角、フェース角およびこれらの組合せ等のパラメータに対する調節を可能にするゴルフクラブ設計を得るのが有利である。本発明はこのようなゴルフクラブ、このようなゴルフクラブの製造方法および使用方法を企図するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、調節可能なホーゼルを備えたゴルフクラブに関する。より詳しくは、本発明は、フェース、クラウン、ソール、トウ、ヒール、キャビティ、ホーゼルおよびシャフトを備えたボディを有するゴルフクラブに関する。
【0015】
キャビティは外側シェルおよび充填材料を有している。キャビティはクラウンからソールまで延びている。他の実施形態では、キャビティはクラウンからソールまでの距離の75%より小さく延びている。一実施形態では、キャビティは、ホーゼルの捩れを防止する少なくとも1つのロッキング機構を収容している。ロッキング機構はホーゼルに配置された1つ以上のパドルを有し、該パドルはキャビティ内に配置された1つ以上のリセプタクルに対応する。
【0016】
充填材料はガラス転移温度を有し、ホーゼルは、充填材料がガラス転移温度に到達するとキャビティ内で調節できる。充填材料は熱可塑性材料である。また、充填材料は、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、エラストマー、ポリエチレン、ポリアミド、アイオノマー、ポリエステル、ポリプロピレンまたはこれらの組合せから形成できる。一実施形態では、充填材料は、ポリウレタン、ポリウレアまたはこれらの組合せからなる群から選択される。ガラス転移温度は約130°F以上であり、一実施形態では、ガラス転移温度は約140°F以上である。
【0017】
ゴルフクラブヘッドの種々の特性は、充填材料がガラス転移温度以上の温度に加熱されたときに調節できる。例えば、クラブヘッドのフェース角、ライ角および/またはロフト角を調節できる。一実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、スクウェアアライメントから約10°以下だけ調節できるフェース角を有している。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、約20°だけ調節できるライ角を有している。他の実施形態では、ゴルフクラブヘッドは、予め定められたロフト角から約5°以下だけ調節できるロフト角を有している。
【0018】
本発明は、ゴルフクラブヘッドを調節する方法にも関する。
本発明のゴルフクラブヘッド調節方法は、ボディ、フェース、クラウン、ソール、トウ、ヒール、キャビティ、ホーゼルおよびシャフトを備えかつキャビティが外側シェル有するゴルフクラブヘッドを用意する段階を有している。
【0019】
キャビティは、ガラス転移温度を有する熱可塑性材料で充填される。熱可塑性材料は、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、エラストマー、ポリエチレン、ポリアミド、アイオノマー、ポリエステル、ポリプロピレンまたはこれらの組合せからなる。
【0020】
熱可塑性材料は、ホーゼルの調節を可能にするガラス転移温度まで加熱される。一実施形態では、熱可塑性材料を加熱する段階は、ゴルフクラブヘッドを約130°F以上の温度に加熱することを含んでいる。他の実施形態では、熱可塑性材料を加熱する段階は、ゴルフクラブヘッドを約140°F以上の温度に加熱することを含んでいる。
【0021】
次にホーゼルは、フェース角、ライ角またはロフト角のうちの少なくとも1つを変化させることにより所望位置に調節される。例えば、ゴルフクラブヘッドのフェース角は、スクウェアアライメントから約10°以下だけ調節できる。一実施形態では、ホーゼルを調節する段階は、ゴルフクラブヘッドのライ角を、約40°と約70°との間の角度に調節することを含む。他の実施形態では、ホーゼルを調節する段階は、ゴルフクラブヘッドのロフト角を、予め定められたロフト角から約5°以下だけ調節することを含む。最後に、熱可塑性材料を固化して、キャビティ内にホーゼルを固定する。
【0022】
本発明の他の特徴および長所は、下記の添付図面に関連して述べる後述の詳細な説明から理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるゴルフクラブヘッドの一部を破断した正面図である。
【図2】本発明によるゴルフクラブヘッドの一部を破断した正面図である。
【図3】本発明の一実施形態による調節可能なホーゼルおよびキャビティを示す部分断面図である。
【図4a】本発明のロッキング機構のシャフト軸線を示す図面である。
【図4b】本発明のロッキング機構を示す側面図である。
【図4c】ゴルフクラブヘッドの正面図であり、シャフト軸線を示すものである。
【図5a】図5bの3-3線に沿う断面図であり、本発明のキャビティの底部に配置されたロッキング機構を示すものである。
【図5b】ゴルフクラブヘッドの正面図であり、本発明によるロッキング機構を示すものである。
【図6】ゴルフクラブヘッドの一部を破断した正面図であり、本発明によるロッキング機構を示すものである。
【図7】ゴルフクラブヘッドの一部を破断した正面図であり、本発明によるロッキング機構を示すものである。
【図8】ゴルフクラブヘッドの一部を破断した正面図であり、本発明によるライ角の調節可能性を示すものである。
【図9】ゴルフクラブヘッドの平面図であり、本発明によるフェース角の調節可能性を示すものである。
【図10】ゴルフクラブヘッドの側面図であり、本発明によるロフト角の調節可能性を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに対してホーゼル角の操作が可能なゴルフクラブヘッドである。これらの改変は、複数の可能なライ角、ロフト角、フェース角およびこれらの組合せを得ることができ、したがってゴルフクラブのチューニングを容易にする。
【0025】
簡単にいえば、本発明のクラブヘッドは、通常のゴルフ条件では固体であるが、或る条件では粘性をもつことができる材料が充填されたキャビティ内に位置するホーゼルを有している。充填材料が固体であるときは、ホーゼルは確実に所定位置に保持され、クラブヘッドは1つの剛体として作用する。充填材料が粘性状態にあるときは、ホーゼル位置を調節できる。例えばひとたび適当な温度に加熱されると、充填材料は固体から液体状態に変化し、ホーゼルを操作できるようになり、このため、ライ角、フェース角、ロフト角またはこれらの任意の組合せを調節できるようになる。所望の調節が得られたならば、充填材料を冷却して固化することができ、このため、ホーゼルしたがってシャフトを所望位置に保持することができる。本発明のクラブヘッドは、ウッドタイプゴルフクラブ、アイアンタイプゴルフクラブ、パタータイプゴルフクラブおよびこれらの組合せを含むセットを企図している。
【0026】
図1および図2は、本発明のゴルフクラブヘッドを示すものである。例えば、図1には、トウ12と、該トウ12とは反対側のヒール14と、ソール16と、該ソール16とは反対側のクラウン18と、ゴルフボールを打つクラブフェース20とを備えたゴルフクラブヘッド10が示されている。ゴルフクラブヘッド10はまた、ヒール14に隣接して配置されかつクラウン18からソール16まで全体的に延びている、ホーゼル24の両側のキャビティ22a、22bを有している。キャビティ22a、22bは硬くかつ耐久性のある材料で形成されており、該材料は、キャビティ22a、22bを支持しかつ通常条件下では硬くかつ耐久性があるが、他の或る条件下では粘性を有する充填材料を保持するのに充分な厚さを有している。
【0027】
ホーゼル24はキャビティ22a、22b内に配置され、かつ好ましくはシャフト26の挿入および取付けに適合する中空チューブで形成される。キャビティは充填材料を収容しているので、ホーゼル24は、通常条件では充填材料130により固定されるが、他の或る条件下では、充填材料として使用される材料の種類に基づいて調節可能に位置決めされる。
【0028】
図1に示すように、キャビティ22a、22bは、ゴルフクラブヘッド10のクラウン18からソール16まで全体的に延びている。キャビティの底部は、充填材料が粘性を帯びた条件下でも硬くかつ耐久性を維持できる材料で形成された小リング28または他のキャップによりソールで補強されている。
【0029】
他の構成として、ホーゼルを包囲するキャビティは、クラウンからソールまでの全長より短くすることができる。例えば一実施形態では、キャビティは、クラウン18とソール16との間の距離の約90%より短くすることができる。一実施形態では、キャビティ42は、クラウン38からソール36までの距離の少なくとも約10%の長さで延びている。他の実施形態では、キャビティ42は、クラウン38からソール36までの距離の約15%と約75%との間の長さで延びている。更に別の実施形態では、キャビティ42は、クラウン38からソール36までの距離の約25%と約60%との間の長さで延びている。
【0030】
例えば図2に示すように、ゴルフクラブヘッド30は、トウ32と、該トウ32とは反対側のヒール34と、ソール36と、該ソール36とは反対側のクラウン38と、ゴルフボールを打つためのクラブフェース40とを有している。ゴルフクラブヘッド30は、ヒール34に隣接して配置されかつクラウンからソール36までの長さの一部のみに亘って延びているキャビティを有している。キャビティ42は、該キャビティ内に配置されたホーゼル44を固定する充填材料を有している。ホーゼル44内にはシャフト46が嵌合されている。図2に示すように、キャビティは、ソール36までの距離の約1/2だけ延びているに過ぎない。
【0031】
上記のように、ホーゼルは、該ホーゼルの両側に配置された二重キャビティ内(図1)または単一キャビティ(図2)に固定される。いずれの場合でも、二重キャビティ22a、22bおよびキャビティ42は底部が円形であるか、四角形である。例えば図3に示すように、ホーゼル44は、充填材料43が充填された円形キャビティ42内に配置される。キャビティの底部のキャビティ42を円形にすることにより、ボール/ソケット設計と同様に、ホーゼル44の調節可能性を高めることができる。
【0032】
ロッキング機構
キャビティ内でホーゼルが捩れることを防止するため、1つ以上のロッキング機構を用いることができる。
【0033】
一実施形態では、図4a-図4cに示すように、ホーゼル44の一端を、1つ以上のパドル104が設けられた形状にすることができる。また、キャビティ42の底部は、ホーゼル44の底部のパドル104を収容する1つ以上のリセプタクル106が設けられた形状にすることができる。パドルの形状およびキャビティの対応リセプタクルは、生じることがあるホーゼルの捩れ量を有効に制限する。図5aおよび図5bには、他の構成が示されている。この実施形態では、ホーゼル44の底部に4つのプロングパドル104が設けられ、該プロングパドル104は、同様な形状を有するリセプタクル106内に嵌合されるサイズを有している。
【0034】
図6には他の実施形態が示されており、この実施形態では、ホーゼル44は凹部または孔108が設けられた設計になっている。充填材料が固化すると、ホーゼル44の孔または凹部が充填材料で充填され、これにより、キャビティ42内でのホーゼル44の捩れが更に防止される。
【0035】
図7に示すように、ホーゼル44には1つ以上の溝110が設けられており、該溝110は、キャビティ42の内面に形成された1つ以上のノッチ108に対応する。ノッチ108はキャビティ42の溝110内に嵌合するサイズを有し、これにより、ホーゼル44の捩れすなわち回転が低減される。
【0036】
当業者ならば理解されようが、上記ロッキング機構の任意の組合せを使用できる。例えば、ホーゼルに溝および凹部の両方を設け、キャビティには、溝に対応するノッチを設けることができる。
【0037】
ホーゼルの調節可能性
通常のゴルフプレー条件下では硬くかつ耐久性を有するが、通常のゴルフプレー条件以外の或る条件下では変形性(malleable)を有する充填材料を使用することにより、複数のホーゼル配向が可能である。これにより、製造業者、ユーザ等が、ライ角、フェース角、ロフト角またはこれらの組合せを調節して、所望のコントロールレベルを達成できる。
【0038】
ライ角
図8は、本発明のメタルウッドクラブヘッド50を示す正面図である。クラブがアドレス位置にあるとき、シャフト軸線55は、ライ角として知られている角度αでグラウンド平面GPと交差する。ライ角αは、一般に製造業者により予め定められておりかつ平均的ゴルファーにフィットするように設計されているため、背の高いゴルファーのライ角と背の低いゴルファーのライ角とでは大きく異なる。例えば、背の低いゴルファーは、クラブヘッド設計の全利益を得るには、背の高いゴルファーよりも小さいライ角を必要とする。
【0039】
ゴルフクラブ製造業者により決定された、殆どのゴルファーに適した標準ライ角を下記表1に示す。
【表1】

【0040】
本発明のこの特徴から、本発明のゴルフクラブのホーゼルは、任意の特定ゴルフクラブのライ角が約40°と約70°との間で調節されるようにファインチューニングするのが好ましい。
【0041】
一実施形態では、ドライバのライ角は約40°と約60°との間で調節される。換言すれば、本発明によるドライバのライ角は、両方向に約20%だけ調節できる。一実施形態では、ライ角は、約5%以上だけ調節できる。
【0042】
ウッドタイプのクラブヘッドのライ角は、好ましくは約45°と約70°との間、より好ましくは約50°と約70°との間で調節できる。同様に、ロングアイアンのライ角は約50°と約65°との間で調節でき、ショートアイアンのライ角は約55°と約70°との間で調節できる。本発明によるウェッジのライ角は、好ましくは約60°と約70°との間で調節される。
【0043】
しかしながら、当業者ならば、ライ角の小さい調節でも、地面に対するゴルファーの身長および手首位置の寸法のばらつきに対して充分に補償できることは理解されよう。例えば、製造業者の標準ライ角から約3°の真直すなわちフラットだけライ角を変化させることは、殆どのゴルファーを満足させる充分な調節となるであろう。したがって、一実施形態では、ホーゼルは、ライ角がクラブの標準ライ角から約±5°だけ変化するように調節される。他の実施形態では、ホーゼルは、ライ角がクラブの標準ライ角から約±4°だけ変化するように調節される。更に別の実施形態では、ライ角は約±3°だけ調節される。
【0044】
フェース角
前述のように、フェース角とは、ターゲットに対するクラブヘッドのフェースの角度をいう。かくして、フェース角を調節できることは、本発明のゴルフクラブヘッドの他の利益である。
【0045】
より詳しくは、ホーゼルはキャビティ内で調節できるため、フェース角もまた、「スクウェア」アライメント(整合)から約10°以下だけ調節でき、これにより、「オープン」フェース配向および「クローズド」フェースアライメントを含む広範囲のフェース配向が可能になる。一実施形態では、フェース角φは、「スクウェア」アライメントから少なくとも約5°だけ調節できる。他の実施形態では、フェース角は、「スクウェア」アライメントから少なくとも約7°だけ調節できる。更に別の実施形態では、フェース角は、「スクウェア」アライメントから少なくとも約8°だけ調節できる。更に別の実施形態では、フェース角は、約5°―約10°、約6°―約9°、約7°―約8°またはこれらの間の任意の範囲だけ調節できる。
【0046】
本発明のクラブヘッドのフェース角の調節可能性を更に説明するため、図9には本発明のゴルフクラブヘッドが示されている。より詳しくは クラブ60aは「スクウェア」アライメントを示し、このスクウェアアライメントでは、ゴルフクラブヘッドのフェース62aがターゲットライン70に対して垂直でありかつ角度φaは約90°である。クラブ60bは、「オープン」アライメントのゴルフクラブを示す。右利きゴルファーの場合、オープンアライメントは、約90°より大きい角度φbが生じる。ゴルフクラブのこのオープンアライメントを用いることにより、ボールにフックを掛けようとするゴルファーは、ターゲットライン70に近いランディングが生じるショットを達成できる。これに対し、クラブ60cはゴルフクラブヘッドの「クローズド」アライメントを示す。クローズドアライメントでは、角度φcは約90°より小さい。このクローズドアライメントは、初期トラジェクトリがターゲットライン70の左側になるようにボールにスライスを掛けようとするゴルファーに利益をもたらし、ターゲットライン70に近いボールランディングを達成できる。かくして、φb>φa>φcの関係を有する。本発明のこの特徴では、角度φは、「オープン」アライメントまたは「クローズド」アライメントのいずれの方向にも約10°以下だけ調節できる。
【0047】
ロフト角
一般的なロフト角製造公差は約±1°であるので、ゴルファーは、最後には所望のロフト角より小さいロフト角を有するゴルフクラブでプレーするようになり、このため、トラジェクトリが低くなるので、より大きい飛距離が出るようになる。同様に、ロフト角製造公差のため、ゴルファーは、或るクラブが、所望のロフト角より大きいロフト角で打たれる高いトラジェクトリにより全飛距離が短くなることを見出すであろう。かくして、クラブヘッドのロフト角の僅かな調節であっても、上級ゴルファーには大きい利益をもたらす。
【0048】
本発明のこの特徴では、本発明のクラブヘッドは、ロフト角が予め定められたロフト角から約10°だけ変化するようにホーゼルを介して調節するのが好ましい。一実施形態では、ロフト角は約5°以下だけ変化できる。例えば、本発明のクラブヘッドは、予め定められたロフト角から約0.5°―約5°だけ調節できるロフト角を有する。他の実施形態では、ロフト角は、予め定められたロフト角から少なくとも約3°だけ調節できる。
【0049】
本発明のゴルフクラブヘッドの側面図である図10には、ゴルフクラブヘッド80がアドレス位置にあるとき、ロフト角θとは、フェース90とグラウンド平面GPに垂直な垂直平面VPとの間に形成される角度であることが示されている。かくして本発明は、θ(予め定められたロフト角)は、約θ±10°の間、好ましくは約θ±5°の間にあると考えている。例えば、18°のロフト角をもつように製造されたクラブは、約13°―約23°の範囲内で調節できる。
【0050】
充填材料
キャビティ内に充填される充填材料は、熱可塑性材料または或る条件下で軟化されるか粘性を帯びることができる他の適当な材料で形成できる。例えば、ホーゼルが通常のプレー条件下でキャビティ内で確実に固定されるためには、充填材料は、通常のゴルフプレー条件下、例えば約32°F―約130°Fの温度範囲内で硬くかつ耐久性を有するものを選択すべきである。しかしながら、キャビティ内でのホーゼルの所望の調節を可能にするには、充填材料は、この温度範囲より高い或る温度で、ホーゼルの移動を可能にする程度まで軟化しかつ順応性をおびるものを選択するのが好ましい。かくして、適当な充填材料は、約32°F―約120°Fの間の通常のゴルフプレー温度で固体でありかつ耐久性を有するが、約120°Fを超える温度では弾性およびフレキシビリティを有し、キャビティ内でホーゼルを調節できるものである。
【0051】
例えば、約130°F以上のガラス転移温度Tgを有する熱可塑性材料は、ホーゼル充填材料として使用するのに適している。一実施形態では、充填材料は、約140°F以上、好ましくは約150°F以上のガラス転移温度Tgを有している。他の実施形態では、充填材料のガラス転移温度Tgは約400°F以下、より好ましくは約350°F以下、更に好ましくは約300°F以下である。更に別の実施形態では、充填材料のガラス転移温度Tgは約130°F―約275°Fの範囲内にある。比較的高いガラス転移温度を有するが所望特性を有する熱可塑性材料は、低分子量可塑剤で操作するか、重合の前に非反応性側鎖をモノマーに添加することにより操作される。
【0052】
当業者には知られているように、殆どの熱可塑性材料は高分子量ポリマーであり、その連鎖は、例えばポリエチレンのように弱いファンデルワールス力を介して、ナイロンのように強い双極子相互作用および水素結合を介して、またはポリスチレンのように芳香環のスタッキングを介して、それぞれ関連している。適当な熱可塑性プラスチックの例として、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、エラストマー、ポリエチレン、ポリアミド、アイオノマー、ポリエステル、ポリプロピレンおよびこれらの組合せがあるが、これらに限定されるものではない。他の例として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリトリメチレンテレフタレート、コポリ(エーテル―エステル)、コポリ(エステル―エステル)、コポリ(ウレタン―エステル)、コポリ(ウレタン―エーテル)、ポリアクリレート、ポリスチレン、スチレン―ブタジエン―スチレンコポリマー、スチレン―エチレン―ブチレン―スチレンコポリマー、エチレン―プロピレン―ジエン―ターポリマーまたはエチレン―プロピレン加硫コポリマーゴム、ポリカーボネートまたはこれらの混合物があるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
一実施形態では、充填材料はポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタンは、ハードブロックおよびソフトエラストマーブロックからなるリニアポリマーまたは僅かに連鎖した分枝ポリマーである。これらは、一般に、エラストマーポリエーテルまたはポリエステル等のソフトヒドロキシ末端基成分と、メチレンジイソシアネート(MDI),p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)またはトルエンジイソシアネート等のジイソシアネートとを反応させることにより作られる。これらのポリマーは、グリコール、第2ジアミン、二酸またはアミノアルコールにより連鎖延長できる。イソシアネートとアルコールとの反応生成物はウレタンと呼ばれ、これらのブロックは比較的硬くかつ高い融点を有している。硬くて高い融点を有するこれらのブロックは、ポリウレタンの熱可塑性に匹敵する能力を有している。
【0054】
他の実施形態では、充填材料はポリウレアである。ポリウレアは、イソシアネートと、アミンを末端基とする化合物との反応により形成される。アミンを末端基とする化合物は、アミン末端基ハイドロカーボン、アミン末端基ポリエーテル、アミン末端基ポリエステル、アミン末端基ポリカプロラクトン、アミン末端基ポリカーボネート、アミン末端基ポリアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0055】
充填材料の比重は、1.5より小さい。充填材料の比重は1.3より小さいことが好ましく、1.0より小さくできる。また、充填材料の比重はホーゼルの比重より小さくでき、クラブヘッドのボディの比重よりも小さくできる。一実施形態では、充填材料の比重は、
他の構成では、高比重の添加物を充填材料に導入できる。これにより、充填材料の強化の目的が達成される。高比重の添加物は、充填材料の比重を約5より大きく、または約7より大きくすることができる。
【0056】
以下に詳細に説明するように、二重キャビティの実施形態では、各キャビティ22a、22bの充填材料は同じでもよいし、異ならせることもできる。このような設計は、一方向対他方向の調節可能性を増大できる。例えば、キャビティ22a内の充填材料が、キャビティ22b内の充填材料に要求されるよりも低い温度で粘性を帯びる場合には、ホーゼルを、全方向ではなく、全体としてクラブヘッドのトウの方向のみに調節できる。
【0057】
使用例における場合を除き、或いは特定したものでない限り、材料の量、慣性モーメント、重心位置および明細書の以下の部分における他のものは、用語「約」が値、量または範囲とともに使用されない場合でも、あたかも語「約」が前置されたものとして読まれる。したがって、これとは反対のものとして示されない限り、以下の記載および特許請求の範囲の記載において示される数値的パラメータは、本発明により達成されると考えられる所望の特性に基づいて変化する。少なくとも、および特許請求の範囲の均等物の教義の適用を制限する試みとしてではなく、各数値的パラメータは、少なくとも報告された重要な数字を考慮しておよび通常のラウンディングを適用して解釈すべきである。
【0058】
本発明の広い範囲で述べられた数値的範囲およびパラメータは近似値であるとはいえ、全ての特定例で述べられた数値はできる限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、これらの数値の試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる或る誤差を固有的に含んでいる。また、変化する範囲の数値的範囲が本明細書で述べられるときは、列挙された値を含むこれらの値の任意の組合せが使用されることが考えられる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、好ましい実施形態は単なる例示であって本発明を限定するものではないことを理解すべきである。当業者ならば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の形態および細部における種々の変更をなし得ることは明白であろう。したがって、本発明は上記例示の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載およびこれらの均等物のみにしたがって定められるべきである。また、本明細書では本発明の或る長所を説明したが、必ずしもこのような全ての長所が本発明の任意の特定実施形態によって達成されるものではないことを理解すべきである。かくして、例えば、当業者ならば、本発明は、本明細書により教示されまたは示唆されるような他の長所を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの長所または1群の長所を達成する態様で具現されまたは実施されることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0060】
10、30、50、80 ゴルフクラブヘッド
24、44 ホーゼル
26、46 シャフト
22a、22b、42、44 キャビティ
43 充填材料
104 プロングパドル
106 リセプタクル
108 凹部、孔、ノッチ
110 溝
α ライ角
φ ロフト角
θ ロフト角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース、クラウン、ソール、トウ、ヒール、キャビティ、ホーゼルおよびシャフトを備えたボディを有し、キャビティは外側シェルおよび充填材料を備え、
充填材料はガラス転移温度を有し、ホーゼルは、充填材料がガラス転移温度に到達するとキャビティ内で調節できることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記充填材料は熱可塑性材料であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ガラス転移温度は約130°F以上であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ガラス転移温度は約140°F以上であることを特徴とする請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
スクウェアアライメントから約10°以下だけ調節できるフェース角を有することを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
約20°だけ調節できるライ角を有することを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
予め定められたロフト角から約5°以下だけ調節できるロフト角を有することを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記充填材料は、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、エラストマー、ポリエチレン、ポリアミド、アイオノマー、ポリエステル、ポリプロピレンまたはこれらの組合せからなることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記充填材料は、ポリウレタン、ポリウレアまたはこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記キャビティはクラウンからソールまで延びていることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記キャビティはクラウンからソールまでの距離の75%より小さく延びていることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記キャビティは、ホーゼルの捩れを防止する少なくとも1つのロッキング機構を収容していることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記ロッキング機構はホーゼルに配置された1つ以上のパドルを有し、該パドルはキャビティ内に配置された1つ以上のリセプタクルに対応することを特徴とする請求項12記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
ボディ、フェース、クラウン、ソール、トウ、ヒール、キャビティ、ホーゼルおよびシャフトを備えかつキャビティが外側シェル有するゴルフクラブヘッドを用意する段階と、 キャビティを、ガラス転移温度を有する熱可塑性材料で充填する段階と、
熱可塑性材料をガラス転移温度まで加熱する段階と、
ホーゼルを所望位置に調節する段階と、
熱可塑性材料を固化できるようにする段階とを有することを特徴とするゴルフクラブヘッドの調節方法。
【請求項15】
前記熱可塑性材料は、ポリウレタン、ポリウレア、エポキシ、エラストマー、ポリエチレン、ポリアミド、アイオノマー、ポリエステル、ポリプロピレンまたはこれらの組合せからなることを特徴とする請求項14記載のゴルフクラブヘッドの調節方法。
【請求項16】
前記ホーゼルを調節する段階は、次の段階すなわち、
ゴルフクラブヘッドのフェース角を、スクウェアアライメントから約10°以下だけ調節する段階、
ゴルフクラブヘッドのライ角を、約40°と約70°との間の角度に調節する段階、および
ゴルフクラブヘッドのロフト角を、予め定められたロフト角から約5°以下だけ調節する段階のうちの少なくとも1つの段階を更に有することを特徴とする請求項14記載のゴルフクラブヘッドの調節方法。
【請求項17】
前記熱可塑性材料を加熱する段階は、ゴルフクラブヘッドを約130°F以上の温度に加熱することを含むことを特徴とする請求項14記載のゴルフクラブヘッドの調節方法。
【請求項18】
前記熱可塑性材料を加熱する段階は、ゴルフクラブヘッドを約140°F以上の温度に加熱することを含むことを特徴とする請求項14記載のゴルフクラブヘッドの調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−448(P2011−448A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−153398(P2010−153398)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】