説明

ボイスコイルスピーカー

【課題】多層のボイスコイルが形成されたボビンを備えるボイスコイルスピーカーにおいて、各ボイスコイルに接続されるリード線のそれぞれの干渉を防止できる構造を提供する。
【解決手段】ボイスコイルスピーカー1において、振動板10の後方に音声信号を処理する音声信号処理回路基板20を配置し、音声信号処理回路基板20の周方向に多層のボイスコイルに出力する複数の出力端子40を配列した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層のボイスコイルを形成したボビンと、このボビンに接続される振動板とを備えるボイスコイルスピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層のボイスコイルが形成されたボビンを備えるスピーカー(デジタルスピーカー)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のスピーカーでは、各ボイスコイルに錦糸線を介して音声信号処理用の回路基板が接続され、この回路基板から錦糸線を介して各ボイスコイルに信号が出力されることによってボイスコイルが形成されたボビンが振動し、この振動に基づいた振動板の振動により音声が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−28785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなスピーカーでは、ボビンに多層のボイスコイルが形成されているため、各ボイスコイルに接続された錦糸線が複数存在することになる。このため、錦糸線のそれぞれが干渉しないよう、スピーカーの構造を反映した上でボビンと回路基板との位置関係を適切に設計する必要がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、多層のボイスコイルが形成されたボビンを備えるボイスコイルスピーカーにおいて、ボビンと回路基板とが適切に配置されたボイスコイルスピーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、スピーカー本体に、多層のボイスコイルを形成したボビンと、前記ボビンに接続される振動板とを備えたボイスコイルスピーカーにおいて、前記振動板の後方に音声信号を処理する回路基板を配置し、前記回路基板の周方向に前記多層のボイスコイルに出力する複数の出力端子を配列したことを特徴とする。
【0006】
ここで、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記ボビンを囲うように前記回路基板を配置してもよい。
【0007】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、フレームに対して前記ボビンを支持するためのダンパーを、前記ボビンを囲うように設け、前記ダンパーを囲うように環状の前記回路基板を配置してもよい。
【0008】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記ボビンを支持するダンパーを備え、前記ダンパーを支持するフレームの裏側に前記回路基板を設けてもよい。
【0009】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記ボビンを支持するダンパーを備え、前記ダンパーを支持するフレームの表側に前記回路基板を設けてもよい。
【0010】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記出力端子と前記ボイスコイルを接続する錦糸線を前記ダンパーに編み込んで延在させてもよい。
【0011】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記錦糸線を前記ダンパーに放射状に編み込んでもよい。
【0012】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記複数の出力端子を前記回路基板の周方向に間隔をあけて配列してもよい。
【0013】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記回路基板に多チャンネルの音声信号が入力されてもよい。
【0014】
また、上記発明のボイスコイルスピーカーにおいて、前記回路基板に音声信号増幅用のアンプ回路を実装してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多層のボイスコイルが形成されたボビンを備えるボイスコイルスピーカーにおいて、ボビンと回路基板とが適切に配置されたボイスコイルスピーカーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るボイスコイルスピーカーを示す図であり、図1(A)は背面図、図1(B)は図1(A)のA−O−B線の断面図、図1(C)は振動板が取り外された状態の正面図、図1(D)は図1(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。
【図2】振動板が取り付けられた状態のボイスコイルスピーカーの正面図である。
【図3】ボビン及びボイスコイルを模式的に示す図である。
【図4】ボビン及びボイスコイルの別例を模式的に示す図である。
【図5】第2実施形態に係るボイスコイルスピーカーを示す図であり、図5(A)は背面図、図5(B)は図5(A)のA−O−B線の断面図、図5(C)は振動板が取り外された状態の正面図、図5(D)は図5(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。
【図6】第3実施形態に係るボイスコイルスピーカーを示す図であり、図6(A)は背面図、図6(B)は図6(A)のA−O−B線の断面図、図6(C)は振動板が取り外された状態の正面図、図6(D)は図6(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1を示す図であり、図1(A)は背面図、図1(B)は図1(A)のA−O−B線の断面図、図1(C)は振動板10が取り外された状態の正面図、図1(D)は図1(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。図2は、振動板10が取り付けられた状態のボイスコイルスピーカー1の正面図である。
本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1は、例えば、車両のドアの側面に取り付けられ、車載オーディオからデジタル音声信号を入力し、このデジタル音声信号に基づいて音声を出力するスピーカーである。
図1に示すように、ボイスコイルスピーカー1は、前面に円状のスピーカー開口12(図1(B)、図1(C))が形成され、内部にスピーカー本体13を収容するための空間たるスピーカー本体収容部14(図1(B)、図1(C))が形成された有底円筒状のスピーカーフレーム15を備えている。なお、図中、ボイスコイルスピーカー1の中心軸を符号L1を付して示す。
このスピーカーフレーム15の後部には、前方へ向かうに従って拡径し、前面に円状の開口が形成された椀状のフレーム後部16(図1(B))が形成されており、このフレーム後部16の底面には、スピーカー本体13の駆動に供される磁気回路部17(図1(B))が取り付けられている。
【0018】
また、スピーカーフレーム15には、ボイスコイルスピーカー1の中心軸L1と同軸で、フレーム後部16の前面に形成された円状の開口の縁から開口の周方向に沿って外側へ向かって延在する環状のフレーム平部19(図1(B)、図1(C))が形成されている。詳細は後述するが、本実施形態では、このフレーム平部19の裏側に、当該フレーム平部19と対応した形状を有する環状の音声信号処理回路基板20が取り付けられている。
フレーム後部16の前面に形成された円状の開口の縁には、この開口を塞ぐようにダンパー22が接続され、このダンパー22の中央において、前後方向を軸方向とする円筒状のボビン23が支持されており、これによりスピーカーフレーム15に対してボビン23が支持、固定されている。このダンパー22及びボビン23は、その中心軸がボイスコイルスピーカー1の中心軸L1と一致するように同軸配置されている。
【0019】
図3は、ボビン23を上から見た図である。この図では、ボビン23と、ボイスコイル24との関係の明確化のため、ボビン23、及び、ボイスコイル24の形状を単純化した上で、模式的に記載している。
図3に示すように、ボビン23は、銅線等の線材からなる錦糸線がボビン23の軸方向に整列巻きされて形成されたボイスコイル24を複数保持している。本実施形態では、複数のボイスコイル24が、ボビン23の周方向に多層となるように重ねて設けられている。各層のボイスコイル24のそれぞれには、後述する錦糸線42のそれぞれが接続されており、各層のボイスコイル24のそれぞれが、錦糸線42から入力された駆動信号に基づいて、ボビン23を振動させる構成となっている。
【0020】
図4は、別例のボビン23を横から見た図である。この図では、図3と同様、ボビン23と、ボイスコイル24との関係の明確化のため、ボビン23、及び、ボイスコイル24の形状を単純化した上で、模式的に記載している。
図4に示すように、ボビン23は、銅線等の線材からなる錦糸線が多重に巻き回されて形成された多層のボイスコイル24を保持している。この別例では、複数のボイスコイル24がボビン23の軸方向(=ボイスコイルスピーカー1の中心軸L1の軸方向)に層毎に間隔を開けて形成されており、かつ、各層のボイスコイル24のそれぞれには、後述する錦糸線42のそれぞれが接続されており、ボビン23に形成された各層のボイスコイル24のそれぞれが、出力すべき音声に係る駆動信号に基づいて、ボビン23を振動させる構成となっている。
【0021】
このボビン23には、前方へ向かうに従って拡径する円錐状の振動板10(図1(B)、図2)の基端部26が接続されており、また、この振動板10の先端部の外周は、スピーカーフレーム15の前面に形成されたスピーカー開口12の内周に接続されている。多層のボイスコイル24によるボビン23の振動に応じて、振動板10が振動し、この振動板10の振動に基づいて音声が出力される。
【0022】
上述したように、スピーカーフレーム15に形成された環状のフレーム平部19の後面には、このフレーム平部19の形状に対応した環状の音声信号処理回路基板20が、その中心軸をボイスコイルスピーカー1の中心軸L1と一致させて固定されている。
この音声信号処理回路基板20には、6つの位置決め孔27(図1(A)、図1(D))が、中心軸L1を中心とする略同一円上に一定の間隔をあけて形成されており、一方、フレーム平部19の後面において、この後面に音声信号処理回路基板20を固定したときに位置決め孔27のそれぞれが対応する位置には、位置決め孔27に嵌合する位置決めピン28が設けられている。位置決めピン28は、図1(D)に示すように、フレーム平部19に固着された円板状の基礎部29と、この基礎部29から後方へ向かって突出した突出部30とを備えている。さらに、図1(D)に示すように、フレーム後部16の前面に形成された円状の開口の縁には、基板固定爪32が設けられており、この基板固定爪32と、位置決めピン28の基礎部29とによって音声信号処理回路基板20が挟持される構成となっている。そして、音声信号処理回路基板20は、音声信号処理回路基板20に形成された位置決め孔27のそれぞれに、フレーム平部19の後面に形成された位置決めピン28のそれぞれが嵌合し、かつ、基板固定爪32と、位置決めピン28の基礎部29とによって音声信号処理回路基板20が挟持されることにより、フレーム平部19における音声信号処理回路基板20の位置決めがなされた上で、フレーム平部19の後面に対して固定される。
【0023】
また、音声信号処理回路基板20には、オーディオ装置等の音声信号の出力源となる外部機器が接続されるコネクター33(図1(B)、図1(C))が接続されている。詳述すると、コネクター33から信号出力用のピン端子34(図1(B)、図1(C))が複数延出しており、音声信号処理回路基板20に形成されたスルーホール(図1(B))のそれぞれに対応するピン端子34のそれぞれが挿入された上で、各スルーホールのランドと各ピン端子34とが半田付けにより導通され、これにより音声信号処理回路基板20とコネクター33とが電気的に接続されている。
【0024】
さらに、音声信号処理回路基板20には、図1(A)に示すように、内周の近傍において、内周に沿って間隔をあけて12個の出力端子40が設けられている。出力端子40の配置について詳述すると、図1(A)に示すように、音声信号処理回路基板20において、2つの隣接する出力端子40を1つの組として、6つの組が形成されると共に、これら6つの組のそれぞれが、音声信号処理回路基板20の内周の近傍において、内周に沿ってほぼ等間隔で配置されている。より詳細には、図1(A)に示すように、音声信号処理回路基板20において、上述した各組は、環状の音声信号処理回路基板20の中心軸L1を中心とする円上に約60度間隔で配置されている。
【0025】
これら出力端子40のそれぞれには、ボイスコイル24を構成する錦糸線42の両端が接続されている。出力端子40と錦糸線42との接続の態様について詳述すると、音声信号処理回路基板20において、対応するスルーホールに、導電性を有するピン端子が半田付けにより接続され、音声信号処理回路基板20から当該ピン端子が突出した状態となっており、このピン端子に対して錦糸線42が接続されている。このように音声信号処理回路基板20に形成されたスルーホールに接続されたピン端子に対して錦糸線42を接続する構成としたため、錦糸線42を音声信号処理回路基板20に接続する際の作業性が非常に良い。さらに、錦糸線42を音声信号処理回路基板20に接続するための端子を専用に備える端子板を音声信号処理回路基板20と別に設ける必要が無く、生産コストの低減、及び、作業効率の向上を図ることができる。
本実施形態では、音声信号処理回路基板20からボビン23を駆動するための駆動信号が各ボイスコイル24に出力され、この駆動信号に応じて各ボイスコイル24によりボビン23が振動し、これに伴って振動板10が振動し、音声が出力される。
【0026】
ここで、音声信号処理回路基板20について詳述する。
音声信号処理回路基板20は、入力したデジタル音声信号にデジタル処理を施し、各層のボイルコイル24用の駆動信号を生成し、出力するための回路が実装されるデジタル回路基板である。
この回路基板20に実装される回路には、ΔΣ変調回路、所定のフィルター回路、デジタルアンプ等があり、これらはデジタル回路で構成されるため、アナログ回路で形成される場合よりも格段に小型で済む。特にデジタルアンプは、アナログアンプよりも格段に小さくなり、このデジタルアンプを構成する信号増幅用のアンプ回路43は、図1(A)に示すように、上記の回路基板20に余裕を持って配置可能である。なお、このアンプ回路43は、各層(本構成では6層)のボイルコイル24の駆動信号を増幅するため、6個のデジタルアンプを有している。
また、この音声信号処理回路基板20は、アンプ回路43で増幅された駆動信号を各出力端子40に出力することにより、各出力端子40に接続された錦糸線42を介して、ボビン23に形成された各ボイスコイル24に駆動信号を出力する。
なお、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1は、入力したデジタル音声信号に信号増幅を含む全ての回路を実装する音声信号処理回路基板20を備えるため、ボイスコイルスピーカー1の前段にパワーアンプなどを介在させる必要がなく、このボイスコイルスピーカー1単独で、スピーカーアンプシステムを構成する。これにより、車載用のスピーカーに特に要求される省スペース化を実現できる。さらに、音声信号処理回路基板20は、フレーム平部29の後面に取り付けられた構成となっているため、ボビン23の振動、及び、ボビン23の振動に伴う振動板10の振動により、音声信号処理回路基板20の表面に対し空気が流れることとなり、この空気の流れによって、アンプ回路43を含む各回路の冷却を行うことができる。
特に、本実施形態に係る音声信号処理回路基板20には、多チャンネルの音声信号が入力される構成となっており、音声信号処理回路基板20は、入力された多チャンネルの音声信号に対して、所定の標本化処理や、所定のフィルタリング処理等の信号処理を実行することによって、多チャンネルの音声信号に応じた音声を出力するために各ボイスコイル24に出力すべき駆動信号を生成し、出力端子40に接続された錦糸線42のそれぞれを介して生成した駆動信号をボイスコイル24のそれぞれに出力する。
なお、本実施形態では、音声信号処理回路基板20に入力される音声信号のチャンネルの数に応じて、ボビン23のボイスコイル24が多層化されている。
【0027】
このように、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1は、ボビン23に多層のボイスコイル24が形成され、かつ、ボイスコイル24からの錦糸線42が音声信号処理回路基板20に接続される構成のため、多数の錦糸線42のそれぞれが確実に干渉しないことが求められる。この要求を満たすべく、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1は、以下の構成を有している。
【0028】
すなわち、図1(B)に示すように、ボビン23を支持するために必須の部材であるダンパー22を取り囲むように、ダンパー22と略同一平面上にフレーム平部19が形成されており、このフレーム平部19の後面に音声信号処理回路基板20が取り付けられている。すなわち、ダンパー22より一回り大きい音声信号処理回路基板20が、ダンパー22を取り囲んだ構成となっている。これにより、音声信号処理回路基板20は、ダンパー22を取り囲んで、ダンパー22と略同一平面上に延在することとなる。そして、音声信号処理回路基板20とダンパー22との位置関係を上述の位置関係とした上で、音声信号処理回路基板20において、出力端子40を、内周の近傍、すなわち、ダンパー22の近傍に配置したため、出力端子40とボビン23との距離を、ボビン23と音声信号処理回路基板20との間に介在するダンパー22分の距離とすることができる。
これにより、出力端子40とボビン23との間をつなぐ多数の錦糸線42を、ボイスコイルスピーカー1の中心軸L1から放射状に延びる直線に沿って設けることができ、出力端子40とボビン23との間の錦糸線42が長くなることを防止できる。従って、ボビン23の振動により錦糸線42が撓んでも錦糸線42の移動範囲を小さくすることができる。
さらに、フレーム平部19の後面に音声信号処理回路基板20が取り付けられた構成となっているため、ボイスコイルスピーカー1の後側から音声信号処理回路基板20にアクセスし易くなり、例えば、音声信号処理回路基板20を取り付ける際の作業が容易になる等、作業性の向上が図られている。また、ボイスコイルスピーカー1の構造上、フレーム平部19の後面側にスペースが形成されることとなるが、このスペースの有効活用となる。
【0029】
さらに、本実施形態では、出力端子40に接続された錦糸線42は、図1(A)に示すように、ダンパー22と音声信号処理回路基板20との間に形成された間隙を介してダンパー22の前面側へ導出されると共に、図1(C)に示すように、ダンパー22の前面において、ダンパー22の前面に沿って、ボビン23へ向かって直線的に延出している。その際、図1(B)に示すように、錦糸線42は、ダンパー22に対して複数箇所が編み込まれ、ダンパー22に固定、密着した状態でボビン23へ向かって直線的に延出する構成となっている。
このように、錦糸線42が、出力端子40からボビン23へ向かって直線的に延出する構成で、かつ、ダンパー22に対して、錦糸線42が編み込まれ、ダンパー22に対して錦糸線42が固定、密着した構成となっているため、出力端子40とボビン23との間の錦糸線42の長さを短くしながら、更に錦糸線42を位置決めできる。
このため、ボビン23が振動した際の錦糸線42の移動範囲をより狭くすることができ、錦糸線42のそれぞれの干渉を防止することができる。特に、上述したように、出力端子40と、ボビン23との距離の短縮化を実現した構造となっているため、より錦糸線42の長さを短くすることができ、錦糸線42の干渉をより確実に防止できる。
さらに、ボイスコイルスピーカー1が車両のドアの側面に取り付けられた場合、ドアの開け閉めに起因した振動、エンジンの駆動に起因した振動、車両の走行に起因した振動等の様々な振動が発生するが、このような振動が発生した場合であっても、錦糸線42の干渉を防止することができる。この観点からも、このボイスコイルスピーカー1は、車載用のスピーカーに好適である。
【0030】
また、出力端子40は、音声信号処理回路基板20において略同一円上に分散されて配置されおり、略同一円上に配置された出力端子40のそれぞれからボビン23へ向かって錦糸線42が延出する構成となっている。これにより、図1(C)に示すように、ダンパー22において錦糸線42が、中心軸L1を中心とする放射状かつ等角度間隔で編み込まれた状態となる。このように、錦糸線42のそれぞれが放射状かつ等角度間隔で編み込まれることにより、錦糸線42のそれぞれの間に介在する物理的な距離を最も効率よく確保することができ、錦糸線42の干渉がより効果的に防止されている。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1は、スピーカー本体13に、多層のボイスコイル24を形成したボビン23と、ボビン23に接続される振動板10とを備えている。そして、振動板10の後方に音声信号を処理する音声信号処理回路基板20を環状に配置し、音声信号処理回路基板20の周方向に多層のボイスコイル24のそれぞれに出力する複数の出力端子40を配列している。
これによれば、ボビン23を囲うように配置された環状の音声信号処理回路基板20の出力端子40のそれぞれからボビン23に形成されたボイスコイル24のそれぞれに対し、干渉を防止した状態で錦糸線42を延出させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ボビン23を囲うように音声信号処理回路基板20を配置している。
これによれば、音声信号処理回路基板20に形成された出力端子40から、干渉を防止しつつ、効率よくボビン23に形成されたボイスコイル24に対して錦糸線42を延出することができる。
【0033】
また、本実施形態では、スピーカーフレーム15に対してボビン23を支持するためのダンパー22を、ボビン23を囲うように設け、ダンパー22を囲うように環状の音声信号処理回路基板20を配置している。
これによれば、音声信号回路基板20に形成された出力端子40とボビン23との間にダンパー22が介在した状態となるため、ダンパー22を利用して錦糸線42の位置決めをしつつ、錦糸線42を延出することが可能となり、錦糸線42の干渉を好適に防止できる。
【0034】
また、本実施形態では、振動板10と音声信号処理回路基板20の間にダンパー23を備え、ダンパー22を支持するスピーカーフレーム15のフレーム平部19の裏側に音声信号処理回路基板20が支持されている。
これによれば、音声信号処理回路基板20に形成された出力端子40と、ボビン23との距離を不必要に長くすることなく、スピーカーフレーム15によって環状の音声信号処理回路基板20を適切な配置で支持可能である。
さらに、フレーム平部19の後面に音声信号処理回路基板20が取り付けられた構成となっているため、ボイスコイルスピーカー1の後側から音声信号処理回路基板20にアクセスし易く、例えば、音声信号処理回路基板20を取り付ける際の作業が容易になる等、作業性の向上が図られている。また、ボイスコイルスピーカー1の構造上、フレーム平部19の後面側にスペースが形成されることとなるが、このスペースの有効活用となる。
【0035】
また、本実施形態では、出力端子40とボイスコイル24を接続する錦糸線42をダンパー22に編み込んで延在させている。
これによれば、振動の発生に伴って錦糸線42が振れ、この振れに起因して錦糸線42が干渉することが防止される。特に、ボイスコイルスピーカー1が車両のドアの側面に取り付けられた場合、ドアの開け閉めに起因した振動、エンジンの駆動に起因した振動、車両の走行に起因した振動等の様々な振動が発生するが、このような振動が発生した場合であっても、錦糸線42の干渉を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、錦糸線42をダンパー22に放射状に編み込んでいる。
これによれば、各錦糸線42の物理的な距離を最も効率よく確保した位置に位置決めでき、錦糸線42の干渉をより効果的に防止できる。
【0037】
また、本実施形態では、複数の出力端子40を音声信号処理回路基板20の周方向に間隔をあけて配列している。
これによれば、出力端子40からボビン23へ向かって延出する錦糸線42のそれぞれの物理的な距離を効率よく確保することができ、錦糸線42の干渉をより効果的に防止できる。
【0038】
また、本実施形態では、音声信号処理回路基板20に多チャンネルの音声信号が入力され、音声信号処理回路基板20は、多チャンネルの音声信号に対応した信号処理を実行し、干渉が防止された錦糸線42を介してボイスコイル24に駆動信号を出力し、ボビン23を振動させる。これにより、多チャンネルの音声信号に係る音声を、適切に出力できる。
【0039】
また、本実施形態では、音声信号処理回路基板20に音声信号増幅用のアンプ回路43が実装されている。
ここで、アンプ回路43は、本実施形態に係るボイスコイルスピーカー1にとって必須の部材であるが、同じく必須の部材である音声信号処理回路基板20にアンプ回路43を実装することにより、省スペース化を実現している。さらに、音声信号処理回路基板20がフレーム平部29の後面に取り付けられた構成となっていると共に、この音声信号処理回路基板20にアンプ回路43が実装されているため、ボビン23の振動、及び、ボビン23の振動に伴う振動板10の振動により、音声信号処理回路基板20の表面に対し空気が流れることとなり、この空気の流れによって、アンプ回路43を含む回路の冷却を行うことができる。
【0040】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係るボイスコイルスピーカー1を示す図であり、図5(A)は背面図、図5(B)は図5(A)のA−O−B線の断面図、図5(C)は振動板10が取り外された状態の正面図、図5(D)は図5(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。
なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
上述した第1実施形態では、音声信号処理回路基板20は、フレーム平部19の後面に対して固定されていた。一方で、本実施形態では、音声信号処理回路基板20は、フレーム平部19の前面に対して固定されている。
詳述すると、図5(D)に示すように、フレーム平部19において、位置決めピン28bの突出部30bが、前方へ向かって突出した形状となっている。そして、音声信号処理回路基板20は、フレーム平部19の前面において、音声信号処理回路基板20に形成された位置決め孔27のそれぞれに、フレーム平部19の前面に形成された位置決めピン28bのそれぞれが嵌合し、かつ、基板固定爪32bと、位置決めピン28bの基礎部29bとによって音声信号処理回路基板20が挟持されることにより、フレーム平部19における音声信号処理回路基板20の位置決めがなされた上で、フレーム平部19の後面に対して固定されている。
このように、フレーム平部19の前面に音声信号処理回路基板20が固定されているため、上述した第1実施形態のように、ダンパー22と音声信号処理回路基板20との間に形成された隙間を介して錦糸線42をダンパー22の前面側に延出させる必要が無くなり(図2(B)も併せて参照)、より錦糸線42の長さを短くすることができ、錦糸線42の干渉をより防止できる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、振動板10と音声信号処理回路基板20の間にダンパー22を備え、ダンパー22を支持するスピーカーフレーム15のフレーム平部19の表側に音声信号処理回路基板20を支持している。
これによれば、音声信号処理回路基板20に形成された出力端子40と、ボビン23との距離を不必要に長くすることなく、スピーカーフレーム15によって環状の音声信号処理回路基板20を適切な配置で支持可能である。また、ボイスコイルスピーカー1の後側から音声信号処理回路基板20にアクセス可能である。また、上述した第1実施形態のように、ダンパー22と音声信号処理回路基板20との間に形成された隙間を介して錦糸線42をダンパー22の前面側に延出させる必要が無くなり(図5(B)も併せて参照)、より錦糸線42の長さを短くすることができ、錦糸線42の干渉をより防止できる。
さらに、フレーム平部19の前面に音声信号処理回路基板20が取り付けられた構成となっているため、ボイスコイルスピーカー1の前側から音声信号処理回路基板20にアクセスでき、例えば、音声信号処理回路基板20を取り付ける際の作業が容易になる等、作業性の向上が図られている。また、ボイスコイルスピーカー1の構造上、フレーム平部19の前面側にスペースが形成されることとなるが、このスペースの有効活用となる。
【0042】
<第3実施形態>
次いで、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係るボイスコイルスピーカー1を示す図であり、図6(A)は背面図、図6(B)は図6(A)のA−O−B線の断面図、図6(C)は振動板10が取り付けられた状態の正面図、図6(D)は図6(A)のO−C線の断面図において要部を拡大した図である。
なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、第2実施形態と同様、フレーム平部19の前面に音声信号処理回路基板20が固定されている。
上述した第1実施形態では、アンプ回路43は、音声信号処理回路基板20に実装されていたが、本実施形態では、アンプ回路43が別の回路基板に実装されている。
すなわち、スピーカーフレーム15の上方には、箱状のサブ回路基板収容ケース50が設けられており、このサブ回路基板収容ケース50には、サブ回路基板51が収容されている。このサブ回路基板51は、当該サブ回路基板51に接続されたFPC(フレキシブルプリント回路基板)又はFFC(フレキシブルフラットケーブル)が、音声信号処理回路基板20のコネクター33に接続されることにより、音声信号処理回路基板20と電気的に接続されている。また、サブ回路基板51には、外部機器が接続されるサブコネクター55が設けられると共に、アンプ回路43が設けられており、サブ回路基板51は、サブコネクター55から入力された多チャンネルの音声信号に対し、増幅を含む所定の信号処理を施した上で、当該音声信号を音声信号処理回路基板20に出力する。
このように、アンプ回路43がサブ回路基板51に実装されているため、音声信号処理回路基板20に実装された他の回路との位置関係や、音声信号処理回路基板20の形状、大きさとの関係で、音声信号処理回路基板20にアンプ回路43を実装できない場合であっても、この音声信号処理回路基板20に接続されたサブ回路基板51に適切にアンプ回路43を実装できる。
【0043】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、音声信号処理回路基板20に12個の出力端子40が設けられ、出力端子40のそれぞれに錦糸線42が接続されていたが、出力端子40の数や、錦糸線の数はこれに限られない。すなわち、ボビン23に多層のボイスコイル24が形成されていることに起因して、錦糸線42が複数存在しているボイスコイルスピーカー1に対し、広く本発明を適用可能である。
また、上述した実施形態において、環状の音声信号処理回路基板20とは、完全な「輪」を意味せず、例えば、一部に切欠きを含んだC字状も含んだ概念である。すなわち、ダンパー22を全体として取り囲むことが可能な形状を広く含んだ概念である。
【符号の説明】
【0044】
1 ボイスコイルスピーカー
10 振動板
13 スピーカー本体
15 スピーカーフレーム(フレーム)
19 フレーム平部(フレーム)
20 音声信号処理回路基板(回路基板)
22 ダンパー
23 ボビン
24 ボイスコイル
40 出力端子
42 錦糸線
43 アンプ回路
50 サブ回路基板収容ケース
51 サブ回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカー本体に、多層のボイスコイルを形成したボビンと、前記ボビンに接続される振動板とを備えたボイスコイルスピーカーにおいて、
前記振動板の後方に音声信号を処理する回路基板を配置し、前記回路基板の周方向に前記多層のボイスコイルに出力する複数の出力端子を配列したことを特徴とするボイスコイルスピーカー。
【請求項2】
前記ボビンを囲うように前記回路基板を配置したことを特徴とする請求項1に記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項3】
フレームに対して前記ボビンを支持するためのダンパーを、前記ボビンを囲うように設け、前記ダンパーを囲うように環状の前記回路基板を配置したことを特徴とする請求項2に記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項4】
前記ボビンを支持するダンパーを備え、前記ダンパーを支持するフレームの裏側に前記回路基板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項5】
前記ボビンを支持するダンパーを備え、前記ダンパーを支持するフレームの表側に前記回路基板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項6】
前記出力端子と前記ボイスコイルを接続する錦糸線を前記ダンパーに編み込んで延在させたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項7】
前記錦糸線を前記ダンパーに放射状に編み込んだことを特徴とする請求項6に記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項8】
前記複数の出力端子を前記回路基板の周方向に間隔をあけて配列したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項9】
前記回路基板に多チャンネルの音声信号が入力されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のボイスコイルスピーカー。
【請求項10】
前記回路基板に音声信号増幅用のアンプ回路を実装したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のボイスコイルスピーカー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate