説明

ボタン電話装置の電話機端末

【課題】 回路規模を増大することなく、音声チャネル1と音声チャネル2による送受話器とスピーカ・マイクの通話をダイナミックに切り替えることができるボタン電話装置の電話機端末を提供することにある。
【解決手段】 電話機端末10は主制御装置に接続される伝送回路11と、音声チャネル1と2を送受話器13とスピーカ・マイク14に接続する音声チャネル制御回路12とを有する。該音声チャネル制御回路12は、チャネル切り替え信号によってチャネル切り替えが指示されると、音声チャネル1と2のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話を、空間分割により、または時分割により、音声チャネル2と1のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話に切り替える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は音声情報チャネルとして2つのチャネルを用いて主制御装置と音声データの送受信を行うボタン電話装置に関し、特に該音声情報チャネルの入出力を切り替えることにより、ボタン電話機端末の回路を軽減できるようにするボタン電話装置の電話機端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボタン電話機端末の構成例を、図8を参照して説明する。ボタン電話機端末は、伝送回路51によって、図示されていない主制御装置と、音声チャネル1および音声チャネル2の上り・下りの伝送を行う。
【0003】
音声チャネル1を送受話器による通話、音声チャネル2をスピーカとマイクロフォン(以下、マイク)による通話に割り当てる場合、次のように接続される。すなわち、伝送回路51に入出力する音声チャネル1のPCMデータは、PCM符号化・復号化回路52、上り下りの増幅器(AMP)を経て、送受話器(ハンドセット)53に接続される。一方、音声チャネル2のPCMデータは、信号処理回路55、PCM符号化・復号化回路56および上り下り増幅器(AMP)を経て、スピーカ57、マイク58に接続される。ここに、前記信号処理回路55は、スピーカ57とマイク58により発生するエコーを消去するための回路である。
【0004】
なお、本願発明に関連する従来技術を開示した特許文献として、下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特開平11−262041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来のボタン電話装置では、音声チャネル1と音声チャネル2による送受話器53とスピーカ・マイクの通話をダイナミックに切り替えようとすると、伝送回路51とPCM符号化・復号化回路52との間にも、エコーを消去するための信号処理回路を接続する必要が生じ、回路規模が増大するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術の課題を解消し、回路規模を増大することなく、音声チャネル1と音声チャネル2による送受話器とスピーカ・マイクの通話をダイナミックに切り替えることができるボタン電話装置の電話機端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明は、音声チャネルとして2つのチャネルを用いて主制御装置と音声データの送受信を行うボタン電話装置の電話機端末において、音声チャネル1,2の音声データを、送受話器およびスピーカ・マイクに選択的に接続する音声チャネル制御回路を具備し、該音声チャネル制御回路は、前記音声チャネル1と2による送受話器とスピーカ・マイクの通話を切り替えるようにした点に第1の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記音声チャネル制御回路は、チャネル切り替え信号によってチャネル切り替えが指示されると、音声チャネル1と2のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話を、音声チャネル2と1のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話に切り替えるようにした点に第2の特徴がある。
【0009】
さらに、本発明は、前記音声チャネル1,2は、音声チャネル同期信号1,2に従って前記送受話器およびスピーカ・マイクに選択的に接続され、前記音声チャネル制御回路は、チャネル切り替え信号によってチャネル切り替えが指示されると、前記音声チャネル1,2と音声チャネル同期信号1,2との対応関係を逆に切り替えるようにした点に第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音声チャネル1と音声チャネル2による送受話器とスピーカ・マイクの通話の切替を、回路規模を増大することなく行えるという効果がある。
【0011】
また、前記通話の切替を、ボタン電話装置の電話機端末の処理のみで、換言すれば、主制御装置に何らの負担をかけることなく行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は、主制御装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0013】
主制御装置1は、電話機端末10との間で、同期回路2を介して、音声情報チャネル1と音声情報チャネル2および制御情報の送受信を行う。音声情報は、中央演算部3からの音声チャネル交換スイッチ4の制御により、電話機端末間および局線回路5に、交換接続することができる。一方、電話機端末10の制御情報は、中央演算部3によって制御情報メモリ6への書き込み、読み出しを行うことで、データの送受信を行う。
【0014】
次に、前記電話機端末10の構成の一実施形態を説明する。図2は該電話機端末10の全体構成を示すブロック図、図3、図4は、それぞれ該電話機端末10の中の伝送回路11、音声チャネル制御回路12の具体的構成を示すブロック図である。なお、図2において、図8と同等な一部の物には同じ符号が付されている。
【0015】
図2に示されているように、電話機端末10は、伝送回路11および音声チャネル制御回路12を有する。電話機端末10は、伝送回路11によって、前記主制御装置1と、音声チャネル1、音声チャネル2の上り・下りの伝送を行う。該上り・下りの音声チャネル1、音声チャネル2のPCMデータは、音声チャネル制御回路12によって、送受話器13の回路、またはスピーカ・マイク14の回路のいずれかを選択する。
【0016】
前記伝送回路11は、図3に示されているように、同期回路21,音声チャネルメモリ22,23,および制御情報メモリ24から構成されている。同期回路21は、送受信するデータを同期的に、音声チャネルメモリ1(22)および音声チャネルメモリ2(23)に書き込んだり、読み出したりする。同期回路21からは、音声チャネル同期信号1,2が出力される。これらの音声チャネル同期信号1,2については、後述する。
【0017】
前記音声チャネル制御回路12は、図4に示されているように、音声チャネル1受信データバッファメモリ31,音声チャネル1送信データバッファメモリ32,音声チャネル2受信データバッファメモリ33,音声チャネル2送信データバッファメモリ34,およびチャネル切り替え部35から構成されている。該音声チャネル制御回路12は、上り・下りの音声チャネル1、音声チャネル2のPCMデータを、前記送受信バッファメモリ31〜34に記憶し、前記チャネル切り替え部35によって、PCMデータ入出力1、またはPCMデータ入出力2のいずれかを選択して入出力することができる。
【0018】
次に、本実施形態の動作を図4、図5を参照して説明する。図4の音声チャネル1で送受話器13による通話を行い、音声チャネル2でスピーカ・マイクによる通話を行う場合には、ユーザによって操作される図示されていない選択スイッチの選択信号によりチャネル切替信号が例えばL(ロウ)レベルにされ、チャネル切り替え部35は図4のように、あるいは図5に示されているように接続される。すなわち、PCMデータ出力1,PCMデータ入力1のそれぞれには、下りチャネル1、上りチャネル1が接続され、PCMデータ出力2,PCMデータ入力2のそれぞれには、下りチャネル2、上りチャネル2が接続される。
【0019】
次に、音声チャネル1でスピーカ・マイク14による通話を行い、音声チャネル2で送受話器13による通話を行うようにダイナミックに切り替えられる場合には、ユーザによって操作される前記選択スイッチの選択信号によりチャネル切替信号が例えばH(ハイ)レベルにされ、チャネル切り替え部35は図4とは逆の接点に接続される。すなわち、PCMデータ出力1,PCMデータ入力1のそれぞれには、下りチャネル2、上りチャネル2が接続され、PCMデータ出力2,PCMデータ入力2のそれぞれには、下りチャネル1、上りチャネル1が接続される。
【0020】
この結果、音声チャネル1受信データバッファメモリ31,音声チャネル1送信データバッファメモリ32に一旦蓄積された音声チャネル1のデータは、スピーカ・マイク14に接続され、一方、音声チャネル2受信データバッファメモリ33,音声チャネル2送信データバッファメモリ34に一旦蓄積された音声チャネル2のデータは、送受話器13に接続される。
【0021】
このように、本実施形態によれば、音声チャネル1,2による送受話器13とスピーカ・マイク14の通話をダイナミックに切り替えても、スピーカ・マイク14の通話には常にエコーを消去するための信号処理回路が接続されることになるので、該信号処理回路を増設する必要がなくなる。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態を、図6、図7を参照して説明する。この実施形態が前記第1実施形態と異なる点は、第1実施形態が音声チャネル1,2を空間分割しているのに対して、第2実施形態は時分割した点である。なお、図6において、図2、図8と同等な一部の物には、同じ符号が付されている。
【0023】
図6は本実施形態の電話機端末10の構成を示すブロック図であり、音声チャネル制御回路41には、前記チャネル切り替え信号と、図3の同期回路21から出力された音声チャネル同期信号1,2が入力される。音声チャネル制御回路41は、これらの信号により、図6、図7に示されているように、PCMデータ出力およびPCMデータ入力に、下り音声チャネル1,上り音声チャネル1,下り音声チャネル2および上り音声チャネル2を接続する。また、PCM符号化・復号化回路42は音声チャネル同期信号1がHレベルの間だけイネーブルになり、一方PCM符号化・復号化回路43は音声チャネル同期信号2がHレベルの間だけイネーブルになる。
【0024】
次に、動作を説明すると、図6の音声チャネル1で送受話器13による通話を行い、音声チャネル2でスピーカ・マイクによる通話を行う場合には、ユーザによって操作される図示されていない選択スイッチの選択信号によりチャネル切替信号が例えばL(ロウ)レベルにされる。そうすると、音声チャネル同期信号1がHレベルの間は、PCMデータ出力およびPCMデータ入力に、それぞれ下りチャネル1、上りチャネル1が接続され、PCM符号化・復号化回路42がイネーブル、PCM符号化・復号化回路43はディセーブルであるので、送受話器13に接続される。一方、音声チャネル同期信号2がHレベルの間は、PCMデータ出力およびPCMデータ入力に、それぞれ下りチャネル2、上りチャネル2が接続され、PCM符号化・復号化回路42がディセーブル、PCM符号化・復号化回路43はイネーブルであるので、スピーカ・マイク14に接続される。
【0025】
次いで、音声チャネル1でスピーカ・マイク14による通話を行い、音声チャネル2で送受話器13による通話を行うようにダイナミックに切り替えられる場合には、ユーザによって操作される前記選択スイッチの選択信号によりチャネル切替信号が例えばH(ハイ)レベルにされる。そうすると、音声チャネル同期信号1がHレベルの間は、PCMデータ出力およびPCMデータ入力に、それぞれ下りチャネル2、上りチャネル2が接続され、PCM符号化・復号化回路42がイネーブル、PCM符号化・復号化回路43はディセーブルであるので、下りチャネル2、上りチャネル2は送受話器13に接続される。一方、音声チャネル同期信号2がHレベルの間は、PCMデータ出力およびPCMデータ入力に、それぞれ下りチャネル1、上りチャネル1が接続され、PCM符号化・復号化回路42がディセーブル、PCM符号化・復号化回路43はイネーブルであるので、下りチャネル1、上りチャネル1はスピーカ・マイク14に接続される。
【0026】
このように、音声チャネル1のデータは、スピーカ・マイク14に接続され、一方、音声チャネル2のデータは、送受話器13に接続されることになり、本実施形態によれば、音声チャネル1,2による送受話器13とスピーカ・マイク14の通話をダイナミックに切り替えても、該スピーカ・マイク14の通話回路には常にエコーを消去するための信号処理回路が接続されるから、該信号処理回路を増設する必要がなくなる。
【0027】
また、本発明によれば、主制御装置側では、電話機端末の音声チャネル1と2が、送受話器による通話かスピーカ・マイクによる通話かによってチャネル切替をすることを必要とせずに、換言すれば主制御装置に何らの負担をかけることなく、前記音声チャネル1と2を送受話器による通話かスピーカ・マイクによる通話かに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ボタン電話装置の主制御装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態の電話機端末の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の伝送回路11の概略の構成を示すブロック図である。
【図4】図2の音声チャネル制御回路の概略の構成を示すブロック図である。
【図5】音声チャネル制御回路の動作を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態の電話機端末の構成を示すブロック図である。
【図7】音声チャネル制御回路の動作を説明する図である。
【図8】従来の電話機端末の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・主制御装置、10・・・電話機端末、11・・・伝送回路、12,41・・・音声チャネル制御回路、13・・・送受話器(ハンドセット)、14・・・スピーカ・マイク、55・・・信号処理回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声チャネルとして2つのチャネルを用いて主制御装置と音声データの送受信を行うボタン電話装置の電話機端末において、
音声チャネル1,2の音声データを、送受話器およびスピーカ・マイクに選択的に接続する音声チャネル制御回路を具備し、
該音声チャネル制御回路は、前記音声チャネル1と2による送受話器とスピーカ・マイクの通話を切り替えることを特徴とするボタン電話装置の電話機端末。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン電話装置の電話機端末において、
前記音声チャネル制御回路は、チャネル切り替え信号によってチャネル切り替えが指示されると、音声チャネル1と2のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話を、音声チャネル2と1のそれぞれによる送受話器とスピーカ・マイクの通話に切り替えることを特徴とするボタン電話装置の電話機端末。
【請求項3】
請求項1に記載のボタン電話装置の電話機端末において、
前記音声チャネル1,2は、音声チャネル同期信号1,2に従って前記送受話器およびスピーカ・マイクに選択的に接続され、
前記音声チャネル制御回路は、チャネル切り替え信号によってチャネル切り替えが指示されると、前記音声チャネル1,2と音声チャネル同期信号1,2との対応関係を逆に切り替えることを特徴とするボタン電話装置の電話機端末。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のボタン電話装置の電話機端末において、
前記スピーカ・マイクの通話回路のみに、信号処理回路を接続したことを特徴とするボタン電話装置の電話機端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate