説明

ポジトロン放出源化合物の製造方法

【課題】本発明は、より高純度のポジトロン放出源化合物を製造できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るポジトロン放出源化合物の製造方法は、ハロゲン化合物(II)からトリアルキルスズ化合物(III)を得る工程と、トリアルキルスズ化合物(III)からノナンカーボネート化合物(IV)を得る工程を含み、下記ポジトロン放出源化合物(I)を製造するためのものである。


[式中、R1はポジトロン放出元素を含む基を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロン放出源化合物を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医学の発達に伴い、一般的な疾患の他に認知機能障害が注目を集めている。認知症には、アルツハイマー型老年認知症のように加齢によるもの以外に、家族性アルツハイマー病などがある。また、統合失調症などのように遺伝的要因と後天的要因の両方が認められるものもある。
【0003】
アルツハイマー病は、喫煙者の発症率が少ないというデータがあることから、ニコチンとの関係が指摘されている。特に最近の研究では、脳におけるニコチンアセチルコリンエステラーゼ受容体のサブタイプの一つであるα7が、アルツハイマー病と関係することが明らかにされた。このα7は、記憶障害、統合失調症、多動性障害、パーキンソン病など他の認知機能障害との関係も取りざたされている。
【0004】
よって、α7に対するリガンドが、認知機能障害の治療薬として探索されてきた。例えば特許文献1には、α7のリガンドであって、ニコチン受容体の機能不全に関連する疾患の処置等に有用な化合物が開示されている。
【0005】
ところで本発明者らは、α7に結合する化合物をポジトロン放出源とするポジトロン断層撮影法により脳疾患を診断することについて研究を進めていた。ところが、ニコチン受容体には少なくとも12個のサブタイプが存在し、また、α7の選択的リガンドであるとされている化合物であっても他のサブタイプに結合してしまうものが多く、正確な診断が可能なポジトロン放出源化合物を探索することは困難であった。しかし、特許文献2のとおり、特許文献1に記載の化合物がポジトロン断層撮影法のポジトロン放出源として適することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−540208号公報
【特許文献2】特開2007−217370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、本発明者らは、特許文献1に記載の化合物へポジトロン放出能を有する化合物を合成し、当該化合物を用いたポジトロン断層撮影法を開発している。本発明者らは、臭素置換された上記化合物から、下記スキームにより、ポジトロン放出源化合物を合成していた。
【0008】
【化1】

[式中、Rはポジトロン放出元素を含む基を示す]
【0009】
また、上記スキームの原料化合物、即ち特許文献1の化合物は、下記スキームにより合成されていた。
【0010】
【化2】

【0011】
ところが、上記スキームのとおりポジトロン放出源化合物を合成すると、化学構造の類似性から、トリブチルスズ置換体から未反応のブロモ置換体を完全に分離することは非常に難しい。かかるブロモ置換体は目的化合物であるポジトロン放出源化合物にも混入する。その結果、上記スキームにより合成されたポジトロン放出源化合物を用いてポジトロン断層撮影法を実施すると、ブロモ置換体もα7に結合するため、α7に結合するポジトロン放出源化合物の量が減り、感度が低下するおそれがあった。
【0012】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、より高純度のポジトロン放出源化合物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、先にポジトロン放出能を有する置換基を導入するためのトリアルキルスズ基を導入しておき、その後に1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナンを反応させるようにすれば、目的化合物であるポジトロン放出源化合物とその前駆体化合物との化学構造が大きく異なるため精製が容易となり、より高純度のポジトロン放出源化合物が得られることを見出して、本発明を完成した。
【0014】
本発明に係るポジトロン放出源化合物の製造方法は、下記一般式(I)で表されるポジトロン放出源化合物を製造するための方法であって、
【0015】
【化3】

[式中、R1はポジトロン放出元素を含むC1-6アルキル基またはハロゲン原子を示す]
ハロゲン化合物(II)からトリアルキルスズ化合物(III)を得る工程;
【0016】
【化4】

[式中、R2は−OCO2−基を活性化する保護基を示し;Halはハロゲン原子を示し;R3〜R5はそれぞれ独立してC1-8アルキル基を示す]
および、上記トリアルキルスズ化合物(III)からノナンカーボネート化合物(IV)を得る工程;
【0017】
【化5】

[式中、R2〜R5は上記と同義を示す]
を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかをいうが、反応性等の問題から、HalやHal’からはフッ素原子は除くものとする。
【0019】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等である。また、「C1-8アルキル基」とは、炭素数1〜8の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基をいい、例えば、上記に加えてヘプチルやオクチル等を挙げることができる。
【0020】
本発明方法においては、R2を、ニトロフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはペンタフルオロフェノールのいずれかから水酸基を除いた基とすることが好ましい。これら保護基は、本発明に係る反応において安定であり、また、反応に悪影響を及ぼさない上に、1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナンと容易に交換することができる。
【0021】
本発明方法においては、R3〜R5をそれぞれブチル基に、また、R1を−11CH3、−76Brまたは−123Iのいずれかとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明方法で製造されたポジトロン放出源化合物は、従来方法によるものよりも不純物が少なく、高純度である。よって、本発明方法で製造されたポジトロン放出源化合物を用いれば、より高感度なポジトロン断層撮影法が可能となる。よって本発明は、正確なポジトロン断層撮影法を可能にするものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記のとおり、本発明に係るポジトロン放出源化合物の製造方法は、ハロゲン化合物(II)からトリアルキルスズ化合物(III)を得る工程と、トリアルキルスズ化合物(III)からノナンカーボネート化合物(IV)を得る工程を含む。以下、本発明方法を、実施の順番に従って説明する。
【0024】
1.ハロゲン化合物(II)の合成
本発明の原料化合物であるハロゲン化合物(II)は、下記スキームにより容易に合成することができる。
【0025】
【化6】

[式中、R2とHalは上記と同義を示し;Hal’はハロゲン原子を示し、Halと同一であっても異なっていてもよい]
【0026】
化合物(V)は、市販のものがあればそれを用いてもよいし、また、市販の化合物から当業者公知の方法により容易に合成することができる。
【0027】
2は−OCO2−基の保護基であり、且つ−OCO2−基の活性を高めるものであって、−OCO2−基と1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナンとの反応性を高めるものをいう。このような基としては、例えば、ニトロフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはペンタフルオロフェノールのいずれかから水酸基を除いた基を挙げることができる。
【0028】
化合物(VI)は、比較的シンプルな化学構造を有することから、市販のものがあればそれを用いてもよいし、また、市販の化合物から当業者公知の方法により合成して用いてもよい。
【0029】
上記反応は、一般的に、塩基の存在下、溶媒中で化合物(V)と化合物(VI)を反応させればよい。好適には、化合物(VI)の溶液中、より反応性の高い化合物(V)を添加することが好ましい。
【0030】
溶媒としては、化合物(V)の分解を抑制するために、無水の有機溶媒を用いることが好ましい。例えば、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド類;これらの混合溶媒であって、事前に乾燥したものを挙げることができる。
【0031】
塩基としては、上記有機溶媒に溶解できるものが好適である。例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。
【0032】
反応混合液における化合物(V)および化合物(VI)の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、それぞれ20mg/mL以上、100mg/mL以下程度とすることができる。また、化合物(V)または化合物(VI)の一方が高価であったり、市販品が無く合成する必要があるなどの事情がある場合には、一方の使用量を他方よりも少なくすることもできるが、通常、両者を等モルまたは略等モル用いる。また、塩基の使用量も、化合物(V)および化合物(VI)の等モルまたは略等モルとすればよい。
【0033】
反応温度は適宜調整すればよいが、化合物(V)の分解を抑制するために、化合物(VI)の滴下時において、−10℃以上、10℃以下程度とすることが好ましい。反応の急激な進行を抑制するために、化合物(VI)の溶液を滴下するのも好適な態様である。化合物(VI)の滴下後は、0℃以上、10℃以下程度で反応をさらに進行せしめればよい。
【0034】
反応時間も適宜調整すればよく、具体的には、クロマトグラフィなどで原料化合物の消失が確認されるまでとしたり、或いは予備実験などで決定することもできる。通常、化合物(VI)の添加後、30分間以上、5時間以下程度とすることができる。
【0035】
反応終了後においては、通常の後処理を行えばよい。例えば、溶媒などを減圧留去した後、酢酸エチルやクロロホルムなど水と混和しない有機溶媒で希釈してから水や飽和食塩水などで洗浄する。次いで、有機相を無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで乾燥してから濃縮する。目的化合物は、さらに再結晶などで精製してもよい。
【0036】
2.トリアルキルスズ化合物(III)の合成
次に、ハロゲン化合物(II)からトリアルキルスズ化合物(III)を製造する。より具体的には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)の存在下、溶媒中、ハロゲン化合物(II)にビストリアルキルスズを反応させ、ハロゲン化合物(II)のハロゲン基をトリアルキルスズ基に置換する。
【0037】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエンなどの芳香族炭化水素;これらの混合溶媒であって、事前に乾燥したものを用いることができる。
【0038】
一般的なビストリアルキルスズは市販されているので、ハロゲン化合物(II)に対して過剰量のビストリアルキルスズを用いることが好ましい。通常、ハロゲン化合物に対して、1.5倍モル以上、3倍モル以下程度用いる。また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)は、ハロゲン化合物(II)に対して0.05倍モル以上、0.2倍モル以下程度と、触媒量で十分である。
【0039】
反応混合液におけるハロゲン化合物(II)やビストリアルキルスズの濃度は、適宜調整することができるが、通常、それぞれ1mg/mL以上、20mg/mL以下程度、0.01mL/mL以上、0.1mL/mL以下程度とすることができる。
【0040】
反応温度は適宜調整すればよいが、例えば、30℃以上、150℃以下とすることができ、加熱還流してもよい。また、反応時間も適宜決定すればよいが、通常、1時間以上、10時間以下程度とすることができる。
【0041】
反応終了後においては、通常の後処理を行えばよい。例えば、溶媒などを減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィなどで精製すればよい。
【0042】
3.ノナンカーボネート化合物(IV)の合成
次いで、溶媒中、塩基の存在下、トリアルキルスズ化合物(III)と1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナンを反応させ、ノナンカーボネート化合物(IV)を製造する。
【0043】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド類;これらの混合溶媒であって、事前に乾燥したものを用いることができる。
【0044】
塩基としては、上記有機溶媒に溶解できるものが好適である。例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。また、反応を促進するために、触媒量のイミダゾールなどを添加してもよい。
【0045】
反応混合液における化合物(III)とノナン化合物の量は、適宜調整すればよい。例えば、両者を等モルまたは略等モル用いてもよいが、場合によっては、一方を他方の1.05倍モル以上、2.0倍モル以下程度用いてもよい。
【0046】
反応混合液における化合物(III)とノナン化合物の濃度は適宜調整すればよいが、比較的高濃度で反応を行うことができる。例えば、化合物(III)の濃度を100mg/mL以上、400mg/mL以下程度、ノナン化合物の濃度を10mg/mL以上、50mg/mL以下程度とすることができる。また、塩基は、化合物(III)やノナン化合物と同モル程度用いればよい。
【0047】
反応温度は適宜調整すればよいが、例えば、10℃以上、50℃以下とすることができる。また、反応時間も適宜決定すればよいが、通常、1時間以上、10時間以下程度とすることができる。
【0048】
反応終了後においては、通常の後処理を行えばよい。例えば、溶媒などを減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィなどで精製すればよい。
【0049】
反応終了後においては、通常の後処理を行えばよい。例えば、反応混合液を酢酸エチルやクロロホルムなど水と混和しない有機溶媒で希釈し、水や飽和食塩水などで洗浄する。次いで、有機相を無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで乾燥してから濃縮する。目的化合物は、さらに再結晶などでクロマトグラフィなどにより精製してもよい。なお、目的化合物であるノナンカーボネート化合物(IV)は、原料化合物であるトリアルキルスズ化合物(III)や1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナンと構造が異なり、物性も異なることから、これら原料化合物からの分離が容易であり、高純度で得られる。
【0050】
4.ポジトロン放出源化合物(I)の合成
ポジトロン放出源化合物(I)は、上記で得られたノナンカーボネート化合物(IV)のトリアルキルスズ基を、ポジトロン放出能を有する元素を有する基に置換することにより製造することができる。
【0051】
ポジトロン放出能を有する元素としては、11C、18F、76Brおよび123Iを例示することができる。よって、ポジトロン放出能を有する元素を含むR1としては、[11C]C1-6アルキル基、および18F、76Brおよび123Iを挙げることができる。
【0052】
1を導入する試薬としては、[11C]C1-6アルキルのハロゲン化物や、18-76Br-123-を用いればよい。
【0053】
ポジトロン放出源化合物(I)は、具体的には、特許文献2(特開2007−217370号公報)に記載の方法に準拠して製造することができる。即ち、例えばR111CH3であるポジトロン放出源化合物を製造するには、サイクロトロンにより加速した陽電子をポジトロン放出元素に応じたターゲットに照射して11CO2を得る。この11CO2を、例えばマイクロラボで還元した上でヨウ化水素酸を作用させて11CH3Iとし、ノナンカーボネート化合物(IV)と反応させることによって、ポジトロン放出源化合物を製造できる。
【0054】
本発明方法により得られるノナンカーボネート化合物(IV)は、中間体化合物などの不純物の混入が少なく、純度が高い。結果として、本発明方法により得られるポジトロン放出源化合物の純度も高くなる。従って、本発明方法で製造されたポジトロン放出源化合物を用いてポジトロン断層撮影法を実施すれば、より高感度での測定が可能になる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0056】
実施例1−1 4−ブロモフェニル 4−ニトロフェニル カーボネート
無水テトラヒドロフラン(60mL)と無水ジクロロメタン(24mL)からなる混合溶媒へ4−ブロモフェノール(5g,28.9mmol)とピリジン(2.29g,28.9mmol)を加え、溶解させた。当該溶液を冷却した後、クロロギ酸のp−ニトロフェニルエステル(5.83g,28.9mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(24mL)を−2〜3℃で添加した。さらに、当該反応混合液を3℃で1時間攪拌し、反応を促進させた。反応終了後、当該反応混合液を減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、水と飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。酢酸エチルを用いて残渣を再結晶し、目的化合物を得た(収量:7.26g,収率:74%)。
1H-NMR(CDCl3)δ8.36-8.30(m,2H),7.59-7.54(m,2H),7.51-7.45(m,2H),7.21-7.15(m,2H)
【0057】
実施例1−2 4−ニトロフェニル 4−(トリブチルスタンニル)フェニル カーボネート
上記実施例1−1で得られた4−ブロモフェニル 4−ニトロフェニル カーボネート
(1g,2.96mmol)を無水1,4−ジオキサン(100mL)に溶解した。当該溶液に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(381mg,0.33mmol)とビストリブチルスズ(3.28mL,6.51mmol)を加えた。当該反応混合液を4時間加熱還流した。当該反応混合液を室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出液:n−ヘプタン/酢酸エチル=90/10)で精製し、粗目的化合物(収量:500mg)を得た。それ以上精製せず、次の工程へ進んだ。
【0058】
実施例1−3 4−(トリブチルスタンニル)フェニル 1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン−4−カルボキシレート
無水ジクロロメタン(576μL)と無水ジメチルホルムアミド(576μL)からなる混合溶媒に、1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(38.5g,0.31mmol)と、上記実施例1−2で得た粗4−ニトロフェニル 4−(トリブチルスタンニル)フェニル カーボネート(256mg,0.34mmol相当)を溶解した。当該溶液に、イミダゾール(4.24mg,0.06mmol)とトリエチルアミン(43.5μL,0.31mmol)を室温で加えた。当該反応混合液を室温で4時間攪拌し、反応を促進した。反応終了後、当該反応混合液をクロロホルムで希釈した。得られた希釈液を、1N水酸化ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。NHシリカを用いたカラムクロマトグラフィ(溶出液:n−ヘプタン/酢酸エチル=3/2)で残渣を精製した。さらに、GPCカラム(JAIGEL−1HおよびJAIGEL−2H,それぞれφ20×600mm)を用いたゲル浸透クロマトグラフィ(溶出液:クロロホルム)で精製し、目的化合物を得た(収量:40.1mg,実施例1−2〜実施例1−3を通じての収率:4.9%)。
1H-NMR(CDCl3)δ7.56-7.31(m,2H,aromatic),7.14-6.91(m,2H,aromatic),4.51-4.24(m,1H),3.30-2.90(m,6H),2.24-1.94(m,2H),1.88-0.75(m,27H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるポジトロン放出源化合物を製造するための方法であって、
【化1】

[式中、R1はポジトロン放出元素を含むC1-6アルキル基またはハロゲン原子を示す]
ハロゲン化合物(II)からトリアルキルスズ化合物(III)を得る工程;
【化2】

[式中、R2は−OCO2−基を活性化する保護基を示し;Halはハロゲン原子を示し;R3〜R5はそれぞれ独立してC1-8アルキル基を示す]
および、上記トリアルキルスズ化合物(III)からノナンカーボネート化合物(IV)を得る工程;
【化3】

[式中、R2〜R5は上記と同義を示す]
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
2が、ニトロフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはペンタフルオロフェノールのいずれかから水酸基を除いた基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
3〜R5がそれぞれブチル基である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
1が−11CH3、−76Brまたは−123Iのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−20944(P2011−20944A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165995(P2009−165995)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000134637)株式会社ナード研究所 (31)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】