説明

ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂

【課題】 低粘度で十分な混合が可能で、硬化後において高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着し、放熱性及び耐熱性を長期に亘って維持し得るポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】
(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールと、(C)ポリイソシアネートと、(D)無機充填材と、(E)リン酸エステルと、(F)可塑剤とを含有しているポリウレタン樹脂組成物およびこれを硬化させたポリウレタン樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂に関し、より詳細には、硬化後において、高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着し、放熱性及び耐熱性を長期に亘って維持し得るポリウレタン樹脂組成物、及びこれを硬化させたポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電化製品等に使用される電子回路の基板においては、電子部品を湿気等から保護するために、体積抵抗値の高い難燃性の放熱性ポリウレタン樹脂組成物等からなる封止材によって基板全体を封止することが行われている(特許文献1)。しかし、電子回路の基板には、動作時に発熱する多くの電子部品が取り付けられ、近年ではLSI等に見られるように電子回路の集積化及び高機能化が為されているため、放熱量の増大とともにその発熱も局部的なものとなってきている。このように電子部品から発生する熱を効率よく除去するためには、封止材が回路基板や電子部品に長期間密着していることが必要なため、高温条件下における硬度変化が小さいことが必要である。また、封止剤として使用される放熱性ポリウレタン樹脂は、上述のように電子部品に密着した状態で使用されるため、長期に亘って放熱性及び耐熱性を維持することも必要とされる。
【0003】
このような点に鑑み、種々の放熱性ポリウレタン樹脂組成物の開発が行われているが(特許文献2〜7)、上記従来の問題点をすべて解決し得るものは見出されていない。ここで、ポリオール成分として、例えばポリプタジエンポリオールのような水酸基含有共役ジエン重合体を配合することが考えられるが、この場合にも高温条件下で長期間使用すると樹脂の硬度が上昇していまい、長期にわたって基材に十分に密着することができなくなる傾向が現れ、高い放熱性を長期にわたって維持することができないという問題がある。また、水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物や、ひまし油系ポリオールの水素添加物をポリオールとして使用することが考えられるが、この場合、高温条件下で長期間使用するとポリウレタン樹脂が軟化し易くなり、特に基材への密着性を向上させるために樹脂の硬度を低くした場合には、高温下でポリウレタン樹脂の溶融が起こり易いという問題がある。従って、すべての性能において満足し得る放熱性ポリウレタン樹脂組成物は得られておらず、特に、高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着し、放熱性及び耐熱性を長期に亘って維持し得るポリウレタン樹脂は得られていないというのが実情である。
【特許文献1】特開2000−226426号公報
【特許文献2】特開2002−121529号公報
【特許文献3】特開2002−134666号公報
【特許文献4】特開2003−133493号公報
【特許文献5】特開2003−138130号公報
【特許文献6】特開2004−300300号公報
【特許文献7】特開2007−131830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、硬化後において、高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着し、放熱性及び耐熱性を長期に亘って維持し得るポリウレタン樹脂組成物、及びこれを硬化させたポリウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールと、(C)ポリイソシアネートと、(D)無機充填材と、(E)一般式(1)で表されるリン酸エステルと、(F)可塑剤とを含有していることを特徴とする。
【0006】
本発明のポリウレタン樹脂組成物では、ポリオール成分として、(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールとが配合されているため、硬化後において、(A)水酸基含有共役ジエン重合体の配合により懸念される高温条件下における樹脂の硬度上昇の問題が解決されるとともに、(B)水素添加ポリオールの配合により懸念されるポリウレタン樹脂の溶融の問題が解決され、長期にわたる放熱性及び耐熱性の維持が可能となる。
【0007】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物では、一般式(1)で表される(E)リン酸エステルを配合しているため、(D)無機充填材を高い配合比率で使用した場合にも、比較的低粘度を保ったままポリウレタン組成物を均一に混合することができる。
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分として(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールとを含有しているため、硬化後において、高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着できる。従って、放熱性及び耐熱性が長期に亘って維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)水酸基含有共役ジエン重合体及び(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールと、(C)ポリイソシアネートとの反応によりポリウレタン樹脂を生成する。
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において使用される(A)水酸基含有共役ジエン重合体としては、ポリプタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールを挙げることができる。
【0012】
また、(B)水素添加ポリオールの一つである水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物は、上記(A)水酸基含有共役ジエン重合体として例示した化合物に水素を添加したものを挙げることができる。水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物のヨウ素価は、20g/100g以下であることが好ましく、10g/100g以下であることがより好ましい。ヨウ素価が上記範囲より大きいと、高温条件下における硬度上昇が大きくなり、基材に十分密着することができなくなる場合がある。
【0013】
更に、もう一つの(B)水素添加ポリオールであるひまし油系ポリオールの水素添加物としては、ひまし油に水素付加した水添ひまし油のほか、ひまし油脂肪酸に水素を付加した水添ひまし油脂肪酸や水添ひまし油を用いて得られる水添ひまし油変性ポリオールが挙げられる。なお、以下、「水添」と記載するものは、「水素添加物」を意味している。
【0014】
水添ひまし油変性ポリオールとしては、例えば、水添ひまし油と水添ひまし油以外の油脂とのエステル交換反応物、水添ひまし油と水添ひまし油脂肪酸を含む水添油脂脂肪酸とのエステル化反応物、水添ひまし油と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ひまし油に含まれる水酸基の一部を酢酸などのモノカルボン酸でエステル化した反応生成物などが挙げられる。
【0015】
(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物のヨウ素価は、20g/100g以下であることが好ましく、10g/100g以下がより好ましい。ヨウ素価が上記範囲より大きいと、高温条件下における硬度上昇が大きくなり、基材に十分密着することができなくなる場合がある。
【0016】
本発明のポリウレタン樹脂組成物においては、(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、(B)水素添加ポリオールとの配合重量比は、1/99〜90/10の範囲であることが好ましく、5/95〜50/50の範囲であることがより好ましい。(A)水酸基含有共役ジエン重合体の配合比が多いと、高温条件下における樹脂の硬度上昇が大きくなる傾向が現れる。また、(B)水素添加ポリオールの配合比が多いと、高温下でポリウレタン樹脂の大幅な硬度低下や溶融が起こる傾向が現れる。
【0017】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において使用し得る(C)ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0019】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0022】
また、これらの有機ポリイソシアネートのカルボジイミド体、アロハネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等の変性体を挙げることができる。尚、これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0023】
これらのうち、特に、変色が起こりにくいという観点から、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート変性イソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート変性ビューレット体、及びヘキサメチレンジイソシアネート変性アダクト体がより好ましい。
【0024】
また、本発明においては、上記ポリイソシアネートと特定の構造を有する(B)ポリオールとをイソシアネート基過剰条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを(C)ポリイソシアネートとして使用してもよい。
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂組成物においては、(C)ポリイソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、(A)水酸基含有共役ジエン重合体および(B)水素添加ポリオールに含まれる水酸基の和とのモル比(NCO/OH)が、0.3〜1.1であることが好ましい。イソシアネート基と水酸基のモル比がこの範囲より小さいと、得られる樹脂の耐熱性が低くなり、この範囲より大きいと、樹脂が硬くなり、基材に十分密着することができなくなる場合があるからである。
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂組成物に配合される(D)無機充填材としては、例えば、アルミナなどの金属酸化物、窒化アルミニウムや窒化ホウ素などの金属窒化物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などを挙げることができる。
【0027】
(D)無機充填材は、平均粒子径の異なる少なくとも2種類の混合物であることが好ましい。具体的には、(DL)平均粒子径の最も大きい無機充填材と(DS)平均粒子径の最も小さい無機充填材との平均粒子径の比(DL)/(DS)が、1.5〜100であることが好ましく、2〜50であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、ポリオール成分をより低粘度化することができる。
【0028】
さらに、(DL)平均粒子径の最も大きい無機充填材と(DS)平均粒子径の最も小さい無機充填材の重量比は、(DL)/(DS)=99/1〜50/50であることが好ましい。
【0029】
(D)無機充填材の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、30〜95重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、60〜95重量%であることが更に好ましく、70〜90重量%であることが最も好ましい。(D)無機充填材の配合量が上記範囲より多いと初期混合粘度が高くなりすぎる傾向にあり、上記範囲より少ないと十分な放熱性が得られにくくなる傾向にある。
【0030】
更に、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、一般式(1)で表される(E)リン酸エステルが配合される。
【0031】
【化1】

【0032】
ここで、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数、R’はOH又は一般式(2)に示す基であり、一般式(1)及び一般式(2)においてR”はCH3又はCH2CH3であり、「/」はその左右に記載されているオキシアルキレン基がブロック付加でもランダム付加でもよいことを表している。
【0033】
【化2】

【0034】
この(E)リン酸エステルは、例えば、炭素数1〜30のモノアルコールに公知の方法によりアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルモノオールと、無水リン酸とを反応させて得ることができる。なお、上記アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドを必須成分とするものであればよく、プロピレンオキサイドやブチレンオキサイドを併用することもできる。更に、アルキレンオキサイドの付加モル数や、ポリエーテルモノオールと無水リン酸との反応割合は、上記一般式(1)の条件を満たすように適宜選択されるものである。
【0035】
本発明のポリウレタン樹脂組成物に使用される一般式(1)で表される(E)リン酸エステルの配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、0.01〜2重量%の範囲が好ましく、0.01〜1重量%の範囲がより好ましい。上記範囲を超えると、使用量の増加による更なる減粘効果は得られ難くなるとともに、ポリウレタン樹脂の物性も低下する傾向が現れ、また、上記範囲未満では、(E)リン酸エステルの添加による減粘効果が得られない。
【0036】
更に、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、(F)可塑剤が配合される。可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸ジエステル、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリドなどのひまし油系エステル、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどのリン酸トリエステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテートなどのピロメリット酸エステルなどが挙げられる。
【0037】
上記(F)可塑剤の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがより好ましく、5〜15重量%が更に好ましい。(F)可塑剤の配合量が上記範囲より少ないと、ポリオール成分の十分な減粘効果と、ポリウレタン樹脂の可撓性が得られ難くなる傾向にあり、上記範囲より多いと、ポリウレタン樹脂の強度などの各種物性が低下する傾向にある。
【0038】
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール含有酸化防止剤、フェニルジイソデシルホスファイトなどのリン含有酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステルなどのイオウ含有酸化防止剤、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのフェノールとイオウとを一分子中に含有する酸化防止剤などを挙げることができる。酸化防止剤を用いる場合、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、0.01〜5重量%の範囲で添加することが好ましい。また、吸湿剤としては、ゼオライト、水硬性アルミナ、塩化カルシウムなどを挙げることができる。吸湿剤を用いる場合、ポリウレタン樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜3重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0039】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物の調製に際しては、ポリウレタン樹脂の硬化を早めるために触媒を添加してもよい。触媒としては、通常、ポリウレタン樹脂の製造に使用される、金属触媒やアミン系触媒を使用することができる。金属触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテートなどの錫触媒、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛触媒、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどのビスマス触媒などを挙げることができる。アミン系触媒としては、ジエチレントリアミンなどを挙げることができる。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、硬化後のタイプAによる硬度が80以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。更に、硬化後の熱伝導率が1W/m・K以上であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂について詳細に説明する。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「重量部」、「重量%」をそれぞれ表している。
【0042】
表1に以下の実施例及び比較例において使用する原料((E)成分を除く)を示す。(E)リン酸エステル成分については、以下のようにして合成した。
【0043】
【表1】

【0044】
(E−1:リン酸エステル1の合成)
ラウリルアルコールを出発物質とし、プロピレンオキサイド2モルおよびエチレンオキサイド8モルを公知の方法でブロック付加して、ラウリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物を得た。
【0045】
続いて、四つ口フラスコに、上記ラウリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物300gと、無水リン酸27.1gとを、モル比2.4:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル1(リン酸のOH基の理論上の置換数1.2)を得た。
【0046】
(E−2:リン酸エステル2の合成)
トリデシルアルコールを出発物質とし、エチレンオキサイド10モルを公知の方法を用いて付加して、トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Aを得た。
【0047】
続いて、四つ口フラスコに、上記トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Aの300gと、無水リン酸22.2gとを、モル比3:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル2(リン酸のOH基の理論上の置換数1.5)を得た。
【0048】
(E−3:リン酸エステル3の合成)
トリデシルアルコールを出発物質とし、エチレンオキサイド7モルを公知の方法を用いて付加して、トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Bを得た。
【0049】
続いて、四つ口フラスコに、上記トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Bの300gと、無水リン酸23.3gとを、モル比3.6:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル3(リン酸のOH基の理論上の置換数1.8)を得た。
【0050】
(ポリウレタン樹脂組成物の製造)
表2に示す配合により、実施例1〜7及び比較例1〜5のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表2に示す成分のうち、(C)ポリイソシアネート成分を除く成分を、混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで3分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したポリイソシアネート成分を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで1分間混合することにより、各実施例及び各比較例のポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0051】
(ポリウレタン樹脂の製造)
次に、上記で調製したポリウレタン樹脂組成物を用いてポリウレタン樹脂の試験片を作製した。まず、ポリウレタン樹脂組成物を110×110×10mmの金型に充填し、蓋をして23℃で48時間養生した後、これを脱型してポリウレタン樹脂の試験片を得た。
【0052】
【表2】

【0053】
<性能試験>
上記で得られた実施例1〜7及び比較例1〜5の組成物および樹脂について、組成物調製時の混合初期の粘度、熱伝導率、硬度(タイプAおよびタイプC)、耐熱性試験後の硬度(タイプAおよびタイプC)の評価を行った。各試験結果を表2に併せて示した。各試験方法は、以下に示すとおりである。
【0054】
(混合初期粘度)
得られたポリウレタン樹脂組成物を25℃に調整し、混合開始から10分後の粘度をBH型粘度計を用いて測定した。
【0055】
(熱伝導率)
熱伝導率は、JIS R2618に従い、熱伝導率計(京都電子工業(株)製、QTM−D3)を用いて測定した。
【0056】
(硬度(タイプAおよびタイプC))
JIS K6253に従って測定した。
【0057】
(耐熱性試験後の硬度(タイプAおよびタイプC))
150℃の条件下に200時間静置したポリウレタン樹脂の試験片について、JIS K6253に従って硬度(タイプAおよびタイプC)を測定した。
【0058】
<試験結果>
実施例1〜7のポリウレタン樹脂組成物は、何れも混合可能な粘度であった。一方、リン酸エステルを配合していない比較例1〜5のポリウレタン樹脂組成物は、実施例1〜7に比較して高粘度であった。また、実施例1〜7のポリウレタン樹脂組成物は、耐熱性試験後においても硬度変化が小さく、耐熱性に優れていることが分かる。一方、比較例1および2のポリウレタン樹脂では大幅な硬度上昇が見られ、また、比較例3〜5では大幅な硬度低下が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、硬化後において高温条件下における硬度変化が小さく、樹脂の溶融も起こらないことから、長期に亘って基材に十分密着し、放熱性及び耐熱性を長期に亘って維持し得るので、電気製品、電子部品等の分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、
(B)水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加物及びひまし油系ポリオールの水素添加物から選択される少なくとも1種の水素添加ポリオールと、
(C)ポリイソシアネートと、
(D)無機充填材と、
(E)一般式(1)で表されるリン酸エステルと、
(F)可塑剤と
を含有していることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【化1】

(Rは炭素数1〜30の炭化水素基、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数、R’はOH又は一般式(2)に示す基であり、一般式(1)及び一般式(2)において、R”はCH3又はCH2CH3であり、「/」はその左右に記載されているオキシアルキレン基がブロック付加でもランダム付加でもよいことを表している。)
【化2】

【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、前記(D)無機充填材を30〜95重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)水酸基含有共役ジエン重合体と、前記(B)水素添加ポリオールとの重量比が、1/99〜90/10の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、(E)一般式(1)で表されるリン酸エステルを0.01〜2重量%含有することを特徴とする請求項1乃至3記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより得られるポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2010−150475(P2010−150475A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332500(P2008−332500)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】