説明

ポリエステル系樹脂組成物を含有するフィルム

【課題】力学特性に優れたポリエステル系樹脂を含有するフィルムを得ること、更には、自然環境下において分解性を有し、成形性や成形体としたときの表面性に優れたポリエステル系樹脂組成物よりなるフィルムを得ること。
【解決手段】脂肪族系ポリエステル(A)及び芳香族脂肪族系ポリエステル(B)を含有する樹脂組成物を有するフィルムであり、該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)が10/90〜90/10の範囲であり、引き裂き強度が5(N/mm)以上で、かつ、引っ張り破断伸びが300%以上であることを特徴とするフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力学特性に優れたポリエステルを含有するフィルムに関するものであり、更には、自然環境下において分解性を有し、力学特性に優れ、成形性や、成形体としたときの表面性等に優れたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において、紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等が用いられている。特にプラスチックフィルムは強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。現在これらの用途に使用されているプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、上記プラスチックからなるフィルムは、自然環境下においては生分解若しくは加水分解しないか、又は分解速度が極めて遅いために、使用後埋設処理された場合は土中に残存したり、投棄された場合は景観を損ねたりすることがある。また、焼却処理された場合でも、有害なガスを発生したり、焼却炉を傷めたりする等の問題がある。
【0003】
そこで上記問題を解決する手段として、生分解性を有する材料を用いた研究が数多くなされてきた。生分解性材料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペートといった脂肪族系ポリエステルやポリブチレンアジペートテレフタレートといった芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂、スルホン化された芳香族基を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル等が知られている。
【0004】
ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペートといった脂肪族ジカンルボン酸単位と脂肪族ジオール単位を有する脂肪族系ポリエステルは、結晶化速度が速く、成形性は良好であるが、フィルムの引き裂き強度や、引っ張り破断伸びが不十分な場合がある(特許文献1)。
【0005】
一方、ポリブチレンアジペートテレフタレートといった芳香族ジカルボン酸単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び脂肪族ジオール単位を有する芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂(特許文献2)や、スルホン酸金属塩を含んだ芳香族脂肪族共重合ポリエステル樹脂(特許文献3)が開示されている。これらは十分な生分解性を発現するためには芳香族単位の合間に脂肪族単位が存在することが必要となるが、このような材料は結晶化速度が遅く、成形性に問題がある場合がある。また、成形品表面がべたつくため、インフレフィルムにおける口開き特性が悪いが、アンチブロッキング剤等を配合すると不透明感が出たりする。また、この材料は十分に柔軟ではあるが、引っ張り強度が弱く、いわゆる腰のないフィルムとなってしまう。
【0006】
これらを解決する手法として、芳香族ジカルボン酸を構成単位として含む生分解可能なポリマーと脂肪族ポリエステルとからなる樹脂組成物及び該組成物から得られる成形体が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、この実施例において用いられている脂肪族ポリエステルはポリエチレンスクシネートであるため、結晶化速度が遅く成形性が悪い場合がある。また、芳香族カルボン酸を必須構成単位として含む生分解可能なポリマーについては、芳香族ジカルボン酸成分を減らすと融点の低下等を招き、脂肪族ポリエステルの劣った成形性を該生分解可能なポリマーで補うことができなくなるとの理由から、生分解性を犠牲にするにも関わらず芳香族ジカルボン酸成分が相当量導入されたポリマーを用いている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−239461号公報
【特許文献2】特表2001−500907号公報
【特許文献3】特開2004−331967号公報
【特許文献4】特開2005−015606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、力学特性に優れたポリエステル系樹脂を含有するフィルムを得ること、更には、自然環境下において分解性を有し、成形性や、成形体としたときの表面性に優れたポリエステル系樹脂を含有するフィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、結晶性及び成形性の優れた脂肪族系ポリエステルと、芳香族脂肪族共重合系ポリエステルとにつき鋭意検討を行った結果、特定組成とすることにより、生分解性と力学特性の両方を兼備するフィルムを与えるポリエステル系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
脂肪族系ポリエステル(A)及び芳香族脂肪族系ポリエステル(B)を含有する組成物からなるフィルムであり、
該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)が10/90〜90/10の範囲であり、
引き裂き強度が5(N/mm)以上で、かつ、
引っ張り破断伸びが300%以上、であることを特徴とするフィルムを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、
上記の組成物が、
脂肪族系ポリエステル(A)、及び、
脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体に対する割合が40モル%〜60モル%である芳香族脂肪族系ポリエステル(B)、及び/又は、
脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体に対する割合が70モル%〜90モル%である芳香族脂肪族系ポリエステル(C)、を含有し、
該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)が10/90〜90/10の範囲であり、かつ、
該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の、「該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の合計」に対する含有質量比(c/(a+b+c))が0〜0.5の範囲である、上記のフィルムを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、
該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)が、それに含まれる芳香族ジカルボン酸単位の一部がスルホン化された芳香族ジカルボン酸単位を有するものである上記のフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、脂肪族系ポリエステルと特定の構造を有する芳香族脂肪族系ポリエステルとを特定の割合で混合することにより、力学特性に優れ、自然環境下において分解性を有し、成形性や、成形体としたときの表面性に優れたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲内で任意に変形したものも含まれる。
【0015】
<脂肪族系ポリエステル(A)>
本発明において、脂肪族系ポリエステル(A)とは、分子中に芳香族環を実質的に有さないポリエステルをいう。脂肪族系ポリエステル(A)を具体的に示すと、例えば、下記式(1)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオ−ル単位、並びに、下記式(2)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位からなるものである。
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0016】
式(1)、式(2)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基」の「及び」とは、構成成分の1分子中に2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を、単に「脂肪族」と略記する場合がある。
【0017】
式(1)のジオール単位を与える脂肪族ジオール成分は特に限定はないが、炭素数3〜10個の脂肪族ジオール成分が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール成分が特に好ましい。具体的には、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。脂肪族ジオール成分は2種類以上を用いることもできる。
【0018】
式(2)のジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は特に限定はないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸成分が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸成分が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分の具体例としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸又はアジピン酸が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
【0019】
更に、本発明における脂肪族系ポリエステル(A)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液であってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0020】
上記脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族系ポリエステル(A)を構成する全構成成分中、下限が通常0モル%以上、好ましくは、0.01モル%以上であり、上限が通常、30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0021】
また、本発明の脂肪族系ポリエステル(A)は、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」又は「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」を共重合すると、得られる脂肪族系ポリエステル(A)の溶融粘度を高めることができるため好ましい。
【0022】
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0023】
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0024】
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、リンゴ酸等が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0025】
このような3官能以上の化合物の量は、脂肪族系ポリエステル(A)を構成する全構成成分中、下限は、通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限は、通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
【0026】
本発明で使用する脂肪族系ポリエステル(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合でポリエステルを製造する方法が好ましい。
【0027】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート錯体等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物又はゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融又は溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0029】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常、30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
【0030】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限は通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
【0031】
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.001×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0032】
本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
【0033】
本発明において、目的とする重合度のポリエステルを得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。また、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0034】
本発明に用いられる脂肪族系ポリエステル(A)は十分に結晶化速度が高いものであり、示差走査熱量計測定において10℃/分で冷却した際の結晶化に基づく発熱ピークの半値幅が、通常、15℃以下、好ましくは10℃以下、特に好ましくは8℃ 以下である。示差走査熱量計測定は、例えばパーキンエルマー社製DSC7を用い、10mgのサンプルを、流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融させた後、10℃/分の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することにより実施される。
【0035】
本発明に用いられる脂肪族系ポリエステル(A)のメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常、0.1g/10分以上であり、上限が、通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0036】
本発明の製造方法の途中又は得られるポリエステルには、特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤及び紫外線吸収剤等を重合時に添加してもよい。
【0037】
<芳香族脂肪族系ポリエステル(B)>
本発明において使用される芳香族脂肪族系ポリエステル(B)とは、脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含むものであり、芳香族ジカルボン酸単位の含量が、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量に対し、5モル%以上60モル%以下であるものをいう。なお、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を、単に「脂肪族」と略記する場合がある。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。
【0038】
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0039】
式(3)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、この中でも炭素数2以上4以下のジオールが好ましい。この中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0040】
式(4)のカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸又はアジピン酸が好ましい。
【0041】
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
【0042】
本発明において使用される芳香族脂肪族系ポリエステル(B)において生分解性を発現させるためには芳香環の合間に脂肪族鎖が存在することが必要である。そのため、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)中の芳香族ジカルボン酸単位の量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量に対し、5モル%以上が必須であるが、好ましくは 30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、特に好ましくは45モル%以上である。また、上限については、60モル%以下が必須であるが、55モル%以下が好ましい。この量が少なすぎると脂肪族系ポリエステル(A)との組成物とした際、引き裂き強度等の力学強度改良効果が低くなる場合がある。また多すぎると生分解性が不十分となる場合がある。
【0043】
なお、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分及び芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0044】
更に、本発明における芳香族脂肪族系ポリエステル(B)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、又はこれらの混合物等が挙げられる。更に、これらの低級アルキルエステル又は分子内エステルであってもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液であってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0045】
この脂肪族オキシカルボン酸の量は、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)を構成する全構成成分中、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0046】
芳香族脂肪族系ポリエステル(B)は、上記脂肪族系ポリエステル(A)と同様の製法により製造することができる。
【0047】
本発明に用いられる芳香族脂肪族系ポリエステル(B)のメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0048】
本発明においては、該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)は10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、20/80〜70/30の範囲であることが特に好ましい。該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の量が少なすぎると、引き裂き強度等の力学強度改良効果が低くなる場合がある。また多すぎると成形体表面がべたつき、例えばインフレフィルムの口開き性が悪くなる場合がある。
【0049】
芳香族脂肪族系ポリエステル(B)のポリエステル系樹脂組成物中における質量割合は、脂肪族系ポリエステル(A)及び芳香族脂肪族系ポリエステル(B)及び芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の合計100質量部に対し、下限が5質量部以上、好ましくは10質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、上限が90質量部以下、好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。この量が少なすぎると引き裂き強度等の力学強度改良効果が低くなる傾向がある。また多すぎると成形体表面がべたつき、例えばインフレフィルムの口開き性が悪くなる傾向がある。
【0050】
<芳香族脂肪族系ポリエステル(C)>
本発明において使用される芳香族脂肪族系ポリエステル(C)とは、脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体に対する割合が60モル%より大きいものをいう。なお、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を、単に「脂肪族」と略記する場合がある。
【0051】
具体的には、例えば、下記式(6)〜式(9)で表される構成成分を含むポリエステルとして表すことができる。
−O−R−O− (6)
[式(6)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−O−(R−O)− (7)
[式(7)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (8)
[式(8)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (9)
[式(9)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0052】
例えば上記式(6)で表される脂肪族ジオ−ル単位は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、この中でも炭素数2以上4以下のジオールが好ましい。更にこの中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
【0053】
また、上記式(7)で表されるジオ−ル単位は、脂肪族エーテル単位を含んでいるものである。具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等であり、より好ましくはジエチレングリコール又はポリエチレングリコールである。nは1〜1000であることが好ましく、より好ましくは1〜100である。
【0054】
また、上記式(6)で表される脂肪族ジオ−ル単位と、上記式(7)で表されるジオ−ル単位の比は、モル比で80/20〜100/0が好ましく、特に好ましくは90/10〜99/1である。
【0055】
上記式(8)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は、炭素数が好ましくは2以上10以下のものであり、具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸、グルタル酸がより好ましく、グルタル酸が特に好ましい。
【0056】
式(9)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、それらの芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0057】
すなわち、上記式(9)で表される芳香族ジカルボン酸単位のRは、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されていてもよい。上記式(9)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸又はそのスルホン酸置換体が特に好ましい。スルホン酸置換体の具体例は、例えば、2−スルホテレフタル酸塩、2−スルホイソフタル酸塩、4−スルホイソフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩等が好ましいものとして挙げられ、中でも4−スルホイソフタル酸塩又は5−スルホイソフタル酸塩がより好ましく、5−スルホイソフタル酸塩が特に好ましい。塩としてはアルカリ金属塩が好ましく、中でもカリウム塩又はナトリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0058】
上記式(9)中のRの全芳香族ジカルボン酸単位中、スルホン酸アルカリ塩で置換されている芳香族ジカルボン酸単位の割合は、0.01モル%以上20モル%以下が好ましく、0.1モル%以上10モル%以下がより好ましく、0.5モル%以上5モル%以下が特に好ましい。また、上記式(9)中のスルホン酸アルカリ塩で置換されている芳香族ジカルボン酸の、本発明の芳香族脂肪族ポリエステル(C)中における全ジカルボン酸に対する割合は0.01モル%以上20モル%以下が好ましく、0.1モル%以上10モル%以下がより好ましく、0.5モル%以上5モル%以下が特に好ましい。
【0059】
芳香族脂肪族系ポリエステル(C)では、上記式(9)で表される芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体((8)+(9))に対する割合は、60モル%より大きいことが必須であるが、70モル%〜90モル%であることが好ましく、75モル%〜85モル%であることが特に好ましい。
【0060】
本発明に用いられる芳香族脂肪族ポリエステル(C)のメルトフローインデックス(MFR)は、230℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0061】
上記芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の、「該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の合計」に対する含有質量比(c/(a+b+c))は0〜0.5の範囲が好ましく、0.01〜0.4の範囲がより好ましく、0.05〜0.35の範囲が特に好ましく、0.1〜0.3の範囲が更に好ましい。上記芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の量が少なすぎると、引き裂き強度、引っ張り破断伸び等の力学強度改良効果が低くなる場合がある。また多すぎると引っ張り破断伸びが低下したり、耐衝撃性が低下したり、生分解性が低下する場合がある。
【0062】
<無機充填剤>
本発明のフィルムに含有される樹脂組成物には、無機充填剤を配合させることが好ましい。かかる無機充填剤としては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、「珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩」、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、「水酸化カルシウム等の水酸化物」、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
本発明のフィルムに含有される無機充填剤の量は特に限定はないが、該樹脂組成物100質量部に対して、無機充填剤が1質量部〜30質量部が好ましく、3質量部〜20質量部がより好ましく、5質量部〜15質量部が特に好ましい。無機充填剤が少な過ぎる場合は、機械物性改良効果が少なくなる場合があり、一方、多すぎる場合は、成形性及び耐衝撃性が悪化する場合がある。
【0064】
無機充填剤の中には、炭酸カルシウムや石灰石のように、土壌改良剤の性質を持つものもあり、これらの無機充填剤を特に多量に含む樹脂組成物を土壌に投棄すれば、樹脂組成物が生分解後に、無機充填剤は残存して、土壌改良剤としても機能する。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加したポリエステルを成形品とすることは、本発明のポリエステルの有用性を高めることになる。
【0065】
<有機充填剤>
有機充填剤としては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。樹脂組成物中の有機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、60質量%以下が好ましい。
【0066】
本発明においては、有機充填剤としては、生澱粉、加工澱粉等の澱粉が、引き裂き強度改良効果が高い点で好ましい。澱粉は、前記樹脂組成物100質量部に対して、5質量部〜60質量部含有されることが好ましく、10質量部〜40質量部含有されることがより好ましく、15質量部〜30質量部含有されることが特に好ましい。澱粉が少な過ぎると、引き裂き強度改良効果が低い場合があり、一方、多すぎると、吸湿性が高く製品寿命が短くなる場合がある。澱粉を含有させた場合、芳香族脂肪族系ポリエステル(C)を含有していなくても、引き裂き強度、引っ張り破断伸び等の力学強度向上の効果がある。
【0067】
<各種添加剤>
本発明における樹脂組成物には、更に、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、スリップ剤、防曇剤、加水分解防止剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤は配合した方が好ましい。
【0068】
防曇剤はあらかじめ樹脂に防曇剤に練りこんでもよいし、成形後、成形品表面に塗布してもよい。使用する防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。スリップ剤としては、炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられるが、最も好ましくはエルカ酸アマイドが挙げられる。
【0069】
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
【0070】
光安定剤としては具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2−ビス(3−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N
′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物及びそのN−メチル化合物、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物等が挙げられる。
【0071】
これらの中で、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネートが特に好ましい。
【0072】
本発明のフィルムに添加してもよい紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
【0073】
本発明のフィルムに添加してもよい酸化防止剤としては、BHT、2,2’−メチレンビス(4-メチルー6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン-2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物などが例示できる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0074】
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤としてはイルガノックス3790、イルガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスHP2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP−30(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミライザーBBM−S(住友化学社製)が用いられる。最も好ましい酸化防止剤はイルガノックス3790(1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン)、イルガノックス1330(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール)が用いられる。
【0075】
これらの添加剤の添加量は、樹脂組成物全体中の含有量として、通常0.001質量%〜10質量%である。添加量の下限は、好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0.1質量%である。添加量の上限は好ましくは5質量%、更に好ましくは3質量%である。また、本発明の樹脂組成物には、機能性添加剤として、鮮度保持剤、抗菌剤等を配合することもできる。
【0076】
末端封止剤として、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられるが、その中でもカルボジイミド化合物が好適に用いられる。
【0077】
<カルボジイミド化合物>
本発明において、主に大気中の水分等による加水分解を抑制する目的で、カルボジイミド化合物を好適に用いることができる。用いられるカルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
【0078】
上記のカルボジイミド化合物の内、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
またポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619〜p.621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
【0079】
ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
【0080】
これらのポリカルボジイミド化合物の合成時には、モノイソシアネートやその他の末端イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物を用いて、所望の重合度に制御することもできる。このような目的に用いられる化合物としては、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水酸基含有化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、β−ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミノ基含有化合物、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等のカルボキシル基含有化合物、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプト基含有化合物、及び種々のエポキシ基含有化合物等を例示することができる。
【0081】
本発明においては、ポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、20以下である。この重合度が大きすぎると、組成物中における分散性が不十分となり、例えばインフレフィルムにおいて外観不良の原因になる場合がある。
【0082】
有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物や一般式M(OR)で示される有機金属化合物(但し、Mはチタン、ナトリウム、カリウム、バナジウム、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、鉛、マンガン、ニッケル、カルシウムやバリウム等の金属原子を、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を示し、nは金属原子Mが取り得る原子価を示す)が好適である。中でも、有機リン系化合物ではホスフォレンオキシド類が、有機金属化合物ではチタン、ハフニウム、ジルコニウムのアルコシド類が、活性が高く好ましい。
【0083】
ホスフォレンオキシド類の具体例としては、3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスフォレン−1−オキシド及びこれらの二重結合異性体を例示することができる。中でも工業的に入手が容易な3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシドが特に好ましい。
【0084】
カルボジイミド化合物は単独又は複数の化合物を混合して使用することができる。本発明のポリエステル系樹脂組成物へのカルボジイミド化合物の配合量は、ポリエステル樹脂組成物の合計量100質量部あたり、下限が通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、特に好ましくは0.1質量部以上、上限が通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。配合量が少なすぎると、加水分解抑制効果が不十分となる傾向があり、多すぎると添加効果は飽和し、添加量の増加に見合う効果が得られない。
【0085】
カルボジイミド化合物は、後述する組成物の調製時に添加してもよいし、脂肪族系ポリエステル(A)、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)又は芳香族脂肪族系ポリエステル(C)のうちの1種類又は2種類のポリエステルに練り混み、成形時に他の成分とドライブレンドすることによって樹脂組成物の全成分と混合して成形してもよい。あるいは、脂肪族系ポリエステル(A)及び/又は芳香族脂肪族系ポリエステル(B)で高濃度のカルボジイミドのマスターバッチを調整し、成形時にカルボジイミド化合物が所定濃度となるように、脂肪族系ポリエステル(A)及び/又は芳香族脂肪族系ポリエステル(B)をドライブレンドして希釈してもよい。
【0086】
<その他の成分>
本発明のフィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲で他の生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末又はこれらの混合物を配合することができる。
【0087】
<混練・成形方法>
混練方法:本発明において、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また、混練機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。
【0088】
本発明における、脂肪族系ポリエステル(A)、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)、芳香族脂肪族系ポリエステル(C)を含有する樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、ブレンドした原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して樹脂組成物を調整すると同時に、その成形体を得ることも可能である。脂肪族系ポリエステル(A)、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)、芳香族脂肪族ポリエステル(C)の組成物を加熱溶融させたところに、各種添加剤、無機充填剤、有機充填剤、上記「その他の成分」、他のポリエステル等を添加して配合する方法等が挙げられる。また、この際、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。
【0089】
成形方法:本発明における樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形に供することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工)、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。
【0090】
本発明においては、上記組成物は、特に押し出し成形、射出成形体、発泡成形体、中空成形体、具体的な形状としては、フィルム、容器及び繊維への適用が好ましい。
【0091】
また、これらの成形品には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
【0092】
<物性>
本発明のフィルムは、引き裂き強度が5(N/mm)以上であることが必須である。好ましくは、7(N/mm)以上、特に好ましくは9(N/mm)以上である。「引き裂き強度」は、JIS K7128に準拠して測定したMDの「エレメンドルフ引き裂き強度」をいう。MDとは成型機から押し出された樹脂の流れに平行な方向である。
【0093】
本発明のフィルムは、引っ張り破断伸びが300%以上であることが必須である。好ましくは350(%)以上、特に好ましくは400(%)以上である。「引っ張り破断伸び」は、JIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した。MDの引っ張り破断伸びをいう。MDとは成型機から押し出された樹脂の流れに平行な方向である。
【0094】
<用途>
本発明のフィルムは、自然環境下における分解性を有しつつ、成形性、成形体の表面特性及び力学特性に優れたものであるため、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。その具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレーやファーストフードの容器、野外レジャー製品等)、押出成形品(フィルム、例えば釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられ、更にその他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等が挙げられる。
【0095】
更に、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料等の自動車部品等に使用できる。より好ましくは包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレー、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例により限定されるものではない。
【0097】
<引き裂き強度の測定方法>
JIS K7128に準拠してエレメンドルフ引き裂き強度を測定した。本発明における「引き裂き強度」とは「MD」でのエルメンドルフ引き裂き強度を示す。
【0098】
<降伏強度、破断強度、引っ張り破断伸びの測定方法>
JIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した。本発明における「引っ張り破断伸び」は「MD」での引っ張り破断伸びである。
【0099】
<生分解の試験方法>
成形したフィルム(厚さ35μm)を園芸用土中に埋め、50℃、90%の恒温恒湿槽中で1ヶ月間放置した後、取り出し質量を測定し、質量減少率を求めた。
【0100】
合成例1
[芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の合成]
芳香族脂肪族系ポリエステル(C)として、スルホン酸塩で置換した芳香族基を含む芳香族脂肪族ポリエステル(PEGT系樹脂)を以下のように合成した。
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、テレフタル酸ジメチル81.5質量部、グルタル酸9.25質量部、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム2.68質量部、エチレングリコール43.7質量部、チタンテトラブチレート0.01質量部、酢酸マグネシウム4水和物0.074質量部を仕込んだ。容器内容物を攪拌下、容器内に窒素ガスを導入し、減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を攪拌しながら185℃に昇温し、この温度で45分反応させた。次に、1時間30分かけて220℃に昇温した。その後、1時間かけて260℃まで昇温すると同時に、1時間30分かけて0.07×10Pa以下になるように減圧し、加熱減圧状態を保持したまま重合を継続し、所定の粘度になったところで重合を終了し、共重合体を得た。
【0101】
実施例1〜17
表1に示す質量比で、脂肪族系ポリエステル(A)としてPBS系樹脂(三菱化学社製AZ91TN)及び/又はPBSA系樹脂(三菱化学社製AD92WN)、芳香族脂肪族系ポリエステル(B)としてPBAT系樹脂(BASF社製Ecoflex(登録商標))、芳香族脂肪族系ポリエステル(C)としてPEGT系樹脂(上記合成例1で得られたスルホン酸塩で置換した芳香族基を含む芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂)、並びに、必要に応じてタルク(日本タルク社製SG95)若しくは澱粉(日本コーンスターチ製:コーンスターチ Y−3P)を添加し、二軸押出し機で混練した。
【0102】
混練したペレットを70℃で、窒素下、10時間乾燥を行った。乾燥後のペレットを190℃でインフレ成形し、35μmの厚さの強靭な引き裂き強度を示すフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0103】
比較例1〜6
表1に示す質量比で、PBS樹脂(三菱化学社製AZ91TN)及び/又はPBSA樹脂(三菱化学社製AD92WN)、PBAT樹脂(BASF社製Ecoflex)、PEGT系樹脂(上記合成例1で得られたスルホン酸塩で置換した芳香族基を含む芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂)のペレットを、二軸押出し機で混練した。
【0104】
混練したペレットを70℃で、窒素下、10時間乾燥を行った。乾燥後のペレットを160℃(比較例6のみは200℃)でインフレ成形し、35μmの厚さのフィルムを得た。評価結果を表1に示す。フィルムの引き裂き強度は非常に弱かった。
【0105】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のフィルムは、力学特性、生分解性、成形性や成形体としたときの表面性に優れているため、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族系ポリエステル(A)及び芳香族脂肪族系ポリエステル(B)を含有する樹脂組成物を有するフィルムであり、該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)が10/90〜90/10の範囲であり、引き裂き強度が5(N/mm)以上で、かつ、引っ張り破断伸びが300%以上であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
該樹脂組成物が、
脂肪族系ポリエステル(A)、及び、
脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体に対する割合が40モル%〜60モル%である芳香族脂肪族系ポリエステル(B)、及び/又は、
脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸のジカルボン酸全体に対する割合が70モル%〜90モル%である芳香族脂肪族系ポリエステル(C)、を含有し、
該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)の含有質量比(a/b)が10/90〜90/10の範囲であり、かつ、
該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の、「該脂肪族系ポリエステル(A)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(B)と該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)の合計」に対する含有質量比(c/(a+b+c))が0〜0.5の範囲である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
該芳香族脂肪族系ポリエステル(C)が、その一部がスルホン化された芳香族ジカルボン酸単位を有するものである請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
該脂肪族系ポリエステル(A)が、脂肪族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位とを含むものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のフィルム。
【請求項5】
該樹脂組成物100質量部に対して、無機充填剤が1質量部〜30質量部含有されたものである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のフィルム。
【請求項6】
該樹脂組成物100質量部に対して、澱粉が5質量部〜60質量部含有されたものである請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−13328(P2009−13328A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178225(P2007−178225)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】