説明

ポリシリコン膜評価装置

【課題】形成したポリシリコン膜の状態を、客観的に、非接触で、精度良く、自動的に評価することができるポリシリコン膜評価装置の提供を目的としている。
【解決手段】 アモルファスシリコン膜をアニール処理することによって形成されたポリシリコン膜を評価するポリシリコン膜評価装置1である。ステージ上のポリシリコン膜が形成された基板Wに可視光を照射することによって基板W上のポリシリコン膜の表面画像を撮像してオーフォーカスする可視光観察光学系4や紫外光の照射による紫外光観察光学系6などを備える。そして、紫外光観察光学系によって得られたポリシリコン膜の表面画像からポリシリコン膜の膜表面の空間構造の直線性および周期性を評価し、この直線性および周期性の評価結果に基づき、ポリシリコン膜の状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アモルファスシリコンに対してアニール処理をして生成したポリシリコン膜の状態を評価するポリシリコン膜評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、チャネル層にポリシリコン膜を用いた薄膜トランジスタの実用化が進められている。チャネル層にポリシリコンを用いると、薄膜トランジスタの電界移動度が非常に高くなるため、例えば液晶ディスプレイ等の駆動回路として用いた場合には、ディスプレイの高精彩化、高速化、小型化等を実現することができるようになる。
【0003】また、エキシマレーザアニール装置を用いてアモルファスシリコンを熱処理してポリシリコン膜を形成する、いわゆる低温多結晶化プロセスも近年開発が進んでいる。このような低温多結晶プロセスを薄膜トランジスタの製造プロセスに適用することによって、ガラス基板への熱損傷が低くなり、耐熱性の大面積で安価なガラス基板を用いることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、低温多結晶プロセスにおいて用いられるエキシマレーザアニール装置は、その出力パワーが不安定であるため、形成されるポリシリコンのグレーンサイズが大きく変動する。そのため、エキシマレーザアニール装置を用いて形成されたポリシリコン膜は、常に良好なグレーンサイズとはならず、不良となる場合もある。
【0005】そこで、一般に、このようなエキシマレーザアニール装置を用いてアニール処理を行なう場合には、ポリシリコン膜の多結晶化工程が終了した段階で、その最表面に形成されているポリシリコン膜の結晶の状態を全数検査したリ、あるいは、製品を無作為に抜き取って結晶の状態を検査することにより、製造した製品がこの段階で不良品であるか否かを判断することが行なわれる。また、エキシマレーザアニール装置からポリシリコン膜に与えられたエネルギの情報を、エキシマレーザアニール装置にフィードバックして、最適なレーザパワーの設定が行なわれる。
【0006】しかしながら、ポリシリコン膜を評価するには、従来、可視顕微鏡や走査型電子顕微鏡等を用いて表面画像を撮像し、その表面画像を目視して結晶の状態を判断するといった感覚的な方法しかなく、非接触で客観的に判断することができなかった。また、このような方法は、時間的、コスト的に非効率であり、インプロセスで用いることは困難であった。また、分光エリプソによる評価法もあるが、定量性に欠けるという問題もあった。
【0007】本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、形成したポリシリコン膜の状態を、客観的に、非接触で、精度良く、自動的に評価することができるポリシリコン膜評価装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、アモルファスシリコン膜をアニール処理することによって形成されたポリシリコン膜を評価するポリシリコン膜評価装置において、ポリシリコン膜が形成された基板が載置されるステージと、可視光を前記ステージ上の基板に照射することによって基板上のポリシリコン膜の表面画像を撮像してオーフォーカスする可視光観察光学系と、紫外光を前記ステージ上の基板に照射することにより、前記可視光観察光学系を用いてオートフォーカスされた基板のポリシリコン膜の表面画像を得る紫外光観察光学系と、前記紫外光観察光学系によって得られたポリシリコン膜の表面画像から、ポリシリコン膜の膜表面の空間構造の直線性および周期性を評価し、この直線性および周期性の評価結果に基づき、前記ポリシリコン膜の状態を評価する評価手段とを具備することを特徴とする。
【0009】上記構成により、形成したポリシリコン膜の状態を、客観的に、非接触で、精度良く、自動的に評価することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】本発明の一実施形態に係るポリシリコン膜評価装置は、例えば、ボトムゲート構造を有する薄膜トランジスタ(ボトムゲート型TFT)の製造工程中に形成されるポリシリコン膜の検査に用いられる。なお、ボトムゲート型TFTは、例えばガラス基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ポリシリコン膜(チャネル層)が下層から順に積層された薄膜トランジスタである。すなわち、ボトムゲート型TFTは、チャネル層となるポリシリコン膜とガラス基板との間にゲート電極が形成されたTFTである。
【0012】ところで、ポリシリコン膜の電界移動度を決定する重要な要素は、ポリシリコンのグレーンサイズであるといわれている。そのグレーンサイズは、エキシマレーザアニール処理時においてポリシリコン膜に与えられるエネルギに大きく依存する。そのため、エキシマレーザアニール処理時におけるレーザパワーの制御やその安定化が、完成したボトムゲート型TFTの特性や歩留まリに大きく影響することとなる。
【0013】しかしながら、エキシマレーザアニール処理において用いられるエキシマレーザアニール装置は、出射するレーザパワーの出力変動が比較的大きい。そのため、エキシマレーザアニール装置を用いてエキシマレーザアニールを行なった場合、良好なグレーンサイズを得られるエネルギーの許容範囲(ポリシリコン膜の製造マージン)に対して、ポリシリコン膜に与えるエネルギの変動が大きくなってしまい、ポリシリコン膜を安定的に製造することが難しい。
【0014】したがって、同一の条件でエキシマレーザアニールを行なった場合でも、ポリシリコン膜のグレーンサイズが大きく変動し、例えばレーザパワーが大きくなりすぎた場合には、シリコン結晶が微結晶化してしまって、いわゆる線状不良となり、また、レーザパワーが小さくなりすぎた場合には、十分大きなグレーンサイズが得られない、いわゆる書き込み不良になってしまう。
【0015】さらに、ボトムゲート型TFTでは、ゲート電極がポリシリコン膜の下層に位置しているため、レーザアニールを行なった場合における熱の逃げが、ガラス基板上(ソース/ドレイン領域上)のポリシリコン膜よリも、ゲート電極上のポリシリコン膜の方が高くなる。そのため、エキシマレーザアニール装置から与えられるレーザパワーが同一であっても、ゲート電極上のポリシリコン膜と、ガラス基板上(ソース/ドレイン領城上)のポリシリコン膜とで、上昇温度が異なることとなり、その影響からグレーンサイズが双方で異なってしまう。具体的には、レーザパワーが同一であった場合には、ポリシリコン膜上に形成されるグレーンサイズは、ガラス基板上(ソース/ドレイン領域上)よりもゲート電極上の方が小さくなってしまう。
【0016】そのため、ボトムゲート型TFTでは、ゲート電極上のボリシリコン膜およびガラス基板土のポリシリコン膜の双方がともに良好なグレーンサイズが得られるエネルギを、エキシマレーザにより与えなければならないため、ポリシリコン膜の製造マージンが非常に狭くなってしまう。
【0017】しかしながら、前述したように、エキシマレーザアニール処理において用いられるエキシマレーザアニール装置は、出射するレーザパワーの出力変動が比較的大きい。したがって、ゲート電極上のボリシリコン膜およびガラス基板上のポリシリコン膜の双方がともに良好なグレーンサイズを得るように、そのレーザパワーを制御することは難しい。
【0018】そこで、一般に、このようなエキシマレーザアニール装置を用いてアニール処理を行なう場合には、ポリシリコン膜の多結晶化工程が終了した段階で、その最表面に形成されているポリシリコン膜の結晶の状態を全数検査したリ、あるいは、製品を無作為に抜き取って結晶の状態を検査することにより、製造した製品がこの段階で不良品であるか否かを判断したり、また、ポリシリコン膜に与えられたエネルギの情報をエキシマレーザアニール装置ヘフィードバックして、レーザパワーの設定が行なわれる。
【0019】本実施形態のポリシリコン膜評価装置は、このようなポリシリコン膜の多結晶化工程が終了した段階で、形成したポリシリコン膜の評価を行ない、製造した製品がこの段階で不良品であるか否かを判断したり、また、エキシマレーザアニール装置へ情報をフィードバックしてレーザエネルギの設定を行なうために使用されるものである。
【0020】ここで、本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置を具体的に説明する前に、この評価装置によるポリシリコン膜の評価原理について簡単に説明する。
【0021】前述したように、製造した薄膜トランジスタの移動度は、ポリシリコンのグレーンサイズが大きく影響する。充分な移動度を得るためには、ポリシリコンのグレーンサイズは大きい方が望ましい。
【0022】ポリシリコン膜のグレーンサイズは、エキシマレーザアニールで与えられたエネルギに大きく依存する。ポリシリコン膜のグレーンサイズは、図17の(a)に示されるように、与えられたエネルギが増大すると、それに伴い増大するが、ある所定のエネルギ(図中Lの位置:この時のエネルギを許容最低エネルギLとする)以上になると、変化が少なくなり、安定化する。さらにエネルギを増大させていくと、グレーンサイズの変化が大きくなり、そして、ある閾値(図中Hの位置)を境としてポリシリコンが微結晶粒となってしまう(この時のエネルギを許容最高エネルギHとする)。
【0023】したがって、通常、エキシマレーザアニールを行なう場合には、グレーンサイズが安定化し始める許容最低エネルギLから微結晶粒化する直前の許容最高エネルギHまでの範囲となるように、照射するレーザパワーを制御することによって、充分な大きさのグレーンサイズを得るようにする。そして、このような範囲のエネルギを与えるレーザパワーのレーザ光をアモルファスシリコン膜に照射することによって、完成した薄膜トランジスタの移動度を十分大きくすることが可能となる。
【0024】次に、レーザパワーを最適値としてエキシマレーザアニールを行なった時のポリシリコン膜の膜表面の画像と、最適値よりも少ないパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像と、最適値よリも大きいパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像とを比較する。
【0025】図16に、それぞれの場合の画像を示す。図16の(c)が最適値よリも少ないレーザパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像を示す図で、図16の(b)が最適値のレーザパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像を示す図で、図16の(c)が最適値よりも大きいレーザパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像を示す図である。なお、この図16に示す各画像は、紫外線光を用いた顕微鏡装置によリ撮像した画像であるが、この顕微鏡装置についての詳細は後述する。
【0026】図16において、エキシマレーザアニールのレーザの走査方向は、図中X方向となっている。なお、アモルファスシリコン膜には、照射面が線状とされたレーザビームが照射され、その走査方向は、レーザビームの照射面形状の長手方向に直交する方向である。
【0027】ここで、エキシマレーザアニール時におけるレーザパワーを最適値とした時の図16の(b)の画像と、それ以外の図16の(a)および図16の(c)に示す画像とを比較すると、以下のような特徴が現れている。
【0028】まず、レーザパワーを最適値とした時のポリシリコン膜の表面画像(図16の(b))は、レーザパワーが最適とされていないポリシリコン膜の表面画像(図16の(a)および図16の(c))と比較して、直線性が現れた画像となっている。具体的には、レーザの走査方向(図16中のX方向)に対して、直線性が現れた画像となっている。すなわち、レーザパワーを最適値とした時のポリシリコン膜の表面は、その空間構造に直線性が現れる規則的な形状となる特徴がある。
【0029】また、レーザパワーを最適値とした時のポリシリコン膜の表面画像(図16の(b))は、レーザパワーが最適とされていないポリシリコン膜の表面画像(図16の(a)および図16の(c))と比較して、周期性が現れた画像となっている。具体的には、レーザの走査方向と直交する方向(図16中のY方向)に、周期性が現れた画像となっている。すなわち、レーザパワーを最適値とした時のポリシリコン膜の表面は、その空間構造に周期性が現れる規則的な形状となる特徴がある。光学的には、この周期構造を光学顕微鏡で観察するために、光源の紫外線の波長がこの周期において光学系の対物レンズのNAを乗じた値よりも短い波長であることが必要とされる。
【0030】したがって、本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置では、以上のような特徴を利用して、ポリシリコン膜の状態を評価して検査する。すなわち、本実施形態のポリシリコン膜評価装置では、エキシマレーザアニールを行なった後のポリシリコン膜の表面画像を数値解析して、ポリシリコン膜の表面空間構造に直線性が現れているか、あるいは、ポリシリコン膜の表面空間構造に周期性が現れているか、あるいは、ポリシリコン膜の表面空間構造に直線性および周期性が現れているかを評価し、ボトムゲート型TFTのポリシリコン膜の状態を検査する。
【0031】具体的には、ポリシリコン膜の表面画像から自己相関を用いて周期性を数値化した値(AC値)を求め、ポリシリコン膜の表面空間構造の直線性および周期性を評価して、ポリシリコン膜の状態の評価を行なう。
【0032】評価の処理手順は、まず、ポリシリコン膜の表面の画像取り込み処理を行ない、続いて、取り込んだ画像から自己相関関数の計算を行なう。続いて、画像座標上の(0,0)を含む整列方向と垂直な面の切り出しを行なう。続いて、切り出した面における自己相関関数のピーク値とサイドピーク値とを算出し、このピーク値とサイドピーク値との比をとって、AC値を求める。続いて、このAC値に基づき、ポリシリコン膜の評価を行なう。
【0033】AC値は、図17の(b)に示されるように、エキシマレーザアニールによリポリシリコン膜に与えられるエネルギが、あるエネルギEB1となったときからその値が比例的に上昇し、あるエネルギEでその値が最大となる。そして、AC値は、この最大となるエネルギEでピーク値を迎え、その後その値が比例的に減少し、あるエネルギEB2でその減少が終了し、その値が最小値となる。このようにAC値は、与えられるエネルギに対してピーク特性を有している。
【0034】このようなAC値のピーク特性を、図17(a)で示したボリシリコン膜のグレーンサイズの変化の特性に重ね合わせてみると、図17の(c)に示すようになる。この図17の(c)に示すように、AC値のピーク特性を示すグラフの最大値が、ポリシリコン膜のグレーンサイズが適正となるエネルギ範囲内に入ることが分かる。さらに、AC値が比例的に上昇を開始するエネルギEB1が、ポリシリコン膜に与えてグレーンサイズが適正となる許容最低エネルギLよリも低くなる。また、AC値の比例的な減少が停止して最低値となったときのエネルギEB2が、ポリシリコン膜の結晶粒径が微結晶化する閾値のエネルギである許容最大エネルギHと一致する。
【0035】したがって、このようなピーク特性を有するAC値からポリシリコン膜のグレーンサイズが良好なものであるかどうかを評価する場合には、AC値が図17の(c)中太線で示した範囲の値に入っているかどうかを判断すればよいこととなる。
【0036】このような特性を有するAC値を評価して、ポリシリコン膜が良品であるか否かの検査を行なう場合には、例えば、検査対象となる基板のAC値が、許容最低エネルギLを与えたときに求められるACを閾値として、この閾値よりも大きければ良品であると判断することにより検査が可能である。また、検査した基板のAC値が、この閾値ACよりも低い傷合であっても、なんらかの特性を観察することにより、AC値が最大となるエネルギEよりも高いエネルギを与えていることが分かれば、良品であると判断が可能である。
【0037】また、このような特性を有するAC値を評価して、エキシマレーザアニール装置から出射されるレーザパワーを最適に設定する場合には、例えば、エキシマレーザのレーザパワーを変動させながら、複数個の基板に対してレーザアニール処理を行なう。そして、各レーザパワーに対応させたAC値の特性図を描き、具体的には、図17の(b)に示すような特性図を描き、この特性図から最適なレーザパワーを求めればよい。
【0038】続いて、前述した評価原理を用いてポリシリコン膜の状態を評価して検査するポリシリコン膜評価装置の構成について、以下、詳細に説明する。
【0039】本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置は、波長266nmの紫外光レーザを用いた顕微鏡装置によってボトムゲート型TFTの製造基板(アモルファスシリコン膜にエキシマレーザアニールを行なうことによってポリシリコン膜が形成された直後の状態の基板)を撮像し、撮像した画像に基づいて、形成されたポリシリコン膜の状態を評価する。
【0040】図3には、本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置の要部構成が模式的に示されている。図示のように、ポリシリコン膜評価装置は、基板Wが載置される可動ステージ25と、紫外線固体レーザ光源10Aと、高感度低雑音の紫外光用CCDカメラ6と、光ファイバプローブ80と、ダイクロイックミラー19と、複数の対物レンズを備えたレボルバ42と、制御装置51とを備えている。なお、制御装置51は、画像処理用コンピュータ51Aと制御用コンピュータ51Bとから成る。
【0041】光ファイバプローブ80は、紫外線レーザ光の導波路であり、紫外線固体レーザ光源10Aから出射された紫外光レーザを、UV照明部10Bに導いている。UV照明部10Bを出た紫外線レーザは偏向ビームスプリッタ21及び1/4波長板14の後、ダイクロイックミラー19に導かれる。
【0042】ダイクロイックミラー19は、紫外線固体レーザ光源10Aからの紫外線レーザ光を反射して、このレーザ光をレボルバ41の1つの対物レンズを介して可動ステージ25上の基板Wに照射するとともに、基板Wから反射された反射光を透過して紫外光用CCDカメラ6に入射させる。すなわち、ダイクロイックミラー19は、紫外線固体レーザ光源10A等の照射光の光学系の光路と、CCDカメラ6への反射光の光学系の光路とを分離するためのレーザ光分離器である。
【0043】また、レボルバ42に設けられた複数の対物レンズは、基板Wからの反射光を拡大して検出するための光学素子である。これらの対物レンズは、例えば、NAが0.9で、波長266nmで収差補正がされたものである。また、これらの対物レンズは、ダイクロイックミラー19と可動ステージ25との間に配置されている。
【0044】制御用コンピュータ51Bは、紫外線固体レーザ光源10Aのレーザ光の点灯制御や、可動ステージ25の移動位置の制御、あるいは、使用する対物レンズを切換えるためにレボルバ42を回動させる切換制御等を行なう。一方、画像処理用コンピュータ51Aは、CCDカメラ6に設けられているCCDイメージセンサにより撮像した基板Wの画像を取り込んで解析し、基板W上に形成されているポリシリコン膜の状態の評価を行なう。
【0045】以上のような構成のポリシリコン評価装置によれば、紫外線固体レーザ光源10Aから出射された紫外光レーザは、光ファイバプローブ80とダイクロイックミラー19とレボルバ42の対物レンズとを介して、基板Wに照射される。基板Wに照射された紫外光レーザはこの基板Wの表面で反射され、その反射光は、レボルバ42の対物レンズとダイクロイックミラー19とを介して、CCDカメラ6に入射する。そして、CCDカメラ6は、その入射した反射光をCCDイメージセンサにより撮像し、撮像して得られたポリシリコン膜の表面画像情報を画像処理用コンピュータ51Aに供給する。そして、画像処理用コンピュータ51Aは、後述するように、取り込まれたポリシリコン膜画像の情報に基づいて、ポリシリコン膜の状態を評価する。そして、その評価結果に基づいて、ポリシリコン膜を生成するためのエキシマレーザアニール時におけるレーザパワーの設定値を求めたり、また、その基板W上に形成されたポリシリコン膜が良品であるか或いは不良品であるかの判別を行なう。
【0046】次に、図1および図2を参照しながら、本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置の構成を更に詳細に説明する。
【0047】図1および図2に示されるように、本実施形態に係るポリシリコン膜評価装置1は、紫外光を供給する光学系以外に、可視光を供給する光学系を有している。これは、紫外光用の対物レンズが一般的にオートフォーカスに用いられる可視レーザ光の波長領域に対し色収差をもちオートフォーカスを行なうことが困難であるためである。具体的には、装置1は、可視光照明部8と紫外光照明部10とを備えるとともに、レボルバ42に可視用対物レンズ40aと紫外用対物レンズ40bとを有している。そして、可視光によってオートフォーカスを行なった後、レボルバ42を回転させて対物レンズの使用を可視用対物レンズ40aから紫外用対物レンズ40bに切換え、その状態で、紫外光を用いたポリシリコン膜の撮像を行なう。可視光学系を有することにより可視光による顕微観察も可能となる。
【0048】なお、本実施形態におけるオートフォーカス方式としては、例えば、ナイフエッジ法、非点収差法、離軸法などの光学検出方式や、画像そのもののコントラストを検出してフォーカスをかける画像処理検出方式(コントラスト検出方式)を採用することができる。また、前記画像処理検出方式としては、コントラストの最大および最小を使用してフォーカスを行なう変調度法や、コントラストの標準偏差を使用してフォーカスを行なう標準偏差法がある。また、光ではなく、近づいた物体同士の静電容量の違いでフォーカスをかける静電容量検出方式を採用しても良い。
【0049】図2に詳しく示されるように、可視光によってオートフォーカスを行なう可視光観察光学系は、高信頼性ハロゲンランプから成るファイバ光源85と、可視光照明部8と、ファイバ光源85からの可視光を可視光照明部8に供給するライトガイド86と、オートフォーカスユニット12と、結像レンズ18と、可視光用CCDカメラ4と、CCDカメラ4によって撮像された像に基づいてオートフォーカスユニット12を制御するオートフォーカスコントローラ84とを備えており、公知の形態でオートフォーカスを行なう。
【0050】一方、紫外光を用いたポリシリコン膜の撮像を行なう紫外光観察光学系は、紫外線固体レーザ光源(UV光源部)10Aと、紫外光照明部(UV照明部)10Bと、紫外光結像部(UV結像部)70とを備えている。
【0051】紫外線固体レーザ光源10Aは、紫外線固体レーザユニット60と、ND部61とから成る。紫外線固体レーザユニット60は、波長266nmの紫外光レーザ光源であり、例えば、Nd:YAG4倍波全固体レーザが用いられる。なお、この紫外線レーザ光源としては、近年、波長157nm程度のものも開発されており、このようなものを光源として用いても良い。
【0052】また、ND部61は、UVレンズ63と、紫外線固体レーザユニット60からの紫外光をUVレンズに向けて反射するUVミラー66と、紫外線固体レーザユニット60とUVミラー66との間の光路中に設けられたUVシャッタ67と、UVレンズ63とUVミラー66との間の光路中に設けられ且つ紫外光観察時の明るさを調整するための可変式NDフィルタ64とを有している。この場合、UVシャッタ67はプランジャアッセンブリ68により公知の形態で作動される。また、可変式NDフィルタ64もステッピングモータ65により公知の形態で作動される(開口率の調整)。
【0053】また、紫外光照明部10Bは、紫外線固体レーザ光源10Aからの紫外光を受ける拡散板74と、開口絞り75と、視野絞り76とを有している。拡散板74は、DCブラシレスモータ77により公知の形態で作動される。また、開口絞り75もステッピングモータ78により公知の形態で作動される。
【0054】なお、紫外線固体レーザ光源10Aからの紫外光は、紫外線固体レーザ光源10AのND部61のカップリング62と紫外光照明部10Bのカップリング73とを連結するファイバ80によって、紫外光照明部10Bに伝達される。
【0055】紫外光結像部(UV結像部)70は、紫外光用CCDカメラ6と、倍率レンズ系72とを有している。倍率レンズ系72は、例えば400倍用レンズと100倍用レンズとを有しており、ステッピングモータ71によってレンズの切換えが行なわれるようになっている。CCDカメラ6は、紫外光に対して高感度化されたカメラであり、内部に撮像素子としてCCDイメージセンサを備え、このCCDイメージセンサにより基板Wの表面を撮像する。また、CCDカメラ6は、本体を冷却することにより、CCDイメージセンサ等で発生する熱雑音、読み出し雑音、回路雑音等を抑圧している。
【0056】なお、図1および図2中、16は紫外光用の結像レンズであり、21はビームスプリッタであり、14はビームスプリッタ21とダイクロイックミラー19との間の光路中に設けられた波長板であり、22はステージ25上の基板Wを突き上げるためにステージ25上に昇降可能に設けられたピンであり、23はステージ25上における基板Wの位置決め状態を検知する基準検出センサである。また、83は、対物レンズの使用を可視用対物レンズ40aと紫外用対物レンズ40bとの間で切換えるために、リボルバ42を回転させるレボルバコントローラである。また、基板Wは、例えば600mm×720mmの矩形の大型液晶基板であり、図示しない待機位置に枚葉式に搬送されてここで待機されるとともに、ロボットアーム38によって1枚ずつステージ25上へとロードされる。
【0057】また、可動ステージ25は、被検査物となるポリシリコン膜が成膜された基板Wを支持するとともに、この基板Wを所定の検査位置へと移動させる機能を備えている。具体的には、可動ステージ25は、X軸方向にステージ25を移動させるためのXステージ26と、Y軸方向にステージ25を移動させるためのYステージ28と、Z軸方向にステージ25を移動させるためのZステージ15とによって動作可能に支持されている。すなわち、可動ステージ25は、Xステージ26とYステージ28とにより基板Wを互いに直交する方向に移動させて、基板Wを所定の検査位置に位置決めする。また、可動ステージ25は、Zステージ15によってその高さが調整され、フォーカス動作に寄与する。また、XYZステージ15,26,28は定盤30上に固定的にセットされている。また、定盤30は、例えば空気バネから成るダンパ(除振装置)32を介して、架台34に取り付けられている。
【0058】また、前述した可視光観察光学系および紫外光観察光学系は、そのメンテナンスが容易となるように、互いに一体を成す1つのユニットとして構成され、装置本体2に着脱自在に搭載されている。その状態が図4に明確に示されている。図4に示されるように、装置1は、可視光観察光学系および紫外光観察光学系を備えた光学部分110と、ステージ25およびその駆動系15,26,28を備えた装置本体2としてのメカ部分112とから成り、メカ部分112に光学部分110が着脱自在に搭載された構造を成している。すなわち、装置1は、上部に光学系が配置され、下部にXYZ動作機構が配置された構造となっている。このような構造を成していれば、別の場所で光学系の組立(アライメント等)を行なうことができるとともに、光学系を装置本体2(メカ部分112)に組み込む際には、単に機械的な精度によって光学部分110をメカ部分112に取り付ければ済む。また、光学系のその後のメンテナンスも、光学部分110をメカ部分112から取り外すだけで良いため、作業効率が良くなる。
【0059】図1に示されるように、装置本体2内を強制排気するため、装置本体2には排気管36が接続されている。また、装置本体2は、検査領域に隣接して、制御タワーを有している。この制御タワーには、操作ディスク92と、画像表示モニタ41と、操作パネル(タッチディスプレイ)47と、XYZステージ15,26,28を操作するジョイスティック45と、制御装置51とが設けられている。操作ディスク上には、操作用のキーボード49が設置されている。
【0060】また、ジョイスティック45は、装置本体2に形成された掘り込み部43内に位置して外部に突出しないようになっている。すなわち、図7に拡大して示されるように、ジョイスティック45は、装置本体面から突出しないように、板金曲げ等によって装置本体2に形成された掘り込み部43内にレイアウトされている。比較のため、従来のジョイスティックのレイアウトを図8の(a)および(b)に示す。図示のように、従来のジョイスティックP,Qは、操作ディスク上に突出した状態でレイアウトされている。そのため、不慮の接触による誤作動が生じたり、操作ディスクのスペースがジョイスティックP,Qによって占有されるといった欠点がある。これに対し、本実施形態では、図7に示されるようにレイアウトされているため、ジョイスティック45に接触することによる誤作動を防止できるとともに、省スペース化が図れ、また、ジョイスティック45を輸送時に取り外して別途梱包するといった手間が不要となるため、輸送工数の削減を図ることができる。また、本実施形態では、掘り込み部43の底面が傾斜されているため、ジョイスティック45の操作性が良好となる。なお、このような掘り込み部43を利用したレイアウトは、XYZステージを操作するジョイスティック45に限らず、ジョグダイアル、トラックボール、タッチパット、キーボードなどにも適用できる。
【0061】また、本実施形態では、定盤30を架台34に接続するダンパ32が外部振動等によって揺れ動いた際に、基板Wと対物レンズ(特にワーキングディスタンスが微小な紫外用対物レンズ40b)とが互いに衝突して損傷することを防止する第1の衝突防止手段が設けられている。この第1の衝突防止手段は、基板WのZ方向の移動を光学的に検知して規制するものである。すなわち、この第1の衝突防止手段は、図1および図4に示されるように、ステージ25のZ方向の移動経路の上限位置を挟み込むように対向する2つのセンサ部間でレーザ光を流す基板浮きセンサ20を有している。そして、第1の衝突防止手段は、このセンサ20のレーザ光にステージ25が引っ掛かる(ステージ25がZ方向の上限位置に達したことをレーザ光によって検知する)と、Zステージ15の駆動を強制的に停止させ、あるいは、警報を発する。
【0062】また、基板Wと対物レンズ(特にワーキングディスタンスが微小な紫外用対物レンズ40b)との干渉に関連して、本実施形態では、Zステージ15の上限位置をXYステージ26,28におけるXY座標の関数としている。すなわち、Zステージ15の上限位置をXY平面上の位置に応じて(XY平面の平面度に応じて)変化させている。具体的には、ソフト的なZ方向のリミット停止位置の設定値がXYステージ26,28の座標位置によって自動的に切り換わるようになっており、そのため、予め測定されたステージ25の上面のうねり具合に応じて、前記設定値をマッピングしている。ステージ25の運動性能の再現性は、安価なメカニカルガイドを用いたものでも0.01mm以下であることから、この機能により、リミット位置の設定マージンを確保することが可能になる。これに対し、従来では、基板Wと対物レンズとが接触することを避けるため、接触直前位置に近接動作を停止させるリミットスイッチがハード的またはソフト的に設けられているが、観察する基板Wの大きさが大きくなるにしたがって、これが載置されるステージ25の載置面のXY全領域の平行平面度が悪くなると、NAが大きくワーキングディスタンス(WD)が小さい高倍率対物レンズ40bを使用した顕微鏡観察では、設定できる範囲が極めて小さくなる。例えばWD=0.2mm、平行平面度=0.1mmの事例では、殆ど余裕をとることができない。したがって、この場合には、平行平面度を厳しくした高価なXYステージが必要となる。しかしながら、本実施形態のように、Zステージ15の上限位置をXYステージ26,28におけるXY座標の関数として、Zステージ15のリミット停止位置を設定すれば、このような問題がなくなる。
【0063】また、基板Wと対物レンズ(特にワーキングディスタンスが微小な紫外用対物レンズ40b)との干渉に関連して、本実施形態では、更に、以下のような対策が講じられている。すなわち、本実施形態のようにレボルバ42にWDが異なる複数の対物レンズ40a,40bを設けると、図10に示されるように、WDが大きい可視用対物レンズ40a(例えばL=2mm〜、焦点距離h)で焦点を近方Z2(図中Z1は遠方)に合わせた状態で、レボルバ42を回動させて対物レンズの使用を切換えた際に、WDが小さい紫外用対物レンズ40b(例えばLがほぼ0.1mm、焦点距離H(=h))が基板Wと衝突する虞がある。そのため、本実施形態では、図9に示されるように、紫外用対物レンズ40bのWDが意図的にδだけ大きく設定されている。図9の(a)は可視用対物レンズ40aで焦点を近方Z2に合わせた状態を、また、図9の(b)は可視用対物レンズ40aで焦点を遠方Z1に合わせた状態をそれぞれ示しているが、WDの大きい可視用対物レンズ40aが基板Wに近付いても、距離δだけの余裕があるため、紫外用対物レンズ40bと基板Wとの衝突を避けることができる。
【0064】また、本実施形態のように定盤30と架台34とをダンパ32によって接続した構成では、ダンパ32が外部振動等によって揺れ動いた際に、ステージ25が振動して、ロボットアーム38によって搬送される基板Wとステージ25とが衝突する虞がある。そのため、本実施形態では、このような危険性を回避するために、第2の衝突防止手段が設けられている。この第2の衝突防止手段は、図4に明確に示されるように、架台34に固定された例えばエアシリンダ100を有している。このエアシリンダ100の伸縮ロッド100aは、定盤30に接続されている。また、定盤30と架台34との間にはストッパ102が設けられている。
【0065】このような第2の衝突防止手段の使用形態が図12に示されている。 まず、ロボットアーム38によって基板Wをステージ25上にロードする場合(アンロードする場合も同様)には、空気バネからなるダンパ32の空気を抜き、ダンパ32の上側に位置する定盤30をエアシリンダ100によって下方に引張る。これにより、定盤30の下面がストッパ102に当接し、定盤30の位置が固定される。そして、この固定位置が図示しない検知手段によって検知されると、ロボットアーム38がステージ25上に基板Wをロードする(あるいは、アーム38により基板Wがステージ25上からアンロードされる)。ステージ25上に基板Wが載置された後は、ダンパ32に再びエアーを送り込んでダンパ機構を働かせる。すなわち、ステージ25は、ステージ25の振動を防止するダンパ(除振手段)32を介して架台34に取り付けられ、ダンパ32による除振作用が働く第1の状態と、架台34側に固定されて除振作用が働かない第2の状態との間で切換え可能となっている。このような第2の衝突防止手段を施さないと、図13に示されるように、ステージ25に対する基板Wの受け渡し時にダンパ32が振動して、アーム38上の基板Wがステージ25と衝突する危険がある。
【0066】このように、第2の衝突防止手段によれば、ダンパ32の振動を抑制でき、安全な基板Wの受け渡しを行なうことができる。また、通常の空気バネの空気を開放しただけでは、定盤30がストッパ102に当たるまでの時間が長くなるが、本実施形態のようにシリンダ100を用いて定盤30を積極的に引張れば、タクト時間を短縮することができ、結果的に作業効率をアップさせることができる。
【0067】また、本実施形態では、図1,2,4,5に明確に示されているように、可視光観察光学系の光軸と紫外光観察光学系の光軸が同軸となっており、これにより、可視光観察光学系に装備されたオートフォーカス機能を用いて紫外光観察時の焦点合わせを容易に行なうことができるようになっている。すなわち、本実施形態では、レボルバ42を用いて同じ焦点上で可視用対物レンズ40aと紫外用対物レンズ40bとの交換を行なうことができるようになっており、その結果、可視光観察光学系にてオートフォーカスを行ない、その後、レボルバ42の切換え操作を行なうだけで、紫外光観察光学系の焦点合わせを容易に行なうことができる。これに対し、従来のように、可視または赤外域のレーザ光を用いた反射アクティブ型のオートフォーカスでは、これを紫外光観察光学系に適用しようとすると、紫外用対物レンズ40bの持つ色収差により適切な性能が得られない。なお、この場合、紫外〜可視域まで色収差を補正したレンズを用いることも可能であるが、このようなレンズは非常に高価であり、また、製造上用いられる接着剤の影響により紫外光照射による劣化が問題となる。劣化問題にならない程度の色消し対物レンズが使えれば高価ではあるが可視部と紫外部の光学系を各々独立に構成できる。オートフォーカス機構も各々独立に持つ。紫外部の対物レンズは1つのみであるためレボルバー機構は可視部のみとなる。その結果、紫外部は対物レンズをピエゾアクチュエータで駆動できるようになる。Zの微調を下の台で行なう場合と比べピエゾで対物レンズを駆動する方式は慣性モーメントが小さくなりオートフォーカスのタクトタイムを速くできるようになる。
【0068】また、本実施形態では、図5に示されるように、AF光波長を取り除くフィルタ27が可視光用CCD4と結像レンズ18との間に抜き差し自在に設けられている。この場合、フィルタ27の抜き差し動作はフィルタ移動機構23によって行なわれる。具体的には、フォーカスをかける時にはフィルタ27をかけ(フィルタ27を光路中に位置させ)、画像を見る時にはフィルタ27を光路中から取り除くようにする。このように、フォーカス動作後にフィルタ27を取り除いて静止観察すれば、フルカラーの画像観察が得られる。これに対し、従来のように、可視光域の波長の光(例えば660nm赤)を用いた反射アクティブ型のオートフォーカスを行なうと、照明光によるフォーカス精度への影響を抑えるため、フォーカス光の波長をカットするフィルタを観察照明用の光軸上に挿入する必要がある。この場合、照明光の赤成分がカットされるため、観察画像は青味掛かった画像となり、フルカラーの観察を行なうことができなくなる。
【0069】なお、本実施形態においては、フィルタ27として、駆動系を持たない液晶可変フィルタを使用することも可能である。また、図5に示されるように、紫外光用CCD6とビームスプリッタ21との間の光路中に色フィルタ50を挿入しても良い。
【0070】また、本実施形態では、レボルバ42に5つの対物レンズを取り付けることができるようになっている。しかし、レボルバ42の5つのレンズ取付け部のうち、4つのレンズ取付け部だけに対物レンズがセッティングされている。具体的には、2つの可視用対物レンズ40aと2つの紫外用対物レンズ40bがレボルバ42にセッティングされている。また、本実施形態では、基板Wに照射される照明光の光量をモニタして調整する光量制御機構が設けられている。この光量制御機構は、図6に明確に示されるように、対物レンズに入射する照明光を反射する反射ミラー123と、反射ミラー123によって反射された光をビームスプリッタ21の反射作用によって受けるCCD125と、CCD125によって撮像された画像に基づいて例えば照明光学系を構成する光源の電気素子(例えば可変抵抗)127の抵抗値を変化させて所定の照射量となるように照明光を調整する照射量制御部129とからなる。この場合、反射ミラー123は、対物レンズが取り付けられていないレボルバ42の残る1つの空いたレンズ取付け部121にセッティングされている。
【0071】また、本実施形態では、非常に焦点深度が浅い光学系(紫外用対物レンズ40b)を使用しているため、紫外用CCDカメラ6によってベストフォーカスの画像を得るために、ベストフォーカス近傍のフォーカスが異なる複数の画像を取り込んで評価する必要がある。そのため、装置1は、処理時間を短縮するために、できるだけ少ない画像でベストフォーカス画像を発見する学習機能を有している。被検査物(基板W)が前工程において同一ロットでバッチ処理されている場合、同一ロット内パターンの傾向が近似するため、このような学習機能は有効である。以下、前記学習機能の具体的な学習手順について説明する。まず、同一個所、同一領域のグレー値の分布から標準偏差値を算出する。異なるデフォーカスの画像を複数取り込んだ時、標準偏差の最も大きな画像が最もコントラストが高く、自己相関係数値(AC値)が最も高くなることが実験によりわかっている。本実施形態のポリシリコン膜評価装置1は、高精度にWDを設定できる構造を有しており、検査開始WDから定量刻みで同方向へWDをステージ25の上下方向で変化させてデータを得る。得られたデータの標準偏差のグラフが図11の(a)に示されている。このデータからピーク位置の画像をベストフォーカス画像として以後の解析に用いる。
【0072】図11の(a)のグラフで、横軸がZ方向での各デフォーカス位置を表わし、縦軸が標準偏差、すなわちコントラストを表わす。目的とする最高標準偏差値の前後の測定はピーク値を求めるための予備検査であるが、この予備検査はできるだけ少ない方が測定効率上ベターである。このピーク値をPとしてこれを求める最短路アルゴリズムが前記学習機能と称するものである。
【0073】測定スタート位置、WDの走査幅、走査総回数、ピークを決定する条件は、決定の4要素である。まず、手動作業によってピークの位置を得る。この時は、回数は不問として、初回のピークを抽出する。2回目以降については、ピークを中心とした前後N回とそのためのスタート位置から測定を開始して、標準偏差を計算する。この結果、以下の4通りの状態が発生する。
【0074】a.ピークが得られたケースb.右上がりでピークがないケース(図11の(b)参照)
c.左上がりでピークがないケースd.複数のピークが現われたケース(図11の(c)参照)
フォーカス走査の回数をNとすると、先のケースでピークが得られた場合、そのピークが何番目で得られたかを計算し、次は全走査幅の中央にピークがくるようにスタート位置を変えてフォーカス走査する。同時に走査回数も大幅に減らして走査する。
【0075】右上がりでピークがないケースの場合(図11の(b)参照)には、1/2N幅だけスタートを右にシフトしてフォーカス走査する。一方、左上がりでピークがないケースの場合には、1/2N幅だけスタートを左にシフトしてフォーカス走査する。複数ピークが現われたケース(図11の(c)参照)では、標準偏差の大きい側のピークを、また、ピークを検出しても隣接ポイントからの標準偏差の変化が規定値以上であることを条件に、場合によっては2番目、3番目のピークの探査に走査を進める。また、以上のアルゴリズムで必ず成功する訳ではないため、リトライの回数に制限をかけておく。このようなアルゴリズムでその都度シーケンスを変化させながら測定を継続していくと、全体の効率を高めることができる。
【0076】このように、焦点合わせは装置1で自動的に行なわれるが、実際には、手動でフォーカスを行ないたい場合や、実際に装置1がフォーカスを正確に行なっているかどうかを確認したい場合がある。そのため、本実施形態では、強度分布をモニタ41上に表示できるようになっている。具体的には、図14に示されるように、破線で示される位置の走査線上の輝度をグラフにしてポリシリコン膜の表面画像上にスーパインポーズする。これらのグラフを見て、例えばエッジS(図14の(b)参照)の角度が一番急になる点を決めておけば、再現性良く焦点合わせを行なうことができる。
【0077】また、輝度を更に1回微分したものを更に重ねて表示しても良い。その表示形態の例が図15に示されている。図中、Fは輝度であり、F’は輝度変化の割合である。この場合、最大Hを合焦点と見なしても良い。
【0078】以上説明したように、本実施形態のポリシリコン膜評価装置1は、様々な新規な機構を備えているため、これらの機構を駆使して、形成したポリシリコン膜の状態を、客観的に、非接触で、精度良く、自動的に評価することができる。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のポリシリコン膜評価装置によれば、形成したポリシリコン膜の状態を、客観的に、非接触で、精度良く、自動的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るポリシリコン膜評価装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のポリシリコン膜評価装置の光学系の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図1のポリシリコン膜評価装置の要部を模式的に示した図である。
【図4】図1のポリシリコン膜評価装置全体を模式的に示した図である。
【図5】図1のポリシリコン膜評価装置の光学系を概略的に示す図である。
【図6】照明光量を制御する制御機構を示す概略図である。
【図7】図1のポリシリコン膜評価装置のジョイスティックのレイアウトを示す拡大斜視図である。
【図8】従来のジョイスティックのレイアウト例を示す拡大斜視図である。
【図9】紫外用対物レンズのWDを意図的に大きく設定して対物レンズと基板との干渉を防止する手段を模式的に示す図である。
【図10】図9に対応する従来の形態を示す模式図である。
【図11】検査開始WDから定量刻みで同方向へWDをステージの上下方向で変化させて得られたデータのコントラストのグラフである。
【図12】ステージにロードされる基板とステージとの干渉を防止する衝突防止手段の概念図である。
【図13】図12に対応する従来の形態を示す概念図である。
【図14】ポリシリコン膜の表面画像上に輝度をスーパインポーズした図である。
【図15】図14の画面上に輝度変化の割合を重ねあわせた図である。
【図16】レーザパワーを最適値としてエキシマレーザアニールを行なった時のポリシリコン膜の膜表面の画像と、最適値よりも少ないパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像と、最適値よりも大きいパワーとした時のポリシリコン膜の膜表面の画像とを説明するための図である。
【図17】(a)はポリシリコン膜のグレーンサイズとエキシマレーザアニールで与えられるエネルギとの関係を説明するための図、(b)はポリシリコン膜に与えられるエネルギに対する自己相関値の特性を説明するための図、(c)はポリシリコン膜に与えられるエネルギに対するAC値およびグレーンサイズの特性を説明するための図である。
【符号の説明】
1…ポリシリコン膜評価装置
4…可視光用CCDカメラ
6…紫外光用CCDカメラ
8…可視光照明部
10…紫外光照明部
12…オートフォーカスユニット
25…可動ステージ
40a…可視用対物レンズ
40b…紫外用対物レンズ
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アモルファスシリコン膜をアニール処理することによって形成されたポリシリコン膜を評価するポリシリコン膜評価装置において、ポリシリコン膜が形成された基板が載置されるステージと、可視光を前記ステージ上の基板に照射することによって基板上のポリシリコン膜の表面画像を撮像してオートフォーカスする可視光観察光学系と、紫外光を前記ステージ上の基板に照射することにより、前記可視光観察光学系を用いてオートフォーカスされた基板のポリシリコン膜の表面画像を得る紫外光観察光学系と、前記紫外光観察光学系によって得られたポリシリコン膜の表面画像から、ポリシリコン膜の膜表面の空間構造の直線性および周期性を評価し、この直線性および周期性の評価結果に基づき、前記ポリシリコン膜の状態を評価する評価手段と、を具備することを特徴とするポリシリコン膜評価装置。
【請求項2】 紫外光の波長が、前記ポリシリコン膜の評価周期に前記光学系における観察用対物レンズのNAを乗じた値より短い波長であることを特徴とする請求項1に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項3】 前記ステージは、ステージの振動を防止する除振手段を介して架台に取り付けられ、除振手段による除振作用が働く第1の状態と、架台に対して固定されて除振作用が働かない第2の状態との間で切換え可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項4】 前記可視光観察光学系と前記紫外光観察光学系は、互いに一体を成す1つのユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項5】 前記ユニットは、ステージが配置された装置本体の上部に着脱自在に搭載されていることを特徴とする請求項4に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項6】 前記可視光観察光学系の可視用対物レンズと前記紫外光観察光学系の紫外用対物レンズとが一体で搭載された回転可能なレボルバを備え、前記レボルバの回転動作によって、可視用対物レンズと紫外用対物レンズの使用状態が切換えられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項7】 可視光観察光学系および前記紫外光観察光学系の少なくとも一方の照明光量を制御する光量制御手段を備え、前記光量制御手段は、照明光量をモニタするために照明光を反射する反射ミラーを有し、前記反射ミラーは、前記レボルバの空き領域に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項8】 前記ステージは、互いに直交する3つのX軸、Y軸、Z軸に沿って移動可能であり、前記ステージのZ軸方向の上限位置は、ステージのXY平面の平滑度に応じたXY座標の関数として設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のポリシリコン膜評価装置。
【請求項9】 前記評価手段は、フォーカスが異なる複数のポリシリコン膜表面画像を前記紫外光観察光学系を介して取り込んで、最良のフォーカス画像を取得するとともに、評価回数を重ねる毎に少ない取り込み画像数で最良のフォーカス画像を得る学習機能を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のポリシリコン膜評価装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2002−289522(P2002−289522A)
【公開日】平成14年10月4日(2002.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−360959(P2001−360959)
【出願日】平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000108421)ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】