説明

ポンプ付きチューブ容器

【課題】チューブ容器体Aに装着したシリンダB1内から突出したステム42の上端に吐出ヘッド43を嵌着した作動部材B2の上下動により、チューブ容器体A内の内容物を吸い上げて吐出ヘッド43の吐出口50より吐出する如く構成したポンプBを備えたポンプ付きチューブ容器であって、極力部材数を減らすことができ、チューブ容器体からのポンプの突出幅を小さくでき、更に、構造が簡単で製造が容易な優れたポンプ付きチューブ容器を提案する。
【解決手段】シリンダB1の下方への抜け出し防止手段を設けた口頸部12内にシリンダB1の上端部を嵌着するとともに、口頸部12の上端部をシリンダB1の上面周縁部に変形させてポンプBをチューブ容器体Aに固定させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ付きチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ容器体にポンプを装着したチューブ容器が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
上記チューブ容器は、一端が一体的に接合されることで、その一端部が封止されて形成され、他端部に口頸部を起立した容器本体と、容器本体の口頸部に螺着したキャップにより、シリンダを容器本体内に垂下した状態で、且つ上端にスパウトを上下動可能に突出した状態で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3290301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した如く従来のポンプ付チューブ容器は、ポンプを容器本体に対して螺着することで固定しており、そのための螺筒等の部材数が多くなり、また、螺筒の螺着によるポンプの装着のためどうしてもチューブ容器体上方に突出する部分が口頸部を含めて大きくなる傾向がある。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、極力部材数を減らすことができ、また、チューブ容器体からのポンプの突出幅を小さくでき、更に、構造が簡単で製造が容易な優れたポンプ付きチューブ容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、下端部を扁平状に閉塞した周壁部10の上端縁より肩部11を介して口頸部12を起立したチューブ容器体Aと、チューブ容器体Aに装着したシリンダB1内から突出したステム42の上端に吐出ヘッド43を嵌着した作動部材B2の上下動により、チューブ容器体A内の内容物を吸い上げて吐出ヘッド43の吐出口50より吐出する如く構成したポンプBとを備えたポンプ付きチューブ容器であって、シリンダB1の下方への抜け出し防止手段を設けた口頸部12内にシリンダB1の上端部を嵌着するとともに、口頸部12の上端部を内方へ変形させてシリンダB1の上面周縁部に固定させ、以てポンプBをチューブ容器体Aに固定させた。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、カシメ刃100 により口頸部12上端部を内方へ変形させてカシメることでシリンダB1の上面周縁部に固定させた。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周に上向きの係止段部を周設するとともに、シリンダB1外周に係止段部と係合する下向きの係合段部を周設した。
【0010】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周を下方に行くに従って窄まるテ−パ状内面15を形成するとともに、シリンダB1の外周にテ−パ状内面15と係合する下方に行くに従って窄まるテーパ状外面31を形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明ではシリンダB1の下方への抜け出し防止手段を設けた口頸部12内にシリンダB1の上端部を嵌着するとともに、口頸部12の上端部を内方へ変形させてシリンダB1の上面周縁部に固定させ、以てポンプBをチューブ容器体Aに固定させたので、極力部材数を減らすことができ、また、螺筒に比べて高さを低くしても充分な連結機能を発揮でき、チューブ容器体AからのポンプBの突出幅を小さくできる利点がある。また、構造も簡易化できるため製造も容易である。
【0012】
カシメ刃100 により口頸部12上端部を内方へ変形させてカシメることでシリンダB1の上面周縁部に固定させた場合には、ポンプBのチューブ容器体Aへの組み付けが容易に行え、その際カシメ刃100 という簡単な治具によりシリンダB1の固定を行えるため、例えば口頸部を溶融軟化する様な特別に複雑な設備を必要とせずに製造が可能であり、コストがかからず製造できる利点もある。
【0013】
シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周に上向きの係止段部を周設するとともに、シリンダB1外周に係止段部と係合する下向きの係合段部を周設した場合には、チューブ容器体AにシリンダB1を固定する際にチューブ容器体A上方よりシリンダB1を挿入するだけで所定位置に係止できるため、シリンダB1固定操作が容易である。
【0014】
シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周を下方に行くに従って窄まるテ−パ状内面15を形成するとともに、シリンダB1の外周にテ−パ状内面15と係合する下方に行くに従って窄まるテーパ状外面31を形成した場合には、同様にチューブ容器体A上方よりシリンダB1を挿入するだけで所定位置に係止できるため、シリンダB1の固定操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ポンプ付きチューブ容器の要部縦断面図である。(実施例1)
【図2】チューブ容器体の要部縦断面図である。(実施例1)
【図3】シリンダに作動部材の一部を嵌合させた状態の縦断面図である。(実施例1)
【図4】シリンダを固定する際の説明図である。(実施例1)
【図5】ポンプ付きチューブ容器の要部縦断面図である。(実施例2)
【図6】チューブ容器体の要部縦断面図である。(実施例2)
【図7】シリンダに作動部材の一部を嵌合させた状態の縦断面図である。(実施例2)
【図8】ポンプ付きチューブ容器の要部縦断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1はポンプ付きチューブ容器1の一例を示す。ポンプ付きチューブ容器1は、チューブ容器体Aと、ポンプBとを備えている。
【0018】
チューブ容器体Aは合成樹脂等により形成されたもので、図2に示す如く、周壁部10の上端縁より肩部11を介して口頸部12を立設している。口頸部12の内周には、図2で明瞭のように、上向きの第1係止段部13及び第2係止段部14を順次周設して、順次内径を縮径している。尚、周壁部10の下端は内容物を充填後公知手段により扁平に閉塞する。
【0019】
ポンプBは合成樹脂等により形成されたもので、シリンダB1と、作動部材B2とを備えている。
【0020】
シリンダB1は、上下端開口の筒状をなし、筒壁の上部外周に、図3で明瞭なように、第1係止段部13及び第2係止段部14とそれぞれ係合する下向きの第1係合段部20及び第2係合段部21を順次周設して、順次外径を縮径している。また、第2係合段部21の直下にはシール用の突条22を突周設している。
【0021】
また、シリンダB1の内部下端部には吸込み弁23を設けている。吸込み弁23は、内部下部に上下動可能に収納したポペット弁体24と、内部底面の吸込み弁座25とで構成している。ポペット弁体24は下部が大径で、上部が小径の棒状をなし、大径部分の外周下部に周方向複数突設した係止リブ26を、シリンダB1の筒壁内周下部に周方向複数突設した支持リブ27間に位置させ、上部を作動部材B2の後述するピストンロッド内に上下摺動可能に嵌合させている。そして、各支持リブ27の上面と作動部材B2の下面とに介在させたコイルスプリングsの下面に各係止リブ26が当接する位置から、下面が吸込み弁座25に圧接する位置までの上下動が可能に装着されており、作動部材B2が下降する際には押し下げられ、作動部材B2が上昇する際には引き上げられる如く構成している。
【0022】
尚、シリンダB1の上端部には作動部材B2の抜け出し防止を一つの目的とする係止筒部材28を嵌着している。係止筒部材28は、シリンダB1上面に嵌合させたフランジ29を、シリンダB1の内周上端部に嵌合させた係止筒30の上端縁より延設して構成している。
【0023】
作動部材B2は、シリンダB1内周を液密摺動可能に嵌合させた環状ピストン40をピストンロッド41の下部外周に所定幅の上下動が可能に嵌合させ、ピストンロッド41の上端部をステム42内下部に嵌着し、ステム42の上端に吐出ヘッド43を嵌着しており、コイルスプリングsにより常時上方に付勢させ、上下動可能に装着している。また、ピストンロッド41の外周に設けた吐出弁座44と環状ピストン40とで吐出弁45を形成している。更に、吐出ヘッド43は、ステム42の上端に嵌着した縦筒46を頂壁47の裏面より垂設するとともに、頂壁47の周縁部より周壁48を垂設し、また、縦筒46の上部に基端を連通させたノズル49の先端を周壁48を貫通して前方へ突出し、その先端に吐出口50を開口して構成している。
【0024】
上記の如きポンプ付きチューブ容器1を形成する場合は、例えば、図3に示す如く、シリンダB1内にポペット弁体24、コイルスプリングs、環状ピストン40、ピストンロッド41、ステム42を装着した状態で、シリンダB1の上端に係止筒部材28を嵌着させたものを組み立てる。この際係止筒部材28の係止筒30下面に環状ピストン40の外周上面が当接係止して作動部材B2の上限を定めている。上記した図3の組み立て体をチューブ容器体Aの上方より嵌着させる。その際第2係合段部21が第2係止段部14に、第1係合段部20が第1係止段部13にそれぞれ係止され、また、シール用の突条22が第2係止段部14下方の口頸部12内周に圧接してシールしている。次いで、図4に示す如く、上方よりカシメ刃100 により口頸部12上面を内方へカシメ、図1に示す如く、係止筒部材28のフランジ29上面に口頸部12の上端部を変形圧接させてシリンダB1をチューブ容器体Aに固定し、次いで、ステム42上端部に縦筒46を嵌着して吐出ヘッド43を嵌着する。
【0025】
上記の如く構成したポンプ付きチューブ容器1を使用する場合について説明する。図1の状態から吐出ヘッド43を押圧して作動部材B2を押し下げると、ポペット弁体24が下降して吸込み弁23が閉じ、シリンダB1内が加圧され、加圧液により環状ピストン40をピストンロッド41に対して相対的に上昇させて吐出弁45を開き、加圧液はピストンロッド41の透孔からピストンロッド41内、ステム42内を通り吐出口50を介して外部へ吐出される。次いで、吐出ヘッド43の押圧を解除すると、コイルスプリングsの作用で作動部材B2は上昇し、それに伴い環状ピストン40が相対的に下降して吐出弁45が閉じ、ピストンロッド41によりポペット弁体24が引上げられて吸込み弁23が開くとともに、シリンダB1内が負圧化してチューブ容器体A内の液がシリンダB1内に導入される。シリンダB1内への液の導入に伴ってチューブ容器体Aは減容する如くその周壁部10形態を変形する。
【0026】
図5は他の例を示し、図1の例に於いて、チューブ容器体A、シリンダB1、係止筒部材28の形態が相違し、図1の例とは異なるシリンダの下方への抜け出し防止手段を設けている。本例に於けるチューブ容器体Aは合成樹脂等により形成されたもので、図1と同様に、周壁部10の上端縁より肩部11を介して口頸部12を立設している。そして、口頸部12の内周には、図6で明瞭なように、内周面を上方から下方に順次狭まるテ−パ状内面15に形成している。尚、周壁部10の下端を内容物を充填後公知手段により扁平に閉塞するのは図1の場合と同様である。
【0027】
また、シリンダB1は、上下端開口の筒状をなし、筒壁の上部外周を、図7で明瞭なように、テ−パ状外面31として構成している。また、テ−パ状外面31の下端部に設けた段部32を介してその下方を垂直面とし、段部32の直下にはシール用の突条22を突周設している。
【0028】
更に、係止筒部材28のフランジ29端面をテ−パ状外面31と連続するテ−パ面33として構成している。
【0029】
この場合のポンプ付きチューブ容器1を形成する場合も、例えば図7に示す如く、シリンダB1内にポペット弁体24、コイルスプリングs、環状ピストン40、ピストンロッド41、ステム42を装着した状態で、シリンダB1の上端に係止筒部材28を嵌着させたものを組み立てる。この際係止筒部材28の係止筒30下面に環状ピストン40の外周上面が当接係止して作動部材B2の上限を定めている。上記した図7の組み立て体をチューブ容器体Aの上方より嵌着させる。その際テーパ状内面15に、テーパ状外面31及びテ−パ面33がそれぞれ係止され、シール用の突条22が段部32下方の口頸部12内周に圧接してシールしている。次いで、図1の場合と同様に上方よりカシメ刃100 により口頸部12上面をカシメて図5に示す如く、係止筒部材28のフランジ29上面に口頸部12の上端部を変形させてシリンダB1をチューブ容器体Aに固定し、ステム42の上端部に縦筒46を嵌着して吐出ヘッド43を装着し、チューブ容器体AにポンプBを装着した最終形態とする。
【0030】
図8は他の例を示し、図1の例に於いて、カバーキャップCを設けた例を示す。本例では、チューブ容器体Aの周壁部10上端部に小径部10a を形成し、該小径部10a の外周に周壁60の下端部を着脱可能に嵌合させてポンプB上面を被覆するカバーキャップCを設けている。その他の構成は図1の例と同様であるため同符号を付して説明を省略する。尚、図5の例の場合にも同様にカバーキャップを設ける構造とすることは可能である。
【0031】
尚、各例に於いて口頸部12の上端部をシリンダB1の上面周縁部に変形させてポンプBをチューブ容器体Aに固定させる手段として、カシメ刃 100を使用した例を示したが、これに限られず、口頸部12の上端部を溶融軟化した状態で変形させてシリンダB1の上面周縁部に圧接固定させても良い。
【0032】
また、上記各例では上端部に係止筒部材28を嵌着したシリンダB1を使用し、内方へ変形させた口頸部12の上端部が係止筒部材28の上面を介してシリンダB1の上面を押圧係止した例を示しているが、当然これに限らず、係止筒部材を用いないシリンダを採用する場合も可能で、その場合にはシリンダの上面に直接変形させた口頸部の上端部を圧接固定する。いずれにしろ、変形させた口頸部の上端部をシリンダ上面に直接或いは間接的に押圧係止する形態である。
【符号の説明】
【0033】
1…ポンプ付きチューブ容器
A…チューブ容器体
10…胴部部,10a …小径部,11…肩部,12…口頸部,13…第1係止段部,
14…第2係止段部,15…テ−パ状内面
B…ポンプ
B1…シリンダ
20…第1係合段部,21…第2係合段部,22…シール用の突条,23…吸込み弁,
24…ポペット弁体,25…吸込み弁座,26…係止リブ,27…支持リブ,
28…係止筒部材,29…フランジ,30…係止筒,31…テーパ状外面,32…段部,
33…テ−パ面,s…コイルスプリング
B2…作動部材
40…環状ピストン,41…ピストンロッド,42…ステム,43…吐出ヘッド,
44…吐出弁座,45…吐出弁,46…縦筒,47…頂壁,48…周壁,49…ノズル,
50…吐出口
C…カバーキャップ
60…周壁
100 …カシメ刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部を扁平状に閉塞した周壁部10の上端縁より肩部11を介して口頸部12を起立したチューブ容器体Aと、チューブ容器体Aに装着したシリンダB1内から突出したステム42の上端に吐出ヘッド43を嵌着した作動部材B2の上下動により、チューブ容器体A内の内容物を吸い上げて吐出ヘッド43の吐出口50より吐出する如く構成したポンプBとを備えたポンプ付きチューブ容器であって、シリンダB1の下方への抜け出し防止手段を設けた口頸部12内にシリンダB1の上端部を嵌着するとともに、口頸部12の上端部をシリンダB1の上面周縁部に変形させてポンプBをチューブ容器体Aに固定させたポンプ付きチューブ容器。
【請求項2】
口頸部12の上方よりカシメ刃100 により口頸部12上端を内方へカシメることでシリンダB1の上面周縁部に口頸部12の上端部を変形させた請求項1記載のポンプ付きチューブ容器。
【請求項3】
シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周に上向きの係止段部を周設するとともに、シリンダB1外周に係止段部と係合する下向きの係合段部を周設した請求項1又は請求項2のいずれかに記載のポンプ付きチューブ容器。
【請求項4】
シリンダB1の下方への抜け出し防止手段として、口頸部12内周を下方に行くに従って窄まるテ−パ状内面15を形成するとともに、シリンダB1の外周にテ−パ状内面15と係合する下方に行くに従って窄まるテーパ状外面31を形成した請求項1又は請求項2のいずれかに記載のポンプ付きチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−274981(P2010−274981A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130676(P2009−130676)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】