説明

ポンプ付き薄肉ボトル

【課題】 合成樹脂製薄肉ブロー成形ボトル本体の減圧方向の圧力変動を速やかにかつ確実に消滅させることにより、ボトル本体の不体裁な減圧変形発生を阻止する。
【解決手段】 合成樹脂製薄肉ブロー成形ボトル本体1にポンプ10を組付け、ボトル本体1の肩部3に吸気孔9を開設するもぎ取り片5を付設し、もぎ取り片5のもぎ取りにより開設された吸気孔9に、別途用意した吸気弁15を密に嵌入組付けし、この吸気弁15をボトル本体1内に発生した減圧方向の圧力変動に従って開放するものとして、ボトル本体1の減圧による変形発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形された合成樹脂製のポンプ付き薄肉ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体収納容器として、合成樹脂製ブロー成形ボトルに手動式のポンプを組付けて、吐出操作の度に略定量の内容物を吐出させることのできるポンプ付きボトルが数多く利用されている。
【0003】
このポンプ付きボトルにあっては、ボトルの密閉は組付けられたポンプにより達成すると共に、例えば特開2000−070776公報に開示されているように、内容液を吐出させることにより発生するボトル内の減圧を、ポンプに形成した空気流路を通して外気を吸気することにより消滅させるようにしている。
【0004】
装着部の内側に位置する筒体から環状に内向きに突出して先端をステム外周面部に接触させた突起部を有するポンプディスペンサーであって、突起部と摺接するステム外周面部の上下方向中央部に凹部を形成して、その凹部形成部分では突起部先端がステム外周面部分に接触しないようにすることにより、空気孔を介して容器内に外気を導入可能とする。
【0005】
したがって、突起部が凹部形成部分に位置すると、容器内部と外部との間には突起部の作動とは関係なく連通する空気流路ができるので、容器体の肉厚や減圧の程度にかかわりなく空気を導入でき、これにより容器体の薄肉化を得ることができると共に、容器体内部の減圧を確実に解消できる、ことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−086029公報
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、容器体内に発生した減圧に従って空気流路を通して外気を吸気するものであるので、容器体は内部に減圧を発生させることのできる剛性を持たなければならず、このためこの剛性を持たせることのできる肉厚が必要となり、このことが容器体の薄肉化に大きな弊害となっている、と云う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、ボトル本体に減圧方向に圧力変動が発生すると、このボトル本体内を簡単に開放することを技術的課題とし、もって薄肉に成形されたボトル本体の速やかで確実な減圧消滅を得て、減圧変形の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
ブロー成形された薄肉な合成樹脂製ボトル本体に、手動式のポンプを組付けたポンプ付き薄肉ボトルであること、
ボトル本体の肩部の外表面の一部に、もぎ取りにより吸気孔を開設するもぎ取り片を一体に付設すること、
このもぎ取り片のもぎ取りにより開設された吸気孔には、別途用意した軟質弾性材製の吸気弁を、ボトル本体外から密に嵌入固定すること、
にある。
【0010】
そして、吸気弁は、ボトル本体内に発生した減圧方向の圧力変動に従って開放するが、内容物の流出は阻止するものとなっている。
【0011】
ポンプ付き薄肉ボトルの未使用状態では、ボトル本体に一体設されたもぎ取り片で密閉されている。
【0012】
ポンプ付き薄肉ボトルを使用するに際しては、もぎ取り片をもぎ取って吸気孔を開設し、この吸気孔に別途用意した吸気弁を、単純な押し込み操作により嵌合固定して、ポンプ付き薄肉ボトルを実使用状態とする。
【0013】
このように、ポンプ付き薄肉ボトルの実使用状態への切換え、すなわち吸気孔の開設は、もぎ取り片のもぎ取りにより簡単に達成することができる。
【0014】
吸気孔に取付けられた吸気弁は、ボトル本体内に発生した減圧方向の圧力変動に直接感応して簡単に開放するので、ボトル本体内に減圧方向の圧力変動が発生すると、速やかに開放して外気を通過させて、この減圧方向の圧力変動を消滅させ、また内容物の流出を阻止するものであるので、誤ってボトル本体を転倒させても、この吸気弁から内容物を不正に漏出させることがない。
【0015】
このように、ボトル本体内の減圧方向の圧力変動に吸気弁が直接感応して開放するので、ボトル本体内が減圧状態となることが殆どなく、これにより薄肉なボトル本体に減圧による不正変形を生じさせることがないと共に、ボトル本体のさらなる薄肉化が可能となる。
【0016】
吸気孔がボトル本体のヘッドスペースに対向する肩部に形成されるので、この吸気孔に嵌入固定される吸気弁は、通常の状態では内容液に触れることがなく、これにより安定した弁動作を行うことができる。
【0017】
また、もぎ取り片は、ボトル本体の肩部外表面に付設されているので、商品としてのポンプ付き薄肉ボトルの外観として目立つ状態となっており、これによりもぎ取り片の付設を見てポンプ付き薄肉ボトルの未使用を簡単に確認することができる。
【0018】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、指先で摘み易い摘み部と、この摘み部と吸気孔の開孔縁部とを接続する筒状の接続筒部とからもぎ取り片を構成し、吸気孔の開孔縁部と接続筒部との接続部分に弱化部を形成した、ものである。
【0019】
摘み部と、接続筒部と、そして弱化部とからもぎ取り片を構成したものにあっては、摘み片によりもぎ取り片のもぎ取りが行い易くなるので、吸気孔の開設を簡単に開設できると共に、外観上、もぎ取り片を目立つものとすることができ、また接続筒部と弱化部との組合せにより、もぎ取り片のもぎ取りにより、適正な吸気孔の形成を確実に得ることができる。
【0020】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、吸気孔に密嵌入する円筒状の主体部と、この主体部の外側開口端に外鍔状に周設された鍔片と、主体部の外周面に突設された係止突部と、主体部の内側開口端から円錐筒状に連設された弁機能部とから吸気弁を構成し、鍔片を吸気孔の開孔縁への突き当たりにより吸気弁の嵌入組付き限界位置を設定するものとし、係止突部を吸気孔の開孔縁に係止することにより吸気弁の抜け出しを阻止するものとし、弁機能部を尖塔状の先端に弁機能を発揮するスリットを設けたものとした、ものである。
【0021】
主体部と、鍔片と、係止突部と、そして弁機能部とから吸気弁を構成したものにあっては、吸気弁を吸気孔に対して、弁機能部でガイドさせて簡単に押し込み嵌入固定させることができ、また円錐筒状の尖塔状先端に設けたスリットにより弁機能を発揮させるので、簡単に開放する逆止弁作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、もぎ取り片のもぎ取りにより吸気孔を簡単に開設することができるので、ポンプ付き薄肉ボトルの未使用状態から実使用状態への切換えを簡単に行うことができる。
【0023】
ボトル本体に減圧による変形を殆ど生じさせることがないので、ボトル本体の自立機能を保持できる範囲内で、ボトル本体の薄肉化を充分に得ることが可能となる。
【0024】
吸気機能部分として専用の吸気弁を設けるので、充分で安全な吸気機能を得ることができ、これにより薄肉ボトルであっても、安全で適正な運用を得ることができる。
【0025】
ボトル本体の目立つ箇所に設けられているので、このもぎ取り片の有無により実使用状態を簡単に認識することができ、これにより商品であるポンプ付き薄肉ボトルを安心して購入することができる。
【0026】
摘み部と、接続筒部と、そして弱化部とからもぎ取り片を構成したものにあっては、未使用状態を簡単に確認することができると共に、吸気機能部分の適正な形成を得ることができる。
【0027】
主体部と、鍔片と、係止突部と、そして弁機能部とから吸気弁を構成したものにあっては、簡単に開放する吸気機能部分を形成することができ、またこの吸気機能部分を簡単な構成で逆止弁機能を有するものとすることができ、これによりポンプ付き薄肉ボトルのより安全な実使用状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態例の、一部破断した非使用状態の側面図である。
【図2】図1中の丸印した部分の、拡大断面図である。
【図3】図1に示した実施形態例に、一部破断した使用状態の側面図である。
【図4】図3中、丸印した部分の、拡大断面図である。
【図5】図3に示した実施形態例の、背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明によるポンプ付きボトルの未使用状態の、一部破断した側面図で、ボトル本体1は肉薄であり、その程度は、減圧を消滅させることができなくなる値(平均肉厚0.8mm以下)で、合成樹脂により自立機能を保持できる範囲内の値(0.3〜0.4mm程度が望ましい)となっており、このボトル本体1は、下端に脚部を構成する底部を連設して塞いだ筒状の胴部4の上端に、上方に縮径した楕円筒状の肩部3を介して、外周面に螺条を刻設した円筒状の口筒部2を起立連設している。
【0030】
このボトル本体1の口筒部2に密に螺合組付けされるポンプ10は、操作部であるノズルヘッド11と、このノズルヘッド11から側方に延出したノズル12と、ポンプ10をボトル本体1に螺合組付けする組付きキャップ14と、この組付きキャップ14に組付いているポンプ機能部(図示省略)にノズルヘッド11を、昇降変位可能に連結する首筒13とを有して構成されている。
【0031】
図1に示されたポンプ10の未使用状態では、ボトル本体1の肩部3の外表面には、吸気孔9を開設するためのもぎ取り片5が、金型内で一体に押し潰し成形されているが、このもぎ取り片5(図2参照)は、指先で摘み易い摘み部6と、この摘み部6と吸気孔9の開孔縁とを連結する筒片状の接続筒部7と、この接続筒部7の肩部3との連設箇所に形成された肉薄な弱化部8とから構成されている。
【0032】
このもぎ取り片5は、ボトル本体1の肩部3の外表面に突出した姿勢で位置するので、商品としてのポンプ付き薄肉ボトルの表面に最も目立つ状態で位置することになり、購入者は、このもぎ取り片5がボトル本体1に一体に付設されていることを確認もしくは視認することにより、ポンプ付き薄肉ボトルが未使用状態であることを簡単に確認することができる。
【0033】
また、図1に示されたポンプ10の未使用状態では、ノズルヘッド11は組付きキャップ14に螺合結合して下降限界位置に固定されており、これにより消費者が購入する前においては、内容物の吐出動作を不能とすると共に、格納・搬送時における占有容積が小さくなるようにしている。
【0034】
このように、商品としてのポンプ付きボトルは、消費者が購入する前には、内容物の吐出が不能とされるので、内容物の不正吐出が発生せず、安全な取扱いを得ることができ、また占有容積が小さいので、効率の良い格納と輸送とを得ることができる。
【0035】
購入したポンプ付き薄肉ボトルを使用するに際しては、(以下、図3参照)ノズルヘッド11の組付きキャップ14に対する螺合を解除して、ポンプ10を稼動可能状態にすると共に、指先で摘み部6を摘んでもぎ取り片5をもぎ取って吸気孔9を開設し、この開設された吸気孔9に別途用意した吸気弁15を、ボトル本体1の外から押し込み状に密嵌入して固定する。
【0036】
吸気弁15(図4参照)は、シリコンゴムに代表される合成樹脂ゴムや天然ゴム、さらにはエラストマー等の軟質弾性材の一体成形物で、円筒状の主体部16の外側開口端に外鍔状の鍔片17を周設すると共に、主体部16の外周面に、鍔片17との間に、肩部3の肉厚と等しいか、それよりもわずかに小さい間隔を開けて係止突部18を突設し、さらに主体部16の内側開口端に円錐筒状の弁機能部19を連設して構成されている。
【0037】
主体部16は、吸気孔9の開孔口径と等しいか、やや大きい外径を有することにより、吸気孔9に密に嵌入し、鍔片17は、吸気孔9に対する吸気弁15の嵌入組付け限界位置を設定するもので、吸気弁15が吸気孔9を通り抜けてボトル本体1内に落下するのを防止しており、係止突部18は吸気孔9に嵌入組付けされた吸気弁15の抜け出しを防止しており、弁機能部19は尖塔状の先端に弁作用を発揮するスリット20を形成しており、弁機能部19の円錐筒形状は、吸気弁15の吸気孔9に対する嵌入組付きをガイドすることになる。
【0038】
この吸気弁15は、ポンプ10を操作して内容物を吐出させることにより、ボトル本体1内に減圧方向の圧力変動が発生すると、この圧力変動に感応して速やかにかつ簡単にスリット20で構成される弁機能を開放させて、外気をボトル本体1内に導入させ、これにより発生した減圧方向の圧力変動を速やかに消滅させるので、ボトル本体1に減圧変形を発生させることがない。
【0039】
また、吸気弁15のスリット20は、弁機能部19の尖塔状の先端に形成されているので、ボトル本体1の内側から圧力を加えられた状態では逆止弁として作用することになり、これにより吸気弁15からの内容物の揮発成分の飛散を防止することになる。
【0040】
図示実施形態例の場合、吸気弁15は、その鍔部17だけをボトル本体1の外に露出させている(図3および図5参照)ので、この組付けられた吸気弁15が目立ってボトル本体1の外観体裁を劣化させる恐れはない。
【0041】
ボトル本体1に吸気のための専用の機能部分を設けるので、ボトル本体1に組付けられるポンプ10を、ボトル本体1内に外気を吸気させるリーク通路を有さない構成とすることが可能となる。
【0042】
組付けられるポンプ10を、リーク通路のないものとすることは、リーク通路を有さない分、ポンプ10の構造を簡単にすることができる。
【0043】
なお、吸気弁15の図示実施例として、スリット20による弁機能部の構成を説明したが、吸気弁15の構造はこれに限定されることはなく、揺動変位する弁片を有する一般的な逆止弁構造であっても良く、要はボトル本体1内に発生した減圧を速やかに消滅させることのできるものであれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明におけるもぎ取り片と吸気弁との組合せは、ボトル本体の未使用状態時の密閉を高い精度で確保すると共に、実使用状態時にボトル本体内に発生する減圧方向の圧力変動を速やかにかつ確実に消滅させるものであり、未使用状態時における密封を安定して確保すると共に、実使用状態時におけるボトル本体内の減圧発生を嫌う技術として、幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ;ボトル本体
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
5 ;もぎ取り片
6 ;摘み部
7 ;接続筒部
8 ;弱化部
9 ;吸気孔
10;ポンプ
11;ノズルヘッド
12;ノズル
13;首筒
14;組付きキャップ
15;吸気弁
16;主体部
17;鍔部
18;係止突部
19;弁機能部
20;スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形された薄肉な合成樹脂製ボトル本体に、手動式のポンプを組付けたポンプ付き薄肉ボトルであって、前記ボトル本体の肩部の外表面の一部に、もぎ取りにより吸気孔を開設するもぎ取り片を一体に付設し、該もぎ取り片のもぎ取りにより開設された吸気孔に、別途用意した軟質弾性材製の吸気弁を、前記ボトル本体外から密に嵌入固定するものとし、前記吸気弁を、前記ボトル本体内に発生した減圧方向の圧力変動に従って開放するが、内容物の流出は阻止するものとしたポンプ付き薄肉ボトル。
【請求項2】
指先で摘み易い摘み部と、該摘み部と吸気孔の開孔縁部とを接続する筒状の接続筒部とからもぎ取り片を構成し、前記吸気孔の開孔縁部と接続筒部との接続部分に弱化部を形成した請求項1に記載のポンプ付き薄肉ボトル。
【請求項3】
吸気孔に密嵌入する円筒状の主体部と、該主体部の外側開口端に外鍔状に周設された鍔片と、前記主体部の外周面に突設された係止突部と、前記主体部の内側開口端から円錐筒状に連設された弁機能部とから吸気弁を構成し、前記鍔片を吸気孔の開孔縁への突き当たりにより吸気弁の嵌入組付き限界位置を設定するものとし、前記係止突部を吸気孔の開孔縁に係止することにより吸気弁の抜け出しを阻止するものとし、前記弁機能部を尖塔状の先端に弁機能を発揮するスリットを設けたものとした請求項1または2に記載のポンプ付き薄肉ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274963(P2010−274963A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129352(P2009−129352)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】