説明

マシジミ飼育キット

【課題】閉じた生物系でのマシジミ及び魚類の養殖と植物の栽培を行うマシジミ飼育キットを提供する。
【解決手段】マシジミ5を飼育するためのマシジミ飼育槽1と、メダカ(魚類)6を飼育するための魚類飼育槽2とを、循環ポンプ3と、それぞれを繋ぐ循環配管8とにより概略構成し、魚類飼育槽2に環境調整剤(クロレラ・微生物・細菌)10を投入する。この環境調整剤10の働きにより、残餌や魚類の排泄物が異化されマシジミ5の餌を作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシジミと魚類を飼育すると同時に、水生又は陸生の植物(以下、単に植物と記載する。)を栽培し、閉じた生物系の中で動物と植物のバランス示標となるマシジミ飼育キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚介類の養殖は、効率的に魚介類を生産するために高密度養殖が行われている。また、養殖で用いられている餌料としては、魚介類の成長を早めるために、高蛋白質の配合餌料が用いられる。
【0003】
そして、餌料の残餌や魚介類の排泄物が養殖池や養殖槽に沈殿し、ヘドロ状の汚泥となって堆積し、養殖池や養殖槽の水を汚染する原因となっている。
【0004】
現在の養殖は、そのほとんどが養殖を行うプロセス中の全部または一部において水の入れ替えをしない、いわゆる「閉鎖系」で行われている。また、「閉鎖系」で養殖する場合、養殖池や養殖槽の底面に堆積した汚泥を外部に取出して、濾過し、処理後の水を養殖池等に戻し再度利用する循環方式が行われている。
【0005】
しかしながら、濾過だけでは、汚泥そのもの(大きな固体としての汚泥)は除去できるが、汚泥中に含まれる細菌等まで完全に除去することはできない。
【0006】
上記のような問題を解決するために、塩素等の化学物質を使用することにより細菌等を除去する方法があるが、人間を含め生物には決して好ましい方法ではなく、pHの調整を含め、新たな水の浄化・殺菌方法が模索されている。
【0007】
そこで、従来、例えば、カキ、ハマグリなどの二枚貝を水揚げしたのち、紫外線照射等による滅菌海水で清浄化を行いながら、栄養素成分及び呈味成分向上物質を含有せしめたマイクロカプセル化人工微粒子飼料を給与する装置で、底面に老廃物等の排水機能をもつ畜養飼育水槽と、循環水槽を設置し、ポンプで一定量の飼料を混合した海水を紫外線照射装置で滅菌できるように配管したもの(特許文献1参照。)。光触媒処理をした水を用いて、魚貝類と水生又は陸生の植物とを同時に養殖、栽培する。魚貝類を養殖するための養殖槽と、水生又は陸生の植物を栽培するための栽培槽と、光触媒処理装置を有し、養殖槽、栽培槽および光触媒処理装置を配管で接続して、使用する水が循環するようにされているもの(特許文献2)。浄化すべき原水を汲み出してマイクロナノバルブ装置が設置された水槽に導入して、マイクロナノバルブによって処理水中の好気性微生物を活性化して、処理水中の藻類を硝酸性窒素に分解させ、マイクロナノバルブを含む処理水を、水草を定植した定植床を水中に配設した植物栽培槽に導入し、硝酸性窒素を水草に養分として吸収させる。(特許文献3)。海藻類と卵類を含有する二枚貝用飼料と植物プランクトンを併用して二枚貝に給餌する。(特許文献4)。生菌状態の光合成細菌と貝肉、特に発電所等から回収される廃棄貝類の滅菌処理された貝肉とを含む水産用飼料。(特許文献5参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−322420号公報
【特許文献2】特開2001−190166号公報
【特許文献3】特開2008−93624号公報
【特許文献4】特開平8−140588号公報
【特許文献5】特開2000−300811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
同様にマシジミの飼育は動物由来の餌では困難であったが、本発明者は、鋭意研究の上、分解者や遺物、排泄物、残渣、微生物等を餌にすると飼育できることを見出した。以下、この分解者微生物を「環境調整剤」と称する。
【0010】
すなわち、本発明者はマシジミは生物界の分解者を含めて餌にしていることを発見し、マシジミの良好な飼育には下記の操作が必要であることを知得した。
植物を入れた飼育水槽に環境調整剤を投入し、動物(魚類)をその水槽で飼育して排泄物を生じさせる。これにより飼育槽内で同化と異化が起こる(図1参照)。これらの水槽内に生じる不要物はフロック状等になり、最終的にはマシジミの餌に使用される。余分のものは植物の肥料になり、植物や動物の成長の様子を観察しながら餌等を適当に調整することにより、水質は良的に保全される。酸素を供給することも良い条件になる。すなわち、本発明は、閉鎖系での物質循環を確立し、マシジミ及び魚類の飼育と植物が共存するマシジミ飼育キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明に係るマシジミ飼育キットは、マシジミ飼育水槽と、魚類を飼育してマシジミの餌を作る水槽とを循環ポンプ及び循環路を介して連結してなることを第1の特徴とし、マシジミの餌が、微生物(クロレラ、ケイソウ等の藻類と細菌)であることを第2の特徴とし、前記微生物の増殖槽を付加したことを第3の特徴とし、魚類飼育槽で植物を栽培することを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、魚類の排泄物や水槽内に生じる不要物を微生物や細菌の働きによりマシジミの餌を作る槽と、マシジミを飼育する槽とを画成して閉鎖系とし、さらに、その中で植物を栽培して水質を浄化させ、生物界における異化と同化を示標するビオトープ機能を発揮させるものである。つまり、本発明により、魚類飼育槽内で自然界と同様に、物質循環を可能にする革新的な水槽飼育法を確立し、マシジミ飼育を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】生物界の同化と異化の循環を示す説明図である。
【図2】本発明に係るマシジミ飼育キットの一実施例を模式的に示す正面図である。
【図3】本発明に係るマシジミ飼育キットの他の実施例を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明に係るマシジミ飼育キットの他の実施例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明のマシジミ飼育キットは、図2に示すようにマシジミ5を飼育するためのマシジミ飼育槽1と、メダカ(魚類)6を飼育するための魚類飼育槽2とを、循環ポンプ3と、それぞれを繋ぐ循環配管8とにより概略構成されている。
【0016】
メダカを飼育するための魚類飼育槽2の水には残餌や魚類の排泄物が含まれているため、これらの不純物を取り除くために飼育槽2に環境調整剤(クロレラ・微生物・細菌)10を投入する。すると、この環境調整剤10の働きにより、残餌や魚類の排泄物が異化されマシジミ5の餌を作る。そして、このマシジミの餌を含んだ水は、循環ポンプ3及び循環配管8を介してマシジミ飼育槽1へ流入せしめられ、魚類飼育槽2へ復水する。
【0017】
また、魚類飼育槽2では、植物7を栽培する。魚類飼育槽2内の水には残餌や魚類の排泄物から出たミネラル等の栄養分が含有されており、栄養価の高い水でもある。ここで、栽培する植物の種類は特に限定されるものではない。
【0018】
上記説明で分かるように本発明のマシジミ飼育キットによれば、マシジミ及びメダカの飼育で使用する水を循環使用することができる。
【0019】
ここで、マシジミ飼育キットは、例えば、マシジミ飼育槽1や魚類飼育槽2の形状や大きさ等を限定するものではない、したがって、図3に示すように、マシジミ飼育槽1の中間を仕切板9により区画して片方を環境調整剤増殖槽4としたり、図4に示すように、環境調整剤増殖槽4を別個に設け、マシジミ飼育槽1と循環するように配置してもよい。
【0020】
なお、本発明の装置は、上記の実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、飼育する魚貝類の種類や栽培する植物の種類は特に限定するものではなく、海産を含むいかなる二枚貝でも飼育、栽培が可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 マシジミ飼育槽
2 魚類飼育槽
3 循環ポンプ
4 環境調整剤増殖槽
5 マシジミ(貝)
6 メダカ(魚)
7 水草(植物)
8 循環配管
9 仕切板
10 環境調整剤(クロレラ・微生物・細菌)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシジミ飼育槽と、魚類を飼育してマシジミの餌を作る魚類養殖槽とを循環ポンプ及び循環路を介して連結してなることを特徴とするマシジミ飼育キット。
【請求項2】
マシジミの餌が、微生物(クロレラ、ケイソウ等の藻類と細菌)であることを特徴とする請求項1記載のマシジミ飼育キット。
【請求項3】
マシジミの餌となる微生物の増殖槽を付加したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のマシジミ飼育キット。
【請求項4】
魚類飼育水槽で植物を栽培することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマシジミ飼育キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−42678(P2013−42678A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180878(P2011−180878)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(511204670)有限会社BRAZOS (1)
【Fターム(参考)】