説明

マット状苗生育用の育苗容器

【課題】 農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を軽減できるようにする。
【解決手段】 マット状苗生育用の育苗容器を、平面視矩形状の底面2と、その底面2の外周縁から起立する内周壁5と、その内周壁5の上端に連なった状態で垂下する外周壁7とを有するように形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の水稲苗を平面視矩形状のマット状に生育させるマット状苗生育用の育苗容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなマット状苗生育用の育苗容器としては、繰り返して使用できるプラスチック製の育苗容器(育苗箱)や、使い捨てできる紙材製の育苗容器(育苗箱)などがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−103547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したプラスチック製の育苗容器は、多数回の繰り返し使用が可能となるように、射出成形によって厚さ2〜3ミリメートル程度のかなり丈夫なものに構成された高価なものであり、又、上述した紙材製の育苗容器は、播種してから田植機で移植するまでの間、その形状を維持できる強度や耐水性を確保するために紙材表面に樹脂などを貼着した複層構造の高価なものである。
【0004】
一方、上記のような育苗容器を使用して生育される平面視矩形状のマット状苗は、田植機を使用する広い圃場や多数の圃場での植え付け作業時に使用されるものである。そのため、広い圃場面積に対応する多数のマット状苗を適切な田植え時期に得るためには、多数の育苗容器を用意する必要がある。
【0005】
つまり、上記のような育苗容器では、農家自体がマット状苗を生育する場合にかなりの費用負担を強いられることになる。
【0006】
本発明の目的は、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を軽減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、平面視矩形状の底面と、その底面の外周縁から起立する内周壁と、その内周壁の上端に連なった状態で垂下する外周壁とを有するように形成してある。
【0008】
この構成によると、育苗容器の周壁が内周壁と外周壁とを有する二重構造となり、これによって、育苗容器を、軽量で扱い易く材料費の削減を図れる肉厚の薄い樹脂成型品で構成しても、繰り返して使用できるとともに、田植機による植え付けに適した大きさのマット状苗を精度良く生育できる、高い強度や保形性を有するものに構成できる。
【0009】
従って、育苗容器の周壁形状に工夫を凝らすことで、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を軽減できる上に、取り扱い性が良く、マット状苗の形成精度が高いマット状苗生育用の育苗容器を提供できる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記内周壁を上広がり状に、前記外周壁を下広がり状に形成してある。
【0011】
ところで、一般的な育苗容器によるマット状苗の生育期間は4月から6月までの3ヶ月程度であることから、育苗容器を繰り返して使用する場合には、残りの約9ヶ月は多数の育苗容器を積み重ねた状態で納屋などに保管することになる。
【0012】
そのため、育苗容器の重ね代が小さいと、育苗容器が嵩高く積み重ねられることになって保管領域として広い領域を要することになり、約9ヶ月の長期にわたって、納屋などにおける殆どの収容領域が育苗容器の保管領域として使用されることになる。又、育苗容器が嵩高く積み重ねられることで、育苗容器の持ち運びが行い難くなり、1回当たりの持ち運び数量が減少することから、育苗容器の運搬効率が低下する。
【0013】
そこで、上記請求項2記載の発明では、育苗容器の内周壁を上広がり状に、又、外周壁を下広がり状に形成して、育苗容器の非使用時には、複数の育苗容器を、下位の育苗容器の表面と上位の育苗容器の裏面とを密着あるいは略密着させた状態で積み重ねられるようにするのであり、これによって、複数の育苗容器を積み重ねた際の嵩を低く抑えることができ、納屋などにおいて育苗容器の保管領域として使用する領域を削減できる。又、育苗容器の持ち運びが行い易く、1回当たりの持ち運び数量が増大することから、育苗容器の運搬効率が向上する。
【0014】
従って、育苗容器の周壁形状に更に工夫を凝らすことで、マット状苗生育用の育苗容器を、保管や運搬の面でも有利なものにすることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記外周壁の下縁から横外方に延出する突縁を形成してある。
【0016】
この構成によると、突縁によって育苗容器としての強度や保形性を更に高めることができ、その分、育苗容器を、より軽量で扱い易く材料費の削減や保管領域の削減などを更に図れる肉厚のより薄い樹脂成型品で構成することができる。
【0017】
又、育苗容器を持ち運ぶ際には、その突縁の下面に手指を宛うことで、外周壁の下縁に手指を宛う場合よりも手触りを良くすることができる。
【0018】
従って、育苗容器の周壁形状に更に工夫を凝らすことで、マット状苗生育用の育苗容器を、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を更に軽減できる上に、より取り扱い性が良く、マット状苗の形成精度がより高く、保管や運搬の面でも更に有利なものにできる。
【0019】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、水抜き孔が形成される前記底面と前記外周壁の下縁とが同じ又は略同じ高さ位置になるように形成してある。
【0020】
この構成によると、外周壁の下縁、又は、その下縁から横外方に延出する突縁に、不要部分を切断するトリミングを行う場合には、底面に水抜き孔を形成する際の穿設処理と同時にトリミングを行うことができ、加工工数の削減あるいは加工時の作業ストロークの縮小などを図れるようになり、育苗容器の生産性を向上させることができ、その分、育苗容器としての単価を下げることができる。
【0021】
従って、育苗容器における外周壁の下縁位置に工夫を凝らすことで、マット状苗生育用の育苗容器を、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を更に軽減できるものにし得る。
【0022】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記底面と前記内周壁とが連なる底部における4つの隅部を平面状又は曲面状に面取りしてある。
【0023】
この構成によると、育苗容器における底部の四隅を平面状又は曲面状に面取りすることで、育苗容器を、その取り扱い性の向上や単価の削減などを図れる肉厚の薄い樹脂成型品で構成しても、その底部の四隅を稜角にする場合に比較して、成形時における底部四隅での肉厚の低下を抑制でき、これによって、成形時、又は、使用時の他物との接触などによる底部四隅の破損を抑制できる。
【0024】
従って、育苗容器を成形する際の破損による単価の高騰を抑制できるとともに、育苗容器の使用回数の増加による減価償却の促進を図れることから、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担をより効果的に軽減できる。
【0025】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、真空成形で形成してある。
【0026】
この構成によると、育苗容器を形成する上において一般的に採用されている射出成形に比較して型費が安価な真空成形で育苗容器を形成することから、育苗容器としての単価を下げることができる。
【0027】
従って、マット状苗生育用の育苗容器を真空成形することで、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を更に軽減できる。
【0028】
本発明のうちの請求項7に記載の発明では、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、薄厚のシート状に形成してある。
【0029】
この構成によると、育苗容器を、より軽量で扱い易く材料費の削減を図れるものにできる。又、育苗容器の内周壁を上広がり状に、又、外周壁を下広がり状に形成して、育苗容器の非使用時には、複数の育苗容器を、下位の育苗容器の表面と上位の育苗容器の裏面とを密着あるいは略密着させた状態で積み重ねられるようにした場合には、複数の育苗容器を積み重ねた際の嵩をより低く抑えることができ、納屋などにおいて育苗容器の保管領域として使用する領域を更に削減できる。しかも、育苗容器の持ち運びが行い易く、1回当たりの持ち運び数量が増大することから、育苗容器の運搬効率が向上する。
【0030】
従って、育苗容器を薄厚のシート状に形成することで、マット状苗生育用の育苗容器を、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を更に軽減できる上に、保管や運搬の面でも更に有利なものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1には、多数の水稲苗を平面視矩形状(長さ約600ミリメートル、幅約300ミリメートル)のマット状に生育させるマット状苗生育用の育苗容器1の全体平面が、図2にはその全体正面が、図3にはその要部の縦断正面が、図4には全体斜視がそれぞれ示されており、この育苗容器1は、薄厚の樹脂シート材を真空成形することによって得られた肉厚が1.5ミリメートル以下(好ましくは0.3〜0.5ミリメートル程度)の樹脂成型品で、平面視矩形状の底面2と、その底面2の外周縁に沿う枠状の周壁3とを備えて、その表面側に育苗空間4を有するように形成されている。
【0032】
周壁3は、底面2の外周縁から起立する内周壁5と、その内周壁5の上端から横外方に延出する上突縁6を介して内周壁5の上端に連なる状態で上突縁6の外周縁から垂下する外周壁7と、その外周壁7の下縁から横外方に延出する突縁8とを有するように、又、外周壁7の下縁の高さ位置が底面2の高さ位置と同じになるように、更に、内周壁5が上広がり状で、外周壁7が下広がり状となるように形成されている。
【0033】
底面2には、その長手方向に沿う複数の突条9が、それらの各断面形状が上広がりの略U字状となるように下向きに膨出形成され、又、それらの各突条9は内周壁5の上端まで延設され、そして、それらの各突条9の下端には、複数の水抜き孔10が、底面2の長手方向に所定間隔を隔てる状態で穿設されている。
【0034】
育苗容器1において、その底面2と内周壁5とが連なる底部の4つの隅部11は平面状に面取りされている。
【0035】
つまり、マット状苗生育用の育苗容器1を、一般的に採用されている射出成形に比較して型費が安価な真空成形で、肉厚が1.5ミリメートル以下の軽量で扱い易く材料費の削減を図れるものに形成しながらも、その周壁3を、内周壁5と外周壁7とを有する二重構造で、かつ、上突縁6や突縁8を備える状態に形成し、又、その底面2には、内周壁5の上端まで延出する複数の突条9を形成することで、複数回の繰り返し使用が可能で、かつ、田植機による植え付けに適した大きさのマット状苗を精度良く生育できる、高い強度や保形性を有するものに構成できる。
【0036】
そして、育苗容器1の周壁3を、その内周壁5の上端と外周壁7の上端とを上突縁6で連ならせて、その断面形状が下向きの略U字状となるように形成することで、図3及び図4に示すように、剛性の高い木枠12や射出成形された従来構造の育苗箱(図示せず)などに重ね装着することができ、播種処理後や育苗後などにおいては、木枠12などに重ね装着した状態で搬送するようにすれば、育苗容器1の変形による土崩れや苗崩れを回避できる。
【0037】
しかも、外周壁7の下縁から横外方に延出する突縁8を形成することで、育苗容器1を持ち運ぶ際には、その突縁8の下面に手指を宛うことで、外周壁7の下縁に手指を宛う場合よりも手触りを良くすることができ、育苗容器1の持ち運びが行い易くなる。
【0038】
又、育苗容器1において、周壁3の内周壁5を上広がり状に、外周壁7を下広がり状に形成することで、成形後の型抜きが容易になり、又、育苗容器1の非使用時には、図5及び図6に示すように、複数の育苗容器1を、下位の育苗容器1の表面と上位の育苗容器1の裏面とを略密着させた状態で積み重ねることができて、複数の育苗容器1を積み重ねた際の嵩を低く抑えることができ、納屋などにおいて育苗容器1の保管領域として使用する領域を削減できるとともに、育苗容器1の持ち運びが行い易くなって、1回当たりの持ち運び数量が増大することから、育苗容器1の運搬効率が向上する。
【0039】
更に、外周壁7の下縁を、水抜き孔10が形成される底面2と同じ高さ位置にすることで、その下縁から横外方に延出する突縁8も底面2と同じ高さ位置となり、その突縁8に対して不要部分を切断するトリミングを行う場合には、底面2に水抜き孔10を形成する際の穿設処理と同時にトリミングを行えるようになって、加工工数の削減あるいは加工時の作業ストロークの縮小などを図れることから、育苗容器1の生産性が向上する。
【0040】
しかも、下向きに膨出形成される各突条9の下端に水抜き孔10を穿設することで、育苗空間4からの排水性を高めることができる。
【0041】
その上、育苗容器1における4つの隅部11を平面状に面取りすることで、それらの隅部11を稜角に形成する場合に比較して、成形時における各隅部11の肉厚の低下を抑制でき、これによって、成形時の各隅部11の破損や、使用時の他物との接触などによる各隅部11の破損を抑制できる。
【0042】
要するに、育苗容器1の形状や成形方法などに工夫を凝らすことで、育苗容器1としての単価の削減を効果的に図りながら、使用回数の増加による減価償却の促進を図れるとともに、取り扱い性や排水性が良く、マット状苗の形成精度が高く、保管や運搬の面でも有利なマット状苗生育用の育苗容器を提供でき、結果、農家などにおいてマット状苗を生育する場合の費用負担を軽減できる。
【0043】
ところで、育苗容器1に採用する樹脂としては、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などがあり、これらで形成した育苗容器1を比較すると、PVCを採用した場合には、透明性、耐水性、耐薬品性、耐候性、及び加工性などに優れ、高い強度を有する変形し難いものにすることができ、PPを採用した場合には、材料コストの削減を図りながら、軽量で扱い性が良く、防水性や耐薬品性あるいは耐衝撃性が良好で、曲げ疲労性に優れた割れ難いものにすることができ、PPSを採用した場合には、材料コストの削減を図りながら、耐薬品性や耐熱性が高く、高い強度を有する変形し難いものにすることができ、PETを採用した場合には、透明性や加工性などに優れ、高い強度を有する変形し難いものにすることができ、このPETにPA−N6などの機械特性が良く、引張り、圧縮、曲げ、衝撃に強く破損し難いポリアミドを付加すれば、高い強度を有する変形し難いものとしながら割れ難いものにすることができる。
【0044】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施例を列記する。
【0045】
〔1〕育苗容器1において、その周壁3における外周壁7の下縁の高さ位置は種々の変更が可能であり、例えば、外周壁7の下縁の高さ位置が底面2の高さ位置と略同じ(例えば突条9の下端の高さ位置と同じ)になるように形成すれば、底面2の高さ位置と同じに形成した場合と同様に、底面2に水抜き孔10を形成する際の穿設処理と同時に、外周壁7の下縁又は突縁8に対して不要部分を切断するトリミングを行うことができて、加工工数の削減あるいは加工時の作業ストロークの縮小などを図れることから、育苗容器1の生産性が向上する。
【0046】
又、図7に示すように、外周壁7の下縁の高さ位置が内周壁5の上下中間位置と同じになるように、あるいは、図示は省略するが、外周壁7の下縁の高さ位置が内周壁5の上下中間位置よりも上方に位置するように形成すれば、外周壁7の下縁の高さ位置が底面2の高さ位置(内周壁5の下縁の高さ位置)と同じ又は略同じになるように形成する場合に比較して、材料費の削減による育苗容器1としての単価の削減を図れる。
【0047】
〔2〕育苗容器1における突条9の数量、長さ、形状、及び配置などは種々の変更が可能であり、例えば、図8〜10に示すように、各突条9を、それらの各断面形状が下広がりの略逆U字状となるように上向きに膨出形成してもよい。尚、この構成においては、育苗容器1の最下端となる底面2における突条9が形成されない平面部に水抜き孔10を穿設すれば、高い排水性を得ることができる。
【0048】
又、例えば、図11〜19に示すように、突条9を、底面2の長手方向と幅方向との双方に沿って縦横に形成して、底面2の強度アップを図るようにしてもよく、更に、図示は省略するが、突条9を、底面2の対角線上、又は、底面2の対角線に沿って、あるいは、底面2の幅方向のみに沿って形成するようにしてもよい。
【0049】
更に、例えば、図11〜13に示すように、突条9を底面2のみに形成してもよく、又、図示は省略するが、突条9を、底面2だけでなく、その底面2から内周壁5の上下中間、内周壁5を越えて上突縁6の外端、外周壁7の下端、又は突縁8の外端、などまで延設するようにしてもよく、あるいは、突条9を底面2には形成せずに周壁7のみに形成するようにしてもよく、更にまた、図14〜19に示すように、突条9を底面2側と外周壁7などとに分割形成するようにしてもよく、その上更に、図14〜16に示すように、突条9を、底面2の長手方向と幅方向との双方に沿って縦横に形成するものにおいて、突条9の延設長さが、底面2の長手方向と幅方向とで異なるように形成してもよい。
【0050】
又、例えば、図14〜19に示すように、突条9を、底面2だけでなく、その底面2から内周壁5の上下中間又は上端まで延設する場合には、内周壁5に形成される突条9を、その延出側ほど細くなる先窄まり状に形成してもよい。
【0051】
〔3〕育苗容器1における周壁3の断面形状は種々の変更が可能であり、例えば、図11〜13に示すように、その周壁3に突縁8を備えない下向きのU字状又は略U字状に形成されたものであってもよく、又、図20に示すように、上突縁6又は上突縁6及び突縁8を備えない下向きのV字状又は略V字状に形成されたものであってもよい。
【0052】
これらの構成では、突縁8又は上突縁6を備えないことで、材料費の削減による育苗容器1としての単価の削減を図れる。
【0053】
〔4〕周壁3の内周壁5を垂直又は下広がり状に形成してもよく、又、外周壁7を垂直又は上広がり状に形成してもよい。尚、内周壁5を垂直又は下広がり状に形成すると、マット状苗生育中の外方への拡張を抑制でき、マット状苗形成精度が高くなる。
【0054】
〔5〕図20に示すように、育苗容器1における底面2と内周壁5とが連なる底部の4つの隅部11を、曲面状又は球面状に面取りしてもよい。この構成においても、それらの隅部11を稜角に形成する場合に比較して、成形時における各隅部11の肉厚の低下を抑制でき、成形時の各隅部11の破損や、使用時の他物との接触などによる各隅部11の破損を抑制できる。
【0055】
〔6〕水抜き孔10の数量、大きさ、及び配置などは種々の変更が可能であり、例えば、図14〜16に示すように、育苗容器1の底面2に上向きに膨出する複数の突条9を形成する場合には、それらの突条9の間に形成される各平面部に、各突条9と同じ上向きに膨出する膨出部13を形成し、それらの各膨出部13の上端に水抜き孔10を穿設するようにしてもよく、更に、図示は省略するが、育苗容器1の底面2に下向きに膨出する複数の突条9を形成する場合には、それらの突条9の間に形成される各平面部に、各突条9と同じ下向きに膨出する膨出部13を形成し、それらの各膨出部13の下端に水抜き孔10を穿設するようにしてもよい。
【0056】
これらの構成では、膨出部13を形成することで底面2の強度アップを図れることになる。
【0057】
尚、図14〜16においては、膨出部13として、突条9と同じ膨出長さの円筒状のものを例示したが、それ以外に、膨出長さが異なる例えば突条9よりも膨出長さの短いもの、あるいは、形状が異なる例えば半球形状や角柱状のもの、などであってもよい。
【0058】
又、例えば、図17〜19に示すように、育苗容器1の底面2に上向きに膨出する複数の突条9を形成する場合には、それらの各突条9の上端に複数の水抜き孔10を穿設するようにしてもよい。
【0059】
更に、例えば、図21及び図22に示すように、育苗容器1における底面2の各突条9と平面部、及び内周壁5のそれぞれに複数の水抜き孔10を穿設するようにしてもよい。
【0060】
この構成では、より高い排水性を得ることができ、又、撒水に代えて、播種処理後の育苗容器を水に浸して、水抜き孔から育苗容器内の床土などに水を浸透させる際の作業効率の向上を図れる。
【0061】
〔7〕育苗容器1の色としては種々の変更が可能であり、例えば、透視可能な程度に着色してマット状苗の発根状態を目視で把握できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】マット状苗生育用の育苗容器の平面図
【図2】マット状苗生育用の育苗容器の全体正面図
【図3】マット状苗生育用の育苗容器の要部の縦断正面図
【図4】マット状苗生育用の育苗容器の全体斜視図
【図5】育苗容器を積み重ねた状態を示す斜視図
【図6】育苗容器を積み重ねた状態を示す要部の縦断正面図
【図7】外周壁の下縁の高さ位置を変更した別実施形態の育苗容器の全体正面図
【図8】突条を上向きに膨出形成した別実施形態の育苗容器の全体平面図
【図9】突条を上向きに膨出形成した別実施形態の育苗容器の全体正面図
【図10】突条を上向きに膨出形成した別実施形態の要部の縦断正面図
【図11】突条を底面に縦横に形成し突縁を廃止した別実施形態の育苗容器の全体平面図
【図12】突条を底面に縦横に形成し突縁を廃止した別実施形態の育苗容器の全体正面図
【図13】突条を底面に縦横に形成し突縁を廃止した別実施形態の要部の縦断正面図
【図14】突条を分割形成し底面の膨出部に水抜き孔を穿設した別実施形態の育苗容器の全体正面図
【図15】突条を分割形成し底面の膨出部に水抜き孔を穿設した別実施形態の育苗容器の正面図
【図16】突条を分割形成し底面の膨出部に水抜き孔を穿設した別実施形態の要部の縦断正面図
【図17】突条を分割形成し底面の突条上端に水抜き孔を穿設した別実施形態の育苗容器の全体正面図
【図18】突条を分割形成し底面の突条上端に水抜き孔を穿設した別実施形態の育苗容器の正面図
【図19】突条を分割形成し底面の突条上端に水抜き孔を穿設した別実施形態の要部の縦断正面図
【図20】周壁を下向きの略V字状に形成し隅部を曲面状に形成した別実施形態の要部の縦断正面図
【図21】底面と内周壁に水抜き孔を形成した別実施形態の育苗容器の全体斜視図
【図22】底面と内周壁に水抜き孔を形成した別実施形態の要部の縦断正面図
【符号の説明】
【0063】
2 底面
5 内周壁
7 外周壁
8 突縁
10 水抜き孔
11 隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状の底面と、その底面の外周縁から起立する内周壁と、その内周壁の上端に連なった状態で垂下する外周壁とを有するように形成してあるマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項2】
前記内周壁を上広がり状に、前記外周壁を下広がり状に形成してある請求項1に記載のマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項3】
前記外周壁の下縁から横外方に延出する突縁を形成してある請求項1又は2に記載のマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項4】
水抜き孔が形成される前記底面と前記外周壁の下縁とが同じ又は略同じ高さ位置になるように形成してある請求項1〜3のいずれか一つに記載のマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項5】
前記底面と前記内周壁とが連なる底部における4つの隅部を平面状又は曲面状に面取りしてある請求項1〜4のいずれか一つに記載のマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項6】
真空成形で形成してある請求項1〜5のいずれか一つに記載のマット状苗生育用の育苗容器。
【請求項7】
薄厚のシート状に形成してある請求項1〜6のいずれか一つに記載のマット状苗生育用の育苗容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2006−197873(P2006−197873A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14274(P2005−14274)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】