説明

モニタ用カメラ

【課題】カメラを破損することなく、モニタしやすい映像を撮像することができるモニタ用カメラを提供する。
【解決手段】本発明は、起重機(2)の可動部(4)に取り付けられ、下方をモニタするためのモニタ用カメラ(1)であって、カメラフレーム(12)と、このカメラフレームを起重機の可動部から吊り下げる吊下支持機構(14)と、撮像素子(20)及び撮像用光学系(22)を備えたカメラ本体(16)と、このカメラ本体をカメラフレームに対して免振支持する免振支持機構(18)と、カメラ本体の振動を検出する振動検出手段(26,28)と、カメラ本体に内蔵され、撮像素子上に形成される画像の振れを抑制するように像振れ防止用レンズ(22a)を駆動する防振アクチュエータ(24)と、振動検出手段により検出された振動に基づいて、防振アクチュエータを制御する制御部(30)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモニタ用カメラに関し、特に、起重機の可動部に取り付けられ、下方をモニタするためのモニタ用カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
起重機の可動部であるブームの先端部等にモニタ用のカメラを取り付け、鉛直下方の映像を起重機の操作室内でモニタすることが行われている。このモニタ用のカメラにより、起重機の操作者は、ブームから吊り下げられている吊荷の様子を真上から監視することができ、起重機の操作を容易に行うことが可能になる。
【0003】
特開2007−88602号公報(特許文献1)には、クレーン用テレビカメラ装置が記載されている。このクレーン用テレビカメラ装置は、ブラケットによりクレーンのブームに剛結され、ハウジングには鉛直に対する傾斜角度を検出するセンサが備えられている。また、テレビカメラ装置には強制姿勢制御機構が備えられ、この強制姿勢制御機構は、センサによる計測角度に応じてハウジングを回転させて、カメラを鉛直下方に指向させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−88602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2007−88602号公報記載のクレーン用テレビカメラ装置のようにカメラをクレーンのブームに剛結すると、ブームの振動がカメラに直接伝わるので、カメラが破損したり、カメラの寿命が短くなるという問題がある。また、カメラが振動すると、クレーンの操作室でモニタされる映像も振れるので、操作者が吊荷の様子を監視しにくいという問題もある。この問題は、カメラから吊荷までの距離が長くなる、ブームの長いクレーンにおいて特に顕著である。
【0006】
また、カメラに振動が直接伝わるのを防止するために、カメラをブームの先端から吊り下げたり、カメラを緩衝材を介して支持することが考えられる。しかしながら、この場合には、カメラに伝わる振動を大幅に減少させるためには、緩衝材を非常に柔軟にする必要がある。このため、カメラがブームに対して大きな振幅で振れるので、クレーンの操作室でモニタされる映像が振れるばかりでなく、吊り下げや、緩衝材の態様によっては、吊荷が監視映像の視界から外れてしまう場合がある。
【0007】
従って、本発明は、カメラを破損することなく、モニタしやすい映像を撮像することができるモニタ用カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、起重機の可動部に取り付けられ、下方をモニタするためのモニタ用カメラであって、カメラフレームと、このカメラフレームを起重機の可動部から吊り下げる吊下支持機構と、撮像素子及び撮像用光学系を備えたカメラ本体と、このカメラ本体をカメラフレームに対して免振支持する免振支持機構と、カメラ本体の振動を検出する振動検出手段と、カメラ本体に内蔵され、撮像素子上に形成される画像の振れを抑制するように像振れ防止用レンズを駆動する防振アクチュエータと、振動検出手段により検出された振動に基づいて、防振アクチュエータを制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、撮像素子及び撮像用光学系を備えたカメラ本体が、免振支持機構によりカメラフレームに対して支持されている。カメラフレームは、吊下支持機構により起重機の可動部から吊り下げられている。また、カメラ本体の振動を検出する振動検出手段が備えられ、制御部は、振動検出手段により検出された振動に基づいて防振アクチュエータを制御する。像振れ防止用レンズが防振アクチュエータによって駆動されることにより、撮像素子上に形成される画像の振れが抑制される。
【0010】
このように構成された本発明によれば、カメラ本体が免振支持機構によってカメラフレームに支持されているので、カメラ本体に伝達される振動が抑制され、カメラ本体の損傷を防止することができる。さらに、カメラ本体には防振アクチュエータが内蔵されているので、カメラ本体を免振支持機構により支持していても、モニタされる画像が大きく振れるのを防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、振動検出手段は、モニタすべき鉛直方向を検出する鉛直検出部と、カメラ本体の補正すべき振れを検出する振れ検出部と、を有する。
【0012】
このように構成された本発明によれば、鉛直検出部によって検出された鉛直方向の光軸上の画像の振れを抑制するように、振れ検出部によって検出されたカメラ本体の振れに基づいて防振アクチュエータを制御することにより、起重機から吊り下げられている吊荷の画像等を安定化させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、鉛直検出部は加速度センサを備え、振れ検出部はジャイロセンサを備えている。
このように構成された本発明によれば、加速度センサにより鉛直方向を確実に検出することができると共に、ジャイロセンサにより補正すべき振れを検出することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、鉛直検出部は加速度センサ及びローパスフィルターを備え、振れ検出部は加速度センサ及びハイパスフィルターを備えている。
このように構成された本発明によれば、鉛直検出部の加速度センサと振れ検出部の加速度センサを兼用にすることができるので、モニタ用カメラを安価に構成することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、制御部が、免振支持機構の免振特性の変化を補正する補正制御部を有する。
このように構成された本発明によれば、補正制御部が免振支持機構の免振特性の変化を補正するので、外部環境等の変化による防振特性への影響を抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、免振支持機構は、防振アクチュエータが抑制する振動の周波数よりも高い周波数の振動を主に減衰させるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、防振アクチュエータにより画像の振れを抑制すると共に、防振アクチュエータでは応答することが難しい高い周波数の振動を免振支持機構により減衰させることができるので、広い周波数範囲の振れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のモニタ用カメラによれば、カメラを破損することなく、モニタしやすい映像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態によるモニタ用カメラを起重機に取り付けた状態を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるモニタ用カメラの斜視図である。
【図3】モニタ用カメラのカメラ本体を支持する支持機構を示す斜視図である。
【図4】(a)カメラ本体の支持機構をモデル化した図、及び(b)支持機構の免振特性を示す図である。
【図5】カメラ本体の構成を示す斜視図である。
【図6】制御部における信号処理を模式的に示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるモニタ用カメラを天井式の起重機に取り付けた状態を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態によるモニタ用カメラの斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態における制御部の信号処理を模式的に示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態における制御部の信号処理を模式的に示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態における制御部の信号処理を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態によるモニタ用カメラを説明する。図1は、本実施形態によるモニタ用カメラを起重機に取り付けた状態を示す図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のモニタ用カメラ1は、起重機2の可動部であるブーム4の先端部に取り付けられ、ブーム4の先端から吊り下げられている吊荷6の画像を、概ね鉛直上方から動画として撮像するように構成されている。モニタ用カメラ1によって撮像された画像は、起重機2の操作室8内に配置された表示装置10にリアルタイムで表示される。起重機2の操作者は、表示装置10に表示される映像を参照しながら、ブーム4の移動や、吊荷6の上げ下げを行うことができる。
【0021】
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態のモニタ用カメラ1の構成を説明する。図2は本実施形態によるモニタ用カメラ1の斜視図である。図3はモニタ用カメラ1のカメラ本体を支持する支持機構を示す斜視図である。図4はカメラ本体の支持機構を(a)モデル化した図、及び(b)支持機構の免振特性を示す図である。図5はカメラ本体の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、モニタ用カメラ1は、カメラフレームであるカメラ外ケース12と、このカメラ外ケース12の上部に取り付けられた吊下支持機構14と、を有する。
【0022】
カメラ外ケース12は、下方が開放した直方体形状のケースであり、内部にカメラ本体16(図3)が収容されている。
吊下支持機構14は、門形の第1可動枠14aと、正方形状の第2可動枠14bと、を有する。第1可動枠14aの水平部分は、起重機2のブーム4の先端近傍に固定されている。また、第1可動枠14aの両側の脚部の先端部は第2可動枠14bに連結され、第2可動枠14bは、第1可動枠14aに対して第1の軸線A1を中心に回動可能に支持されている。さらに、第1可動枠14aが連結されていない第2可動枠14bの2つの辺には、カメラ外ケース12が連結されている。カメラ外ケース12は、第2可動枠14bに対して第2の軸線A2を中心に回動可能に支持されている。また、第1の軸線A1と第2の軸線A2は互いに直交するように構成されている。これにより、カメラ外ケース12は起重機2のブーム4に対して任意の方向に回動することができ、カメラ外ケース12に収納されたカメラ本体16は、ブーム4の角度が変化した場合にも、自重により概ね鉛直下方に向けられる。
【0023】
図3に示すように、カメラ本体16は、免振支持機構である免振部材18により、カメラ外ケース12の内部に免震支持されている。免振部材18は、粘弾性材料で構成された部材であり、カメラ本体16の角部とカメラ外ケース12の内壁面を連結している。
【0024】
図4(a)は、カメラ本体16の免振部材18による支持を力学的なモデルで表した一例である。即ち、免振部材18による支持は、図4(a)に示すように、カメラ本体16をバネ及びこれと並列に連結されたダンパーによる支持として近似的にモデル化することができる。
【0025】
図4(b)は、免振部材18による免振特性の一例を示すグラフである。この免振特性は、免振部材18の材質、形状、配置、及びカメラ本体16の質量等により適宜設定することができる。本実施形態においては、免振部材18は、主に約20Hz以上の周波数の振動を遮断するように構成されている。即ち、約20Hz以上の周波数の振動は、免振部材18により遮断され、カメラ外ケース12からカメラ本体16に伝達されにくいようになっている。より具体的には、周波数約20Hzの振動は約12dB減衰されて1/4になり、周波数が高くなるほど減衰量は大きくなる。なお、免振部材18により振動を遮断する周波数は、後述するカメラ本体16に内蔵された防振アクチュエータ24(図5)が応答可能な周波数の約1/2に設定されている。
【0026】
次に、図5を参照して、カメラ本体16の構成を説明する。
図5に示すように、カメラ本体16には、撮像素子20と、この撮像素子20に画像を合焦させる撮像用光学系22と、この撮像用光学系22の中の像振れ防止用レンズ22aを駆動して、合焦される画像を安定化させる防振アクチュエータ24が内蔵されている。さらに、カメラ本体16には、カメラ本体16の回転角速度を検出する振れ検出部であるジャイロセンサ26と、カメラ本体16の加速度を検出する鉛直検出部である加速度センサ28と、ジャイロセンサ26及び加速度センサ28の検出信号に基づいて防振アクチュエータ24を制御する制御部30が内蔵されている。なお、本実施形態において、ジャイロセンサ26及び加速度センサ28は、振動検出手段を構成する。
【0027】
撮像素子20は、撮像素子20上に合焦された画像を電気信号に変換するように構成されている。撮像された画像の電気信号は、操作室8内の表示装置10に送られ、映像として表示される。
撮像用光学系22は、カメラ本体16に入射した光を撮像素子20上に合焦させるように構成されている。撮像用光学系22の中の一部のレンズは、像振れ防止用レンズ22aとして設けられており、この像振れ防止用レンズ22aを防振アクチュエータ24によって移動させることにより、カメラ本体16が振動した場合においても、撮像素子20上に形成される画像が安定化される。
【0028】
防振アクチュエータ24は、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で移動させるように構成されている。防振アクチュエータ24は、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で駆動する2つのリニアモータ32a、32bと、像振れ防止用レンズ22aが移動された位置を検出する2つの位置センサ34a、34b(図6)と、を有する。2つのリニアモータ32a、32bは、光軸Aに直交する平面内で、像振れ防止用レンズ22aを互いに直交するX方向、Y方向に駆動するように夫々配置されている。これにより、像振れ防止用レンズ22aを光軸Aに直交する平面内で任意の位置に並進移動させることができる。位置センサ34a、34bは、像振れ防止用レンズ22aのX方向、Y方向の移動を検出するように配置されている。
【0029】
ジャイロセンサ26は、カメラ本体16に取り付けられ、カメラ本体16の回転角速度を検出するように構成されている。また、ジャイロセンサ26は、光軸Aに直交する平面内のX軸を中心とする回転角速度を検出するXセンサ部26aと、Y軸を中心とする回転角速度を検出するYセンサ部26bを内蔵しており、各方向の回転角速度を検出できるように構成されている。ジャイロセンサ26により検出された角速度信号は、制御部30に入力される。
【0030】
加速度センサ28は、カメラ本体16に取り付けられ、カメラ本体16の加速度を検出するように構成されている。また、加速度センサ28は、光軸Aに直交する平面内のX軸方向の加速度を検出するXセンサ部28aと、Y軸方向の加速度を検出するYセンサ部28bを内蔵しており、各方向の加速度を検出できるように構成されている。加速度センサ28により検出された加速度信号は、制御部30に入力される。
【0031】
制御部30は、ジャイロセンサ26及び加速度センサ28の検出信号に基づいて、防振アクチュエータ24を制御し、撮像素子20上に形成される画像の振れを抑制するように構成されている。制御部30は、ジャイロセンサ26及び加速度センサ28から入力された信号に基づいて、像振れ防止用レンズ22aを移動させるべき位置を計算する。さらに、制御部30はリニアモータ32a、32bに信号を出力して、像振れ防止用レンズ22aを計算された位置に向けて移動させる。移動された像振れ防止用レンズ22aの位置は、位置センサ34a、34bによって検出され、制御部30にフィードバックされる。なお、制御部30は、各種演算回路、フィルター等のアナログ回路によって構成することができる。或いは、制御部30を、各検出信号をデジタルデータに変換するA/D変換器、各種演算を行うマイクロプロセッサ、デジタルデータをアナログ信号に変換して出力するD/A変換器等によって構成することもできる。
【0032】
次に、図6を参照して、制御部30による防振アクチュエータ24の制御を説明する。図6は制御部30における信号処理を模式的に示すブロック図である。
図6に示すように、制御部30は、ジャイロセンサ26、加速度センサ28、及び位置センサ34a、34bによる検出信号を入力し、リニアモータ32a、32bを駆動するように構成されている。まず、ジャイロセンサ26のXセンサ部26a及びYセンサ部26bから夫々入力された角速度信号は、バッファーアンプ42a、42bに夫々入力された後、ハイパスフィルター44に入力される。なお、本実施形態においては、ハイパスフィルター44の遮断周波数は0.2Hzに設定されている。
【0033】
ハイパスフィルター44を通過した各信号は、積分回路46a、46bに入力され、ここでX方向、Y方向の変位量Δx、Δyに夫々変換される。次いで、積分回路46a、46bから出力された変位量Δx、Δyの信号は、乗数回路48a、48bに入力され、ここで所定の振れ補正定数kが乗じられる。これにより、カメラ本体16の振動による画像の振れを補正するために必要な像振れ防止用レンズ22aのX方向、Y方向の移動量が得られる。
【0034】
一方、加速度センサ28のXセンサ部28a及びYセンサ部28bから夫々入力された加速度信号は、バッファーアンプ36a、36bに夫々入力された後、ローパスフィルター38に入力される。なお、本実施形態においては、ローパスフィルター38の遮断周波数は0.2Hzに設定されている。
【0035】
ローパスフィルター38を通過した各信号は、鉛直方向演算回路40に入力され、カメラ本体16を向けるべき方向を表す鉛直方向信号に変換される。鉛直方向信号によって表される方向にカメラ本体16の光軸Aを向けることにより、ブーム4の先端から吊り下げられ、鉛直下方に位置する吊荷6をモニタする視界に収めることができる。さらに、鉛直方向信号によって表される光軸の振れを抑制するように防振アクチュエータ24を制御することにより、撮像素子20上に結像される吊荷6の画像を安定化させることができる。具体的には、鉛直方向演算回路40においては、ローパスフィルター38を通過したX方向、Y方向の加速度信号αx、αyが夫々2階時間積分される。
【0036】
鉛直方向演算回路40の出力信号、及び乗数回路48a、48bの出力信号が夫々加算されて位置指令信号x、yが生成され、コイル駆動回路50a、50bに入力される。位置指令信号x、yは、一例として(数式1)により計算することができる。

【0037】
位置指令信号x、yは、コイル駆動回路50a、50bにより夫々電力増幅され、リニアモータ32a、32bに入力される。コイル駆動回路50a、50bの出力によりリニアモータ32a、32bは夫々駆動され、防振アクチュエータ24に取り付けられた像振れ防止用レンズ22aが光軸Aに直交する平面内で移動される。即ち、像振れ防止用レンズ22aは、リニアモータ32aによりX軸方向に駆動され、リニアモータ32bによりY軸方向に駆動される。
【0038】
像振れ防止用レンズ22aのX軸方向の移動は位置センサ34aにより検出され、Y軸方向の移動は位置センサ34bにより検出される。これらの検出信号は、制御部30にフィードバックされる。位置センサ34aの検出信号は制御部30の位置検出回路52aに入力され、位置センサ34bの検出信号は制御部30の位置検出回路52bに入力される。位置検出回路52a、52bの出力信号は、位置指令信号x、yから夫々差し引かれ、位置検出回路52a、52bの出力信号と位置指令信号x、yの差信号が、コイル駆動回路50a、50bに入力される。
【0039】
これにより、リニアモータ32a、32bは、位置指令信号x、yにより指令された位置と、像振れ防止用レンズ22aの実際の位置との差に基づいて駆動される。従って、像振れ防止用レンズ22aが位置指令信号x、yにより指令された位置に到達するとリニアモータ32a、32bの駆動力は0となり、位置指令信号x、yが変化すると、リニアモータ32a、32bは、位置指令信号x、yに追従するように像振れ防止用レンズ22aを移動させる。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態によるモニタ用カメラ1の作用を説明する。
図1に示すように、本実施形態のモニタ用カメラ1は、起重機2のブーム4の先端部から吊下支持機構14により吊り下げられ、その自重により概ね鉛直下方に向けられている。ブーム4から吊り下げられている吊荷6は、モニタ用カメラ1により撮像され、撮像された画像は操作室8の表示装置10にリアルタイムで表示される。次に、ブーム4が回動されると、吊下支持機構14により吊り下げられているモニタ用カメラ1は、第1可動枠14aに対して第2可動枠14b及びカメラ外ケース12が回動されて、モニタ用カメラ1の自重により再び鉛直下方に向けられる。しかしながら、吊下支持機構14内の機械的な摩擦やモニタ用カメラ1の慣性により、モニタ用カメラ1は、ブーム4が回動され始めた後、僅かに遅れながら鉛直下方に向くように回動されると共に、鉛直下方を通り過ぎて振り子のように振動される。
【0041】
カメラ本体16に内蔵された加速度センサ28は、カメラ本体16を向けるべき鉛直下方に対するカメラ本体16の光軸Aの傾きを検出する。一方、ブーム4の回動に伴う周期の短い振動は、カメラ外ケース12とカメラ本体16の間の免振部材18により吸収される。免振部材18に吸収されずにカメラ本体16に伝導された周期の短い振動は、カメラ本体16に内蔵されたジャイロセンサ26により検出される。
【0042】
制御部30は、加速度センサ28及びジャイロセンサ26の検出信号に基づいて、鉛直方向の光軸上の画像が、撮像素子20上に安定して形成されるように防振アクチュエータ24を制御する。即ち、加速度センサ28により求められた鉛直方向の画像が、ジャイロセンサ26により検出される周期の短い振動により振れるのを防止するように、防振アクチュエータ24を制御する。これにより、モニタ用カメラ1が正確に鉛直下方に向けられていない場合においても、モニタ用カメラ1の鉛直下方に位置する吊荷6をモニタ映像の視界に収めながら、表示装置10に表示される吊荷6の画像の振れを抑制することができる。
【0043】
本発明の第1実施形態のモニタ用カメラによれば、カメラ本体が免振部材によってカメラ外ケースに支持されているので、カメラ本体に伝達される振動が抑制され、カメラ本体の損傷を防止することができる。さらに、カメラ本体には防振アクチュエータが内蔵されているので、カメラ本体を免振部材により支持していても、モニタされる画像が大きく振れるのを防止することができる。即ち、カメラ本体を免振部材により支持すると、外部振動の周波数によっては却ってカメラ本体の振動振幅を大きくしてしまう場合があるが、本実施形態のモニタ用カメラによれば、防振アクチュエータにより撮像素子上に形成される像を安定化させることができる。これにより、カメラ本体の損傷を防止しながら、安定した画像を撮像することができる。
【0044】
また、本実施形態のモニタ用カメラによれば、防振アクチュエータは、加速度センサを備えた鉛直検出部によって検出された鉛直方向の光軸上の画像の振れを抑制するように制御される。防振アクチュエータは、ジャイロセンサを備えた振れ検出部によって検出されたカメラ本体の振れに基づいて、鉛直方向の光軸上の画像を安定化させる。これにより、起重機からモニタ用カメラの鉛直下方に吊り下げられている吊荷の画像の振れを確実に抑制することができる。即ち、ジャイロセンサによって検出された振れのみに基づいて防振アクチュエータの防振制御を行うと、監視したい吊荷とは無関係に振動する被写体の画像が安定化されるように防振制御が実行され、吊荷の像が却って振れてしまう場合があるという問題がある。本実施形態においては、吊荷が存在する方向を加速度センサにより検出しているので、確実に吊荷の像を安定化することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のモニタ用カメラにおいては、免振部材により免振を行う周波数帯域が、防振アクチュエータにより防振を行う周波数帯域よりも高く選択されている。これにより、防振アクチュエータにより画像の振れを抑制すると共に、防振アクチュエータでは応答することが難しい高い周波数の振動を免振部材により減衰させることができるので、広い周波数範囲の振れを抑制することができる。
【0046】
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の第2実施形態によるモニタ用カメラを説明する。
本実施形態においては、モニタ用カメラは、トロリがガータ上を走行する天井式の起重機に取り付けられている。また、本実施形態は、カメラ外ケースをトロリから吊り下げる吊下支持機構の構造、及びカメラ本体の振動を検出する振動検出手段が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。図7は、本実施形態によるモニタ用カメラを天井式の起重機に取り付けた状態を示す図である。図8は本実施形態によるモニタ用カメラの斜視図である。図9は制御部における信号処理を模式的に示すブロック図である。
【0047】
図7に示すように、本発明の第2実施形態によるモニタ用カメラ101は、天井式の起重機102から吊り下げられて使用される。起重機102は、水平方向に設けられたガータ104と、このガータ104上を走行するトロリ106と、トロリ106に取り付けられた巻上機108と、を有する。吊荷6は、巻上機108によって巻き上げられる巻上ロープ108aによって吊り上げられる。また、モニタ用カメラ101は、トロリ106から吊り下げられ、鉛直下方に位置する吊荷6を撮像する。
【0048】
図8に示すように、本実施形態のモニタ用カメラ101においては、カメラ外ケース12は吊下支持機構である2本のワイヤーロープ114によりトロリ106から吊り下げられている。カメラ本体をカメラ外ケース12内に支持する免振支持機構は、第1実施形態と同様である。
【0049】
次に、図9を参照して、本発明の第2実施形態における防振アクチュエータの制御を説明する。上述した第1実施形態においては、振動検出手段が加速度センサ及びジャイロセンサを備えており、振動検出手段の鉛直検出部が加速度センサにより構成され、振動検出手段の振れ検出部がジャイロセンサで構成されていた。これに対し、本発明の第2実施形態においては、振動検出手段は加速度センサのみを備えており、鉛直検出部が加速度センサとローパスフィルターにより構成され、振れ検出部が加速度センサ、ハイパスフィルター、及び積分回路により構成されている。
【0050】
図9に示すように、本実施形態においてカメラ本体に内蔵されている制御部130は、加速度センサ128、及び位置センサ34a、34bによる検出信号を入力し、リニアモータ32a、32bを駆動するように構成されている。
【0051】
加速度センサ128のXセンサ部128a及びYセンサ部128bから夫々入力された加速度信号は、バッファーアンプ136a、136bに夫々入力される。バッファーアンプ136a、136bの出力は、ローパスフィルター138及びハイパスフィルター144に入力される。ローパスフィルター138を通過した各信号は、鉛直方向演算回路40に入力され、鉛直方向信号に変換される。
【0052】
一方、ハイパスフィルター144に入力された各加速度信号は、積分回路146a、146bにより夫々時間積分され、速度信号x’、y’に変換される。さらに、速度信号x’、y’は積分回路46a、46bにより夫々時間積分され、変位量Δx、Δyに変換される。
【0053】
鉛直方向演算回路40及び積分回路46a、46bから出力された信号の、制御部130における処理は、上述した第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
本発明の第2実施形態のモニタ用カメラによれば、加速度センサの検出信号にローパスフィルターをかけることにより鉛直方向を検出し、同じ加速度センサの検出信号にハイパスフィルターをかけることにより振れを検出しているので、ジャイロセンサを省略することができる。これにより、モニタ用カメラを安価に構成することができる。
【0055】
次に、図10を参照して、本発明の第3実施形態によるモニタ用カメラを説明する。
本実施形態のモニタ用カメラは、制御部の構成が上述した第2実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第2実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。図10は制御部における信号処理を模式的に示すブロック図である。
【0056】
本発明の第3実施形態によるモニタ用カメラは、カメラ外ケース12に対してカメラ本体16を支持する免振部材18の免振特性の温度変化を補正するように構成されている。免振部材18は、一般に外気温の変化により、弾性や粘性が変化する。このため、外気温が変化すると、免振部材18により免振可能な振動の周波数、減衰特性等が変化する。本実施形態においては、制御部に補正制御部が内蔵されており、補正制御部は外気温に応じて制御部の制御特性を変化させ、外気温に関わらず適正な防振制御が行えるようにしている。
【0057】
図10に示すように、本発明の第3実施形態によるモニタ用カメラに内蔵されている制御部230は、外部通信手段である受信機212と、この受信機212が受信した信号に基づいて制御特性を変化させる補正制御部214と、この補正制御部214の出力信号に応じて増幅特性を変更する可変増幅器248a、248bを備えている。また、制御部230の外部には、温度センサ210が設けられており、温度センサ210は外気温を検出するように構成されている。
【0058】
温度センサ210は外気温を検出し、検出した外気温を無線で受信機212に送信するように構成されている。受信機212は、制御部230に内蔵されており、温度センサ210から送信された外気温に関する信号を受信するように構成されている。
【0059】
補正制御部214は、外気温に応じた種々の制御特性を記憶しており、受信機212が受信した外気温に関する信号に基づいて適切な制御特性を選択する。補正制御部214は、選択した制御特性に応じた信号を可変増幅器248a、248bに送り、可変増幅器248a、248bの増幅特性を変化させる。可変増幅器248a、248bは、積分回路46a、46bの各出力信号を増幅して、コイル駆動回路50a、50bに夫々出力するように構成されている。これにより、制御部230の制御特性が補正され、防振アクチュエータ24が外気温に応じて適正に制御される。
【0060】
制御部230におけるその他の構成、作用は上述した第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0061】
本発明の第3実施形態のモニタ用カメラによれば、温度センサによって検出された温度に基づいて、補正制御部が防振アクチュエータの制御特性を変化させるので、外気温の変化により免振部材の特性が変化しても、適正な防振制御を行うことができる。
【0062】
また、上述した第3実施形態においては外気温に応じて制御部による制御特性を変化させていたが、変形例として、免振部材18の経年変化に応じて制御特性を変化させるように、補正制御部を構成することもできる。この場合には、モニタ用カメラの製造後の経過年数をカウントする計時手段(図示せず)を設けておき、この計時手段によって積算された経過年数に応じて補正制御部が制御特性を変化させる。また、外気温に基づく補正と、経年変化に基づく補正を併用しても良い。
【0063】
次に、図11を参照して、本発明の第4実施形態によるモニタ用カメラを説明する。
本実施形態のモニタ用カメラは、制御部の構成が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。図11は制御部における信号処理を模式的に示すブロック図である。
【0064】
本発明の第4実施形態によるモニタ用カメラは、制御部による防振制御特性を使用条件等に応じて、使用者が調整できるように構成されている。
図11に示すように、本発明の第4実施形態によるモニタ用カメラに内蔵されている制御部330は、外部通信手段である受信機312と、この受信機312が受信した信号に基づいて制御特性を変化させる補正制御部314と、この補正制御部314の出力信号に応じて増幅特性を変更する可変増幅器348a、348b、348c、348dを備えている。また、制御部330の外部には、調整操作部310が設けられており、調整操作部310は無線で受信機312に信号を送ることができるように構成されている。
【0065】
モニタ用カメラの使用者は、調整操作部310を操作して、起重機の使用状態等に応じて制御部330による防振制御特性を設定する。設定された制御特性は、調整操作部310から無線で受信機312に送信される。受信機312は、制御部330に内蔵されており、調整操作部310から送信された防振制御特性の設定に関する信号を受信するように構成されている。
【0066】
補正制御部314は、防振制御特性の種々の設定を記憶しており、受信機312が受信した設定を選択する。補正制御部314は、選択した制御特性に応じた信号を可変増幅器348a〜348dに送り、可変増幅器348a〜348dの増幅特性を変化させる。各可変増幅器348a〜348dは、鉛直方向演算回路40、積分回路46a、46bの各出力信号を増幅して、コイル駆動回路50a、50bに夫々出力するように構成されている。これにより、制御部330の制御特性が補正され、防振アクチュエータ24は使用者の設定に応じた制御特性で制御される。
【0067】
制御部330におけるその他の構成、作用は上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0068】
本発明の第4実施形態のモニタ用カメラによれば、使用者が調整操作部を操作することにより、防振アクチュエータの制御特性を設定することができるので、モニタ用カメラに加わる外部振動の状態、気温、湿度等の外部環境、使用者の好み等に応じて、防振アクチュエータの制御特性を調整することができる。
また、制御特性の設定は、調整操作部から無線により制御部に送信されるので、離れた場所から設定を変更することが可能であり、起重機のブームの先端を下ろすことなく、起重機の使用状態のまま設定を変更することができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、モニタ用カメラを、ブームを備えた起重機、天井式の起重機に適用しているが、本発明のモニタ用カメラを、他の任意の起重機に適用することができる。また、上述した各実施形態に備えられている各機能は、適宜組み合わせて本発明に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 本発明の第1実施形態によるモニタ用カメラ
2 起重機
4 ブーム(可動部)
6 吊荷
8 操作室
10 表示装置
12 カメラ外ケース(カメラフレーム)
14 吊下支持機構
14a 第1可動枠
14b 第2可動枠
16 カメラ本体
18 免振部材(免振支持機構)
20 撮像素子
22 撮像用光学系
22a 像振れ防止用レンズ
24 防振アクチュエータ
26 ジャイロセンサ(振れ検出部)
26a Xセンサ部
26b Yセンサ部
28 加速度センサ(鉛直検出部)
30 制御部
32a、32b リニアモータ
34a、34b 位置センサ
36a、36b バッファーアンプ
38 ローパスフィルター
40 鉛直方向演算回路
42a、42b バッファーアンプ
44 ハイパスフィルター
46a、46b 積分回路
48a、48b 乗数回路
50a、50b コイル駆動回路
52a、52b 位置検出回路
101 本発明の第2実施形態によるモニタ用カメラ
102 起重機
104 ガータ
106 トロリ
108 巻上機
108a 巻上ロープ
114 ワイヤーロープ
128 加速度センサ
128a Xセンサ部
128b Yセンサ部
130 制御部
136a、136b バッファーアンプ
138 ローパスフィルター
144 ハイパスフィルター
146a、146b 積分回路
210 温度センサ
212 受信機
214 補正制御部
230 制御部
248a、248b 可変増幅器
312 受信機
314 補正制御部
330 制御部
348a、348b、348c、348d 可変増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起重機の可動部に取り付けられ、下方をモニタするためのモニタ用カメラであって、
カメラフレームと、
このカメラフレームを上記起重機の可動部から吊り下げる吊下支持機構と、
撮像素子及び撮像用光学系を備えたカメラ本体と、
このカメラ本体を上記カメラフレームに対して免振支持する免振支持機構と、
上記カメラ本体の振動を検出する振動検出手段と、
上記カメラ本体に内蔵され、上記撮像素子上に形成される画像の振れを抑制するように像振れ防止用レンズを駆動する防振アクチュエータと、
上記振動検出手段により検出された振動に基づいて、上記防振アクチュエータを制御する制御部と、
を有することを特徴とするモニタ用カメラ。
【請求項2】
上記振動検出手段は、モニタすべき鉛直方向を検出する鉛直検出部と、上記カメラ本体の補正すべき振れを検出する振れ検出部と、を有する請求項1記載のモニタ用カメラ。
【請求項3】
上記鉛直検出部は加速度センサを備え、上記振れ検出部はジャイロセンサを備えている請求項2記載のモニタ用カメラ。
【請求項4】
上記鉛直検出部は加速度センサ及びローパスフィルターを備え、上記振れ検出部は加速度センサ及びハイパスフィルターを備えている請求項2記載のモニタ用カメラ。
【請求項5】
上記制御部が、上記免振支持機構の免振特性の変化を補正する補正制御部を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のモニタ用カメラ。
【請求項6】
上記免振支持機構は、上記防振アクチュエータが抑制する振動の周波数よりも高い周波数の振動を主に減衰させるように構成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載のモニタ用カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−30002(P2011−30002A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174426(P2009−174426)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】