説明

モータおよび緩衝器

【課題】モータの磁石の熱減磁を防止することであり、また、緩衝器の性能劣化を防止することである。
【解決手段】ヨーク4とヨーク4外周に装着した磁石8と有するロータRを備えたモータM1において、ヨーク4にその両端で開口する少なくとも1つ以上の通孔5を設けたことを特徴とし、ロータRの外周面だけでなく、通孔5からも磁石8に伝達された熱が放散されるので、磁石8が高温となってしまうことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの改良に関し、また、該モータが発生するトルクを運動変換機構の直線運動を抑制する減衰力として利用する緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種緩衝器としては、車体を弾性支持するコイルバネと、車軸側に連結されるボール螺子ナットに回転自在に螺合した螺子軸と、螺子軸の一端に連結されるとともに車体側に連結されるモータとで構成され、モータが発生する回転トルクで車体側部材と車軸側部材との相対移動をアクティブ制御するものがある。
【特許文献1】特開平08−197931号公報(段落番号0023,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の緩衝器にあっては、その姿勢制御にあたり、上記したように、モータが発生するトルクを車体側部材と車軸側部材の相対的な直線運動を抑制する制御力として利用するので、車両走行中にあっては、モータの巻線には、絶えず電流が流れている状態となる。
【0004】
したがって、モータの巻線には、常に電流が流れている状態となるので、巻線自体が発熱し、巻線の発熱によるモータの温度上昇が激しい場合には、巻線の熱が磁石に伝達され、磁石が高温となることによるトルクの減少や場合によっては磁石に不可逆減磁を生じてモータの性能が劣化してしまう恐れがある。
【0005】
特に、この種緩衝器においてモータは、減衰力を発生する必要不可欠な部品であるから、モータの性能の劣化は、直ちに緩衝器の性能劣化に繋がることとなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、モータの磁石の熱減磁を防止することであり、また、緩衝器の性能劣化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明のモータは、ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えたモータにおいて、ヨークにその両端で開口する少なくとも1つ以上の通孔を設けたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の緩衝器は、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と、上記回転運動が伝達されるモータを備えた緩衝器において、上記モータが、ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えてなり、該ヨークにその両端で開口する少なくとも1つ以上の通孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモータによれば、モータが継続駆動された場合や高回転域で巻線が高温となっても、ロータのヨークには通孔が設けてあるので、ロータの外周面だけでなく、通孔からも磁石に伝達された熱が放散されるので、磁石が高温となってしまうことが防止される。
【0010】
したがって、モータの長時間駆動や高回転駆動によっても、磁石の温度上昇が防止されるので、これにより磁石が減磁してしまうことが防止される。
【0011】
すると、モータの駆動中において磁石の減磁が防止されるので、モータの性能が劣化することはなく、長時間駆動を行っても安定的なトルクの発生が可能となる。
【0012】
また、本発明の緩衝器にあっては、モータの駆動中において磁石の減磁が防止されるので、緩衝器の発生する減衰力を含む制御力が安定し、緩衝器の性能劣化が防止され、その機能が維持される。
【0013】
さらに、ヨークに通孔が設けられており、従来緩衝器に搭載されるモータよりロータが軽量となるので、慣性モーメントによる不要な減衰力の発生を低減可能であり、緩衝器の発生減衰力の制御性が向上するとともに、当該緩衝器が車両に適用される場合には、車両における乗り心地を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、第1の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。図2は、第2の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。図3は、第3の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、第1の実施の形態における緩衝器D1は、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構Hと、モータM1とで構成され、具体的には、運動変換機構Hは、ボール螺子ナット1と、ボール螺子ナット1に螺合される螺子軸2とで構成され、このボール螺子ナット1と螺子軸2との軸方向の直線運動を螺子軸1の回転運動に変換し、この螺子軸1の回転運動をモータM1のロータRに伝達して当該モータM1内の巻線13に誘導起電力を発生させることよりモータM1にエネルギ回生させて電磁力を発生させ、この電磁力に起因し上記ロータRの回転に抗するトルクを上記螺子軸2の回転運動を抑制してボール螺子ナット1の直線運動を抑制する減衰力として利用するものである。
【0016】
また、この緩衝器D1においては、上記したように、ボール螺子ナット1と螺子軸2との軸方向の直線運動の運動エネルギを回生して減衰力を発生するだけでなく、モータM1を積極的に駆動することも可能で、この場合には当該緩衝器D1は、アクチュエータとしても機能する。
【0017】
すなわち、特に緩衝器D1を積極的にアクチュエータとしても機能させる場合には、緩衝器D1は減衰力を含む制御力を発生可能であり、車体を振動させないように緩衝器D1の伸縮を制御することもでき、たとえば、アクティブサスペンションとしても機能させることができる。
【0018】
以下、各部につき詳細に説明すると、モータM1は、ロータRとステータSとで構成され、ロータRは、ロータシャフト3と、ロータシャフト3の外周に固定した肉圧円筒状のヨーク4と、ヨーク4の外周に装着された磁石たる永久磁石8とで構成され、このロータRは、その図1中上下端側がケースC内に設けたボールベアリング10,11を介して支持されケースCに対し回転自在に取付けられている。
【0019】
ちなみに、永久磁石8は、複数のブロック化された磁石で構成されてヨーク4の外周に接着されるものであってもよいし、環状に形成されて分割着磁されるものであってもよい。
【0020】
また、ヨーク4には、その図1中上下端となる両端で開口する複数の通孔5が設けられている。
【0021】
他方、ステータSは、ケースCの内周に装着された円筒状のステータコア12と、ステータコア12に巻回された巻線13とで構成され、上記ロータRの永久磁石8に対向させてある。
【0022】
すなわち、このモータM1は、ステータSの巻線13に回転磁界を発生させてロータRを回転駆動する、いわゆる、ブラシレスモータとして構成されており、この実施の形態にあっては、巻線13に回転磁界を発生する上で必要となるロータRの回転位置検出手段は、図示するところでは磁気センサ14であり、この磁気センサ14は、ケースCの上端側内周にロータRの回転を阻害しないよう取付けた環状のプレートPにおける永久磁石8の上端面に対向する面に取付けてあり、たとえば、MR素子やホール素子等が用いられる。
【0023】
また、回転位置検出手段としては、上記したMR素子やホール素子以外にも、レゾルバ等も使用することが可能である。
【0024】
さらに、ケースCの図1中下端には、孔15が複数設けられ、ケースCの内外は上記孔15により連通されている。
【0025】
転じて、運動変換機構Hは、上述のように、ボール螺子ナット1と螺子軸2とで構成され、このボール螺子ナット1は、詳しくは図示しないが、その内周には、螺子軸2の螺旋状の螺子溝(付示せず)に符合するように螺旋状のボール保持部が設けられており、前記ボール保持部に多数のボールが配在されてなり、ボール螺子ナット1の内部にはボールが循環可能なように前記ボール保持部の両端を連通する通路(図示せず)が設けられているものであって、螺子軸2に前記ボール螺子ナット1が螺合された場合に、螺子軸2の螺旋状の螺子溝にボール螺子ナット1のボールが嵌合し、螺子軸2の回転運動に伴いボール自体も螺子軸2の螺子溝との摩擦力により回転するので、ラックアンドピニオン等の機構に比べ滑らかな動作が可能である。
【0026】
そして、このボール螺子ナット1は、筒18の上端に嵌着されており、この筒18の図1中下端に設けたアイ19を介して、たとえば、車両の車体側部材もしくは車体側部材の一方に連結されており、その周方向の回転が規制されるので、ボール螺子ナット1が螺子軸2に対して図1中上下方向となる軸方向に直線運動を呈すると螺子軸2は強制的に回転駆動される。
【0027】
すなわち、上記機構によりボール螺子ナット1と螺子軸2との軸方向の相対運動が螺子軸2の回転運動に変換されることとなる。
【0028】
他方、螺子軸2の上端は、上述のモータM1のロータシャフト3に連結され、モータM1のケースCが車両の車体側部材もしくは車軸側部材の他方に連結されることで、緩衝器D1は、車体側部材と車軸側部材との間に介装される。
【0029】
なお、螺子軸2とロータシャフト3との連結は、カップリング等を介して行ってもよく、また、螺子軸2とロータシャフト3とを一体成形してもよい。
【0030】
上述のように構成された緩衝器D1にあっては、車体側部材と車軸側部材とが路面からの振動入力により相対直線運動を呈すると、螺子軸2が回転駆動されるが、この螺子軸2の回転運動がモータM1のロータRに伝達され、モータM1のロータRが回転運動を呈すると、モータM1内の巻線13が永久磁石8の磁界を横切ることとなり、誘導起電力が発生し、すなわち、運動エネルギが回生されて、モータM1のロータRには誘導起電力に起因する電磁力によるトルクが作用し、上記トルクがロータRの回転運動を抑制することとなる。
【0031】
このロータRの回転運動を抑制する作用は、上記螺子軸2の回転運動を抑制することとなり、螺子軸2の回転運動が抑制されるのでボール螺子ナット1の直線運動を抑制するように働き、緩衝器D1は、上記トルクによって、この場合減衰力として働く制御力を発生し、振動エネルギを吸収緩和する。
【0032】
このとき、積極的に巻線13に電流供給する場合には、ロータRに作用するトルクを調節することで緩衝器D1の伸縮を自由に制御、すなわち、緩衝器D1の制御力を発生可能な範囲で自由に制御することが可能であるので、緩衝器D1の減衰特性を可変としたり、緩衝器D1をアクチュエータとして機能させたりすることも可能である。
【0033】
ここで、ロータRが回転駆動するとき、すなわち、緩衝器D1が伸縮するときには、巻線13には外部電源からあるいは誘導起電力により通常絶えず電流が流れていることとなる。
【0034】
特に、モータM1が継続駆動された場合や高回転域では、巻線13は、継続的に電流が流れるので高温となり、この熱が永久磁石8に伝達されることとなる。
【0035】
しかしながら、ロータRのヨーク4には通孔5が設けてあるので、ロータRの外周面だけでなく、通孔5からも永久磁石8に伝達された熱が放散されるので、永久磁石8が高温となってしまうことが防止される。
【0036】
なお、上記熱はケースC内の気体に伝達されて放散されるのであるが、ケースCの図1中下方には、孔15が複数設けられ、ケースCの内外は上記孔15により連通されているので、ケースC内に熱がこもることも防止されており、これによっても永久磁石8の温度上昇が防止される。
【0037】
したがって、モータM1の長時間駆動や高回転駆動によっても、磁石たる永久磁石8の温度上昇が防止されるので、これにより磁石たる永久磁石8が減磁してしまうことが防止される。
【0038】
すると、モータM1の駆動中において永久磁石8の減磁が防止されるので、モータM1の性能が劣化することはなく、長時間駆動を行っても安定的なトルクの発生が可能となり、その結果、緩衝器D1の発生する減衰力を含む制御力が安定し、緩衝器D1の性能劣化が防止され、その機能が維持される。
【0039】
なお、通孔5は、1つでも構わないが、放熱効果を高めるには複数設けるほうが好ましい。
【0040】
さらに、この場合、ヨーク4に通孔5が設けられており、従来緩衝器に搭載されるモータよりロータRが軽量となるので、本構成の緩衝器D1特有の慣性モーメントによる不要な減衰力の発生を低減可能である。
【0041】
ここで、慣性モーメントによる減衰力について少し説明すると、緩衝器D1が発生する減衰力は、概ね、螺子軸2の慣性モーメントと、モータM1のロータRの慣性モーメントと、ボール螺子ナット1の慣性モーメントと、モータM1の発生する電磁力の総和であり、上記各慣性モーメントは、モータM1のロータRの角加速度が、上記緩衝器D1の伸縮運動の加速度に比例することから、緩衝器D1の伸縮運動の加速度に比例して大きくなるが、ロータRの慣性モーメントは比較的大きく減衰力に対する影響は無視できない。
【0042】
そして、この上記ロータRの慣性モーメントは、上述の通り上記伸縮運動の加速度に比例することから、路面等から緩衝器D1に入力される緩衝器D1の軸方向の力に対し、緩衝器D1はモータM1の電磁力に依存しない減衰力を発生することになり、特に急激な軸方向の力が入力された場合には、より高い減衰力を発生することになり、車両搭乗者にゴツゴツ感を知覚させてしまうこととなる。
【0043】
したがって、常に電磁力に依存した減衰力に先んじてロータRの慣性モーメントによる減衰力が発生することとなり、また、緩衝器D1の伸縮運動の加速度に依存するロータRの慣性モーメントにより発生する減衰力は制御しづらいので、ロータRの慣性モーメントが小さければ小さいほど、上記慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができる。
【0044】
すなわち、ロータRが軽量化されることにより、ロータRの慣性モーメントによる不要な減衰力の発生を低減可能であるから、当該緩衝器D1の発生減衰力の制御性が向上するとともに、当該緩衝器D1が車両に適用される場合には、車両における乗り心地を向上することが可能となる。
【0045】
つづいて、第2の実施の形態における緩衝器D2について説明するが、第1の実施の形態と同様の部分については、同様の符号を付するのみとしてその詳しい説明を省略することとする。
【0046】
第2の実施の形態における緩衝器D2の第1の実施の形態の緩衝器D1と異なるのは、図2に示したように、そのモータ部分であり、具体的には、第2の実施の形態における緩衝器D2のモータM2のロータR2には、その外周側から通孔5に向けて連通する排気孔6が複数設けてある点である。
【0047】
これら各排気孔6は、それぞれロータR2の外周、すわわち、永久磁石8の外周側からヨーク4に向けて穿設されており、各々が対応する通孔5に連通されている。
【0048】
このように、排気孔6が設けられたモータM2にあっては、第1の実施の形態と同様に、緩衝器D2が伸縮する際にはロータR2が回転駆動されるが、排気孔6内の気体は、ロータR2の回転により遠心力でロータR2の外周方向に向けて力を受け、排気孔6から排出される。
【0049】
そして、上記気体の排出により気圧が減少する排気孔6には、通孔5を介して気体が流入することとなり、ヨーク4の上下端で開口する通孔5は排気孔6に対していわば吸入孔として作用する。
【0050】
この気体は、通孔5および排気孔6内に滞留している間に、磁石たる永久磁石8に伝達された熱を奪い、やがては、排気孔6から排出されることとなるので、磁石たる永久磁石8の温度上昇が防止される。
【0051】
そして、第1の実施の形態と異なり、該排気孔6によって強制的に通孔5吸入された気体をロータR2外部に排出することができるので、永久磁石8の冷却効果はより一層高くなるとともに、排出された気体は、そのままステータSに吹き付けられることとなるから、ステータSをも冷却することが可能となる。
【0052】
また、通孔5内に吸引される気体は、ケースC内にある気体ということとなるが、ケースCの図2中下方には、孔15が複数設けられ、ケースCの内外は上記孔15により連通されているので、ケースC内に熱がこもることも防止されており、これによっても永久磁石8およびステータSの温度上昇が防止される。
【0053】
したがって、この第2の実施の形態における緩衝器D2にあっても、上記モータM2の永久磁石8の温度上昇が防止されるので、モータM2の性能劣化が防止され、結果的に、緩衝器D2の性能劣化が防止される。
【0054】
なお、第2の実施の形態における緩衝器D2にあっても、ロータR2の慣性モーメントは、第1の実施の形態と同様に、軽減されるので、その点においては、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0055】
また、上記したところでは、排気孔6は、ロータR2の外周面に対し直交するように設けているが、ロータR2の周方向や軸方向に対し斜めとなるように設けても差し支えない。
【0056】
最後に、第3の実施の形態における緩衝器D3について説明する。この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の部分については、同様の符号を付するのみとしてその詳しい説明を省略することとする。
【0057】
第3の実施の形態における緩衝器D3にあっては、図3に示したように、そのモータ部分が第1の実施の形態の緩衝器D1と異なり、具体的には、第3の実施の形態の緩衝器D3におけるモータM3のロータR3の構成が異なる。
【0058】
そこで、上記異なる点につき、詳しく説明すると、ロータR3は、第1の実施の形態と同様のロータシャフト3と、ヨーク20と、フィンたるコイルバネ26とで構成されており、ヨーク20は、筒状本体21と、筒状本体21の両端の開口端部をそれぞれ閉塞し筒状本体21とロータシャフト3とを連繋する蓋部22,23と、各蓋部22,23に設けた複数の切欠24,25とを備えおり、この場合、通孔は、上記切欠24,25と筒状本体21内とで形成されている。
【0059】
そして、さらに、この筒状本体21内には、筒状本体21の内径と略同径の外周径を有するコイルバネ26が蓋部22,23で圧縮状態下に挟持されて挿入されている。
【0060】
さて、このロータR3が回転駆動させられると、筒状本体21内の気体は、コイルバネ26は螺旋状であるため、切欠24もしくは切欠25の一方から排出され、筒状本体21外の気体は切欠24もしくは切欠25の他方から筒状本体21内に吸引されることとなる。
【0061】
この気体は、筒状本体21内に滞留している間に、磁石たる永久磁石8に伝達された熱を奪い、やがては、切欠24もしくは切欠25の一方から排出されることとなるので、磁石たる永久磁石8の温度上昇が防止される。
【0062】
そして、第1の実施の形態と異なり、該フィンたるコイルバネ26によって強制的に筒状本体21外部に排出されることとなり、永久磁石8の冷却効果はより一層高くなるとともに、気体が、切欠25を介して排出される場合、筒状本体21内に吸引される気体が孔15を介してケースC内に導かれるとともにステータSとロータR3の外周との間を通過し切欠24から吸引され、逆に、切欠24を介して排出される場合、切欠25を介して筒状本体21内に吸引される気体が孔15を介してケースC内に導かれるとともに切欠24から排出されるとステータSとロータR3の外周との間を通過しケースC外へ放出される経路を辿るので、いずれにせよ、気体はステータSとロータR3の外周との間を通過してステータSをも冷却することが可能である。
【0063】
また、筒状本体21内に吸引される気体は、ケースC内にある気体ということとなるが、ケースCの図2中下方には、孔15が複数設けられ、ケースCの内外は上記孔15により連通されているので、ケースC内に熱がこもることも防止されており、これによっても永久磁石8およびステータSの温度上昇が防止される。
【0064】
したがって、この第3の実施の形態における緩衝器D3にあっても、上記モータM3の永久磁石8の温度上昇が防止されるので、モータM3の性能劣化が防止され、結果的に、緩衝器D3の性能劣化が防止される。
【0065】
なお、第3の実施の形態における緩衝器D3にあっても、ロータR3の慣性モーメントは、第1の実施の形態と同様に、軽減されるので、その点においては、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0066】
また、上記したところでは、フィンをコイルバネ26としているが、筒状本体21の内周に螺旋状のフィンを形成してもよいが、フィンをコイルバネ26とすることで、わざわざ筒状本体21の内周に形成するという加工が不要であり、製造コストも低減されるという利点があり、コイルバネ26は上記したように蓋部22,23で挟持してあるので、その位置ずれの心配もなく、効率的に気体を吸引排出することが可能である。
【0067】
なお、フィンは、必ずしも筒状本体21の内周側に設ける必要はなく、ロータシャフト3の外周側のフィンを形成してもよく、この場合にも、フィンをコイルバネとすることが可能である。
【0068】
また、図示したところでは、ヨーク20は、筒状本体21と蓋部22,23と、切欠24,25とで構成されているが、筒状本体21を省略して筒状に成形される磁石を上記蓋部22,23と同様の蓋部でロータシャフト3に連結しておき、この磁石内と該蓋部に設けた孔とで通孔を形成してもよい。
【0069】
さらに、本実施の形態において、蓋部22,23は環状に成形されているが、蓋部22,23をそれぞれ筒状本体21の開口端内周側とロータシャフト3の外周とを連繋する複数の腕、たとえば、3つの腕で構成されるとしてもよく、この場合にも腕と腕との間の隙間が気体の通過を許容するので、この隙間が通孔の一部として機能することとなる。
【0070】
ちなみに、上記した各実施の形態においては、運動変換機構Hをボール螺子ナット1と螺子軸2としているが、たとえば、ラックピニオン機構としてピニオン側をモータに連結するとしてもよい。
【0071】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。
【図2】第2の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。
【図3】第3の実施の形態における緩衝器を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ボール螺子ナット
2 螺子軸
3 ロータシャフト
4,20 ヨーク
5 通孔
6 排気孔
8 磁石たる永久磁石
10,11 ボールベアリング
12 ステータコア
13 巻線
14 磁気センサ
15 孔
18 筒
19 アイ
21 筒状本体
22,23 蓋部
24,25 切欠
26 コイルバネ
C ケース
D1,D2,D3 緩衝器
H 運動変換機構
M1,M2,M3 モータ
R,R2,R3 ロータ
S ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えたモータにおいて、ヨークにその両端で開口する少なくとも1つ以上の通孔を設けたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
ヨークは、筒状本体と、筒状本体の両端をそれぞれ閉塞し筒状本体とロータシャフトとを連繋する蓋部と、各蓋部に設けた少なくとも1つ以上の切欠を備え、通孔が上記切欠と筒状本体内とで形成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
ヨークは、筒状に形成される磁石の両端の開口端部とロータシャフトとを連繋する一対の蓋部と、各蓋部に設けた少なくとも1つ以上の切欠を備え、通孔が上記切欠と磁石内とで形成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
ロータの外周側から開口し、上記通孔に連通する排気孔を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
通孔内に螺旋状のフィンを設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のモータ。
【請求項6】
直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と、上記回転運動が伝達されるモータを備えた緩衝器において、上記モータが、ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えてなり、該ヨークにその両端で開口する少なくとも1つ以上の通孔を設けたことを特徴とする緩衝器。
【請求項7】
ヨークは、筒状本体と、筒状本体の両端をそれぞれ閉塞し筒状本体とロータシャフトとを連繋する蓋部と、各蓋部に設けた少なくとも1つ以上の切欠を備え、通孔が上記切欠と筒状本体内とで形成されることを特徴とする請求項6に記載の緩衝器。
【請求項8】
ヨークは、筒状に形成される磁石の両端の開口端部とロータシャフトとを連繋する一対の蓋部と、各蓋部に設けた少なくとも1つ以上の切欠を備え、通孔が上記切欠と磁石内とで形成されることを特徴とする請求項6に記載の緩衝器。
【請求項9】
ロータの外周側から開口し、上記通孔に連通する排気孔を設けたことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の緩衝器。
【請求項10】
筒状本体内周側もしくはロータシャフト外周側に螺旋状のフィンを設けたことを特徴とする請求項7または8に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−67648(P2006−67648A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244561(P2004−244561)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】