説明

モータ内蔵自転車用ハブ

【課題】モータ内蔵自転車用ハブにおいて、電気配線の接続を容易にし、かつ電力ロスを低減できるようにする。
【解決手段】モータ内蔵自転車用ハブ10は、自転車の車輪のハブを構成する自転車用モータ内蔵ハブである。モータ内蔵自転車用ハブは、ハブ軸15と、モータ11と、モータ制御回路19と、を備えている。モータ11は、端子26を有する。モータ制御回路19は、ハブ軸15の軸線方向でモータと並んで設けられ、端子26に直接接続される回路基板42を有し、モータ11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ハブ、特に、自転車の車輪のハブを構成するモータ内蔵自転車用ハブに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車において、人力による駆動力をモータにより補助するアシスト自転車が従来知られている。アシスト自転車には、車輪にモータが設けられているモータ内蔵ハブを採用しているものがある。従来のモータ内蔵ハブにおいて、モータを駆動するモータ駆動回路が内部に配置されているものが知られている。従来のモータ内蔵ハブは、モータとモータ駆動回路とは電気配線により接続されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−095179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の構成では、モータとモータ駆動回路が電気配線により接続されているので、モータ駆動回路の配置が制限されにくい。しかし、電気配線の接続が煩わしく、かつ電気配線の抵抗による電力ロスが生じるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、モータ内蔵自転車用ハブにおいて、電気配線の接続を容易にし、かつ電力ロスを低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係るモータ内蔵自転車用ハブは、自転車の車輪のハブを構成する自転車用モータ内蔵ハブである。モータ内蔵自転車用ハブは、ハブ軸と、モータと、モータ制御部と、
を備えている。モータは、端子を有する。モータ制御部は、ハブ軸の軸線方向でモータと並んで設けられ、端子に直接接続される回路基板を有し、モータを制御する。
【0007】
このモータ内蔵自転車用ハブでは、モータの端子がモータ制御回路の回路基板に直接接続される。このため、モータと回路基板との間の電気配線が不要になり、電気配線の接続が容易になり、かつ電力ロスを低減できる。
【0008】
発明2に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1に係るモータ内蔵自転車用ハブにおいて、端子はハブ軸と平行に延びる。この場合には、端子の長さが最も短くなる。
【0009】
発明3に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1または2に係るモータ内蔵自転車用ハブにおいて、隔壁部をさらに備える。モータは、端子に接続されるコイル部を有する。隔壁部は、コイル部および回路基板の間に設けられる。端子は、隔壁部を貫通する。
【0010】
この場合には、隔壁部によりモータのコイル部と回路基板とを異なる空間に配置可能になる。このため、コイル部の熱を隔壁部に伝導させて、回路基板への伝導を低減させることができ、制御部によってモータの制御を安定して行うことができる。
【0011】
発明4に係る自転車用モータ内蔵ハブは、発明3に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、隔壁部には、端子が貫通する貫通孔が形成され、端子の基端部は、絶縁性を有する樹脂によってモールドされ、貫通孔に設けられる。
【0012】
この場合には、孔を貫通して回路基板に接続される端子の基端部が、絶縁製を有する樹脂でモールドされた状態で貫通孔に設けられる。このため、端子と隔壁部との接触を防止することができる。
【0013】
発明5に係る自転車用モータ内蔵ハブは、発明3または4に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、隔壁部は、コイル部を支持し、ハブ軸に回転不能に接続される。
【0014】
この場合には、フレームにより回転が規制されるハブ軸に回転不能に接続される隔壁部がコイル部を支持するので、コイル部の支持と空間の区分けとを同時に実施できる。
【0015】
発明6に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明3から5のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、隔壁部を挟んで、モータ制御部が収納される第1空間と、コイル部が収納される第2空間とが形成されるモータケースをさらに備える。
【0016】
この場合には、第1空間と第2空間とを隔壁部により区分けしてモータ制御部とコイル部とを配置できる。
【0017】
発明7に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明3から6のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、回路基板は、第1実装面に第1電気素子を有し、第1実装面を隔壁部に臨ませて配置される。隔壁部には、第1電気素子の少なくとも一部分が配置される配置凹部が形成される。
【0018】
この場合には、配置凹部が隔壁部に形成され、第1電気素子の少なくとも一部分が配置凹部に配置される。このため、ハブのハブ軸方向の長さを短くすることができる。
【0019】
発明8に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明7に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、第1電気素子と、隔壁部との間には、空隙が設けられる。この場合には、モータが振動してもその振動が空隙により遮断され、第1電気素子に伝達されない。このため、振動による悪影響を第1電気素子か受けにくくなる。
【0020】
発明9に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明1または2に係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、回路基板は、第1実装面に第1電気素子を有し、第1実装面をモータに臨ませて設けられる。
【0021】
この場合には、モータ側の第1実装面に第1電気素子を配置しているので、狭い空間に配置される回路基板に多くの第1電気素子を配置できる。
【0022】
発明10に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明7から9のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、モータ制御部は、複数のスイッチング素子を有するインバータ部を備え、スイッチング素子は第1実装面とは反対側の第2実装面に実装される。
【0023】
この場合には、発熱量が多いスイッチング素子を隔壁部またはモータと逆側の第2実装面に配置したので、スイッチング素子が外気に接触するハブの外側面の近くに配置される。このため、スイッチング素子を冷却しやすくなる。
【0024】
発明11に係るモータ内蔵自転車用ハブは、発明7から10のいずれかに係るモータ内蔵自転車ハブにおいて、回路基板は、第1実装面とは反対側の第2実装面に第2電気素子を有し、第1電気素子は、第2電気素子よりも、ハブ軸に平行な方向の寸法が大きい。
【0025】
この場合には、ハブ軸方向の寸法が大きい第1電気素子が配置凹部に配置されるため、ハブのハブ軸方向長さを短くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、モータの端子がモータ制御回路の回路基板に直接接続される。このため、モータと回路基板との間の電気配線が不要になり、電気配線の接続が容易になり、かつ電力ロスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態が採用される自転車の右側面図。
【図2】モータ内蔵ハブの右側面図。
【図3】モータ内蔵ハブの図2の切断面線III−IIIにおける断面図。
【図4】モータ内蔵ハブの左斜視図。
【図5】モータ内蔵ハブの右斜視図。
【図6】モータ内蔵ハブの分解斜視図。
【図7】回路基板の第1実装面を示す平面図。
【図8】モータとケース本体との位置関係を示す図。
【図9】モータの断面部分図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<自転車の全体構成>
図1において、本発明の一実施形態を採用した自転車は人力よる駆動をモータ内蔵ハブ10により補助するアシスト自転車である。自転車は、フレーム体102及びフロントフォーク103を有するフレーム101と、ハンドル部104と、駆動部105と、前輪106fと、後輪106rと、フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rと、前照灯23と、尾灯24と、を備えている。フロントフォーク103は、フレーム体102の前部に斜めの軸回りに揺動自在に装着されている。フロントフォーク103の先端部にモータ内蔵ハブ10が装着されている。フロントブレーキ装置107f及びリアブレーキ装置107rは、前輪106f及び後輪106rのリム121f及び121rにそれぞれ接触して制動する。
【0029】
フレーム101には、サドル111やハンドル部104を含む各部が取り付けられている。駆動部105は、フレーム体102のハンガー部に回転自在に支持されたクランク軸116と、クランク軸116の両端に固定されたギアクランク118a及び左クランク(図示せず)と、ギアクランク118aに掛け渡されたチェーン119と、後輪106rのリアハブ110に装着されたギア109と、フロントディレーラ108fと、リアディレーラ108rと、を有している。
【0030】
フロントディレーラ108fは、ギアクランク118aに装着された、たとえば3枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。リアディレーラ108rは、リアハブ110に取り付けられた、ギア109のたとえば9枚のスプロケットのいずれかにチェーン119を架け渡すものである。フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは、いずれも電動駆動されるものであり、電動アクチュエータと、現在の変速段を検出する段数センサと、これらを制御するディレーラ制御部と、をそれぞれ有している。ハンドルバー115には、変速を指示する変速スイッチが設けられ、変速スイッチの操作に応じて、前記ディレーラ制御部が電動アクチュエータを制御する。本実施の形態では、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは電動駆動されるが、フロントディレーラ108f及びリアディレーラ108rは変速レバーにワイヤーで連結され、変速レバーによってワイヤーを引っ張ることによって変速駆動される構成であってもよい。
【0031】
フレーム体102の後上部には、リアキャリア112が取り付けられている。リアキャリア112には、自転車全体の電装品を制御する全体制御部12を含むリアキャリアユニット13が装着されている。リアキャリアユニット13は、モータ内蔵ハブ10、全体制御部12及び前照灯23等の電装品の電源となる蓄電部14を着脱可能に搭載している。蓄電部14は、たとえばニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の蓄電池を含んで構成される。蓄電部14に尾灯24が一体で取り付けられている。
【0032】
ハンドル部104は、フロントフォーク103の上部に固定されたハンドルステム114と、ハンドルステム114に固定されたバーハンドル型のハンドルバー115とを有している。ハンドルバー115の両端には、左ブレーキレバー16f及び右ブレーキレバー16rと、が装着されている。また、ハンドルバー115の中央部には、表示ユニット18と、前照灯23とが装着されている。表示ユニット18は、たとえばアシストモード及び回生制動モードなどの動作モードを表示可能である。
【0033】
<モータ内蔵ハブ>
モータ内蔵ハブ10は、自転車の前輪106fのハブを構成するものである。モータ内蔵ハブ10は、フロントフォーク103の先端に装着されており、人力による駆動を補助するためのものである。モータ内蔵ハブ10は、たとえば3相のブラシレスDCモータを含んでいる。モータ内蔵ハブ10は、図2に示すように、ハブ軸15と、ハブ軸15に装着されるモータケース17と、を有している。また、モータ内蔵ハブ10は、図3に示すように、モータケース17内に収納されたモータ11と、モータ制御回路(モータ制御部の一例)19と、回転伝達機構25と、を有している。
【0034】
<ハブ軸>
ハブ軸15は、たとえば、鋼鉄製であり、フロントフォーク103の先端の前爪部103aに両端部が回転不能に装着可能である。ハブ軸15の両端外周面には、フロントフォーク103に固定するためのナット部材50が螺合する左右1対の第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bが形成されている。また、第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bの外周面には、互いに平行な二面を有する第1係止部15c及び第2係止部15dが形成されている。第2係止部15dのハブ軸方向内方には、モータケース17の後述する第1ケース部材32を回転不能に連結するための回転係止部15eが形成されている。第1雄ねじ部15aには、ナット部材50と、ロックナット51と、が螺合している。第2雄ねじ部15bには、ナット部材50と、第1ケース部材32をハブ軸15に固定するナット部材52と、が螺合している。ナット部材50の軸方向内方には、第1係止部15c及び第2係止部15dに各別に回転不能に係合し、かつフロントフォーク103の装着溝103bに係合してハブ軸15を回り止めするための回り止めワッシャ54が装着されている。
【0035】
また、第1雄ねじ部15aのハブ軸方向内方には、モータケース17の後述する第2ケース部材34の第2端を回転自在に支持する第2軸受31が螺合する第3雄ねじ部15fが形成されている。ハブ軸15の中間部分は、第1雄ねじ部15a及び第2雄ねじ部15bより大径である。
【0036】
<モータケース>
図2、図3,図4、図5及び図6に示すように、モータケース17は、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ケース部材32と、第1ケース部材32に第1端(図3右端)が、ハブ軸15に第2端(図3左端)がそれぞれ回転自在に支持される第2ケース部材34と、を有している。第2ケース部材34は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。第1ケース部材32は、外側面に形成されフロントフォーク103の先端部を受け入れ可能な凹部32aを有している。また、第1ケース部材32は、凹部32aを形成し、ハブ軸方向外方に膨出する膨出部32bを有している。膨出部32bの内部には第1空間32cが形成されている。第2ケース部材34と第1ケース部材32とで内部に第2空間34aが形成される。
【0037】
第1ケース部材32は、ハブ軸15に回転不能に装着されるケース本体36と、ケース本体36の外側面に複数本(たとえば、5本)の取付ボルト37により固定されるカバー部材38と、有している。カバー部材38とケース本体36との間には、第1空間32cが形成される。ケース本体36およびカバー部材38は、たとえばアルミニウム合金によって形成される。
【0038】
ケース本体36は、ハブ軸15に回転不能に連結される第1ボス部36aと、第1ボス部36aと一体形成される円形の隔壁部36bと、隔壁部36bの外周部から第2ケース部材34に向かって延びる筒状の第1円筒部36cと、を有している。第1ボス部36aの内周面には、ハブ軸15の回転係止部15eに回転不能に連結される非円形の連結孔36dが形成されている。
【0039】
隔壁部36bの外側面は概ね平坦面である。この外側面にハブ軸15方向外方に突出して形成された複数の取付ボス36eが形成される。取付ボス36eに取付ボルト53によってモータ制御回路19が固定されている。
【0040】
隔壁部36bには、図8に示すように、モータ制御回路19に実装された後述する第1電気素子47を配置可能な複数(たとえば6つ)の配置凹部43aが形成されている。配置凹部43aは、隔壁部36bの内部に貫通する凹部である。また、隔壁部36bには、モータ11の端子26を第1空間32cに露出させるための複数(たとえば3つ)の端子開口(貫通孔の一例)43bが形成されている。
【0041】
第1円筒部36cの外周面には、第2ケース部材34の第1端を回転自在に支持する、たとえば玉軸受の形態の第1軸受30の内輪30aが装着されている。第1軸受30の外側には、第1円筒部36cと外輪30bとの間をシールするシール部材30cが配置されている。また、外輪30bと第2ケース部材34との間には、シール用のOリング60が配置されている。さらに第1ボス部36aの内周部とハブ軸15との間には、シール用のOリング61が配置されている。これにより、第1ケース部材32の外側から第2ケース部材34内の第2空間34aに異物が侵入しにくくなる。
【0042】
第1円筒部36cの先端部外周面には、第1円筒部36cに回転不能に連結される筒状のギア取付部35がボルト部材により固定されている。ギア取付部35の内周面には、後述する内歯ギア48bが回転不能に連結されている。
【0043】
カバー部材38は、外側面に前述した凹部32a及び膨出部32bを有している。カバー部材38の内側面において、カバー部材38とケース本体36との間には、モータ制御回路19が配置される空間への液体の浸入を抑制するシール部材62が配置されている。シール部材62は、カバー部材38の内側面において、凹部32aの外側及び膨出部32bの外周部に配置されている。シール部材62は、防水性および弾発性を有するゴムなどによって形成される。シール部材62は、図3及び図6に示すように、ケース本体36の隔壁部36bの外側面に形成されたシール溝36fに装着されている。
【0044】
凹部32aは、図2及び図4に示すように、概ねU字状に凹んで形成されており、本実施の形態では、ハブ軸15が貫通する中心部から僅かに先広がりに概ねU字状に凹んで形成されている。凹部32aは様々な形状のフロントフォークを挿入可能にするために、通常のフロントフォークの先端の形状より僅かに幅広に形成されている。
【0045】
隔壁部36bの外側に、ケース本体36とカバー部材38とによって形成される第1空間32cは、概ね馬蹄形状となっている。第1空間32cには、隔壁部36bに固定されたモータ制御回路19が配置されている。膨出部32bの内側面には、モータ制御回路19のシート装着溝32dが形成されている。シート装着溝32dは、複数の第2電気素子(特に、後述する電界効果トランジスタ44a)44に臨む位置に設けられ、放熱部材である放熱シート80を位置決めして装着するための溝である。シート装着溝32dは、放熱シート80と同様の形状に形成されている。
【0046】
凹部32aの一方の縁部には、配線接続部38aがケース本体36の周方向外方に突出して形成されている。配線接続部38aは膨出部32bよりもハブ軸方向に僅かに凹んで形成されている。配線接続部38aは、モータ制御回路19と全体制御部12及び蓄電部14とを接続する2芯の電力線70(図2)を外部に取り出すために設けられている。配線接続部38aは、電力線70を接続可能なコネクタ41を有している。なお、この実施形態では、電力線70は、PLC(電力通信Power Line Communications)により、電源の供給と信号の通信とを行えるように構成されている。配線接続部38aの先端には、コネクタ41(図2)が設けられている。コネクタ41は、たとえば、2芯の雌コネクタである。
【0047】
配線接続部38aは、図1に示すように、フロントフォーク103の後部に近接してフロントフォーク103に沿って配置されるように形成されている。
【0048】
第2ケース部材34は、通常の自転車用ハブのハブシェルに類似する構造であり、有底筒状部の部材である。第2ケース部材34は、第2軸受31に支持される第2ボス部34bと、第2ボス部34bと一体形成された円板部34cと、円板部34cの外周部からハブ軸方向内方に筒状に延びる第2円筒部34dと、を有している。
【0049】
第2ボス部34bの内周面には、ハブ軸15との間に第2軸受31が装着されている。第2軸受31は、内輪31aがハブ軸15に形成された第3雄ねじ部15fに螺合して軸方向位置を調整可能である。調整後の内輪31aは、ロックナット51により回り止めされる。外輪31bは、第2ボス部34bの内周面に装着されている。第2軸受31の外側には、第2ボス部34bと内輪31aとの間をシールするシール部材31cが配置されている。また、内輪31aの内周面とハブ軸15の外周面との間にはOリング65が配置されている。これにより、第2ケース部材34の第2端側から第2空間34aに異物が侵入しにくくなる。
【0050】
第2円筒部34dは、第1円筒部36cの外周側に配置されている。第2円筒部34dの第1端側内周面に第1軸受30の外輪30bが装着されている。第2円筒部34dの外周面には、前輪106fのリム121fとモータ内蔵ハブ10とをスポーク122により連結するための第1ハブフランジ40a及び第2ハブフランジ40bがハブ軸方向の両端部に間隔を隔て形成されている。
【0051】
第1空間32cと第2空間34aとの間に隔壁部36bが設けられているので、コイル部の熱を隔壁部36bに伝導させて、回路基板への伝導を低減させることができ、制御部によってモータの制御を安定して行うことができる。
【0052】
<モータ制御回路>
モータ制御回路19は、図6及び図7に示すように、回路基板42を有している。回路基板42は、ハブ軸15の軸線方向でモータ11と並んで設けられている。すなわち、回路基板42は、ハブ軸15に平行な方向でモータ11と並んで設けられている。回路基板42は、隔壁部36bに臨ませて配置される第1実装面42aと、カバー部材38に臨ませて配置される第2実装面42bと、を有している。第1実装面42aには、複数の第1電気素子47が実装されている。第1電気素子47は、たとえば、平滑用およびノイズ除去用の複数(たとえば5つ)のコンデンサ47a、およびトランス47bなどを含んでいる。第1実装面42aには、前記第1電気素子47の他にも他の電気素子が実装されていてもよい。第1電気素子47は、図3に示すように、配置凹部43aにその一部分が配置され、隔壁部36bに空隙を設けて配置されている。
【0053】
第2実装面42bには、複数の第2電気素子44が実装され、複数の第2電気素子44は、図6に示すように、インバータ回路19aと電力線通信回路19bとを構成している。インバータ回路19aは、蓄電部14から供給された直流をスイッチングして交流に変換する。インバータ回路19aは、デューティ比を変化させてモータ内蔵ハブ10の駆動力を変化させるともに、モータ内蔵ハブ10を発電機として使用するときの回生制動力を変化させる。インバータ回路19aは、モータ11の後述する端子26に接続されている。
【0054】
インバータ回路19aは、複数(たとえば6つ)の電界効果トランジスタ(FET)44a及びその他の電気素子を含んでいる。複数の電界効果トランジスタ44aは、放熱シート80に接触して配置されている。これによって電界効果トランジスタで発生した熱の一部を、放熱シート80を介してカバー部材38に伝導させて、カバー部材38から外部に放出可能である。第1電気素子47は、第2電気素子44より高さ(ハブ軸15と平行な方向の寸法の一例)が高い。
【0055】
<モータ>
モータ11は、図3に示すように、回転子21と、回転子21の外周側に回転子21と対向して配置される固定子22と、3つの端子26と、を有している。
【0056】
回転子21は、第2空間34a内に配置され、ハブ軸15に回転自在に支持されている。回転子21は、たとえば周方向に複数の磁極を有する磁石21aと、磁石21aを保持する磁石保持部21bとを有している。磁石保持部21bは、ハブ軸方向に間隔を隔てて配置される2つの軸受66によりハブ軸15に回転自在に支持されている。
【0057】
固定子22は、第2空間34a内で回転子21の外周側に配置されている。固定子22は、ケース本体36の隔壁部36bに支持され、周方向に間隔を隔てて配置される図示しない複数(たとえば6つ)のコイル部46を有している。固定子22は、この実施形態では、3本のボルト部材により隔壁部36bに固定されている。複数のコイル部46は、モータ制御回路19のインバータ回路19aの電界効果トランジスタ44aによりスイッチングされた交流により順次励磁され、回転子21を自転車の進行方向に回転させる。
【0058】
図9に示すように、固定子22のコイル部46は、端子26の基端部26aとともに、図9にドットで示す絶縁性を有する樹脂部材55によってモールドされている。端子26は、コイル部46に接続されており、端子開口43bに設けられる。端子26はハブ軸15に平行に延びている。端子26の先端部26bは、第1空間32c内に配置されている。端子26の先端部26bは、回路基板42に設けられる3つの端子接続孔42cに挿入され、ハンダ付け等の適宜の接続手段によって基板回路42に形成される配線に電気的に直接接続されている。
【0059】
<回転伝達機構>
回転伝達機構25は、回転子21の回転を第2ケース部材34に伝達し、第2ケース部材34の回転を回転子21に伝達する。回転伝達機構25は、遊星歯車機構48を有している。遊星歯車機構48は、太陽ギア48aと、太陽ギア48aの外周側に配置された内歯ギア48bと、太陽ギア48aと内歯ギア48bとに噛み合う複数(たとえば3つ)の遊星ギア48cと、を有している。太陽ギア48aは、回転子21に固定されている。内歯ギア48bはケース本体36に設けられている。複数の遊星ギア48cは、キャリア48dによって回転可能に支持されている。各遊星ギア48cは、歯数の異なる2つの第1および第2のギア部を有する。第1のギア部は、太陽ギア48aに噛み合い、第2のギア部は、内歯ギア48bに噛み合っている。キャリア48dは、第2ケース部材34の第2円板部34cの内側面に固定されている。この遊星歯車機構48では、ケース本体36に設けられた内歯ギア48bがハブ軸15に回転不能に固定されるため、回転子21が連結された太陽ギア48aの回転が減速して第2ケース部材34に伝達される。
【0060】
<モータ内蔵ハブの組み込み手順>
モータ内蔵ハブ10をフロントフォーク103に組み込む際には、フロントフォーク103の先端の前爪部103aの装着溝103bにハブ軸15を装着する。このときフロントフォーク103の先端部をモータ内蔵ハブ10の第1ケース部材32のカバー部材38に凹んだ凹部32aに配置することができるので、モータケース17のフロントフォーク103への装着部分間の長さが長くならない。また、凹部32aの径方向外方に膨出部32bを設け、膨出部32b内にモータ制御回路19を設けるので、モータ制御回路19を内部に設けてもフロントフォーク103への装着部分間のモータ内蔵自転車用ハブの長さが長くならない。このため、既存のハブ取付幅のフロントフォーク103に装着可能なモータ内蔵ハブ10を設計しやすい。
【0061】
ハブ軸15を装着溝103bに装着すると、その両端からナット部材50を装着するとともに、回り止めワッシャ54を装着溝103bに係合させてハブ軸15を回り止めする。この状態でナット部材50を締め込むとモータ内蔵ハブ10がフロントフォーク103に固定される。
【0062】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
(a)前記実施形態では、ブラシレスDCモータを例示したが、コイル部が回転するブラシ付きモータにも本発明を適用できる。この場合、回生駆動機能及び周波数変調によりモータを駆動するモータ制御回路を膨出部に設け、モータの端子をモータ制御回路に直接接続すればよい。
【0064】
(b)前記実施形態では、モータ内蔵ハブ10にハブブレーキ装置の連結構造を設けていないが、連結構造を設けてもよい。たとえば、ローラブレーキのドラム又はディスクブレーキ用のロータを一体回転可能に連結可能な連結構造を第2ボス部34bの外周面に設けてもよい。
【0065】
(c)モータ11の機械的な構成は、上記構成に限定されない。たとえば前記実施形態では、インナーロータのモータであるが、アウターロータのモータであってもよい。
【0066】
(d)前記実施形態では、隔壁部36bを設け、そこに固定子を固定しているが、本発明はこれに限定されない。固定子を第1円筒部36cの内周面に固定し、カバー部材でハブ軸を支持するようにしてもよい。この場合、カバー部材側に回路基板を固定し、モータの端子を直接回路基板に接続すればよい。
【0067】
(e)前記実施形態では、隔壁部36bを貫通する孔で配置凹部43aを構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、配置凹部43aは、隔壁部36bを貫通しない凹みであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 モータ内蔵ハブ
11 モータ
15 ハブ軸
17 モータケース
19 モータ制御回路
19a インバータ回路
21 回転子
21a 磁石
21b 磁石保持部
22 固定子
26 端子
26a 基端部
26b 先端部
32 第1ケース部材
32c 第1空間
34a 第2空間
36b 隔壁部
42 回路基板
42a 第1実装面
42b 第2実装面
42c 端子接続孔
44 第2電気素子
44a 電界効果トランジスタ
46 コイル部
47 第1電気素子
47a コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪のハブを構成するモータ内蔵自転車用ハブであって、
ハブ軸と、
端子を有するモータと、
前記ハブ軸の軸線方向で前記モータと並んで設けられ、前記端子に直接接続される回路基板を有し、前記モータを制御するモータ制御部と、
を備えるモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項2】
前記端子は、前記ハブ軸に平行に延びる、請求項1に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項3】
隔壁部をさらに備え、
前記モータは、前記端子に接続されるコイル部を有し、
前記隔壁部は、前記コイル部および前記回路基板の間に設けられ、
前記端子は、前記隔壁部を貫通する、請求項1または2に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項4】
前記隔壁部には、前記端子が貫通する貫通孔が形成され、
前記端子の基端部は、絶縁性を有する樹脂によってモールドされ、前記貫通孔に設けられる、請求項3に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項5】
前記隔壁部は、前記コイル部を支持し、前記ハブ軸に回転不能に接続される、請求項3または4に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項6】
前記隔壁部を挟んで、前記モータ制御部が収納される第1空間と、前記コイル部が収納される第2空間とが形成されるモータケースをさらに備える、請求項3から5のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項7】
前記回路基板は、第1実装面に第1電気素子を有し、前記第1実装面を前記隔壁部に臨ませて配置され、
前記隔壁部には、前記第1電気素子の少なくとも一部分が配置される配置凹部が形成される、請求項3から6のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項8】

前記第1電気素子と、前記隔壁部との間には、空隙が設けられる、請求項7に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項9】
前記回路基板は、第1実装面に第1電気素子を有し、前記第1実装面を前記モータに臨ませて設けられる、請求項1または2に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項10】
前記モータ制御部は、複数のスイッチング素子を有するインバータ部を備え、前記スイッチング素子は前記第1実装面とは反対側の第2実装面に実装される、請求項7から9のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。
【請求項11】
前記回路基板は、前記第1実装面とは反対側の第2実装面に第2電気素子を有し、
前記第1電気素子は、前記第2電気素子よりも、ハブ軸に平行な方向の寸法が大きい、請求項7から10のいずれか1項に記載のモータ内蔵自転車用ハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30679(P2012−30679A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171374(P2010−171374)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)