説明

ユーザー間コミュニケーション促進用ロボット

【目的】擬似ペット同士が互いに自発的に交信・交流を行うことができる擬似ペットもしくは縫ぐるみ等のキャラクタ形態物を提供する。
【構成】ユーザーが連れて歩く擬似ペット(コンピュータを含み、電気的に作動する装置で、肉体に相当する部分を有するもの)であって、近傍のエリアにある他の擬似ペットに受信されるように、「擬似ペットによる所定の挨拶信号」を、無線で送信するための挨拶信号送信手段と、近傍のエリアにある他の擬似ペットから無線で送信された「擬似ペットによる所定の挨拶信号」を受信するための挨拶信号受信手段と、を含むことを特徴とする擬似ペットもしくは縫ぐるみ等のキャラクタ形態物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーが外出時に一緒に連れて出る(望ましくは、連れて歩く)擬似ペットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が属する「擬似ペット」(犬形、猫形、縫いぐるみ形などのような、人間が親しむことができる形体を有しており「ペットの肉体として機能する部分」を有している擬似ペットであって、ユーザーが外出時に一緒に連れて出ることができる擬似ペット)の分野ではないが、「携帯機器」については、従来より、ある携帯機器から所定の信号を無線(赤外線など)により出力し、それと同種の携帯機器を持っている人が近傍に居たとき、その携帯機器が光の点滅等により「近傍に同種の携帯機器を持つ人が居ること」を持ち主に知らせるものが、知られている。これは、「ラブゲッティ」という商品名で「エアフォルク」という会社(兵庫県芦屋市)から1998年2月に発売された携帯グッズで、多くの人と知り合いになる切っ掛けとして使えるツールとして販売されている。
【0003】
また、1998年6月26日付け日経産業新聞の中の「偶然の出会い、端末ビビビッ アステル関西 新型のPHS 同じ電波圏内で反応」というタイトルの記事に次のような報道がある。「アステル関西は友人だけでなく、付近にいる他人とも偶然の情報交換ができるPHS端末「クーフィー」を7月31日に発売する。PHSのトランシーバー機能を利用し、複数の端末が同じ電波圏内に入ると互いに反応する。クーフィーはトランシーバーの電波を送受信する「Angel Waveモード」を搭載した。同モードに設定した二台の端末が半径100〜150メートルのトランシーバー圏内に入ると、音や本体の振動で互いに反応する。端末の電話帳に登録している相手であれば、名前とPHS番号が表示される。反応した相手が友達であることを確かめてから通話できる。トランシーバー機能を利用しているため、アステル関西のエリア外でも通話が可能。」
【0004】
さらに、従来より、携帯型の電子生物生存機器として、(株)バンダイ提供の「たまごっち」がある。この「たまごっち」は、キーホルダー型の楕円形の小型液晶表示装置の中にキャラクターを表示させてユーザーがそのキャラクターに食事などの世話を行って育成するという携帯型ゲーム機器である。また、同じく(株)バンダイから販売されている「デジタルモンスター」(略称:デジモン)もある。この「デジモン」は、基本的には「たまごっち」と同様だが、恐竜に似たキャラクタを育成して、同じデジモンを育成しているユーザー(プレーヤ)が集まって、お互いのデジモンの機器をドッキング(電気的に接続・結合)させて、お互いのデジモンを「戦わせて勝敗を競う」ことができるようになっている。さらに、(株)任天堂が提供している携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」用のゲーム・ソフトウェアである「ポケットモンスター」(略称:ポケモン)もある。このポケモンは、各ユーザー(プレーヤ)がゲームの中で多数のポケモン(様々なキャラクターがある)を捕獲していくゲームだが、ユーザー(プレーヤ)が希望するときは、他のプレーヤとの間で、ゲーム機同士をケーブルで電気的に接続して、捕獲したポケモン同士を戦わせて勝敗を競うこともできる。
【特許文献1】特開平7−160459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、上記の「ラブゲッティ」やアステル関西の「新型PHS」は、道路通行中などに偶然近くに居る他の端末に所定の信号を送信して、知り合いになったり話したりする「きっかけ」を与えるものであるが、いずれも、「擬似ペットを介在させること」は全く予想されていない。

他方、上記の「たまごっち」は電子ペットなどの「仮想的な電子生物」を育成する装置であるが、他のユーザーとの交流は、あくまでユーザー同士の交流で、「たまごっち」の装置同士が、「ユーザーのイニシアチブ(ユーザーの特別な操作など)なしに自発的・自動的に交流・交信すること」は、全く予定されていない。さらに、上記の「デジモン」「ポケモン」などは、2人以上のプレーヤが集まって、それぞれの装置を電気的に接続して「デジモン」のキャラクタ又は「ポケモン」のキャラクタを戦わせて勝敗を競うことが行われるが、それは、あくまでユーザー(プレーヤ)同士の合意に基づいて行うだけで、「デジモン」の育成機器同士や「ポケモン」のゲーム機器同士が「(ユーザーに関係なく)勝手に自発的に交信・交流すること」は、全く予定されていない。また、 特に、前記の「たまごっち」や「デジモン」は、液晶画面上にのみ存在する「仮想的な電子生物(電子ペット・キャラクターを示すデジタルデータ)」に過ぎないから、ユーザーが実際に自分の手で撫でて親しんだりするための「肉体として機能する部分」は有していないので、ユーザーにとっても、電子ペットに対する親しみはあくまで「仮想的な体験」に止まっしまうという欠点がある。
また、前記の電子ペット育成・飼育装置の出願公開公報の中には、携帯機器同士の間で、電子ペット・キャラクタのデータを無線でやり取りすることが開示されている。例えば、特開平8−309032号公報には、「他の電子手帳の赤外線通信回路15から送信された犬キャラクタデータの種類データとその誕生日データとが、この電子手帳における赤外線通信回路15を介して受信される」(同公報の明細書の段落番号0035)ことや、この他の電子手帳から送信されたキャラクタとの「お見合い処理」などのアイデアが、開示されている。しかしながら、この公開公報における他の電子手帳からの犬キャラクタの送信は、ユーザー同士が予め話し合った上で行うことを前提としており、「2人以上のユーザーが、たまたま偶然に、近くに居合わせたときに、それらのユーザーが連れている擬似ペット(肉体の機能を有する部分を備えているもの)同士が、自発的に交信して挨拶を交わしたり、情報交換すること」は、全く想定されていない。
本発明者は、「肉体として機能する部分を備えた擬似ペット」を、単なる「縫いぐるみ、おもちゃ、などのようなユーザーが親しむためのもの」としてではなく、人間同士の実際の「コミュニケーションのためのツール」とするのが妥当だと考える。すなわち、本発明者は、擬似ペットを、「ユーザーの親しみなどの感情移入の対象としたりユーザーの寂しさを和らげるためのもの」としてだけの意味を有するものにと止めるのではなく、たまたま近くに居合わせた擬似ペット同士が互いに自発的に交信・交流を行い、ひいては、それが「きっかけ」「仲立ち」となって、擬似ペットのユーザー同士の交流に結びつくような技術を開発することが必要である、と考えた。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題に着目してなされたものであって、擬似ペット同士が互いに自発的に交信・交流を行うことを可能にすること、及び、さらにこれによって、擬似ペットのユーザー同士のコミュニケーションの「仲立ち・きっかけ」となることができるようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(用語説明)
本発明においては、擬似ペットから他の擬似ペットに向けて、前記挨拶信号と共に、前記挨拶信号とは別に、又は、前記挨拶信号に続けて、「近所で行われるイベントに関するお知らせ情報、新しく発売される商品・サービスの広告情報、地方自治体からの市政に関するお知らせなどの広報情報、政治的・社会的・宗教的意見の広報情報などのような、所定の広告・広報情報」を送信するようにしてもよい。すなわち、本発明の擬似ペットは、近傍のエリアにある他の擬似ペットに受信されるように、「近所で行われるイベントに関するお知らせ情報や新しく発売される商品の広告情報などのような、所定の広告情報」を無線で送信するための広告情報送信手段と、近傍のエリアにある他の擬似ペットから無線で送信された前記広告情報を受信するための広告情報受信手段と、を備えるようにしてもよい。これにより、本発明によれば、擬似ペットを媒介として、口コミのように、近くに居る人たち、近くを通る人たちの間で、次々と情報を伝えて行く「口コミ伝言板」「口コミ伝言ネットワーク」を形成できるようになる。
本発明は、擬似ペット同士の間で「挨拶信号」などの情報の交信・交換をすることにより、擬似ペット同士で交信して、「気が合いそう」と判断したら、自己紹介や「友達になりませんか」などの意味を示す信号を電波・音声・光などで送信し、擬似ペット同士がお互いに「会話」をする、というコンセプトの発明である。
本発明の「擬似ペット」は、携帯できるものなら、その大きさは問わず、人間の掌に乗せられる「手のひらサイズ」のものでもよいし、通常の犬や猫などと同じような大きさのものでもよい。
本発明の「擬似ペット」は、「たまごっち」「デジモン」などのような「仮想的な電子ペット(単なる電子的なキャラクターを示すデジタルデータに過ぎず、肉体として機能する部分を備えていないもの)」ではなく、「犬の形体、猫の形体、縫いぐるみ、などのような、ユーザーが実際に自分の手で触れることができる『肉体として機能する部分』(現実のペットの肉体に相当するもの、例えば、ペット型ロボットの胴体など)を備えたもの」である。本発明による擬似ペットは、一種の「ペット型ロボット」と呼んでも良い。
また、本発明において、「挨拶信号」は、例えば、擬似ペットの鳴き声を示す音声信号でもよいし、「こんにちは」「ハロー」「もしもし」などの意味を象徴する単純な信号(音声信号又は画像信号などの信号)でもよいし、「私の名前は・・・です。友達になりませんか」というメッセージを示すものでもよい。また、この「挨拶信号」の内容は、後述の「擬似ペットに関するデータ(擬似ペットデータ)そのもの」でもよいし、後述の「擬似ペットを連れているユーザーに関するデータ(ユーザー・データ)そのもの」でもよい。なお、本明細書では、返信する「挨拶信号」を「返答信号」と呼ぶこともある。また本発明において、「自発的に交信する」とは、「ユーザーの特別な操作を必要することなく(例えば、他の擬似ペットの存在を検知することにより自動的に)交信する」、という意味である。また本発明において、「挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段」は、光、音(音響・音声)、振動などにより、ユーザーに対して注意を喚起するか又は所定の情報を知らせるものである。また本発明において、「擬似ペットの存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための告知手段」は、光、音などにより、周囲の人に対して注意を喚起するか又は所定の情報を知らせるものである。
また本発明において、後述の「挨拶信号送信手段」は、挨拶信号を、赤外線、電波などの電磁波や超音波などの様々な媒体を使用して、送信するものである(以下の「挨拶返信手段」「擬似ペットデータ送信手段」などにおいてもほぼ同様である)。また本発明において、後述の告知手段は、例えば、光、音響(擬似ペットの鳴き声など)、又は音声(擬似ペットの「こんちには」などの音声)により、擬似ペットの存在又はその居場所を、その周囲の人に、その五感により知らせるものであり、発光体やスピーカなどで構成される。これにより、擬似ペットは、前記挨拶信号の送信により、周囲の人が持っている他の擬似ペットに向けて、自己の存在を示す信号及び情報を送る(このとき、前述のように、この挨拶信号を送信された擬似ペットの側では、光や音や振動でそのことを、そのユーザーに知らせることができる)が、これと共に、自己の携帯型装置においても、光や音などを発して、自己の存在やその居場所を周囲の人に自己の存在又はその居場所を知らせることができる。つまり、これにより、周囲の人に、自己の存在をより確実に知らせることができるようになる。
【0008】
本発明は本願の特許請求の範囲に記載のとおりのものである。
【0009】
本明細書に含まれる発明は次のようなものである。
1.ユーザーが外出時に一緒に連れ出すことができ(ユーザーと一緒に居るように自分で移動することができ、又は、ユーザーが自分と一緒に居るように移動させることができ)、肉体として機能する部分を備えた擬似ペットであって、近傍のエリアにある他の擬似ペットに受信されるように、「擬似ペットによる所定の挨拶信号」を、無線で送信するための挨拶信号送信手段と、近傍のエリアにある他の擬似ペットから無線で送信された「擬似ペットによる所定の挨拶信号」を受信するための挨拶信号受信手段と、を含むことを特徴とする擬似ペット。
2.上記1において、前記挨拶信号送信手段は、常時又は予め定められた所定時間毎に、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする擬似ペット。
3.上記1において、さらに、近傍のエリアに他人が居ることを検知する検知手段を含み、前記挨拶信号送信手段は、この検知手段からの出力に基づいて、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする擬似ペット。
4.上記1,2又は3において、さらに、前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段、を含むことを特徴とする擬似ペット。
5.上記1から4までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、その挨拶信号を送信した他の擬似ペットに対して、自発的に、所定の挨拶信号を無線で返信する挨拶信号返信手段、を含むことを特徴とする擬似ペット。
6.上記1から5までのいずれかにおいて、さらに、擬似ペットに関するデータを記録する擬似ペットデータ記録手段と、この擬似ペットデータ記録手段に記録された擬似ペットデータを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に(例えば、これに続けて)、送信する擬似ペットデータ送信手段と、他の擬似ペットから無線で送信された擬似ペットデータを受信する擬似ペットデータ受信手段と、この擬似ペットデータ受信手段により受信された擬似ペットデータを出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
7.上記1から6までのいずれかにおいて、さらに、擬似ペットのユーザーに関するデータを記録するユーザー・データ記録手段と、このユーザー・データ記録手段に記録されたユーザー・データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に(例えば、これに続けて)、送信するユーザー・データ送信手段と、他の擬似ペットから無線で送信されたユーザー・データを受信するユーザー・データ受信手段と、このユーザー・データ受信手段により受信されたユーザー・データを出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
8.上記1から7までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を送信するとき、送信する側の擬似ペットの存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶送信告知手段、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を受信したとき、受信した側の擬似ペットの存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶受信告知手段、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
10.上記5から9までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を返信するとき、返信する側の擬似ペットの存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶返信告知手段、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
11.上記1から10までのいずれかにおいて、さらに、他の擬似ペットから送信された擬似ペットデータ又はユーザー・データと、自己の擬似ペットデータ又はユーザー・データと、を互いに比較して、双方の擬似ペット又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、この類似度又は相性度判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、を含むことを特徴とする擬似ペット。
12.上記1から10までのいずれかにおいて、さらに、他の擬似ペットから送信された擬似ペットデータ又はユーザー・データと、自己の擬似ペットデータ又はユーザー・データと、を互いに比較して、双方の擬似ペット又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、この類似度又は相性度判定手段により類似度又は相性度が比較的高いと判定されたときは、ユーザーにそのことを知らせるために所定の告知をする判定告知手段と、を含むことを特徴とする擬似ペット。
13.上記1から12までのいずれかにおいて、さらに、互いに近傍のエリア内にある2つの擬似ペットの間で、擬似ペット同士が無線で交信して、相互間の鳴き声のやり取り、会話のやり取り、ゲームのやり取り、戦闘のやり取り、お見合いのやり取りなどをユーザーの特別な操作によらずに自発的に行うための自発的交信手段、を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【発明の効果】
【0010】
(1)以上のように、本発明によれば、擬似ペットのユーザー同士が、擬似ペットを「仲立ち・きっかけ」として、会話をしたり知り合いになることができるようになる。つまり、我々の日常生活では、「犬などの現実のペット」を「きっかけ」「仲立ち」として初対面の者同士が会話をしたり知り合いになることが多い。前記ではペットについて述べたが、ペットを介して知り合いになるのと同様に、子供同士を通じて知り合いになることも多い(幼児を公園に連れていって遊ばせている母親が、その公園にいた同じ年頃の幼児をもつ母親と知り合いになることは多い)。
(2)このように、本発明によれば、前記のペットや子供による「仲立ち」「きっかけ」の機能を、擬似ペットが担うことができる。よって、本発明によれば、擬似ペットに、新しい機能・役割(ユーザー同士のコミュニケーションの「仲立ち」をするという機能・役割)を付与し、擬似ペットを「コミュニケーションのためのツール」として活用することができる。よって、本発明によれば、擬似ペットの付加価値をより高め、擬似ペットを「現実のペットなどの生物」(現実のペットなどの生物は、そのペットなどの所有者同士が、ペットなどを「きっかけ」に知り合いになったり会話をしたりして、ペットなどがユーザー同士の生身のコミュニケーションに寄与することが多い)により近づけること、ができる。
(3)また、本発明の擬似ペットは、近傍のエリアにある他の擬似ペットに受信されるように、「近所で行われるイベントに関するお知らせ情報、新しく発売される商品・サービスの広告情報、地方自治体からの市政に関するお知らせなどの広報情報、政治的・社会的・宗教的意見の広告情報などのような、所定の広告・広報情報」を無線で送信するための広告情報送信手段と、近傍のエリアにある他の擬似ペットから無線で送信された前記広告情報を受信するための広告情報受信手段と、を備えるようにしてもよく、これにより、本発明によれば、擬似ペットを媒介として、口コミのように、近くに居る人たち、近くを通る人たちの間で、次々と広告・広報情報を伝えて行く「口コミ伝言板」「口コミ伝言ネットワーク」を形成できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施形態による、例えば「犬型」の擬似ペット21(「犬の形」をした「肉体として機能する部分」とコンピュータとを備えている)の電気的構成を示すブロック図である。図1において、1はユーザーが擬似ペットの機器を操作するための入力部で、小型のタッチパネル、マイク(音声入力用)、CCDカメラなどで構成される。また、2は自己の擬似ペットデータやユーザー・データを音(音声・音響)や文字などで出力させたり、他の擬似ペットから送信された擬似ペットデータやユーザー・データを音や文字などで出力するための出力部で、小型の液晶ディスプレイ、スピーカなどで構成される。また、この出力部2には、ユーザーに所定の注意を喚起したり所定の事実を光の点滅、振動、音で報知するための発光ダイオード、バイブレータ、ブザーなども備えられている。つまり、前記出力部2は、擬似ペットデータを音声出力又は表示させたり擬似ペットの鳴き声や音声を音で出力させるだけでなく、外部の他の擬似ペットからの挨拶信号を受信したときに、そのことを光の点滅や音響(ブザー音)や振動などによりユーザー(飼い主)に報知するための報知手段としての機能をも有している。また、3は制御部で、所定のプログラムにしたがってデータを処理するマイクロコンピュータなどで構成される。
【0013】
また、4は例えばフラッシュメモリなどの「書き換え可能な記録装置」である。この記録装置4には、図1の擬似ペット育成部5、挨拶・返答信号記録部6、擬似ペットデータ記録部7、飼い主(ユーザー)データ記録部8、他の擬似ペットデータ記録部9、及び、他の飼い主データ記録部10の記録領域が、設定されている。前記擬似ペット育成部5は、擬似ペット(自己)をユーザーが育成するためのデータ及びコンピュータプログラム(人口知能技術、ファジー技術、ニューラル・ネットワーク技術などを応用したプログラム)が記録されている(なお、プログラムについては、マイクロコンピュータに内蔵されたROM(リードオンリーメモリ)に記録してもよい)。また、挨拶・返答信号記録部6には、近傍のエリア(「挨拶信号」や「返答信号」などの信号を搬送するための赤外線や微弱電波が届く範囲のエリア)に居る他の擬似ペットに対して送信する所定の挨拶信号又は返答信号(この「返答信号」も「挨拶信号」の一種である)、を記録している。また、擬似ペットデータ記録部7は、擬似ペット(自己)に関するデータ、例えば、擬似ペット(自己)の名前、画像、鳴き声(音データ)、プロフィール(擬似ペットの種類、年齢、好きな食べ物、好きな遊びなど)、他の擬似ペットへのメッセージ(文字又は音声メッセージで、例えば、「一緒に遊ぼう」「戦おう」「力だめししよう」「ジャンケンしよう」など)を、記録している。また、飼い主(ユーザー)データ記録部8は、擬似ペット(自己)の飼い主(ユーザー)に関するデータ、例えば、飼い主の名前、画像(顔写真、似顔絵のイラスト、アニメーション)、プロフィール(年齢、趣味など)、他の飼い主へのメッセージ(文字又は音声メッセージ)、を記録している。また、他の擬似ペットデータ記録部9は、他の擬似ペットから送信されて来た他の擬似ペットに関するデータ、を記録している。また、他の飼い主データ記録部10は、他の擬似ペットから送信されて来た他の擬似ペットの飼い主(ユーザー)に関するデータ、が記録されている。
【0014】
また、11は、前記の記録装置4に記録されている挨拶信号、返答信号、擬似ペットデータ、又は飼い主データを外部に無線で送信すると共に、外部から無線で送信された挨拶信号、返答信号、擬似ペットデータ、又は飼い主データを受信するための信号・データ送受信部である。この送受信部11は、例えば、赤外線や微弱電波などの電磁波を利用して、挨拶信号や擬似ペットデータを、数mから数十mの範囲内まで届くように、無線で送受信する。なお、挨拶信号などの簡単な信号は超音波や光などで送信するようにしてもよい。また、前記送受信部11は、制御部3に制御されて、常時又は所定時間毎に(数秒毎に、数十秒毎に、又は、数分間毎に)自動的に、挨拶信号を外部に無線送信している。なお、本発明では、ユーザーの設定により、前記送受信部11は、ユーザーが指示したときのみ、又は、後述の人体又は擬似ペット検出部31により近傍の他のユーザー又は他の擬似ペットの存在を検知したときのみ、前記挨拶信号を送信するように設定することもできる。
【0015】
次に本実施形態の動作を説明する。図1において、22は他の擬似ペットを示し、その内部構造は前記の擬似ペット(自己)21と同様である。また、図2は、これらの2つの擬似ペット21,22の間でやり取りされる信号及びデータの通信手順(プロトコル)の一例を説明するための図である。
これらの2つの擬似ペット21,22からは、前述のように、常時、又は、所定時間毎に(数秒毎に、数十秒毎に、又は、数分間毎に)、信号・データ送受信部11から挨拶信号が自動的に外部に送信されている(なお、前述のように、ユーザーの設定により、擬似ペット21,22の送受信部11からの挨拶信号の送信は、ユーザーが指示したとき、又は、後述の人体又は擬似ペット検出部31により近傍の他のユーザー又は他の擬似ペットの存在を検知したときのみ、に限るようにしてもよい)。よって、それらの2つの擬似ペット21,22が、たまたま偶然に、例えば数mから数十mの範囲内(前記送受信部11からの挨拶信号が届く範囲内)の近傍に近づいたときは、例えば、後述の人体検知部31又は他の擬似ペット検知部30からの出力に基づいて(又は、ユーザーが、所定時間毎に自動的に挨拶信号を送信するように制御部3を設定しておいてもよい)、いずれか一方から(この例では、自己の擬似ペット21から)の挨拶信号(自己の擬似ペット21の存在を示す信号であり、例えば「こんちには」という挨拶を示す信号)が発せられてそれを他方(この例では、他の擬似ペット22)が受信する(図2のステップ1)。
【0016】
なお、この場合、前記擬似ペット21では、挨拶信号を送信するとき、制御部3が出力部2を制御して、自らの擬似ペットの存在を周囲の人に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などを出力する。また、前記の他の擬似ペット22でも、挨拶信号を受信したとき、擬似ペット22内の制御部3が出力部2を制御して、自ら(他の擬似ペット22)の存在を周囲の人に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などによる所定の告知を出力する。また、前記擬似ペット22内の制御部3では、この告知の出力と共に、ユーザーに「他の擬似ペットの擬似ペットからの挨拶信号を受信したこと」を知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声、振動などによる所定の報知を行う。
【0017】
挨拶信号を受信した擬似ペット22では、信号・データ送受信部11が「挨拶信号を受信したこと」を示す信号を制御部3に送り、制御部3は、この信号を受けて、自動的に、返答信号(こちらにも擬似ペットが存在しており、そちらからの挨拶信号を受け取ったということを示す信号で、例えば「こんにちは」という意味を持つ信号)を送信し、擬似ペット21の側がこれを受信する(ステップ2)。すなわち、前記擬似ペット22においても、擬似ペット21と同様の構成になっているので、他の擬似ペット21からの挨拶信号を受信したとき、制御部3は、自動的に、返答信号(挨拶信号)を返信するようにしている。なお、この返答信号を送信する場合、前記擬似ペット21では、制御部3が出力部2を制御して、自らの擬似ペットの存在を周囲の人に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などを出力する。以上により、たまたま道で通りすがるなどの偶然に近づいた擬似ペット同士の通常の「挨拶」が行われる。
【0018】
次に、擬似ペット21は、「こちらから擬似ペットデータを送ってもよいかどうかを問い合わせるための問い合わせ信号」を送信し、擬似ペット22がこれを受信する(図2のステップ3)。擬似ペット22では、「送っても良いとの返事信号」を送信し、擬似ペット21がこの返事信号を受信する(ステップ4)。すると、擬似ペット21が自分の擬似ペットデータ(自分の名前、画像、鳴き声、プロフィールなど)を送信し、擬似ペット22がこのデータを受信する(ステップ5)。次に、擬似ペット22が「こちらからも擬似ペットデータを送ってよいかを問い合わせるための問い合わせ信号」を送信し、擬似ペット21が受信する(ステップ6)。擬似ペット21から「送っても良いとの返事信号」を送信し、擬似ペット22がこの返事信号を受信する(ステップ7)。すると、擬似ペット22から、自分の擬似ペットデータを送信し、擬似ペット21がこのデータを受信する(ステップ8)。さらに、ユーザーが希望する場合は、擬似ペット21から「飼い主データを送っても良いかどうかを問い合わせるための問い合わせ信号」を送信し、擬似ペット22が受信する(ステップ9)。すると、擬似ペット22から「送っても良いとの返事信号」が送信され、擬似ペット21に受信される(ステップ10)。これを受けて、擬似ペット21から「飼い主データ」が送信され、擬似ペット22に受信される(ステップ11)。その後、擬似ペット22から「こちらからも飼い主データを送っても良いかの問い合わせ信号」を送信し、擬似ペット21で受信される(ステップ12)。擬似ペット21から「送っても良いとの信号」が送信され、擬似ペット22がこれを受信する(ステップ13)。すると、擬似ペット22から「飼い主データ」が送信され、擬似ペット21に受信される(ステップ14)
【0019】
なお、本実施形態では、図2のステップ1の挨拶信号の送信時に擬似ペット21から所定の音や光などにより擬似ペットの存在及び居場所を示す情報又は信号を出力するようにしてもよい。この情報又は信号は、例えば、擬似ペットの「鳴き声」を示す音響や「こんにちは」という意味の音声又は信号などである。これにより、前記擬似ペット21の周囲の人は、擬似ペット21の存在及びその居場所を知ることができる(実際のペットの犬などを連れて散歩しているときは、ペット犬の鳴き声などにより、その存在やその居場所が周囲の人に分かるが、本実施形態では、それと同じことが擬似ペット21についても実現できるようになっている)。また、図2のステップS1において、前記の擬似ペット21からの挨拶信号を他の擬似ペット22が受信する時に、この他の擬似ペット22からも、前述のような鳴き声などの情報又は信号を出力するようにしてもよい。この場合も、そこに擬似ペット22が居ることを、周囲の人に知らせることができる。また、図2のステップ2において、擬似ペット22が返答信号を返信したきも、同様に、この擬似ペット22から、前述のような鳴き声などの情報又は信号を出力するようにしてもよい。この場合は、こちらの擬似ペット22が返答信号を相手に返信したことを、周囲の人に、特に前記の挨拶信号を送信してくれた相手である擬似ペット21のユーザーに、知らせることができる。
【0020】
以上のようにして外部から受信された「擬似ペットデータ」や「飼い主データ」は、擬似ペット21,22の送受信部11から制御部3を経て記録装置4の中の「他の擬似ペットデータ記録部9」や「他の飼い主データ記録部10」に記録される。また、ユーザーは、このようにして記録された「他の擬似ペットデータ」や「他の飼い主データ」を制御部3により出力部2に出力することにより、擬似ペットや飼い主の画像やプロフィールをディスプレイに表示して視認したり(この場合のディスプレーは、擬似ペット21の出力部2に備えられている小型の液晶ディスプレーでもよいし、ユーザーが携帯している携帯情報端末(PDA)のディスプレーでもよい。後者の場合は、前記の「他の擬似ペットデータ」や「他の飼い主データ」が、送受信部11から無線送信され、それを前記携帯情報端末(PDA)で受信して表示する)、他の擬似ペットの鳴き声や他の飼い主のメッセージをスピーカから音声で聞くことができる(この場合のスピーカは、擬似ペット21の出力部2に備えられている小型のスピーカでもよいし、ユーザーが携帯している携帯情報端末(PDA)に備えられたスピーカでもよい。後者の場合は、前記の「他の擬似ペットデータ」や「他の飼い主データ」が、送受信部11から無線送信され、それを前記携帯情報端末(PDA)で受信して出力する)。
【0021】
なお、図2のステップ1で擬似ペット21からの挨拶信号を受信した擬似ペット22のユーザーは、その擬似ペット22の出力部に備えられた発光ダイオード、スピーカ、又はバイブレータが作動することにより(制御部は、前記挨拶信号を受信したときは、前記発光ダイオード、スピーカ、バイブレータなどを作動させてユーザーに報知させるように予めプログラムされている)、外部の他の擬似ペットからの挨拶信号が来たことを、擬似ペット22から、知らさせる(報知される)。また、図2のステップ2で擬似ペット22からの返答信号を受信した擬似ペット21のユーザーは、前記制御部3の制御により(制御部3は、外部からの返答信号を受信したときは、擬似ペット21の出力部2の発光ダイオード、スピーカ、バイブレータなどを作動させてユーザーに報知するようにプログラムされている)、そのことを、擬似ペット21から、報知される。
【0022】
以上のように、本実施形態では、それぞれが擬似ペットを連れているユーザーが互いに近傍のエリア内に入るように近づくことにより、各擬似ペットが互いに接近したときは、お互いの擬似ペットが自発的・自動的に(つまり、ユーザーの特別な操作を待つことなく)「挨拶(挨拶信号)」を交わし合い(交信し合い)、さらに、お互いの擬似ペットに関するデータやお互いの飼い主(ユーザー)に関するデータを無線で交信し合うので、各ユーザーは、擬似ペットを介して、つまり擬似ペットを「仲立ち」「きっかけ」として、立ち止まって、初対面や再会のための挨拶や会話をして、友人(親しい友人)となることができる。一般に、犬などの「現実のペット」を散歩させているとき、ペット同士が「吠え合ったり」「じゃれたり、けんかをしたり」することが「きっかけ」となって、それらのペットを連れている人同士が会話をしたり、ペットを散歩させている人同士がペットを「仲立ち」として知り合いになるということは我々が日常でしはしば経験することであるが、本実施形態によれば、これと同じことを、「擬似ペット」についても生じさせることが可能になる。よって、本実施形態によれば、擬似ペット又は擬似ペットの新しい機能・役割(ユーザー同士のコミュニケーションの「仲立ち」をするという機能・役割)を付与して、その付加価値をより高めることができる。
【0023】
なお、以上の実施形態では、犬型の擬似ペットについて説明したが、本発明は、猫型、縫いぐるみ状、「ドラエもん」や「ピカチュー」などの漫画キャラクターの形状を有するもの、などでもよい。
【0024】
次に、本実施形態の上記で説明したもの以外の他の構成及び動作を図1に基づいて説明する。
本実施形態では、擬似ペット21の中に、赤外線センサーや熱センサーなどで構成される人体検出部31が備えられている。この人体検出部31は、近傍のエリアに他人が居るとき、その存在を検知するものである。本実施形態では、前述のように、所定時間毎に挨拶信号を送信するようにしてもよいが、そうではなく、この人体検知部31が近傍のエリアに他人の存在を(人体からの熱などにより)検知したときだけ、この人体検知部31からの出力を受けた制御部3の制御により、挨拶信号を送信するようにしてもよい。このようにすれば、周りに他人が全く居ないのに所定時間毎に挨拶信号を送信するという無駄が防止できる。また、本実施形態では、擬似ペット21の中に、赤外線受信部や電波受信部などで構成される「他の擬似ペット検出部」30が備えられている。この他の擬似ペット検出部30は、近傍のエリアに他の擬似ペットが居るとき、その存在を検知するものである。本実施形態では、前述のように、所定時間毎に挨拶信号を送信するようにしてもよいが、そうではなく、この他の擬似ペット検知部30が近傍のエリアに他の擬似ペットからの「他の擬似ペットの存在を示す信号(赤外線信号や電波など)」を検知したときだけ、この他の擬似ペット検知部30からの出力を受けた制御部3の制御により、他の擬似ペットに向けて挨拶信号を送信するようにしてもよい。このようにすれば、周りに他の擬似ペットが全く居ないのにいちいち所定時間毎に挨拶信号を送信するという無駄(消費電力の無駄など)が防止できる。
【0025】
また、本実施形態では、擬似ペット21の中に、他の擬似ペット22との間で、双方の擬似ペットの(擬似ペットデータの)類似度及び相性度を判定すると共に、又はこれに代えて、双方のユーザーの(ユーザーデータの)類似度及び相性度を判定するための「類似度及び相性度判定部」32が備えられている。この判定部32は、例えば、前記擬似ペット21と前記擬似ペット22との間で、双方の擬似ペットデータを交換し合い、双方の擬似ペットデータの中の誕生日・誕生日の星座・血液型・好きな食べ物・好きな遊びなどのデータを相互に比較し合って(一種の「お見合い」)、双方の擬似ペット同士の「類似度及び相性度」を判定する。この判定結果の内容は、制御部3を介して出力部2に送ることにより、文字又は図形などで表示させたり、音声や音響で出力させることができる。また、本実施形態では、この判定の結果、双方の擬似ペット同士の(擬似ペットデータ同士の)「類似度又は相性度」があるレベルより高いと判定されたときは、前記制御部3が、前記出力部2を制御して、そのことを、所定の音響・音声・光・振動などにより、ユーザー又はその周囲の人に知らせる。また、同様に、本実施形態では、前記擬似ペット21と前記擬似ペット22との間で、双方のユーザー・データを交換し合ったとき、前記判定部32により、双方のユーザーの誕生日・年齢・性別・生まれた日の星座・血液型・趣味・好きな食べ物・好きな遊びなどのデータを相互に比較し合って(一種の「お見合い」)、双方のユーザー同士の(ユーザーデータ同士の)「類似度及び相性度」を判定する。この判定結果の内容(例えば、「相性は良い」「相性は悪い」など)は、制御部3を介して出力部2に送り、文字又は図形などで表示させたり、音声や音響で出力させることができる。また、本実施形態では、この判定の結果、双方のユーザー同士の(ユーザーデータ同士の)「類似度又は相性度」が所定レベルよりも高いときは、前記制御部3が、前記出力部2を制御して、そのことを、所定の音響・音声・光・振動などにより、ユーザー又はその周囲の人に知らせる。
【0026】
また、本実施形態では、擬似ペット21の中に、他の擬似ペット22との間で、擬似ペット同士が、ユーザーの特別な操作を介する(必要とする)こと無く自発的に、情報を交換して(交信して)、所定の会話、ゲーム、バトル(戦闘)、お見合いなどを行うための「自発的交信部」33が備えられている。この「自発的交信部」33には、例えば複数の会話のやり取りのパターンや複数のゲームのやり取りのパターンや複数の戦闘のやり取りのパターンのデータなどを記録した記録領域と、これらの各パターンを実行するためのプログラム、及び、これらの複数のパターンの中から適当なものを選択するためのプログラムを記録した領域とが、存在している。
【0027】
前記の自発的交信部33は、近傍のエリア内にある2つの擬似ペット21,22同士で相互に挨拶信号を交換し合った後に、例えば、一方が「会話しよう」というデータを送信して他方がそれに応じる返答信号を返信すると、予め決められた複数の「会話パターン」の中の一つを選択して、その選択されたパターンの「プロトコル」にしたがって、擬似ペット同士が、「自己の名前、誕生日、好きな食べ物などを話したりする会話」をやり取りするものである。なお、この会話でやり取りされた情報(擬似ペットに関するデータを含む)に基づいて、前記「類似度及び相性度判定部」32により、双方の擬似ペットの類似度や相性度を判定するようにしてもよい(以上の一連の会話のやり取りと相性度などの判定動作は、一種の「お見合い」モードと言える)。
【0028】
なお、前記の「例えば、一方が「会話しよう」というデータを送信して他方がそれに応じる返答信号を返信すると、予め決められた複数の「会話パターン」の中の一つを選択して、その選択された一つの会話パターンの「プロトコル」にしたがって、擬似ペット同士が、自己の名前、誕生日、好きな食べ物などを話したりする会話をやり取りするものである」という動作の中の、「複数の会話パターンの中の一つを選択する」ときの動作を、次に説明する。図1に示すように、本実施形態による擬似ペット21の中には、その日の曜日や季節を判定するためのデータとなるカレンダー(暦)データを記録したカレンダー部34、その時点の時刻を計時するための計時部35、及び、そのときの場所を測定するための現在位置特定部(GPS=グローバルポジショニングシステム、又は、基地局の電波の到達圏が狭いPHS=簡易型携帯電話などを利用して現在位置を特定・推測するもの)36が備えられている。これらのカレンダー部34、計時部35、現在位置特定部36からのデータは、制御部3を介して、自発的交信部33に送られる。自発的交信部33では、その中に含まれているプログラムにより、複数の会話のやり取りのパターンの中から、前記カレンダー、時刻、現在位置などから決められる「今のその場のシチュエーション(場面・状況)」に最も適したパターンを選択する。そして、自発的交信部33は、この選択した会話パターンにしたがって、会話のやり取りを無線送信で行う。
【0029】
以上は擬似ペット同士が自発的に(勝手に)行う会話のやり取りを例に説明したが、本実施形態では、前述のような「会話のやり取り」に限られるものではなく、例えば、ゲームのやり取り、バトル(戦闘)のやり取り、お見合いのやり取り、なども、擬似ペット同士が相互に予め決められたプロトコルにしたがって、自発的に(ユーザーの操作によらずに)行うことができる。また、現在の人工知能技術を採用することにより、前記の予め決められたプロトコルにしたがうことなく融通性の高い会話やゲームなどのやり取りを擬似ペット同士が行うことも可能である。
【0030】
すなわち、本実施形態では、前記図2のプロトコルのやり取りだけでなく、擬似ペット同士が、自動的・自発的に(ユーザーの操作を前提としないで)「会話」や「おしゃべり」を続けるように制御部をプログラムしておくことが可能である。擬似ペット同士に日常の定型的な会話を行わせることは、現在の技術でも可能である(例えば、「エージェント」技術を利用することにより)。例えば、2つの擬似ペットが出会ったとき、一方から他方へ「ジャンケンの勝負しよう」という信号を発信し、他方が「良いよ」と応じたとき、次に双方から他方に向けて、グー、チョキ、パーのいずれかを示す信号を送信することにより、ジャンケンの勝負を行い、その勝敗結果を双方が共有する(すなわち、双方の擬似ペット21,22の出力部2にその勝敗結果を表示したりすること)ことは、現在の技術でも可能である。
【0031】
また、本実施形態では、例えば次のような「ゲームのやり取り」を2つの擬似ペットの間で行うことも可能である。以下の例では、例えば、「A,B,Cという3つの記号の中の任意に選択した一つを双方が出して勝敗を決め、それを3回繰り返して、1回目から3回目までのトータル(総計)で勝敗を決める」という、ABC3回戦ゲーム(仮称)を例に説明する。このABC3回戦ゲームでは、「AはBよりも強い。BはCよりも強い。CはAよりも強い」というルールが予め決められているものとする(ジャンケンと似たゲームである)。以下では、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
まず、一方の擬似ペット21に内蔵された人体検知部31が近傍のエリア内に他人の存在を検出したとき(ステップS21がYESのとき)は、挨拶信号を送信する(ステップS22)。その後、所定時間以内例えば3秒以内に他の擬似ペット22からの返答信号(挨拶信号)を受信したかどうかを判定する(ステップS23)。この判定がNOのときは、終了する。この判定がYESのときは、擬似ペット21から、「ABC3回戦ゲームしない?(しませんか?)」という信号を送信する(ステップS24)。その後、3秒以内に他の擬似ペット22から「ABC3回戦ゲームやってもいいよ」という信号が返信されて来た(その返信信号を受信した)かどうかを判定する(ステップS25)。この判定がNOならば、終了する。この判定がイエスなら、双方でこのゲームを開始する。擬似ペット21の側の動作としては、まず、A,B,Cの複数の組み合わせの中から一つのパターンを選択する(ステップS26)。この選択は、例えば、ユーザーが予め複数のパターンとその各パターンの順番を決めておいて、その順番に従って選択するようにすればよい。この例では、擬似ペット21の擬似ペットは、「1回目はA、2回目はC、3回目はB」というパターンを選択したとする。他方、他の擬似ペット22の側の擬似ペットは「1回目はB、2回目はC、3回目はAというパターン」を選択したとする。
【0033】
ゲーム開始後、双方から、1回目のものを送信する。前記擬似ペット21からは「1回目のA」を送信する(ステップS27)。次に、擬似ペット21は、他の擬似ペット22から1回目のもの(この例では「1回目のB」)を受信したかどうかを判定する(ステップS28)。この判定がNOなら終了する。この判定がYESなら、擬似ペット21の擬似ペットと擬似ペット22の擬似ペットとの間でのこのゲームの1回目の勝敗を判定する(ステップS29)。この場合は、擬似ペット21側が「A」を出して、擬似ペット22側が「B」を出しているので、「AはBより強い」という前記ルールから、擬似ペット21側の擬似ペットが勝つ(擬似ペット22側が負ける)ことになる。以下、同様にして、2回目と3回目の勝負を行いその勝敗を判定する(ステップS30からステップS35まで)。そして、3回目まで行ったら、1回目から3回目までの各勝敗のトータルを集計し、トータルの勝敗を判定し(ステップS36)、その判定結果を擬似ペット21及び擬似ペット22の出力部の小型ディスプレーに表示する(ステップS37)。
【0034】
なお、本実施形態では、擬似ペットとして、「犬形(犬型)」などの「従来からのペット」と同じ形態をした擬似ペットを示しているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、漫画キャラクターなどを擬した形態のものでもよい。とにかく、ユーザーとの間で「何らかのやり取り」ができるような擬似ペットであって、「肉体として機能する部分」を備えたものであれば、本発明における「擬似ペット」に含まれる。また、このような擬似ペットが、ユーザーと道路ですれ違う人が連れている他の擬似ペットに対して、ユーザーに代わって、「友達になりましょう」「友達募集中です」などのメッセージを、他の擬似ペットとのやり取りを介して、送信する(交信し合う)ようにしてもよい。
また、本発明においては、擬似ペットにカメラとマイクとGPS受信機(現在位置特定手段)を備えさせて、ユーザーがこの擬似ペットを連れて旅行しているとき、旅先でユーザーの目に止まった景色(ユーザーが興味深く感じた景色)をカメラによる画像データとマイクによる音データとGPS受信機による現在位置データとにより、記録するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態による擬似ペットを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による2つの擬似ペット(近傍に居合わせた2つの擬似ペット)が相互に挨拶などを交わすときの通信手順(プロトコル)を示す図である。
【図3】本発明の実施形態において、2つの擬似ペットが相互に自発的にゲームのやり取りを交信するときの動作の一例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの外出時にユーザーと一緒に移動する(又はユーザーにより移動させられる)ことができ、「肉体として機能する部分」を備えた擬似ペットであって、
近傍のエリアにある他の擬似ペットに受信されるように、「擬似ペットから他の擬似ペットに向けての所定の挨拶信号」を、無線で送信するための挨拶信号送信手段と、
近傍のエリアにある他の擬似ペットから無線で送信された「他の擬似ペットからの所定の挨拶信号」を受信するための挨拶信号受信手段と、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項2】
請求項1において、前記挨拶信号送信手段は、常時又は予め定められた所定時間毎に、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする擬似ペット。
【請求項3】
請求項1において、さらに、
近傍のエリアに他の擬似ペットが居ることを検知する検知手段を含み、
前記挨拶信号送信手段は、この検知手段からの出力に基づいて、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする擬似ペット。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、さらに、
前記挨拶信号受信手段により他の擬似ペットからの挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段、
を含むことを特徴とする擬似ペット。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号受信手段により他の擬似ペットからの挨拶信号が受信されたとき、その挨拶信号を送信した他の擬似ペットに対して、自発的に、所定の挨拶信号を無線で返信する挨拶信号返信手段、
を含むことを特徴とする擬似ペット。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかにおいて、さらに、
擬似ペット(自己)に関するデータを記録する擬似ペットデータ記録手段と、
この擬似ペットデータ記録手段に記録された擬似ペットデータを、前記挨拶信号と共に、前記挨拶信号に続けて、又は、前記挨拶信号とは別に、送信するための擬似ペットデータ送信手段と、
他の擬似ペットから無線で送信された擬似ペットデータを受信する擬似ペットデータ受信手段と、
この擬似ペットデータ受信手段により受信された他の擬似ペットの擬似ペットデータを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかにおいて、さらに、
擬似ペット(自己)のユーザーに関するデータを記録するユーザー・データ記録手段と、
このユーザー・データ記録手段に記録されたユーザー・データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号に続けて、送信するユーザー・データ送信手段と、
他の擬似ペットから無線で送信された他の擬似ペットのユーザーに関するユーザー・データを受信するユーザー・データ受信手段と、
このユーザー・データ受信手段により受信された前記ユーザー・データを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を送信するとき、送信する側の擬似ペット(自己)の存在又はその居場所を、光や音などにより、周囲の人に知らせるための挨拶送信告知手段、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を受信したとき、受信した側の擬似ペット(自己)の存在又はその居場所を、光や音などにより、周囲の人に知らせるための挨拶受信告知手段、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項10】
請求項5から9までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を返信するとき、返信する側の擬似ペット(自己)の存在又はその居場所を、光や音などにより、周囲の人に知らせるための挨拶返信告知手段、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかにおいて、さらに、
他の擬似ペットから送信された擬似ペットデータ又はユーザー・データと、自己の擬似ペットデータ又はユーザー・データと、を互いに比較して、双方の擬似ペット又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、
この類似度又は相性度判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、
を含むことを特徴とする擬似ペット。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれかにおいて、さらに、
他の擬似ペットから送信された擬似ペットデータ又はユーザー・データと、自己の擬似ペットデータ又はユーザー・データと、を互いに比較して、双方の擬似ペット又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、
この類似度又は相性度判定手段により類似度又は相性度が比較的高いと判定されたときは、ユーザーにそのことを知らせるために、光や音や文字などにより、所定の告知をする判定告知手段と、
を含むことを特徴とする擬似ペット。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれかにおいて、さらに、
互いに近傍のエリア内にある2つの擬似ペットの間で、擬似ペット同士が無線で交信して、相互間の鳴き声のやり取り、会話のやり取り、ゲームのやり取り、戦闘のやり取り、お見合いのやり取りなどをユーザーの特別な操作によらずに自発的に行うための自発的交信手段、
を備えたことを特徴とする擬似ペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−86362(P2012−86362A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254115(P2011−254115)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2008−206241(P2008−206241)の分割
【原出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(595100934)
【Fターム(参考)】