説明

ラップフィルムの収容容器

【課題】ラップフィルムを引き出す操作に注意力を要さない容器を提供する。
【解決手段】ロール状に巻かれているラップフィルムRを収容しておく容器であり、ロール状に巻かれているラップフィルムを収容する箱本体12と、ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の少なくとも一部を覆う上壁22を備えており、上壁22、前壁6、および上壁と前壁の境界のうちの1箇所に、ロール状に巻かれているラップフィルムから引き出されたラップフィルムの少なくとも左右両端部が通過するスリット24が形成されている。スリット24を通過するためにラップフィルムの引き出し位置が安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムの収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に例示するように、ロール状に巻かれているラップフィルムRを収容しておく容器が提供されており、箱本体12と蓋16を備えている。箱本体12は、背壁2と底壁4と前壁6と左側壁8と右側壁10を備えている。蓋16は、背壁2の上縁2aから伸びており、箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置と塞がない位置の間で開閉可能となっている。蓋16の前壁の下縁に沿って切断歯18が固定されている。
使用する際には、ラップフィルムの一端R1を箱本体12から引き出しておく。その一端R1をさらに引き出して使用する。
引き出したラップフィルムを切断する際には、蓋16で箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置とし、引き出したラップフィルムを切断歯18に当てて切断する。
ラップフィルムRを箱本体12から引き出す際には、蓋16で箱本体12の上側の開口を塞がない位置とする。蓋16は箱本体12から連続している紙で製造されていることが多く、蓋16に圧力を加えない限り、紙の復元力によって蓋16は箱本体12の上側の開口を塞がない姿勢をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−132406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラップフィルムは、極めて薄いことと糊成分が塗布されていることから、扱いにくい。一度重なり合うと平坦なシート状の形態に戻すことがひどく厄介である。従来の容器は、落ち着いて操作すれば、きれいに引き出してきれいに切断することができるが、あわてて操作すると、ラップフィルムに皺がよってフィルム同士が重なり合ってしまう事態が生じやすい。
【0005】
本発明は、あわてて操作しても、あるいは十分な注意力を払わないで操作しても、きれいに引き出してきれいに切断することができ、ラップフィルムが重なり合ってしまう事態が生じにくい容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロール状に巻かれているラップフィルムを収容しておく容器を提供する。この容器は、ロール状に巻かれているラップフィルムを収容する箱本体を備えており、その箱本体は、背壁と底壁と前壁と左側壁と右側壁を備えている。本発明の容器は、ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の少なくとの一部を覆う上壁を備えており、ロール状に巻かれているラップフィルムから引き出されたラップフィルムの少なくとも左右両端部が通過するスリットが形成されている。そのスリットは、上壁に形成されていてもよいし、前壁に形成されていてよいし、上壁と前壁の境界に沿って形成されていてもよい。
【0007】
上記した上壁は蓋とは相違する。蓋は開閉することから、ラップフィルムの上面を常時覆っているわけでない。ここでいう上壁は、蓋の開閉にかかわらず、ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の少なくとも一部を常時覆っている壁をいう。なお、上壁は、ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の少なくとも一部を常時覆うものであればたり、必ずしも箱本体に固定されている必要はない。上壁は、ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の全域を覆う必要はない。ロール状に巻かれているラップフィルムの左右の両端部のみを覆うものであってもよい。また、ラップの引きだし方向における上壁の長さに制約はなく、ごく細いものであってもよい。ラップフィルムの上面に沿ってロール状に巻かれているラップフィルムの軸線方向に伸びている糸ないし紐も、ラップフィルムの上面を覆っている上壁ということができる。
【0008】
スリットは、スリットを取り囲む壁が連続しているものに限られない。少なくとも引き出されたラップフィルムの左右の両端部が通過する溝状部分が形成されていればよく、スリットの中央部ではスリットを画定する壁が存在しなくてもよい。
【0009】
上壁を形成する部材は、左側壁または右側壁から伸びていてもよいし、左側壁と右側壁の間を伸びていてもよい。あるいは、箱本体を形成する部材とは別の部材で形成されていてよい。例えば、左側壁と右側壁の間に糸ないし紐を張り渡してもよい。
しかしながら、前壁と上壁が一枚のシート材を折り曲げて形成されていることが好ましい。この場合、上壁を形成するのに余分な資材が必要とされない。通常の箱本体は、前壁の外側面を形成するシート材が前壁の上縁を越えて伸びており、その延長部分を前壁の内側に折り返している。折り返した部分で、前壁の内側面を形成している。その延長部分で上壁を形成するようにすれば、シート材の使用量が増加することもない。
【0010】
上壁は、左側壁と右側壁の間を伸びていてもよい。あるいは、左側壁から伸びている左上壁と右側壁から伸びている右上壁で形成してもよい。それに代えて、上壁が左側壁に隣接する位置から右側壁に隣接する位置まで連続していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の収容容器は、ラップフィルムの一端を箱本体から引き出すためのスリットを備えており、そのスリットがラップフィルムの引き出し位置をガイドする。ラップフィルムの一端を、上方に引き出そうが、下方に引き出そうが、手前側に引き出そうが、体から離れる向きに引き出そうが、ラップフィルムの引き出し位置はスリットによって案内されて安定する。ラップフィルムを少々乱暴ないし軽率に引き出しても、ラップフィルムの引き出し位置がスリットによって安定しているために、引き出されたラップフィルに皴がよりにくく、常に皴のない状態で引き出して切断することができる。ラップフィルムの使い勝手が向上し、皴がよってラップフィルム同士が接着してしまった部分を引き剥がすといった面倒が要らなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例の収容容器の斜視図。
【図2】第2実施例の収容容器の斜視図。
【図3】第3実施例の収容容器の斜視図。
【図4】第4実施例の収容容器の斜視図。
【図5】第5実施例の収容容器の斜視図。
【図6】第6実施例の収容容器の斜視図。
【図7】第7実施例の収容容器の斜視図。
【図8】第8実施例の収容容器の斜視図。
【図9】第9実施例の収容容器の斜視図。
【図10】第10実施例の収容容器の斜視図。
【図11】従来の収容容器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(第1特長) 蓋と背壁と底壁と前壁と上壁と左側壁と右側壁が、一枚の紙を折り曲げて形成されており、前壁と上壁が連続しており、前壁と上壁の境界近傍に境界に沿って伸びるスリットが形成されており、上壁が左側壁に隣接する位置から右側壁に隣接する位置まで連続している。上壁と左側壁は直接的には連続しておらず、上壁と右側壁も直接的には連続しておらず、上壁と背壁も直接的には連続していない。
(第2特長) ラップフィルムが通過するスリットの左右両端間の距離が、ラップフィルムの幅に等しい。
(第3特長) ラップフィルムは芯の周りに巻きつけられており、芯の軸線方向の距離がラップフィルムの幅よりも長く、芯の両端部は露出している。スリットの両端部の外側を、露出している芯の軸線方向の距離に等しい幅の紙片が通過しており、その紙片が前壁と上壁を連続させている。
【実施例】
【0014】
(第1実施例)
第1実施例の容器は、図1に例示するように、箱本体12と蓋16を備えている。箱本体12は、背壁2と底壁4と前壁6と上壁22と左側壁8と右側壁10を備えている。蓋16は、背壁2の上縁2aから伸びており、箱本体12の上側の開口を塞ぐ位置と塞がない位置との間で開閉可能となっている。蓋16の前壁の下縁に沿って切断歯18が固定されている。箱本体12と蓋16は、一枚の連続した紙を折り曲げて形成されている。紙の復元力によって、蓋16に圧力を加えない限り、蓋16は箱本体12の上側の開口を塞がない姿勢をとる。
【0015】
前壁6と上壁22は一枚の連続した紙を折り曲げて形成されている。正確に言うと、ロールから引き出されたラップフィルの左右両端の外側に位置する部分22a,22bにおいてのみ前壁6と上壁22が連続しており、残存部分22a,22bの中間にはスリット24が形成されている。スリット24は、前壁6と上壁22の境界26に沿って上壁22に形成された切込みによって形成されている。
ロール状に巻かれているラップフィルムRは芯の周りに巻きつけられており、芯の軸線方向の距離がラップフィルムの幅よりも長く、芯の両端部は露出している。左側壁8と右側壁10の距離は、芯の軸線方向の距離に等しい。残存部分22a,22bの幅は、露出している芯の軸線方向の距離に等しい。その結果、スリット24の幅は、ラップフィルムRの幅に等しくなっている。
【0016】
使用する際には、ラップフィルムRの一端R1を箱本体12から引き出しておく。その際に、引き出されたラップフィルムがスリット24を通過して箱本体12から引き出されている姿勢で用いる。ラップフィルムの引きだし位置は、スリット24によって拘束され、図示の上下方向にも左右方向にもずれることがない。
ラップフィルムがスリット24を通過していると、ラップフィルムRの一端R1を上向に引き出そうが、下向きに引き出そうが、左側に向けて引き出そうが、右側に向けて引き出そうが、ラップフィルムRの引き出し位置はスリット24によって常時に安定する。少々乱暴に引きだしても、ラップフィルムの引き出し位置がスリット24によって安定しているために、引き出されたラップフィルムに皴がよりにくく、常に皴のない状態で引き出すことができ、常に皴のない状態で切断歯18によって切断することができる。
【0017】
スリット24の位置は、前壁6と上壁22の境界26に接している必要はない。図2に示すように、境界26から離れた位置の上壁22側にスリット24が形成されていてもよいし、図3に示すように、境界26の上壁22側と前壁6側に跨ってスリット24が形成されていてもよいし、図4に示すように、境界26から離れた位置の前壁6側にスリット24が形成されていてもよい。なお以下の図面では、図示の明瞭化のために蓋16の表示を省略する。
【0018】
上壁22を、箱本体12に後付けして形成してもよい。図5に示すように、上壁となる紙片22cを両側壁8,10に接着してもよいし、図6に示すように、上壁となる紙片22dを両側壁8,10に接着してもよいし、図7に示すように、上壁となる紙片22eを前壁6に接着してもよい。あるいは、図8と図9に例示するように、糸ないし紐30を上壁6の上縁6aに沿って張ることによってスリット24を形成してもよい。図8と図9では封筒を閉じるための紐を巻きつけて固定する治具31を利用しているが、糸ないし紐30を固定する治具はこれに限られない。糸ないし紐30は、ロール状に巻かれたラップフィルムを上面から押さえてロール状に巻かれたラップフィルムが箱本体12から飛び出してくるのを防止するものであり、上壁として機能する。
【0019】
上壁22は、図10に例示するように、左上壁22gと右上壁22hに分割されていてもよい。この場合、左上壁22gは左側壁8に連続し、右上壁22hは右側壁10に連続するようにしてもよい。図示の22jに例示するように、前壁6に接着する部分を設けることにより(22kは前壁6に接着した状態を示している)、左上壁22gと右上壁22hが上方に開かないようにすることがきる。これによっても、スリット24の左端部24aと右端部24bが形成される。左端部24aと右端部24bの間では上壁22がなく、スリット24が閉じられていないが、巻き戻されたラップフィルムR1の左端部がスリットの左端部24aを通過し、巻き戻されたラップフィルムR1の右端部がスリットの右端部24bを通過する限り、箱本体12内からのラップフィルの引き出し位置を安定させるというスリットの機能に着目すると、スリット24が左端部24aと右端部24bに分割されていても、左端部24aから右端部24bまで連続している仮想的スリットをラップフィルムが通過している場合と同様の現象が得られる。左端部24aと右端部24bによって実質的には一つのスリットが形成されているということができる。
【0020】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図壁に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図壁に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0021】
R:ラップフィルム
R1:ロール状に巻かれたラップフィルムから引き出された端部
2:背壁
2a:上縁
4:底壁
6:前壁
6a:上縁
8:左側壁
10:右側壁
12:箱本体
16:蓋
18:切断歯
22:上壁
24:スリット
24a:左端部
24b:右端部
26:境界
30:糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれているラップフィルムを収容しておく容器であり、
背壁と底壁と前壁と左側壁と右側壁を備えており、ロール状に巻かれているラップフィルムを収容する箱本体と、
ロール状に巻かれているラップフィルムの上面の少なくとも一部を覆う上壁を備えており、
上壁、前壁、および上壁と前壁の境界のうちの1箇所に、ロール状に巻かれているラップフィルムから引き出されたラップフィルムの少なくとも左右両端部が通過するスリットが形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前壁と上壁が一枚のシート材を折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1の容器。
【請求項3】
上壁が左側壁に隣接する位置から右側壁に隣接する位置まで連続していることを特徴とする請求項2の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−235919(P2011−235919A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107475(P2010−107475)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(510126357)
【Fターム(参考)】