説明

ラミネートフィルム、その製造方法、それを用いたラミネート処理方法、および印画物

【課題】 従来のラミネートフィルムでは表面性状を光沢と無光沢(マット)にすることは容易にできるものの、写真用印画紙に見られるような半光沢形状が実現できなかった。
【解決手段】 表面層と接着層とを有する保護層を耐熱性基材上に剥離可能に積層したラミネートフィルムにおいて、該基材の表面保護層を形成する側の表面に存在する突起のJIS B0601法で規定される基準長さ8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が30〜100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100〜400μmであり、かつ該突起に微細な突起を有し、該微細突起のJIS B0601法で規定される基準長さ0.8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が2〜6μmであることを特徴とするラミネートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保護部材(例えば、画像を形成して得た記録部材)の表面を保護層で覆うためのラミネートフィルムに関する。特に、耐熱性基材上に形成した保護層を被保護部材に熱定着した後、耐熱性基材のみを剥離して保護層を形成することのできるラミネートフィルムと、ラミネートフィルムの製造方法、及びこれを用いた印画物のラミネート処理方法、ラミネートフィルムが定着された画像を有する印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真やインクジェットの出力印画に対して耐熱性基材上に積層された樹脂層からなる保護層を熱圧着(ラミネート)し、耐熱性基材を剥離する、もしくは剥離せずそのまま完成印画を得る方法は、特開平6−91767号公報(特許文献1)や特開2000−233474号公報(特許文献2)などで開示されているように印画物の画像性や耐候性、耐磨耗性などの画像堅牢性を向上する手法としてこれまで広く用いられてきた。
【0003】
このようなラミネートフィルムは、耐熱性基材上に熱可塑性樹脂を最表層に形成されており、熱圧着により当該熱可塑性樹脂が軟化或いは溶融することにより印画物とラミネートすることが可能となる。この方式では、20μm以下の薄層表面保護層を画像面上に形成することが可能であること、また熱可塑性樹脂が画像表面上を覆うため、画像表面における光の乱反射を防ぎ画質向上(濃度向上、光沢度の均一性)効果が著しい。さらに、薄層である為に、ラミネート物を折り曲げ自由となり、ハンドリングが向上する。また、耐熱性基材自身を適当な厚さで選択でき、腰を充分に持たせた状態で熱圧着することが出来る。従って、ラミネート装置におけるフィルムの取り扱い(フィルムのセット)が容易であり、ラミネート時に皺等が入る可能性も低くなる。
【特許文献1】特開平6-91767号公報
【特許文献2】特開2000−233474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては、表面性状を光沢と無光沢(マット)にすることは容易にできるものの、写真用印画紙に見られるような半光沢形状が実現できなかった。すなわち平滑な耐熱性基材を用いれば、保護層の表面は耐熱性基材の表面に倣うので保護層表面も平滑となって光沢が実現できる。ケミカルマットや練りこみマット等の表面に均一な凹凸がある耐熱性基材を用いる場合には光が乱反射して無光沢(マット)画面となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の本発明により解決される。即ち、本発明は表面層と接着層とを有する保護層を耐熱性基材上に剥離可能に積層したラミネートフィルムにおいて、該基材の表面保護層を形成する側の表面に存在する突起のJIS B0601法で規定される基準長さ8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が30〜100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100〜400μmであり、かつ該突起に微細な突起を有し 、該微細突起のJIS B0601法で規定される基準長さ0。8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が2〜6μmであることを特徴とするラミネートフィルムおよびその製造方法である。
【0006】
また、本発明は前記ラミネートフィルムを用いたラミネート処理方法およびそれによって形成された印画物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、耐熱性基材と、該耐熱性基材上に剥離可能な保護層が設けられ、印画物の画像面上に加熱圧着によって保護層を転写するラミネートフィルムにおいて、本来の良好な画像特性、耐候性、ハンドリング性を維持したままで、光沢表面と無光沢(マット)表面に加えて半光沢表面を与えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の実施形態の説明に先立ち、本発明に関する保護層と印字物の熱圧着/転写プロセスを提供する定着メカニズムについて説明する。
【0009】
図1において、1は樹脂層を外側に巻かれたラミネートフィルム2のロールの巻出しリールでバックテンションをフィルム2に与えている。3は加熱ロール。4はフィルム2を加熱ロールに押し付ける加圧ロール。印字物Pがガイド11に挿入された後、熱ローラ3に加圧ローラが圧接するとともに熱ローラが回転開始する。印字物Pはローラ対3、4により保護層を介してラミネートフィルム2に対して接着する。また、ラミネート終端部はカッター5にて切断され、印字物と共に装置外に排出される。
【0010】
続いて本発明の実施形態を説明する。図2は本発明のラミネートフィルムの断面図である。ラミネートフィルム2の構成は、耐熱性基材2a上に表面層2b、接着層2cが順次積層されて保護層2pが形成された構成である。
【0011】
図3は本発明のラミネートフィルムの耐熱性基材に所定の凹凸を形成するためのエンボス処理機械の概念図である。図3において、31はエンボス処理前の耐熱性基材32の巻出しリールでバックテンションを耐熱性基材32に与えている。33はエンボスロールで、34はフィルム32をエンボスロールに押し付ける加圧ロールである。加熱加圧エンボス処理された耐熱性基材の形状を保持するためにエンボス処理直後に耐熱性基材を冷却ゾーン35にて冷却する。エンボス処理済の耐熱性基材は巻き取りロール36により巻き取られる。
【0012】
以上説明したラミネートフィルムは次のように形成できる。
【0013】
(耐熱性基材)
耐熱性基材としては、本発明で所定の凹凸形状を得るために加熱加圧エンボス処理を行う。該エンボス処理後に保護層形成時における温風乾燥、さらに加熱加圧条件下でラミネート剥離処理を実施するため、高い形状安定性を保持することが肝要である。そのため形状を安定して維持でき、かつインク受容層上に透明保護層が形成された段階で剥離が容易なものであればよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルからなるフィルムやシートなどを用いることができる。この加熱加圧条件でのラミネート剥離処理は通常100−120度で処理されるためそれよりも30度以上高温でエンボス処理されることが必須である。30度未満の場合はエンボス形状が熱と圧力により、なまってしまうことが確認された。しかしながらエンボス処理の温度を上げていくと、今度はエンボス処理中に耐熱性基材が溶融して穴が開いてしまうため、ポリエチレンテレフタレートは大体160度が処理温度の限界である。その厚みについては特に制限を受けるものではないが、装置内での取り扱い安さやしわの生じ難さ及び経済性を考慮して、20μm〜50μm程度が好ましい。
【0014】
本発明の耐熱性基材は先に述べた凹凸のみではぎらつきが発生して、画像品位を著しく低減する。それを防止するために微小突起(凹凸)をも保有する必要がある。そのため保護層が形成される面に微小紛体粒子を練りこむことによる粗面化処理を実施する。
【0015】
(表面層)
表面層としては、過酷な保存環境下においても光沢度の低下や、白化などの膜の変質、さらにクラックの発生などが少ない点から、分子量およびガラス点移転の高い樹脂を主成分として用いることが良い。分子量としては、重量平均分子量で5万以上、ガラス転移点としては70℃以上であることが好ましい。また、高湿度の環境下に置かれた際に樹脂が水分を吸収し膨潤することによる画質の劣化の点から、非水系の樹脂を用いることが特に好ましい形態である。
【0016】
上記の特性を踏まえた表面層用樹脂の主成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂を用いることができる。また、耐水性、耐溶剤性、耐磨耗性などを特に高めるために熱硬化性、あるいは紫外線硬化性、電子線硬化性の樹脂を用いても良い。
【0017】
また、インクジェット画像記録法による画像形成では染料を用いている場合が多く耐紫外線劣化性が十分でない。このような場合は、紫外線吸収性を有する化合物を上記の樹脂中に含有させることで耐紫外線劣化耐を向上させることができる。紫外線吸収性の化合物を樹脂中に含有させる方法としては、ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収化合物を用いるとよい。これら紫外線吸収性化合物を上記の樹脂に添加して用いる方法や、上記の樹脂成分と共重合させて用いる方法などがある。また上記の樹脂に添加して用いる場合は、高分子量タイプの紫外線吸収化合物を用いることが持続性の面から好ましい。
【0018】
表面層の形成は、溶液もしくはエマルジョンを含む塗工液を、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スロットダイコーティング法などにより塗工し、乾燥させることで形成できる。表面層の厚みは応力によりクラックが入るのを防止できる膜厚が必要である一方、これが厚すぎると印画周囲に沿った剥離の性能が阻害される。そのため、表面層の厚みは1から20μmから選択される必要がある。
【0019】
(接着層)
前記表面層に対し、熱可塑性樹脂を主成分とする接着層を形成する。接着層の材料としては常温では硬化した状態であり加熱によって軟化し流動性を持ち、記録部材に染み込むことでラミネートフィルムを記録部材へ接着する作用をなすものであればよく、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ゴム系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂などを単独またはこれらの2種以上の混合物を主成分とするエマルジョン系樹脂や有機溶剤系樹脂を選択できる。熱可塑性樹脂としては、光学的な特性に優れ透明なアクリル樹脂がもっとも適している。
【0020】
これら接着層の形成においても、表面層形成と同様にロールコーティング法、グラビアコーティング法、ロッドバーコーティング法、スロットダイコーティング法などの種々の塗工方法により行うことができる。また、塗工に際して、塗工液には必要に応じて分散剤、表面張力調整剤、消泡剤、耐ブロッキング防止剤等を添加しても良い。この接着層は印画物表面の凹凸を埋め、光散乱を抑え、画像濃度を十分に上げる為に、10μm以上の厚さであることがのぞましい。
【0021】
図4を用いて本発明にかかるラミネートフィルムの製造方法の一例を説明する。
【0022】
塗工液タンク43aには表面層2bの塗工液が入っていてパイプを通じてグラビアロール42aに導かれる。塗工液タンク43bには接着層2cの塗工液が入っていてパイプを通じてグラビアロール42bに導かれる。
【0023】
そして、エンボス処理された耐熱性基材37が巻きだしロール41から繰り出されてグラビアロール42aに導かれ表面層2bがコーティングされ 乾燥炉44で乾燥される。乾燥炉から出てきたフィルムは次にグラビアロール42bで接着層2cが同様にコーティングされ乾燥炉44で表面を乾燥し巻き取りロール45に巻き取られ、ラミネートフィルムが形成される。
【0024】
以上説明した構成のラミネートフィルムを用いて、画像面へラミネート加工を施し表面保護層を形成することができる。ここで画像形成には種々の被記録媒体および種々の記録方法を用いることができるが、本発明において被記録媒体および記録方法としては、基材上にインク受容層、特に多孔質無機粒子を主成分としたインク受容層付き被記録媒体に対してインクジェット記録法を用いて画像を形成された場合が好ましい形態である。このような被記録媒体のインク受容層の形成に用い得る多孔質無機粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、シリカアルミナ混晶、シリカマグネシウム混晶等を用いることができる。また、インク受容層を形成する際には、必要に応じて結着材を用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル等の水溶性高分子またはエマルジョンなどが利用できる。多孔質無機粒子と結着材との配合比は、例えば多孔質無機粒子100重量部に対して結着材を10〜200重量部、好ましくは25〜100重量部の範囲から選択することができる。更に、インク受容層には、分散剤、蛍光染料、pH調製剤、潤滑剤、界面活性剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。インク受容層の層厚は例えば30〜60μmの範囲から選択するのが好適である。
【0025】
一方、インクジェット記録における記録方式は、静電吸引方式、圧電素子を用いる方式、発熱素子を用いる方式等その記録方式は特に限定されない。インクジェット記録に用いるインクとしては、水性媒体に、染料や顔料等の色材を含有させたものなど、インクジェット記録方式に適用できるものであればよい。カラー記録を行う場合は、常法に従って、シアン、マゼンタ、及びイエロー、更には必要に応じてブラックを用いた減色混合によりフルカラー画像を形成することができる。
【0026】
以下実施例等により本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
まず、耐熱性基材としてRzが2μmとなる練りこみPETフィルム1(38μm厚)に、Rz(十点平均粗さ)が40μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100μmであるエンボスロール1を用いて 160℃でエンボス処理をする。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が30μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100μmであり、エンボスロールの形状より浅めに出ていた。このエンボスPETフィルムをフィルム1とする。該フィルム1に表面保護層として、例えば、ベンゾトリアゾ-ル塗アクリル樹脂との共重合体であるPUVA-15M−30T(大塚製薬製)トルエン400重量部を混合し、塗工液を作製、乾燥膜厚5μm厚となるようにメイヤーバーコーティングにより第一層を設けた。
【0028】
塗工液1:接着層としてアクリル系エマルジョン樹脂、ビニブランG(アクリル系樹脂エマルジョン日信化学工業製:分子量6万、Tg=32℃)を乾燥膜厚10μmになるようにメイヤーバーコーティングにより塗工乾燥させラミネートフィルム1を形成した。
【0029】
(実施例2)
Rz(十点平均粗さ)が70μm、Sm(凹凸の平均間隔)が200μmであるエンボスロール2を用いた以外は実施例1と全く同じ方法でラミネートフィルム2を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が60μm、Sm(凹凸の平均間隔)が200μmであった。
【0030】
(実施例3)
Rz(十点平均粗さ)が110μm、Sm(凹凸の平均間隔)が400μmであるエンボスロール3を用いた以外は実施例1と全く方法でラミネートフィルム3を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところ Rz(十点平均粗さ)が100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が400μmであった。
【0031】
(実施例4)
耐熱性基材としてRzが6μmとなる練りこみPETフィルム2(38μm厚)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法でラミネートフィルム4を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が60μm、Sm(凹凸の平均間隔)が200μmであった。
【0032】
(実施例5)
耐熱性基材としてRzが6μmとなる練りこみPETフィルム2(38μm厚)を用いた以外は実施例2と全く同じ方法でラミネートフィルム5を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところ Rz(十点平均粗さ)が60μm、Sm(凹凸の平均間隔)が200μmであった。
【0033】
(実施例6)
耐熱性基材としてRzが6μmとなる練りこみPETフィルム2(38μm厚)を用いた以外は実施例3と全く同じ方法でラミネートフィルム6を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が400μmであった。
【0034】
(比較例1)
Rz(十点平均粗さ)が160μm、Sm(凹凸の平均間隔)が500μmであるエンボスロール4を用いた以外は実施例1と全く方法でラミネートフィルム7を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が150μm、Sm(凹凸の平均間隔)が500μmであった。
【0035】
(比較例2)
耐熱性基材としてRzが6μmとなる練りこみPETフィルム2(38μm厚)を用いた以外は比較例1と全く同じ方法でラミネートフィルム8を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところ Rz(十点平均粗さ)が150μm、Sm(凹凸の平均間隔)が500μmであった。
【0036】
(比較例3)
耐熱性基材としてRzが8μmとなる練りこみPETフィルム4(38μm厚)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法でラミネートフィルム9を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が30μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100μmであった。
【0037】
(比較例4)
耐熱性基材としてRzが8μmとなる練りこみPETフィルム4(38μm厚)を用いた以外は実施例3と全く同じ方法でラミネートフィルム10を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が30μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100μmであった。
【0038】
(比較例5)
耐熱性基材としてRzが0.5μmとなる練りこみPETフィルム5(38μm厚)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法でラミネートフィルム11を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところ Rz(十点平均粗さ)が30μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100μmであった。
【0039】
(比較例6)
耐熱性基材としてRzが0.5μmとなる練りこみPETフィルム5(38μm厚)を用いた以外は実施例3と全く同じ方法でラミネートフィルム12を得た。エンボス処理後のPETフィルムを測定したところRz(十点平均粗さ)が100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が400μmであった。
【0040】
<表面性の評価>
フォト光沢紙(キヤノンGP420)に、染料用インクジェットプリンタ(キヤノン950i)にて黒ベタ(インク打ち込み量200%)を印字したものに対し、図1のラミネート装置を用いてラミネート用部材を120℃、10mm/secで熱圧着し、ラミネート印画物を得る。その後、手で耐熱性基材を剥離する。
【0041】
このラミネート済みの印画物を30人の被験者に見せて、セイコーエプソン社製ポートレートプリンティングシステム クリスタリオのプレミアムラスターフォトペーパー画像と比較して、見え方が同じかどうかを以下の判定基準で判定した。
【0042】
◎:同等と考える人が80%以上
○:同等と考える人が60%以上
△:剥れが10%より多い
結果を表1に示す。
【0043】
比較例5と比較例6はギラツキが大きく、比較例3と比較例4は光沢感が乏しくどちらも品位が劣っていた。比較例1と比較例2は目が粗い印象で品位が劣っていた。
【0044】
【表1】

<耐光性の評価>
アトラスフェードメータ(キセノンアーク)を用い100時間暴露後の残存濃度を測定した。全ての実施例においてシアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ブラックの全てのインク色で残存濃度が70%以上保持されており、耐熱性基材がエンボス形状で凹凸があっても耐光性は保持できる。
【0045】
<画像性の評価>
剥離性の評価方法と同様にラミネート印画物を得た後、黒ベタ部の光学濃度(X−Rite)を測定した。判定基準は以下のとおりである。
【0046】
○:光学濃度 2.2以上
×:光学濃度 2.2未満
結果を表2に示す。微小凹凸の大きいものは光の散乱が多く、光学濃度の条件を満たすことができなかった。実施例1−6については 条件を満足していた。
【0047】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】保護層と印字物の熱圧着/転写プロセスを提供する定着装置。
【図2】ラミネートフィルムの構成を示す断面図。
【図3】エンボス処理工程の概念図。
【図4】ラミネートフィルム製造工程の概念図。
【符号の説明】
【0049】
1 巻き出しリール
2 ラミネートフィルム
2p 保護層
2a 耐熱性基材
2b 表面層
2c 接着層
2d ビーズ
3 加熱ロール
4 加圧ロール
5 カッター
P 印字物
11 ガイド
31 巻き出しリール
32 エンボス処理前耐熱性基材
33 エンボスロール
34 加圧ゴムロール
35 冷却ゾーン
36 巻き取りロール
37 エンボス処理済み耐熱性基材
41 巻きだしロール
42a グラビアロールa
42b グラビアロールb
43a 塗工液タンクa
43b 塗工液タンクb
44 乾燥炉
45 巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と接着層とを有する保護層を耐熱性基材上に剥離可能に積層したラミネートフィルムにおいて、
該基材の表面保護層を形成する側の表面に存在する突起のJIS B0601で規定される基準長さ8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が30〜100μm、Sm(凹凸の平均間隔)が100〜400μmであり、かつ該突起に微細な突起を有し、該微細突起のJIS B0601で規定される基準長さ0。8mmにおけるRz(十点平均粗さ)が2〜6μmであることを特徴とするラミネートフィルム。
【請求項2】
前記該耐熱性基材が微細な突起を形成した後で 大きな突起をエンボスロールを用いて加熱加圧整形して形成する請求項1のラミネートフィルム。
【請求項3】
前記微細突起を持つ耐熱性基材が練りこみマットあるいはケミカルマットであることを特徴とする請求項2のラミネートフィルム。
【請求項4】
前記接着層を構成する接着性樹脂材料が、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる高分子物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラミネートフィルム。
【請求項5】
前記接着層を構成する接着性樹脂材料は、紫外線吸収剤が混合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラミネートフィルム。
【請求項6】
前記接着層を構成する接着性樹脂材料が、紫外線吸収基を分子鎖中に有する樹脂材料を含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラミネートフィルム。
【請求項7】
前記表面層を構成する樹脂材料が、紫外線吸収剤が混合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラミネートフィルム。
【請求項8】
前記表面層を構成する樹脂材料が、紫外線吸収基を分子鎖中に有する高分子物質が含有されてなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラミネートフィルム。
【請求項9】
耐熱性基材上に表面層と接着層とが順に積層しているラミネートフィルムの製造方法において、接着性樹脂材料ビーズとを含有する塗工液を、コーティング法によって塗工して接着層を形成する工程を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のラミネートフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のラミネートフィルムを使用し、記録部材に保護層を加熱により定着するラミネート方法において、その加熱するための手段が熱ローラあるいはサーマルヘッドであることを特徴とする記録部材のラミネート処理方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のラミネートフィルムによって記録部材の表面がラミネート加工されていることを特徴とする印画物。
【請求項12】
前記記録部材が、インクジェット記録方法によって画像が形成されているものである請求項11に記載の印画物。
【請求項13】
前記記録部材が、基体とインク受容層からなるものである請求項12に記載の印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−159675(P2006−159675A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355386(P2004−355386)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】