説明

ランナ装置

【課題】ランナ本体に取付けられた吊軸と戸板に取付けられた連結部材との係止のロック力を高める。
【解決手段】レールRを走行するランナ本体2に取付けられた吊軸3と、戸板Dに取付けられた連結部材4とを備えている。連結部材4を吊軸3の径方向,軸方向の2方向へ移動させることで吊軸3,連結部材4を着脱させる。吊軸3は、相対的に径の大きな大径部31と、相対的に径の小さな小径部33とが設けられている。連結部材4は、吊軸3の軸方向への移動で吊軸3の大径部31に嵌合着脱される嵌合部41と、吊軸3の径方向への移動で吊軸3の小径部33の通過を許容する連通部42とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折戸,引戸等の戸板の上部を吊持ちして折戸,引戸等の開閉を案内する上吊式のランナ装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、上吊式のランナ装置では、天井,鴨居等に配設されたレールを走行するランナ本体(走行部材)に吊軸を取付けるとともに戸板に連結部材を取付け、吊軸,連結部材を着脱可能にして、先にレールにセットされたランナ本体(吊軸)に対して戸板(取付部材)を後からセットすることができるようにしたものが提供されている。このセット作業では、重い戸板を支えて実施しなければならないため、吊軸,連結部材の着脱をワンタッチで行うことができるように構成することが要望されている。
【0003】
従来、吊軸,連結部材の着脱をワンタッチで行うことができるように構成したランナ装置としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2005−68855号公報
【特許文献2】特開2005−68856号公報 特許文献1,2には、連結部材を吊軸の径方向,軸方向の2方向に移動させ連結部材,吊軸をワンタッチで着脱できるようにし、戸板の吊持ち高さに余裕のない場合に好適なセットとなるランナ装置が記載されている。
【0004】
特許文献1,2に係るランナ装置は、連結部材の吊軸の径方向への移動により、この連結部材及び吊軸を係止させ、連結部材の吊軸の軸方向への移動で連結部材,吊軸の係止をロックする。連結部材,吊軸の係止のロックは、吊軸の軸部を弾性片で挟込み、吊軸の下端部に形成されたフランジ部をバネで弾圧される係止爪で係止することによってなされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に係るランナ装置では、吊軸,連結部材の係止が弾性によってロックされているのみであるため、ロック力が弱く吊軸,連結部材の係止が不測に離脱することがあるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、ランナ本体に取付けられた吊軸と戸板に取付けられた連結部材との係止のロック力を高めたランナ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係るランナ装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1では、レールを走行するランナ本体に取付けられた吊軸と、戸板に取付けられた連結部材とを備え、連結部材を吊軸の径方向,軸方向の2方向へ移動させることで吊軸,連結部材を着脱させるランナ装置において、吊軸は相対的に径の大きな大径部と相対的に径の小さな小径部とが設けられ、連結部材は吊軸の軸方向への移動で吊軸の大径部に嵌合着脱される嵌合部と吊軸の径方向への移動で吊軸の小径部の通過を許容する連通部とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この手段では、連結部材,吊軸の係止の際に吊軸の大径部と連結部材の嵌合部とが嵌合によって機械的に結合され、少なくとも吊軸の径方向における連結部材,吊軸の係止のロック力が強化される。
【0010】
また、請求項2では、請求項1のランナ装置において、吊軸は上部に大径部が設けられ下部に小径部が設けられ小径部の下端部寄りに小径部の径よりも径の大きなフランジ部が設けられ、連結部材は弾性を有して吊軸の軸心に対して対向して2片が配置され下方へ向けて幅狭に形成され吊軸のフランジ部に係止される係止片が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、吊軸のフランジ部と連結部材の係止片との係止によって、少なくとも吊軸の軸方向における連結部材,吊軸の係止のロック力が強化される。
【0012】
また、請求項3では、請求項1または2のランナ装置において、吊軸は下端部に突起が設けられ、連結部材は吊軸の突起に嵌合する受座が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この手段では、吊軸の突起と連結部材の受座との嵌合が吊軸の大径部と連結部材の嵌合部との嵌合による吊軸の径方向における連結部材,吊軸を係止する際のロック力の強化を助勢する。
【0014】
また、請求項4では、請求項2または3のランナ装置において、連結部材は係止片の下方に上下方向へスライド可能に対面した山形のロック解除体が取付けられていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、ロック解除体を上方にスライドさせることで、連結部材の係止片を拡開させ吊軸のフランジ部との係止を解除することができる。
【0016】
また、請求項5では、請求項4のランナ装置において、連結部材の係止片は吊軸のフランジ部との係止部分から吊軸の径方向へ延びた長尺状に形成され、ロック解除体は連結部材の係止片に当接する山形の当接面が連結部材の係止片に対応した長尺状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この手段によると、ロック解除体の当接面が広い面積で連結部材の係止片に当接して拡開させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るランナ装置は、連結部材,吊軸の係止の際に吊軸の大径部と連結部材の嵌合部とが嵌合によって機械的に結合され、少なくとも吊軸の径方向における連結部材,吊軸の係止のロック力が強化されるため、ランナ本体に取付けられた吊軸と戸板に取付けられた連結部材との係止のロック力が高くなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るランナ装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
この形態では、図1,図2に示すように、コ字形の両端部が内側に屈曲されて2面の走行面Raが形成され開口部Rbを下方に向けて天井,鴨居等に直線状に配設されたレールRを走行するものを示してある。
【0021】
この形態は、走行輪1,ランナ本体2,吊軸3,連結部材4,ロック解除体5の各部で構成されている。
【0022】
走行輪1は、ランナ本体2に固定された車軸の両端部にベアリング(図示せず)を介して車輪が回転可能に支持されている。
【0023】
ランナ本体2は、レールRの長さ方向に細長く形成されてレールRの内部に収容され、間隔(前後方向に)を介して2基の走行輪1が配置された2軸4輪からなる走行輪1の安定した転動構造でレールRの内部を円滑に走行する。
【0024】
吊軸3は、円柱形のシャフトを基本形として上部から大径部31,テーパ部32,小径部33,フランジ部34,テーパ部35,突起36が設けられている。大径部31は、戸板Dの吊持ち高さを調整する上下調整機構(図示せず)を介してランナ本体2に支持されている。テーパ部32は、大径部31に連続して大径部31の径を下方へ向けて小さくする環状の傾斜面を形成している。小径部33は、テーパ部32に連続して大径部31の径よりも径が小さく大径部21の軸長よりも軸長が長く形成されている。フランジ部34は、小径部34の下端部に設けられ小径部34の径よりも径が大きく形成されている。テーパ部35は、フランジ部34に連続してフランジ部34の径を下方へ向けて小さくする環状の傾斜面を形成している。突起36は、テーパ部35に連続した円柱体36aの下端部に円錐体36bが形成されている。
【0025】
連結部材4は、戸板Dにネジ等で取付固定されるカップ形に形成されて、嵌合部41,連通部42,拡開部43,窓部44,係止片45,受座46,ロック解除体取付溝47が設けられている。嵌合部41は、連結部材4のほぼ中心部の奥側の上半部に吊軸3の大径部31の径とほぼ同一の径と吊軸3の小径部33の軸長よりも短い軸長とを有した円筒形に形成されている。嵌合部41の軸線は、上下方向に設定されている。連通部42は、嵌合部41の径よりも狭い幅で吊軸3の小径部33の径よりの広い幅の縦溝に形成され、奥側で嵌合部41に連通し前側で外部に連通している。拡開部43は、連通部42を外部へ向けて広げたテーパ面に形成されている。窓部44は、連結部材4の下半部に嵌合部41,連通部42,拡開部43と連通して嵌合部41の軸線と直交する軸線をもった円筒形に形成されている。係止片45は、窓部44の上方側の壁面からから斜め下方に向けて幅狭になるように嵌合部41,連通部42,拡開部43を介して相対して突出された弾性片に形成されている。この係止片45は、嵌合部41の下方から拡開部43の下方にまで至る長尺状に形成されている。受座46は、嵌合部41の軸線の延長線上の窓部44の底壁に吊軸3の突起36の円柱体36aの径とほぼ同一の径の円筒形に形成されている。ロック解除体取付溝47は、窓部44の前側の側方の壁面に上下方向に刻設されている。
【0026】
ロック解除体5は、連結部材4のロック解除体取付溝47にスライド可能に組付けられる山形に形成されて、当接面51,スライド用突起52が設けられている。当接面51は、連結部材4の連通部42,拡開部43の中心線の直下を頂として両側が下方に傾斜する山形の2面で形成されている。この当接面51は、連結部材4の係止片45に対応して長尺状に形成されている。スライド用突起52は、連結部材4のロック解除体取付溝47にスライド可能に係止する上下方向に延びた方形の突起に形成されている。
【0027】
この形態の吊軸3,連結部材4を連結するには、特許文献1,2に係るランナ装置と同様に、連結部材4を吊軸3の径方向に移動させた後吊軸3の軸方向へ移動させることになる(図1,図2参照)。
【0028】
連結部材4を吊軸3の径方向に移動させる際には、図1(A),図2(A),図3に示すように、連結部材4の連通部42を吊軸3の小径部33に対峙させる。このとき、連結部材4の連通部42と吊軸3の小径部33との対峙にずれがあっても、連結部材4を移動させれば、連結部材4の拡開部43に案内されて連結部材4の連通部42に吊軸3の小径部33が導入される。連結部材4の移動は、図1(B),図2(B),図3に示すように、吊軸3の小径部33が連結部材4の嵌合部41に至るまで継続される。
【0029】
連結部材4を吊軸3の軸方向に移動させる際には、図1(C),図2(C)に示すように、連結部材4を押上げることになる。このとき、図4に示すように、吊軸3のフランジ部34がテーパ部35に沿って連結部材4の係止片45を傷付けないように弾性に抗して徐々に拡開させ、図5に示すように、吊軸3のフランジ部34に連結部材4の係止片45を係止させることになる。この結果、吊軸3の軸方向の離脱が阻止される。なお、連結部材4の係止片45が吊軸3のフランジ部34の軸心に対して180度の角度を介して2片が配置されているため、吊軸3の軸方向の離脱が強固に阻止される。また、このとき、吊軸3の大径部31が連結部材4の嵌合7部に嵌合し、吊軸3の突起36が連結部材4の受座46に嵌合して、2箇所の機械的な結合で吊軸3の径方向の離脱が強固に阻止される。従って、吊軸3,連結部材4の係止のロック力が高くなる。なお、吊軸3の突起36と連結部材4の受座46との嵌合では、吊軸3の突起36の円錐体36bが吊軸3と結部材4の受座46との軸心のずれを案内補正して、円滑,確実な嵌合を行わせる。
【0030】
この形態の吊軸3,連結部材4を連結を解除するには、連結の際とは逆に、連結部材4を吊軸3の軸方向に移動させた後吊軸3の径方向へ移動させることになる。
【0031】
連結部材4を吊軸3の軸方向に移動させる際には、図6に示すように、ロック解除体5を上方に押上げること、連結部材4の係止片45を拡開させて、軸3のフランジ部34と連結部材4の係止片45との係止を解除することができる。このとき、連結部材4の係止片45とロック解除体5の当接面51とが長尺状に形成されて広い面積で当接することになるため、連結部材4の係止片45の拡開を円滑,確実に行うことができる。
【0032】
以上、図示した形態の外に、吊軸3のフランジ部34の径を連結部材4の径よりも大きくすると、図1(B),図2(B),図3の状態で吊軸3のフランジ部34を連結部材4の窓部44の上部に係止させる仮止めを実現することができる。
【0033】
さらに、吊軸3のフランジ部34の径を連結部材4の径よりも小さいかまたは同一にすると、戸板の吊持ち高さに余裕のない場合に、連結部材4を吊軸3の軸方向へ移動させるのみで着脱することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るランナ装置を実施するための最良の形態の縦断面図であり、(A)〜(C)の順に連結工程が示されている。
【図2】図1の要部の斜視図であり、(A)が図1(A)に対応し、(B)が図1(B)に対応し、(C)が図1(C)に対応している。
【図3】図1(A),(B)の正面図である。
【図4】図1(A),(B)から図1(C)に至る途中の正面図である。
【図5】図1(C)の一部を切断した正面図である。
【図6】図5におけるロック解除の操作状態図である。
【図7】図2(C)の要部の一部切断した抽出図である。
【符号の説明】
【0035】
1 走行輪
2 ランナ本体
3 吊軸
31 大径部
33 小径部
34 フランジ部
36 突起
4 連結部材
41 嵌合部
42 連通部
45 係止片
46 受座
5 ロック解除体
D 戸板
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを走行するランナ本体に取付けられた吊軸と、戸板に取付けられた連結部材とを備え、連結部材を吊軸の径方向,軸方向の2方向へ移動させることで吊軸,連結部材を着脱させるランナ装置において、吊軸は相対的に径の大きな大径部と相対的に径の小さな小径部とが設けられ、連結部材は吊軸の軸方向への移動で吊軸の大径部に嵌合着脱される嵌合部と吊軸の径方向への移動で吊軸の小径部の通過を許容する連通部とが設けられていることを特徴とするランナ装置。
【請求項2】
請求項1のランナ装置において、吊軸は上部に大径部が設けられ下部に小径部が設けられ小径部の下端部寄りに小径部の径よりも径の大きなフランジ部が設けられ、連結部材は弾性を有して吊軸の軸心に対して対向して2片が配置され下方へ向けて幅狭に形成され吊軸のフランジ部に係止される係止片が設けられていることを特徴とするランナ装置。
【請求項3】
請求項1または2のランナ装置において、吊軸は下端部に突起が設けられ、連結部材は吊軸の突起に嵌合する受座が設けられていることを特徴とするランナ装置。
【請求項4】
請求項2または3のランナ装置において、連結部材は係止片の下方に上下方向へスライド可能に対面した山形のロック解除体が取付けられていることを特徴とするランナ装置。
【請求項5】
請求項4のランナ装置において、連結部材の係止片は吊軸のフランジ部との係止部分から吊軸の径方向へ延びた長尺状に形成され、ロック解除体は連結部材の係止片に当接する山形の当接面が連結部材の係止片に対応した長尺状に形成されていることを特徴とするランナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−2466(P2007−2466A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182136(P2005−182136)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【出願人】(000119449)磯川産業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】