説明

リアルタイム通話装置

【課題】より簡単な制御により無用にバッファ量を大きくすることなくバッファ量を制御するリアルタイム通話装置を提供する。
【解決手段】通話器のマイクからのアナログ音声信号をデジタル音声データに変換し通信回線を介して送信しまた通信回線を介して受信したデジタル音声データをアナログ音声信号に変換した後に通話器のスピーカーに入力して音を発生させる通信器3が、通信回線5からのデジタル音声データを一時的に蓄積するデータバッファ回路20、通話の開始時にはバッファ初期値、データバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時には残存バッファ量が零になる度にバッファ初期値にバッファ増加量を順次加算した増加バッファ値をそれぞれデータバッファ回路に設定して初期化を行いデータバッファ回路のバッファ量の制御を行うバッファ制御部22を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムに通話を行うリアルタイム通話システムのためのリアルタイム通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術に関する装置として、イーサネット(登録商標)等の非同期通信網に接続されリアルタイムに音声を再生するリアルタイム音声再生装置であって、非同期通信網とのインターフェースを司るデジタルインターフェース部と、デジタルインターフェース部で受信されたデジタル音声データを一時的に蓄積する受信バッファと、受信バッファに蓄積されたデジタル音声データの量を監視し制御するバッファ蓄積量制御部と、バッファ蓄積量制御部により受信バッファから読み出されたデジタル音声データをアナログ信号に変換するD/A変換部と、会話の品質を確保するための制御目標値を決定する制御目標値決定部と、非同期通信網の状態や受信バッファの状態により再生する音声が消失することにより発生する実音声欠落率を測定する音声欠落率測定部と、アナログの電話機や公衆回線とのインターフェースを司るアナログインターフェース部とを有し、バッファ蓄積量制御部が、実音声欠落率を会話成立の最大の音声欠落率以内で許容する構成を備えたものがある。
【0003】
そして会話の品質を確保するための制御目標値を決定する制御目標値決定部では、予め決定されている、会話として成立する最大の遅延時間(会話成立の最大の遅延時間)と、会話として成立する最大の音声欠落率(会話成立の最大の音声欠落率)と、音声欠落率測定部から送られてきた実音声欠落率とから、所定の通話可能領域内のどこかに収まるように制御目標値を決定し、その制御目標値に収束させるために、バッファ蓄積量制御部によりバッファ蓄積量を変化させ、制御目標値となるようにフィードバック制御を行い、これにより、音声の欠落率(実音声欠落率)を会話成立の最大の音声欠落率以内で許容することにより、音声遅延を会話成立の最大の遅延時間以内に収まるように制御し、全体の会話品質を確保すること可能にしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−223247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来の装置においては、会話として成立する最大の遅延時間(会話成立の最大の遅延時間)と、会話として成立する最大の音声欠落率(会話成立の最大の音声欠落率)と、実音声欠落率とを考慮し、所定の通話可能領域内のどこかに収まるように制御目標値を決定し、その制御目標値に収束させるために、バッファ蓄積量制御部によりバッファ蓄積量を変化させ、制御目標値となるようにフィードバック制御を行って音声の欠落率(実音声欠落率)を会話成立の最大の音声欠落率以内で許容することにより、音声遅延を会話成立の最大の遅延時間以内に収まるように制御しており、常に複雑な処理を行う必要があるという課題があった。
【0006】
また、装置の演算処理のみによる制御により会話品質を確保しており、例えば再生する音声データ量が極端に多い場合には、演算処理のみによる制御では、通話を内容が理解可能な程度に確保できない場合がある等の課題があった。
【0007】
本発明は、より簡単な制御により無用にバッファ量を大きくすることなくバッファ量を制御し、さらにはバッファ量の異常を通話者に知らせて会話の仕方を考慮することを促すようにしたリアルタイム通話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、通話のためのマイク及びスピーカーを設けた通話器、及び上記マイクからのアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して通信回線を介して送信すると共に、上記通信回線を介して送られてきたデジタル音声データを受信してアナログ音声信号に変換した後に上記スピーカーに入力して音を発生させる通信器と、を備えリアルタイムに音声の通信を行うリアルタイム通話装置であって、上記通信器が、通信回線からのデジタル音声データを一時的に蓄積するデータバッファ回路と、通話の開始時にデータバッファ回路に設定されるバッファ初期値、及びデータバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生する度に上記バッファ初期値に加算するバッファ増加量を格納したメモリと、通話の開始時には上記バッファ初期値、データバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時には残存バッファ量が零になる度に上記バッファ初期値に上記バッファ増加量を順次加算した増加バッファ値をそれぞれデータバッファ回路に設定して初期化を行うことによりデータバッファ回路のバッファ量の制御を行うバッファ制御部と、を有することを特徴とするリアルタイム通話装置にある。
【0009】
また、通話のためのマイク及びスピーカーを設けた通話器、及び上記マイクからのアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して通信回線を介して送信すると共に、上記通信回線を介して送られてきたデジタル音声データを受信してアナログ音声信号に変換した後に上記スピーカーに入力して音を発生させる通信器と、を備えリアルタイムに音声の通信を行うリアルタイム通話装置であって、上記通信器が、通信回線からのデジタル音声データを一時的に蓄積するデータバッファ回路と、通話の開始時及びデータバッファ回路の残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時にデータバッファ回路に設定されるバッファ初期値、データバッファ回路での残存バッファ量の下限を示す残存バッファ量閾値、重要通話のための上記バッファ初期値より大きいバッファ重要通話値を格納したメモリと、通話の開始時及びデータバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時に上記バッファ初期値をデータバッファ回路に設定して初期化を行い、データバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時に重要通話信号が入力されていれば上記バッファ重要通話値をデータバッファ回路に設定して初期化を行い、データバッファ回路の残存バッファ量と上記メモリに格納された残存バッファ量閾値とを比較し、データバッファ回路の残存バッファ量が残存バッファ量閾値を下回った時にバッファ状態警報信号を発生するバッファ制御部と、を有し、上記通話器が、上記バッファ制御部からのバッファ状態警報信号に従って警報表示を行うバッファ状態警報表示器と、操作者の操作に従って上記バッファ制御部に重要通話信号を発生する重要通話スイッチと、を有することを特徴とするリアルタイム通話装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、より簡単な制御により無用にバッファ量を大きくすることなくバッファ量を制御でき、さらにはバッファ量の異常を通話者に知らせて会話の仕方を考慮することを促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の説明では、例えばエレベータで乗客がかご内に缶詰になった場合に、かご内とエレベータ監視センター等のかご外部との間で通話を行うエレベータ用のリアルタイム通話システムで適用される場合について説明するが、この発明はこれに限定されるものではなく、リアルタイム通話システムのためのリアルタイム通話装置に汎用的に適用可能である。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す。図1において、エレベータ用のリアルタイム通話システムは、エレベータ側リアルタイム通話装置100と外部側又はセンター側リアルタイム通話装置200からなる。外部側又はセンター側リアルタイム通話装置200がこの発明によるリアルタイム通話装置であるが、エレベータ側リアルタイム通話装置100もこの発明によるリアルタイム通話装置で構成することが可能である。
【0013】
エレベータ側リアルタイム通話装置(以下エレベータ側通話装置)100は、エレベータのかご内に設けられて乗客である通話者が通話を行うかご内通話器1と一般にはエレベータの制御盤(図示省略)等と一緒に設けられたエレベータ側通信器2からなる。外部側又はセンター側リアルタイム通話装置(以下センター側通話装置)200は、エレベータ側通信器2と通信回線5を介して通信可能に接続された、エレベータ監視センターに設けられたセンター側通信器3とセンター側のエレベータの監視者である通話者が通話を行うセンター側通話器4からなる。通信回線5は、専用回線、一般公衆電話回線、PHS回線、インターネット回線等を含む、有線、無線、又はこれらを組み合わせた通信回線網であってもよい。
【0014】
かご内通話器1は、かご内マイク6とかご内スピーカー7を備える。エレベータ側通信器2は、かご内マイク6に接続されたA/D変換回路8、A/D変換回路8に接続されたデータ送信回路9、通信回線5に接続されたデータ受信回路10、データ受信回路10に接続されたデータバッファ回路11、データバッファ回路11及びかご内スピーカー7に接続されたD/A変換回路12、データバッファ回路11に接続されたバッファ制御部13、バッファ制御部13に接続されたバッファ初期値14aを格納したメモリ14を備える。
【0015】
センター側通話器4は、マイク15とスピーカー16を備える。センター側通信器3は、マイク15に接続されたA/D変換回路17、A/D変換回路17及び通信回線5に接続されたデータ送信回路18、通信回線5に接続されたデータ受信回路19、データ受信回路19に接続されたデータバッファ回路20、データバッファ回路20及びスピーカー16に接続されたD/A変換回路21、データバッファ回路20に接続されたバッファ制御部22、バッファ制御部22に接続されたバッファ初期値23a及びバッファ増加量23bを格納したメモリ23を備える。
【0016】
なお、バッファ制御部13、22はメモリに格納されたデータを読み取って動作するマイコン等から構成される。
【0017】
図2はこの種のリアルタイム通話システムにおける音声通信処理の基本的な流れを示すもので、かご内マイク6からセンター側通話器4のスピーカー16への通話の場合を示す。かご内マイク6に入った音声は、アナログ音声信号となり、A/D変換回路8に入力される。A/D変換回路8では、一定時間T毎に、アナログ音声信号(音声1)はデジタル化され、デジタル音声データ(データ1)に変換される。デジタル化されたデジタル音声データ(データ1)は、データ送信回路9より通信回線5に送信される。通信回線5では通信路の状況により遅延が発生し、デジタル音声データ(データ1)は遅延してデータ受信回路19に受信される。受信されたデジタル音声データ(データ1)は、データ受信回路19よりデータバッファ回路20に送られる。
【0018】
通信が開始される度に、バッファ制御部22は、データバッファ回路20を初期化し、メモリ23に格納されているバッファ初期値(Td)23aを初期値としてデータバッファ回路20にバッファ量Tdを設定する。データバッファ回路20は、設定されたバッファ量Td分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。
【0019】
デジタル音声データの遅延にはばらつきがあり、データ1の受信完了からデータ2の受信完了までの時間が「T+T1」となり、次のデータ2の受信完了からデータ3の受信完了までの時間が「T+T2」となる。データバッファ回路20からはバッファ量Tdがバッファリングされるので、データバッファ回路20ではデータ1の受信完了からバッファ量Td後にデータ1の送信が開始され、次のデータ2はデータ1の送信開始から一定時間T後に送信開始され、一定時間T毎にデータバッファ回路20からD/A変換回路21に送信され、D/A変換回路21でアナログ音声信号に変換され、スピーカー16から音声として出力される。
【0020】
ここで、通信回線5においてデータ通信に大きな遅延があり、データ4が遅延し、データバッファ回路20が送信すべき時間になっても、データ4が受信完了していないと、データバッファ回路20は、一定時間T毎にデータ4をD/A変換回路21に送信できない(バッファ量不足)ので、D/A変換回路21はアナログ音声信号をスピーカー16に出力できないため、音声が途切れてしまうことになる。
【0021】
上記は、遅延がバッファ量Tdを越えた場合、「T+T1」+「T+T2」+「T+T3」>T+T+T+Tdの場合に発生する。
【0022】
上記のようにデータバッファ回路20において遅延がバッファ量Tdを越えた場合には、再度、バッファ制御部22は、データバッファ回路20を初期化し、バッファ初期値23aを初期値としてデータバッファ回路20にバッファ量Tdを設定する。
上記の動作は、通話が終了するまで続けられる。
上記の動作は、かご内マイク6の音声をセンター側のスピーカー16に送る場合の説明であるが、センター側のマイク15の音声をかご内スピーカー7に送る場合も同様である。
【0023】
遅延時間が不安定な通信回線5を用いる場合には、バッファ量Tdを大きくして音声が途切れないようにする必要があり、バッファ量Tdが大きいために、データバッファ回路20での遅延が大きくなり、会話がし難くなる。また、逆にバッファ量Tdを小さくすると、音声の遅延は少なくなるが、バッファ量不足がおき易くなり、音声が途切れやすくなる。
【0024】
そこでこの発明では、図1に示すように、メモリ23にバッファ増加量23bを格納した。
【0025】
図3はこの実施の形態によるセンター側通話装置200のセンター側通信器3のバッファ制御部22の動作フローチャートであり、以下、動作フローチャートをもとにかご内マイク6からの音声をセンター側のスピーカー16に送る場合のバッファ制御部22の動作を説明する。かご内マイク6からの通話が開始され、これをセンター側のスピーカー16へ送るための通信が開始されると、データバッファ回路20はデータ受信回路19からデジタル音声データを受け、バッファ制御部22はデータバッファ回路20がデジタル音声データを受けたことにより通話の開始を検出する(ステップS1)。
【0026】
バッファ制御部22は通話の開始を検出すると、データバッファ回路20を初期化し、バッファ初期値(Td)23aを初期値としてデータバッファ回路20にバッファ量Tdを設定する(ステップS2)。データバッファ回路20は、設定されたバッファ量Td分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。
【0027】
図2に示す残存バッファ量tは、データバッファ回路20でデータが受信完了してからデータバッファ回路20からデータが送信開始されるまでの時間を表す。この残存バッファ量tがなくなる、すなわち零になるとバッファ量不足となり音声途切が発生する。
【0028】
そして通話中(ステップS3)に、バッファ制御部22がデータバッファ回路20でバッファ量不足が発生したことを検出すると(ステップS4)、バッファ制御部22は、データバッファ回路20を初期化し、現在のバッファ量Tdに対してバッファ増加量(Tp)23bを増加した量を新たなバッファ量Td+Tp(増加バッファ値)とする(ステップS5)。これによりデータバッファ回路20は、新たに設定されたバッファ量Td+Tp分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。そしてさらにバッファ量不足が起きると、バッファ増加量Tpが新たに追加され(Td+Tp+Tp+Tp・・・(増加バッファ値))、バッファ量が増加される(ステップS3〜S5)。
上記は、通話が終了するまで続けられる。
【0029】
以上の動作により、通信回線5の遅延によりデータバッファ回路20にバッファ量不足が発生し、音声が一度途切れても、その後はバッファ量が増えるので、バッファ量不足がおき難くなる。また、無用にバッファ量を大きくして、音声が遅延することがない。
【0030】
実施の形態2.
図4はこの発明の別の実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す。図1に示した上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。メモリ23にはデータバッファ回路20のバッファ量の上限値を示すバッファ量閾値23cがさらに格納され、またセンター側通話器4にはバッファ状態警報表示器24が設けられている。
【0031】
また図5にはこの実施の形態によるセンター側通話装置200のセンター側通信器3のバッファ制御部22の動作フローチャートを示す。以下、動作フローチャートをもとにかご内マイク6からの音声をセンター側のスピーカー16に送る場合の動作を説明する。かご内マイク6からの通話が開始され、これをセンター側のスピーカー16へ送るための通信が開始されると、データバッファ回路20はデータ受信回路19からデジタル音声データを受け、バッファ制御部22はデータバッファ回路20がデジタル音声データを受けたことにより通話の開始を検出する(ステップS1)。
【0032】
バッファ制御部22は通話の開始を検出すると、データバッファ回路20を初期化し、バッファ初期値(Td)23aを初期値としてデータバッファ回路20にバッファ量Tdを設定する(ステップS2)。データバッファ回路20は、設定されたバッファ量Td分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。
【0033】
通話中は(ステップS3)、バッファ制御部22はデータバッファ回路20に設定したバッファ量Tdを予めメモリ23に設定、格納されたバッファ量閾値(Tth)23cと比較し、閾値を上回った(超えた)場合には(ステップS6)、センター側通話器4のバッファ状態警報表示器24にバッファ状態警報信号を送って、バッファ状態警報表示器24にデータバッファ回路20のバッファ量Tdがバッファ量閾値(Tth)23cを超えたことの警報表示をさせる(ステップS7)。
【0034】
図2に示す残存バッファ量tは、データバッファ回路20でデータが受信完了してからデータバッファ回路20からデータが送信開始されるまでの時間を表す。この残存バッファ量tがなくなる、すなわち零になるとバッファ量不足となり音声途切が発生する。
【0035】
そして通話中に、バッファ制御部22がデータバッファ回路20でバッファ量不足が発生したことを検出すると(ステップS4)、バッファ制御部22は、データバッファ回路20を初期化し、現在のバッファ量Tdに対してバッファ増加量(Tp)23bを増加した量を新たなバッファ量Td+Tpとする(ステップS5)。これによりデータバッファ回路20は、新たに設定されたバッファ量Td+Tp分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。そしてさらにバッファ量不足が起きると、バッファ増加量Tpが新たに追加され(Td+Tp+Tp+Tp・・・)、バッファ量が増加される(ステップS3〜S5)。
上記は、通話が終了するまで続けられる。
【0036】
このように、センター側通信器3のデータバッファ回路20でバッファ量不足が発生する度に、バッファ量を一定量増加して設定するようにし、このデータバッファ回路20に設定されたバッファ量(Td+Tp+Tp+Tp・・・)が予め定められたバッファ量閾値Tthを上回ると、センター側通話器4に設けられたバッファ状態警報表示器24にバッファ量がバッファ量閾値Tthを上回ったことを表示することで、通話者であるセンター側のエレベータの監視者がバッファ量が増加ており、バッファ量の増加により音声が遅延していることを意識することができるので、音声の遅延の大小に従った会話を行うことができる。
【0037】
例えば、バッファ量(Td+Tp・・・)がバッファ量閾値(Tth)23c以下であり、バッファ状態警報表示器24に警報表示がされていない場合には、センター側の通話者は通常の会話を行うが、バッファ量(Td+Tp・・・)がバッファ量閾値Tthを上回っており、バッファ状態警報表示器24に警報表示が出ている場合には、通話者はセンター側からかご内へ会話を質問形式で行い、音声の遅延があっても会話が成り立つようにすることができる。
【0038】
実施の形態3.
図6はこの発明のさらに別の実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。センター側通話器4には、監視者である通話者が操作する重要通話スイッチ25が設けられ、またメモリ23には、バッファ初期値(Td)23a、データバッファ回路20での残存バッファ量の下限値を示す残存バッファ量閾値(Trth)23d、及び後述するバッファ重要通話値(Tinp)23eが格納されている。
【0039】
また図7にはこの実施の形態によるセンター側通話装置200のセンター側通信器3のバッファ制御部22の動作フローチャートを示す。以下、動作フローチャートをもとにかご内マイク6からの音声をセンター側のスピーカー16に送る場合の動作を説明する。かご内マイク6からの通話が開始され、これをセンター側のスピーカー16へ送るための通信が開始されると、データバッファ回路20はデータ受信回路19からデジタル音声データを受け、バッファ制御部22はデータバッファ回路20がデジタル音声データを受けたことにより通話の開始を検出する(ステップS1)。
【0040】
バッファ制御部22は通話の開始を検出すると、データバッファ回路20を初期化し、バッファ初期値(Td)23aを初期値としてデータバッファ回路20にバッファ量Tdを設定する(ステップS2)。データバッファ回路20は、設定されたバッファ量Td分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。
【0041】
通話中は(ステップS3)、バッファ制御部22はデータバッファ回路20の残存バッファ量tと予めメモリ23に設定、格納された残存バッファ量閾値(Trth)23dとを比較し、閾値を下回った場合には(ステップS8)、センター側通話器4のバッファ状態警報表示器24にバッファ状態警報信号を送って、バッファ状態警報表示器24にデータバッファ回路20の残存バッファ量tが残存バッファ量閾値Trth閾値を下回ったことの警報表示をさせる(ステップS9)。
【0042】
図2に示す残存バッファ量tは、データバッファ回路20でデータが受信完了してからデータバッファ回路20からデータが送信開始されるまでの時間を表す。この残存バッファ量tがなくなる、すなわち零になるとバッファ量不足となり音声途切が発生する。
【0043】
そして通話中に、バッファ制御部22がデータバッファ回路20でバッファ量不足が発生したことを検出すると(ステップS4)と、バッファ制御部22は、データバッファ回路20を初期化し、通話者である操作者によってセンター側通話器4の重要通話スイッチ25が押され、重要通話スイッチ25からバッファ制御部22に重要通話信号が入力されている場合には(ステップS10)、メモリ23内のバッファ重要通話値(Tinp)23eを選択し、その値をバッファ量としてデータバッファ回路20に設定する(ステップS11)。
【0044】
一方ステップS10で、センター側通話器4の重要通話スイッチ25が押されていない場合には、重要通話信号が入力されないため、バッファ制御部22はメモリ23内のバッファ初期値(Td)23aを選択し、その値をバッファ量としてデータバッファ回路20に設定する(ステップS12)。データバッファ回路20は、新たに設定されたバッファ重要通話値Tinp又はバッファ初期値Td分のデジタル音声データをバッファリングし、一定時間T毎にデジタル音声データ(データ1)をD/A変換回路21に出力する。なお、ステップS13に示すように、バッファ制御部22はデータバッファ回路20のバッファ量を示すバッファ量信号をバッファ状態警報表示器24に常に送って表示させるようにしてもよい。
上記は、通話が終了するまで続けられる。
【0045】
このように、データバッファ回路20の残存バッファ量tが残存バッファ量閾値(Trth)23dを下回った場合には、センター側通話器4に設けられたバッファ状態警報表示器24に表示することで、センター側のエレベータの通話者が残存バッファ量の不足を認識することができ、残存バッファ量が不足した場合の通話途切れを意識することができる。
【0046】
例えば、残存バッファ量tが残存バッファ量閾値(Trth)23dを下回っておらず、バッファ状態警報表示器24が警報表示を行っていない場合には、センター側の通話者は通常の会話を行う。
【0047】
また、残存バッファ量tが残存バッファ量閾値(Trth)23dを下回っていて、バッファ状態警報表示器24に警報表示がされている場合に、センター側の通話者がかご内から重要な事項を聞きたい場合には、センター側通話器4の重要通話スイッチ25を押すことにより、バッファ量不足が発生した後に、データバッファ回路20に通常設定されるバッファ初期値(Td)23aより大きいバッファ重要通話値(Tinp)23eをバッファ量として設定することができる。
【0048】
また、センター側通話器4にデータバッファ回路20の残存バッファ量tが不足していることが表示され、センター側の通話者は、残存バッファ量tの不足を認識することができ、重要な会話の場合には、設定するバッファ量をバッファ重要通話値Tinpに大きく設定することができる。
【0049】
例えば、残存バッファ量が大きく、通信回線5の遅延が安定している場合で、かご内とセンター側とで互いの通話のやり取りが必要であるような場合には、バッファ量は初期値Tdのままとし、音声の遅延をできるだけ小さくする。また、残存バッファ量tが少なく、通信回線5の遅延が不安定な場合で、かご内から重要な事項を聞きたい場合には、バッファ量を値の大きいバッファ重要通話値Tinpにすることで、一旦、バッファ量不足になった後は音声が途切れ難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す図である。
【図2】この種のリアルタイム通話システムにおける音声通信処理の基本的な流れを説明するための図である。
【図3】図1のセンター側通話装置におけるセンター側通信器のバッファ制御部の動作フローチャートである。
【図4】この発明の別の実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す図である。
【図5】図4のセンター側通話装置におけるセンター側通信器のバッファ制御部の動作フローチャートである。
【図6】この発明のさらに別の実施の形態によるリアルタイム通話装置を使用したエレベータ用のリアルタイム通話システムの構成を示す図である。
【図7】図6のセンター側通話装置におけるセンター側通信器のバッファ制御部の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 かご内通話器、2 エレベータ側通信器、3 センター側通信器、4 センター側通話器、5 通信回線、6 かご内マイク、7 かご内スピーカー、8,17 A/D変換回路、9,18 データ送信回路、10,19 データ受信回路、11,20 データバッファ回路、12,21 D/A変換回路、13,22 バッファ制御部、14,23 メモリ、14a バッファ初期値、15 マイク、16 スピーカー、23a バッファ初期値(Td)、23b バッファ増加量(Tp)、23c バッファ量閾値(Tth)、23d 残存バッファ量閾値(Trth)、23e バッファ重要通話値(Tinp)、24 バッファ状態警報表示器、25 重要通話スイッチ、100 エレベータ側リアルタイム通話装置、200 外部側又はセンター側リアルタイム通話装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話のためのマイク及びスピーカーを設けた通話器、及び上記マイクからのアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して通信回線を介して送信すると共に、上記通信回線を介して送られてきたデジタル音声データを受信してアナログ音声信号に変換した後に上記スピーカーに入力して音を発生させる通信器と、を備えリアルタイムに音声の通信を行うリアルタイム通話装置であって、
上記通信器が、
通信回線からのデジタル音声データを一時的に蓄積するデータバッファ回路と、
通話の開始時にデータバッファ回路に設定されるバッファ初期値、及びデータバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生する度に上記バッファ初期値に加算するバッファ増加量を格納したメモリと、
通話の開始時には上記バッファ初期値、データバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時には残存バッファ量が零になる度に上記バッファ初期値に上記バッファ増加量を順次加算した増加バッファ値をそれぞれデータバッファ回路に設定して初期化を行うことによりデータバッファ回路のバッファ量の制御を行うバッファ制御部と、を有する
ことを特徴とするリアルタイム通話装置。
【請求項2】
メモリが、データバッファ回路のバッファ量の上限を示すバッファ量閾値をさらに格納し、
バッファ制御部が、データバッファ回路のバッファ量と上記メモリに格納されたバッファ量閾値とを比較し、データバッファ回路のバッファ量がバッファ量閾値を超えた時にバッファ状態警報信号を発生し、
通話器が、上記バッファ制御部からのバッファ状態警報信号に従って警報表示を行うバッファ状態警報表示器をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイム通話装置。
【請求項3】
通話のためのマイク及びスピーカーを設けた通話器、及び上記マイクからのアナログ音声信号をデジタル音声データに変換して通信回線を介して送信すると共に、上記通信回線を介して送られてきたデジタル音声データを受信してアナログ音声信号に変換した後に上記スピーカーに入力して音を発生させる通信器と、を備えリアルタイムに音声の通信を行うリアルタイム通話装置であって、
上記通信器が、
通信回線からのデジタル音声データを一時的に蓄積するデータバッファ回路と、
通話の開始時及びデータバッファ回路の残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時にデータバッファ回路に設定されるバッファ初期値、データバッファ回路での残存バッファ量の下限を示す残存バッファ量閾値、重要通話のための上記バッファ初期値より大きいバッファ重要通話値を格納したメモリと、
通話の開始時及びデータバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時に上記バッファ初期値をデータバッファ回路に設定して初期化を行い、データバッファ回路で残存バッファ量が零になりバッファ量不足が発生した時に重要通話信号が入力されていれば上記バッファ重要通話値をデータバッファ回路に設定して初期化を行い、データバッファ回路の残存バッファ量と上記メモリに格納された残存バッファ量閾値とを比較し、データバッファ回路の残存バッファ量が残存バッファ量閾値を下回った時にバッファ状態警報信号を発生するバッファ制御部と、を有し、
上記通話器が、
上記バッファ制御部からのバッファ状態警報信号に従って警報表示を行うバッファ状態警報表示器と、
操作者の操作に従って上記バッファ制御部に重要通話信号を発生する重要通話スイッチと、を有する
ことを特徴とするリアルタイム通話装置。
【請求項4】
エレベータのかご内と外部との間で通話を行うリアルタイム通話システムのためのリアルタイム通話装置であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のリアルタイム通話装置。
【請求項5】
エレベータの外部側に設けられたリアルタイム通話装置であることを特徴とする請求項4に記載のリアルタイム通話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48265(P2008−48265A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223255(P2006−223255)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】