リチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法及びリチウムイオンキャパシタ
【課題】 正極板と負極板との間の短絡を防止できるリチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法並びにリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】 軸芯1に第1及び第2のセパレータ4A、4Bのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始する。第1のセパレータ4Aの下に負極板3を挿入して負極板3の捲回を開始し、捲回の途中で第1のセパレータ4Aと負極板3との間にドーピング用のリチウム積層体20を挿入する。リチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A、4Bが直接重なるように2枚の分割正極板2A,2Bを捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータ4A、4Bの間に順次挿入して捲回する。
【解決手段】 軸芯1に第1及び第2のセパレータ4A、4Bのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始する。第1のセパレータ4Aの下に負極板3を挿入して負極板3の捲回を開始し、捲回の途中で第1のセパレータ4Aと負極板3との間にドーピング用のリチウム積層体20を挿入する。リチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A、4Bが直接重なるように2枚の分割正極板2A,2Bを捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータ4A、4Bの間に順次挿入して捲回する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオンキャパシタ用電極群及びその製造方法に係り、特に、金属箔に正極活物質合剤が塗着された正極板と金属箔に負極活物質合剤が塗着された負極板とを軸芯を中心として2枚のセパレータを介して捲回したリチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法及びリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、太陽光、風力発電等によるクリーンエネルギの蓄電システムや、自動車、ハイブリッド電気自動車等の移動体用の主電源ないし補助電源として蓄電デバイスが着目されている。蓄電デバイスとしては、従来、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が知られており、とりわけ、近時、リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
また、最近では、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせた大容量(例えば、500F以上)のリチウムイオンキャパシタないしハイブリッドキャパシタの研究開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。リチウムイオンキャパシタは、一般に、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられている。リチウムイオンキャパシタに用いる電極群は、一般に、金属箔に負極活物質合剤が塗着された負極板と、第1のセパレータと、金属箔に正極活物質合剤が塗着された正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回して製造する。
【0004】
リチウムイオンキャパシタは、予め負極板にリチウムイオンが吸蔵ないしドープされていることにより、負極電位が通常の電気二重層キャパシタよりより低く保たれるため、使用電圧範囲を広くとることができ、また、正極充放電機構として、通常の電気二重層キャパシタで利用される陰イオンの吸着に加え、陽イオンの吸着も利用できるため、容量を原理的に倍取り出すことができる。また、リチウムイオン電池に比べ、容量は小さいものの、内部抵抗が小さく出力特性の点で優れるとともに、長寿命である、という利点がある。なお、本発明に関連する技術として、リチウムイオンを吸蔵ないしドープさせるための金属リチウム板を電極群内に捲回配置したリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294539号公報
【特許文献2】特開2006−286841号公報
【特許文献3】特開2007−067105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法で製造したリチウムイオンキャパシタ用電極群では、リチウムイオンをドープする際に溶解したリチウムイオンが析出して正極板と負極板との間で短絡が生じる場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、正極板と負極板との間で短絡が発生する可能性をできるだけ低減できるリチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法及びリチウムイオンキャパシタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法を改良の対象とする。本発明では、所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板がその極板面に1枚以上配置される負極板を用意する。また、複数枚の分割正極板からなる正極板を用意する。軸芯に第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始する。その後、第1のセパレータに金属リチウム板が接触するように、第1及び第2のセパレータの間に負極板を挿入して負極板の捲回を開始する。そして捲回の途中で第1のセパレータと前記負極板との間にドーピング用の1枚以上の金属リチウム板を挿入する。負極板の上に金属リチウム板が予め配置されているものを用いる場合には、負極板の捲回途中で金属リチウム板の挿入を行う必要はない。そして金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成する。なお、本願明細書において、金属リチウム板は、ドーピングに使用可能なものであれば、その形態及び寸法は特に限定されるものではない。
【0009】
しかし、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることが予想される。
【0010】
そこで、本発明のように、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように正極板を捲回すれば、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。そのため、金属リチウム板のリチウムがセパレータを通過して正極板と接触することがない。その結果、正極板と負極板との間で短絡が発生することを防止することができる。
【0011】
また、極板面上に1枚以上のドーピング用の金属リチウム板を備えた負極板を用意しておけば(負極板に金属リチウム板を担持させておけば)、金属リチウム板を個別に挿入する作業が不要になり、負極板を捲回する際に金属リチウム板を電極群内に確実に配置することができる。
【0012】
電極群の径方向の中央領域に金属リチウム板の捲回層が位置するように金属リチウム板を負極板上に配置した場合は、電極群の中央領域に位置する金属リチウム板から電極群の捲回中心部及び外周部に向かってリチウムイオンが移動してリチウムイオンのドーピングが行われる。そのため、効率よくリチウムイオンのドーピングを行える。
【0013】
金属リチウム板は、イオン透過性を有する金属箔によって包むことができる。
【0014】
金属リチウム板は、ドーピングに必要な量捲回すればよい。そのため金属リチウム板が1周以下の捲回層を形成することもある。
【0015】
第1及び第2のセパレータを、重なった状態で電極群の最外周を構成するように捲回するステップをさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の方法により製造したドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群は、負極板と、該負極板の上に配置されて負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成されている。そして、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるようにn+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されている。本発明のドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群によれば、n枚以上の金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるようにn+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されているので、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。
【0017】
そのため、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合であっても、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることがない。
【0018】
なお負極板の捲回方向両端部に、表面上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板を配置してもよい。このようにすれば、電極群の中に位置する金属リチウム板に加えて負極板の捲回方向両端部に位置する金属リチウム板からもリチウムイオンのドーピングが行われる。そのため、リチウムイオンのドーピングを短い時間で行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように正極板を捲回するので、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。そのため、金属リチウム板のリチウムがセパレータを過通するように析出しても負極板と正極板とを接触させることがない。その結果、正極板と負極板との間の短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの断面図である。
【図2】(A)は実施形態のリチウムイオンキャパシタの極板の捲回前の平面図であり、(B)は極板を構成する集電体の平面図である。
【図3】極板のリード片形成部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】(A)は塗工機内で極板にスラリが塗工される状態を模式的に示す平面図であり、(B)は塗工機の概略を示す構成図である。
【図5】(A)は集電体の孔明き形成部に対し一面側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図であり、(B)は集電体の孔明き形成部に両側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図である。
【図6】極板形成装置を模式的に示す構成図である。
【図7】切断装置でアルミニウム箔が切断される切断位置を示す平面図である。
【図8】(A)はリチウム積層体の外観斜視図であり、(B)はリチウム積層体の断面図である。
【図9】電極群を捲回する前の状態を模式的に示す説明図である。
【図10】電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【図11】図10のMを模式的に表す部分拡大図である。
【図12】捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図13】他の実施形態に用いる捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図14】他の実施形態の電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の円筒状リチウムイオンキャパシタの実施の形態について説明する。
(構成)
<全体構成>
図1に示すように、本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ30(以下、キャパシタ30と略称する。)は、ニッケルメッキが施されたスチール製有底円筒状の容器(缶)8を有している。容器8内には、中空円筒状で縦方向に複数本(本例では3本)のスリットが形成されたポリプロピレン製軸芯1に帯状の正極板2および負極板3が第1のセパレータ4Aまたは第2のセパレータ4Bを介して捲回されて配置された電極群7が収容されている。図9〜図11に示すように、ドーピング前の電極群7内には、n枚(本例では1枚:n=1)の金属リチウム板W5が配置されている。正極板2は、n+1枚(本例では2枚)の分割正極板2A,2Bから構成されている。なお、本例では、容器8の外径は40mm、内径は39mmである。
<正極板>
前述したように、正極板2は、捲回方向に並ぶ2枚の分割正極板2A,2Bから構成されている。分割正極板2A,2Bは、長さ寸法を除いて同じ構造を有している。図2(A),(B)及び図3に示すように、分割正極板2A,2Bは、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)W1の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤W2が塗着されて構成されている(図1も参照)。アルミニウム箔W1は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる正極リード片2aと、正極リード片2aに隣接して多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した正極活物質合剤W2が塗着されている。
【0022】
本例では、分割正極板2A,2Bは次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=1500mm(分割正極板2A),1550mm(分割正極板2B)、幅方向の長さa=90mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=60mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の正極活物質合剤W2の片面塗工厚=40μm(両面で80μm)、正極活物質合剤W2のかさ密度=0.5g/cm3。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。
【0023】
孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う正極リード片2aの間隔dは50mm、正極リード片2aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な正極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、正極リード片2aの先端からの正極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0024】
図2(A)および図3に示すように、正極活物質合剤W2が塗着された孔明き形成部の正極リード片2a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に(角度δ参照)傾斜している。
<負極板>
一方、負極板3も正極板2とほぼ同じ構造を有している。すなわち、負極板3は、例えば、厚さ16μmの銅箔(負極集電体)W3の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤W4が塗着されている。銅箔W3は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる負極リード片3aと、負極リード片3aに隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した負極活物質合剤W4が塗着されている。
【0025】
本例では、負極板3は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=3400mm、幅方向の長さa=92mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=62mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の負極活物質合剤W4の片面塗工厚=20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤W4のかさ密度=1.0g/cm3。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率は20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う負極リード片3aの間隔dは50mm、負極リード片3aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な負極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、負極リード片3aの先端からの負極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0026】
また、正極板2と同様に、負極活物質合剤W4が塗着された孔明き形成部の負極リード片3a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に傾斜している。
<リチウム積層体>
ここで、負極板3の負極活物質(本例では非晶質炭素)にリチウムイオンをドーピングさせるためのリチウム積層体20について説明する。なおリチウム積層体20は、本発明を実施する場合に、必ず使用することが必要なものではなく、任意に使用が選択できるものである。
【0027】
リチウム積層体20は、電極群7の径方向の中央領域において位置するように負極板3上に配置することができる。
【0028】
図8(A)、(B)に示すように、リチウム積層体20は、薄板状の金属リチウム板W5と、2枚のイオン透過性を有する銅箔W6とで構成されている。銅箔W6は負極板3を構成する銅箔W3と同じ材料を所定寸法に切断して用いることができる。すなわち、銅箔W6は、長手方向に沿う一側にタブ20aが形成されたタブ形成部と、タブ形成部に隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とを有しており、金属リチウム板W5は、2枚の銅箔W6の孔明き形成部に当接して包まれている。なお、負極板3で説明したように、孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。
【0029】
銅箔W6に形成された孔明き形成部の面積は金属リチウム板W5の面積より大きく、金属リチウム板W5は孔明き形成部の中央部に配置されている。金属リチウム板W5を銅箔W6に形成された孔明き形成部で挟持し金属リチウム板W5と銅箔W6を重ねてロールで圧接すると、金属リチウム板W5は粘性を発揮し、銅箔W6、金属リチウム板W5、銅箔W6の積層状態を保持することができる。
【0030】
タブ20aは銅箔W6を切り欠くことにより櫛状に形成されており、所定間隔で形成されている。また、2枚の銅箔W6に形成されたタブ20aは同じ方向に導出されている。なお、銅箔W6は、長手方向に沿って、孔明き形成部のタブ形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している(図2の幅βを有する箇所)。
【0031】
また、金属リチウム板W5の総充填量は、負極板3の負極活物質合剤にリチウムイオンを十分ドーピング可能な量に設定されるが、このような総充填量は負極活物質の材質、量を考慮して論理計算を行うとともに、実際にリチウムイオンのドーピングを行って十分にドーピングされたかを確認することで設定することができる。これにより、リチウム積層体20を量産する場合の金属リチウム板W5の面積および厚さの設定が可能となる。なお、本例では、金属リチウム板W5として厚さ500μmを選択した。
【0032】
なお、金属リチウム板W5を銅箔W6によって包んだリチウム積層体20として、金属リチウム板を負極板上に配置せずに、金属リチウム板W5をそのまま負極板3上に配置してもかまわない。本実施形態では、金属リチウム板W5をそのまま電極群7の中央領域において、負極板3上に配置する(図10参照)。
<電極群>
図9〜図11に示すように、正極板2(分割正極板2A,2B)と負極板3とが、両極板が直接接触しないように、厚さ50μmの2枚の第1のセパレータ4Aまたは第2のセパレータ4Bを介して、軸芯1を中心として断面渦巻き状に捲回されて、電極群7が構成されている。そして、図9に示すように、電極群7の径方向の中央領域において、金属リチウム板W5の捲回層が位置するように金属リチウム板W5が負極板3上に配置されている。なお、金属リチウム板W5は粘性を持つため、負極板3に固定される。もちろん、金属リチウム板W5を負極板3に圧接して固定してもよい。
【0033】
正極板2を構成する分割正極板2A,2Bは、金属リチウム板W5の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように捲回方向に所定の間隔をあけて配置されており、第1及び第2のセパレータ4A,4Bの間に順次挿入されて捲回されている。
【0034】
このようにすることにより、金属リチウム板W5は、セパレータ4A,4Bを介して正極板2(分割正極板2A,2B)と対向することはない。上述した正極リード片2aと負極リード片3aとは、それぞれ電極群7の互いに反対側に配置されており、セパレータ4A,4Bの端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群7は、正極板2、負極板3、セパレータ4A,4B等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。なお、電極群7の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
<キャパシタ構造>
図1に示すように、電極群7の下側には、電極群7の下端側端面に対向するように、負極板3からの電位を集電するための銅製の負極集電リング6が配置されている。負極集電リング6の内周面には軸芯1の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング6の外周縁には、負極板3から導出された負極リード片3aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング6の下部は有底筒状部となっており、その底部と負極外部端子を兼ねる容器8の内底部に抵抗溶接で接合されている。
【0035】
なお、負極集電リング6の下部に電気的導通のための、例えば銅製の負極リード板9を配置して、負極リード板9を容器8の内底部に抵抗溶接で接合してもよい。図1では、負極集電リング6と負極リード板9とを別体とした場合を示している。前述のとおり、本例では負極集電リング6と負極リード板9とを一体としたものを負極集電リング6と呼んでいる。
【0036】
負極集電リング6(負極集電リング6と負極リード板9とが別体の場合には負極集電リング6および負極リード板9)はエポキシ樹脂等の樹脂製絶縁材11で覆われ、絶縁材11は負極集電リング6の上部から容器8の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、容器8の底部は絶縁材11により詰め物がなされた状態となっている。
【0037】
一方、電極群7の上側には、電極群7の上端面と対向するように、軸芯1のほぼ延長線上に分割正極板2A,2Bからの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング5が配置されている。正極集電リング5は軸芯1の上端部に嵌着されている。正極集電リング5の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、分割正極板2A,2Bから導出された正極リード片2aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0038】
正極集電リング5の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋12が配置されている。容器蓋12は、下側に配置された蓋ケース12aと、上側に配置された蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁を蓋キャップ12bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース12aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング5の上面には、アルミニウム箔を積層した複数の正極リード板10のうちの一端が接合されている。当該正極リード板10の他端は、容器蓋12を構成する蓋ケース12aの外底面に接合されている。また、正極リード板10の他端同士も接合されている。
【0039】
容器蓋12は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット13を介して容器8の上部にかしめられている。このため、キャパシタ30の内部は密封されている。また、容器8内には、電極群7全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ30の定格容量は約1,000Fである。
(製造方法)
次に、本実施形態のキャパシタ30の量産方式による製造方法を中心に説明する。
<活物質合剤の調製>
まず、正極活物質合剤および負極活物質合剤を調製する。正極活物質合剤は、例えば、正極活物質として比表面積が1000m2/g以上の活性炭と、結着剤としてアクリル系バインダと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを重量(質量)比で85:7:3:5となるように混合し、これに水(分散溶媒)を添加、混練して正極スラリを作製する。
【0040】
負極活物質合剤は、例えば、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非晶質炭素と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素材とを重量(質量)比90:5:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練して負極スラリを作製する。
<塗工>
次に、集電体へのスラリの塗工について説明する。以下、説明を簡単にするために、アルミニウム箔W1へのスラリの塗工について例示するが、銅箔W3についても同じである。図4(B)に示すように、アルミニウム箔W1への塗工は、それぞれ塗工口を有する4つの塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bと、攪拌機(不図示)を有し各塗工ヘッドにスラリを供給するスラリ貯留槽21C、21Dと、を備えた塗工装置21により行われる。上述したように作製された正極スラリは、スラリ貯留槽21C、21Dに一時的に貯留される。
【0041】
図4(A)及び(B)に示すように、本例の塗工装置21は、塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工し、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工することで、合計4倍幅分の正極板2の塗工を同時に行うものである。
【0042】
アルミニウム箔供給部から供給されたアルミニウム箔W1は、図示しない駆動ローラおよび従動ローラを介して塗工装置21内を略垂直方向(図4の矢印V方向)に搬送される(図6も参照)。アルミニウム箔W1は搬送方向と交差する幅方向の長さがAに設定されている。塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとは、搬送されるアルミニウム箔W1に対し、一面側(表面側)、他面側(裏面側)にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド21Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている(図4(B)参照)。同様に、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとは、搬送されるアルミニウム箔W1の一面側、他面側にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド22Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている。このため、本例では、図4(A)に示すように、アルミニウム箔W1の搬送方向上流側から下流側に向けて、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22A、塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aの順で配設されている。なお、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aとが垂直方向でずれて配設されているのは、アルミニウム箔W1の幅に対し各塗工ヘッドを並べた合計幅が大きいためである。
【0043】
各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bの塗工口の搬送されるアルミニウム箔W1の幅方向(搬送方向と交差する方向)に対する長さは、アルミニウム箔W1のスラリ塗工幅eの2倍の2eに設定されており、塗工ヘッド21A、21Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔W1の一側端(図4(A)に示す右端)を基準として順に、幅方向の一端(右端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(左端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。一方、塗工ヘッド22A、22Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔W1の他側端(図4(A)に示す左端)を基準として順に、幅方向の一端(左端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(右端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。塗工ヘッド21A、21Bの塗工口の左端と塗工ヘッド22A、22Bの塗工口の右端とには、c+2(α+β)の間隔が設定されている。
【0044】
塗工装置21では、スラリ貯留槽21C、21Dに所定エア圧を加えることによりスラリ貯留槽21C、21D内に貯留されたスラリが各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに供給され、各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに所定のエア圧を加えることにより、各塗工ヘッドの塗工口から、搬送されるアルミニウム箔W1にスラリを表裏の両面とも略均等な厚さで塗工することができる。
【0045】
図5(A)に示すように、例えば、塗工機22Bの塗工口から吐出されたスラリは、搬送されるアルミニウム箔W1に形成された貫通孔内のエアを排出して他面(表面)側まで到達し、搬送されるアルミニウム箔W1に対して塗工ヘッド22Bの他面側に配置された塗工ヘッド22Aの塗工口からスラリが吐出されることにより、図5(B)に示すように、搬送されるアルミニウム箔W1の他面側にもスラリが塗工される。
<乾燥>
図6に示すように、塗工装置21の下流側には乾燥機29が配置されている。アルミニウム箔W1に塗工されたスラリ(分散溶媒を含む)は、塗工装置21を経て乾燥機29に至るまで、略垂直方向に搬送され、塗工装置21によるスラリ塗工幅2eから、スラリが乾燥する前に、上述したように、貫通孔未形成部に最も近い貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込む(図3も参照)ことで、アルミニウム箔W1へのスラリ塗工幅は2(e+α)となり、2α分塗工幅が広がる(図7も参照)。
【0046】
乾燥機29は、垂直方向に搬送されるアルミニウム箔W1に対し水平方向両側に複数のヒータなどの熱源が所定間隔で配置されており、アルミニウム箔W1に塗工されたスラリから分散溶媒を蒸発させるものである。スラリが塗工されたアルミニウム箔W1は、乾燥機29内を略垂直方向に搬送され、ヒータなどの熱源による加熱よりスラリを構成する分散溶媒が蒸発し、アルミニウム箔W1には正極活物質合剤が2(e+α)の幅でそれぞれ塗着され(図7参照)、乾燥後に金属や各種プラスチックなどでできたパイプ状のコアを芯とした巻き取り装置にてロール状に巻き取る。
<リード片形成>
乾燥機29を出てロール状に巻き取られた正極板をリード片形成装置に移して引出し、スラリが塗工されていないアルミニウム箔W1の部分cを切り欠くことにより所定間隔で正極リード片2aを形成する。上述した切り欠きは、金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を配置し、専用ローラ対23を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、正極板をこのローラ対に通過させることにより、スラリを塗工していないアルミニウム箔W1の部分cに所定間隔で複数の正極リード片2aを形成する。この工程は専用ローラ対23に代え、所定形状に刃物を埋め込んだ打ち抜き体を装着したプレス装置を、正極板の間欠送りと連動して作動させる工程でもよい。
<プレス>
専用ローラ対23の下流側には、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1の両面を所定の線圧でプレスするヒートローラ対24が配置されている。ヒートローラ対24を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、ローラ内には、ニクロム線やヒートランプ等の熱源が内蔵されている。正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔は、ヒートローラ対24間を搬送され、上述した厚さおよびかさ密度に設定される。なお、以上の乾燥、プレス工程を経ることにより、正極スラリに対し正極活物質合剤の比重は1.25、固形分は30%、負極スラリに対し負極活物質合剤の比重は1.30、固形分は50%となる。
<分離>
ヒートローラ対24の下流側には、ループ機構25および切断装置26が配設されている。ループ機構25は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1の切断装置26への搬送を調整するものであり、切断装置26は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1を切断することにより幅方向で4枚分の正極板2に分離するものである。
【0047】
ループ機構25は、アルミニウム箔W1をカイト状にループ搬送するための5つのローラで構成されている。5つのローラのうち1つのローラは水平方向に移動可能であり、常時矢印H方向にバネで付勢されている。このため、切断装置26によるアルミニウム箔W1の切断の際に、切断装置26内でアルミニウム箔W1の搬送が停止されても、1つのローラがバネで付勢され水平方向に移動することにより、搬送されるアルミニウム箔W1の張力を一定に保つことができる。
【0048】
切断装置26は、ループ機構25の下流側に配置されており、アルミニウム箔W1に対して移動(進退)可能な板状の台座と、同じく、アルミニウム箔W1に対して移動(進退)可能で複数の切断部を有するカッタと、これらの台座およびカッタの両側に配設された駆動ローラとで構成されている。なお、駆動ローラは、ループ機構25までのアルミニウム箔W1の搬送駆動源とは異なる駆動源で動作する。
【0049】
切断装置26内では、切断の際、アルミニウム箔W1の搬送が停止され(上述した駆動ローラの回転を停止し)、台座をアルミニウム箔W1側に進出させ、カッタを、アルミニウム箔W1を介して台座方向に所定スピードで進出させることで、アルミニウム箔W1を幅方向で4枚分の正極板に分離する。
【0050】
図7は、切断装置26によるアルミニウム箔W1の切断位置を示したものである。ここで、確認のため、図4と図7とを比較することで、スラリ塗工幅と活物質塗着幅との相違について簡単に説明する。上述したように、スラリ塗工幅はそれぞれ2e、両端の未塗工幅はc+(α+β)、2つのスラリ塗工幅間の未塗工幅は{c+2(α+β)}である(図4参照)。一方、乾燥機29に搬送されるまでにスラリ塗工幅は2α分広がるため、図7に示すように、活物質塗着幅はそれぞれ2(e+α)、両端の未塗工幅はc+β、2つの活物質塗着幅間の未塗工幅はc+2βとなる。
【0051】
アルミニウム箔W1の両側(左端側および右端側)には、上述した正極リード片2aが形成され、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅間の中央にも正極リード片2aが形成される。また、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)の中央も切断される。従って、このような塗工方式および切断方式を採用することにより、アルミニウム箔W1の幅を正極リード片2aの長さcの分を節約することができるとともに、正極板4倍幅分の正極リード片2aを一度に形成することができる。
【0052】
図6に示すように、切断装置26では、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1を所定距離ずつバッチ処理により幅方向に4つに分離する。この間、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向に移動しアルミニウム箔W1のループ機構25内での張力が保たれている。切断装置26での切断(カッタによる正極板2の幅方向での4枚分の分離)が終了すると、台座およびカッタをアルミニウム箔W1から退避する方向へ移動させ、駆動ローラを回転させる。これにより、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向とは反対側に移動しアルミニウム箔W1のループ機構25内での張力を保つとともに、新たに(連続して)切断対象となるアルミニウム箔W1の部分を切断装置26に搬送する。
<巻取>
切断装置26の下流側には、幅方向で4枚分の正極板に分離されたフープ状の正極板を巻き取る正極板巻取リールが所定間隔隔てて配設されている。正極板巻取リールは上述した駆動ローラの回転と同期して回転を開始し、分離された4倍幅分の正極板はロール状にそれぞれ正極板巻取リールを中心として巻き取られる。これにより、ロール状に巻き取られた(フープ状の)正極板2を得ることができる。
【0053】
なお、ロール状に巻き取られた負極板3も同様の方法で得ることができる。また、ロール状に巻き取られたリチウム積層体20の銅箔W3を作製する場合には、負極板3を作製する場合と比較し、スラリの塗布(活物質合剤の塗着)、乾燥、プレスが必要ないため、銅箔供給部から金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を通してループ機構25または切断装置26に直接供給するようにしてもよいし、塗工装置21、乾燥機29およびヒートローラ対24での処理を行うことなく単に通過させるようにしてもよい。
<捲回>
電極群7は、図9に示すように、負極板3と、第1のセパレータ4Aと、正極板2(分割正極板2A,2B)と、第2のセパレータ4Bとを順次重なるように軸芯1を中心として捲回して構成される。
【0054】
電極群7の形成(捲回)は捲回装置で行われる。図12は、本例で使用される捲回装置27の要部(中央部)を模式的に示したものである。捲回装置27は、軸芯1を装着、回転可能な軸芯回転部(不図示)を有している。捲回装置27には、捲回軸下部左から、反時計回りの方向に、負極板3を供給する負極板供給部S1、第1のセパレータ4Aを供給する第1のセパレータ供給部S2、正極板2を供給する正極板供給部S3、第2のセパレータ4Bを供給する第2のセパレータ供給部S4の順で極板及びセパレータの供給部が配置されており、負極板供給部S1と第1のセパレータ供給部S2との間に金属リチウム板W5を供給する金属リチウム板供給部S5が配置されている。各供給部はフープ状の供給物を所定長さで切断するカッタ(不図示)を有するとともに、搬送ローラ27aを有している。
【0055】
オペレータが操作ボタンを押下すると、図示しないロボットアームにより軸芯1が軸芯回転部に装着され、第1および第2のセパレータ供給部S2,S4からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が開始され、第1及び第2のセパレータ4A、4Bのそれぞれの一方の端部が粘着テープで軸心1に固定される。固定後、軸芯1の回転および第1および第2のセパレータ供給部S2,S4からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が再開される。これにより、セパレータ4A、4Bは、少なくとも1周、好ましくは2〜5周、軸芯1の周りに捲回される(図9も参照)。
【0056】
次に、第1及び第2のセパレータ4A,4Bの間に負極板供給部S1から負極板3を挿入して負極板3の捲回を開始する。続いて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に正極板供給部S3から正極板2(分割正極板2A)を挿入して正極板2(分割正極板2A)の捲回が開始される。分割正極板2Aの長さ分の捲回が終了した後、正極板供給部S3はカッタで正極板2を切断する。正極板2が切断されるまでの部分が分割正極板2Aになる。更に捲回を継続して負極板3の捲回方向のほぼ中央に金属リチウム板W5を配置するため、負極板3を捲回している途中で、金属リチウム板供給部S5から金属リチウム板W5が第1のセパレータ4Aと負極板3との間に挿入される。金属リチウム板供給部S5は、金属リチウム板層が1ターンを形成する前に、カッタで金属リチウム板を切断する。金属リチウム板W5を捲回している間も、負極板3,第1及び第2のセパレータ4A及び4Bの捲回は継続されている。したがって第1及び第2のセパレータ4A,4Bが金属リチウム板W5の上に直接重なった状態の捲回が継続される。負極板3に添って金属リチウム板W5の捲回を終了した後、少ししてから正極板供給部S3からの正極板2(分割正極板2B)の捲回が開始される。分極割正極板2Bの長さ分に相当する長さの捲回が終了した後、カッタにより正極板を切断する。
【0057】
一般的に説明すると、電極群内には、n枚(本例では1枚:n=1)の金属リチウム板W5が捲回され、正極板2としては、n+1枚(本例では2枚)の分割正極板(2A,2B)が捲回されることになる。以上により、金属リチウム板W5の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように(金属リチウム板W5が第1のセパレータ4Aを介して正極版2と対向しないように)2枚の分割正極板2A,2Bが捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に順次挿入して捲回されることになる。
【0058】
正極板供給部S3が、図示しないカッタで分割正極板2Bが所定の長さとなるように切断した後も、負極板3は負極板供給部S1から供給されて捲回が続けられる。そして捲回された負極板3の長さが所定長さになると、負極板はカッタで切断され、負極板3の供給が停止される。
【0059】
第1および第2のセパレータ供給部S2,S4は、なおも第1及び第2のセパレータ4A、4Bの供給を続行し、少なくとも1周、好ましくは2〜3周捲回可能な長さに至ると、カッタでセパレータ4A、4Bを切断し、セパレータ4A、4Bの供給を停止する(図9も参照)。従って、セパレータ4A、4Bは捲回途中で切断されることはない。軸芯回転部は、なおも軸芯1を回転させ、セパレータ4A、4Bが電極群7の外周を構成するまで回転を継続して、軸芯1の回転を停止後、重ねて切断し終端位置を合わせる。次に、電極群7の外周に捲回されたセパレータ4A、4Bの巻き解けを防止するために、電極群7の長手方向に沿って粘着テープが貼り付けられる。粘着テープの貼付は、図示を省略したテープ貼付部により行われる。次いで、電極群7(軸芯1)は、図示しないロボットアームにより軸芯回転部から取り外され、所定位置に配置され軸芯1を支持するための支持部を有する載置台上に載置され、1つの電極群7の捲回が終了する。
【0060】
負極板3の途中に、金属リチウム板W5を挿入するための挿入制御及び分割正極板2A及び2Bを挿入するための挿入制御は、制御監視にエンコーダ用いてパルス数を管理するとともに、軸芯1の回転数を監視することで行うことができる。
【0061】
なお、上記例では、金属リチウム板W5を負極板3とは別個に挿入して電極群7内に捲回しているが、負極板3の極板面上に予め金属リチウム板W5を配置しておき、金属リチウム板W5を負極板3と一緒に捲回してもよい。この場合、図13に示すような捲回装置27’を用いる。捲回装置27’では、図12示した金属リチウム板供給部S5が除かれている。したがって図12に示す捲回装置と比べて、捲回装置27′は構成が簡単になる。
【0062】
図8に示すようなリチウム積層体20を前述の金属リチウム板W5の代わりに使用してもよい。その場合には、図12に示すように金属リチウム板供給部S5の代わりにリチウム積層体供給部を設ければよい。
【0063】
図12及び図13に示したいずれの捲回装置を用いても、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように2枚の分割正極板2A,2Bが捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に順次挿入して捲回されることになる。
<組立>
図1に示すように、正極リード片2aを変形させ、その全てを、電極群7の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング5の周面付近に集合させ、接触させた後、正極リード片2aの先端部と周面とを超音波溶接して正極リード片2aを周面に接合する。一方、負極集電リング6と負極リード片3aとの接続操作も、正極集電リング5と正極リード片2aとの接合操作と同様に接合する。また、リチウム積層体20を使用する場合には、リチウム積層体20のタブ20aの先端部も同様に負極集電リング6に接合する。リチウム積層体20を用いずに金属リチウム板W5を負極板3の側面に直接添わせる場合には、特にタブ20aに相当するものを設ける必要はない。なお、タブ20aおよび負極リード片3aの負極集電リング6への接合は同時に行われる。
【0064】
その後、正極集電リング5の周面全周に絶縁被覆を施す。すなわち、粘着テープを正極集電リング5の周面から電極群7外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、電極群7を容器8内に挿入する。絶縁被覆には、例えば、基材がポリイミドやポリフェニリンサルファイドで、その片面にアクリレート系粘着剤を塗布した粘着テープを用いることができる。
【0065】
負極集電リング6(負極集電リング6と負極リード板9とが別体の場合には負極集電リング6および負極リード板9)の下部は有底筒状部となっており、その底部とを抵抗溶接により接合する。次いで、軸芯1の内周を利用して所定量のエポキシ樹脂を所定量注入することが好ましい。この場合、上述したように、軸芯1には縦方向に複数本のスリットが形成されているため(図9も参照)、エポキシ樹脂は、これらのスリットを介して容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで進入し、負極リード板9および負極集電リング6はエポキシ樹脂で埋没するように覆われる。所定時間経過すると、注入されたエポキシ樹脂は固化して絶縁材11が形成される。
【0066】
一方、正極集電リング5には、正極リード板10を溶接しておき、正極リード板10の他端を、容器8を封口するための容器蓋12の下面(蓋ケース12aの外底面)に接合する。上述したように、容器蓋12は、蓋ケース12aと蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁をかしめることによって予め組立てられている。なお、蓋ケース12aには、何らかの異常でリチウムイオンキャパシタの内圧が上昇したときに、安全のために所定の内圧に達したときに開裂する開裂溝が形成されている。開裂溝の開裂により、リチウムイオンキャパシタの内圧が開放される。
【0067】
次に、軸芯1の内周を利用して非水電解液を所定量容器8内に注入する。このような注液は安全性を確保するため低温環境下がよい。上述したように、軸芯1には複数本のスリットが形成されているため、これらのスリットを介して電極群7は非水電解液に浸潤される。その後、正極リード板10を折りたたむようにして容器蓋12で容器8に蓋をし、ガスケット13を介してかしめて密封することにより、キャパシタ30を作製する。
(負極活物質へのリチウムのドーピング)
次に、本実施形態のキャパシタ30において、金属リチウム板W5の負極活物質(非晶質炭素)へのドーピング(吸蔵)方法について説明する。なお説明の都合上、前述のリチウム積層体20を用いる場合を例として説明する。
【0068】
本例では、所定温度(例えば、室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば、2週間〜4週間)、キャパシタ30を放置することでリチウムイオンを負極活物質にドーピングさせる。リチウム積層体20のタブ20aは負極リード片3aとともに負極集電リング6に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、所定期間の放置することで、金属リチウムW5は溶解し、負極板3の負極活物質(非晶質炭素)にドーピングされる。これにより、リチウム積層体20に挟持された金属リチウムW5は溶解し、リチウム積層体20はそれぞれ2枚の銅箔W3のみが残存配置されることになる。
(作用等)
次にキャパシタ30の作用等について説明する。
【0069】
本実施形態によれば、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように分割正極板2A,2Bを捲回するので、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、リチウム積層体20は、セパレータ4Aを介して正極板2(分割正極板2A,2B)と対向することがない。そのため、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることがあるが、本実施形態ではそのような現象を防ぐことができる。
【0070】
また、極板面上に1枚以上の所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板W5を備えた負極板3を用意する場合には、比較的長さ寸法の小さい金属リチウム板W5を単独で捲回する必要がなく、負極板3を捲回することで電極群内に金属リチウム板W5を確実に配置することができる。
【0071】
次に、本実施形態のキャパシタ30によれば、金属リチウム板W5または金属リチウム板W5を備えたリチウム積層体20を電極群7内に予め配置しておき、所定期間放置することで、金属リチウム板W5が溶解して負極板3の負極活物質にドーピングされることで、予め実施するドーピング操作を容易に行うことができる。
【0072】
金属リチウム板W5を両面から銅箔W6で挟持したリチウム積層体20は、両面の銅箔W6に負極板3へ接続するためのタブを設けることにより、同一面積の金属リチウム板W5に対して銅箔W6に形成されたタブの密度が倍になる。金属リチウム板W5の片面に銅箔W6を貼付けた場合に比べて、負極板との接続抵抗が下がるので、リチウムイオンの負極板へのドーピングが進みやすくなる。
【0073】
ところで、本実施形態のように、金属リチウム板W5を負極板に電気的に接触させて金属リチウムと負極板の電位差だけでリチウムイオンのドーピングを行う場合、負極板のドーピング深度が深くなるとその後のドーピングがほとんど進まなくなる。そのため、容器8内に配置した金属リチウム板W5が完全に負極板にドーピングされ、容器8内に残らないようにするためには、理論量よりも少ない量を配置せざるを得ない場合が起こり得る。その一方で、キャパシタのフロート充電を例にとって考えると、長期間高温、高電圧でフロート充電した場合、電解液中のリチウムイオンと正極活物質および負極活物質との反応が進んで、負極板から徐々にリチウムイオンが非可逆的に抜けてゆく。従って、予め負極板にドーピングさせるリチウムイオンが多いほど(理論量に近いほど)キャパシタの信頼性は高くなる。
【0074】
さらに、本実施形態のキャパシタ30では、正極板2、負極板3、リチウム積層体20のそれぞれを構成するアルミニウム箔W1および銅箔W6のリード片ないしタブに隣接する箇所に貫通孔未形成部が形成されているとともに、リチウム積層体20では、孔明き形成部の面積が金属リチウム板W5の面積より大きく設定されている。このため、正極板2、負極板3、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20をセパレータ4を介して捲回し電極群7を構成しても、正極板2、負極板3、金属リチウム板W5の捲回で、アルミニウム箔W1や銅箔W6に塗着されたり挟持された活物質合剤や金属リチウム板により、リード片ないしタブの基部が膨らんだり、エッジ状の突出部が形成されることなく、長期使用によっても、セパレータ4A,4Bの破断や破断による内部短絡を防止することができる。従って、長寿命のキャパシタ30を得ることができる。なお、図3に示した活物質合剤の端部構造もこの利点を助長している。
【0075】
また、本実施形態のキャパシタ30では、正負極板のアルミニウム箔W1および銅箔W3の両面に活物質合剤が塗着されており、該活物質合剤は孔明き形成部を介して連通しているとともに、スラリ塗布時に塗工口がずらされた表裏面2つの塗工機でスラリの塗工が行われ、アルミニウム箔W1の垂直搬送が行われるので、貫通孔にエアが残留することを防止することができる。従って、キャパシタ30のエネルギ密度を高めることができるとともに、内部抵抗を低減させることができる。とりわけ、本実施形態では、貫通孔の各面積が8×10−7m2以下の1.3×10−7m2(=0.2mm×0.2mm×π)で略均等に設定され、貫通孔の開口率が20%に設定されているので、量産工程において金属箔への活物質合剤の塗着が容易で、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。換言すれば、貫通孔の各面積が8×10−7m2を超えるとスラリの均一塗工(活物質合剤の集電体への均一塗着)が難しくなり(特に、貫通孔への活物質合剤の充填および凸凹の発生)、また、電極群を構成したときに正負極板の強度の弱化を招く。なお、貫通孔の各面積が小さい場合には、リチウムイオンの移動距離を短くし内部抵抗の増加を避けるために、アルミニウム箔W1および銅箔W6にリチウムイオンが通過可能なように単位面積あたりの貫通孔を多く形成することが好ましい。
【0076】
さらにまた、本実施形態のキャパシタ30では、上述したように、極板を作製する際に、幅方向で4倍幅分を一度に(連続工程で)作製するとともに、アルミニウム箔W1の幅を1つの極板のリード片分ないし1つのリチウム積層体のタブ分の長さcだけ小さくすることができる。このため、生産性が向上するとともに、コストの低減を図ることができる。さらに、本実施形態のキャパシタ30では、負極板3の銅箔W3とリチウム積層体20の銅箔W6とを同じ材料としたので、部品管理が容易となるとともに、コスト低減を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態のキャパシタ30では、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで絶縁材11により詰め物がなされている。このため、金属リチウムW5からのリチウムイオンが負極活物質にドーピングされずに、他の負極板を構成する部材に析出してセパレータ4の破断等を招くことを防止するとともに、論理総充填量に近い金属リチウム板W5の総充填量を設定でき、金属リチウム板W5の厚さを極力薄くすることが可能となり、電極群7の捲回構成の脆弱化を防止することができる。さらに、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで絶縁材11を配することにより、遊離電解液をなくすことができる。
【0078】
従って、本実施形態のキャパシタ30よれば、内部抵抗、エネルギ密度、寿命等のキャパシタとしての特性が優れているとともに、量産性に優れたキャパシタを実現することができる。また、本実施形態のキャパシタ30は大容量の1,000Fであり、複数のキャパシタ30を並列ないし直列接続したキャパシタシステムを構成することにより、例えば、自動車のエンジン始動を連続して複数回行うことができる。
【0079】
なお、上記の実施形態では、電極群7の中央領域において、負極板3上にリチウム積層体20を配置した例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、図14に示すように、電極群107の中央領域に配置した金属リチウム板W5に加えて捲回中心領域及び捲回外周領域において、負極板3上に2つの金属リチウム板W15,W25を配置してもよい。この場合には、金属リチウム板またはリチウム積層体の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように(リチウム積層体の上にセパレータを介して正極板が配置されないように)、2つの金属リチウム板W15,W25が位置する両端部分を削除するように長さ寸法を短かくする。そして、正極板を第1及び第2のセパレータの間に挿入して捲回する。
【0080】
なお、上記の実施形態では、捲回装置27において、各供給部からフープ状の供給物(正極板2、負極板3、セパレータ4A、4B、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20)を供給する例を示したが、所定長さで1つ分の電極群7を作製するための長さに予め切断された供給物を各供給部から供給するようにしてもよい。このような態様では、上述したカッタは不要となる。
【0081】
また、上記の実施形態では、両面に活物質合剤が塗着された極板を例示したが、本発明はこれに限ることなく、片面のみに活物質合剤が塗着された極板にも適用が可能である。さらに、本実施形態では、正負極板およびリチウム積層体の孔明き形成部に円形の貫通孔を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、貫通孔の形状は、例えば、三角形、四角形等の多角形、星形、台形等の任意の形状を採ることができる。また、正負極板およびリチウム積層体の孔明き形成部の貫通孔の開口率に20%のものを例示したが、これについても本発明を制限するものはない。開口率としては、例えば、5%〜55%、好ましくは、10%〜40%、より好ましくは、10%〜25%とすることができる。
【0082】
またさらに、上記の実施形態では、2枚のセパレータ4A、4Bを使用する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すわなち、1枚のセパレータを折り返して使用すれば2枚のセパレータと同じく使用でき、1枚のセパレータに代えて、薄いセパレータを例えば2枚ないし3枚ずつ重ねて使用することができる。従って、本発明者らは、このような態様も本発明の「2枚のセパレータ」と同じ意味であるかまたは均等のものと考えている。
【0083】
また、上記の実施形態では、幅方向で4倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を例示したが、本発明はこれに限ることなく、例えば、6倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を用いるようにしてもよい。この場合には、活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)間の未塗着箇所(幅c+2β)が2つ形成されるので、アルミニウム箔供給部から供給されるアルミニウム箔の幅を2c分節約することができる。なお、本発明は、従来のように、1倍幅分の極板を用いたキャパシタに適用可能なことは云うまでもない。また、活物質層のみを予め形成しておき、集電体(アルミニウム箔W1またはW1、銅箔WまたはW3)に貼り合わせた極板を有するキャパシタに適用可能なことも論を待たない。
【0084】
さらに、上記の実施形態では、セパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に粘着することにより固定する例を示したが、本発明はこれに制約されず、例えば、溶着でセパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に固定するようにしてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、金属リチウム板W5に矩形板状のものを例示したが、本発明は金属リチウム板W5の形状に制限されるものではない。例えば、円形板状のものや台形板状のものを用いるようにしてもよい。また、容器8の形状についても、円筒状に限らず、断面が楕円状、小判状、矩形状のものも使用可能である。円筒状とは、横断面形状が円形のほか、楕円状、小判状、矩形状のものも、均等物として含む。
【0086】
さらにまた、上記の実施形態では、絶縁材11にエポキシ樹脂を例示したが、他の公知の樹脂を用いることができることは論を待たない。
【0087】
また、上記の実施形態では、理解が容易なように、例として種々の数値を挙げて説明したが、特許請求の範囲で定義された数値でない限り、本発明がこれらに制限されるものでないことは云うまでもない。さらに、本実施形態では、リチウムイオンキャパシタを作製するための部材について具体的に例示したが、これらについても、特許請求の範囲で言及のない限り、本発明を制限するものではない。従って、本願出願時点で公知の部材や材料を用いることができる。
【0088】
例えば、負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズカーボンマイクロビーズ)、MCF(メゾフェーズカーボンファイバ)、コークス、VGCF(気相成長炭素繊維)、難黒鉛化性炭素、ポリアセチレン系有機半導体、カーボンナノチューブ、これらの混合物、さらにこれらまたはこれらの混合物にホウ素、珪素、窒素などを導入したものを用いることができ、比表面積も例示したものに限られるものではない。また、正極活物質には、材料表面近傍に存在する電気二重層へのリチウムイオンおよび陰イオンの吸脱着を充放電に利用できるものであれば特に制限はなく、代表的な物質として活性炭が選択される。さらに、正負活物質の粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0089】
また、負極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散エマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。
【0090】
正極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダ、PTFE系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散のエマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。正極活物質のバインダが水分散バインダであると、キャパシタの特性上特に好ましい。
【0091】
さらにまた、導電助材には、アセチレンブラックやケッチェンブラック、微粉砕した黒鉛粉末等の導電性炭素粉末を用いることもできる。
【0092】
さらに、非水電解液には、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(CF3SO2)2NLi等やこれらの混合物を用いることができる。さらにまた、非水電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよい。
【0093】
さらにまた、セパレータとしては、多孔質基材が用いられ、例えば、クラフト紙等のセルロース系の多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロポレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルム基材や、ガラス繊維からなる多孔質基材あるいはこれらを重ねて用いるようにしてもよい。
【0094】
そして、上記の実施形態では、リチウム積層体20の金属箔に銅箔を例示したが、金属箔として、例えば、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔を用いるようにしてもよい。
【0095】
また、軸芯の材質としてはポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートなどを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
2 正極板
2A,2B 分割正極板
3 負極板
4A,4B セパレータ
7 電極群
20 リチウム積層体
27 捲回装置
W1 アルミニウム箔(金属箔)
W3 銅箔(金属箔)
W5 金属リチウム
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオンキャパシタ用電極群及びその製造方法に係り、特に、金属箔に正極活物質合剤が塗着された正極板と金属箔に負極活物質合剤が塗着された負極板とを軸芯を中心として2枚のセパレータを介して捲回したリチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法及びリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題がクローズアップされる中、太陽光、風力発電等によるクリーンエネルギの蓄電システムや、自動車、ハイブリッド電気自動車等の移動体用の主電源ないし補助電源として蓄電デバイスが着目されている。蓄電デバイスとしては、従来、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が知られており、とりわけ、近時、リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
また、最近では、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせた大容量(例えば、500F以上)のリチウムイオンキャパシタないしハイブリッドキャパシタの研究開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。リチウムイオンキャパシタは、一般に、正極活物質に活性炭、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられている。リチウムイオンキャパシタに用いる電極群は、一般に、金属箔に負極活物質合剤が塗着された負極板と、第1のセパレータと、金属箔に正極活物質合剤が塗着された正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回して製造する。
【0004】
リチウムイオンキャパシタは、予め負極板にリチウムイオンが吸蔵ないしドープされていることにより、負極電位が通常の電気二重層キャパシタよりより低く保たれるため、使用電圧範囲を広くとることができ、また、正極充放電機構として、通常の電気二重層キャパシタで利用される陰イオンの吸着に加え、陽イオンの吸着も利用できるため、容量を原理的に倍取り出すことができる。また、リチウムイオン電池に比べ、容量は小さいものの、内部抵抗が小さく出力特性の点で優れるとともに、長寿命である、という利点がある。なお、本発明に関連する技術として、リチウムイオンを吸蔵ないしドープさせるための金属リチウム板を電極群内に捲回配置したリチウムイオンキャパシタが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294539号公報
【特許文献2】特開2006−286841号公報
【特許文献3】特開2007−067105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法で製造したリチウムイオンキャパシタ用電極群では、リチウムイオンをドープする際に溶解したリチウムイオンが析出して正極板と負極板との間で短絡が生じる場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、正極板と負極板との間で短絡が発生する可能性をできるだけ低減できるリチウムイオンキャパシタ用電極群、その製造方法及びリチウムイオンキャパシタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法を改良の対象とする。本発明では、所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板がその極板面に1枚以上配置される負極板を用意する。また、複数枚の分割正極板からなる正極板を用意する。軸芯に第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始する。その後、第1のセパレータに金属リチウム板が接触するように、第1及び第2のセパレータの間に負極板を挿入して負極板の捲回を開始する。そして捲回の途中で第1のセパレータと前記負極板との間にドーピング用の1枚以上の金属リチウム板を挿入する。負極板の上に金属リチウム板が予め配置されているものを用いる場合には、負極板の捲回途中で金属リチウム板の挿入を行う必要はない。そして金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成する。なお、本願明細書において、金属リチウム板は、ドーピングに使用可能なものであれば、その形態及び寸法は特に限定されるものではない。
【0009】
しかし、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることが予想される。
【0010】
そこで、本発明のように、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように正極板を捲回すれば、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。そのため、金属リチウム板のリチウムがセパレータを通過して正極板と接触することがない。その結果、正極板と負極板との間で短絡が発生することを防止することができる。
【0011】
また、極板面上に1枚以上のドーピング用の金属リチウム板を備えた負極板を用意しておけば(負極板に金属リチウム板を担持させておけば)、金属リチウム板を個別に挿入する作業が不要になり、負極板を捲回する際に金属リチウム板を電極群内に確実に配置することができる。
【0012】
電極群の径方向の中央領域に金属リチウム板の捲回層が位置するように金属リチウム板を負極板上に配置した場合は、電極群の中央領域に位置する金属リチウム板から電極群の捲回中心部及び外周部に向かってリチウムイオンが移動してリチウムイオンのドーピングが行われる。そのため、効率よくリチウムイオンのドーピングを行える。
【0013】
金属リチウム板は、イオン透過性を有する金属箔によって包むことができる。
【0014】
金属リチウム板は、ドーピングに必要な量捲回すればよい。そのため金属リチウム板が1周以下の捲回層を形成することもある。
【0015】
第1及び第2のセパレータを、重なった状態で電極群の最外周を構成するように捲回するステップをさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の方法により製造したドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群は、負極板と、該負極板の上に配置されて負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成されている。そして、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるようにn+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されている。本発明のドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群によれば、n枚以上の金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるようにn+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されているので、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。
【0017】
そのため、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合であっても、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることがない。
【0018】
なお負極板の捲回方向両端部に、表面上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板を配置してもよい。このようにすれば、電極群の中に位置する金属リチウム板に加えて負極板の捲回方向両端部に位置する金属リチウム板からもリチウムイオンのドーピングが行われる。そのため、リチウムイオンのドーピングを短い時間で行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属リチウム板の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように正極板を捲回するので、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、金属リチウム板は、セパレータを介して正極板と対向することがない。そのため、金属リチウム板のリチウムがセパレータを過通するように析出しても負極板と正極板とを接触させることがない。その結果、正極板と負極板との間の短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のリチウムイオンキャパシタの断面図である。
【図2】(A)は実施形態のリチウムイオンキャパシタの極板の捲回前の平面図であり、(B)は極板を構成する集電体の平面図である。
【図3】極板のリード片形成部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】(A)は塗工機内で極板にスラリが塗工される状態を模式的に示す平面図であり、(B)は塗工機の概略を示す構成図である。
【図5】(A)は集電体の孔明き形成部に対し一面側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図であり、(B)は集電体の孔明き形成部に両側に配置された塗工口から活物質合剤が塗工された状態を模式的に示す断面図である。
【図6】極板形成装置を模式的に示す構成図である。
【図7】切断装置でアルミニウム箔が切断される切断位置を示す平面図である。
【図8】(A)はリチウム積層体の外観斜視図であり、(B)はリチウム積層体の断面図である。
【図9】電極群を捲回する前の状態を模式的に示す説明図である。
【図10】電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【図11】図10のMを模式的に表す部分拡大図である。
【図12】捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図13】他の実施形態に用いる捲回装置の中央部を模式的に示す構成図である。
【図14】他の実施形態の電極群を模式的に示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の円筒状リチウムイオンキャパシタの実施の形態について説明する。
(構成)
<全体構成>
図1に示すように、本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ30(以下、キャパシタ30と略称する。)は、ニッケルメッキが施されたスチール製有底円筒状の容器(缶)8を有している。容器8内には、中空円筒状で縦方向に複数本(本例では3本)のスリットが形成されたポリプロピレン製軸芯1に帯状の正極板2および負極板3が第1のセパレータ4Aまたは第2のセパレータ4Bを介して捲回されて配置された電極群7が収容されている。図9〜図11に示すように、ドーピング前の電極群7内には、n枚(本例では1枚:n=1)の金属リチウム板W5が配置されている。正極板2は、n+1枚(本例では2枚)の分割正極板2A,2Bから構成されている。なお、本例では、容器8の外径は40mm、内径は39mmである。
<正極板>
前述したように、正極板2は、捲回方向に並ぶ2枚の分割正極板2A,2Bから構成されている。分割正極板2A,2Bは、長さ寸法を除いて同じ構造を有している。図2(A),(B)及び図3に示すように、分割正極板2A,2Bは、例えば、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)W1の両面に、正極活物質として活性炭を含む正極活物質合剤W2が塗着されて構成されている(図1も参照)。アルミニウム箔W1は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる正極リード片2aと、正極リード片2aに隣接して多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した正極活物質合剤W2が塗着されている。
【0022】
本例では、分割正極板2A,2Bは次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=1500mm(分割正極板2A),1550mm(分割正極板2B)、幅方向の長さa=90mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=60mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の正極活物質合剤W2の片面塗工厚=40μm(両面で80μm)、正極活物質合剤W2のかさ密度=0.5g/cm3。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。
【0023】
孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う正極リード片2aの間隔dは50mm、正極リード片2aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な正極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、正極リード片2aの先端からの正極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0024】
図2(A)および図3に示すように、正極活物質合剤W2が塗着された孔明き形成部の正極リード片2a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから正極活物質合剤W2が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に(角度δ参照)傾斜している。
<負極板>
一方、負極板3も正極板2とほぼ同じ構造を有している。すなわち、負極板3は、例えば、厚さ16μmの銅箔(負極集電体)W3の両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質合剤W4が塗着されている。銅箔W3は、長手方向に沿う一側が櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部からなる負極リード片3aと、負極リード片3aに隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とで構成されている。また、孔明き形成部は、長手方向に沿ってリード片形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している。この孔明き形成部に該孔明き形成部の幅方向の長さに満たない長さで上述した負極活物質合剤W4が塗着されている。
【0025】
本例では、負極板3は次の寸法に設定されている:長手方向の長さ=3400mm、幅方向の長さa=92mm、孔明き形成部の幅方向の長さb=62mm、未塗布部の幅方向の長さc=30mm、孔明き形成部のうち貫通孔未形成部の幅方向の長さβ=0.5mm、孔明き形成部の負極活物質合剤W4の片面塗工厚=20μm(両面で40μm)、負極活物質合剤W4のかさ密度=1.0g/cm3。また、詳細を後述するように、孔明き形成部のうちスラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ流動で合剤が塗着される幅方向の長さα=0.2mm(概ね貫通孔1個分の幅に相当)に設定されている。孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率は20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。さらに、隣り合う負極リード片3aの間隔dは50mm、負極リード片3aの幅fは5mmに設定されている。なお、最終的な負極活物質合剤の塗着幅は(e+α)、孔明き形成部の幅方向の長さb=e+(α+β)、負極リード片3aの先端からの負極活物質合剤が未塗着の幅=c+βである。
【0026】
また、正極板2と同様に、負極活物質合剤W4が塗着された孔明き形成部の負極リード片3a側の端部の断面は、上述したように、スラリ塗工幅eから負極活物質合剤W4が乾燥する前のスラリ状態で最も外側の(貫通孔未形成部に最も近い)貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込むことで、スラリ塗工幅eの塗工表面に対して鈍角状に傾斜している。
<リチウム積層体>
ここで、負極板3の負極活物質(本例では非晶質炭素)にリチウムイオンをドーピングさせるためのリチウム積層体20について説明する。なおリチウム積層体20は、本発明を実施する場合に、必ず使用することが必要なものではなく、任意に使用が選択できるものである。
【0027】
リチウム積層体20は、電極群7の径方向の中央領域において位置するように負極板3上に配置することができる。
【0028】
図8(A)、(B)に示すように、リチウム積層体20は、薄板状の金属リチウム板W5と、2枚のイオン透過性を有する銅箔W6とで構成されている。銅箔W6は負極板3を構成する銅箔W3と同じ材料を所定寸法に切断して用いることができる。すなわち、銅箔W6は、長手方向に沿う一側にタブ20aが形成されたタブ形成部と、タブ形成部に隣接して配置され多数の貫通孔が形成された孔明き形成部とを有しており、金属リチウム板W5は、2枚の銅箔W6の孔明き形成部に当接して包まれている。なお、負極板3で説明したように、孔明き形成部に形成された貫通孔は直径が0.2mmの円形で、開口率が20%であり、単位面積あたり貫通孔が略均等に形成されている。
【0029】
銅箔W6に形成された孔明き形成部の面積は金属リチウム板W5の面積より大きく、金属リチウム板W5は孔明き形成部の中央部に配置されている。金属リチウム板W5を銅箔W6に形成された孔明き形成部で挟持し金属リチウム板W5と銅箔W6を重ねてロールで圧接すると、金属リチウム板W5は粘性を発揮し、銅箔W6、金属リチウム板W5、銅箔W6の積層状態を保持することができる。
【0030】
タブ20aは銅箔W6を切り欠くことにより櫛状に形成されており、所定間隔で形成されている。また、2枚の銅箔W6に形成されたタブ20aは同じ方向に導出されている。なお、銅箔W6は、長手方向に沿って、孔明き形成部のタブ形成部に隣接する箇所に貫通孔が形成されていない貫通孔未形成部を有している(図2の幅βを有する箇所)。
【0031】
また、金属リチウム板W5の総充填量は、負極板3の負極活物質合剤にリチウムイオンを十分ドーピング可能な量に設定されるが、このような総充填量は負極活物質の材質、量を考慮して論理計算を行うとともに、実際にリチウムイオンのドーピングを行って十分にドーピングされたかを確認することで設定することができる。これにより、リチウム積層体20を量産する場合の金属リチウム板W5の面積および厚さの設定が可能となる。なお、本例では、金属リチウム板W5として厚さ500μmを選択した。
【0032】
なお、金属リチウム板W5を銅箔W6によって包んだリチウム積層体20として、金属リチウム板を負極板上に配置せずに、金属リチウム板W5をそのまま負極板3上に配置してもかまわない。本実施形態では、金属リチウム板W5をそのまま電極群7の中央領域において、負極板3上に配置する(図10参照)。
<電極群>
図9〜図11に示すように、正極板2(分割正極板2A,2B)と負極板3とが、両極板が直接接触しないように、厚さ50μmの2枚の第1のセパレータ4Aまたは第2のセパレータ4Bを介して、軸芯1を中心として断面渦巻き状に捲回されて、電極群7が構成されている。そして、図9に示すように、電極群7の径方向の中央領域において、金属リチウム板W5の捲回層が位置するように金属リチウム板W5が負極板3上に配置されている。なお、金属リチウム板W5は粘性を持つため、負極板3に固定される。もちろん、金属リチウム板W5を負極板3に圧接して固定してもよい。
【0033】
正極板2を構成する分割正極板2A,2Bは、金属リチウム板W5の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように捲回方向に所定の間隔をあけて配置されており、第1及び第2のセパレータ4A,4Bの間に順次挿入されて捲回されている。
【0034】
このようにすることにより、金属リチウム板W5は、セパレータ4A,4Bを介して正極板2(分割正極板2A,2B)と対向することはない。上述した正極リード片2aと負極リード片3aとは、それぞれ電極群7の互いに反対側に配置されており、セパレータ4A,4Bの端から所定長さ(例えば、4mm)はみ出している。電極群7は、正極板2、負極板3、セパレータ4A,4B等の長さを調整することで、所定の内直径(例えば、9mm)および所定の外直径(例えば、38±0.1mm)に設定されている。なお、電極群7の捲回終端部は、巻き解けを防止するために、粘着テープを貼り付けることで固定されている。
<キャパシタ構造>
図1に示すように、電極群7の下側には、電極群7の下端側端面に対向するように、負極板3からの電位を集電するための銅製の負極集電リング6が配置されている。負極集電リング6の内周面には軸芯1の下端部外周面が嵌着されている。負極集電リング6の外周縁には、負極板3から導出された負極リード片3aの先端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング6の下部は有底筒状部となっており、その底部と負極外部端子を兼ねる容器8の内底部に抵抗溶接で接合されている。
【0035】
なお、負極集電リング6の下部に電気的導通のための、例えば銅製の負極リード板9を配置して、負極リード板9を容器8の内底部に抵抗溶接で接合してもよい。図1では、負極集電リング6と負極リード板9とを別体とした場合を示している。前述のとおり、本例では負極集電リング6と負極リード板9とを一体としたものを負極集電リング6と呼んでいる。
【0036】
負極集電リング6(負極集電リング6と負極リード板9とが別体の場合には負極集電リング6および負極リード板9)はエポキシ樹脂等の樹脂製絶縁材11で覆われ、絶縁材11は負極集電リング6の上部から容器8の内底面まで配されている構成を採用することができる。この場合、容器8の底部は絶縁材11により詰め物がなされた状態となっている。
【0037】
一方、電極群7の上側には、電極群7の上端面と対向するように、軸芯1のほぼ延長線上に分割正極板2A,2Bからの電位を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング5が配置されている。正極集電リング5は軸芯1の上端部に嵌着されている。正極集電リング5の周囲から一体に張り出している鍔部周縁には、分割正極板2A,2Bから導出された正極リード片2aの先端部が超音波溶接で接合されている。
【0038】
正極集電リング5の上方には、正極外部端子を兼ねる容器蓋12が配置されている。容器蓋12は、下側に配置された蓋ケース12aと、上側に配置された蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁を蓋キャップ12bにかしめることで組み立てられている。なお、蓋ケース12aには、内圧上昇により開裂する開裂溝が形成されている。正極集電リング5の上面には、アルミニウム箔を積層した複数の正極リード板10のうちの一端が接合されている。当該正極リード板10の他端は、容器蓋12を構成する蓋ケース12aの外底面に接合されている。また、正極リード板10の他端同士も接合されている。
【0039】
容器蓋12は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂製ガスケット13を介して容器8の上部にかしめられている。このため、キャパシタ30の内部は密封されている。また、容器8内には、電極群7全体を浸潤可能な量の非水電解液(不図示)が注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:50:20の割合で混合した溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものが用いることができる。なお、本例のキャパシタ30の定格容量は約1,000Fである。
(製造方法)
次に、本実施形態のキャパシタ30の量産方式による製造方法を中心に説明する。
<活物質合剤の調製>
まず、正極活物質合剤および負極活物質合剤を調製する。正極活物質合剤は、例えば、正極活物質として比表面積が1000m2/g以上の活性炭と、結着剤としてアクリル系バインダと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを重量(質量)比で85:7:3:5となるように混合し、これに水(分散溶媒)を添加、混練して正極スラリを作製する。
【0040】
負極活物質合剤は、例えば、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非晶質炭素と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助材としてアセチレンブラック等の導電性炭素材とを重量(質量)比90:5:5となるように混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練して負極スラリを作製する。
<塗工>
次に、集電体へのスラリの塗工について説明する。以下、説明を簡単にするために、アルミニウム箔W1へのスラリの塗工について例示するが、銅箔W3についても同じである。図4(B)に示すように、アルミニウム箔W1への塗工は、それぞれ塗工口を有する4つの塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bと、攪拌機(不図示)を有し各塗工ヘッドにスラリを供給するスラリ貯留槽21C、21Dと、を備えた塗工装置21により行われる。上述したように作製された正極スラリは、スラリ貯留槽21C、21Dに一時的に貯留される。
【0041】
図4(A)及び(B)に示すように、本例の塗工装置21は、塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工し、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとで正極板2の幅方向で2倍幅分のスラリを塗工することで、合計4倍幅分の正極板2の塗工を同時に行うものである。
【0042】
アルミニウム箔供給部から供給されたアルミニウム箔W1は、図示しない駆動ローラおよび従動ローラを介して塗工装置21内を略垂直方向(図4の矢印V方向)に搬送される(図6も参照)。アルミニウム箔W1は搬送方向と交差する幅方向の長さがAに設定されている。塗工ヘッド21Aと塗工ヘッド21Bとは、搬送されるアルミニウム箔W1に対し、一面側(表面側)、他面側(裏面側)にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド21Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている(図4(B)参照)。同様に、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド22Bとは、搬送されるアルミニウム箔W1の一面側、他面側にそれぞれ配設されており、塗工ヘッド22Aの塗工口と塗工ヘッド21Bの塗工口とは、垂直方向で距離D(例えば、50mm)ずれた位置に配置されている。このため、本例では、図4(A)に示すように、アルミニウム箔W1の搬送方向上流側から下流側に向けて、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22A、塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aの順で配設されている。なお、塗工ヘッド22B、塗工ヘッド22Aと塗工ヘッド21B、塗工ヘッド21Aとが垂直方向でずれて配設されているのは、アルミニウム箔W1の幅に対し各塗工ヘッドを並べた合計幅が大きいためである。
【0043】
各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bの塗工口の搬送されるアルミニウム箔W1の幅方向(搬送方向と交差する方向)に対する長さは、アルミニウム箔W1のスラリ塗工幅eの2倍の2eに設定されており、塗工ヘッド21A、21Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔W1の一側端(図4(A)に示す右端)を基準として順に、幅方向の一端(右端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(左端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。一方、塗工ヘッド22A、22Bの塗工口は、搬送されるアルミニウム箔W1の他側端(図4(A)に示す左端)を基準として順に、幅方向の一端(左端)がc+(α+β)の位置、幅方向の他端(右端)が{c+(α+β)+2e}の位置に配置されている。塗工ヘッド21A、21Bの塗工口の左端と塗工ヘッド22A、22Bの塗工口の右端とには、c+2(α+β)の間隔が設定されている。
【0044】
塗工装置21では、スラリ貯留槽21C、21Dに所定エア圧を加えることによりスラリ貯留槽21C、21D内に貯留されたスラリが各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに供給され、各塗工ヘッド21A、21B、22A、22Bに所定のエア圧を加えることにより、各塗工ヘッドの塗工口から、搬送されるアルミニウム箔W1にスラリを表裏の両面とも略均等な厚さで塗工することができる。
【0045】
図5(A)に示すように、例えば、塗工機22Bの塗工口から吐出されたスラリは、搬送されるアルミニウム箔W1に形成された貫通孔内のエアを排出して他面(表面)側まで到達し、搬送されるアルミニウム箔W1に対して塗工ヘッド22Bの他面側に配置された塗工ヘッド22Aの塗工口からスラリが吐出されることにより、図5(B)に示すように、搬送されるアルミニウム箔W1の他面側にもスラリが塗工される。
<乾燥>
図6に示すように、塗工装置21の下流側には乾燥機29が配置されている。アルミニウム箔W1に塗工されたスラリ(分散溶媒を含む)は、塗工装置21を経て乾燥機29に至るまで、略垂直方向に搬送され、塗工装置21によるスラリ塗工幅2eから、スラリが乾燥する前に、上述したように、貫通孔未形成部に最も近い貫通孔まで流動して該貫通孔に入り込む(図3も参照)ことで、アルミニウム箔W1へのスラリ塗工幅は2(e+α)となり、2α分塗工幅が広がる(図7も参照)。
【0046】
乾燥機29は、垂直方向に搬送されるアルミニウム箔W1に対し水平方向両側に複数のヒータなどの熱源が所定間隔で配置されており、アルミニウム箔W1に塗工されたスラリから分散溶媒を蒸発させるものである。スラリが塗工されたアルミニウム箔W1は、乾燥機29内を略垂直方向に搬送され、ヒータなどの熱源による加熱よりスラリを構成する分散溶媒が蒸発し、アルミニウム箔W1には正極活物質合剤が2(e+α)の幅でそれぞれ塗着され(図7参照)、乾燥後に金属や各種プラスチックなどでできたパイプ状のコアを芯とした巻き取り装置にてロール状に巻き取る。
<リード片形成>
乾燥機29を出てロール状に巻き取られた正極板をリード片形成装置に移して引出し、スラリが塗工されていないアルミニウム箔W1の部分cを切り欠くことにより所定間隔で正極リード片2aを形成する。上述した切り欠きは、金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を配置し、専用ローラ対23を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、正極板をこのローラ対に通過させることにより、スラリを塗工していないアルミニウム箔W1の部分cに所定間隔で複数の正極リード片2aを形成する。この工程は専用ローラ対23に代え、所定形状に刃物を埋め込んだ打ち抜き体を装着したプレス装置を、正極板の間欠送りと連動して作動させる工程でもよい。
<プレス>
専用ローラ対23の下流側には、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1の両面を所定の線圧でプレスするヒートローラ対24が配置されている。ヒートローラ対24を構成する2本のローラはともに駆動ローラであり、ローラ内には、ニクロム線やヒートランプ等の熱源が内蔵されている。正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔は、ヒートローラ対24間を搬送され、上述した厚さおよびかさ密度に設定される。なお、以上の乾燥、プレス工程を経ることにより、正極スラリに対し正極活物質合剤の比重は1.25、固形分は30%、負極スラリに対し負極活物質合剤の比重は1.30、固形分は50%となる。
<分離>
ヒートローラ対24の下流側には、ループ機構25および切断装置26が配設されている。ループ機構25は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1の切断装置26への搬送を調整するものであり、切断装置26は、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1を切断することにより幅方向で4枚分の正極板2に分離するものである。
【0047】
ループ機構25は、アルミニウム箔W1をカイト状にループ搬送するための5つのローラで構成されている。5つのローラのうち1つのローラは水平方向に移動可能であり、常時矢印H方向にバネで付勢されている。このため、切断装置26によるアルミニウム箔W1の切断の際に、切断装置26内でアルミニウム箔W1の搬送が停止されても、1つのローラがバネで付勢され水平方向に移動することにより、搬送されるアルミニウム箔W1の張力を一定に保つことができる。
【0048】
切断装置26は、ループ機構25の下流側に配置されており、アルミニウム箔W1に対して移動(進退)可能な板状の台座と、同じく、アルミニウム箔W1に対して移動(進退)可能で複数の切断部を有するカッタと、これらの台座およびカッタの両側に配設された駆動ローラとで構成されている。なお、駆動ローラは、ループ機構25までのアルミニウム箔W1の搬送駆動源とは異なる駆動源で動作する。
【0049】
切断装置26内では、切断の際、アルミニウム箔W1の搬送が停止され(上述した駆動ローラの回転を停止し)、台座をアルミニウム箔W1側に進出させ、カッタを、アルミニウム箔W1を介して台座方向に所定スピードで進出させることで、アルミニウム箔W1を幅方向で4枚分の正極板に分離する。
【0050】
図7は、切断装置26によるアルミニウム箔W1の切断位置を示したものである。ここで、確認のため、図4と図7とを比較することで、スラリ塗工幅と活物質塗着幅との相違について簡単に説明する。上述したように、スラリ塗工幅はそれぞれ2e、両端の未塗工幅はc+(α+β)、2つのスラリ塗工幅間の未塗工幅は{c+2(α+β)}である(図4参照)。一方、乾燥機29に搬送されるまでにスラリ塗工幅は2α分広がるため、図7に示すように、活物質塗着幅はそれぞれ2(e+α)、両端の未塗工幅はc+β、2つの活物質塗着幅間の未塗工幅はc+2βとなる。
【0051】
アルミニウム箔W1の両側(左端側および右端側)には、上述した正極リード片2aが形成され、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅間の中央にも正極リード片2aが形成される。また、正極活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)の中央も切断される。従って、このような塗工方式および切断方式を採用することにより、アルミニウム箔W1の幅を正極リード片2aの長さcの分を節約することができるとともに、正極板4倍幅分の正極リード片2aを一度に形成することができる。
【0052】
図6に示すように、切断装置26では、正極活物質合剤が塗着されたアルミニウム箔W1を所定距離ずつバッチ処理により幅方向に4つに分離する。この間、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向に移動しアルミニウム箔W1のループ機構25内での張力が保たれている。切断装置26での切断(カッタによる正極板2の幅方向での4枚分の分離)が終了すると、台座およびカッタをアルミニウム箔W1から退避する方向へ移動させ、駆動ローラを回転させる。これにより、ループ機構25の上述した1つのローラは図6の矢印H方向とは反対側に移動しアルミニウム箔W1のループ機構25内での張力を保つとともに、新たに(連続して)切断対象となるアルミニウム箔W1の部分を切断装置26に搬送する。
<巻取>
切断装置26の下流側には、幅方向で4枚分の正極板に分離されたフープ状の正極板を巻き取る正極板巻取リールが所定間隔隔てて配設されている。正極板巻取リールは上述した駆動ローラの回転と同期して回転を開始し、分離された4倍幅分の正極板はロール状にそれぞれ正極板巻取リールを中心として巻き取られる。これにより、ロール状に巻き取られた(フープ状の)正極板2を得ることができる。
【0053】
なお、ロール状に巻き取られた負極板3も同様の方法で得ることができる。また、ロール状に巻き取られたリチウム積層体20の銅箔W3を作製する場合には、負極板3を作製する場合と比較し、スラリの塗布(活物質合剤の塗着)、乾燥、プレスが必要ないため、銅箔供給部から金属ローラに所定形状の刃物を埋め込んだ専用ローラ対23を通してループ機構25または切断装置26に直接供給するようにしてもよいし、塗工装置21、乾燥機29およびヒートローラ対24での処理を行うことなく単に通過させるようにしてもよい。
<捲回>
電極群7は、図9に示すように、負極板3と、第1のセパレータ4Aと、正極板2(分割正極板2A,2B)と、第2のセパレータ4Bとを順次重なるように軸芯1を中心として捲回して構成される。
【0054】
電極群7の形成(捲回)は捲回装置で行われる。図12は、本例で使用される捲回装置27の要部(中央部)を模式的に示したものである。捲回装置27は、軸芯1を装着、回転可能な軸芯回転部(不図示)を有している。捲回装置27には、捲回軸下部左から、反時計回りの方向に、負極板3を供給する負極板供給部S1、第1のセパレータ4Aを供給する第1のセパレータ供給部S2、正極板2を供給する正極板供給部S3、第2のセパレータ4Bを供給する第2のセパレータ供給部S4の順で極板及びセパレータの供給部が配置されており、負極板供給部S1と第1のセパレータ供給部S2との間に金属リチウム板W5を供給する金属リチウム板供給部S5が配置されている。各供給部はフープ状の供給物を所定長さで切断するカッタ(不図示)を有するとともに、搬送ローラ27aを有している。
【0055】
オペレータが操作ボタンを押下すると、図示しないロボットアームにより軸芯1が軸芯回転部に装着され、第1および第2のセパレータ供給部S2,S4からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が開始され、第1及び第2のセパレータ4A、4Bのそれぞれの一方の端部が粘着テープで軸心1に固定される。固定後、軸芯1の回転および第1および第2のセパレータ供給部S2,S4からそれぞれセパレータ4A、4Bの供給が再開される。これにより、セパレータ4A、4Bは、少なくとも1周、好ましくは2〜5周、軸芯1の周りに捲回される(図9も参照)。
【0056】
次に、第1及び第2のセパレータ4A,4Bの間に負極板供給部S1から負極板3を挿入して負極板3の捲回を開始する。続いて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に正極板供給部S3から正極板2(分割正極板2A)を挿入して正極板2(分割正極板2A)の捲回が開始される。分割正極板2Aの長さ分の捲回が終了した後、正極板供給部S3はカッタで正極板2を切断する。正極板2が切断されるまでの部分が分割正極板2Aになる。更に捲回を継続して負極板3の捲回方向のほぼ中央に金属リチウム板W5を配置するため、負極板3を捲回している途中で、金属リチウム板供給部S5から金属リチウム板W5が第1のセパレータ4Aと負極板3との間に挿入される。金属リチウム板供給部S5は、金属リチウム板層が1ターンを形成する前に、カッタで金属リチウム板を切断する。金属リチウム板W5を捲回している間も、負極板3,第1及び第2のセパレータ4A及び4Bの捲回は継続されている。したがって第1及び第2のセパレータ4A,4Bが金属リチウム板W5の上に直接重なった状態の捲回が継続される。負極板3に添って金属リチウム板W5の捲回を終了した後、少ししてから正極板供給部S3からの正極板2(分割正極板2B)の捲回が開始される。分極割正極板2Bの長さ分に相当する長さの捲回が終了した後、カッタにより正極板を切断する。
【0057】
一般的に説明すると、電極群内には、n枚(本例では1枚:n=1)の金属リチウム板W5が捲回され、正極板2としては、n+1枚(本例では2枚)の分割正極板(2A,2B)が捲回されることになる。以上により、金属リチウム板W5の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように(金属リチウム板W5が第1のセパレータ4Aを介して正極版2と対向しないように)2枚の分割正極板2A,2Bが捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に順次挿入して捲回されることになる。
【0058】
正極板供給部S3が、図示しないカッタで分割正極板2Bが所定の長さとなるように切断した後も、負極板3は負極板供給部S1から供給されて捲回が続けられる。そして捲回された負極板3の長さが所定長さになると、負極板はカッタで切断され、負極板3の供給が停止される。
【0059】
第1および第2のセパレータ供給部S2,S4は、なおも第1及び第2のセパレータ4A、4Bの供給を続行し、少なくとも1周、好ましくは2〜3周捲回可能な長さに至ると、カッタでセパレータ4A、4Bを切断し、セパレータ4A、4Bの供給を停止する(図9も参照)。従って、セパレータ4A、4Bは捲回途中で切断されることはない。軸芯回転部は、なおも軸芯1を回転させ、セパレータ4A、4Bが電極群7の外周を構成するまで回転を継続して、軸芯1の回転を停止後、重ねて切断し終端位置を合わせる。次に、電極群7の外周に捲回されたセパレータ4A、4Bの巻き解けを防止するために、電極群7の長手方向に沿って粘着テープが貼り付けられる。粘着テープの貼付は、図示を省略したテープ貼付部により行われる。次いで、電極群7(軸芯1)は、図示しないロボットアームにより軸芯回転部から取り外され、所定位置に配置され軸芯1を支持するための支持部を有する載置台上に載置され、1つの電極群7の捲回が終了する。
【0060】
負極板3の途中に、金属リチウム板W5を挿入するための挿入制御及び分割正極板2A及び2Bを挿入するための挿入制御は、制御監視にエンコーダ用いてパルス数を管理するとともに、軸芯1の回転数を監視することで行うことができる。
【0061】
なお、上記例では、金属リチウム板W5を負極板3とは別個に挿入して電極群7内に捲回しているが、負極板3の極板面上に予め金属リチウム板W5を配置しておき、金属リチウム板W5を負極板3と一緒に捲回してもよい。この場合、図13に示すような捲回装置27’を用いる。捲回装置27’では、図12示した金属リチウム板供給部S5が除かれている。したがって図12に示す捲回装置と比べて、捲回装置27′は構成が簡単になる。
【0062】
図8に示すようなリチウム積層体20を前述の金属リチウム板W5の代わりに使用してもよい。その場合には、図12に示すように金属リチウム板供給部S5の代わりにリチウム積層体供給部を設ければよい。
【0063】
図12及び図13に示したいずれの捲回装置を用いても、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように2枚の分割正極板2A,2Bが捲回方向に所定の間隔をあけて、第2及び第1のセパレータ4B,4Aの間に順次挿入して捲回されることになる。
<組立>
図1に示すように、正極リード片2aを変形させ、その全てを、電極群7の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング5の周面付近に集合させ、接触させた後、正極リード片2aの先端部と周面とを超音波溶接して正極リード片2aを周面に接合する。一方、負極集電リング6と負極リード片3aとの接続操作も、正極集電リング5と正極リード片2aとの接合操作と同様に接合する。また、リチウム積層体20を使用する場合には、リチウム積層体20のタブ20aの先端部も同様に負極集電リング6に接合する。リチウム積層体20を用いずに金属リチウム板W5を負極板3の側面に直接添わせる場合には、特にタブ20aに相当するものを設ける必要はない。なお、タブ20aおよび負極リード片3aの負極集電リング6への接合は同時に行われる。
【0064】
その後、正極集電リング5の周面全周に絶縁被覆を施す。すなわち、粘着テープを正極集電リング5の周面から電極群7外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、電極群7を容器8内に挿入する。絶縁被覆には、例えば、基材がポリイミドやポリフェニリンサルファイドで、その片面にアクリレート系粘着剤を塗布した粘着テープを用いることができる。
【0065】
負極集電リング6(負極集電リング6と負極リード板9とが別体の場合には負極集電リング6および負極リード板9)の下部は有底筒状部となっており、その底部とを抵抗溶接により接合する。次いで、軸芯1の内周を利用して所定量のエポキシ樹脂を所定量注入することが好ましい。この場合、上述したように、軸芯1には縦方向に複数本のスリットが形成されているため(図9も参照)、エポキシ樹脂は、これらのスリットを介して容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで進入し、負極リード板9および負極集電リング6はエポキシ樹脂で埋没するように覆われる。所定時間経過すると、注入されたエポキシ樹脂は固化して絶縁材11が形成される。
【0066】
一方、正極集電リング5には、正極リード板10を溶接しておき、正極リード板10の他端を、容器8を封口するための容器蓋12の下面(蓋ケース12aの外底面)に接合する。上述したように、容器蓋12は、蓋ケース12aと蓋キャップ12bとで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12aの周縁をかしめることによって予め組立てられている。なお、蓋ケース12aには、何らかの異常でリチウムイオンキャパシタの内圧が上昇したときに、安全のために所定の内圧に達したときに開裂する開裂溝が形成されている。開裂溝の開裂により、リチウムイオンキャパシタの内圧が開放される。
【0067】
次に、軸芯1の内周を利用して非水電解液を所定量容器8内に注入する。このような注液は安全性を確保するため低温環境下がよい。上述したように、軸芯1には複数本のスリットが形成されているため、これらのスリットを介して電極群7は非水電解液に浸潤される。その後、正極リード板10を折りたたむようにして容器蓋12で容器8に蓋をし、ガスケット13を介してかしめて密封することにより、キャパシタ30を作製する。
(負極活物質へのリチウムのドーピング)
次に、本実施形態のキャパシタ30において、金属リチウム板W5の負極活物質(非晶質炭素)へのドーピング(吸蔵)方法について説明する。なお説明の都合上、前述のリチウム積層体20を用いる場合を例として説明する。
【0068】
本例では、所定温度(例えば、室温)に管理された貯蔵室に所定期間(例えば、2週間〜4週間)、キャパシタ30を放置することでリチウムイオンを負極活物質にドーピングさせる。リチウム積層体20のタブ20aは負極リード片3aとともに負極集電リング6に接合されているため、負極電位とリチウム電位との電位差により、所定期間の放置することで、金属リチウムW5は溶解し、負極板3の負極活物質(非晶質炭素)にドーピングされる。これにより、リチウム積層体20に挟持された金属リチウムW5は溶解し、リチウム積層体20はそれぞれ2枚の銅箔W3のみが残存配置されることになる。
(作用等)
次にキャパシタ30の作用等について説明する。
【0069】
本実施形態によれば、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20の上に第1及び第2のセパレータ4A,4Bが直接重なるように分割正極板2A,2Bを捲回するので、リチウムイオンキャパシタ用電極群の製造後において、リチウム積層体20は、セパレータ4Aを介して正極板2(分割正極板2A,2B)と対向することがない。そのため、例えば金属リチウム板が折れ曲がった状態で捲回された場合、セパレータを突き破り正極と接触して、金属リチウム板と正極間で短絡を生じることがあるが、本実施形態ではそのような現象を防ぐことができる。
【0070】
また、極板面上に1枚以上の所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板W5を備えた負極板3を用意する場合には、比較的長さ寸法の小さい金属リチウム板W5を単独で捲回する必要がなく、負極板3を捲回することで電極群内に金属リチウム板W5を確実に配置することができる。
【0071】
次に、本実施形態のキャパシタ30によれば、金属リチウム板W5または金属リチウム板W5を備えたリチウム積層体20を電極群7内に予め配置しておき、所定期間放置することで、金属リチウム板W5が溶解して負極板3の負極活物質にドーピングされることで、予め実施するドーピング操作を容易に行うことができる。
【0072】
金属リチウム板W5を両面から銅箔W6で挟持したリチウム積層体20は、両面の銅箔W6に負極板3へ接続するためのタブを設けることにより、同一面積の金属リチウム板W5に対して銅箔W6に形成されたタブの密度が倍になる。金属リチウム板W5の片面に銅箔W6を貼付けた場合に比べて、負極板との接続抵抗が下がるので、リチウムイオンの負極板へのドーピングが進みやすくなる。
【0073】
ところで、本実施形態のように、金属リチウム板W5を負極板に電気的に接触させて金属リチウムと負極板の電位差だけでリチウムイオンのドーピングを行う場合、負極板のドーピング深度が深くなるとその後のドーピングがほとんど進まなくなる。そのため、容器8内に配置した金属リチウム板W5が完全に負極板にドーピングされ、容器8内に残らないようにするためには、理論量よりも少ない量を配置せざるを得ない場合が起こり得る。その一方で、キャパシタのフロート充電を例にとって考えると、長期間高温、高電圧でフロート充電した場合、電解液中のリチウムイオンと正極活物質および負極活物質との反応が進んで、負極板から徐々にリチウムイオンが非可逆的に抜けてゆく。従って、予め負極板にドーピングさせるリチウムイオンが多いほど(理論量に近いほど)キャパシタの信頼性は高くなる。
【0074】
さらに、本実施形態のキャパシタ30では、正極板2、負極板3、リチウム積層体20のそれぞれを構成するアルミニウム箔W1および銅箔W6のリード片ないしタブに隣接する箇所に貫通孔未形成部が形成されているとともに、リチウム積層体20では、孔明き形成部の面積が金属リチウム板W5の面積より大きく設定されている。このため、正極板2、負極板3、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20をセパレータ4を介して捲回し電極群7を構成しても、正極板2、負極板3、金属リチウム板W5の捲回で、アルミニウム箔W1や銅箔W6に塗着されたり挟持された活物質合剤や金属リチウム板により、リード片ないしタブの基部が膨らんだり、エッジ状の突出部が形成されることなく、長期使用によっても、セパレータ4A,4Bの破断や破断による内部短絡を防止することができる。従って、長寿命のキャパシタ30を得ることができる。なお、図3に示した活物質合剤の端部構造もこの利点を助長している。
【0075】
また、本実施形態のキャパシタ30では、正負極板のアルミニウム箔W1および銅箔W3の両面に活物質合剤が塗着されており、該活物質合剤は孔明き形成部を介して連通しているとともに、スラリ塗布時に塗工口がずらされた表裏面2つの塗工機でスラリの塗工が行われ、アルミニウム箔W1の垂直搬送が行われるので、貫通孔にエアが残留することを防止することができる。従って、キャパシタ30のエネルギ密度を高めることができるとともに、内部抵抗を低減させることができる。とりわけ、本実施形態では、貫通孔の各面積が8×10−7m2以下の1.3×10−7m2(=0.2mm×0.2mm×π)で略均等に設定され、貫通孔の開口率が20%に設定されているので、量産工程において金属箔への活物質合剤の塗着が容易で、かつ、キャパシタ全体の内部抵抗を小さくすることができる。換言すれば、貫通孔の各面積が8×10−7m2を超えるとスラリの均一塗工(活物質合剤の集電体への均一塗着)が難しくなり(特に、貫通孔への活物質合剤の充填および凸凹の発生)、また、電極群を構成したときに正負極板の強度の弱化を招く。なお、貫通孔の各面積が小さい場合には、リチウムイオンの移動距離を短くし内部抵抗の増加を避けるために、アルミニウム箔W1および銅箔W6にリチウムイオンが通過可能なように単位面積あたりの貫通孔を多く形成することが好ましい。
【0076】
さらにまた、本実施形態のキャパシタ30では、上述したように、極板を作製する際に、幅方向で4倍幅分を一度に(連続工程で)作製するとともに、アルミニウム箔W1の幅を1つの極板のリード片分ないし1つのリチウム積層体のタブ分の長さcだけ小さくすることができる。このため、生産性が向上するとともに、コストの低減を図ることができる。さらに、本実施形態のキャパシタ30では、負極板3の銅箔W3とリチウム積層体20の銅箔W6とを同じ材料としたので、部品管理が容易となるとともに、コスト低減を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態のキャパシタ30では、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで絶縁材11により詰め物がなされている。このため、金属リチウムW5からのリチウムイオンが負極活物質にドーピングされずに、他の負極板を構成する部材に析出してセパレータ4の破断等を招くことを防止するとともに、論理総充填量に近い金属リチウム板W5の総充填量を設定でき、金属リチウム板W5の厚さを極力薄くすることが可能となり、電極群7の捲回構成の脆弱化を防止することができる。さらに、容器8の内底面から負極集電リング6の上部まで絶縁材11を配することにより、遊離電解液をなくすことができる。
【0078】
従って、本実施形態のキャパシタ30よれば、内部抵抗、エネルギ密度、寿命等のキャパシタとしての特性が優れているとともに、量産性に優れたキャパシタを実現することができる。また、本実施形態のキャパシタ30は大容量の1,000Fであり、複数のキャパシタ30を並列ないし直列接続したキャパシタシステムを構成することにより、例えば、自動車のエンジン始動を連続して複数回行うことができる。
【0079】
なお、上記の実施形態では、電極群7の中央領域において、負極板3上にリチウム積層体20を配置した例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、図14に示すように、電極群107の中央領域に配置した金属リチウム板W5に加えて捲回中心領域及び捲回外周領域において、負極板3上に2つの金属リチウム板W15,W25を配置してもよい。この場合には、金属リチウム板またはリチウム積層体の上に第1及び第2のセパレータが直接重なるように(リチウム積層体の上にセパレータを介して正極板が配置されないように)、2つの金属リチウム板W15,W25が位置する両端部分を削除するように長さ寸法を短かくする。そして、正極板を第1及び第2のセパレータの間に挿入して捲回する。
【0080】
なお、上記の実施形態では、捲回装置27において、各供給部からフープ状の供給物(正極板2、負極板3、セパレータ4A、4B、金属リチウム板W5またはリチウム積層体20)を供給する例を示したが、所定長さで1つ分の電極群7を作製するための長さに予め切断された供給物を各供給部から供給するようにしてもよい。このような態様では、上述したカッタは不要となる。
【0081】
また、上記の実施形態では、両面に活物質合剤が塗着された極板を例示したが、本発明はこれに限ることなく、片面のみに活物質合剤が塗着された極板にも適用が可能である。さらに、本実施形態では、正負極板およびリチウム積層体の孔明き形成部に円形の貫通孔を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、貫通孔の形状は、例えば、三角形、四角形等の多角形、星形、台形等の任意の形状を採ることができる。また、正負極板およびリチウム積層体の孔明き形成部の貫通孔の開口率に20%のものを例示したが、これについても本発明を制限するものはない。開口率としては、例えば、5%〜55%、好ましくは、10%〜40%、より好ましくは、10%〜25%とすることができる。
【0082】
またさらに、上記の実施形態では、2枚のセパレータ4A、4Bを使用する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。すわなち、1枚のセパレータを折り返して使用すれば2枚のセパレータと同じく使用でき、1枚のセパレータに代えて、薄いセパレータを例えば2枚ないし3枚ずつ重ねて使用することができる。従って、本発明者らは、このような態様も本発明の「2枚のセパレータ」と同じ意味であるかまたは均等のものと考えている。
【0083】
また、上記の実施形態では、幅方向で4倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を例示したが、本発明はこれに限ることなく、例えば、6倍幅分のフープ状極板を得る極板形成装置を用いるようにしてもよい。この場合には、活物質合剤が塗着された合剤塗着幅2(e+α)間の未塗着箇所(幅c+2β)が2つ形成されるので、アルミニウム箔供給部から供給されるアルミニウム箔の幅を2c分節約することができる。なお、本発明は、従来のように、1倍幅分の極板を用いたキャパシタに適用可能なことは云うまでもない。また、活物質層のみを予め形成しておき、集電体(アルミニウム箔W1またはW1、銅箔WまたはW3)に貼り合わせた極板を有するキャパシタに適用可能なことも論を待たない。
【0084】
さらに、上記の実施形態では、セパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に粘着することにより固定する例を示したが、本発明はこれに制約されず、例えば、溶着でセパレータ4A、4Bの捲回開始端を軸芯1に固定するようにしてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、金属リチウム板W5に矩形板状のものを例示したが、本発明は金属リチウム板W5の形状に制限されるものではない。例えば、円形板状のものや台形板状のものを用いるようにしてもよい。また、容器8の形状についても、円筒状に限らず、断面が楕円状、小判状、矩形状のものも使用可能である。円筒状とは、横断面形状が円形のほか、楕円状、小判状、矩形状のものも、均等物として含む。
【0086】
さらにまた、上記の実施形態では、絶縁材11にエポキシ樹脂を例示したが、他の公知の樹脂を用いることができることは論を待たない。
【0087】
また、上記の実施形態では、理解が容易なように、例として種々の数値を挙げて説明したが、特許請求の範囲で定義された数値でない限り、本発明がこれらに制限されるものでないことは云うまでもない。さらに、本実施形態では、リチウムイオンキャパシタを作製するための部材について具体的に例示したが、これらについても、特許請求の範囲で言及のない限り、本発明を制限するものではない。従って、本願出願時点で公知の部材や材料を用いることができる。
【0088】
例えば、負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メゾフェーズカーボンマイクロビーズ)、MCF(メゾフェーズカーボンファイバ)、コークス、VGCF(気相成長炭素繊維)、難黒鉛化性炭素、ポリアセチレン系有機半導体、カーボンナノチューブ、これらの混合物、さらにこれらまたはこれらの混合物にホウ素、珪素、窒素などを導入したものを用いることができ、比表面積も例示したものに限られるものではない。また、正極活物質には、材料表面近傍に存在する電気二重層へのリチウムイオンおよび陰イオンの吸脱着を充放電に利用できるものであれば特に制限はなく、代表的な物質として活性炭が選択される。さらに、正負活物質の粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0089】
また、負極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散エマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。
【0090】
正極活物質の結着剤には、エチレンアクリル酸系バインダ、ポリアクリル酸系バインダ、SBR系バインダ、NBR系バインダ、PVDF系バインダ、PVA系バインダ、PTFE系バインダおよびこれらの混合物等を用いるようにしてもよく、これらの水分散エマルジョンを用いることもできる。バインダに水分散のエマルジョンを用いる場合は、好ましくはカルボキシメチルセルロースやPVA等の、高粘度の分散剤を添加する。正極活物質のバインダが水分散バインダであると、キャパシタの特性上特に好ましい。
【0091】
さらにまた、導電助材には、アセチレンブラックやケッチェンブラック、微粉砕した黒鉛粉末等の導電性炭素粉末を用いることもできる。
【0092】
さらに、非水電解液には、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(CF3SO2)2NLi等やこれらの混合物を用いることができる。さらにまた、非水電解液の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよい。
【0093】
さらにまた、セパレータとしては、多孔質基材が用いられ、例えば、クラフト紙等のセルロース系の多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロポレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の多孔質フィルム基材や、ガラス繊維からなる多孔質基材あるいはこれらを重ねて用いるようにしてもよい。
【0094】
そして、上記の実施形態では、リチウム積層体20の金属箔に銅箔を例示したが、金属箔として、例えば、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔を用いるようにしてもよい。
【0095】
また、軸芯の材質としてはポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートなどを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
2 正極板
2A,2B 分割正極板
3 負極板
4A,4B セパレータ
7 電極群
20 リチウム積層体
27 捲回装置
W1 アルミニウム箔(金属箔)
W3 銅箔(金属箔)
W5 金属リチウム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法において、
複数枚の分割正極板からなる前記正極板を用意し、
前記軸芯に前記第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始し、
その後、前記第1及び第2のセパレータの間に前記負極板を挿入して前記負極板の捲回を開始し、捲回の途中で前記第1のセパレータと前記負極板との間にドーピング用の1枚以上の金属リチウム板を挿入し、
前記金属リチウムの上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項2】
負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法において、
極板面上に1枚以上の所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板を備えた前記負極板を用意し、
複数枚の分割正極板からなる前記正極板を用意し、
前記軸芯に前記第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始し、
その後、前記第1のセパレータに前記金属リチウム板が接触するように、前記第1及び第2のセパレータの間に前記負極板を挿入して前記負極板の捲回を開始し、
前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項3】
前記電極群の径方向の中央領域に前記金属リチウム板の捲回層が位置するように前記金属リチウム板が前記負極板上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項4】
前記金属リチウム板がイオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項5】
前記金属リチウム板は、1周以下の捲回層を形成する捲回方向長さを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のセパレータを、前記電極群の最外周を構成するように捲回するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
負極板と、前記負極板の上に配置されて前記負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成され、
前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記n+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されていることを特徴とするドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項8】
前記負極板の捲回方向両端部に、表面上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板が配置されていることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項9】
前記金属リチウム板がイオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項10】
金属製有底円筒状の容器に、セパレータを介して正極板及び負極板が捲回された電極群が収容されたリチウムイオンキャパシタであって、
前記電極群は、負極板と、前記負極板の上に配置されて前記負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成され、前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記n+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第1及び第2のセパレータの間に挿入配置され、
前記電極群の一方は、前記負極板に接続される負極集電リングを介して前記容器に接続され、
前記電極群の他方は、前記正極板に接続される正極集電リングを介して容器蓋に接続され、
ていることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項11】
前記負極板の捲回方向両端部に、表面上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板が配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
前記金属リチウム板が、イオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項1】
負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法において、
複数枚の分割正極板からなる前記正極板を用意し、
前記軸芯に前記第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始し、
その後、前記第1及び第2のセパレータの間に前記負極板を挿入して前記負極板の捲回を開始し、捲回の途中で前記第1のセパレータと前記負極板との間にドーピング用の1枚以上の金属リチウム板を挿入し、
前記金属リチウムの上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項2】
負極板と、第1のセパレータと、正極板と、第2のセパレータとを、順次重なるように軸芯を中心として捲回してリチウムイオンキャパシタ用電極群を製造する方法において、
極板面上に1枚以上の所定の長さを有するドーピング用の金属リチウム板を備えた前記負極板を用意し、
複数枚の分割正極板からなる前記正極板を用意し、
前記軸芯に前記第1及び第2のセパレータのそれぞれの一方の端部を固定して捲回を開始し、
その後、前記第1のセパレータに前記金属リチウム板が接触するように、前記第1及び第2のセパレータの間に前記負極板を挿入して前記負極板の捲回を開始し、
前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記複数枚の分割正極板を捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第2及び第1のセパレータの間に順次挿入して捲回することによりドーピング前の電極群を形成することを特徴とするリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項3】
前記電極群の径方向の中央領域に前記金属リチウム板の捲回層が位置するように前記金属リチウム板が前記負極板上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項4】
前記金属リチウム板がイオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群の製造方法。
【請求項5】
前記金属リチウム板は、1周以下の捲回層を形成する捲回方向長さを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のセパレータを、前記電極群の最外周を構成するように捲回するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
負極板と、前記負極板の上に配置されて前記負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成され、
前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記n+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第1及び第2のセパレータの間に挿入配置されていることを特徴とするドーピング前のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項8】
前記負極板の捲回方向両端部に、表面上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板が配置されていることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項9】
前記金属リチウム板がイオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項7に記載のリチウムイオンキャパシタ用電極群。
【請求項10】
金属製有底円筒状の容器に、セパレータを介して正極板及び負極板が捲回された電極群が収容されたリチウムイオンキャパシタであって、
前記電極群は、負極板と、前記負極板の上に配置されて前記負極板よりも長さが短いn枚(nは1以上の整数)の金属リチウム板と、第1のセパレータと、複数枚の分割正極板からなる正極板と、第2のセパレータとが、順次重なるように軸芯を中心として捲回されて構成され、前記金属リチウム板の上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように前記n+1枚の分割正極板が捲回方向に所定の間隔をあけて、前記第1及び第2のセパレータの間に挿入配置され、
前記電極群の一方は、前記負極板に接続される負極集電リングを介して前記容器に接続され、
前記電極群の他方は、前記正極板に接続される正極集電リングを介して容器蓋に接続され、
ていることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項11】
前記負極板の捲回方向両端部に、表面上に前記第1及び第2のセパレータが直接重なるように更に金属リチウム板が配置されていることを特徴とする請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項12】
前記金属リチウム板が、イオン透過性を有する金属箔によって包まれていることを特徴とする請求項10に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−139006(P2011−139006A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209(P2010−209)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
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