説明

リニアアクチュエータ

【課題】 モータ部の回転シャフトの回転量と出力ロッドの移動量との関係を該モータ部に手を加えることなく変更する。
【解決手段】 中空状回転シャフト2を備えたモータ部1と、中空状回転シャフト2に貫通させた出力ロッド16−1とを備え、中空状回転シャフト2の回転運動を利用して出力ロッド16−1を直動させるようにしたリニアアクチュエータであって、モータ部1と、中空状回転シャフト2の回転運動を出力ロッド16−1の直線運動に変換させる運動変換手段とをそれぞれモジュール化し、それらを着脱自在に連結した構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ部の回転運動を出力ロッドの直線運動に変換するリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のリニアアクチュエータの一例を示した縦断面図である。このリニアアクチュエータにおいて、モータ部Aは、中空状の回転シャフトBと、この回転シャフトBの外周に一体形成した回転子Cと、この回転子Cの外周囲に形成した固定子Dとで構成されている。
このリニアアクチュエータの出力ロッドであるボールネジ軸Eは、回転シャフトBを貫通し、該回転シャフトBの内周面全域に亘って形成されたネジ溝と鋼球Fを介して螺合している。
したがって、モータ部Aの固定子Dへの通電によって回転シャフトBが回転すると、ボールネジ軸Eが左右方向に直線運動する。すなわち、回転シャフトBの回転運動がボールネジ軸Eの直線運動に変換される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記リニアアクチュエータは、中空状回転シャフトBにボールネジ軸Eを貫通させた構成を有するので、構造の簡素化と小型化を図ることができる。
しかし、回転シャフトB自身にボールネジ軸Eを移送するためのネジ溝を形成しているので、以下のような問題点がある。
【0004】
すなわち、上記回転シャフトBの回転量とボールネジ軸Eの移動量との関係は、両者のネジのピッチによって規定されるので、この関係が異なる別仕様のリニアアクチュエータを製造する場合には、ボールネジ軸Eのネジのピッチだけでなく、モータ部Aの構成要素である回転シャフトBのネジピッチも変更しなければならない。
つまり、従来のリニアアクチュエータの構造では、上記別仕様のリニアアクチュエータを製造するに際して、モータ部Aを共通使用することが不可能であり、これは製品コストを上昇させる要因になっている。
本発明の課題は、このような状況に鑑み、モータ部の回転シャフトの回転量と出力ロッドの移動量との関係を該モータ部に手を加えることなく変更することができるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、中空状回転シャフトを備えたモータ部と、該中空状回転シャフトに貫通させた出力ロッドとを備え、前記中空状回転シャフトの回転運動を利用して前記出力ロッドを直動させるようにしたリニアアクチュエータであって、前記モータ部と、前記中空状回転シャフトの回転運動を前記出力ロッドの直線運動に変換させる運動変換手段とをそれぞれモジュール化し、それらを着脱自在に連結した構成を有する。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記運動変換手段が、前記出力ロッドの一端に連接したネジロッドと、該ネジロッドに螺合させたネジナットと、前記回転シャフトに着脱自在に連結され、該回転シャフトの回転動力を前記ネジナットに伝達する動力伝達手段と、を備えた構成を有する。
【0007】
第3の発明は、第1の発明において、前記出力ロッドを中空状に形成し、前記運動変換手段が、前記出力ロッドの内周面に設けたネジナットと、前記出力ロッドに挿入されて前記ネジナットに螺合するネジロッドと、、前記回転シャフトに着脱自在に連結されて該回転シャフトの回転動力を前記ネジロッドに伝達する動力伝達手段と、を備えた構成を有する。
【0008】
第4の発明は、第1の発明において、前記出力ロッドの周面にネジ溝を形成し、前記運動変換手段が、前記出力ロッドに螺合されたネジナットと、前記回転シャフトに着脱自在に連結されて該回転シャフトの回転動力を前記ネジナットに伝達する動力伝達手段と、を備えた構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、モータ部と、このモータ部の中空状回転シャフトの回転運動を前記出力ロッドの直線運動に変換させる運動変換手段とをそれぞれモジュール化して、それらを着脱自在に連結した構成を有するので、モータ部の回転量と出力ロッドの移動量との関係が異なる別仕様のリニアアクチュエータを製造する場合に、モータ部には全く手を加える必要が無い。それゆえ、モータ部を共通の動力モジュールとして利用することが可能になり、それによって、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るリニアアクチュエータの第1の実施形態を示した断面図。
【図2】本発明に係るリニアアクチュエータの第2の実施形態を示した断面図。
【図3】本発明に係るリニアアクチュエータの第3の実施形態を示した断面図。
【図4】従来のリニアアクチュエータの構造を例示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係るリニアアクチュエータの一実施形態を示している。このリニアアクチュエータにおいて、モータ部1は、中空状の回転シャフト2と、該回転シャフト2の外周面に一体形成したロータ3と、該ロータ3の周囲に設けたステータ4とを備えている。
【0012】
回転シャフト2は、小径部2aと大径部2bとを有する。そして、小径部2aはベアリング5を介して前部ハウジング6に支持され、大径部2bはベアリング7を介して後部ハウジング8に支持されている。上記大径部2bの後端外周にはナット9,10が螺合され、これによって、上記ベアリング7のインナーがこの大径部2bに締着されている。
【0013】
モータ部1は、上記のような構成を有するので、ステータ4に設けられた図示していない界磁コイルを励磁することにより、回転シャフト2がロータ3と共に回転する。
上記ナット10の外側面には、ボルト11を介してホルダトランス12が固着され、また、該ホルダトランス12の内側面には、ボルト13を介して保持ブロック14が固着されている。
上記保持ブロック14は、回転シャフト2の大径部2bの端部内に同軸状に位置されており、回転シャフト2の軸線上に位置する中央部位にネジナット15を貫通固着してある。
【0014】
回転シャフト2の小径部2aには、出力ロッド16−1を摺動可能に挿入してある。この出力ロッド16−1は、前端部が公知の回り止めブッシュ17を介して前記前部ハウジング5に支持されている。また、出力ロッド16−1は、後端にネジロッド18を連接し、このネジロッド18を上記保持ブロック14のネジナット15に螺合してある。
【0015】
上記構成のリニアアクチュエータは、次のように作動する。すなわち、モータ部1の回転シャフト2が回転すると、その回転力が前記ナット10およびホルダトランス12を介して保持ブロック14に伝達され、その結果、該保持ブロック14に固着されたネジナット15が回転シャフト2と共に回転する。
ネジロッド18は、前記回り止めブッシュ17によってその回動が抑制されている。このため、上記ネジナット15の回転に伴って上記ネジロッド18に軸線方向の推力が発生し、その結果、出力ロッド16−1が左右方向に直線運動することになる。
【0016】
上記リニアアクチュエータは、物体の直線移動などに利用される。もちろん、出力ロッド16−1の位置決め制御も可能であり、その際、ネジロッド18の後端等に出力ロッド16−1の実際の位置を検出する適宜なセンサが付設される。
なお、出力ロッド16−1にガイド部材を固定し、このガイド部材を図示していない外部摺動フレームに沿って摺動させる使用形態を採用する場合には、このガイド部材と摺動フレームが出力ロッド16−1の回り止め手段としての機能も持つことになる。この場合、上記回り止めブッシュ17に代えて、回り止め機能を持たない公知のスプラインブッシュを使用することが可能である。
【0017】
ところで、上記リニアアクチュエータでは、モータ部1の回転シャフト2にネジナット手段としての機能を持たせないで、保持ブロック14のネジナット15に同機能を持たせてある。そして、ネジナット15を備えた上記保持ブロック14は、ボルト11およびホルダトランス12を介して回転シャフト2に着脱自在に設けられている。
それ故、ネジロッド18および出力ロッド16−1からなる運動変換手段を、回転運動を直線運動に変換する運動変換モジュールとしてモータ部1から独立させることができる。なお、ホルダトランス12、保持ブロック14は、回転シャフト2の回転動力をネジナット15に伝達する動力伝達手段としての機能を有する。
【0018】
上記の構成によれば、モータ部1の回転量と出力ロッドの移動量との関係が異なる別仕様のリニアアクチュエータを製造する場合に、モータ部1の構成の変更が不要になる。
すなわち、上記別仕様のリニアアクチュエータを製造する場合には、個々の仕様に適合するネジピッチを有したネジナット15およびネジロッド18を採用することになる。そこで、個々の仕様に適合するネジナット15およびネジロッド18を有した運動変換モジュールを予め用意しておくことにより、モータ部1には全く手を加えることなく仕様変更に対応することができる。
そして、このことは、個々の仕様のリニアアクチュエータにおけるモータ部1が共通の動力モジュールとして使用できることを意味している。
【0019】
図2は、本発明に係るリニアアクチュエータの第2の実施形態を示している。このリニアアクチュエータは、図1に示した出力ロッド16−1に代えて、中空状の出力ロッド16−2を使用し、かつ、この出力ロッド16−2に該出力ロッド16−2とは別体のネジロッド20を移動可能に挿入してある。
【0020】
出力ロッド16−2は、モータ部1の回転シャフト2に摺動可能に挿入されている。そして、その後端部内周面には、ネジナット21を着脱自在に嵌着してある。一方、ネジロッド20は、上記出力ロッド16−2のネジナット21に螺合し、かつ、保持ブロック22の中心部にその基部が嵌着されている。
保持ブロック22は、図1に示した保持ブロック14と同様の形状を有し、かつ、この保持ブロック14と同様に、ボルト13を介してホルダトランス12の内側面に固着されている。
【0021】
このリニアアクチュエータおいては、モータ部1の回転シャフト2の回転力がホルダトランス12および保持ブロック22を介してネジロッド20に伝達される。したがって、ネジロッド20が回転シャフト2と共に回転し、その結果、このネジロッド20に螺合したネジナット21に推力が発生して、出力ロッド16−2が左右方向に直線運動する。
【0022】
このリニアアクチュエータによれば、ネジロッド20およびネジナット21を回転運動を直線運動に変換する運動変換手段としてモジュール化することができるので、図1に示したリニアアクチュエータと同様の効果、つまり、モータ部1には全く手を加えることなく前記仕様変更に対応することができるという効果が得られる。
【0023】
また、ネジロッド20が出力ロッド16−2内に収容されるので、該ネジロッド18の防塵を図る上で有利であり、しかも、図示のように出力ロッド16−2が引込み動作した状態でも、ホルダトランス12の後方側に該出力ロッド16−2が突出しないので、後方側に干渉回避スペースを確保する必要がなく、それだけ配置の自由度が高い。
なお、後方側に出力ロッド16−2が突出しないことは、使用者の安全性を向上する上でも有利となる。
【0024】
図1および図2に示したリニアアクチュエータは、それらの出力ロッド16−1および16−2の周面にネジ溝が形成されていないので、該各出力ロッド16−1,16−2の回転を規制する手段を外部に装備させることも可能であり、これは、ユーザーの選択幅を拡大する上で有利である。
【0025】
図3は、本発明に係るリニアアクチュエータの第3の実施形態を示している。このリニアアクチュエータは、図1に示した出力ロッド16−1に代えて、公知のボールネジロッドからなる出力ロッド16−3を使用している。
出力ロッド16−3は、モータ部1の回転シャフト2に移動可能に挿入されている。そして、その前端部を公知のボールスプラインナット23を介して前部ハウジング5に支持させるとともに、その後端部を公知のボールネジナット24に螺合させてある。
ボールネジナット24は、前記中空状回転シャフト2の大径部2b内に同軸状に位置され、かつボルト13を介して前記ホルダトランス12の内側面に固着されている。
【0026】
このリニアアクチュエータおいては、モータ部1の回転シャフト2の回転力がホルダトランス12およびボールネジナット24に伝達されるので、該ボールネジナット24が回転シャフト2と共に回転する。
出力ロッド16−3は、ボールスプラインナット23によってその回転が抑制されているので、上記ボールネジナット24の回転に伴って左右方向に直線運動する。
【0027】
この実施形態のリニアアクチュエータによれば、ボールネジナット24および出力ロッド16−3を、回転運動を直線運動に変換する運動変換手段としてモジュール化することができるので、図1および図2に示したリニアアクチュエータと同様に、モータ部1には全く手を加えることなく前記仕様変更に対応することができるという効果が得られる。
また、出力ロッド16−3として汎用のネジロッドやボールネジロッドを使用することができるので、コスト、機能等に関するユーザーの種々の要求に答えることができる。
なお、このリニアアクチュエータは、回転シャフト2の回転量に対応したパルス信号を出力するパルスエンコーダ等のセンサ25を内蔵しているので、このセンサ25の出力パルスに基づいて出力軸16−3の位置決め制御や速度制御を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 モータ部
2 中空状回転シャフト
2a 大径部
2b 小径部
3 ロータ
4 ステータ
6 前部ハウジング
8 後部ハウジング
9,10 ナット
11,13 ボルト
12 ホルダトランス
14 保持ブロック
15 ネジナット
16−1〜16−3 出力ロッド
17 回り止めブッシュ
18 ネジロッド
20 ネジロッド
21 ネジナット
22 保持ブロック
23 ボールスプラインナット
24 ボールネジナット












【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状回転シャフトを備えたモータ部と、該中空状回転シャフトに貫通させた出力ロッドとを備え、前記中空状回転シャフトの回転運動を利用して前記出力ロッドを直動させるようにしたリニアアクチュエータであって、
前記モータ部と、前記中空状回転シャフトの回転運動を前記出力ロッドの直線運動に変換させる運動変換手段とをそれぞれモジュール化し、それらを着脱自在に連結した構成を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記運動変換手段が、前記出力ロッドの一端に連接したネジロッドと、該ネジロッドに螺合させたネジナットと、前記回転シャフトに着脱自在に連結され、該回転シャフトの回転動力を前記ネジナットに伝達する動力伝達手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記出力ロッドを中空状に形成し、前記運動変換手段が、前記出力ロッドの内周面に設けたネジナットと、前記出力ロッドに挿入されて前記ネジナットに螺合するネジロッドと、前記回転シャフトに着脱自在に連結されて該回転シャフトの回転動力を前記ネジロッドに伝達する動力伝達手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記出力ロッドの周面にネジ溝を形成し、前記運動変換手段が、前記出力ロッドに螺合されたネジナットと、前記回転シャフトに着脱自在に連結されて該回転シャフトの回転動力を前記ネジナットに伝達する動力伝達手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−115111(P2010−115111A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25331(P2010−25331)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願平11−20881の分割
【原出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】