説明

リフロー炉測定用基板、リフロー炉測定用ブロック、リフロー炉測定装置、リフロー炉測定方法、および、リフロー炉測定プログラム

【課題】繰り返しの使用にも耐えうるとともに、リフロー炉内の状態を定量化可能であるリフロー炉測定用基板を提供すること。
【解決手段】リフロー炉内を搬送される際に炉内の状態を測定するリフロー炉測定用基板において、板状部材によって構成される基材130と、基材上に配置された熱容量が既知の1または複数のプレート140〜160と、プレートに当接され、当該プレートの温度を検出する検出手段(熱電対141〜161)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー炉測定用基板、リフロー炉測定用ブロック、リフロー炉測定装置、リフロー炉測定方法、および、リフロー炉測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板(プリント基板)に対して電気部品および電子部品(以下、単に「部品」と称する)を表面実装する場合、電子回路基板の表面に形成された接続ランドにクリームはんだを塗布した後に部品を配置し、リフロー炉内においてクリームはんだを溶融することによって部品を接続ランドに電気的および機械的に接続する。ところで、電子回路基板に載置される部品には、様々な種類のものが存在することから、これらの部品に対して不必要に熱を印加することなく、また、確実に電気的および機械的に接続する必要がある。
【0003】
近年、環境への影響を考慮して、鉛を含有しない鉛フリーはんだへの切り換えが進んでいる。鉛フリーはんだは、従来の鉛はんだ(Sn−Pbはんだ)の融点である183℃に比較すると、例えば、Sn−Ag系の鉛フリーはんだでは220℃前後と融点が高いことから、リフロー炉におけるはんだ付けの温度が高くなる。この結果、電子回路基板に載置されている個々の部品が、はんだ付け温度の高温化に伴って高温の雰囲気に曝されることになる。
【0004】
鉛フリーはんだによる高温化に対応するために、個々の部品についても耐熱性を高める努力がなされている。しかし、現状では、一般的な部品の耐熱温度は240℃程度である。この結果、従来の鉛はんだでは、はんだの溶融温度と部品の耐熱温度との差(マージン)が57℃程度確保できていたものが、鉛フリーはんだでは20℃程度しか確保できない。
【0005】
このため、鉛フリーはんだを使用して、部品に対して熱による影響を与えることなく、確実にはんだ付けを行うためには、リフロー炉の温度管理が非常に重要になる。従来においては、例えば、特許文献1に示すように、複数の熱電対を表面に配置した電子回路基板をリフロー炉に流すことにより、リフロー炉内におけるプリント基板の表面温度分布を評価するリフロー炉の温度管理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−349431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術においては、実際の電子回路基板(例えば、ガラスエポキシ基板)等が使用されているため、繰り返し使用していると、電子回路基板が熱の影響によって劣化し、これに伴って測定誤差が発生するという問題点がある。
【0008】
また、個々の電子回路基板によって熱的な特性にばらつきがあるため、測定値がばらつきを生じ、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することができないという問題点もある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、繰り返しの使用にも耐えうるとともに、リフロー炉内の状態を精度良く定量化可能であるリフロー炉測定用基板、リフロー炉測定用ブロック、リフロー炉測定装置、リフロー炉測定方法、および、リフロー炉測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のリフロー炉測定用基板は、リフロー炉内を搬送される際に炉内の状態を測定するリフロー炉測定用基板において、板状部材によって構成される基材と、前記基材上に配置された熱容量が既知の1または複数のプレートと、前記プレートに当接され、当該プレートの温度を検出する検出手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、繰り返しの使用にも耐えうるとともに、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能なリフロー炉測定用基板を提供することができる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プレートは、熱的に略絶縁された状態で前記基材上に配置されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、プレートと基材との間の熱的な干渉を排除することにより、正確な測定が可能になる。
【0014】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プレートは、前記リフロー炉の搬送方向に直交する方向の熱風吹き出しノズルのピッチよりも広い幅を有していることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、複数のノズルからの熱風を平均化して測定することができるので、実際の電子回路基板上と略同じ条件で測定を行うことができる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プレートは、熱容量が異なる複数のプレートを含み、前記検出手段は、それぞれの前記プレートの温度を検出する、ことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、電子回路基板上に配置されている部品の熱容量に応じたプレートを設けることにより、部品の温度変化を確実に測定することができる。
【0018】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基材の前記リフロー炉内に最初に搬入される部分を先頭とし、最後に搬入される部分を末尾とした場合に、前記プレートが前記基材の先頭から末尾に向けて熱容量が小さい順に配置されていることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、リフロー炉内の熱的な状態を乱すことなく、測定を行うことができる。
【0020】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プレートは、熱容量が略同じプレートが搬送方向に直交する方向に複数並べて配置されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、リフロー炉内における搬送方向に直交する方向の加熱能力の違いを測定することができる。
【0022】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プレートは、熱容量が略同じプレートが前記基材を挟んで対向する位置に配置されていることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、リフロー炉内における上下方向のそれぞれの温度分布を測定することができる。
【0024】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出手段は、熱電対によって構成され、当該熱電対の検出部分が前記プレートに熱的に結合されていることを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、プレートの温度変化を確実かつ遅延無く検出することが可能になる。
【0026】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記熱電対は前記プレートに溶接によって熱的に結合されていることを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、熱的な結合を高めるとともに、経年変化による熱結合の低下を防ぐことができる。
【0028】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基材には、それぞれの部分に配置される前記プレートと略同じサイズの開口が設けられており、当該開口上に前記プレートが配置されることにより、前記基材と前記プレートとの接触面積を少なくし、これらを熱的に略絶縁された状態にすることを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、例えば、プレス加工またはレーザ加工により簡単形成することができる開口を用いることにより、熱的な絶縁を図ることができる。
【0030】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基材と前記プレートとの間には、前記プレートの少なくとも一部を覆う低伝熱性部材が挟まれており、当該低伝熱性部材によって前記基材と前記プレートとが熱的に略絶縁された状態とされていることを特徴とする。
【0031】
このような構成によれば、適切な低伝熱性部材を用いることにより、確実に熱的な絶縁を図ることができる。
【0032】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基材は、前記リフロー炉内においてはんだ付けがなされる電子回路基板と略同じサイズを有していることを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、電子回路基板と同様な熱風による熱的環境を再現することにより、より実際の条件に近い環境下において測定を行うことができる。
【0034】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基材は、搬送方向に直交する方向の幅を調整可能な幅調整機構を有していることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、どのようなサイズの電子回路基板であっても、レールの幅に代表される設定条件を変更することなく、また、電子回路基板の生産途中であっても、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能となる。
【0036】
また、本発明は、前述したいずれかのリフロー炉測定用基板を有するリフロー炉測定装置において、前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力手段と、前記入力手段から入力された前記データを記憶する記憶手段と、を有することを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能なリフロー炉測定装置を提供することができる。
【0038】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記格納手段は、前記リフロー炉内の状態が、はんだ付けしようとする電子回路基板に対して適正な状態になった場合に得られたデータを格納しており、前記適正な状態になった場合に得られたデータと、新たに得られたデータとを比較することにより、その時点における前記リフロー炉の状態が適正であるか否かを判定する判定手段を有することを特徴とする。
【0039】
このような構成によれば、リフロー炉の状態が適正な状態であるか否かを簡便に判断し、不適正な状態での運転を避けることができる。
【0040】
また、本発明は、前述したいずれかのリフロー炉測定用基板を有するリフロー炉測定方法において、前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力ステップと、前記入力ステップにおいて入力された前記データを記憶装置に記憶させる記憶ステップと、を有することを特徴とする。
【0041】
このような方法によれば、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能なリフロー炉測定方法を提供することができる。
【0042】
また、本発明は、前述したいずれかのリフロー炉測定用基板に基づいてリフロー炉の状態を測定するリフロー炉測定プログラムにおいて、コンピュータを、前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力手段、前記入力手段から入力された前記データを記憶する記憶手段、としてコンピュータを機能させる。
【0043】
このようなプログラムによれば、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能なリフロー炉測定プログラムを提供することができる。
【0044】
他方、本発明のリフロー炉測定用ブロックは、リフロー炉内を搬送される際に炉内の状態を測定するリフロー炉測定用ブロックであって、板状部材によって構成される基材と、前記基材上に配置された熱容量が既知の1または複数のプレートと、前記プレートに当接され、当該プレートの温度を検出する検出手段と、を備え、前記基材には、前記リフロー炉内で搬送される用品に着脱可能な取付部が設けられていることを特徴とする。
【0045】
この構成によれば、リフロー炉内で搬送される用品にリフロー炉測定用ブロックを取り付けることによって、リフロー炉内に一緒に搬送することができる。
【0046】
また、リフロー炉測定用ブロックであって、前記リフロー炉内で搬送される用品は、電子回路基板であってもよく、リフロー炉測定用基板であってもよい。
【0047】
さらに、リフロー炉測定用ブロックは、前記リフロー炉内で搬送される用品の搬送方向の前端に取り付けられるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、繰り返しの使用にも耐えうるとともに、リフロー炉内の状態を精度良く定量化することが可能なリフロー炉測定用基板、リフロー炉測定装置、リフロー炉測定方法、および、リフロー炉測定プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るリフロー炉測定装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す検定基板の構成例を示す図である。
【図3】図2に示すプレートの取り付け方法を示す図である。
【図4】図2に示す検定基板の幅を狭めた状態を示す図である。
【図5】図1に示すパーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【図6】図1に示すリフロー炉の概略構成を示す断面図である。
【図7】図1に示す実施形態において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図8】図1に示すパーソナルコンピュータに格納されるデータの一例である。
【図9】熱容量の異なるプレートの炉内における温度変化を示す図である。
【図10】熱風強度を変えた場合における相対熱容量とピーク温度の関係を示す図である。
【図11】図1に示す実施形態において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図12】基材の他の一例を示す図である。
【図13】基材の他の一例を示す図である。
【図14】基材の他の一例を示す図である。
【図15】プレートの基材への取り付け方法の一例を示す図である。
【図16】プレートの基材への取り付け方法の一例を示す図である。
【図17】プレートの基材への取り付け方法の一例を示す図である。
【図18】プレートの基材への取り付け方法の一例を示す図である。
【図19】プレートの基材への取り付け方法の一例を示す図である。
【図20】図1に示す検定基板の他の構成例を示す図である。
【図21】図1に示す検定基板の他の構成例を示す図である。
【図22】他の変形実施形態であって、熱電対付電子回路基板にリフロー炉測定用ブロックを取り付けた状態を示す図である。
【図23】熱電対付電子回路基板にリフロー炉測定用ブロックを取り付けた他の状態を示す図である。
【図24】他の変形実施形態であって、リフロー炉測定用基板にリフロー炉測定用ブロックを取り付けた状態を示す図である。
【図25】他の変形実施形態であって、熱電対付電子回路基板の表面にリフロー炉測定用ブロックを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0051】
(A)本発明の実施形態
図1は本発明に係るリフロー炉測定装置の実施形態の構成例を示す図である。この図に示すように、リフロー炉測定装置は、検定基板(請求項中「リフロー炉測定用基板」に対応)100、パーソナルコンピュータ300、および、温度測定装置350を主要な構成要素としており、例えば、熱電対付電子回路基板200を用いて適正な状態になったリフロー炉400内の温度を検定基板100によって測定し、データベース化(定量化)することにより、それ以降は、検定基板100を用いてリフロー炉400内の状態を知ることができる。なお、温度測定装置350は、検定基板100または熱電対付電子回路基板200に配置されている熱電対によって生じる電圧(アナログ信号)を温度に対応するデジタルデータに変換して出力する装置である。なお、温度測定装置350は、パーソナルコンピュータ300に内蔵する構成としてもよい。
【0052】
図2は、検定基板100の構成例を示す図である。この図に示すように、検定基板100は、リフロー炉400内に設けられている破線で示すコンベア404に搭載される1組のレール110,120、レール110,120同士を相互に連結し、これらが平行な状態を保ったままでその間隔(レール110,120同士の間隔)を可変できるようにするためのパンタグラフ170,180を有している。また、パンタグラフ170,180の中心部の間には基材130が懸架されている。基材130には、熱容量および面積が予め分かっている1または複数枚(この例では3枚)のプレート140〜160が配置され、それぞれのプレート140〜160には、温度を測定するための熱電対141〜161の検温部142〜162が当接されている。なお、プレート140〜160は、例えば、ステンレス、アルミニウム、もしくは、銀等の金属または熱伝導率が高いセラミックス等によって構成されている。
【0053】
ここで、レール110,120は、それぞれ内側が開いた「コ」の字形状の金属(例えば、ステンレス)によって構成されている。レール110,120の上下(図2の上下方向)の端部には、パンタグラフ170,180の突起部172,173,182,183が挿入されて回動可能に支持するための孔111,112,121,122が形成されている。孔111,112,121,122の隣には、長孔113,114,123,124がそれぞれ設けられており、その内部に挿入されている突起部174,175,184,185が長孔113,114,123,124内をスライドすることによりパンタグラフ170,180が伸縮自在となる。
【0054】
パンタグラフ170,180は、それぞれ6個のリンク部材によって構成されている。なお、リンク部材は、金属(例えば、ステンレス)によって構成されている。パンタグラフ170,180の中央部には、ネジ176,186が挿入される孔171,181が形成されている。基材130は、プレート140〜160が載置される基部131と基部131から上下方向に伸出した伸出部132,134を有している。なお、基材130は、金属(例えば、ステンレス)によって構成されている。なお、基材130を、例えば、セラミックス製の板状部材によって構成したり、耐熱ガラスによって構成したり、あるいは、耐熱性プラスチック等によって構成したりしてもよい。また、伸縮の幅を大きくしたり、あるいは、小さくしたりする場合は、リンク部材の数量、寸法を変更することにより、対応することができる。
【0055】
図3は、基材130に載置されているプレート140の状態を示す図である。この図3(A)に示すように基材130には、破線で示す開口136が形成されている。この開口136は、4本のネジ143によって固定される部分を残してプレート140と略同じサイズになるように形成されている。図3(B)は、図3(A)の断面図である。この図に示すように、プレート140は、基材130の開口136上に配置されており、4本のネジ143によって基材130に固定されている。各ネジ143は、頭部が基材130側に位置するように挿入されている。これにより、頭部の有する熱容量がプレート140の熱容量に付加されて誤差となることを防止できる。各ネジ143と基材130との間には、熱的な絶縁性能が高い、例えば、テフロン(登録商標)等によって形成されたワッシャ144が挿入されており、基材130の熱がプレート140に伝達することを防止する。なお、ネジ143についても、断熱性が比較的高い部材(例えば、耐熱性プラスチック、カーボンファイバ、セラミックス)によって形成するようにしてもよい。基材130のネジ143が挿入される部分には、雌ネジが形成されおり、ネジ143が当該部分に螺合されて固定される。プレート140の裏側(図の下側)の中央部には、熱電対の検温部(2種類の金属が接合されている部分)142が、例えば、スポット溶接等の電気溶接によってプレート140と熱的に接合されている。もちろん、電気溶接以外の溶接であってもよいし、あるいは、銀ろう付け、耐熱性の接着剤による接着であってもよい。なお、図3の例では、ワッシャ144を用いるようにしたが、ワッシャ144を用いないで、プレート140を基材130上に直接配置するようにしてもよい。そのような配置方法であっても、プレート140と基材130との接触面積を少なくするとこで(例えば、これらが重複する幅を0.25mm程度以下にすることで)、熱的に略絶縁された状態とすることができる。なお、0.25mmは一例であって、例えば、1mm程度であってもよい。要は、熱的に略絶縁された状態となればよい。
【0056】
図4は、図2に示す検定基板100の幅を狭めた状態を示した図である。この図4(B)に示すように、幅を狭めた状態では、パンタグラフ170,180が縮んだ状態となり、また、突起部174,175,184,185が長孔113,114,123,124内の内側部分まで移動している。図4(A)は、図4(B)を図中の矢印Xの方向から眺めた場合の側面図である。この図に示すように、レール110の側面には、幅を狭めた場合に、基部131の側面部が挿通するための長方形の開口115が形成されている。なお、この図では省略しているが、レール120にも同様の開口125が形成されている。
【0057】
熱電対付電子回路基板200は、リフロー炉400においてはんだ付けしようとする電子回路基板の所定の部分に熱電対を取り付けたものである。より具体的には、ガラスエポキシ基板上に、複数の電子部品または電気部品が配置され、例えば、耐熱性が低い部品であって熱容量が小さいもの(例えば、LED(Light Emitting Diode)等)の部品に熱電対が取り付けられるとともに、熱容量が大きく、はんだの融点温度まで達しないことが懸念される部品(例えば、サイズが大きいIC(Integrated Circuit)等)に、熱電対が取り付けられている。このような熱電対付電子回路基板200をリフロー炉400内に流すことにより、炉内の温度状態がその電子回路基板に対して適正な状態か否かを知ることができる。
【0058】
図5は、図1に示すパーソナルコンピュータ300の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、パーソナルコンピュータ300は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、GC(Graphics Card)305、表示装置306、I/F(Interface)307、および、バス308を有している。ここで、CPU301は、ROM302またはHDD303に記憶されているプログラムに基づいて、装置の各部を制御する。ROM302は、CPU301が実行する基本的なプログラムおよびデータを記憶している。RAM303は、CPU301がプログラムを実行する際に、ワーキングエリアとして機能する。HDD304は、高速回転するハードディスクに対してデータを記憶したり、記憶されているデータを読み出したりすることができる記憶装置である。なお、図5に示すように、HDD303には、プログラム310およびDB(Data Base)320が記憶されている。プログラム310は、後述する処理を実行するアプリケーションプログラムおよびオペレーティングシステムを有している。DB320は、主に、検定基板100(および熱電対付電子回路基板200)によって取得されたデータを記憶する。
【0059】
GC305は、CPU301から供給された描画命令に基づいて描画処理を実行し、得られた画像データを映像信号に変換して表示装置306に供給する。表示装置306は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等によって構成され、GC305から供給される映像信号を表示部(液晶パネル)に表示する。I/F307は、検定基板100または熱電対付電子回路基板200から出力される温度に関するデータを温度測定装置350を介して入力する。バス308は、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、GC305、および、I/F307を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とするための信号線群である。なお、この図では示していないが、I/F307には、入力デバイスとしてのキーボードおよびマウス等が接続され、操作者の操作に対応したデータを生成して、I/F307に供給する。
【0060】
図6は、リフロー炉400の概略構成を示す断面図である。この図6の例では、リフロー炉400は、筐体401、加熱ゾーン402、冷却ゾーン403、コンベア404、入口405、および、出口406を有している。ここで、筐体401は、例えば、内側に配置された断熱性の高い部材とその外側を囲む金属性の部材とによって構成されている。加熱ゾーン402は、コンベア404を挟んで対向する位置(上下)に配置されており、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを加熱して複数のノズルから噴出し、電子回路基板を加熱する構成とされている。なお、この例では、7対の加熱ゾーン402を有しているが、これ以外の個数(例えば、6個以下または8個以上)であってもよい。また、各ノズルは、基板の搬送方向に直交する方向に、例えば、1cm程度のピッチ(ノズルピッチ)で配置されている。冷却ゾーン403は、コンベア404を挟んで対向する位置に配置されており、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを加熱せずに複数のノズルから噴出し、回路基板を冷却する構成とされている。この例は、2対の冷却ゾーン403を有しているが、これ以外の個数(1個または3個以上)であってもよい。コンベア404は、入口405側から出口406に向かって電子回路基板を搬送する。なお、コンベア404は、電子回路基板の両端部の一部のみが載置されるので、電子回路基板の下面に対しても加熱された窒素ガスが噴射可能な状態となる。
【0061】
なお、プレート140〜160の幅(図2の左右方向の幅)は、ノズルピッチである1cmよりも広くなるように設定することが望ましい。このような設定によれば、複数のノズルからの熱風がプレート140〜160のそれぞれに当たることにより、平均的な温度の測定が可能となり、実際の電子回路基板上の状態に近い条件で測定できるからである。
【0062】
(B)本発明の実施形態の動作
つぎに、実施形態の動作について説明する。例えば、新たな電子回路基板をリフロー炉400に流す場合には、対象となる電子回路基板の所定の位置(例えば、熱容量が小さい部分、熱容量が大きい部分、および、耐熱性が低い部分)に対して熱電対が取り付けられた熱電対付電子回路基板200が形成される。このようにして形成された熱電対付電子回路基板200は、温度測定装置350に対して接続されるとともに、パーソナルコンピュータ300の図示せぬ入力デバイスが操作され、図5に示すプログラム310が実行される。プログラム310が実行されると、図7に示すフローチャートの処理が開始される。このフローチャートの処理が開始されると、ステップS0において、リフロー炉の条件設定が実行される。具体的には、各加熱ゾーン402の温度、各ノズルから噴出される加熱ガスの流量、および、コンベア404の搬送速度を対象となる電子回路基板に応じて設定する。つぎに、ステップS10において、リフロー炉400に対して、熱電対付電子回路基板200が操作者によって流される。より詳細には、リフロー炉400のコンベア404に対して熱電対付電子回路基板200を載置し、リフロー炉400内に熱電対付電子回路基板200を搬入させる。
【0063】
ステップS11では、CPU301は、温度測定装置350を介して熱電対付電子回路基板200から温度データを所定のサンプリング周期(例えば、0.25秒間隔)で取得する。なお、サンプリング周期は、ナイキストの定理を満たすように、測定対象に応じて設定することが望ましい。具体的には、熱容量が小さい部品(またはプレート)が存在する場合には、温度が急激に変化することから、当該変化をデータとして逃さず取得するためである。ステップS12では、CPU301は、ステップS11で取得した温度データを時間データと対応付けして、例えば、RAM302に格納する。ここで、時間データとは、例えば、リフロー炉400に対して熱電対付電子回路基板200を流してからの経過時間をいう。なお、これ以外にも、例えば、熱電対付電子回路基板200のリフロー炉400内の位置を用いるようにしてもよい。熱電対付電子回路基板200の位置に関する情報に関しては、例えば、リフロー炉400の制御部から、コンベア404の動作状態を示す情報を取得するようにしてもよい。
【0064】
ステップS13では、ステップS11およびステップS12において取得された温度データと時間データとに基づいて、例えば、各熱電対の温度データの時間的変化を示すグラフが表示装置306に表示されるので、当該グラフを参照することにより、リフロー炉400の状態が適正な範囲であるか否かを判定する。なお、この判定は、一定の基準(例えば、各部品のピーク温度、温度勾配、適正温度保持時間、200℃以上の継続時間、150℃以上の継続時間)等によってCPU301が自動的に判定するようにしてもよいし、あるいは操作者自身が判断するようにしてもよい。より具体的には、各部品のピーク温度は、部品の熱による劣化を防ぐために、例えば、250℃以上になっていないかを判定する。温度勾配は、急激な温度変化による熱膨張による応力による損傷を防ぐために、例えば、温度勾配が4℃/秒以上となっていないか否かを判定する。適正温度保持時間としては、はんだの確実な溶融を担保するために225℃で10秒以上保持されているか否かを判定する。また、200℃以上の継続時間は、部品への熱負荷を考慮して200℃以上が60秒以上継続していないかを判定する。また、150℃以上の継続時間については、はんだに含まれている活性剤が有効に作用するように、はんだが溶融する前の150℃〜180℃の時間が90秒±30秒以内であるかを判定する。なお、これら以外の判定方法を採用してもよい。
【0065】
ステップS14では、適正な状態になるように、リフロー炉400の設定変更が行われる。具体的には、各加熱ゾーン402の設定温度、各ノズルから噴出される加熱ガスの流量、および、コンベア404の搬送速度を調整することにより、所望の状態になるようにする。なお、この設定についても、前述の場合と同様に、CPU301が自動的に判定するようにしてもよいし、あるいは操作者自身が判断するようにしてもよい。なお、ステップS10〜S14の処理は、リフロー炉400内が所望の状態(適正状態)となるまで繰り返し実行される。なお、適正状態とは、一定の幅を持った状態であり、当該範囲内に各種条件を収めることで、はんだ付けを適正に行うとともに、製品の不良の発生を防ぐことができる。
【0066】
ステップS15では、図2に示す検定基板100がリフロー炉400に流される。より詳細には、例えば、電子回路基板に載置されている電子部品に応じた熱容量(例えば、最大と最小およびその中間の熱容量)を有するプレート140〜160が載置された基材130が選択され、ネジ176,186によってパンタグラフ170,180に対して仮止めされる。そして、レール110,120の間隔が、コンベア404の間隔と等しくなるように調整された後、ネジ176,186を締めることによって固定される。これにより、パンタグラフ170,180同士の間隔が一定に固定されることから、レール110,120の間隔が一定に固定される。このようにして設定された検定基板100は、コンベア404上に載置され、リフロー炉400内への搬送が開始される。なお、このとき、コンベア404への搭載方法としては、例えば、熱容量が小さいプレートが先にリフロー炉400内に進入するように搭載することが望ましい。熱容量が大きいプレートが先にリフロー炉400内に進入すると、温度が多少低下するため、その後のプレートの測定に影響を与えるからである。
【0067】
搬送が開始されると、ステップS16において、CPU301は、検定基板100のプレート140〜160に当接されている熱電対によって測定された温度データを、温度測定装置350を介して取得する。ステップS16において取得された温度データは、ステップS17において時間データと対応付けされ、RAM302に格納される。このような処理は、検定基板100がリフロー炉400から排出されるまで所定の周期(例えば、0.25秒周期)で繰り返し実行される。
【0068】
ステップS18では、CPU301は、ステップS16〜S17において取得したデータを、適正状態データとしてDB320に格納する。これ以降は、当該適正状態データに基づいて炉内の状態が適正な状態であるか否かが判定される。図8は、DB320に格納される適正状態データの一例を示す図である。この図の例では、経過時間と、熱電対141〜161から出力される温度データとが対応付けされて記憶されている。なお、図8の例では、プレートおよび熱電対は3個とされているが、2個以下としたり、4個以上としたりするようにしてもよい。また、図8の例では、取得した温度データのみを格納しているが、例えば、温度データの変化量をそれに要した時間で除することにより温度勾配データを生成し、当該温度勾配データを併せて、あるいは、単体で格納するようにしてもよい。温度勾配データを用いることにより、単位時間あたりの温度の変化を知ることができる。なお、温度勾配データ以外のデータ(例えば、後述する熱伝達率)等のデータを格納するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0069】
図9は、熱電対が当接された熱容量が異なるプレートから得られる温度データの時間的変化を示す図である。この図において、TCは相対熱容量を示している。ここで、相対熱容量とは、概略1.6mm厚のガラスエポキシ基板の単位面積あたりの熱容量と比較した場合の相対的な熱容量をいう。すなわち、1.6mm厚のガラスエポキシ基板と単位面積あたりの熱容量が同じである場合には、相対熱容量は「1」となる。また、単位面積あたりの熱容量が1.5倍である場合には相対熱容量は「1.5」となる。なお、概略1.6mm厚のガラスエポキシ基板と同じ熱容量を有するのは、1mm(または0.8mm)のSUS304材である。プレート140〜160としては、異なる厚さのSUS304材が使用されている。また、TC=0は、熱容量が「0」である場合、すなわち、プレートなしで熱電対だけの場合における温度変化を示している。また、TC=0,0.55,1.0,1.5,2.0,2.5の各グラフは、熱容量がそれぞれ0,0.55,1.0,1.5,2.0,2.5のプレートに当接された熱電対から得られる温度データの変化を示している。なお、この図は、第1番目の加熱ゾーン402〜第7番目の加熱ゾーン402の設定温度は、それぞれ、180,180,180,180,220,240,240℃に設定されている。また、図の縦軸は温度(℃)を示し、横軸は累積サンプリング回数(回)を示しており、当該累積サンプリング回数を4で除算することにより経過時間(秒)を得ることができる。すなわち、この図9の例では、サンプリング周期は0.25秒に設定されている。この図9から分かるように、熱容量が小さいほど、温度上昇が急激であるとともに、ピーク温度への到達も速くなる。
【0070】
図10は、リフロー炉400を前述した図9の場合と同様に設定した場合において、相対熱容量とピーク温度との関係を示す図である。この図において、L,M,Hは、リフロー炉400の熱風強度の設定条件を示し、L=Low、M=Middle、H=highを示す。また、破線で示す枠は、一般的な部品の熱容量の分布範囲を示している。
【0071】
以上の図9,10に示すように、一般的な部品の熱容量は、所定の範囲に分布していることから、例えば、熱容量が大きく温度上昇が緩慢な部品や、熱容量が小さく温度上昇が急激な部品については、その熱容量に近いプレートを選択することにより、これらの部品の温度の挙動を知ることができる。また、電解コンデンサ等の熱に弱い部品については、おおよその熱容量を調べ、略同じ熱容量のプレートを用いることにより、同様に温度の挙動を知ることができるので、耐熱温度を超えて部品が損傷することを防止できる。
【0072】
つぎに、以上のような処理により、適正状態データがDB320に格納された場合において、例えば、定期的に炉内の状態を検査する場合、電子回路基板を流した状態で炉内の状態を検査する場合、および、リフロー炉を再起動した場合に炉内の状態を検査する場合に実行される処理について説明する。図11は、適正状態データがDB320に格納された場合において、前述したいずれかの場合に実行される処理の流れを説明するフローチャートである。このフローチャートの処理が開始されると、つぎのステップが実行される。すなわち、ステップS30では、適正状態データを測定した際と同じ検定基板100を、同じ状態でリフロー炉400に流す。
【0073】
ステップS31では、CPU301は、温度測定装置350を介して検定基板100から温度データを、適正状態データと同じサンプリング周期で取得する。そして、ステップS32では、CPU301は、ステップS31で取得した温度データを時間データと対応付けして、例えば、RAM302に格納する。なお、時間データは、前述の場合と同様である。
【0074】
ステップS33では、HDD303のDB320から適正状態データを取得する。そして、ステップS31,S32で取得された温度データおよび時間データと対比することにより、新たに取得した温度データおよび時間データが所定の範囲内に収まっているか否かを判定する。具体的には、例えば、各プレートからの温度データに対応する時間における温度データを適正状態データから取得し、両者の差分の2乗を計算し、得られた値を累積加算する。そして、そのような処理を繰り返すことにより、プレート毎に差分の2乗累積値を計算する。そして、得られた2乗累積値が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより、所定の範囲内であるか否かを判定する。その結果、全てのプレートの温度データが所定の範囲内に収まっていると判断した場合には、ステップS35に進み、それ以外の場合にはステップS36に進む。なお、以上では、差分の2乗累積値によって判定するようにしたが、これ以外の方法であってもよい。例えば、前述した基準(例えば、各部品のピーク温度、温度勾配、適正温度保持時間、200℃以上の継続時間、150℃以上の継続時間)に基づいて判定するようにしてもよい。要は、リフロー炉400内の状態が適正な範囲に収まっていることが分かれば、判断方法はどのような方法でもよい。
【0075】
ステップS35では、CPU301は、リフロー炉400が適正状態であることを、表示装置306に表示させ、処理を終了する。一方、ステップS36では、CPU301は、リフロー炉400が適正状態でないことを、表示装置306に表示させ、処理を終了する。なお、適正状態でない場合には、例えば、適正でないと判定されたプレートの適正状態データと、新たに取得されたデータとを対比可能なように、表示装置306に表示するようにしてもよい。そのような方法によれば、例えば、どの加熱ゾーンにおける温度上昇が適正でないかを知ることができるので、当該部分の加熱ゾーンを再調整することにより、温度上昇を適正に制御することができる。また、適正でないと判断した場合に、リフロー炉400を自動的に設定変更したり、あるいは、設定変更に関する情報を表示装置306に表示したりするようにしてもよい。
【0076】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、熱容量が既知のプレート140〜160を基材130に取り付けるとともに、これらのプレート140〜160に熱電対を当接し、熱電対141〜161によってプレート140〜160の温度を検出するようにした。これにより、リフロー炉400が適正な状態における温度の時間的変化を適正状態データとしてDB320に格納しておき、炉内の検査を行う場合には、当該検定基板100を再度、炉内に流して温度の時間的変化を検出し、適正状態データと比較することにより、炉内の状態が適正状態から乖離しているか否かを知ることができる。すなわち、検定基板100をリフロー炉400の物差しとして使用することができる。
【0077】
また、検定基板100は、金属部材(例えば、ステンレス等)によって構成されていることから、繰り返し使用した場合であっても、材料が熱によって劣化することを防止できる。このため、従来の電子回路基板に熱電対を付けたものを使用する場合に比較すると、繰り返し正確に測定することができるので、コストを低減するとともに、測定誤差を少なくすることができる。また、電子回路基板に熱電対を付ける場合には、素子への熱電対の取り付けが確実でない場合には、素子自体の温度を正確に測定することができないが、本実施形態では、プレート140〜160と熱電対141〜161とは、溶接等によって確実に接続されていることから、経年変化のない正確な測定が可能になる。
【0078】
また、温度変化に関与するパラメータとして、電子回路基板の管理対象点を具体的な熱容量の値に置き換えることにより精度良くモデル化し、把握することが可能になる。つまり、部品の温度変化を既知の熱容量の値に対応付けすることにより、確実に、しかも、経年変化なく、測定することができる。従来においては、電子回路基板の測定点に対して、熱電対を配置して温度測定を行っていたが、個々の電子回路基板で熱的な特性にばらつきが存在し、また、リフロー炉の設定条件、加熱安定性、および、リフロー炉の経年変化による温度ばらつきが存在することから、測定値にばらつきを生じ、リフロー炉内の状態を精度良く測定することができなかった。しかし、本実施形態によれば、既知の熱容量および表面積のプレートを、基材から熱的に略絶縁された状態で配置することにより、リフロー炉が有する熱伝達率(単位面積および単位温度(差)あたりの熱の移動量)を正確に求めることができる。つまり、プレートを基材から熱的に略絶縁された状態で配置することにより、熱容量および表面積はプレート自体が有する熱容量および表面積とみなすことができる。したがって、プレートの温度を測定することにより、熱容量と温度変化とから移動熱量を求めることができ、得られた移動熱量をプレートの表面積および温度の変化量で除することにより、熱伝達率を求めることができる。このような熱伝達率を求めることができれば、例えば、リフロー炉の種類による差異、同一種類のリフロー炉の個体差、経年変化による差異を正確に求めることができる。
【0079】
また、以上の実施形態では、プレート140〜160を熱的に略絶縁された状態で基材130に配置するようにしたので、基材130との間の熱的な干渉を低減させることにより、各プレートの熱容量を正確に設定し、リフロー炉400内の温度を正確に測定することができる。なお、本明細書中において、「熱的に略絶縁された状態」とは、熱的に完全に絶縁された状態のみならず、熱伝導率が低い状態も含むものとする。
【0080】
また、以上の実施形態では、パンタグラフ170,180によって基材130とレール110,120を連結するようにしたので、リフロー炉400のコンベア404の幅に合わせて、レール110,120の幅を調整することができる。しかも、パンタグラフ170,180を使用しているので、レール110,120を平行に保ったままで、幅の調整を行うことができる。また、パンタグラフ170,180によって基材130とコンベア404との距離を離すことにより、コンベア404近傍の低い温度による影響を少なくすることができることから、正確な測定が可能になる。
【0081】
また、以上の実施形態では、基材130の幅をプレート140〜160と略同じとしたので、基材130の熱容量によって測定誤差が生じることを防止することができる。なお、プレート140〜160の配置間隔(搬送方向の間隔)については、後述する図20,21に示す検定基板100A,100Bの配置間隔と略同じになるように設定することで、図20,21に示す検定基板100A,100Bと略同じ条件下で測定可能とし、それぞれの基板で測定されたデータを相互に比較活用することが可能となる。
【0082】
また、以上の実施形態では、プレート140〜160に対して、熱電対141〜161を電気溶接によって取り付けるようにしたので、これらを熱的に確実に接続し、プレート140〜160の温度変化を確実に測定するとともに、経年変化によってこれらの接続状態が変化し、測定誤差が生じることを防止できる。なお、電気溶接では、熱電対自体またはプレート自体が溶けて相互に溶着することから、プレートの熱容量は増加しない(銀ろう付けの場合には銀ろうによって熱容量が増加する)。このため、熱容量の増加に起因する測定誤差の発生を防止できる。また、電気溶接では比較的高温度で溶接がなされることから、熱的な結合とともに、機械的な結合を確実に行うことができる。
【0083】
また、以上の実施形態では、リフロー炉400の状態が適正になった場合に、プレート140〜160に取り付けられた熱電対141〜161からの測定データに基づいてDB320に適正状態データを格納し、リフロー炉400内の状態を知る必要が生じた場合には検定基板100を流して得られたデータを、適正状態データと比較することにより、炉内の状態が適正であるか否かを速やかに判定することができる。このような定量化により、炉内の状態が変化して、はんだ付け不良が生じたり、温度異常によって部品に熱的負荷がかかったりすることを確実に防止できる。また、検定基板100は、熱に対して安定な部材で形成されていることから、繰り返しの使用に対しても、測定誤差を生じることなく、炉内の状態を正確に知ることができる。
【0084】
(C)他の実施形態
図12は、図2に示す検定基板100において使用される他の基材130Aの構成例を示している。この例では、8枚のプレート501〜508が取り付けられている。また、それぞれのプレートには図示せぬ8つの熱電対が、例えば、溶接によって取り付けられている。なお、各プレートは、図3と同様の方法によって固定されている。
【0085】
各熱プレートの熱容量の設定方法としては、例えば、図12の左右方向に並んでいるプレートは同じ熱容量を有するようにし、また、図12の上下方向に並んでいるプレートは、例えば、下から順に熱容量が大きくなるように(つまり、プレートの厚さが厚くなるように)設定されている。なお、最も熱容量が小さいプレート507,508の代わりに、図21および図22を参照して後述する、プレートの中央部に開口を有し、当該開口に熱電対の温度を検出する部分がむき出しの状態で配置されているプレートを配置するようにしてもよい。このような開口を有するプレートを用いることにより、熱風が熱電対に直接当たることから、炉内の雰囲気温度を測定することができる。なお、これ以外の熱容量の配置であってもよい。
【0086】
図12に示す実施形態によれば、図2に示す検定基板100に比較して、より多くの熱容量に対する温度変化を計測することができるため、炉内の状態をより詳細に知ることができる。また、同じ熱容量のプレートを左右に並べて配置することにより、左右方向における温度のばらつきを測定することができる。
【0087】
図13は、図2に示す検定基板100において使用される他の基材130Bの構成例を示している。この例では、8枚のプレート551〜558が取り付けられている。また、それぞれのプレートには図示せぬ8つの熱電対が、例えば、溶接によって取り付けられている。なお、各プレートは、図12に示す場合に比較して、その横幅が狭くなっており、長方形の形状となっている。また、各プレートは、図12の右上を例に挙げて説明すると、基材130Bに形成された、プレート552よりも少し大きい開口560内に配置されている。一例として、開口560とプレート552とのギャップが0.25mmとなるようにこれらのサイズが設定されている。また、開口560の上下には取り付け部571,572が設けられており、当該取り付け部571,572に対して、プレート552がネジ573,574によって固定される。なお、固定の方法としては、図3の場合と同様の方法を採用することができる。あるいは、低熱伝導性のワッシャを用いずに、基材130Bに対してプレート551〜558を直接取り付けるようにしてもよい。
【0088】
各熱プレートの熱容量の設定方法としては、例えば、前述した図11の場合と同様に設定することができる。また、最も熱容量が小さいプレート557,558の代わりに、前述した開口を有するプレートを配置するようにしてもよい。
【0089】
図13に示す実施の形態によれば、図12の場合と同様に、図2に示す検定基板100に比較して、より多くの熱容量に対する温度変化を計測することができるため、炉内の状態をより詳細に知ることができる。また、同じ熱容量のプレートを左右に並べて配置することにより、左右方向における温度のばらつきを測定することができる。さらに、図13の実施形態では、開口とプレートとの間にギャップを設け、2本のネジによってプレートを固定するようにしたので、熱的な絶縁状態を図12の場合に比較して、さらに向上させることができる。
【0090】
図14は、図13と同様のサイズの4枚のプレートを、図13と同様に固定した場合の実施形態である。すなわち、この例では、4枚のプレート601〜604が図13の場合と同様に、基材130Cに取り付けられている。より具体的には、右上のプレート602を例に挙げると、基材130Cに形成された、プレート602よりも少し大きい開口610内に上下左右にそれぞれ0.25mmのギャップを有するようにプレート602が固定されている。また、開口610の上下には取り付け部621,622が設けられており、当該取り付け部621,622に対して、プレート602がネジ623,624によって固定される。なお、固定の方法としては、図3の場合と同様の方法を採用することができる。あるいは、低熱伝導性のワッシャを用いずに、基材130Cに対してプレート601〜604を直接取り付けるようにしてもよい。
【0091】
このような実施形態によれば、例えば、電子基板上に配置されている部品の熱容量の範囲が狭い場合には、少ない枚数のプレートを配置した基材130Cによって、炉内の温度を計測することができる。これにより、データ量を減らすことができることから、適正な状態か否かを迅速に判定することができる。
【0092】
図15は、プレート140の他の取り付け方法を示す図である。図15の例では、図3の場合と比較して、基材130Dには、プレート140よりも若干大きい開口136Aが設けられており、プレート140と開口136Aの端部との間には、例えば、0.25mmのギャップが形成されるように設定されている。なお、それ以外の構成は、図3の場合と同様である。このような構成によれば、プレート140と開口136Aの端部との間にギャップを設けることによりこれらの熱的な絶縁状態をより確実なものとすることにより、基材130Dの熱がプレートに伝達することをより確実に防止することができる。なお、図15の例では、ワッシャ144を用いるようにしたが、ワッシャ144を用いないで、プレート140を基材130D上に直接配置するようにしてもよい。そのような配置方法であっても、プレート140と基材130Dとの接触面積を極小にすることができるので、プレート140を熱的に略絶縁された状態とすることができる。
【0093】
図16は、プレート140の他の取り付け方法を示す図である。図16の例では、図3の場合と比較して、基材130Eには、プレート140よりも若干小さい開口136Bが設けられており、プレート140と開口136Bの端部の重複部分は、例えば、5mm程度となるように設定されている。また、図16の例では、ワッシャ144の代わりに、プレート140と基材130Eとの重複部分と略同じ形状(「ロ」の字形状)を有するとともに、ネジ143が貫通するための孔が4箇所に設けられた、低熱伝導性であるテフロン製のシール部材700を有している。このような構成によれば、熱的な略絶縁状態を確保できるとともに、プレート140と基材130Eとの間を完全にシールした状態にできることから、一方の熱風が他方に抜ける(例えば、上からの熱風が下に抜けるあるいは下からの熱風が上に抜ける)ことを防止できるので、上下からの熱風が互いに干渉することを防止することができる。
【0094】
図17は、2枚のプレート140,740を対向するように配置した場合の例である。この例では、基材130Fには図16の場合と同様の開口136Bが設けられており、当該開口136Bを挟んで2枚のプレート140,740が対向するように配置されている。また、プレート140と基材130Fの重複する部分には、図16と同様のシール部材700が挟まれており、また、シール部材700と基材130Fとの間には、プレート140と同じサイズを有する、例えば、低熱伝導性のテフロンによって構成されるシート部材702が配置されている。プレート740と基材130Fの重複する部分には、図16と同様のシール部材701が挟まれており、また、シール部材701と基材130Fとの間には、プレート140と同じサイズを有する、前述したテフロンによって構成されるシート部材703が配置されている。そして、それぞれのプレート140,740には、熱電対141,741が溶接等によって固定されている。また、プレート140,740、シール部材700,701、シート部材702,703、および、基材130Fは、4本のリベット143Aによって固定されている。
【0095】
図17に示す構成では、2枚のプレート140,740は、相互に熱的に絶縁された状態であり、また、これら2枚のプレート140,740は、基材130Fからも熱的に絶縁された状態である。さらに、これら2枚のプレート140,740は、基材130Fに対して同様の取り付けられ方をしていることから熱容量が殆ど等しい状態である。このため、ほぼ同じ位置の上からの熱風と下からの熱風によるプレート140,740の温度変化を相互に干渉されることなく確実に測定することができる。これにより、上下方向に対向するノズル同士の設定(温度および風量)が適正か否かを判断することができる。なお、リベット143Aの頭部についてもプレート140,740の双方において頭部を有するように加工し、これらの熱容量も等しくなるようにしてもよい。
【0096】
図18は、図17の実施の形態から、プレート740その他を取り外した場合の実施形態である。すなわち、図17との比較では、プレート740、熱電対741、シール部材701、および、シート部材703が除外されている。また、図18の例では、頭部が下側に来るようにネジ143が配置されて固定されている。なお、ネジ143の代わりにリベットを用いるようにしてもよい。
【0097】
このような実施形態によれば、シール部材701によって基材130Gとプレート140とを熱的に略絶縁状態にするとともに、シート部材703によって開口136Bを塞ぐことにより、下からの熱風による影響を遮断し、上からの熱風だけによるプレート140の温度変化を確実に測定することができる。
【0098】
なお、以上に示す実施形態では、基材に開口を設け、当該開口に重なるようにプレートを配置するようにしたが、開口を設けないようにすることも可能である。図19は、開口を有しない基材130Hを使用した場合の実施形態である。図19(A)は、開口を有しない基材130Hに対して、熱電対141が固定されたプレート140を、テフロン製のワッシャ144を介してネジ143(または、リベット)によって取り付けた場合の例を示している。この例では、プレート140と基材130Hとは、ワッシャ144によって熱的に略絶縁状態にされていることから、開口を有しない場合であっても、プレート140と基材130Hとの間の熱的な干渉を排除し、プレート140の熱容量を一定に保つことができる。また、下からの熱風の影響を排除できることから、上からの熱風のみによる温度変化を測定することができる。
【0099】
また、図19(B)に示す例では、開口を有しない基材130Hに対して、熱電対141が固定されたプレート140を、テフロン製のシール部材700(「ロ」の字形状を有する図16の場合と同様のシール部材)を介してネジ143(または、リベット)によって取り付けた場合の例を示している。この例では、プレート140と基材130Hとは、シール部材700によって熱的に略絶縁状態にされていることから、開口を有しない場合であっても、プレート140と基材130Hとの間の熱的な干渉を排除し、プレート140の熱容量を一定に保つことができる。また、下からの熱風の影響を排除できることから、上からの熱風のみによる温度変化を測定することができる。さらに、この例では、プレート140と基材130Hとの間には、隙間が生じないので、隙間からプレート140の裏側に回り込んだ熱風による温度変化を防ぐことができる。なお、下からの熱風による放射熱の影響を排除するために、基板130Hとシール部材700との間に、図17と同様に、プレート140と同一のサイズを有するシート部材702を配置するようにしてもよい。
【0100】
また、同じ位置における上と下からの熱風のそれぞれによる温度変化を測定するために、例えば、図19(A)および図19(B)に示す構成を、図17と同様に、基板130Hの下側にも設けるようにしてもよい。このような構成によれば、同じ位置における上と下からの熱風のそれぞれによる温度変化を独立して、しかも、確実に測定することができる。
【0101】
以上の実施形態では、図2に示す検定基板100のパンタグラフ170,180に取り付けることを前提として説明したが、これ以外にも、例えば、図20,21に示すように、対象となる電子回路基板と同じサイズを有する金属製の板状部材800,900上にプレートを載置することにより、検定基板100A,100Bを構成するようにしてもよい。
【0102】
まず、図20の例では、検定基板100Aは、例えば、ステンレス製の板状部材800上に、開口801〜807が形成されており、それぞれの開口801〜807には、プレート810〜870が配置されている。なお、図20(A)は上面図を示し、図20(B)は側面図を示す。破線で示してある部分はめくら板880が配置されていることを示している。なお、図では詳細には示していないが、めくら板880が配置されている部分にも開口が設けられており、未使用の開口を塞ぐためにめくら板880がネジ等によって固定されている。
【0103】
プレート810は、その中央部に円形の開口813が設けられており、当該開口813に熱電対811がむき出しの状態で固定されている。このプレート810は、主に、炉内の雰囲気温度を計測するために設けられたものであり、熱容量は熱電対811の接合部のみの容量であるので最小(ほぼ「0」に近い)である。
【0104】
プレート820,840,860,870は、その熱容量がこの順に大きくなるように設定されている。具体的には、プレート840の熱容量を「1」とすると、プレート820,860,870は、それぞれ相対熱容量が「0.55」、「1.45」、および、「2.0」となるように設定されている。なお、これ以外の設定であってもよいことはいうまでもない。また、プレート830〜850は、同一の熱容量を有するように設定されている。
【0105】
プレート820〜870には、熱電対821〜871がそれぞれ溶接等によって固定されており、それぞれのプレートの温度を検出することができる。また、プレート810〜870は、それぞれ、4本のネジ812〜872によって板状部材800に固定されている。なお、めくら板880が取り付けられている部分に新たにプレートを配置したり、既存のプレートを除外してめくら板880を取り付けたりすることも可能である。
【0106】
図20に示す検定基板100Aは、前述した検定基板100と同様に使用することが可能である。なお、検定基板100Aをリフロー炉400に流す場合には、プレートの熱容量が小さい順に炉内に進入するように、図20の下側の端部を先に炉内に進入させる。これにより、熱容量が大きいプレートによって熱的な状態が擾乱され、熱容量が小さいプレートが当該擾乱の影響を受けて測定誤差が生じることを防止できる。
【0107】
また、図20に示す検定基板100Aでは、同じ熱容量のプレートを進行方向に直交する方向に並べて配置するようにしたので、炉内の位置による温度のばらつきの有無を測定することが可能になる。
【0108】
また、図20に示す検定基板100Aでは、前述したように、対象となる電子回路基板と同じサイズを有していることから、電子回路基板と同様の熱風の流れを再現することにより、温度分布を正確に測定することが可能になる。
【0109】
つぎに、図21の例では、検定基板100Bは、例えば、ステンレス製の板状部材900上に、開口901〜907が形成されており、それぞれの開口901〜907には、プレート910〜970が配置されている。なお、図21(A)は上面図を示し、図21(B)は側面図を示す。破線で示してある部分はめくら板980が配置されていることを示している。なお、前述の場合と同様に、図では詳細には示していないが、めくら板980が配置されている部分にも開口が設けられており、未使用の開口を塞ぐためにめくら板980がネジ等によって固定されている。
【0110】
プレート910は、その中央部に円形の開口913が設けられており、当該開口913に熱電対911がむき出しの状態で固定されている。このプレート910は、前述の場合と同じ目的で設けられている。
【0111】
プレート920〜940は、熱容量が同じに設定されている。また、プレート950〜960についても熱容量が同じに設定されている。さらに、プレート950〜970の熱容量を「1」とした場合に、プレート920〜940は、相対熱容量が「0.1」程度と小さくなるように設定されている。なお、これ以外の設定であってもよいことはいうまでもない。
【0112】
プレート920〜970には、熱電対921〜971がそれぞれ溶接等によって固定されており、それぞれのプレートの温度を検出することができる。また、プレート910〜970は、それぞれ、4本のネジ912〜972によって板状部材900に固定されている。なお、めくら板980が取り付けられている部分に新たにプレートを配置したり、既存のプレートを除外してめくら板980を取り付けたりすることも可能である。
【0113】
図21に示す検定基板100Bは、前述した検定基板100と同様に使用するのみならず、リフロー炉400の基本性能を測定する場合にも使用することができる。すなわち、プレート910によって炉内の雰囲気温度を測定するとともに、熱容量が非常に小さいプレート920〜940によって平均化された熱風の温度自体を測定することができる。すなわち、プレート920〜940は、ノズル2本分の熱風が当たるようにそのサイズが設定されているため熱風の平均的な温度を測定することができる。また、プレート920〜940は、熱容量が非常に小さく設定されていることから、熱風の温度変動に応じてその温度が遅延無く変化する。このため、プレート920〜940を用いることにより、実際の電子回路基板上における温度(実効温度)に近い温度を検出することができる。また、同じ熱容量のプレートを左右方向に並べて配置することにより、炉内の進行方向に直交する方向の温度のばらつきを検出することができる。また、同様に、プレート950〜970によれば、ある程度大きな熱容量を有するプレートの温度変化を見ることで、温度上昇能力を知ることができる。また、前述の場合と同様に、同じ熱容量のプレートを左右方向に並べて配置することにより、炉内の進行方向に直交する方向の温度上昇能力のばらつきを検出することができる。
【0114】
なお、図20,21の例では、前述した図3と同様の方法で、プレートを取り付けるようにしたが、例えば、図13、図15〜図19と同様の方法で取り付けることも可能である。また、板状部材を挟んで対向する位置に2枚のプレートを配置するようにしてもよい。
【0115】
(D)変形実施形態
なお、上記の形態例では、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の実施形態では、パーソナルコンピュータ300によって温度測定を行うようにしたが、例えば、リフロー炉400に設けられている制御用のコンピュータによって前述した処理を実行するようにしてもよい。
【0116】
また、図2に示す実施形態では、パンタグラフを2つ有する構成としたが、パンタグラフを1つだけとし(例えば、パンタグラフ170だけとし)、他方は2枚の板状部材をレール110,120と直交するように固定し、これらの2枚の板状部材の中央部に長孔を形成し、長孔部分にネジを挿入する構成としてもよい。このような構成によっても、レール110,120を平行移動させることができる。
【0117】
また、以上の各実施形態では、熱電対をプレートの裏側に配置するようにしたが、例えば、プレートの表側に配置するようにしてもよい。また、裏側と表側の双方に配置して温度差を計測することも可能である。
【0118】
また、以上の各実施形態では、図6に示すリフロー炉400を測定の対象としたが、これ以外の構成のリフロー炉であってもよいことは言うまでもない。例えば、加熱ゾーンまたは冷却ゾーンの個数が異なる炉であったり、入口および出口付近の配置される加熱ゾーンまたは冷却ゾーンは、上下に対向して配置するのではなく、上下のいずれか一方のみに配置したりしたものであったりしてもよい。
【0119】
また、図7および図11に示す処理では、適正状態のデータのみを格納するようにしたが、適正でない状態におけるデータ(不適正状態データ)を検定基板によって測定し、これも併せて格納するようにしてもよい。このような実施形態によれば、測定データが適正状態データと一致しない(またはある程度のずれを有する)場合には、不適正状態データと比較して不適切状態に近い場合には所定の範囲内にないとステップS34で判定するようにしてもよい。また、不適正状態データを複数格納しておくことにより、適正状態と不適正状態の境界を明確にすることができる。また、非常にクリティカルな状態を「クリティカル不適正状態」として格納しておき、当該クリティカル不適正状態と測定データとが一致する場合には、リフロー炉を直ちに停止するようにしてもよい。
【0120】
また、以上の各実施形態では、検定基板100、熱電対付電子回路基板200、温度測定装置350、および、パーソナルコンピュータ300は有線接続するようにしたが、無線による接続としてもよい。また、検定基板100に温度測定装置350とその出力を記憶する記憶装置(たとえば、半導体メモリ)を具備し、リフロー炉400内の温度を記憶装置に一旦記憶した後に、パーソナルコンピュータ300に転送するようにしてもよい。
【0121】
(E)他の変形実施形態
上述した本実施の形態では、検定基板100を用いてリフロー炉400内の状態を正確に客観的なデータとして把握するようにしているが、検定基板100を用いることなく、データを把握することもできる。例えば、熱電対付電子回路基板200に直接取り付けることができるリフロー炉測定用ブロック1040を用いてデータ収集する。
【0122】
図22は、熱電対付電子回路基板200にリフロー炉測定用ブロック1040を取り付けた状態を示す平面図である。
【0123】
この熱電対付電子回路基板200は、本実施の形態で示したものと同じものであり、基板上のIC或いはICソケットなどの所定の部品1002a〜1002d又はその近傍に熱電対1003がそれぞれ取り付けられている。
【0124】
リフロー炉測定用ブロック1040は、図22に示すように、基材1020(本実施の形態における検定基板100の基材40と同等の機能を有する)の上に、熱容量および面積が予め分かっている3つのプレート1010〜1012が載置されている。この3つのプレート1010〜1012は、図22の紙面上下方向(熱電対付電子回路基板200の搬送方向1050)に間隔をあけて3つ並べて配置されている。なお、この配置は適宜変更することができ、例えば、紙面左右方向(搬送方向1050と直交する方向)に3つを並べて配置してもよい。
【0125】
なお、基材1020とプレート1010〜1012との取付構造、およびプレート1010〜1012と熱電対の検温部142の形状や取付構造は、上述した(A)本発明の実施の形態または(D)変形実施形態で説明した構造を用いることができる。そのため、これらの取付に関する詳細な説明は省略する。
【0126】
また、図22で示す3つのプレート1010〜1012の数は、3つに限定されるものではない。すなわち、1または複数枚のプレートを取り付けるように構成することもできる。例えば、図23に示すように、5つのプレート1010〜1014を用いてリフロー炉測定用ブロック1041を形成することもできる。これらの5つのプレート1010〜1014は、図23に示すように、上述した基材1020よりも幅の広い基材1021の上に3行2列になる態様で配置されている。なお、その他の配列で配置されていても構わない。
【0127】
このリフロー炉測定用ブロック1040、1041は、図22および図23に示すように、熱電対付回路基板200の前端部200aに取り付けるための取付部1045を備えている。より詳細には、リフロー炉測定用ブロック1040、1041は、熱電対付電子回路基板200の前端部200aに、熱電対付電子回路基板200の前方に突出する態様で取り付けられている。
【0128】
なお、この熱電対付電子回路基板200は、リフロー炉400内で矢印1050方向に向けて搬送される。そのため、熱電対付電子回路基板200の前端部200aは、図22および図23の紙面上方が前端となる。
【0129】
このように、リフロー炉測定用ブロック1040、1041を熱電対付電子回路基板200の前端部200aに取り付けたのは、リフロー炉400内の熱データをより正確に把握するためである。すなわち、熱電対付電子回路基板200の後端部にリフロー炉測定用ブロック1040を取り付けた場合には、電子回路基板200が通過した後で熱が擾乱されている状態で測定することになり、より正確な測定データを取得することが困難である。そのため、擾乱されていない状態で測定するために、電子回路基板200の前端部200aに取り付けるようにしている。
【0130】
上述した取付部1045は、図22および図23に示すように、基材1020の両側にそれぞれ設けられ、この基材1020の後端部から熱電対付電子回路基板200側に向けて後方に突出している。この取付部1045と熱電対付電子回路基板200とは、ねじなどの締結部材1046によって締結されて取り付けられる。
【0131】
なお、取付部1045と熱電対付電子回路基板200との取付構造は、他の構造を用いて実施することができる。例えば、取付部にばね等の弾性を利用したクリップ構造を採用し、熱電対付電子回路基板200の前端部200aを挟み込む態様で取り付けるようにしてもよい。また、ピン結合などによって取り付ける構造であってもよい。
【0132】
このように、リフロー炉測定用ブロック1040、1041を熱電対付電子回路基板200に取り付けることによって、実際の熱電対付電子回路基板200の熱データを直接的に取得することができる一方、リフロー炉測定用ブロック1040、1041で不変の測定基準となる熱データを同時に取得することができる。
【0133】
このデータの処理方法としては、例えば、熱電対付電子回路基板200上で測定した各点での熱データの上限値と下限値を用いてリフロー炉400内の熱の状態を判定する。他方、リフロー炉400内で熱電対付電子回路基板200を複数回搬送することで回路基板200自体が熱により劣化した場合であっても、リフロー炉測定用ブロック1040、1041で測定した不変の測定基準に基づいて、リフロー炉400の状態を正確に把握することができる。この場合、リフロー炉測定用ブロック1040、1041を、劣化した基板の替わりに新たな回路基板200に取り替えて測定することもできる。
【0134】
他方、リフロー炉測定用ブロックは、熱電対付電子回路基板200に取り付ける他に、リフロー炉400内で搬送される用品に取り付けることができる。図24は、リフロー炉400内で搬送される検定基板1030(本実施の形態における検定基板100と同等)の前端部1030aにリフロー炉測定用ブロック1041を取り付けた状態を示す平面図である。なお、図24で示すリフロー炉測定用ブロックには、一実施例として、図23に示すリフロー炉測定用ブロック1041と同じものが使用されている。
【0135】
検定基板1030の前端部1030aであって検定基板1030の両側には、搬送方向1050前方に向かって延在する把持部1047が設けられている。この把持部1047は、リフロー炉測定用ブロック1041の両側を挟持するようになっており、これによりリフロー炉測定用ブロック1041が検定基板1030に取り付けられるようになる。なお、この取付構造は一例であり、ねじやピン等の締結部材で取り付けるようにしてもよく、クリップ式にして挟み込んで取り付ける構造であってもよい。
【0136】
このように、検定基板1030にリフロー炉測定用ブロック1041を取り付けるようにすれば、検定基板1030上で測定する熱データの数が不足するような場合であっても、容易に測定数を追加することができる。
【0137】
また、検定基板1030には、図24に示すように、各熱電対と接続されたデータロガ1031を搭載することもできる。このデータロガ1031は、各熱電対のデータを計測、保存する。これにより、検定基板1030から温度測定装置350(図1参照)まで延びる配線を不要とし、測定をより簡便に行うことができるようになる。
【0138】
また、上述の変形実施例では、リフロー炉測定用ブロック1040、1041を検定基板200或いはリフロー炉測定用基板1030の前端部200a、1030aよりも前側に突出するように構成しているが、突出させない態様であってもよい。図25は、熱電対付電子回路基板200上の前側部分の余剰スペースにリフロー炉測定用ブロック1042を取り付けた状態を示す平面図である。
【0139】
このリフロー炉測定用ブロック1042には、基材1022の上に1つのプレート1010が載置されている。この熱電対付電子回路基板200とリフロー炉測定用ブロック1042とは、ねじなどの締結部材(図示せず)によって取り付けられている。このように、プレート1010の数が少ない(検定する熱データの数が少ない)場合には、熱電対付電子回路基板200の前側の隙間部分(余剰スペース)にリフロー炉測定用ブロック1042を搭載することがより便利である。
【符号の説明】
【0140】
100,100A,100B 検定基板(リフロー炉測定用基板)
110,120 レール
130,130A〜130H 基材
140〜160 プレート
141〜161 熱電対(検出手段)
170,180 パンタグラフ(幅調整機構)
200 熱電対付電子回路基板
300 パーソナルコンピュータ
301 CPU(判定手段)
304 RAM(記憶手段)
307 I/F(入力手段)
310 プログラム
320 DB
350 温度測定装置
400 リフロー炉
402 加熱ゾーン
403 冷却ゾーン
404 コンベア
1002a〜1002d 電子部品
1003 熱電対
1010〜1015 プレート
1020、1021、1022 基材
1040、1041、1042 リフロー炉測定用ブロック
1045 取付部
1046 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー炉内を搬送される際に炉内の状態を測定するリフロー炉測定用基板において、
板状部材によって構成される基材と、
前記基材上に配置された熱容量が既知の1または複数のプレートと、
前記プレートに当接され、当該プレートの温度を検出する検出手段と、
を有することを特徴とするリフロー炉測定用基板。
【請求項2】
前記プレートは、熱的に略絶縁された状態で前記基材上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項3】
前記プレートは、前記リフロー炉の搬送方向に直交する方向の熱風吹き出しノズルのピッチよりも広い幅を有していることを特徴とする請求項1または2記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項4】
前記プレートは、熱容量が異なる複数のプレートを含み、
前記検出手段は、それぞれの前記プレートの温度を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項5】
前記プレートは、前記基材の前記リフロー炉内に最初に搬入される部分を先頭とし、最後に搬入される部分を末尾とした場合に、前記プレートが前記基材の先頭から末尾に向けて熱容量が小さい順に配置されていることを特徴とする請求項4記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項6】
前記プレートは、熱容量が略同じプレートが搬送方向に直交する方向に複数並べて配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項7】
前記プレートは、熱容量が略同じプレートが前記基材を挟んで対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項8】
前記検出手段は、熱電対によって構成され、当該熱電対の検出部分が前記プレートに熱的に結合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項9】
前記熱電対は前記プレートに溶接によって熱的に結合されていることを特徴とする請求項8記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項10】
前記基材には、それぞれの部分に配置される前記プレートと略同じサイズの開口が設けられており、当該開口上に前記プレートが配置されることにより、前記基材と前記プレートとの接触面積を少なくし、これらを熱的に略絶縁された状態にすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項11】
前記基材と前記プレートとの間には、前記プレートの少なくとも一部を覆う低伝熱性部材が挟まれており、当該低伝熱性部材によって前記基材と前記プレートとが熱的に略絶縁された状態とされていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項12】
前記基材は、前記リフロー炉内においてはんだ付けがなされる電子回路基板と略同じサイズを有していることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項13】
前記基材は、搬送方向に直交する方向の幅を調整可能な幅調整機構を有していることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板を有するリフロー炉測定装置において、
前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された前記データを記憶する記憶手段と、
を有することを特徴とするリフロー炉測定装置。
【請求項15】
前記格納手段は、前記リフロー炉内の状態が、はんだ付けしようとする電子回路基板に対して適正な状態になった場合に得られたデータを格納しており、
前記適正な状態になった場合に得られたデータと、新たに得られたデータとを比較することにより、その時点における前記リフロー炉の状態が適正であるか否かを判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする請求項14記載のリフロー炉測定装置。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板に基づいてリフロー炉の状態を測定するリフロー炉測定方法において、
前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力された前記データを記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
を有することを特徴とするリフロー炉測定方法。
【請求項17】
請求項1乃至13のいずれか1項記載のリフロー炉測定用基板に基づいてリフロー炉の状態を測定するリフロー炉測定プログラムにおいて、
コンピュータを、
前記リフロー炉測定用基板によって検出されたデータを入力する入力手段、
前記入力手段から入力された前記データを記憶する記憶手段、
としてコンピュータを機能させるコンピュータ読み取り可能なリフロー炉測定プログラム。
【請求項18】
リフロー炉内を搬送される際に炉内の状態を測定するリフロー炉測定用ブロックであって、
板状部材によって構成される基材と、
前記基材上に配置された熱容量が既知の1または複数のプレートと、
前記プレートに当接され、当該プレートの温度を検出する検出手段と、
を備え、
前記基材には、前記リフロー炉内で搬送される用品に着脱可能な取付部が設けられていることを特徴とするリフロー炉測定用ブロック。
【請求項19】
前記リフロー炉内で搬送される用品は、電子回路基板であることを特徴とする請求項18に記載のリフロー炉測定用ブロック。
【請求項20】
前記リフロー炉内で搬送される用品は、リフロー炉測定用基板であることを特徴とする請求項18に記載のリフロー炉測定用ブロック。
【請求項21】
前記リフロー炉内で搬送される用品の搬送方向の前端に取り付けられることを特徴とする請求項18から請求項20のいずれか1つに記載のリフロー炉測定用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−79055(P2011−79055A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205906(P2010−205906)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(509257972)日本テクノビジョン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】