リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路
【課題】1つの太陽電池セルの発生電圧を入力電圧として昇圧するリンギングチョーク方式のスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】トランジスタTrのOFF時にコンデンサCbの充電電圧がON閾値電圧を上回るとトランジスタTrがONし、1次側の1次巻線Npに入力電圧Vinが印加される。これにより1次側の2次巻線Nbに電圧が発生し、この電圧と充電電圧との合成電圧によりトランジスタTrはONし続ける。ONし続けると、コンデンサCbの充電電圧が低下し、トランジスタTrはOFFする。このとき、2次巻線Nsに誘起電圧が発生する。
【解決手段】トランジスタTrのOFF時にコンデンサCbの充電電圧がON閾値電圧を上回るとトランジスタTrがONし、1次側の1次巻線Npに入力電圧Vinが印加される。これにより1次側の2次巻線Nbに電圧が発生し、この電圧と充電電圧との合成電圧によりトランジスタTrはONし続ける。ONし続けると、コンデンサCbの充電電圧が低下し、トランジスタTrはOFFする。このとき、2次巻線Nsに誘起電圧が発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流低電圧を直流高電圧に電圧変換するリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路に関し、前記直流低電圧を発生する電力発生装置として、例えば1つの太陽電池セルに適用して好適なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部クロックが不要でトランスとトランジスタとで自励発振動作を行わせるリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路が利用されている。
【0003】
図7は、一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の回路図である。この昇圧型スイッチング電源回路2では、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4が、入力端子6、8間に接続され、出力電圧Voが発生する出力端子12、14間に負荷10が接続される。
【0004】
この昇圧型スイッチング電源回路2では、始動時に抵抗Rgを通ってトランジスタTrのベースに電流Igが流れるとトランジスタTrがONする。トランジスタTrがONすると、1次側の第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加される。
【0005】
このときトランスTを介し1次側の同極性の第2巻線Nbに発生する誘起電圧Vin×Nb/Np=Vnbによる定電流Ib(Ib=(Vnb−VBE)/Rb、ただしVBEは、トランジスタTrのベースエミッタ間電圧)がトランジスタTrのベースに供給される。なお、このとき、2次側の巻線Nsは逆極性となっておりダイオードDが逆バイアスとなるので2次電流Isは流れない。
【0006】
トランジスタTrがONしていると1次電流(コレクタ電流)Icが直線的に増加するが、ベース電流Ibが不足となる時点でトランジスタTrがOFFになる。
【0007】
トランジスタTrがOFFになったとき、第1巻線Npに発生する逆起電力が巻線比(Ns/Np)に応じた電圧で2次巻線Nsに誘起し、ダイオードDをONさせ2次電流IsによりコンデンサC2を充電するとともに、負荷10に負荷電流Io、電圧Voの電力が供給される。
【0008】
2次巻線Nsへの誘起電圧が低下しダイオードDがOFFになると、コンデンサC2から負荷に電力が供給されるとともに、2次巻線Nsに発生する逆起電力が巻線比(Nb/Ns)に応じた電圧で1次巻線の第2巻線Nbに誘起し、トランジスタTrがONする。以下、トランジスタTrがON、OFF動作を繰り返す。
【0009】
図8は、図7に示す一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の1次電流Ic(1次側第1巻線Npに流れる電流)と、2次電流Is(2次巻線Nsに流れる電流)の各波形を示している。
【0010】
スイッチング周期Tswは、トランジスタON期間Tr_onとトランジスタOFF期間Tr_offとからなり、トランジスタON期間Tr_onにトランスTの第1巻線Npに1次電流Icが流れてリアクトルである第1巻線Npにエネルギが蓄積される。このトランジスタON期間Tr_onと1次電流通電期間TIc_onとが等しい。
【0011】
その一方、トランジスタOFF期間Tr_offにトランスTの2次巻線Nsから2次電流Isが流れ出し、エネルギを放出しつくす。このトランジスタOFF期間Tr_offと2次電流Isの通電期間(2次電流通電期間)TIs_onとが等しい。
【0012】
ところで、リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の電力発生装置4として、直流低電圧を発生する、例えば1つの太陽電池セルの利用を考えた場合、1つの太陽電池セルのOCV(開放回路電圧:Open Circuit Voltage)は、0.6[V]程度であり、トランジスタTrのON閾値電圧は、それより僅かに低い電圧である。
【0013】
したがって、図7に示したリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の電力発生装置4として1つの太陽電池セルを接続した場合には、抵抗Rgを通じてトランジスタTrに電流Igが流れ、トランジスタTrをONしようとするが、太陽電池セルが電流Igを供給しているため、前記太陽電池セルの内部抵抗による電圧降下によりトランジスタTrのベース電圧がトランジスタTrのON閾値電圧を下回ることになりトランジスタTrをONすることができないという不都合が発生する。
【0014】
この問題を解決するために、トランジスタのON閾値電圧を低下させるSOI(Silicon On Insulator)技術を採用することが考えられる(特許文献1)。
【0015】
【特許文献1】特開2005−102440号公報([0031]、[0032])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、SOI技術は、製造工程が複雑でありコストが高いという問題がある。
【0017】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、廉価なトランジスタを用いて1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置であっても、スイッチングを安定して継続させることを可能とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路は、電力発生装置で発生された電圧が入力電圧として印加される1次側に、第1巻線と第2巻線が設けられ、2次側に、負荷が接続される出力巻線が設けられたトランスと、前記入力電圧のホット側が一端側に接続される前記第1巻線の他端側にコレクタが接続され、エミッタが前記入力電圧のコールド側に接続されたトランジスタと、前記入力電圧のホット側と前記トランジスタのベース間に接続された抵抗と、一端側が前記エミッタに接続される前記第2巻線の他端側と、前記ベースとの間に接続されたコンデンサと、を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明では、トランジスタのベースに接続される1次側第2巻線のホット側と前記ベース間にコンデンサを接続し、該コンデンサを入力電圧のホット側と該コンデンサとの間に接続される抵抗により充電するという特徴的な構成を採用している。このように構成すれば、スイッチング周期毎にこのコンデンサが充電され、この充電電圧によりトランジスタをONさせることができるので、この充電電圧がトランジスタのON閾値電圧より僅かでも高ければ、トランジスタを継続してONさせることができる。
【0020】
この発明によれば、前記電力発生装置の開放電圧が、前記トランジスタのON閾値電圧を下回らない電圧である場合には、トランジスタを継続して(連続して)ONさせることができる。
【0021】
なお、前記トランジスタは、前記抵抗を通じて充電される前記コンデンサの両端電圧が前記ON閾値電圧を上回るとONするが、ONすると前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加され、前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加されると、前記1次側第2巻線に電圧が誘起し、誘起した第2巻線間電圧が前記コンデンサの両端電圧に加算されて前記トランジスタがさらにON方向に動作する際の、前記第2巻線間電圧が前記ON閾値電圧を下回る電圧となるように前記トランスが製作されているように構成することで、トランスを含めたリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の電力損失を抑制することができる。
【0022】
前記電力発生装置が、1つの太陽電池セルであるとき、この発明を好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置であっても、廉価なトランジスタを用いて入力電圧よりも出力電圧を高くすることができるスイッチング動作を安定して継続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に参照する図面において、上記図7、図8に示したものと対応するものには同一の符号を付ける。
【0025】
図1は、この発明の一実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の回路図である。
【0026】
この昇圧型スイッチング電源回路20では、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4が1次側の入力端子6、8間に接続され、負荷10が、出力電圧Voが発生する2次側の出力端子12、14間に接続される。
【0027】
電力発生装置4として、この実施形態では1つの太陽電池セルを用いているが、電力発生装置4としては、1つの太陽電池セルに限定されることはない。
【0028】
電力発生装置4が発生する1次電圧である入力電圧Vinを2次電圧である出力電圧Voに変換するために、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には、ON/OFFするトランジスタTrと、1個のトランスTとを備える。
【0029】
トランジスタTrとして、この実施形態ではバイポーラNPN型トランジスタを用いているが、バイポーラ型トランジスタに限定されることはない。
【0030】
トランスTのコア22の1次側に第1巻線Npと第2巻線Nbが巻かれ、トランスTの2次側に出力巻線Nsが巻かれている。
【0031】
出力巻線Nsには、ダイオードDと平滑コンデンサC2とからな整流回路が接続されている。出力電圧Voは平滑コンデンサC2の両端電圧として得られる。
【0032】
1次側の第1巻線Npの一端は、端子6を介して電力発生装置4のホット側(この実施形態では電流ソース側)に接続され、第1巻線Npの他端は、トランジスタTrのコレクタに接続されている。
【0033】
トランジスタTrのベースと電力発生装置4のホット側との間に抵抗Rgが接続されている。
【0034】
トランジスタTrのエミッタは接地され、端子8を介して電力発生装置4のコールド側(この実施形態では電流シンク側)に接続されている。
【0035】
1次側の第2巻線Nbの一端は接地されている。1次側の第2巻線Nbの他端と、トランジスタTrのベースと前記抵抗Rgの接続点と、の間に抵抗RbとコンデンサCbの直列回路が接続されている。
【0036】
抵抗Rbは、ダンピング抵抗(制動抵抗)であり、トランジスタTrのON及びOFF時に第2巻線Nbのホット側に発生するスパイク電圧によりトランジスタTrのベースエミッタ間に過大な逆電圧がかからないような値(小抵抗値)に設定される。なお、抵抗Rbは、小抵抗値であるので、以下の説明において、理解の容易化を考慮し、抵抗Rbの両端に発生する電圧は0[V]として説明する。また、抵抗Rbは、スパイク電圧を低減する目的で挿入されているので、スパイク電圧の周波数を低減するビーズコア等(スパイク電圧の周波数での抵抗成分が高く、直流では抵抗成分がゼロ値となる素子)に代替する(抵抗と併用する)ことも可能である。
【0037】
図2は、この実施形態に係る1つの太陽電池セルである電力発生装置4の温度に対する開放電圧Vocv[V]の変化特性と、トランジスタTrの温度に対するベースエミッタ間のON閾値電圧Vth[V]の変化特性を示している。電力発生装置4の開放電圧Vocvの特性は、日射量が500[W/m2]のときの開放電圧Vocv2の特性と、日射量が1000[W/m2]のときの開放電圧Vocv1の特性を示している。同一温度では、日射量が大きいときの方が開放電圧Vocvが高いことが分かる(Vocv1>Vocv2)。
【0038】
1つの太陽電池セルからなる電力発生装置4によりトランジスタTrをONにするためには、その開放電圧Vocvが、トランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回らない電圧となっていることが必要である(Vth≦Vocv)。
【0039】
例えば、温度40[℃]において、トランジスタTrのON閾値電圧Vthは、約0.5[V]であり、開放電圧Vocv1は、約0.55[V]であると読み取れる。以下、この実施形態の理解を容易にするため、特に断らない限り、トランジスタTrのON閾値電圧Vthは、Vth=0.5[V]、電力発生装置4の開放電圧Vocvは、Vocv=0.55[V]であるものとして説明する。
【0040】
この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0041】
図3に示すように、トランジスタTrがOFF、ダイオードDがOFFのときに、電力発生装置4から電流Igが流れ出し、抵抗Rg、コンデンサCb、抵抗Rb、及び第2巻線Nbの経路でコンデンサCbに徐々に充電される。なお、継続発振中(自励発振中)には、ダイオードDがOFFのときに、コンデンサC2から負荷電流Ioが負荷10に供給される。
【0042】
1次側において、電力発生装置4からコンデンサCbに電流Igが流れることで、電力発生装置4の内部抵抗による電圧降下を原因として、入力電圧(電力発生装置4の発生電圧)Vinが一旦低下するが、コンデンサCbが徐々に充電されるにつれて、充電電圧Vcbが増加することから入力電圧Vinは開放電圧Vocv=0.55[V]に近づいていく。
【0043】
さらに、コンデンサCbが充電されるにつれ、トランジスタTrのベース電圧が、開放電圧Vocv=0.55[V]に近づき、トランジスタTrのベースの電圧がON閾値電圧Vth=0.5[V]に達したとき、トランジスタTrはOFFからONになる。
【0044】
図4に示すように、トランジスタTrがONになると、入力電圧Vinが1次側の第1巻線Np間に印加され、この第1巻線Np(リアクトルと考えることができる。)にエネルギが蓄積される。
【0045】
このとき、トランスTを介して1次側の第2巻線Nbに電圧Vnb(Vnb=Vin×Nb/Np)が発生するので、トランジスタTrのベースの電圧が急速に上昇する。
【0046】
結果、トランジスタTrのベースの電圧は、充電電圧Vcbと電圧Vnbの合成電圧(Vcb+Vnb)となり、トランジスタTrをさらにON方向にする。
【0047】
トランジスタTrがONし続けると、コンデンサCbの充電電荷がトランジスタTrをONするために消費され、充電電圧Vcbが低下する。
【0048】
充電電圧Vcbが低下して合成電圧(Vcb+Vnb)がトランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回るとトランジスタTrはOFFする。
【0049】
図5に示すように、トランジスタTrがOFFすると、1次側第1巻線Npに逆起電力Vin´が発生するとともに、2次側の巻線Nsに巻線比(Ns/Np)に応じた起電力による電圧Vnsが誘起する。
【0050】
このとき、図5に示すように、ダイオードDがONし、2次側の巻線Nsから2次電流Isが流れ出し、コンデンサC2を充電するとともに、負荷10に電圧Voで負荷電流Ioを供給する。
【0051】
2次側の巻線Ns(リアクトルと考えることができる。)からエネルギが放出されると、図3を参照して説明した最初の動作にもどり、再びコンデンサCbが充電開始され、以降、同一の自励発振動作を繰り返す(継続する)。
【0052】
図6は、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の1次電流Ic(1次側第1巻線Npに流れる電流)と、2次電流Is(2次巻線Nsに流れる電流)の各波形を示している。
【0053】
スイッチング周期Tswは、時点t0〜t1の間のトランジスタON期間Tr_onと時点t1〜t3のトランジスタOFF期間Tr_offとからなり、トランジスタON期間Tr_onにトランスTの第1巻線Npに1次電流Icが流れ、リアクトルである第1巻線Npにエネルギが蓄積される。そして、トランジスタON期間Tr_onと1次電流通電期間TIc_onとが等しい。
【0054】
その一方、トランジスタOFF期間Tr_offの初期期間である時点t1〜t2の2次電流通電期間TIs_onにトランスTの2次巻線Nsから2次電流Isが流れ、エネルギを放出しつくす。
【0055】
時点t2〜t3のコンデンサ充電期間Tchの間でコンデンサCbに対し電流Igにより電荷が充電される。
【0056】
このように、この実施形態では、図8に示した従来技術に比較して、トランジスタOFF期間Tr_offと2次電流通電期間TIs_onとは等しくない。
【0057】
以上説明したように、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、1つの太陽電池セルの発生電圧を入力電圧Vinとして昇圧するリンギングチョーク方式のスイッチング電源回路といえる。
【0058】
このリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4から電力が供給される1次側に第1巻線Npと第2巻線Nbが設けられ、2次側に整流回路を介して負荷10が接続される巻線Nsが設けられたトランスTと、入力電圧Vinのホット側(電圧発生側)が一端側に接続される第1巻線Npの他端側にコレクタが接続され、エミッタが入力電圧Vinのコールド側(接地側)に接続されたトランジスタTrと、入力電圧Vinのホット側とトランジスタTrのベース間に接続された抵抗Rgと、一端側がトランジスタTrの接地されているエミッタに接続される第2巻線Nbの他端側とトランジスタTrのベースとの間に接続されたコンデンサCbと、を備える。
【0059】
このように、トランジスタTrのベースに接続される1次側第2巻線Nbと、前記ベースとの間にコンデンサCbを接続し、該コンデンサCbを入力電圧Vinのホット側と該コンデンサCbとの間に接続される抵抗Rgにより充電するという特徴的な構成を採用している。このように構成すれば、図6に示したスイッチング周期Tsw毎に、コンデンサ充電期間TchでこのコンデンサCbが充電され、充電電圧Vcb(図3参照)によりトランジスタをONさせることができるので、この充電電圧VcbがトランジスタTrのON閾値電圧Vthより僅かでも高ければ、トランジスタTrを継続してONさせることができる。
【0060】
換言すれば、電力発生装置4の開放電圧Vocvが、トランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回らない電圧である場合に、トランジスタTrを継続してONさせることができる。
【0061】
すなわち、リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20を自励発振させることができる。
【0062】
なお、トランジスタTrは、抵抗Rgを通じて充電されるコンデンサCbの両端電圧VcbがON閾値電圧Vthを上回るとONするが、ONすると1次側第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加され、1次側第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加されると、1次側第2巻線Nbに電圧Vnbが発生し、発生した第2巻線間電圧VnbがコンデンサCbの両端電圧Vcbに加算(Vnb+Vcb)されてトランジスタTrがさらにON方向に動作する際の第2巻線間電圧VnbがON閾値電圧Vthより小さくなるようにトランスTを製作することで、トランスTを含めたリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の電力損失を抑制することができる。
【0063】
電力発生装置4が、1つの太陽電池セルであると、この発明を好適に適用することができる。実際上、図1のリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20により太陽電池セルを使用し、−40〜+80[℃]の範囲で動作を確認することができた。
【0064】
このように、この発明によれば、1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置4であっても、廉価なトランジスタTrを用いてスイッチングを安定して継続させることができる。
【0065】
また、上述した実施形態においては、トランジスタTrとしてNPN型のバイポーラトランジスタを使用しているが、この明細書の記載内容に基づき、PNP型のバイポーラトランジスタに変更すること、あるいは、電力発生装置4を太陽電池セルではなく燃料電池セルに変更すること、またはこれらの電力発生装置4が直列に接続されて使用される場合に、バイポーラトランジスタではなく、MOSFETやIGBTを用いること等、種々の構成を採り得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の一実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の回路図である。
【図2】この実施形態に係る1つの太陽電池セルである電力発生装置の温度に対する開放電圧の変化特性と、トランジスタの温度に対するON閾値電圧の変化特性を示す特性図である。
【図3】トランジスタがOFF時である充電時の説明図である。
【図4】トランジスタがONされて1次側第1巻線に入力電圧が印加された状態の説明図である。
【図5】トランジスタがOFFとなって、2次側巻線に誘起起電力が発生した状態を示す説明図である。
【図6】この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の1次電流と2次電流の各波形図である。
【図7】一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の回路図である。
【図8】図7に示す一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の1次電流と2次電流の各波形図である。
【符号の説明】
【0067】
2、20…リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路
4…電力発生装置 10…負荷
Cb…コンデンサ Nb…1次側第2巻線
Np…1次側第1巻線 Ns…2次側巻線(2次巻線、出力巻線)
T…トランス Tr…トランジスタ
Rb、Rg…抵抗 Vin…入力電圧
Vo…出力電圧
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流低電圧を直流高電圧に電圧変換するリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路に関し、前記直流低電圧を発生する電力発生装置として、例えば1つの太陽電池セルに適用して好適なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部クロックが不要でトランスとトランジスタとで自励発振動作を行わせるリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路が利用されている。
【0003】
図7は、一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の回路図である。この昇圧型スイッチング電源回路2では、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4が、入力端子6、8間に接続され、出力電圧Voが発生する出力端子12、14間に負荷10が接続される。
【0004】
この昇圧型スイッチング電源回路2では、始動時に抵抗Rgを通ってトランジスタTrのベースに電流Igが流れるとトランジスタTrがONする。トランジスタTrがONすると、1次側の第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加される。
【0005】
このときトランスTを介し1次側の同極性の第2巻線Nbに発生する誘起電圧Vin×Nb/Np=Vnbによる定電流Ib(Ib=(Vnb−VBE)/Rb、ただしVBEは、トランジスタTrのベースエミッタ間電圧)がトランジスタTrのベースに供給される。なお、このとき、2次側の巻線Nsは逆極性となっておりダイオードDが逆バイアスとなるので2次電流Isは流れない。
【0006】
トランジスタTrがONしていると1次電流(コレクタ電流)Icが直線的に増加するが、ベース電流Ibが不足となる時点でトランジスタTrがOFFになる。
【0007】
トランジスタTrがOFFになったとき、第1巻線Npに発生する逆起電力が巻線比(Ns/Np)に応じた電圧で2次巻線Nsに誘起し、ダイオードDをONさせ2次電流IsによりコンデンサC2を充電するとともに、負荷10に負荷電流Io、電圧Voの電力が供給される。
【0008】
2次巻線Nsへの誘起電圧が低下しダイオードDがOFFになると、コンデンサC2から負荷に電力が供給されるとともに、2次巻線Nsに発生する逆起電力が巻線比(Nb/Ns)に応じた電圧で1次巻線の第2巻線Nbに誘起し、トランジスタTrがONする。以下、トランジスタTrがON、OFF動作を繰り返す。
【0009】
図8は、図7に示す一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の1次電流Ic(1次側第1巻線Npに流れる電流)と、2次電流Is(2次巻線Nsに流れる電流)の各波形を示している。
【0010】
スイッチング周期Tswは、トランジスタON期間Tr_onとトランジスタOFF期間Tr_offとからなり、トランジスタON期間Tr_onにトランスTの第1巻線Npに1次電流Icが流れてリアクトルである第1巻線Npにエネルギが蓄積される。このトランジスタON期間Tr_onと1次電流通電期間TIc_onとが等しい。
【0011】
その一方、トランジスタOFF期間Tr_offにトランスTの2次巻線Nsから2次電流Isが流れ出し、エネルギを放出しつくす。このトランジスタOFF期間Tr_offと2次電流Isの通電期間(2次電流通電期間)TIs_onとが等しい。
【0012】
ところで、リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の電力発生装置4として、直流低電圧を発生する、例えば1つの太陽電池セルの利用を考えた場合、1つの太陽電池セルのOCV(開放回路電圧:Open Circuit Voltage)は、0.6[V]程度であり、トランジスタTrのON閾値電圧は、それより僅かに低い電圧である。
【0013】
したがって、図7に示したリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路2の電力発生装置4として1つの太陽電池セルを接続した場合には、抵抗Rgを通じてトランジスタTrに電流Igが流れ、トランジスタTrをONしようとするが、太陽電池セルが電流Igを供給しているため、前記太陽電池セルの内部抵抗による電圧降下によりトランジスタTrのベース電圧がトランジスタTrのON閾値電圧を下回ることになりトランジスタTrをONすることができないという不都合が発生する。
【0014】
この問題を解決するために、トランジスタのON閾値電圧を低下させるSOI(Silicon On Insulator)技術を採用することが考えられる(特許文献1)。
【0015】
【特許文献1】特開2005−102440号公報([0031]、[0032])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、SOI技術は、製造工程が複雑でありコストが高いという問題がある。
【0017】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、廉価なトランジスタを用いて1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置であっても、スイッチングを安定して継続させることを可能とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路は、電力発生装置で発生された電圧が入力電圧として印加される1次側に、第1巻線と第2巻線が設けられ、2次側に、負荷が接続される出力巻線が設けられたトランスと、前記入力電圧のホット側が一端側に接続される前記第1巻線の他端側にコレクタが接続され、エミッタが前記入力電圧のコールド側に接続されたトランジスタと、前記入力電圧のホット側と前記トランジスタのベース間に接続された抵抗と、一端側が前記エミッタに接続される前記第2巻線の他端側と、前記ベースとの間に接続されたコンデンサと、を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明では、トランジスタのベースに接続される1次側第2巻線のホット側と前記ベース間にコンデンサを接続し、該コンデンサを入力電圧のホット側と該コンデンサとの間に接続される抵抗により充電するという特徴的な構成を採用している。このように構成すれば、スイッチング周期毎にこのコンデンサが充電され、この充電電圧によりトランジスタをONさせることができるので、この充電電圧がトランジスタのON閾値電圧より僅かでも高ければ、トランジスタを継続してONさせることができる。
【0020】
この発明によれば、前記電力発生装置の開放電圧が、前記トランジスタのON閾値電圧を下回らない電圧である場合には、トランジスタを継続して(連続して)ONさせることができる。
【0021】
なお、前記トランジスタは、前記抵抗を通じて充電される前記コンデンサの両端電圧が前記ON閾値電圧を上回るとONするが、ONすると前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加され、前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加されると、前記1次側第2巻線に電圧が誘起し、誘起した第2巻線間電圧が前記コンデンサの両端電圧に加算されて前記トランジスタがさらにON方向に動作する際の、前記第2巻線間電圧が前記ON閾値電圧を下回る電圧となるように前記トランスが製作されているように構成することで、トランスを含めたリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の電力損失を抑制することができる。
【0022】
前記電力発生装置が、1つの太陽電池セルであるとき、この発明を好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置であっても、廉価なトランジスタを用いて入力電圧よりも出力電圧を高くすることができるスイッチング動作を安定して継続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に参照する図面において、上記図7、図8に示したものと対応するものには同一の符号を付ける。
【0025】
図1は、この発明の一実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の回路図である。
【0026】
この昇圧型スイッチング電源回路20では、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4が1次側の入力端子6、8間に接続され、負荷10が、出力電圧Voが発生する2次側の出力端子12、14間に接続される。
【0027】
電力発生装置4として、この実施形態では1つの太陽電池セルを用いているが、電力発生装置4としては、1つの太陽電池セルに限定されることはない。
【0028】
電力発生装置4が発生する1次電圧である入力電圧Vinを2次電圧である出力電圧Voに変換するために、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には、ON/OFFするトランジスタTrと、1個のトランスTとを備える。
【0029】
トランジスタTrとして、この実施形態ではバイポーラNPN型トランジスタを用いているが、バイポーラ型トランジスタに限定されることはない。
【0030】
トランスTのコア22の1次側に第1巻線Npと第2巻線Nbが巻かれ、トランスTの2次側に出力巻線Nsが巻かれている。
【0031】
出力巻線Nsには、ダイオードDと平滑コンデンサC2とからな整流回路が接続されている。出力電圧Voは平滑コンデンサC2の両端電圧として得られる。
【0032】
1次側の第1巻線Npの一端は、端子6を介して電力発生装置4のホット側(この実施形態では電流ソース側)に接続され、第1巻線Npの他端は、トランジスタTrのコレクタに接続されている。
【0033】
トランジスタTrのベースと電力発生装置4のホット側との間に抵抗Rgが接続されている。
【0034】
トランジスタTrのエミッタは接地され、端子8を介して電力発生装置4のコールド側(この実施形態では電流シンク側)に接続されている。
【0035】
1次側の第2巻線Nbの一端は接地されている。1次側の第2巻線Nbの他端と、トランジスタTrのベースと前記抵抗Rgの接続点と、の間に抵抗RbとコンデンサCbの直列回路が接続されている。
【0036】
抵抗Rbは、ダンピング抵抗(制動抵抗)であり、トランジスタTrのON及びOFF時に第2巻線Nbのホット側に発生するスパイク電圧によりトランジスタTrのベースエミッタ間に過大な逆電圧がかからないような値(小抵抗値)に設定される。なお、抵抗Rbは、小抵抗値であるので、以下の説明において、理解の容易化を考慮し、抵抗Rbの両端に発生する電圧は0[V]として説明する。また、抵抗Rbは、スパイク電圧を低減する目的で挿入されているので、スパイク電圧の周波数を低減するビーズコア等(スパイク電圧の周波数での抵抗成分が高く、直流では抵抗成分がゼロ値となる素子)に代替する(抵抗と併用する)ことも可能である。
【0037】
図2は、この実施形態に係る1つの太陽電池セルである電力発生装置4の温度に対する開放電圧Vocv[V]の変化特性と、トランジスタTrの温度に対するベースエミッタ間のON閾値電圧Vth[V]の変化特性を示している。電力発生装置4の開放電圧Vocvの特性は、日射量が500[W/m2]のときの開放電圧Vocv2の特性と、日射量が1000[W/m2]のときの開放電圧Vocv1の特性を示している。同一温度では、日射量が大きいときの方が開放電圧Vocvが高いことが分かる(Vocv1>Vocv2)。
【0038】
1つの太陽電池セルからなる電力発生装置4によりトランジスタTrをONにするためには、その開放電圧Vocvが、トランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回らない電圧となっていることが必要である(Vth≦Vocv)。
【0039】
例えば、温度40[℃]において、トランジスタTrのON閾値電圧Vthは、約0.5[V]であり、開放電圧Vocv1は、約0.55[V]であると読み取れる。以下、この実施形態の理解を容易にするため、特に断らない限り、トランジスタTrのON閾値電圧Vthは、Vth=0.5[V]、電力発生装置4の開放電圧Vocvは、Vocv=0.55[V]であるものとして説明する。
【0040】
この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0041】
図3に示すように、トランジスタTrがOFF、ダイオードDがOFFのときに、電力発生装置4から電流Igが流れ出し、抵抗Rg、コンデンサCb、抵抗Rb、及び第2巻線Nbの経路でコンデンサCbに徐々に充電される。なお、継続発振中(自励発振中)には、ダイオードDがOFFのときに、コンデンサC2から負荷電流Ioが負荷10に供給される。
【0042】
1次側において、電力発生装置4からコンデンサCbに電流Igが流れることで、電力発生装置4の内部抵抗による電圧降下を原因として、入力電圧(電力発生装置4の発生電圧)Vinが一旦低下するが、コンデンサCbが徐々に充電されるにつれて、充電電圧Vcbが増加することから入力電圧Vinは開放電圧Vocv=0.55[V]に近づいていく。
【0043】
さらに、コンデンサCbが充電されるにつれ、トランジスタTrのベース電圧が、開放電圧Vocv=0.55[V]に近づき、トランジスタTrのベースの電圧がON閾値電圧Vth=0.5[V]に達したとき、トランジスタTrはOFFからONになる。
【0044】
図4に示すように、トランジスタTrがONになると、入力電圧Vinが1次側の第1巻線Np間に印加され、この第1巻線Np(リアクトルと考えることができる。)にエネルギが蓄積される。
【0045】
このとき、トランスTを介して1次側の第2巻線Nbに電圧Vnb(Vnb=Vin×Nb/Np)が発生するので、トランジスタTrのベースの電圧が急速に上昇する。
【0046】
結果、トランジスタTrのベースの電圧は、充電電圧Vcbと電圧Vnbの合成電圧(Vcb+Vnb)となり、トランジスタTrをさらにON方向にする。
【0047】
トランジスタTrがONし続けると、コンデンサCbの充電電荷がトランジスタTrをONするために消費され、充電電圧Vcbが低下する。
【0048】
充電電圧Vcbが低下して合成電圧(Vcb+Vnb)がトランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回るとトランジスタTrはOFFする。
【0049】
図5に示すように、トランジスタTrがOFFすると、1次側第1巻線Npに逆起電力Vin´が発生するとともに、2次側の巻線Nsに巻線比(Ns/Np)に応じた起電力による電圧Vnsが誘起する。
【0050】
このとき、図5に示すように、ダイオードDがONし、2次側の巻線Nsから2次電流Isが流れ出し、コンデンサC2を充電するとともに、負荷10に電圧Voで負荷電流Ioを供給する。
【0051】
2次側の巻線Ns(リアクトルと考えることができる。)からエネルギが放出されると、図3を参照して説明した最初の動作にもどり、再びコンデンサCbが充電開始され、以降、同一の自励発振動作を繰り返す(継続する)。
【0052】
図6は、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の1次電流Ic(1次側第1巻線Npに流れる電流)と、2次電流Is(2次巻線Nsに流れる電流)の各波形を示している。
【0053】
スイッチング周期Tswは、時点t0〜t1の間のトランジスタON期間Tr_onと時点t1〜t3のトランジスタOFF期間Tr_offとからなり、トランジスタON期間Tr_onにトランスTの第1巻線Npに1次電流Icが流れ、リアクトルである第1巻線Npにエネルギが蓄積される。そして、トランジスタON期間Tr_onと1次電流通電期間TIc_onとが等しい。
【0054】
その一方、トランジスタOFF期間Tr_offの初期期間である時点t1〜t2の2次電流通電期間TIs_onにトランスTの2次巻線Nsから2次電流Isが流れ、エネルギを放出しつくす。
【0055】
時点t2〜t3のコンデンサ充電期間Tchの間でコンデンサCbに対し電流Igにより電荷が充電される。
【0056】
このように、この実施形態では、図8に示した従来技術に比較して、トランジスタOFF期間Tr_offと2次電流通電期間TIs_onとは等しくない。
【0057】
以上説明したように、この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、1つの太陽電池セルの発生電圧を入力電圧Vinとして昇圧するリンギングチョーク方式のスイッチング電源回路といえる。
【0058】
このリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20は、基本的には、入力電圧Vinを発生する電力発生装置4から電力が供給される1次側に第1巻線Npと第2巻線Nbが設けられ、2次側に整流回路を介して負荷10が接続される巻線Nsが設けられたトランスTと、入力電圧Vinのホット側(電圧発生側)が一端側に接続される第1巻線Npの他端側にコレクタが接続され、エミッタが入力電圧Vinのコールド側(接地側)に接続されたトランジスタTrと、入力電圧Vinのホット側とトランジスタTrのベース間に接続された抵抗Rgと、一端側がトランジスタTrの接地されているエミッタに接続される第2巻線Nbの他端側とトランジスタTrのベースとの間に接続されたコンデンサCbと、を備える。
【0059】
このように、トランジスタTrのベースに接続される1次側第2巻線Nbと、前記ベースとの間にコンデンサCbを接続し、該コンデンサCbを入力電圧Vinのホット側と該コンデンサCbとの間に接続される抵抗Rgにより充電するという特徴的な構成を採用している。このように構成すれば、図6に示したスイッチング周期Tsw毎に、コンデンサ充電期間TchでこのコンデンサCbが充電され、充電電圧Vcb(図3参照)によりトランジスタをONさせることができるので、この充電電圧VcbがトランジスタTrのON閾値電圧Vthより僅かでも高ければ、トランジスタTrを継続してONさせることができる。
【0060】
換言すれば、電力発生装置4の開放電圧Vocvが、トランジスタTrのON閾値電圧Vthを下回らない電圧である場合に、トランジスタTrを継続してONさせることができる。
【0061】
すなわち、リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20を自励発振させることができる。
【0062】
なお、トランジスタTrは、抵抗Rgを通じて充電されるコンデンサCbの両端電圧VcbがON閾値電圧Vthを上回るとONするが、ONすると1次側第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加され、1次側第1巻線Np間に入力電圧Vinが印加されると、1次側第2巻線Nbに電圧Vnbが発生し、発生した第2巻線間電圧VnbがコンデンサCbの両端電圧Vcbに加算(Vnb+Vcb)されてトランジスタTrがさらにON方向に動作する際の第2巻線間電圧VnbがON閾値電圧Vthより小さくなるようにトランスTを製作することで、トランスTを含めたリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20の電力損失を抑制することができる。
【0063】
電力発生装置4が、1つの太陽電池セルであると、この発明を好適に適用することができる。実際上、図1のリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路20により太陽電池セルを使用し、−40〜+80[℃]の範囲で動作を確認することができた。
【0064】
このように、この発明によれば、1つの太陽電池セル等、低電圧を発生する電力発生装置4であっても、廉価なトランジスタTrを用いてスイッチングを安定して継続させることができる。
【0065】
また、上述した実施形態においては、トランジスタTrとしてNPN型のバイポーラトランジスタを使用しているが、この明細書の記載内容に基づき、PNP型のバイポーラトランジスタに変更すること、あるいは、電力発生装置4を太陽電池セルではなく燃料電池セルに変更すること、またはこれらの電力発生装置4が直列に接続されて使用される場合に、バイポーラトランジスタではなく、MOSFETやIGBTを用いること等、種々の構成を採り得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の一実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の回路図である。
【図2】この実施形態に係る1つの太陽電池セルである電力発生装置の温度に対する開放電圧の変化特性と、トランジスタの温度に対するON閾値電圧の変化特性を示す特性図である。
【図3】トランジスタがOFF時である充電時の説明図である。
【図4】トランジスタがONされて1次側第1巻線に入力電圧が印加された状態の説明図である。
【図5】トランジスタがOFFとなって、2次側巻線に誘起起電力が発生した状態を示す説明図である。
【図6】この実施形態に係るリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の1次電流と2次電流の各波形図である。
【図7】一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の回路図である。
【図8】図7に示す一般的なリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路の1次電流と2次電流の各波形図である。
【符号の説明】
【0067】
2、20…リンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路
4…電力発生装置 10…負荷
Cb…コンデンサ Nb…1次側第2巻線
Np…1次側第1巻線 Ns…2次側巻線(2次巻線、出力巻線)
T…トランス Tr…トランジスタ
Rb、Rg…抵抗 Vin…入力電圧
Vo…出力電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力発生装置で発生された電圧が入力電圧として印加される1次側に、第1巻線と第2巻線が設けられ、2次側に、負荷が接続される出力巻線が設けられたトランスと、
前記入力電圧のホット側が一端側に接続される前記第1巻線の他端側にコレクタが接続され、エミッタが前記入力電圧のコールド側に接続されたトランジスタと、
前記入力電圧のホット側と前記トランジスタのベース間に接続された抵抗と、
一端側が前記エミッタに接続される前記第2巻線の他端側と、前記ベースとの間に接続されたコンデンサと、
を備えることを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項2】
請求項1記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記電力発生装置の開放電圧が、前記トランジスタのON閾値電圧を下回らない電圧である
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記トランジスタは、前記抵抗を通じて充電される前記コンデンサの両端電圧が前記ON閾値電圧を上回るとONするが、ONすると前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加され、前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加されると、前記1次側第2巻線に電圧が誘起し、誘起した第2巻線間電圧が前記コンデンサの両端電圧に加算されて前記トランジスタがさらにON方向に動作する際の、前記第2巻線間電圧が前記ON閾値電圧を下回る電圧となるように前記トランスが製作されている
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記電力発生装置が、1つの太陽電池セルである
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項1】
電力発生装置で発生された電圧が入力電圧として印加される1次側に、第1巻線と第2巻線が設けられ、2次側に、負荷が接続される出力巻線が設けられたトランスと、
前記入力電圧のホット側が一端側に接続される前記第1巻線の他端側にコレクタが接続され、エミッタが前記入力電圧のコールド側に接続されたトランジスタと、
前記入力電圧のホット側と前記トランジスタのベース間に接続された抵抗と、
一端側が前記エミッタに接続される前記第2巻線の他端側と、前記ベースとの間に接続されたコンデンサと、
を備えることを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項2】
請求項1記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記電力発生装置の開放電圧が、前記トランジスタのON閾値電圧を下回らない電圧である
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記トランジスタは、前記抵抗を通じて充電される前記コンデンサの両端電圧が前記ON閾値電圧を上回るとONするが、ONすると前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加され、前記1次側第1巻線間に前記入力電圧が印加されると、前記1次側第2巻線に電圧が誘起し、誘起した第2巻線間電圧が前記コンデンサの両端電圧に加算されて前記トランジスタがさらにON方向に動作する際の、前記第2巻線間電圧が前記ON閾値電圧を下回る電圧となるように前記トランスが製作されている
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇圧型スイッチング電源回路において、
前記電力発生装置が、1つの太陽電池セルである
ことを特徴とするリンギングチョーク方式の昇圧型スイッチング電源回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−194976(P2009−194976A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31394(P2008−31394)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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