リンク機構
【課題】バネの塑性変形を低減することができるリンク機構の提供にある。
【解決手段】一対のリンクとしてのリンク部材11、12と、該リンクを相対回動可能に連結する回転軸13と、リンクに対して弾性力を付与し2つの腕部14b、14cを有するねじりコイルバネ14と、リンクに設けられ腕部14b、14cと当接するバネ押え15、16とを備えたリンク機構10において、回転軸13の中心軸Pとねじりコイルバネ14の回動中心Qとをずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cにリンク間のリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側に曲った変形部14dを形成し、リンクの回転軸13を中心とした回動操作に伴い、変形部14dが形成された腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置が変形部14dを通過して腕部14cの先端側に移動可能に配置されている。
【解決手段】一対のリンクとしてのリンク部材11、12と、該リンクを相対回動可能に連結する回転軸13と、リンクに対して弾性力を付与し2つの腕部14b、14cを有するねじりコイルバネ14と、リンクに設けられ腕部14b、14cと当接するバネ押え15、16とを備えたリンク機構10において、回転軸13の中心軸Pとねじりコイルバネ14の回動中心Qとをずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cにリンク間のリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側に曲った変形部14dを形成し、リンクの回転軸13を中心とした回動操作に伴い、変形部14dが形成された腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置が変形部14dを通過して腕部14cの先端側に移動可能に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネを用いたリンク機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された従来技術においては、可動範囲が制限されている可動体、例えばロボットハンド、特に多指ロボットハンドの指の駆動系に適用しうるリンク式無段変速機が開示されている。リンク式無段変速機は、入力リンク部材と出力リンク部材とを備え、入力リンク部材は第1及び第2リンク要素と、第1及び第2リンク要素を相対回動可能に連結する回転軸と、回転軸に装着され第1及び第2リンク要素間の角度を大きくする方向に付勢するねじりコイルバネとから構成されている。
出力リンク部材に負荷がかからない時には、入力リンク部材の第1及び第2リンク要素間のリンク角度がねじりコイルバネの弾性力によって大きく保たれ、高速に動作させることができる。また、出力リンク部材に負荷がかかると、その負荷に感応して第1及び第2リンク要素がねじりコイルバネのバネ弾性力に抗してリンク角度を小さくする方向に駆動され、出力リンク部材に伝達される出力トルクが増大するとしている。
【0003】
このように、相対回動可能に連結された一対のリンクに用いられるねじりコイルバネの挙動について、図12で示す模式図に基づいて説明を行う。図12(a)に示すように、ねじりコイルバネ74はコイル部と2つの腕部を有し、コイル部は回転軸73に装着され、2つの腕部はリンク71、72に固定されたバネ押え71a、72aとそれぞれ当接した状態にある。バネ押え71a、72aを介してねじりコイルバネ74のねじりモーメントがリンク71、72に伝達される。図12(a)は、一対のリンク71、72を相対回動可能に連結する回転軸73に装着されたねじりコイルバネ74がバネ弾性力に抗する負荷を受けていない初期状態を示しており、このときリンク71、72間のリンク角度は最大となっている。なお、この状態におけるリンク71、72間のリンク角度及びねじりコイルバネ74の2つの腕部間のバネ角度を共に90°とし、回転軸73の中心とねじりコイルバネ74の回動中心とは一致しているものとする。次に、図12(b)で示すように、リンク71、72間のリンク角度を小さくする方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ74はバネ弾性力に抗してバネ角度が小さくなる方向に変形する。次に、図12(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク71、72間のリンク角度は最小(=0°)となると共に、ねじりコイルバネ74はさらに変形しバネ角度も最小(=0°)となる。このように、リンクの変位角度が90°に設定されているとき、ねじりコイルバネ74の変位角度も90°となっている。このように、従来技術においては、リンクの変位角度とバネの変位角度とは等しく、共に90°となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90562号公報(第4〜6頁、図1〜図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造を有する従来技術においては、ねじりコイルバネ74の変位角度が90°と大きいため、図12(a)〜図12(c)に至る動作が繰り返し行われた場合には、図12(d)に示すように、負荷から解放されてもリンク71、72が元のリンク角度90°の状態に復帰しない問題が発生する恐れがある。これは、ねじりコイルバネ74の変位角度が90°と大きいために塑性変形を起し、負荷を取り去っても元のバネ角度90°の状態に戻らないためである。このため、初期状態におけるねじりコイルバネ74のバネ角度は90°以下となり、リンク機構に角度γだけ遊びが発生しリンクの変位角度を90°に維持できない問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バネの塑性変形を低減することができるリンク機構の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、2つの腕部を有し前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、前記各リンクに設けられ前記腕部と当接するバネ押えとを備えたリンク機構において、前記一対のリンクの回動中心と前記回動バネの回動中心とがずれるように設定され、少なくとも一方の前記腕部に、該腕部が前記バネ押えから離れる側に曲った変形部が形成され、前記変形部が形成された腕部側のリンクが、前記腕部が前記バネ押えから離れる側に回動するのに伴い、前記変形部が形成された腕部と前記バネ押えとの当接位置が前記変形部を通過もしくは変形部上を移動し、前記腕部の先端側に移動することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、一対のリンクの回動中心としての連結部材の中心と回動バネの回動中心とがずらして設定されており、変形部が形成された腕部側のリンクが連結部材を中心に該腕部がバネ押えから離れる側に回動するのに伴って、変形部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置が変形部を通過もしくは変形部上を移動し、腕部の先端側に移動する。従って、例えば、バネの弾性力に抗してリンク間のリンク角度が小さくなる方向へ各リンクを回動操作したときには、変形部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置は腕部の先端側に移動することになる。なお、回転バネとは、例えばねじりコイルバネのように、一対の腕部を備え、一方の腕部が他方の腕部に対して相対的に回動変位するバネを指している。
ところで、腕部に形成された変形部は、該腕部がバネ押えから離れる側に曲って形成されているので、リンク角度が小さくなる方向に変位するにつれて、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部を通過して腕部の先端側の腕部がバネ押えから離れる側に曲って形成された部分と当接した状態となる。このときバネ角度はリンク角度よりも大きくなって、バネ変位角度はリンク変位角度よりも小さくなる。なお、バネ角度とは2つの腕部のなす角度を指し、バネ変位角度及びリンク変位角度とはバネ及びリンクが変位した角度を指している。
このように、バネの変位角度をリンクの変位角度より小さく設定することができ、バネの塑性変形を低減することができる。
なお、一対のリンクの回動中心と回動バネの回動中心とがずれるとは、リンクの回動中心軸の軸方向にずれるのではなく、リンクの回動中心軸に対して直角な面の方向にずれることを指す。なお、リンクの回動中心軸とバネの回動中心軸は必ずしも平行でなくてもよい。リンクの可動範囲において腕部とバネ押えとが当接して同様の効果を奏すれば良く、例えば交差したり、ねじれの関係にあっても良い。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のリンク機構において、前記変形部が形成された腕部側のリンクの可動範囲が前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が長くなる領域を少なくとも含み、前記リンクの回動に伴い前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が所定距離より小さい第1状態と所定距離以上の第2状態となることを特徴とする。
所定距離とは、腕部とバネ押えとが変形部より根元側で当接する状態と、腕部とバネ押えとが変形部で当接する、もしくは変形部を越えて先端側で当接する状態との変化点となる距離である。例えば、回動バネとしてねじりコイルバネを用いたリンク機構の場合、所定距離とは、変形部までの距離×sin(180°―変形部の角度)+コイル部の半径×cos(180°―変形部の角度)で表されるものとする。
請求項2記載の発明によれば、回動バネの回動中心とバネ押えとの距離が長くなる領域をリンクが回動するときに、回動バネの回動中心とバネ押えとの距離は、腕部における変形部までの距離と変形部の角度とによって決まる所定距離より短い第1状態と、所定距離以上の第2状態に変化する。従って、第1状態においては、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部より根元側となり、第2状態においては、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部を越えて先端側もしくは変形部上となり、第1状態から第2状態へは連続的に滑らかに変化する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のリンク機構において、前記バネ押えの前記リンクの回動中心側端部の回動軌跡が、前記変形部の回動軌跡に交わることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、バネ押えのリンクの回動中心側端部(略してバネ押えの端部とする)の回動軌跡が、変形部の回動軌跡に交わるので、変形部の回動軌跡に対してバネ押えの端部の回動軌跡が交わったのち遠ざかる方向に変化することになり、リンクの回動に伴いバネ押えが変形部を通過して腕部の先端側に移動することになる。
なお、バネ押えの端部の回動軌跡とは、バネ押えがリンクの回動中心を中心に回動するときの端部の描く軌跡のことを指し、変形部の回動軌跡とは、バネがバネの回動中心を中心として回動変位するときの変形部の描く軌跡のことを指す。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記2つの腕部のうち、一方の腕部を前記バネ押えに固定配置し、他方の腕部に変形部が形成されたことを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、2つの腕部の一方をバネ押えに固定配置し、他方に変形部を形成すればよいので、取り付けが簡単であり作業工数を削減可能である。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネの2つの腕部を連結する連結部を前記連結部材に固定配置し、前記2つの腕部にそれぞれ前記変形部を形成したことを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、2つの腕部を連結する連結部を連結部材に固定配置し、2つの腕部にそれぞれ変形部が形成されているので、各リンクが回動操作されてリンク角度が小さくなる方向へ変位したときには、腕部とバネ押えとの当接位置が変形部を通過もしくは変形部上を移動し、腕部の先端側に共に移動する。従って、バネの変位角度を一層小さくすることが可能であり、バネの塑性変形を確実に低減可能である。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記変形部が屈曲して形成されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明によれば、バネの変形部が屈曲して形成されているので、バネの腕部を折り曲げるだけで簡単に製造可能であり、製造工数を削減可能である。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記変形部が湾曲して形成されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明によれば、バネの変形部が湾曲して形成されているので、バネ押えとの当接位置のバネの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが前記回動バネの回動中心軸と同軸上に並列して複数設けられていることを特徴とする。
請求項8記載の発明によれば、回動バネの線径や板厚等を変更してばね定数を大きくすることなく、並列配置するだけでバネ強度を向上させることが可能である。なお、並列配置とは、複数の回動バネの回動中心軸が同軸上に並ぶように、複数の回動バネがリンク間に平行して配置された状態のことを指す。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明によれば、回動バネがねじりコイルバネなので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする。
請求項10記載の発明によれば、回動バネが板バネなので、取り扱いが簡単であり、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする。
請求項11記載の発明によれば、一対のリンクの一方に連結されたロボットアームの回転駆動源を回転駆動することにより、リンク間のリンク角度を可動範囲内で変位させて、一対のリンクの他方に連結されたロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回動バネの回動中心を連結部材の中心からずらして設定し、バネの腕部に変形部を設けることにより、バネの変位角度をリンクの変位角度より小さく設定することができ、バネの塑性変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す正面図である。
【図2】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るねじりコイルバネの概略構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。
【図5】第1の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図6】第2の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図7】第3の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。
【図8】第3の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図9】第4の実施形態に係るリンク機構の中心Qよりバネ押えまでの距離を説明するための模式図である。(a)作用説明用の模式図を示す、(b)中心Qよりバネ押えまでの所定距離を示す。
【図10】第4の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)さらに負荷が作用し変位した時の状態を示す、(d)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図11】第5の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図12】従来技術におけるリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す、(d)負荷から解放され元の状態に復帰したときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るリンク機構を図1〜図5に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、ロボットアームのリンク機構10は、一対のリンクとして2つのリンク部材11、12を備え、リンク部材11、12は一端部側で回転軸13によって相対回動可能に連結されている。なお、回転軸13は、リンクを相対回動可能に連結する連結部材に相当する。
【0022】
リンク部材11、12間には、ねじりコイルバネ14が装着されている。ねじりコイルバネ14は、リンク間に配設されリンクに対して弾性力を付与し2つの腕部を有する回動バネに相当し、一方の腕部が他方の腕部に対して回動変位するバネである。
ねじりコイルバネ14は、図3に示すように、巻線形成されたコイル部14aとコイル部より外部に突出形成された2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを上下に2段並列に形成したものである。一方の腕部14cは先端側が屈曲して形成された変形部14dをそれぞれ有し、他方の腕部14bは直線状に形成され上下2段のねじりコイルバネのそれぞれの端部が連結された構造を有している。
【0023】
リンク部材11は、両端部に回転軸13及び駆動軸17を挿通するための軸孔が形成された断面略矩形のブロック体であり、このブロック体の長辺側の端部に固定側バネ押え15がボルト24によって取り付け固定されている。一方、リンク部材12は、両端部に回転軸13、21を挿通するための軸孔が形成され、軸孔の軸心方向に対して中心部が繰り抜かれてバネ収容室12aが形成されたコの字型のブロック体であり、このバネ収容室12aに可動側バネ押え16が取り付け固定されている。
図2に示すように、ねじりコイルバネ14のコイル部14a及び腕部14cはバネ収容室12aに収容配置され、リンク部材11、12を回動可能に連結する回転軸13にコイル部14aが挿通された状態にある。このとき、回転軸13の軸心Pに対してねじりコイルバネ14の回動中心Qをずらして設定されている。そして、一方の腕部14bは、リンク部材11とリンク部材11に設けられた固定側バネ押え15の間に挟まれた状態でリンク部材11に固定されており、他方の腕部14cは、リンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されている。
【0024】
ねじりコイルバネ14の2つの腕部14b、14c間の角度をバネ角度αとすれば、このバネ角度αを小さくする方向の負荷がかかった時には、その負荷に抗してバネ角度αが大きくなる方向の弾性力が作用する。
図1はリンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間の角度をリンク角度βとすれば、リンク角度βは約90°に設定されている。なお、リンク角度βは回転軸13の中心を通りリンク部材11、12の長手方向へ延びる直線を引いた時にこの2つの直線のなす角度を指している。また、このとき、ねじりコイルバネ14にも同様に負荷がかからず、バネ角度αは約90°に設定された状態にある。
【0025】
リンク部材11の回転軸13とは反対の端部側は駆動軸17と連結されており、リンク部材11は駆動軸17に固着された状態にある。駆動軸17はベース部材18に回転可能に支持されている。駆動軸17は複数個のギア列19を介して回転駆動源としてのモータ20と連結されている。なお、ギア列19及びモータ20を保持するケーシング23はベース部材18に固定されている。
一方、リンク部材12の回転軸13とは反対の端部側は回転軸21を介して別のリンク部材22に回動可能に連結されている。図示しないが、リンク部材22はロボットアームの被駆動部に連結されている。
【0026】
モータ20の回転駆動に伴い駆動軸17が時計回り方向(右回り)に回転されると、駆動軸17と連結されたリンク部材11、12、22の全体が時計回り方向に回動すると共に、ロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、ロボットアームの被駆動部が対象物の荷重を受けて、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12はねじりコイルバネ14のバネ弾性力に抗して回転軸13とは反対側の端部が互いに接近し、リンク部材11、12間のリンク角度βが小さくなる方向に駆動される。
これに伴い、ねじりコイルバネ14のバネ角度αは小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置が変形部14dの方向にスライド移動する。なお、変形部14dは腕部14cが可動側バネ押え16から離れる側に曲って形成されており、リンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち、図1において上側に曲った形状を有している。
【0027】
次に、可動側バネ押え16と腕部14cの当接位置について、図4の模式図に基づき説明する。図4は図1及び図2で示されるリンク機構10の要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものであり、図1及び図2に示す同一の構成要素については同一の符号を用いている。
図4において、回転軸13の中心軸をPとし、ねじりコイルバネ14の回動中心をQとすれば、PとQとはずれた位置にあり、このPとQとを通る直線を引いて直線mとする。なお、中心Qはコイル部14aの中心にほぼ一致した位置にある。図4における直線mより変形部14dを有する側(ねじりコイルバネ14の回動中心Qから回転軸13の中心軸Pを見た場合の右手側)の斜線部で示される領域を領域Rとする。回転軸13の中心軸Pはリンク部材11、12の回動中心である。
【0028】
図4は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しているが、リンク部材11、12間に負荷がかかるとリンク部材12が反時計回り方向(左回リ)に回動される。
リンク部材12の回動中心Pとねじりコイルバネ14の回動中心Qがずれているため、可動側バネ押え16が領域Rの範囲を左回りに動く場合において、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置は、腕部14cの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部14dが形成されていることにより、当接位置は変形部14dを通過して先端側に移動する。
これは、可動側バネ押え16におけるリンク部材12の回動中心P側端部を16aとすれば、端部16aの回動軌跡が変形部14dの回動軌跡に交わり、変形部14dの回動軌跡に対して端部16aの回動軌跡が遠ざかる方向に移動することによる。なお、図4において、変形部14dの回動軌跡を軌跡K1として破線で示し、端部16aの回動軌跡を軌跡K2として実線で示している。
【0029】
次に、上記構成を有するロボットアームのリンク機構10について図5を用いて作用説明を行う。なお、図5は図4と同様な模式図である。
図5(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ14は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置をSとすると、当接位置Sは変形部14dより根元側にある。
ここで、駆動軸17が回転駆動されることによりロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12間のリンク角度β及びねじりコイルバネ14のバネ角度αが小さくなる方向に駆動されるが、このような状態を負荷のかかった状態とする。
【0030】
次に、図5(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ14はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動する。
ところで、変形部14dはリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち図5(b)において左側に曲った形状を有しているので、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動した時には、β≒35°に対してα≒65°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0031】
次に、図5(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ14はさらに変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが更に先端側にスライド移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
ここで、図5(a)の状態〜図5(c)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=90°―0°=90°となりバネ変位角度Δα=90°―45°=45°となる。なお、リンク変位角度Δβ及びバネ変位角度Δαは初期状態におけるβ=90°及びα=90°からの変位した角度をそれぞれ指すものとする。よって、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができる。
一方、腕部14cに変形部14dが形成されておらず腕部14cが直線形状の場合には、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができるが、腕部14cに変形部14dを形成した場合と比較して効果が小さい。
【0032】
このように、ねじりコイルバネ14の回動中心Qを回転軸13の中心軸Pからずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cに変形部14dを設けることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=45°と小さく設定できるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができる。従って、従来技術と比較して、リンクの可動範囲が広い場合であってもバネの塑性変形を低減することができる。
【0033】
この第1の実施形態に係るリンク機構10によれば以下の効果を奏する。
(1)ねじりコイルバネ14の中心Qを回転軸13の中心軸Pからずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cに変形部14dを設け、変形部14dをリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側に曲った形状とすることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=45°とリンク変位角度Δβより小さく設定できる。従って、従来技術と比較して、リンクの可動範囲が広い場合であっても繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができる。なお、低減とはゼロになることも含める。
(2)ねじりコイルバネ14の一方の腕部14cに形成された変形部14dが屈曲して形成されているので、腕部14cの先端側を折り曲げるだけで簡単に製造可能である。
(3)ねじりコイルバネ14の2つの腕部14b、14cの一方の腕部14bをリンク部材11に設けられた固定側バネ押え15に固定配置し、他方の腕部14cをリンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されているので、取り付けが簡単である。
(4)回動バネがねじりコイルバネ14なので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
(5)ねじりコイルバネ14はコイル部14aと2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを同軸上に上下に2段並列して設けられているので、ねじりコイルバネ14の線径やコイル径等を変更してばね定数を大きくすることなく、2段並列に設けるだけでバネ強度を向上させることが可能である。また、並列配置の場合には、各バネにはリンク間に作用する荷重の大きさよりも小さくてその合力が上記荷重に等しくなるように分担して作用するので、各バネのバネ強度を小さくすることも可能である。
(6)リンク部材11は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材12に対して回動可能に連結され、他端部側は駆動軸17を介してモータ20と連結されると共に、リンク部材12は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材11に対して回動可能に連結され、他端部側は回転軸21を介してロボットアームの被駆動部と接続されたリンク部材22と連結されている。このため、モータ20を回転駆動することにより、被駆動部が時計回り方向に回動される。また、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βが可動範囲内でリンク角度βを小さくする方向に変位されて、ロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るリンク機構30を図6に基づいて説明する。図6は図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0035】
図6(a)に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ31は、コイル部31aと2つの腕部31b、31cを有し、一方の腕部31bは直線状に形成され、他方の腕部31cは先端側が湾曲して形成された変形部31dを有している。
コイル部31aに回転軸13が挿通されると共に、回転軸13の中心軸Pに対してコイル部31aの中心Qをずらして設定されている。そして、一方の腕部31bは、リンク部材11に設けられた固定側バネ押え15に固定されており、他方の腕部31cは、リンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されている。この実施形態は、第1の実施形態と比較して変形部31dの形状を異ならせたものである。
【0036】
図6(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ31は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
【0037】
次に、図6(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βを小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ31はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tが変形部31dの方向にスライド移動する。
ところで、変形部31dはリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち図6(b)において左側に連続的に湾曲した形状を有しているので、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tの腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。このため、リンクに加わる急激な弾性力の変動を小さくすることができる。この場合には、β≒35°に対してα≒65°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0038】
次に、図6(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ31はさらに変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tが変形部31d上を腕部31cの先端側に移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αがリンク角度βより大きくなる。従って、リンク変位角度Δβ=90°に対してバネ変位角度Δα=45°となり、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができる。
これは、可動側バネ押え16におけるリンク部材12の回動中心P側端部16aの回動軌跡が、変形部31dと直線状部分の連結部分の回動軌跡(変形部31dのうちの1点の回動軌跡)に交わり、変形部31dの回動軌跡に対して端部16aの回動軌跡が遠ざかる方向に移動することによる。
【0039】
このように、ねじりコイルバネ31の腕部31cに形成される変形部31dを湾曲形状とすることにより、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tの腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能であり、リンクに加わる急激な弾性力の変動を小さくすることが可能である。
その他の作用効果は第1の実施形態と同等であり、説明を省略する。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るリンク機構40を図7及び図8に基づいて説明する。図7及び図8は図4及び図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更し変形部を2つの腕部に設けたものである。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0041】
図7に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ44は、コイル部44aと2つの腕部44b、44cを有し、腕部44b、44cには先端側が屈曲して形成された変形部44d、44eをそれぞれ有している。
コイル部44aに回転軸43が挿通されると共に、回転軸43の中心軸P1に対してねじりコイルバネ44の回動中心Q1をずらして設定し、回転軸43とコイル部44aとの間に偏心スリーブ47を介在させてねじりコイルバネ44の中心部を回転軸43に固定配置してある。
偏心スリーブ47は円柱状の部材に軸孔が偏心形成された筒状の部材であり、偏心スリーブ47の軸孔に回転軸43を挿通させると共にコイル部44a内に外周部を嵌め込んで、回転軸43に固定配置されたものである。そして、腕部44b、44cは、リンク部材41、42に設けられた可動側バネ押え45、46とそれぞれ当接するが、可動側バネ押え45、46には固定されていない状態に配置されている。
【0042】
図7において、中心P1と中心Q1とを通る直線m1を引き、直線m1より変形部44eを有する側(ねじりコイルバネ44の回動中心Q1から回転軸43の中心軸P1を見た場合の右手側)にある範囲を領域R1とし、直線m1より変形部44dを有する側(ねじりコイルバネ44の回動中心Q1から回転軸43の中心軸P1を見た場合の左手側)にある範囲を領域R2とする。
図7は、リンク部材41、42間に負荷がかからない初期状態を示しているが、リンク部材41、42間に負荷がかかるとリンク部材42が反時計回り方向(左回リ)に回動されるとともに、リンク部材41が時計回り方向(右回リ)に回動される。
【0043】
リンク部材41、42の回動中心P1とねじりコイルバネ44の回動中心Q1とがずれているため、可動側バネ押え46が領域R1の範囲を左回りに動く場合において、腕部44cと可動側バネ押え46との当接位置は、腕部44cの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部44eが形成されていることにより、当接位置は変形部44eを通過して先端側に移動する。また、可動側バネ押え45が領域R2の範囲を右回りに動く場合において、腕部44bと可動側バネ押え45との当接位置は、腕部44bの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部44dが形成されていることにより、当接位置は変形部44dを通過して先端側に移動する。
【0044】
次に、上記構成を有するロボットアームのリンク機構40について図8を用いて作用説明を行う。
図8(a)は、リンク部材41、42間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材41、42間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ44は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
【0045】
次に、図8(b)で示すように、リンク部材41、42間にリンク角度βを減少する方向の負荷がかかりリンク角度βが最小(β=0°)となったときの状態を示している。このとき、ねじりコイルバネ14はバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部44b、44cと可動側バネ押え45、46との当接位置は変形部44d、44eを通過して先端側にスライド移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒80°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
ここで、図8(a)の状態〜図8(b)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=90°―0°=90°となりバネ変位角度Δα=90°―80°=10°となる。よって、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより大幅に小さくすることができる。
【0046】
このように、ねじりコイルバネ44の回動中心Q1を回転軸43の中心軸P1からずらして設定するとともに、ねじりコイルバネ44の中心部を固定配置し、可動側バネ押え45、46と当接する2つの腕部44b、44cに変形部44d、44eをそれぞれ設けることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=10°と大幅に小さく設定できるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を一層低減することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るリンク機構50を図9及び図10に基づいて説明する。図9及び図10は図4及び図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態における可動側バネ押え16の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0048】
図9(a)に示すように、この実施形態における可動側バネ押え51は、長尺方向の長さを長くしたものである。即ち、回動中心Q側の端部51aは、回動中心Qから可動側バネ押え51に直角に交わる直線を引いたときに、その交点hより直線mに近づく側(図9(a)では下側)に位置するように形成されている。また、端部51aとは反対側の端部51bは、ねじりコイルバネ14の腕部14cの変形部14dより先端側の端部から可動側バネ押え51に直角に交わる直線を引いたときに、その交点の近傍まで延びて形成されている。
ここで、中心Pと中心Qとを通る直線mに対して直角に交わるとともに中心Pを通る直線nを引き、直線nに対して中心Qとは反対側の領域を斜線で示す領域R3とする。可動側バネ押え51が領域R3の範囲を左回りに動く場合において、ねじりコイルバネ14の回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは長くなる。なお、距離Lは、回動中心Qと交点hとの直線距離に相当する。
【0049】
図9(b)に示すように、腕部14cにおける変形部14dまでの長さをr1、変形部14dの角度をg°、コイル部14aの半径をr0とし、可動側バネ押え51が腕部14cにおける変形部14dより先端側全体と面接触状態にある時の、中心Qと可動側バネ押え51との距離L0は、L0=L1+L2となる。このとき、L1=r0cos(180°―g°)、L2=r1sin(180°―g°)となり、L1、L2ともに一定値となることにより、L0も一定値となる。このL0が所定距離に相当する。
距離LがL0より小さい状態が第1状態に相当し、このとき腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより根元側と当接し、距離LがL0より大きい状態が第2状態に相当し、このとき腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより先端側と当接する。
【0050】
次に、上記構成を有するリンク機構50について図10を用いて作用説明を行う。
図10(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ14は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより根元側にある。
次に、図10(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ14はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部14d側に移動し変形部14dと当接した状態となる。このとき、β=60°に対してα=72°となる。
【0051】
次に、図10(c)で示すように、さらに負荷がかかると、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動する。このとき、可動側バネ押え51が腕部14cにおける変形部14dより先端側全体と面接触状態にあり、L=L0となっている。このとき、β=35°に対してα=56°となる。
次に、図10(d)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ14はさらに変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が更に先端側にスライド移動し、可動側バネ押え51は腕部14cの先端側端部と当接した状態となる。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα=25°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0052】
図10(a)〜図10(d)に変化するにしたがい、回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは、長くなる。L<L0である図10(a)、図10(b)の状態が第1状態に相当し、L≧L0である図10(c)、図10(d)の状態が第2状態に相当する。
このように、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は、第1状態から第2状態へ連続的に滑らかに変化する。
【0053】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るリンク機構60を図11に基づいて説明する。図11は図10と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第4の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。即ち、第4の実施形態におけるねじりコイルバネ14に代えて、第3の実施形態におけるねじりコイルバネ31を置き換えたものである。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0054】
図11(a)に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ31は、コイル部31aと2つの腕部31b、31cを有し、一方の腕部31bは直線状に形成され、他方の腕部31cは先端側が湾曲して形成された変形部31dを有している。
また、可動側バネ押え51は第4の実施形態と同様に、長尺方向の長さを長くしたものである。
図11(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ31は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部31dより根元側にある。
【0055】
次に、11(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ31はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部31dと当接した状態となる。このとき、β=35°に対してα=65°となる。
次に、図11(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ31はさらに変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部31d上を腕部31cの先端側に移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αがリンク角度βより大きくなる。
【0056】
ところで、図11(a)〜図11(c)に変化するにしたがい、回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは、長くなる。
リンク部材12の左回り方向への回動に伴い、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置は、腕部31cにおける変形部31dより根元側より、変形部31dとの当接を経て、変形部31dの先端側に移動する。変形部31dが湾曲形状とされていることにより、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置の腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。
また、第2の実施形態と比較して、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が可動側バネ押え51の長尺方向の中間位置近傍にあるので、可動側バネ押え51を介してねじりコイルバネ31の弾性力をリンク部材12に安定して伝達することが可能である。
【0057】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1の実施形態では、ねじりコイルバネ14をコイル部14aと2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを上下に2段並列して設けるものとして説明したが、バネは1段だけでも良いし、3段以上並列に配設しても良い。また、別々のねじりコイルバネを複数段並列に配置しても良い。
○ 第1〜第5の実施形態では、回動バネとしてねじりコイルバネを使用するとして説明したが、板バネを使用しても良い。板バネの場合には、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能であり、取り扱いが簡単である。
○ 第1、第3の実施形態におけるねじりコイルバネの変形部の屈曲形状及び第2の実施形態におけるねじりコイルバネの変形部の湾曲形状は、ねじりコイルバネの仕様(線径、コイル巻数、コイル径、バネ材料等)やリンク機構の仕様(可動範囲、負荷、リンク長等)を考慮して最も適切な形状に設定されるものであり、第1〜第3の実施形態で説明したリンク角度β及びバネ角度αは一例でありこれに限定されるものではない。
○ 第1の実施形態では、ねじりコイルバネ14の一方の腕部14bを固定側バネ押え15に固定配置するとして説明したが、第3の実施形態のような偏心スリーブ47を用いてねじりコイルバネ14を回転軸13に固定配置させても良い。
○ ねじりコイルバネの腕部に形成される変形部としての屈曲部は複数形成されていても良い。
○ ねじりコイルバネの腕部に変形部としての湾曲部が形成されている場合には、湾曲部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置は、常に湾曲部に位置するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0058】
10 リンク機構
11 リンク部材
12 リンク部材
13 回転軸
14 ねじりコイルバネ
14b、14c 腕部
14d 変形部
15 固定側バネ押え
16 可動側バネ押え
α バネ角度
β リンク角度
P 回転軸の中心軸
Q ねじりコイルバネの回動中心
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネを用いたリンク機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された従来技術においては、可動範囲が制限されている可動体、例えばロボットハンド、特に多指ロボットハンドの指の駆動系に適用しうるリンク式無段変速機が開示されている。リンク式無段変速機は、入力リンク部材と出力リンク部材とを備え、入力リンク部材は第1及び第2リンク要素と、第1及び第2リンク要素を相対回動可能に連結する回転軸と、回転軸に装着され第1及び第2リンク要素間の角度を大きくする方向に付勢するねじりコイルバネとから構成されている。
出力リンク部材に負荷がかからない時には、入力リンク部材の第1及び第2リンク要素間のリンク角度がねじりコイルバネの弾性力によって大きく保たれ、高速に動作させることができる。また、出力リンク部材に負荷がかかると、その負荷に感応して第1及び第2リンク要素がねじりコイルバネのバネ弾性力に抗してリンク角度を小さくする方向に駆動され、出力リンク部材に伝達される出力トルクが増大するとしている。
【0003】
このように、相対回動可能に連結された一対のリンクに用いられるねじりコイルバネの挙動について、図12で示す模式図に基づいて説明を行う。図12(a)に示すように、ねじりコイルバネ74はコイル部と2つの腕部を有し、コイル部は回転軸73に装着され、2つの腕部はリンク71、72に固定されたバネ押え71a、72aとそれぞれ当接した状態にある。バネ押え71a、72aを介してねじりコイルバネ74のねじりモーメントがリンク71、72に伝達される。図12(a)は、一対のリンク71、72を相対回動可能に連結する回転軸73に装着されたねじりコイルバネ74がバネ弾性力に抗する負荷を受けていない初期状態を示しており、このときリンク71、72間のリンク角度は最大となっている。なお、この状態におけるリンク71、72間のリンク角度及びねじりコイルバネ74の2つの腕部間のバネ角度を共に90°とし、回転軸73の中心とねじりコイルバネ74の回動中心とは一致しているものとする。次に、図12(b)で示すように、リンク71、72間のリンク角度を小さくする方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ74はバネ弾性力に抗してバネ角度が小さくなる方向に変形する。次に、図12(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク71、72間のリンク角度は最小(=0°)となると共に、ねじりコイルバネ74はさらに変形しバネ角度も最小(=0°)となる。このように、リンクの変位角度が90°に設定されているとき、ねじりコイルバネ74の変位角度も90°となっている。このように、従来技術においては、リンクの変位角度とバネの変位角度とは等しく、共に90°となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90562号公報(第4〜6頁、図1〜図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造を有する従来技術においては、ねじりコイルバネ74の変位角度が90°と大きいため、図12(a)〜図12(c)に至る動作が繰り返し行われた場合には、図12(d)に示すように、負荷から解放されてもリンク71、72が元のリンク角度90°の状態に復帰しない問題が発生する恐れがある。これは、ねじりコイルバネ74の変位角度が90°と大きいために塑性変形を起し、負荷を取り去っても元のバネ角度90°の状態に戻らないためである。このため、初期状態におけるねじりコイルバネ74のバネ角度は90°以下となり、リンク機構に角度γだけ遊びが発生しリンクの変位角度を90°に維持できない問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バネの塑性変形を低減することができるリンク機構の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、2つの腕部を有し前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、前記各リンクに設けられ前記腕部と当接するバネ押えとを備えたリンク機構において、前記一対のリンクの回動中心と前記回動バネの回動中心とがずれるように設定され、少なくとも一方の前記腕部に、該腕部が前記バネ押えから離れる側に曲った変形部が形成され、前記変形部が形成された腕部側のリンクが、前記腕部が前記バネ押えから離れる側に回動するのに伴い、前記変形部が形成された腕部と前記バネ押えとの当接位置が前記変形部を通過もしくは変形部上を移動し、前記腕部の先端側に移動することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、一対のリンクの回動中心としての連結部材の中心と回動バネの回動中心とがずらして設定されており、変形部が形成された腕部側のリンクが連結部材を中心に該腕部がバネ押えから離れる側に回動するのに伴って、変形部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置が変形部を通過もしくは変形部上を移動し、腕部の先端側に移動する。従って、例えば、バネの弾性力に抗してリンク間のリンク角度が小さくなる方向へ各リンクを回動操作したときには、変形部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置は腕部の先端側に移動することになる。なお、回転バネとは、例えばねじりコイルバネのように、一対の腕部を備え、一方の腕部が他方の腕部に対して相対的に回動変位するバネを指している。
ところで、腕部に形成された変形部は、該腕部がバネ押えから離れる側に曲って形成されているので、リンク角度が小さくなる方向に変位するにつれて、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部を通過して腕部の先端側の腕部がバネ押えから離れる側に曲って形成された部分と当接した状態となる。このときバネ角度はリンク角度よりも大きくなって、バネ変位角度はリンク変位角度よりも小さくなる。なお、バネ角度とは2つの腕部のなす角度を指し、バネ変位角度及びリンク変位角度とはバネ及びリンクが変位した角度を指している。
このように、バネの変位角度をリンクの変位角度より小さく設定することができ、バネの塑性変形を低減することができる。
なお、一対のリンクの回動中心と回動バネの回動中心とがずれるとは、リンクの回動中心軸の軸方向にずれるのではなく、リンクの回動中心軸に対して直角な面の方向にずれることを指す。なお、リンクの回動中心軸とバネの回動中心軸は必ずしも平行でなくてもよい。リンクの可動範囲において腕部とバネ押えとが当接して同様の効果を奏すれば良く、例えば交差したり、ねじれの関係にあっても良い。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のリンク機構において、前記変形部が形成された腕部側のリンクの可動範囲が前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が長くなる領域を少なくとも含み、前記リンクの回動に伴い前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が所定距離より小さい第1状態と所定距離以上の第2状態となることを特徴とする。
所定距離とは、腕部とバネ押えとが変形部より根元側で当接する状態と、腕部とバネ押えとが変形部で当接する、もしくは変形部を越えて先端側で当接する状態との変化点となる距離である。例えば、回動バネとしてねじりコイルバネを用いたリンク機構の場合、所定距離とは、変形部までの距離×sin(180°―変形部の角度)+コイル部の半径×cos(180°―変形部の角度)で表されるものとする。
請求項2記載の発明によれば、回動バネの回動中心とバネ押えとの距離が長くなる領域をリンクが回動するときに、回動バネの回動中心とバネ押えとの距離は、腕部における変形部までの距離と変形部の角度とによって決まる所定距離より短い第1状態と、所定距離以上の第2状態に変化する。従って、第1状態においては、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部より根元側となり、第2状態においては、腕部とバネ押えとの当接位置は変形部を越えて先端側もしくは変形部上となり、第1状態から第2状態へは連続的に滑らかに変化する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のリンク機構において、前記バネ押えの前記リンクの回動中心側端部の回動軌跡が、前記変形部の回動軌跡に交わることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、バネ押えのリンクの回動中心側端部(略してバネ押えの端部とする)の回動軌跡が、変形部の回動軌跡に交わるので、変形部の回動軌跡に対してバネ押えの端部の回動軌跡が交わったのち遠ざかる方向に変化することになり、リンクの回動に伴いバネ押えが変形部を通過して腕部の先端側に移動することになる。
なお、バネ押えの端部の回動軌跡とは、バネ押えがリンクの回動中心を中心に回動するときの端部の描く軌跡のことを指し、変形部の回動軌跡とは、バネがバネの回動中心を中心として回動変位するときの変形部の描く軌跡のことを指す。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記2つの腕部のうち、一方の腕部を前記バネ押えに固定配置し、他方の腕部に変形部が形成されたことを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、2つの腕部の一方をバネ押えに固定配置し、他方に変形部を形成すればよいので、取り付けが簡単であり作業工数を削減可能である。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネの2つの腕部を連結する連結部を前記連結部材に固定配置し、前記2つの腕部にそれぞれ前記変形部を形成したことを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、2つの腕部を連結する連結部を連結部材に固定配置し、2つの腕部にそれぞれ変形部が形成されているので、各リンクが回動操作されてリンク角度が小さくなる方向へ変位したときには、腕部とバネ押えとの当接位置が変形部を通過もしくは変形部上を移動し、腕部の先端側に共に移動する。従って、バネの変位角度を一層小さくすることが可能であり、バネの塑性変形を確実に低減可能である。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記変形部が屈曲して形成されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明によれば、バネの変形部が屈曲して形成されているので、バネの腕部を折り曲げるだけで簡単に製造可能であり、製造工数を削減可能である。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記変形部が湾曲して形成されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明によれば、バネの変形部が湾曲して形成されているので、バネ押えとの当接位置のバネの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが前記回動バネの回動中心軸と同軸上に並列して複数設けられていることを特徴とする。
請求項8記載の発明によれば、回動バネの線径や板厚等を変更してばね定数を大きくすることなく、並列配置するだけでバネ強度を向上させることが可能である。なお、並列配置とは、複数の回動バネの回動中心軸が同軸上に並ぶように、複数の回動バネがリンク間に平行して配置された状態のことを指す。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明によれば、回動バネがねじりコイルバネなので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする。
請求項10記載の発明によれば、回動バネが板バネなので、取り扱いが簡単であり、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする。
請求項11記載の発明によれば、一対のリンクの一方に連結されたロボットアームの回転駆動源を回転駆動することにより、リンク間のリンク角度を可動範囲内で変位させて、一対のリンクの他方に連結されたロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回動バネの回動中心を連結部材の中心からずらして設定し、バネの腕部に変形部を設けることにより、バネの変位角度をリンクの変位角度より小さく設定することができ、バネの塑性変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す正面図である。
【図2】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るねじりコイルバネの概略構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。
【図5】第1の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図6】第2の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図7】第3の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。
【図8】第3の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図9】第4の実施形態に係るリンク機構の中心Qよりバネ押えまでの距離を説明するための模式図である。(a)作用説明用の模式図を示す、(b)中心Qよりバネ押えまでの所定距離を示す。
【図10】第4の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)さらに負荷が作用し変位した時の状態を示す、(d)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図11】第5の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図12】従来技術におけるリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない初期状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す、(d)負荷から解放され元の状態に復帰したときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るリンク機構を図1〜図5に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、ロボットアームのリンク機構10は、一対のリンクとして2つのリンク部材11、12を備え、リンク部材11、12は一端部側で回転軸13によって相対回動可能に連結されている。なお、回転軸13は、リンクを相対回動可能に連結する連結部材に相当する。
【0022】
リンク部材11、12間には、ねじりコイルバネ14が装着されている。ねじりコイルバネ14は、リンク間に配設されリンクに対して弾性力を付与し2つの腕部を有する回動バネに相当し、一方の腕部が他方の腕部に対して回動変位するバネである。
ねじりコイルバネ14は、図3に示すように、巻線形成されたコイル部14aとコイル部より外部に突出形成された2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを上下に2段並列に形成したものである。一方の腕部14cは先端側が屈曲して形成された変形部14dをそれぞれ有し、他方の腕部14bは直線状に形成され上下2段のねじりコイルバネのそれぞれの端部が連結された構造を有している。
【0023】
リンク部材11は、両端部に回転軸13及び駆動軸17を挿通するための軸孔が形成された断面略矩形のブロック体であり、このブロック体の長辺側の端部に固定側バネ押え15がボルト24によって取り付け固定されている。一方、リンク部材12は、両端部に回転軸13、21を挿通するための軸孔が形成され、軸孔の軸心方向に対して中心部が繰り抜かれてバネ収容室12aが形成されたコの字型のブロック体であり、このバネ収容室12aに可動側バネ押え16が取り付け固定されている。
図2に示すように、ねじりコイルバネ14のコイル部14a及び腕部14cはバネ収容室12aに収容配置され、リンク部材11、12を回動可能に連結する回転軸13にコイル部14aが挿通された状態にある。このとき、回転軸13の軸心Pに対してねじりコイルバネ14の回動中心Qをずらして設定されている。そして、一方の腕部14bは、リンク部材11とリンク部材11に設けられた固定側バネ押え15の間に挟まれた状態でリンク部材11に固定されており、他方の腕部14cは、リンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されている。
【0024】
ねじりコイルバネ14の2つの腕部14b、14c間の角度をバネ角度αとすれば、このバネ角度αを小さくする方向の負荷がかかった時には、その負荷に抗してバネ角度αが大きくなる方向の弾性力が作用する。
図1はリンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間の角度をリンク角度βとすれば、リンク角度βは約90°に設定されている。なお、リンク角度βは回転軸13の中心を通りリンク部材11、12の長手方向へ延びる直線を引いた時にこの2つの直線のなす角度を指している。また、このとき、ねじりコイルバネ14にも同様に負荷がかからず、バネ角度αは約90°に設定された状態にある。
【0025】
リンク部材11の回転軸13とは反対の端部側は駆動軸17と連結されており、リンク部材11は駆動軸17に固着された状態にある。駆動軸17はベース部材18に回転可能に支持されている。駆動軸17は複数個のギア列19を介して回転駆動源としてのモータ20と連結されている。なお、ギア列19及びモータ20を保持するケーシング23はベース部材18に固定されている。
一方、リンク部材12の回転軸13とは反対の端部側は回転軸21を介して別のリンク部材22に回動可能に連結されている。図示しないが、リンク部材22はロボットアームの被駆動部に連結されている。
【0026】
モータ20の回転駆動に伴い駆動軸17が時計回り方向(右回り)に回転されると、駆動軸17と連結されたリンク部材11、12、22の全体が時計回り方向に回動すると共に、ロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、ロボットアームの被駆動部が対象物の荷重を受けて、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12はねじりコイルバネ14のバネ弾性力に抗して回転軸13とは反対側の端部が互いに接近し、リンク部材11、12間のリンク角度βが小さくなる方向に駆動される。
これに伴い、ねじりコイルバネ14のバネ角度αは小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置が変形部14dの方向にスライド移動する。なお、変形部14dは腕部14cが可動側バネ押え16から離れる側に曲って形成されており、リンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち、図1において上側に曲った形状を有している。
【0027】
次に、可動側バネ押え16と腕部14cの当接位置について、図4の模式図に基づき説明する。図4は図1及び図2で示されるリンク機構10の要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものであり、図1及び図2に示す同一の構成要素については同一の符号を用いている。
図4において、回転軸13の中心軸をPとし、ねじりコイルバネ14の回動中心をQとすれば、PとQとはずれた位置にあり、このPとQとを通る直線を引いて直線mとする。なお、中心Qはコイル部14aの中心にほぼ一致した位置にある。図4における直線mより変形部14dを有する側(ねじりコイルバネ14の回動中心Qから回転軸13の中心軸Pを見た場合の右手側)の斜線部で示される領域を領域Rとする。回転軸13の中心軸Pはリンク部材11、12の回動中心である。
【0028】
図4は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しているが、リンク部材11、12間に負荷がかかるとリンク部材12が反時計回り方向(左回リ)に回動される。
リンク部材12の回動中心Pとねじりコイルバネ14の回動中心Qがずれているため、可動側バネ押え16が領域Rの範囲を左回りに動く場合において、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置は、腕部14cの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部14dが形成されていることにより、当接位置は変形部14dを通過して先端側に移動する。
これは、可動側バネ押え16におけるリンク部材12の回動中心P側端部を16aとすれば、端部16aの回動軌跡が変形部14dの回動軌跡に交わり、変形部14dの回動軌跡に対して端部16aの回動軌跡が遠ざかる方向に移動することによる。なお、図4において、変形部14dの回動軌跡を軌跡K1として破線で示し、端部16aの回動軌跡を軌跡K2として実線で示している。
【0029】
次に、上記構成を有するロボットアームのリンク機構10について図5を用いて作用説明を行う。なお、図5は図4と同様な模式図である。
図5(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ14は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置をSとすると、当接位置Sは変形部14dより根元側にある。
ここで、駆動軸17が回転駆動されることによりロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12間のリンク角度β及びねじりコイルバネ14のバネ角度αが小さくなる方向に駆動されるが、このような状態を負荷のかかった状態とする。
【0030】
次に、図5(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ14はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動する。
ところで、変形部14dはリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち図5(b)において左側に曲った形状を有しているので、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動した時には、β≒35°に対してα≒65°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0031】
次に、図5(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ14はさらに変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え16との当接位置Sが更に先端側にスライド移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
ここで、図5(a)の状態〜図5(c)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=90°―0°=90°となりバネ変位角度Δα=90°―45°=45°となる。なお、リンク変位角度Δβ及びバネ変位角度Δαは初期状態におけるβ=90°及びα=90°からの変位した角度をそれぞれ指すものとする。よって、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができる。
一方、腕部14cに変形部14dが形成されておらず腕部14cが直線形状の場合には、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができるが、腕部14cに変形部14dを形成した場合と比較して効果が小さい。
【0032】
このように、ねじりコイルバネ14の回動中心Qを回転軸13の中心軸Pからずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cに変形部14dを設けることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=45°と小さく設定できるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができる。従って、従来技術と比較して、リンクの可動範囲が広い場合であってもバネの塑性変形を低減することができる。
【0033】
この第1の実施形態に係るリンク機構10によれば以下の効果を奏する。
(1)ねじりコイルバネ14の中心Qを回転軸13の中心軸Pからずらして設定し、可動側バネ押え16と当接する一方の腕部14cに変形部14dを設け、変形部14dをリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側に曲った形状とすることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=45°とリンク変位角度Δβより小さく設定できる。従って、従来技術と比較して、リンクの可動範囲が広い場合であっても繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができる。なお、低減とはゼロになることも含める。
(2)ねじりコイルバネ14の一方の腕部14cに形成された変形部14dが屈曲して形成されているので、腕部14cの先端側を折り曲げるだけで簡単に製造可能である。
(3)ねじりコイルバネ14の2つの腕部14b、14cの一方の腕部14bをリンク部材11に設けられた固定側バネ押え15に固定配置し、他方の腕部14cをリンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されているので、取り付けが簡単である。
(4)回動バネがねじりコイルバネ14なので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
(5)ねじりコイルバネ14はコイル部14aと2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを同軸上に上下に2段並列して設けられているので、ねじりコイルバネ14の線径やコイル径等を変更してばね定数を大きくすることなく、2段並列に設けるだけでバネ強度を向上させることが可能である。また、並列配置の場合には、各バネにはリンク間に作用する荷重の大きさよりも小さくてその合力が上記荷重に等しくなるように分担して作用するので、各バネのバネ強度を小さくすることも可能である。
(6)リンク部材11は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材12に対して回動可能に連結され、他端部側は駆動軸17を介してモータ20と連結されると共に、リンク部材12は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材11に対して回動可能に連結され、他端部側は回転軸21を介してロボットアームの被駆動部と接続されたリンク部材22と連結されている。このため、モータ20を回転駆動することにより、被駆動部が時計回り方向に回動される。また、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βが可動範囲内でリンク角度βを小さくする方向に変位されて、ロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るリンク機構30を図6に基づいて説明する。図6は図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0035】
図6(a)に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ31は、コイル部31aと2つの腕部31b、31cを有し、一方の腕部31bは直線状に形成され、他方の腕部31cは先端側が湾曲して形成された変形部31dを有している。
コイル部31aに回転軸13が挿通されると共に、回転軸13の中心軸Pに対してコイル部31aの中心Qをずらして設定されている。そして、一方の腕部31bは、リンク部材11に設けられた固定側バネ押え15に固定されており、他方の腕部31cは、リンク部材12に設けられた可動側バネ押え16と当接するが、可動側バネ押え16には固定されていない状態に配置されている。この実施形態は、第1の実施形態と比較して変形部31dの形状を異ならせたものである。
【0036】
図6(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ31は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
【0037】
次に、図6(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βを小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ31はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tが変形部31dの方向にスライド移動する。
ところで、変形部31dはリンク角度βが小さくなるよう回動するときのリンク部材12の回動方向側、即ち図6(b)において左側に連続的に湾曲した形状を有しているので、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tの腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。このため、リンクに加わる急激な弾性力の変動を小さくすることができる。この場合には、β≒35°に対してα≒65°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0038】
次に、図6(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ31はさらに変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tが変形部31d上を腕部31cの先端側に移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αがリンク角度βより大きくなる。従って、リンク変位角度Δβ=90°に対してバネ変位角度Δα=45°となり、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができる。
これは、可動側バネ押え16におけるリンク部材12の回動中心P側端部16aの回動軌跡が、変形部31dと直線状部分の連結部分の回動軌跡(変形部31dのうちの1点の回動軌跡)に交わり、変形部31dの回動軌跡に対して端部16aの回動軌跡が遠ざかる方向に移動することによる。
【0039】
このように、ねじりコイルバネ31の腕部31cに形成される変形部31dを湾曲形状とすることにより、腕部31cと可動側バネ押え16との当接位置Tの腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能であり、リンクに加わる急激な弾性力の変動を小さくすることが可能である。
その他の作用効果は第1の実施形態と同等であり、説明を省略する。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るリンク機構40を図7及び図8に基づいて説明する。図7及び図8は図4及び図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更し変形部を2つの腕部に設けたものである。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0041】
図7に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ44は、コイル部44aと2つの腕部44b、44cを有し、腕部44b、44cには先端側が屈曲して形成された変形部44d、44eをそれぞれ有している。
コイル部44aに回転軸43が挿通されると共に、回転軸43の中心軸P1に対してねじりコイルバネ44の回動中心Q1をずらして設定し、回転軸43とコイル部44aとの間に偏心スリーブ47を介在させてねじりコイルバネ44の中心部を回転軸43に固定配置してある。
偏心スリーブ47は円柱状の部材に軸孔が偏心形成された筒状の部材であり、偏心スリーブ47の軸孔に回転軸43を挿通させると共にコイル部44a内に外周部を嵌め込んで、回転軸43に固定配置されたものである。そして、腕部44b、44cは、リンク部材41、42に設けられた可動側バネ押え45、46とそれぞれ当接するが、可動側バネ押え45、46には固定されていない状態に配置されている。
【0042】
図7において、中心P1と中心Q1とを通る直線m1を引き、直線m1より変形部44eを有する側(ねじりコイルバネ44の回動中心Q1から回転軸43の中心軸P1を見た場合の右手側)にある範囲を領域R1とし、直線m1より変形部44dを有する側(ねじりコイルバネ44の回動中心Q1から回転軸43の中心軸P1を見た場合の左手側)にある範囲を領域R2とする。
図7は、リンク部材41、42間に負荷がかからない初期状態を示しているが、リンク部材41、42間に負荷がかかるとリンク部材42が反時計回り方向(左回リ)に回動されるとともに、リンク部材41が時計回り方向(右回リ)に回動される。
【0043】
リンク部材41、42の回動中心P1とねじりコイルバネ44の回動中心Q1とがずれているため、可動側バネ押え46が領域R1の範囲を左回りに動く場合において、腕部44cと可動側バネ押え46との当接位置は、腕部44cの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部44eが形成されていることにより、当接位置は変形部44eを通過して先端側に移動する。また、可動側バネ押え45が領域R2の範囲を右回りに動く場合において、腕部44bと可動側バネ押え45との当接位置は、腕部44bの先端側に移動する。そして、移動する部分に変形部44dが形成されていることにより、当接位置は変形部44dを通過して先端側に移動する。
【0044】
次に、上記構成を有するロボットアームのリンク機構40について図8を用いて作用説明を行う。
図8(a)は、リンク部材41、42間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材41、42間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ44は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
【0045】
次に、図8(b)で示すように、リンク部材41、42間にリンク角度βを減少する方向の負荷がかかりリンク角度βが最小(β=0°)となったときの状態を示している。このとき、ねじりコイルバネ14はバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部44b、44cと可動側バネ押え45、46との当接位置は変形部44d、44eを通過して先端側にスライド移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒80°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
ここで、図8(a)の状態〜図8(b)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=90°―0°=90°となりバネ変位角度Δα=90°―80°=10°となる。よって、バネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより大幅に小さくすることができる。
【0046】
このように、ねじりコイルバネ44の回動中心Q1を回転軸43の中心軸P1からずらして設定するとともに、ねじりコイルバネ44の中心部を固定配置し、可動側バネ押え45、46と当接する2つの腕部44b、44cに変形部44d、44eをそれぞれ設けることにより、リンク変位角度ΔβをΔβ=90°の状態を維持しつつ、バネ変位角度ΔαをΔα=10°と大幅に小さく設定できるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を一層低減することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るリンク機構50を図9及び図10に基づいて説明する。図9及び図10は図4及び図5と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態における可動側バネ押え16の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0048】
図9(a)に示すように、この実施形態における可動側バネ押え51は、長尺方向の長さを長くしたものである。即ち、回動中心Q側の端部51aは、回動中心Qから可動側バネ押え51に直角に交わる直線を引いたときに、その交点hより直線mに近づく側(図9(a)では下側)に位置するように形成されている。また、端部51aとは反対側の端部51bは、ねじりコイルバネ14の腕部14cの変形部14dより先端側の端部から可動側バネ押え51に直角に交わる直線を引いたときに、その交点の近傍まで延びて形成されている。
ここで、中心Pと中心Qとを通る直線mに対して直角に交わるとともに中心Pを通る直線nを引き、直線nに対して中心Qとは反対側の領域を斜線で示す領域R3とする。可動側バネ押え51が領域R3の範囲を左回りに動く場合において、ねじりコイルバネ14の回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは長くなる。なお、距離Lは、回動中心Qと交点hとの直線距離に相当する。
【0049】
図9(b)に示すように、腕部14cにおける変形部14dまでの長さをr1、変形部14dの角度をg°、コイル部14aの半径をr0とし、可動側バネ押え51が腕部14cにおける変形部14dより先端側全体と面接触状態にある時の、中心Qと可動側バネ押え51との距離L0は、L0=L1+L2となる。このとき、L1=r0cos(180°―g°)、L2=r1sin(180°―g°)となり、L1、L2ともに一定値となることにより、L0も一定値となる。このL0が所定距離に相当する。
距離LがL0より小さい状態が第1状態に相当し、このとき腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより根元側と当接し、距離LがL0より大きい状態が第2状態に相当し、このとき腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより先端側と当接する。
【0050】
次に、上記構成を有するリンク機構50について図10を用いて作用説明を行う。
図10(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ14は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部14dより根元側にある。
次に、図10(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ14はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部14d側に移動し変形部14dと当接した状態となる。このとき、β=60°に対してα=72°となる。
【0051】
次に、図10(c)で示すように、さらに負荷がかかると、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部14dを通過し腕部14cの先端側に移動する。このとき、可動側バネ押え51が腕部14cにおける変形部14dより先端側全体と面接触状態にあり、L=L0となっている。このとき、β=35°に対してα=56°となる。
次に、図10(d)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ14はさらに変位すると共に、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置が更に先端側にスライド移動し、可動側バネ押え51は腕部14cの先端側端部と当接した状態となる。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα=25°となり、バネ角度αはリンク角度βより大きくなる。
【0052】
図10(a)〜図10(d)に変化するにしたがい、回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは、長くなる。L<L0である図10(a)、図10(b)の状態が第1状態に相当し、L≧L0である図10(c)、図10(d)の状態が第2状態に相当する。
このように、腕部14cと可動側バネ押え51との当接位置は、第1状態から第2状態へ連続的に滑らかに変化する。
【0053】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るリンク機構60を図11に基づいて説明する。図11は図10と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第4の実施形態におけるねじりコイルバネ14の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。即ち、第4の実施形態におけるねじりコイルバネ14に代えて、第3の実施形態におけるねじりコイルバネ31を置き換えたものである。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0054】
図11(a)に示すように、この実施形態におけるねじりコイルバネ31は、コイル部31aと2つの腕部31b、31cを有し、一方の腕部31bは直線状に形成され、他方の腕部31cは先端側が湾曲して形成された変形部31dを有している。
また、可動側バネ押え51は第4の実施形態と同様に、長尺方向の長さを長くしたものである。
図11(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ31は同様に負荷のかからない状態にあり、バネ角度αが約90°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。なお、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置は変形部31dより根元側にある。
【0055】
次に、11(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ31はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部31dと当接した状態となる。このとき、β=35°に対してα=65°となる。
次に、図11(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ31はさらに変位すると共に、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が変形部31d上を腕部31cの先端側に移動する。このとき、バネ角度αも最小となるが0°とはならず、β=0°に対してα≒45°となり、バネ角度αがリンク角度βより大きくなる。
【0056】
ところで、図11(a)〜図11(c)に変化するにしたがい、回動中心Qと可動側バネ押え51との距離Lは、長くなる。
リンク部材12の左回り方向への回動に伴い、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置は、腕部31cにおける変形部31dより根元側より、変形部31dとの当接を経て、変形部31dの先端側に移動する。変形部31dが湾曲形状とされていることにより、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置の腕部31cの先端側への移動をスムースに行わせることが可能である。
また、第2の実施形態と比較して、腕部31cと可動側バネ押え51との当接位置が可動側バネ押え51の長尺方向の中間位置近傍にあるので、可動側バネ押え51を介してねじりコイルバネ31の弾性力をリンク部材12に安定して伝達することが可能である。
【0057】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1の実施形態では、ねじりコイルバネ14をコイル部14aと2つの腕部14b、14cを有し、同一形状をしたねじりコイルバネを上下に2段並列して設けるものとして説明したが、バネは1段だけでも良いし、3段以上並列に配設しても良い。また、別々のねじりコイルバネを複数段並列に配置しても良い。
○ 第1〜第5の実施形態では、回動バネとしてねじりコイルバネを使用するとして説明したが、板バネを使用しても良い。板バネの場合には、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能であり、取り扱いが簡単である。
○ 第1、第3の実施形態におけるねじりコイルバネの変形部の屈曲形状及び第2の実施形態におけるねじりコイルバネの変形部の湾曲形状は、ねじりコイルバネの仕様(線径、コイル巻数、コイル径、バネ材料等)やリンク機構の仕様(可動範囲、負荷、リンク長等)を考慮して最も適切な形状に設定されるものであり、第1〜第3の実施形態で説明したリンク角度β及びバネ角度αは一例でありこれに限定されるものではない。
○ 第1の実施形態では、ねじりコイルバネ14の一方の腕部14bを固定側バネ押え15に固定配置するとして説明したが、第3の実施形態のような偏心スリーブ47を用いてねじりコイルバネ14を回転軸13に固定配置させても良い。
○ ねじりコイルバネの腕部に形成される変形部としての屈曲部は複数形成されていても良い。
○ ねじりコイルバネの腕部に変形部としての湾曲部が形成されている場合には、湾曲部が形成された腕部とバネ押えとの当接位置は、常に湾曲部に位置するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0058】
10 リンク機構
11 リンク部材
12 リンク部材
13 回転軸
14 ねじりコイルバネ
14b、14c 腕部
14d 変形部
15 固定側バネ押え
16 可動側バネ押え
α バネ角度
β リンク角度
P 回転軸の中心軸
Q ねじりコイルバネの回動中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、2つの腕部を有し前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、前記各リンクに設けられ前記腕部と当接するバネ押えとを備えたリンク機構において、前記一対のリンクの回動中心と前記回動バネの回動中心とがずれるように設定され、少なくとも一方の前記腕部に、該腕部が前記バネ押えから離れる側に曲った変形部が形成され、前記変形部が形成された腕部側のリンクが、前記腕部が前記バネ押えから離れる側に回動するのに伴い、前記変形部が形成された腕部と前記バネ押えとの当接位置が前記変形部を通過もしくは変形部上を移動し、前記腕部の先端側に移動することを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
前記変形部が形成された腕部側のリンクの可動範囲が前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が長くなる領域を少なくとも含み、前記リンクの回動に伴い前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が所定距離より小さい第1状態と所定距離以上の第2状態となることを特徴とする請求項1に記載のリンク機構。
【請求項3】
前記バネ押えの前記リンクの回動中心側端部の回動軌跡が、前記変形部の回動軌跡に交わることを特徴とする請求項1に記載のリンク機構。
【請求項4】
前記2つの腕部のうち、一方の腕部を前記バネ押えに固定配置し、他方の腕部に変形部が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項5】
前記回動バネの2つの腕部を連結する連結部を前記連結部材に固定配置し、前記2つの腕部にそれぞれ前記変形部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項6】
前記変形部が屈曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項7】
前記変形部が湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項8】
前記回動バネが前記回動バネの回動中心軸と同軸上に並列して複数設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項9】
前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項10】
前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項11】
前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項1】
一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、2つの腕部を有し前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、前記各リンクに設けられ前記腕部と当接するバネ押えとを備えたリンク機構において、前記一対のリンクの回動中心と前記回動バネの回動中心とがずれるように設定され、少なくとも一方の前記腕部に、該腕部が前記バネ押えから離れる側に曲った変形部が形成され、前記変形部が形成された腕部側のリンクが、前記腕部が前記バネ押えから離れる側に回動するのに伴い、前記変形部が形成された腕部と前記バネ押えとの当接位置が前記変形部を通過もしくは変形部上を移動し、前記腕部の先端側に移動することを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
前記変形部が形成された腕部側のリンクの可動範囲が前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が長くなる領域を少なくとも含み、前記リンクの回動に伴い前記回動バネの回動中心と前記バネ押えとの距離が所定距離より小さい第1状態と所定距離以上の第2状態となることを特徴とする請求項1に記載のリンク機構。
【請求項3】
前記バネ押えの前記リンクの回動中心側端部の回動軌跡が、前記変形部の回動軌跡に交わることを特徴とする請求項1に記載のリンク機構。
【請求項4】
前記2つの腕部のうち、一方の腕部を前記バネ押えに固定配置し、他方の腕部に変形部が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項5】
前記回動バネの2つの腕部を連結する連結部を前記連結部材に固定配置し、前記2つの腕部にそれぞれ前記変形部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項6】
前記変形部が屈曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項7】
前記変形部が湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項8】
前記回動バネが前記回動バネの回動中心軸と同軸上に並列して複数設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項9】
前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項10】
前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項11】
前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のリンク機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−255639(P2010−255639A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102621(P2009−102621)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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