説明

リーダ用アンテナならびにアンテナ付き物品載置棚およびアンテナ付き物品載置台

【課題】 複数個のループアンテナA、B、Cに対して切換えて給電する必要がなく、複数個のループアンテナA、B、Cを備えているリーダ用アンテナ15を1個の給電用ループアンテナAへの給電でもって制御することによって、通信エリアの面積が大きくても、リーダ用アンテナ15と複数個の電子タグとが相互に通信する通信速度を短くすることができるリーダ用アンテナ15を提供する。
【解決手段】 1個の給電用ループアンテナA、少なくとも1個の非給電用ループアンテナBおよび少なくとも1個の外周用ループアンテナCを備えている。給電用ループアンテナAおよび非給電用ループアンテナBのそれぞれのアンテナパターン22a、22bの外周付近が少なくとも部分的に外周用ループアンテナCのアンテナパターン22cによって平面的に見てほぼ包囲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品載置棚の棚板、物品載置台の台板などのアンテナ形成対象部材に互いに絶縁された状態でそれぞれ設けられている複数個のループアンテナを備えているリーダ用アンテナに関するものである。また、本発明は、このようなリーダ用アンテナが設けられている棚板および台板を備えているアンテナ付き物品載置棚およびアンテナ付き物品載置台にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品入り紙箱類、CD、DVDなどの光ディスク類、その他の光記録媒体、ビデオテープ、オーディオテープなどの磁気テープ類、その他の磁気記録媒体などのほぼ直方体形状の物品、瓶などのほぼ円筒形状の容器類、不定形状の衣料などの各種の商品または各種の所蔵品のような各種の物品が、陳列棚、商品棚、書棚、書類管理棚などの物品載置棚や、図書館の受付カウンタ台などのカウンタ台、テーブル、机などの物品載置台に、陳列、収納、管理などのために載置される。そして、上述のような各種の物品に電子タグを取り付けるとともに、このような電子タグと通信するリーダライタ用アンテナを備えるRFID(Radio Frequency Identification)システムを用いて、上述のような各種の物品を管理することが期待されている。このような電子タグは、無線タグまたはICタグとも呼ばれていて、商品情報などの情報が記録されるメモリが組み込まれているICチップと、小型アンテナとをそれぞれ含む通信回路から成っている。上述のように電子タグと通信するリーダライタ用アンテナは、物品を載置する棚板面または台板面や、物品の脱落を防止することを主目的として物品載置棚の背面側に配される背板面に沿って配設される場合が多く、通常はループアンテナとして構成されている。
【0003】
一方、棚板または台板は、通常、かなり多数の物品を載置できる面積を有している。したがって、リーダライタ用アンテナが、このような棚板上または台板上の全体にわたって、棚板面または台板面上の総ての電子タグと確実に交信させようとしても、電子タグのいくつかに対しては通信不能領域が生じやすい。
【0004】
そこで、リーダライタ用アンテナを1個当りの棚板面または台板面において複数個用いることが考えられる。しかし、1個のリーダライタで複数個のリーダライタ用アンテナを駆動する場合には、リーダライタ用アンテナ1個当りに流れる電流の値が小さくなるから、リーダライタ用アンテナが電子タグと通信するのに必要な磁界が得られなくなることがある。そして、このような欠点を是正するためにリーダライタ用アンテナを駆動するためのリーダライタの出力を大きくすると、大きな駆動電力が必要であったり、電波法上利用できなくなったりするという問題が生じる。
【0005】
上述のような問題点を解決するためのリーダライタ用アンテナシステムとして、従来、つぎのようなものが案出されている。例えば、特許文献1および2には、複数個の単純ループアンテナをリーダライタ用アンテナとして物品載置棚の背板面(または棚板面)もしくは物品載置台の台板面に沿って設け、この際、これら複数個のループアンテナを共通の背板面(または棚板面)もしくは台板面上に多少重ね合わせられるように或る程度ずらして配置するとともに、これら複数個のループアンテナを順次切り換えて動作させるようにしたリーダライタ用アンテナシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−72919号公報
【特許文献2】特開平8−22514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1および2にそれぞれ開示されている従来のリーダライタ用アンテナシステムには、つぎの(A)項〜(D)項に記載のような問題点があった。これらの問題点が生じる理由は、これらの(A)項〜(D)項のそれぞれの記載のつぎに順次記載する(a)項〜(d)項に記載のとおりである。
【0008】
(A)物品載置棚の背板面(または棚板面)もしくは物品載置台の台板面などの通信可能エリア内に複数個のループアンテナを配置するときに、これら複数個のループアンテナを切換えるためのアンテナ切換え手段を背板(または棚板)、台板などに配設する必要がある。
(a)1つの通信可能エリア(例えば、1枚の棚板面)における電子タグとの通信を可能にするために、複数個のループアンテナを設ける必要があるから、ループアンテナの個数が多いほどリーダライタの台数が多くなり、このためにコストが膨大になる。例えば特許文献1の図1に示すように、6ポートのリーダライタでもってループアンテナを制御しようとする場合には、このリーダライタでは1個のループアンテナユニット(換言すれば、1個の載置台)しか制御することができないが、1個のループアンテナユニットが1個のループアンテナから構成されている場合には、6個のループアンテナユニット(換言すれば、6個の載置台)のループアンテナをそれぞれ制御することができるために、大幅なコストダウンが可能である。
【0009】
(B)電子タグとの通信が可能である1つの通信可能エリア(例えば、1個の棚板面)の面積が大きい場合には、複数個のループアンテナが必要である。
(b)1つの通信可能エリアの面積が大きい場合にリーダライタ用アンテナを1個のループアンテナでもって構成すると、ループアンテナの中央部分においては、電子タグとの通信のための磁界の強さが弱くなる。また、1つの通信可能エリアの面積が大きくなるほど、この大きい面積の通信可能エリアに配置できる物品の数量は多くなるから、1個のループアンテナと通信する電子タグの個数が増加する。そして、リーダライタ用アンテナを構成しているループアンテナから送信される送信エネルギーに対して複数個の電子タグから送信される送信エネルギーの量が全体として大きくなると、これら複数個の電子タグから発生する反磁界の量も全体として大きくなるから、リーダライタ用アンテナによる読み取り感度が低下する。このために、物品載置棚の場合のような面積の大きい通信可能エリアを確保するためには、複数個のループアンテナが必要である。
【0010】
(C)複数個のループアンテナを相互に近づけて配置すると、個々のループアンテナの感度が低下する。
(c)複数個のループアンテナを相互に近づけて配置したときには、相互に近づけて配置された複数個のループアンテナの間で相互干渉が生じるために、個々のループアンテナの感度が低下する。
【0011】
(D)ループアンテナが棚板上などの通信可能エリアに存在している電子タグと通信するのに長時間が必要である。
(d)通信可能エリアに複数個のリーダ用アンテナを敷設する場合には、単独のリーダライタ用アンテナのみと通信する電子タグと、複数個のリーダライタ用アンテナと通信する電子タグとの2通りの電子タグが存在することになる。そして、リーダライタ用アンテナが電子タグと通信する時間は、通信する電子タグの個数がこのように増加するとともに増大するために、複数個のループアンテナと通信する電子タグが増加するほど、上記通信時間が増大する。したがって、リーダライタ用アンテナが複数個のループアンテナから成っているとともに、これら複数個のループアンテナに対する通電の切換えが行われる必要がある場合には、これら複数個のループアンテナのそれぞれの読み取り性能が高いほど、複数個のリーダライタ用アンテナとそれぞれ通信する電子タグが増加し、このために、リーダライタ用アンテナが電子タグと通信するのに長時間が必要である。したがって、複数個のリーダライタ用アンテナと通信する電子タグの増加を抑制するか、あるいは、ループアンテナの個数を減少させること(好ましくは、ループアンテナを1個にすること)が、重要である。
【0012】
本発明は、上述のような問題点を解決するために発明されたものであって、複数個のループアンテナに対して切換えて給電する必要がなく、複数個のループアンテナを備えているリーダ用アンテナを1個の給電用ループアンテナへの給電でもって制御することによって、通信エリアの面積が大きくても、リーダ用アンテナと複数個の電子タグとが相互に通信する通信時間を短くすることができるリーダ用アンテナを提供することを目的としている。また、本発明は、このようなリーダ用アンテナが設けられている棚板および台板を備えているアンテナ付き物品載置棚およびアンテナ付き物品載置台を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、その第1の観点においては、アンテナ形成対象部材に互いに絶縁された状態でそれぞれ設けられている複数個のループアンテナを備えているリーダ用アンテナにおいて、1個の給電用ループアンテナと、少なくとも1個の非給電用ループアンテナと、少なくとも1個の外周用ループアンテナとを備え、上記給電用ループアンテナのアンテナパターンの外周付近が少なくとも部分的に上記外周用ループアンテナのアンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されるとともに、上記非給電用ループアンテナのアンテナパターンの外周付近が少なくとも部分的に上記外周用ループアンテナのアンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていることを特徴とするリーダ用アンテナに係るものである。
【0014】
また、本発明の上記第1の観点の第1の態様においては、上記非給電用ループアンテナが1個であり、上記外周用ループアンテナが1個であり、上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに平面的に見てほぼ隣接して配置され、上記給電用ループアンテナと上記非給電用ループアンテナとから成る複合ループアンテナのアンテナパターンの外周付近のほぼ全体が上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていてよい。さらに、本発明の上記第1の観点の第2の態様においては、上記非給電用ループアンテナが2個であり、上記外周用ループアンテナが1個であり、上記2個の非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの両側にそれぞれ平面的に見てほぼ隣接して配置され、上記給電用ループアンテナと上記2個の非給電用ループアンテナとから成る複合ループアンテナのアンテナパターンの外周付近のほぼ全体が上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていてよい。
【0015】
また、本発明の上記第1の観点の第3の態様においては、上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによってその外周付近を平面的に見てほぼ包囲されている長さの割合が、実用性の観点から見て一般的に、45〜95%の範囲であるのが好ましく、55〜85%の範囲であるのがさらに好ましい。また、本発明の上記第1の観点の第4の態様においては、上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによってその外周付近を平面的に見てほぼ包囲されている長さの割合が、実用性の観点から見て一般的に、55〜95%の範囲であるのが好ましく、65〜85%の範囲であるのがさらに好ましい。また、本発明の上記第1の観点の第5の態様においては、上記アンテナ形成対象部材が長手状に構成され、上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記アンテナ形成対象部材の長さ方向において上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに平面的に見て重なり合うようにほぼ隣接して配置されるとともに、上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに対する上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの平面的に見た重なり幅が、実用性の観点から見て一般的に、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における長さの6〜24%の範囲であるのが好ましく、上記アンテナ形成部材の長さ方向における長さの9〜18%の範囲であるのがさらに好ましい。さらに、本発明の上記第1の観点の第6の態様においては、上記アンテナ形成対象部材が長手状に構成されるとともに、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの長さが、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向の長さに対して、実用性の観点から見て一般的に、34〜68%の範囲であるのが好ましく、38〜64%の範囲であるのがさらに好ましく、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの長さが、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向に対して、実用性の観点から見て一般的に、28〜68%の範囲であるのが好ましく、30〜64%の範囲であるのがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明は、その第2の観点においては、上記第1の観点におけるリーダ用アンテナが形成されている棚板を上記アンテナ形成対象部材として備えていることを特徴とするアンテナ付き物品載置棚に係るものである。さらに、本発明は、その第3の観点においては、上記第1の観点におけるリーダ用アンテナが形成されている台板を上記アンテナ形成対象部材として備えていることを特徴とするアンテナ付き物品載置台に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リーダ用アンテナが複数個のループアンテナを備えているにもかかわらず、給電用ループアンテナは1個であり、また、上記複数個のループアンテナには、少なくとも1個の非給電用ループアンテナが含まれている。また、非給電用ループアンテナのアンテナパターンによって囲まれる空間には、給電用ループアンテナのアンテナパターンによって囲まれる空間と実質的に同方向の磁界が発生する。このために、リーダ用アンテナは、広い通信エリアに存在している複数個の電子タグと比較的良好に通信することができる。
【0018】
したがって、リーダ用アンテナが電子タグと通信する必要がある通信エリアが広くても、1個の給電用ループアンテナでもって対応することができるから、複数個の給電用ループアンテナを設けた場合のように、アンテナ切換え手段を特に設ける必要がなく、このために、リーダ用アンテナが広い通信エリアに存在している複数個の電子タグと通信する通信時間を短くすることができるとともに、リーダシステムのコストダウンを計ることができる。さらに、給電用ループアンテナと非給電用ループアンテナとの間での相互干渉が比較的少ないから、個々のループアンテナの感度が特に低下する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を物品載置棚に適用した第1の実施例における物品載置棚の斜視図である。(実施例1)
【図2】図1の電子タグの拡大平面図である。(実施例1)
【図3】図1の物品載置棚の最上段の棚板の、リーダライタ用アンテナのパターン形状を示す平面図である。(実施例1)
【図4】図3のI−I線に沿った断面図である。(実施例1)
【図5】図3の棚板の斜視図である。(実施例1)
【図6】図5の棚板の分解斜視図である。(実施例1)
【図7】本発明を物品載置棚に適用した第2の実施例における最上段の棚板の、リーダライタ用アンテナのパターン形状を示す平面図である。(実施例2)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、本発明を物品載置棚にそれぞれ適用した第1および第2の実施例を、「1、第1の実施例」および「2、第2の実施例」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
1、第1の実施例
まず、本発明の第1の実施例を、「(1)物品載置棚の全体的構成」、「(2)リーダライタ用アンテナのパターン形状」および「(3)リーダライタ用アンテナの作用」に項分けして、図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0022】
(1)物品載置棚の全体的構成
本発明の第1の実施例における物品載置棚1は、図1に示すように、向かって左側の側板2、向かって右側の側板3、背板4、天板5および底板6から構成されたほぼ箱蓋形状(換言すれば、ほぼ直方体形状)を有している。これら左右一対の側板2、3、背板4、天板5および底板6は、ガラス、合成樹脂、木などの適当な材料からそれぞれ構成されることができ、底板6は、最下段の棚板を兼用している。物品載置棚1は、ガラス、合成樹脂などからほぼ透明に構成されているのが好ましい前面板(図示せず)をさらに備えていてもよく、このような前面板は、例えば、左右一対の引き戸構造であってよい。なお、左右一対の側板2、3、背板4、天板5、底板6および前面板の1つまたは複数もしくは全部は金属であってもよく、その表面にリーダライタ用アンテナ15(図3参照)を形成する場合には、この表面を絶縁層で被覆してから形成すればよい。また、図示の実施例においては、左右一対の側板2、3は底板6から下方に多少突出するように構成され、これら左右一対の突出部によって、左右一対の支持脚7、8がそれぞれ形成されている。
【0023】
図1に示す物品載置棚1は、図示の実施例においては、ガラス、合成樹脂、木などの非金属性の適当な材料(換言すれば、透明または不透明の非導電体)を主要構成要素としてそれぞれ構成されている最上段の棚板11、2段目の棚板12、3段目の棚板13、4段目の棚板14および最下段の上記棚板6をそれぞれ備えている5段構成のものである。これらの棚板6、11〜14は、適当な支持手段(図示せず)によって、左右一対の側縁部または背板側の後縁部を左右一対の側板2、3、背板4などに支持されることができる。
【0024】
図1に示す物品載置棚1の各棚板6、11〜14には、それぞれの棚板面に対してほぼ平行になるように、図3〜図6に示すリーダライタ用アンテナ15が設置されている。そして、これらのリーダライタ用アンテナ15のそれぞれは、給電用ループアンテナA、非給電用ループアンテナBおよび外周用ループアンテナCを具備している。また、給電用ループアンテナAは、ツイストケーブル(図示せず)およびマッチング調整器(図示せず)を経由してから、同軸ケーブル(図示せず)によってアンテナ切替器(図示せず)に接続されている。そして、このアンテナ切替器は、同軸ケーブル16によってリーダライタ本体17および制御用コンピュータ(図示せず)に接続されている。このリーダライタ本体17は、リーダライタ用アンテナ15と電気信号などの情報をやり取りするためのものでる。また、リーダライタ本体17は、物品管理棚1に配置することができ、図示の実施例においては、天板5上に配置されている。上記アンテナ切替器も、必要に応じて、物品載置棚1に同様に配置されることができる。本発明においては、棚板6、11〜14は、スチール、アルミニウム合金などの金属性の適当な材料からそれぞれ構成することもできる。この場合には、棚板6、11〜14を構成する金属性材料による磁束の打ち消し現象が生じないように、この金属性材料とリーダライタ用アンテナ15との間にフェライトシートなどの磁性材料シート(図示せず)を介在させるのが好ましい。
【0025】
図1に示す物品載置棚1の各棚板6、11〜14上には、種々の形態の物品18が混載されており、これらの物品18には、シート形状であってよい電子タグ19がそれぞれ設けられている。そして、このような電子タグ19は、箱、容器などの物品18の、上面、下面などに貼り付けられていてよい。また、このような電子タグ19は、図2に示すように、この電子タグ19の中心とその中心がほぼ一致している1回巻きまたは複数回巻きのほぼループ形状の小型アンテナ21と、情報が記録されるメモリ(図示せず)が組み込まれかつほぼループ形状の小型アンテナ21の中央開口に配されたICチップ22とを含む通信回路を備えていてよい。
【0026】
図1および図3〜図6に示す物品管理棚1の各棚板6、11〜14は、例えば、間口方向xの長さL(図3参照)が約835mmで、奥行き方向yの長さL(図3参照)が約356mmの横長のほぼ長方形状であってよい。各棚板6、11〜14には、図3〜図6に示すように、3種類のループアンテナA、B、Cから成るリーダライタ用アンテナ15が設置されている。また、棚板11以外の各棚板6、12〜14にも、図3〜図6に示す棚板11と実質的に同一形状のリーダライタ用アンテナ15が設置されていてよい。なお、ループアンテナA、B、Cのそれぞれのアンテナパターン22a、22b、22cの各パターン部分の幅は、図示の都合上、実際よりは太く示している。また、ループアンテナA、B、Cのそれぞれのアンテナパターン22a、22b、22cの各パターン部分の実際の幅は、実質的に互いに同一であってよい。
【0027】
リーダライタ用アンテナ15のループアンテナA、B、C(具体的には、図3〜図6に示すように、ほぼループ形状またはループ形状のアンテナパターン22a、22b、22cと、ループアンテナAの一対の端子部23a、23bとの両方)は、図4に示すように、ガラス、合成樹脂、木などの非金属性の適当な材料からそれぞれ成る上下2枚の板24、25に導電線塗料(例えば、銀ペースト)を例えば約10mmの幅でそれぞれ印刷および焼成したものであってよい。具体的には、給電用ループアンテナAは、上側の板24の下側面に形成され、非給電用ループアンテナBは、下側の板25の上側面に形成され、外周用ループアンテナCは、下側の板25の下側面に形成されていてよい。そして、このようにして上下一対の板24、25などから構成された積層板が合成樹脂、木などから成る棚板本体27上に載置されることによって、棚板6、11〜14がそれぞれ構成されることができる。
【0028】
ループアンテナA、B、Cは、断面形状がほぼ円形で断面径が0.1mmの銅線から構成されたものであってもよい。この場合、上記銅線は、所定のパターン形状に屈曲成形されてから、適当な接着剤により板24、25に部分的または全体的に接着されることによって取り付け配置されていてよい。さらに、ループアンテナAの一対の端子部23a、23bは、上述のように、導電性塗料を印刷および焼成することによって構成した導電パターンから構成されるとともに、ほぼループ形状のアンテナパターン22a〜22cは、上述のように、銅線から構成されていてもよい。この場合、アンテナパターン22aの両端部は、適当な導電性接着剤による接着、半田付けなどによって、一対の端子部23a、23bに電気的に接続されればよい。ついで、これらの板24、25がPVB樹脂などの非導電性フィルムから成る中間膜26を用いて貼り合せられることによって、ループアンテナA、Bが上下2枚の板24、25の間に挟み込まれていてよい。これらの板24、25は、例えば、厚み約5mmのガラス板であってよく、中間膜26の厚みLは、例えば約300μmであってよい。ループアンテナA、B、Cを構成する材料も、必ずしも導電性塗料である必要はなく、導電性フィルム、導電性金属箔、上述のような銅線などの金属線、その他のワイヤ導線などであってもよい。なお、図6においては、ガラス板24、25および中間膜26はいずれも省略されている。
【0029】
このように構成されたリーダライタ用アンテナ15のループアンテナA、B、Cは、図3および図4に示すように、互いに電気的に絶縁されかつ棚板6、11〜14の表面に対してそれぞれほぼ平行な状態(換言すれば、ループアンテナA、B、C同士が互いにほぼ平行な状態)でもって、2枚のガラス板24、25および木板27の間に挟み込まれている。したがって、これら3種類のループアンテナA、B、Cが棚板6、11〜14上に配置される物品18との接触によって擦傷するのが防止される。また、棚板6、11〜14の上面を構成しているガラス板24は耐水性、耐候性、耐薬品性などに優れているから、図1に示す物品載置棚1は種々の用途に用いられることができる。そして、棚板6、11〜14の上面板24および中間の板25が透明なガラス材料である場合には、リーダライタ用アンテナ15も、酸化インジュウムスズ(ITO)、二酸化スズ(SnO)などから成る透明導電膜によって構成することができるし、上述のように細いワイヤ導線によって構成することもできる。
【0030】
本発明においては、互いにほぼ平行である2種類のループアンテナA、Bの厚さ方向における相互の間隔L(図4参照)は、実用性の観点から見て一般的に、0.1〜10mmの範囲であるのが好ましい。ただし、この間隔Lが0.1mmよりも小さくても、2種類のループアンテナA、Bの間の電気的絶縁が可能であればよい。また、この間隔Lが10mmよりも大きければ、2種類のループアンテナA、Bのうちのいずれか一方(図示の実施例では、ループアンテナB)が、棚板6、11〜14上に載置した物品18に設けた電子タグ19と良好に交信しにくくなる恐れが生じる。さらに、2種類のループアンテナA、Bと外周包囲用ループアンテナCとの厚さ方向における相互の間隔は、ガラス板25の厚み(例えば、5mm)と中間膜(例えば、約300μm)厚みとの和にほぼ等しいか、あるいは、ガラス板25の厚みにほぼ等しい。したがって、ループアンテナCがループアンテナA、Bと良好に交信しにくくなる恐れは生じない。
【0031】
リーダライタ用アンテナ15の3種類のループアンテナA、B、Cは、図示の実施例においては、図4に示すように各棚板6、11〜14の内部に埋設されている。しかし、これらのループアンテナA、B、Cのうちの少なくとも1種のループアンテナを各棚板6、11〜14の下面または上面に形成することもできる。さらに、ループアンテナA、B、Cのうちのいずれか2種のループアンテナを各棚板6、11〜14の上面および下面に構成することもできる。そして、これらいずれの場合にも、板24、25、27のいずれかが3種類のループアンテナA、B、Cの間に介在するときには、中間膜26を省略することができる。また、これらのループアンテナA、B、Cが各棚板6、11〜14の上面および/または下面に形成されるときには、これらのループアンテナA、B、Cが各棚板6、11〜14上に配置される物品18に接触する機会を減らすために、上記ループアンテナを含む各棚板6、11〜14の上面および/または下面を適当な絶縁材料から成る被覆膜でもって被覆することができる。
【0032】
(2)リーダライタ用アンテナのパターン形状
物品18に設けられている電子タグ19と無線通信によって交信するためのリーダライタ用アンテナ15は、図3、図5および図6に示すように、3種類のループアンテナA、B、Cから成っている。ループアンテナAは、図3、図5および図6に示すように、ほぼループ形状のアンテナパターン22aと、このほぼループ形状のアンテナパターン22aの両端部にそれぞれ連設されて互いに近接している一対の端子部23a、23bとから成っている。そして、これら一対の端子部23a、23bの間には、隙間31が設けられているから、ほぼループ形状のアンテナパターン22aの両端部の間にも、隙間31が同様に存在している。また、これら一対の端子部23a、23bは、前記ツイストケーブル(図示せず)によって前記マッチング調整器(図示せず)に接続されていてよい。さらに、ループアンテナB、Cは、図3、図5および図6に示すように、完全なループ形状のアンテナパターン22b、22cのみから成っていてよい。
【0033】
つぎに、棚板11に形成されている3種類のループアンテナA、B、Cの具体的なパターン形状を図3、図5および図6を参照して説明する。なお、棚板11以外の棚板6、12〜14にも、棚板11の場合と実質的に同形状をそれぞれ有する3種類のループアンテナA、B、Cが形成されることができる。
【0034】
棚板11の上面とほぼ平行な状態で形成されている外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cは、図3、図5および図6に示すように、棚板11の後縁部32にほぼ沿って延在している第1のパターン部分33と、棚板11の向かって左側の縁部34にほぼ沿って延在している第2のパターン部分35と、棚板11の前縁部(換言すれば、物品取り出し側の縁部)36にほぼ沿って延在している第3のパターン部分37と、棚板11の向かって右側の縁部38にほぼ沿って延在している第4のパターン部分39とから構成されている。そして、これら第1〜第4のパターン部分33、35、37、39は順次連設されている。したがって、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cは、棚板11の平面形状とほぼ同形のほぼ長方形状(換言すれば、その一部分と別の一部分とが平面的に見て互いに交差する交差部位および互いに重複する重複部位をいずれも有していないワンループの形状)に構成されている。本文において、上記「交差」および上記「重複」とは、電気的には接続交差および接続重複していないが、棚板11などのアンテナ形成対象部材を上面から見た投影図において(換言すれば、平面的に見て)交差および重複していることをそれぞれ意味している。
【0035】
棚板11の上面とほぼ平行な状態で形成されている給電用ループアンテナAのループ形状のアンテナパターン22aは、図3、図5および図6に示すように、ループアンテナCの第1のパターン部分33の内周囲にほぼ沿って隙間31を除いて延在している第1のパターン部分41と、ループアンテナCの第2のパターン部分35の内周囲にほぼ沿って延在している第2のパターン部分42と、ループアンテナCの第3のパターン部分37の内周囲にほぼ沿って延在している第3のパターン部分43と、棚板11の中心線Lよりも向かって右側に多少はみ出した位置においてこの中心線Lにほぼ沿って延在している第4のパターン部分44とから構成されている。そして、これら第1〜第4のパターン部分41〜44は順次連設されている。したがって、給電用ループアンテナAのほぼループ形状のアンテナパターン22aは、棚板11の平面形状の上記中心線Lにおいて2分割された形状よりも多少横長のほぼ長方形状(換言すれば、その一部分と別の一部分とが平面的に見て互いに交差する交差部位および互いに重複する重複部位をいずれも有していないほぼワンループの形状)に構成されている。なお、上記中心線Lは、棚板11の平面形状を左右方向(換言すれば、長さ方向および間口方向)xにおいて2等分する線分であって、前後方向(換言すれば、幅方向および奥行き方向)yに延在している。
【0036】
棚板11の上面とほぼ平行な状態で形成されている非給電用ループアンテナBのループ形状のアンテナパターン22bは、図3、図5および図6に示すように、中心線Lを対称軸として給電用ループアンテナAのループ形状のアンテナパターン22aとはほぼ左右対称的(ただし、隙間31を除く。)に構成されている。したがって、非給電用ループアンテナBのループ形状のアンテナパターン22bは、ループアンテナCの第1のパターン部分33の内周囲にほぼ沿って延在している第1のパターン部分45と、棚板11の中心線Lよりも向かって左側に多少はみ出した位置においてこの中心線Lにほぼ沿って延在している第2のパターン部分46と、ループアンテナCの第3のパターン部分37の内周囲にほぼ沿って延在している第3のパターン部分47と、ループアンテナCの第4のパターン部分39の内周囲にほぼ沿って延在している第4のパターン部分48とから構成されている。そして、これら第1〜第4のパターン部分45〜48は順次連設されている。したがって、非給電用ループアンテナBのほぼループ形状のアンテナパターン22bは、棚板11の平面形状の上記中心線Lにおいて2分割された形状よりも多少横長のほぼ長方形状(換言すれば、その一部分と別の一部分とが平面的に見て互いに交差する交差部位および互いに重複する重複部位をいずれも有していないワンループの形状)に構成されている。具体的には、アンテナパターン22a、22bの間口方向xにおける長さは、棚板11(換言すれば、アンテナパターン22c)の間口方向xにおける長さLに対して、約55%である。
【0037】
図3、図5および図6に示すように、給電用ループアンテナAの第4のパターン部分44が中心線Lよりも多少はみ出している長さLと、非給電用ループアンテナBの第2のパターン部分46が中心線Lよりも多少はみ出している長さLとのそれぞれは、図示の実施例においては、棚板11(換言すれば、外周用ループアンテナC)の長さ(換言すれば、左右方向xにおける長さ)Lの約6%である。そして、上記比(L/LおよびL/L)のそれぞれは、実用性の観点から見て一般的に、3〜12%の範囲であるのが好ましく、4.5〜9%の範囲であるのがさらに好ましい。また、比(L+L)/Lも、実用性の観点から見て、6〜24%の範囲であるのが好ましく、9〜18%の範囲であるのがさらに好ましい。この場合、上記(L+L)は、第4のパターン部分44の外側のラインと第2のパターン部分46の外側のラインとの相互の間隔を意味している。したがって、上記(L+L)は、非給電用ループアンテナBが給電用ループアンテナAと重なっている重なり幅を意味している。
【0038】
上述のとおりであるから、給電用ループアンテナAのほぼループ形状のアンテナパターン22aの第1〜第4のパターン部分41〜44のうちの第1〜第3のパターン部分41〜43のそれぞれの外周は、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cの第1〜第3のパターン部分33、35、37によって包囲されている。そして、上記第1〜第4のパターン部分41〜44の全長のうちで上記第1〜第3のパターン部分33、35、37によって包囲されている長さの割合は、約79%である。また、非給電用ループアンテナBの場合にも、上記割合(すなわち、全長に対する外周包囲長さの割合)は、実質的に約79%である。換言すれば、図3および図5に示すように、給電用ループアンテナAのほぼループ形状のアンテナパターン22aおよび非給電用ループアンテナBのループ形状のアンテナパターン22bのそれぞれのうちの、間口方向xにほぼ沿って延在している2本のパターン部分41、43または45、47の外周と、奥行き方向yにほぼ沿って延在している1本のパターン部分42または48の外周とは、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cによってほぼ包囲されている。さらに、1個の給電用ループアンテナAと1個の非給電用ループアンテナBとから成る複合ループアンテナ(換言すれば、ループアンテナ群)の場合には、この複合ループアンテナのアンテナパターン22a、22bの外周の全体が外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cによってほぼ包囲されている。
【0039】
(3)リーダライタ用アンテナの作用
図3、図5および図6に示すリーダライタ用アンテナ15の給電用ループアンテナAの一対の端子部23a、23bに給電して、そのほぼループ形状のアンテナパターン22aに図3における実線の矢印の向き51a(またはその逆の向き)に給電電流が流れるようにしたときに、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cには、上記給電電流51aによる誘導磁界を受けることによって、図3における一点鎖線の矢印51cの向き(またはその逆の向き)に誘導電流が流れる。なお、上記給電電流の向き51aは、図3における時計方向回りである。そして、上記誘導電流の向き51cは、上記給電電流の向き51aとは反対の向き(換言すれば、図3における反時計方向回り)である。また、外周用ループアンテナCに矢印51cの向きに誘導電流が流れると、非給電用ループアンテナBのループ形状のアンテナパターン22bには、上記誘導電流51cによる誘導磁界を受けることによって、給電用ループアンテナAの場合と同方向(換言すれば、図3における時計方向回り)51bの誘導電流が流れる。したがって、非給電用ループアンテナBのアンテナパターン22bによって囲まれる空間には、給電用ループアンテナAのアンテナパターン22aによって囲まれる空間と実質的に同方向の磁界がアンテナパターン22bによって放出される。
【0040】
上述のとおりであるから、給電用ループアンテナAは、アンテナパターン22aに流れる給電電流により発生する誘導磁界によって、物品18の電子タグ(特に、アンテナパターン22aによって囲まれる空間付近の電子タグ)19と通信することができる。したがって、上記電子タグ19に記録されている情報は、リーダライタ本体17によって一対の端子部23a、23bを通して読み取られることができる。また、非給電用ループアンテナBも、アンテナパターン22bに流れる誘導電流により発生する誘導磁界によって、物品18の電子タグ(特に、アンテナパターン22bによって囲まれる空間付近の電子タグ)19と通信することができる。したがって、上記電子タグ19に記録されている情報も、外周用ループアンテナCを通して給電用ループアンテナAに伝達されるから、リーダライタ本体17によって一対の端子部23a、23bを通して読み取られることができる。
【0041】
2、第2の実施例
この第2の実施例における物品載置棚1は、図7に示すように、非給電用ループアンテナBが1個から2個に増えたことと、給電用ループアンテナAおよび一対の非給電用ループアンテナB、Bのパターン形状およびこれらの配置が若干異なっていることとを除いて、第1の実施例における物品載置棚1と実質的に同一の構成を有するとともに実質的に同一の作用を奏する。したがって、以下において、第2の実施例が第1の実施例と相違している点について主として説明し、両者が互いに同一である点いついての説明を必要に応じて省略する。また、第2の実施例において第1の実施例と共通の部分には、第1の実施例の場合と同一の符号を付して、その説明を必要に応じて省略する。
【0042】
給電用ループアンテナAは、棚板11の間口方向xにおけるほぼ中央に配置されている。したがって、給電用ループアンテナAは、中心線Lに対してほぼ左右対称になっている。なお、符号L、Lのそれぞれは、棚板11の平面形状を間口方向xにおいて3等分する線分(すなわち、3等分線)であって、奥行き方向yに延在している。そして、第2の実施例における給電用ループアンテナAのアンテナパターン22aの間口方向xにおける長さは、第1の実施例の場合に較べて、約85%の長さに縮小されている。さらに、給電用ループアンテナAの第2のパターン部分42は、3等分線Lよりも向かって左側に多少はみ出した位置において、この3等分線Lにほぼ沿って延在している。また、給電用ループアンテナAの第4のパターン部分44は、3等分線Lよりも向かって右側にはみ出した位置において、この3等分線Lにほぼ沿って延在している。したがって、アンテナパターン22aの間口方向xにおける長さは、棚板11(換言すれば、アンテナパターン22c)の間口方向xにおける長さに対して、約46%である。
【0043】
図7に示す非給電用ループアンテナBは、第1の実施例における非給電用ループアンテナBに対応している。ただし、非給電用ループアンテナBの間口方向xにおける長さは、上記非給電用ループアンテナBの間口方向における長さに較べて、約70%に縮小されている。また、非給電用ループアンテナBは、中心線Lを対称軸として、非給電用ループアンテナBとはほぼ線対称に形成されている。そして、給電用ループアンテナAの第2および第4のパターン部分42、44が3等分線L、Lから左側および右側にそれぞれはみ出している長さLは、第1の実施例における長さLと実質的に同一であってよい。また、左右一対の非給電用ループアンテナB、Bが3等分線L、Lから左側および右側にそれぞれはみ出している長さLは、第1の実施例における長さLと実質的に同一であってよい。さらに、第2の実施例における長さL、L、(L+L)のそれぞれの好ましい数値範囲およびさらに好ましい数値範囲も、第1の実施例の場合と実質的に同一であってよい。そして、非給電用ループアンテナB、Bのそれぞれのアンテナパターン22bの間口方向xにおける長さは、棚板11(換言すれば、アンテナパターン22c)の間口方向xにおける長さに対して、約37%である。
【0044】
上述のとおりであるから、給電用ループアンテナAのほぼループ形状のアンテナパターン22aの第1〜第4のパターン部分41〜44のうちの第1および第3のパターン部分41、43のそれぞれの外周は、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cの第1および第3のパターン部分33、37によってほぼ包囲されている。そして、上記第1〜第4のパターン部分41〜44の全長のうちで上記第1および第3のパターン部分33、37によってほぼ包囲されている長さの割合は、約57%である。また、非給電用ループアンテナB、Bのそれぞれのループ形状のアンテナパターン22bの第1〜第4のパターン部分45〜48のうちの第1、第3および第4のパターン部分45、47、48(アンテナBの場合)ならびに第1〜第3のパターン部分45〜47(アンテナBの場合)のそれぞれの外周は、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cの第1、第3および第4のパターン部分33、37、39(アンテナBの場合)ならびに第1〜第3のパターン部分33、35、37(アンテナBの場合)によってほぼ包囲されている。そして、第1〜第4のパターン部分45〜48の全長のうちで外周用ループアンテナCのアンテナパターン22cによってほぼ包囲されている長さの割合は、約77%である。換言すれば、図7に示すように、給電用ループアンテナAのほぼループ形状のアンテナパターン22aのうちの、間口方向xにほぼ沿って延在している2本のパターン部分41、43の外周は、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cによってほぼ包囲されている。また、非給電用ループアンテナB、Bのそれぞれのループ形状のアンテナパターン22bのうちの、間口方向xにほぼ沿って延在している2本のパターン部分45、47の外周と、奥行き方向yにほぼ沿って延在している1本のパターン部分48または46の外周とは、外周用ループアンテナCのループ形状のアンテナパターン22cによってそれぞれほぼ包囲されている。さらに、1個の給電用ループアンテナAと2個の非給電用ループアンテナB、Bとから成る複合ループアンテナ(換言すれば、ループアンテナ群)の場合には、この複合ループアンテナの3個のアンテナパターン22a、22b、22bの外周全体が外周用ループアンテナCのループ形状アンテナパターン22cによってほぼ包囲されている。
【0045】
この第2の実施例において、図7に示すリーダライタ用アンテナ15の給電用ループアンテナAの一対の端子部23a、23bに給電すると、既述の第1の実施例の場合と同様にして、電子タグ19に記録されている情報がリーダライタ本体17によって読み取られることができる。この第2の実施例の場合には、既述の第1の実施例における非給電用ループアンテナBを一対の非給電用ループアンテナB、Bに読み替えればよい。
【0046】
以上において、本発明の第1および第2の実施例について詳細に説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている発明の趣旨に基づいて、各種の変更および修正が可能である。
【0047】
例えば、既述の第1および第2の実施例においては、上下5段の棚板6、11〜14を物品載置棚1に設けたが、棚板は必ずしも上下に5段設けられる必要はなく、2〜4段または6段以上の別の複数段を上下に設けてもよく、場合によっては、1段だけでもよい。
【0048】
また、既述の第1および第2の実施例においては、本発明を物品載置棚1に適用した。しかし、本発明は、図書館の受付カウンタ台などのカウンタ台、テーブル、机などのような、各種の物品が載置される台に適用することができ、また、医薬瓶などの製造ラインにおける物流用の読み取りアンテナや、工場ラインにおける部品管理用の読み取りアンテナとしても、使用することもできる。また、本発明によるリーダ用アンテナは、店舗などの商品棚の在庫管理や、顧客が商品の取り出しを行うモニタリングなどにも、利用することができる。さらに、本発明によるリーダ用アンテナは、物品載置棚の棚板のようなほぼ長方形状の基板に限らず、ほぼ正方形状、ほぼ平行四辺形状、その他のほぼ台形状、ほぼ長円形状、ほぼ楕円形状、その他の各種の形状を有する基板などに組み込まれることができる。
【0049】
また、既述の第1および第2の実施例においては、非給電用ループアンテナB、B、Bに情報読み出し用の端子を設けてはいないが、給電用ループアンテナAの場合と同様の一対の端子を情報読み出し用端子などとして設けてもよい。
【0050】
また、既述の第1および第2の実施例においては、非給電用ループアンテナB、B、Bを1個および2個設けているが、外周用ループアンテナCなどの形状を工夫することなどによって、3個以上設けてもよく、これと同様に、外周用ループアンテナCの個数も2個以上にしてもよい。
【0051】
また、既述の第1および第2の実施例においては、リーダライタ用アンテナ15のループアンテナA、B、Cのアンテナパターン22a、22b、22cは、一回巻きのものとしたが、渦巻き状などに複数回巻回させた複数回巻きのものであってもよい。
【0052】
また、既述の第1および第2の実施例においては、リーダライタ用アンテナ15のループアンテナA、B、Cのパターン部分33、35、37、39、41〜44、45〜48などの相互の間のつながり部位の大部分を、ほぼ直角などの尖った形状にした。しかし、これらのつながり部位の一箇所または複数箇所もしくは全部の箇所が、丸みを帯びた形状であってもよい。
【0053】
また、既述の第1および第2の実施例においては、棚板6、11〜14の上面側から順に、給電用ループアンテナA、非給電用ループアンテナB、B、Bおよび外周用ループアンテナCを配設した。しかし、このような配設の順序は、ループアンテナB、B、B、ループアンテナAおよびループアンテナCであってもよいし、ループアンテナC、ループアンテナAおよびループアンテナB、B、Bであってもよいし、ループアンテナC、ループアンテナB、B、BおよびループアンテナAであってもよい。また、第2の実施例においては、ループアンテナAおよび/またはCがループアンテナB、Bの間に介在するようにしてもよく、このような配設の順序は、任意に選定されることができる。
【0054】
さらに、既述の第1および第2の実施例においては、リーダ用アンテナが、リーダライタ用アンテナ15によって構成されているが、必ずしもそのように構成されている必要はなく、情報の読み取りのみを行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 物品載置棚
6 最下段の棚板(底板、アンテナ形成対象部材)
11 最上段の棚板(アンテナ形成対象部材)
12 2段目の棚板(アンテナ形成対象部材)
13 3段目の棚板(アンテナ形成対象部材)
14 4段目の棚板(アンテナ形成対象部材)
15 リーダライタ用アンテナ(リーダ用アンテナ)
22a ほぼループ形状のアンテナパターン
22b ループ形状のアンテナパターン
22c ループ形状のアンテナパターン
A 給電用ループアンテナ
B 非給電用ループアンテナ
C 外周用ループアンテナ
非給電用ループアンテナ
非給電用ループアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ形成対象部材に互いに絶縁された状態でそれぞれ設けられている複数個のループアンテナを備えているリーダ用アンテナにおいて、
1個の給電用ループアンテナと、少なくとも1個の非給電用ループアンテナと、少なくとも1個の外周用ループアンテナとを備え、
上記給電用ループアンテナのアンテナパターンの外周付近が少なくとも部分的に上記外周用ループアンテナによって平面的に見てほぼ包囲されるとともに、
上記非給電用ループアンテナのアンテナパターンの外周付近が少なくとも部分的に上記外周用ループアンテナのアンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていることを特徴とするリーダ用アンテナ。
【請求項2】
上記非給電用ループアンテナが1個であり、
上記外周用ループアンテナが1個であり、
上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに平面的に見てほぼ隣接して配置され、
上記給電用ループアンテナと上記非給電用ループアンテナとから成る複合ループアンテナのアンテナパターンの外周付近のほぼ全体が上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていることを特徴とする請求項1に記載のリーダ用アンテナ。
【請求項3】
上記非給電用ループアンテナが2個であり、
上記外周用ループアンテナが1個であり、
上記2個の非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの両側にそれぞれ平面的に見てほぼ隣接して配置され、
上記給電用ループアンテナと上記2個の非給電用ループアンテナとから成る複合ループアンテナのアンテナパターンの外周付近のほぼ全体が上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによって平面的に見てほぼ包囲されていることを特徴とする請求項1に記載のリーダ用アンテナ。
【請求項4】
上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによってその外周付近を平面的に見てほぼ包囲されている長さの割合が、45〜95%の範囲であり、
上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記外周用ループアンテナの上記アンテナパターンによってその外周付近を平面的に見てほぼ包囲されている長さの割合が、55〜95%の範囲であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のリーダ用アンテナ。
【請求項5】
上記アンテナ形成対象部材が長手状に構成され、
上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンが上記アンテナ形成対象部材の長さ方向において上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに平面的に見て重なり合うようにほぼ隣接して配置され、
上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンに対する上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの平面的に見た重なり幅が、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における長さの6〜24%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のリーダ用アンテナ。
【請求項6】
上記アンテナ形成対象部材が長手状に構成され、
上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における上記給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの長さが、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向の長さに対して、34〜68%の範囲であり、
上記アンテナ形成対象部材の長さ方向における上記非給電用ループアンテナの上記アンテナパターンの長さが、上記アンテナ形成対象部材の長さ方向に対して、28〜68%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載のリーダ用アンテナ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載のリーダ用アンテナが形成されている棚板を上記アンテナ形成対象部材として備えていることを特徴とするアンテナ付き物品載置棚。
【請求項8】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載のリーダ用アンテナが形成されている台板を上記アンテナ形成対象部材として備えていることを特徴とするアンテナ付き物品載置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29814(P2011−29814A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172005(P2009−172005)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】