説明

レッグウェア

【課題】脚のむくみを低減・解消するレッグウェアであり、緊締力を有しながら脚の動きに追従しやすく、膝裏の蒸れや踵の乾燥も防止できる。
【解決手段】少なくとも踵から膝を覆う部位を備え、緊締力を有する伸縮性編地からなるレッグ部11を有し、膝部12は他の部位より伸びやすくした高伸縮性編地とし、膝裏部13は他の部位より通気性を大とした高通気性編地とし、踵部14は他の部位より気密性を大とした高気密性部位としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレッグウェアに関し、特に、脚のむくみを解消・低減するために就寝時に着用するレッグウェアとして好適に用いられ、脚を圧迫しない程度の快適な緊締力を有しながら、脚の動きに追従しやすく、膝裏の蒸れや踵の乾燥も防止するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レッグ部に緊締力を持たせてサポート性やフィット性を高めたレッグウェアが普及している。例えば、特許第2822090号公報には、図5に示すように、土踏まず部2、足首部3、ふくらはぎ部4、大腿部5の着圧を所定範囲とし、土踏まず部2から大腿部5にかけて緊締力を順次弱くすることにより、サポート性、フィット性と共に、着用感も改善したパンティストッキング1が提案されている。
【0003】
しかし、前記のような緊締力を有するレッグウェアは、編地にパワーを持たせているため編地が硬く厚くなりやすく、膝の屈伸など脚の動きに追従しにくいという問題がある。また、膝裏には蒸れが生じやすい一方、このようなレッグウェアを着用しても冬場などには踵が乾燥し、かさつきや荒れなどの肌トラブルが生じやすいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2822090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、緊締力を有するレッグウェアでありながら脚の動きに追従しやすく、膝裏の蒸れや踵の乾燥も防止できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、緊締力を有する伸縮性編地からなり、少なくとも踵から膝を覆う部位を備え、
膝部は他の部位より伸び率を大とした高伸縮性編地とし、
膝裏部は他の部位より通気性を大とした高通気性編地とし、
踵部は他の部位より気密性を大とした高気密性部位としていることを特徴としているレッグウェアを提供している。
【0007】
前記伸縮性編地は10〜18hPaの緊締力を有するものとし、爪先部が無いと共に膝上方位置までのレッグ部のみからなり、脚のむくみ除去・低減用として就寝時に着用されるものとしている。
【0008】
緊締力を足首部で15〜18hPa、ふくらはぎ部で10〜14hPaと足首からふくらはぎへと脚の着圧を弱めることにより、脚のむくみや疲れを低減・解消することに役立てることができる。
【0009】
また、爪先部が無いとすることで、就寝時における爪先部に蒸れを生じさせないようにすることが好ましい。かつ、本発明のレッグウェアを着用して就寝する際に圧迫感を発生させないために、最もむくみが発生しやすい踵から膝上方位置までを覆うようにすることが好ましい。
【0010】
本発明の緊締力を持たせたレッグウェアを就寝時に着用することにより、静脈還流を促進して脚のむくみの除去や低減に効果があると共に、膝部を高伸縮性編地で形成しているため寝返り等に伴う脚の動きを阻害することがない。また、膝裏部を高通気性編地で編成しているため、暖かい布団の中でも膝裏部に蒸れを感じることもない。したがって、本発明のレッグウェアを着用しながら快適な睡眠をとることができる。また、踵部に高気密性部位を設けているため、就寝中に踵の保湿ケアも行うことができる。
【0011】
なお、本発明のレッグウェアは、爪先部が無く、踵から膝上までのレッグ部のみの覆う構成とすることが好ましいが、該構成に限定されず、レッグ部とパンティ部とを備えたものであってもよいし、爪先部を設けたものであってもよい。
【0012】
本発明のレッグウェアにおいて、膝部の伸び率の良い高伸縮性編地は、膝全体を覆うことができるように円形状あるいは長円状とすることが好ましく、編組織としては圧迫感なく立体編みになる半回転編みをした組織が好ましい。前記高伸縮性編地の形状を立体編みにより膝の形状に合わせた膨出形状とすることにより、フィット感を損なうことなく膝への圧迫感を低減し、脚の動きに対する追従性をさらに高めることができる。
【0013】
また、本発明のレッグウェアでは、前記のように、膝裏部は他の部位より通気性を大とした高通気性編地で膝裏部を形成しているため、長時間着用していても膝裏に蒸れを感じず快適な着用感を保つことができる。
膝裏部を形成する高通気性編地の編組織としては、メッシュ編組織や浮き編組織、タック編組織など、編目の空隙を大きくする編組織が好ましく、編成に用いられる糸としては、例えば、繊度が150〜250デシテックス程度の綿混糸などが挙げられる。また、所要の緊締力を保持させるために、前記編組織からなる編地にポリウレタン糸やゴム糸などの弾性糸を挿入することも好ましい。
【0014】
さらに、本発明のレッグウェアでは前記のように、踵部にアクリル樹脂でプリントを施す事により、他の部位よりも気密性を大とした高気密性部位としているため、本発明のレッグウェアを着用するだけで踵の乾燥を防ぎ、踵のかさつきや角質化、ひび割れなどの肌トラブルを防止することができる。
【0015】
前記踵部の高気密性部位は伸縮性編地の肌側の内面側あるいは/および外面側に樹脂層を設け、または伸縮性編地に樹脂を含浸させていることが好ましい。
【0016】
前記のように、踵部の高気密性部位として、伸縮性編地の肌側内面側あるいは/および外面側に樹脂層を設けたり、前記伸縮性編地に樹脂を含浸させたりすることにより、前記樹脂が伸縮性編地の編目の空隙を塞ぎ、肌側の水分が外部に放散されるのを防止することができる。
【0017】
前記樹脂層をアクリル樹脂から形成すると共に、前記樹脂層は踵部の幅方向を長さ方向とする帯状とし、該帯状の樹脂層を前記踵部の前後方向に隙間をあけて複数本配置していることが好ましい。
【0018】
前記のように、樹脂層をアクリル樹脂から形成するのが好ましいのは、アクリル樹脂は皮膚への刺激が少ないためである。また、アクリル樹脂は、湿潤な状態でも編地との接着力が低下しにくいため、アクリル樹脂からなる樹脂層は、長期にわたって編地から剥離することなく編地の伸縮に滑らかに追従することができる。
【0019】
また、前記のように、踵部の幅方向を長さ方向とした帯状の樹脂層を踵部の前後方向に隙間をあけて複数本配置することによって、レッグウェアを着用した際、前記帯状の樹脂層が伸縮性編地と共に大きく伸長し、踵の外縁部分を含めた踵の大部分を樹脂層で覆うことができる。よって、かさつきや角質化などが発生しやすい踵の外縁部分も十分な潤いを保つことができる。また、前記帯状の樹脂層を踵部の前後方向に隙間をあけて配置することにより、過剰な水分を前記隙間から放散することも可能となり、適度な湿度を保ってべたつきのない快適な着用感を維持することができる。
【0020】
前記帯状の樹脂層の幅を6〜12mm程度とし、帯状の樹脂層間の隙間の幅を2〜4mm程度とすることが好ましい。また、帯状の樹脂層の長さは、レッグウェアを着用した際に踵の外縁部分まで樹脂層で覆うことができるように踵部の形状、大きさに合わせて適宜設定することが好ましい。さらに、帯状の樹脂層の厚さは300〜500μm程度とすることが好ましい。なお、前記した数値は、いずれも樹脂層に負荷が加えられていない状態での値である。
【0021】
前記踵部の伸縮性編地の編組織としては、前記膝部、膝裏部以外の部位と同様の編組織としてもよいし、前記膝部と同様の編組織としてもよい。
前記膝部、膝裏部および踵部以外の部位の編組織としては、例えば、プレーン編みやリブ編みなどからなる編地(地編み部)に、ポリウレタン糸やゴム糸などの弾性糸を挿入して緊締力を持たせた編組織とすることが好ましい。前記地編み部の編成に用いられる糸としては、150〜250デシテックスのポリウレタン糸を芯糸とし30〜50デシテックスのナイロン糸を前記芯糸の外周に巻きつけたカバリング糸(シングルカバリング糸、ダブルカバリング糸)を用いることが好ましい。また、前記膝部、膝裏部、踵部以外の部位の着圧は、全長にわたって同程度としてもよいし、あるいは、足首側から大腿側にむけて編み密度を順次下げて、着圧を段階的に下げていくものであってもよい。例えば、足首部で15〜18hPa、ふくらはぎ部で10〜14hPaとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
前述したように、本発明の脚のむくみ低減・解消用として着用されるレッグウェアでは、他の部位より伸びやすくした高伸縮性編地で膝部を形成しているため、緊締力を持たせたレッグウェアでありながら、屈伸などの脚の動きに対する追従性を高めることができる。また、他の部位より通気性を大とした高通気性編地で膝裏部を形成しているため、膝裏に蒸れを感じず快適な着用感を保つことができる。さらに、踵部を、他の部位よりも気密性を大とした高気密性部位としているため、踵の保湿性を高め、かさつきや角質化、ひび割れなどの肌トラブルを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のレッグウェアの片足側を示す概略平面図である。
【図2】膝部を示す要部拡大図である。
【図3】膝裏部を示す要部拡大図である。
【図4】踵部の肌側内面側を示す要部拡大図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に本発明の実施形態のレッグウェア10を示す。
【0025】
図1に示すレッグウェア10は、就寝時に着用されるむくみ除去・低減用のレッグウェアであり、膝上方位置までのレッグ部11のみからなり、爪先部を設けていない。レッグ部11は、緊締力を有する伸縮性編地からなり、膝部12、膝裏部13、踵部14および前記部位12、13、14以外の緊締部15から構成している。前記緊締部15の上下端にはそれぞれ袋編みされた履き口部16、足先部17を設けており、本実施形態では、上端の履き口部16から下端の足先部17まで通常の靴下丸編機(図示せず)を用いて編成している。
【0026】
緊締部15は、鹿の子編みからなる編地にポリウレタン糸やゴム糸などの弾性糸を挿入して緊締力を持たせた編組織とし、前記鹿の子編みからなる編地の編成には、200デシテックス程度のレーヨン・シルク混を表糸とし、裏糸に170デシテックスのポリエステル糸を用いている。また、挿入糸には180デシテックスのポリウレタンに45デシテックスのナイロンをダブルカバリングしたものを用いている。本実施形態では、緊締部15の着圧を足首部で17hPa程度、ふくらはぎ部で13hPa程度とすることにより、脚のむくみや疲れを低減・解消することに役立てることができる。すなわち、足首側から膝上方側にむけて編み密度を順次下げることにより着圧を段階的に下げていくものである。
【0027】
膝部12は、他の部位である膝裏部13、踵部14、緊締部15よりも伸縮性を大とした高伸縮性編地で形成している。膝部12に設ける高伸縮性編地は、図2に示すように、立体編みにより膝の形状に合わせた長円状の膨出形状とし、膝へのフィット性を損なうことなく膝への圧迫力を低減している。膝部12を形成する高伸縮性編地の編組織には、繊度が200デシテックス程度のレーヨン・シルク混を表糸とし、裏糸に170デシテックスのポリエステル糸を用いている。なお、緊締部15のような挿入編みは行っていない。
【0028】
膝裏部13は、他の部位である膝部12、踵部14、緊締部15よりも通気性を大とした高通気性編地で形成している。膝裏部13の高通気性編地は、繊度が200デシテックス程度のレーヨン・シルク混を表糸とし、裏糸に170デシテックスのポリエステル糸を用いた編地に、緊締部15と同様の挿入糸を挿入した編組織としている。膝裏部13の形状は膝裏を覆うことができれば特に限定されず、意匠的な形状とすることもできる。本実施形態では図3のようにハート型としている。
【0029】
踵部14は、他の部位である膝部12、膝裏部13、緊締部15よりも気密性を大とした高気密性部位としている。具体的には、踵部14の伸縮性編地を膝部12と同様の編み糸、編組織で編成し、図4のように、踵部14の伸縮性編地の肌側内面側にアクリル樹脂からなる樹脂層18a〜18fを設けている。樹脂層18a〜18fは踵部14の幅方向を長さ方向とする帯状とし、6本の樹脂層18a〜18fを踵部14の前後方向に隙間19をあけて配置している。本実施形態では、樹脂層18a〜18fの幅を10mm程度、樹脂層間の隙間19の幅を2mm程度とし、配置した樹脂層18a〜18fの全体形状が長円状になるように配置している。
【0030】
樹脂層18a〜18fの形成はレッグウェア10の編成終了後に行う。具体的には、アクリル樹脂エマルジョン(株式会社ヒガシ化学製「ラジテックスVL−501C」)を踵部14の伸縮性編地の肌側内面側に前記位置関係でプリントし、100度に加熱し40秒間熱を加えて、アクリル樹脂を伸縮性編地に接着させた後、冷却固化させることにより、厚さ400μm程度の樹脂層18a〜18fを伸縮性編地に形成している。
【0031】
前記のように、他の部位(13、14、15)より伸縮性を大とした高伸縮性編地で膝部12を形成しているため、緊締力を持たせたレッグウェア10でありながら、屈伸などの脚の動きに対する追従性を高めることができる。
また、他の部位(12、14、15)より通気性を大とした高通気性編地で膝裏部13を形成しているため、膝裏に蒸れを感じず快適な着用感を保つことができる。
さらに、踵部14を、他の部位(12、13、15)より気密性を大とした高気密性部位としているため、踵の乾燥を防止し、かさつきや角質化、ひび割れなどの肌トラブルを防止することができる。
【0032】
特に、本実施形態のレッグウェア10を就寝時に着用することにより、静脈還流を促進して脚のむくみの除去や低減に効果があると共に、膝部12を高伸縮性編地で形成しているため寝返り等に伴う脚の動きを阻害することがない。また、膝裏部13を高通気性編地で形成しているため、暖かい布団の中でも膝裏部に蒸れを感じることもない。したがって、本実施形態のレッグウェア10を着用しながら快適な睡眠をとることができる。また、踵部14を高気密性部位としているため、就寝中に踵の保湿ケアも行うことができる。
【0033】
また、前記のように、踵部14の高気密性部位として、伸縮性編地の肌側内面側に樹脂層18a〜18fを設けることにより、前記樹脂が伸縮性編地の編目ループの空隙を塞ぎ、肌側の水分が外部に放散されるのを防止することができる。
さらに、前記樹脂層18a〜18fをアクリル樹脂から形成することにより、皮膚への刺激を抑制し、保湿性をより高めることができる。また、伸縮性に富んだアクリル樹脂は湿潤な状態でも編地との接着力が低下しにくいため、アクリル樹脂からなる樹脂層18a〜18fは、長期にわたって編地から剥離することなく編地の伸縮に滑らかに追従することができる。
【0034】
また、前記のように、踵部14の幅方向を長さ方向とした帯状の樹脂層18a〜18fを踵部14の前後方向に隙間19をあけて複数本配置することによって、レッグウェア10を着用した際、帯状の樹脂層18a〜18fが伸縮性編地と共に大きく伸長し、踵の外縁部分を含めた踵の大部分を樹脂層18a〜18fで覆うことができる。よって、かさつきや角質化などが発生しやすい踵の外縁部分も十分な潤いを保つことができる。また、帯状の樹脂層18a〜18fを踵部14の前後方向に隙間19をあけて配置することにより、過剰な水分を隙間19から放散することも可能となり、適度な湿度を保ってべたつきのない快適な着用感を維持することができる。
【0035】
なお、本実施形態のレッグウェア10では、踵部14の伸縮性編地の内面にアクリル樹脂からなる樹脂層18a〜18fを設けているが、伸縮性編地の外面に樹脂層を設けてもよい。また、樹脂層18a〜18fを設ける代わりに、伸縮性編地にアクリル樹脂を含浸させておいてもよい。さらに、本実施形態のレッグウェア10は爪先部の無いレッグ部11のみから構成しているが、レッグ部とパンティ部とを備えたものであってもよいし、爪先部を設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 レッグウェア
11 レッグ部
12 膝部
13 膝裏部
14 踵部
15 緊締部
16 履き口部
17 足先部
18a〜18f 樹脂層
19 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊締力を有する伸縮性編地からなり、少なくとも踵から膝を覆う部位を備え、
膝部は他の部位より伸び率を大とした高伸縮性編地とし、
膝裏部は他の部位より通気性を大とした高通気性編地とし、
踵部は他の部位より気密性を大とした高気密性部位としていることを特徴としているレッグウェア。
【請求項2】
前記伸縮性編地は足首部で15〜18hPaの緊締力、ふくらはぎ部で10〜14hPaの緊締力を有するものとし、爪先部が無いと共に膝上方位置までのレッグ部のみからなり、脚のむくみ除去・低減用として就寝時に着用されるものである請求項1に記載のレッグウェア。
【請求項3】
前記踵部の高気密性部位は伸縮性編地の肌側の内面側あるいは/および外面側に樹脂層を設け、または伸縮性編地に樹脂を含浸させている請求項1または請求項2に記載のレッグウェア。
【請求項4】
前記樹脂層をアクリル樹脂から形成すると共に、前記樹脂層は踵部の幅方向を長さ方向とする帯状とし、該帯状の樹脂層を前記踵部の前後方向に隙間をあけて複数本配置している請求項3に記載のレッグウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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