説明

レンズアクチュエータ

【課題】
連結梃子型のレンズアクチュエータに関して、搭載するレンズ径の拡大を図る。
【解決手段】
従来は平行配置だった駆動源と背面板とを立体的に配置した構造を用いることで、ベース部上に於ける駆動源と背面板とが占める占有率が減少する。この為、減少した分のスペースを搭載するレンズ径に割り当てることで、アクチュエータを大型化することなく、レンズ径のみを拡大することができると共に、連結梃子形の変位拡大機構を用いている為、部品点数の減少に伴う省資源化によって環境に配慮した構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載するレンズに対して連結梃子型の変位拡大機構を環状に配置したレンズアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話に代表される移動体通信機器に於いて、撮影機能を搭載したものが広く用いられている。このような用途で用いられる光学部品に関して、以前では同じ小型のレンズ駆動を行う特開平06−076331(以下特許文献1として記載)等に記載された構造が用いられていた。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構造ではレンズホルダの振動に対して緩衝材(振動吸収体)を設け、更に駆動用の装置を組み付ける必要がある為に撮像素子全体が大型化してしまうという課題があった。このような課題に対して、例えば特開2008−096932(以下特許文献2として記載。図4に平面図を示す。)等の構造があり、レンズホルダをサスペンション(押え用スプリング)で支持しつつ、全体の駆動構造に組み込むことで、アクチュエータに緩衝材としての効果を持たせながら撮像素子全体の小型化を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−076331号公報
【特許文献2】特開2008−096932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した効果を有している反面、前記特許文献2に記載の構造は、駆動源である圧電素子のサイズによって搭載できるレンズ径が制限されてしまうという課題を有している。これは、特許文献2に記載のレンズアクチュエータが、両端部が支点として機能する背面板を、駆動源となる圧電素子に対して平行に設けている事に起因する。
【0006】
即ち、特許文献2に記載されている梃子を利用した変位拡大機構は、駆動源となる伸縮部材の他に、拡大率を決定する支点を設けることで駆動源の変位を拡大している。より具体的には、駆動源である圧電素子と、前記支点を構成する背面板とを、レンズの光軸方向に対して対向して配置した構造となっている。
【0007】
この為、特許文献2に記載の発明ではその構造上、圧電素子の発生する変位をより大きくするために圧電素子両端部と支点との距離を短縮すると、両端を支点として機能させている背面板が座屈してしまうという課題を有している。座屈を防ぐために背面板の断面積を拡大し、結果として圧電素子と背面板からなる駆動部を小型化することが難しくなってしまう。
【0008】
上記述べた課題を解決するべく、本願記載の発明では、連結梃子型の変位拡大機構に於いて、駆動源である圧電素子の小型化や背面板強度の低下を伴わずに前記圧電素子と背面板からなる駆動部を小型化したレンズアクチュエータを提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的のため、請求項1記載の発明では、連結梃子型のレンズアクチュエータに於いて、駆動源である圧電素子と背面板とをレンズの光軸方向で異なった位置に配置し、位置関係を立体的にしたことを特徴としている。より具体的には、従来の背面板配置が駆動源である圧電素子との間にレンズの光軸に対して直交方向の空隙(図4中でSとして記載)を必要としていたのに対して、本発明記載の構造ではレンズの光軸方向の空隙を設けることによって前記直交方向の空隙を縮小した構造となっている。このような構造を用いたことで、請求項1記載のレンズアクチュエータは、圧電素子と背面板の距離を短縮しつつ、背面板の強度を維持することができる。
【0010】
加えて、前記直交方向の空隙短縮によって、アクチュエータ内に於けるレンズ占有率を従来の構造から更に拡大することができる。この為、従来の構造と比較して搭載するレンズ径を大きく設定することができると共に、従来と同じレンズ径でレンズアクチュエータ全体の寸法を縮小することも可能となった。
【0011】
また、本発明に記載のレンズアクチュエータは、基本構造として引用文献2に記載のレンズアクチュエータと同じく、連結梃子型の変位拡大機構を用いて駆動源である圧電素子の変位をレンズの光軸方向の変位に変えている。この為、本願記載の構造を用いることで引用文献2に記載の構造が有していた立ち上がり、立ち下がり速度の向上、消費電力の低減等といった効果も得ることができる。
【0012】
加えて、上記レンズ径の拡大によって、別途搭載される撮像素子に入力される光量を増やすことができる。この為、各種移動体通信機器への搭載時に於いて、鮮明な画像を撮影する事が可能となる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、前記レンズの光軸方向に異なった位置で配置した圧電素子と背面板の一部とを、搭載するレンズの光軸方向で重ねた構造を特徴としている。この為、本願記載のレンズアクチュエータは駆動源となる圧電素子の駆動力を維持しつつ、搭載するレンズ径の拡大を可能としている。より具体的には、アクチュエータに対するレンズ占有率拡大によって圧迫される駆動源の一部と背面板とを、レンズの光軸方向で重ねて配置することで、請求項1記載の構造を用いてレンズ占有率を拡大しつつ、圧電素子の大きさを維持できる。
【0014】
以上述べたように、本発明に記載の構造を用いることで、駆動源である圧電素子の小型化や背面板強度の低下を伴わずに駆動部を小型化したレンズアクチュエータを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの全体斜視図である。
【図2】本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図3】本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの可動部斜視図である。
【図4】特許文献2に記載された従来型レンズアクチュエータの可動部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1〜図3を用いて、本発明に於ける最良の実施例を示す。
【0017】
図1に本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの全体斜視図を、図2に本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの分解斜視図を、図3に本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの可動部斜視図をそれぞれ示す。
【0018】
図1、図2及び図3から解るように、本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータは、ベース部7上で、駆動源となる圧電素子1とスペーサ2からなる収縮部の両端を力点、圧電素子1の外側にある背面板3を支点とし、圧電素子1が発生するA方向の変位によって梃子部4の端部をB方向に動かし、両梃子部4に連結されたレンズ駆動部5によって両梃子部4の変位方向Bをレンズの光軸方向Cに変換し、レンズ駆動部5に取り付けられたレンズホルダ6を光軸方向Cに動かす連結梃子型の駆動構造を用いている。このような構造を用いた事で、本実施例記載のレンズアクチュエータは、圧電素子1を駆動源としたことによる即応性と、スペーサ2を用いたことによる圧電素子の撓み防止、及び連結梃子型の変位拡大機構を用いたことによる高い変位拡大率が可能となった。
【0019】
また、図3に示した駆動部斜視図から解るように、本実施例記載のレンズアクチュエータは、前記収縮部と背面板3とを光軸方向Cに異なった位置で梃子部4に取り付けている。この為、従来の収縮部と背面板3とを平行に配置していた構造と比較して収縮部と背面板3との距離を短縮した構造となった。このような構造を用いたことで、本実施例のレンズアクチュエータは、収縮部両端に形成される力点と背面板3の両端に形成される支点との距離を短縮したことによる変位拡大率の増加と、ベース部7上に占める背面板3と収縮部との占有面積を減らしたことによるレンズホルダ径の拡大が可能となった。
【0020】
また、収縮部と背面板3の配置に関して、収縮部が背面板の光軸方向に関して一部重なった構造となっている。このような構造を用いたことで、本実施例記載のレンズアクチュエータは、前記変位拡大率の増加に加えて、駆動源である圧電素子1の発生する駆動力を維持することが可能となり、レンズ径の拡大によってレンズホルダが大型化し、重量が増加しているにも関わらず、良好な即応性を得ることができた。
【0021】
また、上記レンズ径の拡大によって別途設けられる撮像素子に対して入力する光量が増加する為、従来と同じ搭載スペースでありながら、より鮮明な画像を得る構造とすることができた。同様にして、同じレンズ径を用いた従来の連結梃子型変位拡大機構を用いたレンズアクチュエータよりも収縮部を小さく構成することができる為、上記述べたレンズ径の拡大と共に、同じレンズ径に於けるレンズアクチュエータを小型化することも可能となっている。加えて、レンズ径の拡大によって使用できる撮像素子もまた大型化する為、従来と比較してより高い解像度に対応した構造とすることができた。
【0022】
また、背面板3に関して、本実施例記載の構造では梃子部4と背面板3とを別部品として取り付けている。この為、梃子部4と背面板3とを一体成形した構造と比較して梃子部4と背面板3の材料を個別に選択できると共に、背面板3を薄型化しても座屈等が発生しない、充分な強度を保持することが可能となった。
【0023】
上記述べた効果に加えて、本実施例記載のレンズアクチュエータは各部材料及び接着剤に関して、半田リフロー工程に対応した構造となっている。これは、本実施例記載のレンズアクチュエータが圧電素子1を駆動源とする連結梃子型レンズアクチュエータである事による。
【0024】
より具体的には、磁歪素子に代表される電磁系の駆動源を用いていない為に、リフロー工程による基板取付後、所定の電圧を圧電素子に印加することでアクチュエータを使用可能な状態にすることが可能な構造となっている。この為、取付基板に対する組込時の工数を低く抑えることができた。
【0025】
以上述べたように、本実施例記載のレンズアクチュエータを用いることで、駆動源である圧電素子の小型化や背面板強度を低下させることなく、前記圧電素子と背面板からなる駆動部を小型化したレンズアクチュエータを得ることができた。
【符号の説明】
【0026】
1 圧電素子
2 スペーサ
3 背面板
4 梃子部
5 レンズ駆動部
6 レンズホルダ
7 ベース部
A 圧電素子収縮方向
B 梃子部変位方向
C 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結梃子型の変位拡大機構をレンズホルダの周囲に環状配置したレンズアクチュエータであって、
駆動源と、両端が前記駆動源に対する支点として機能する背面板とが、前記レンズホルダの光軸方向に異なった位置で固定されているレンズアクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動源と背面板の一部が、前記光軸方向で重なっている請求項1記載のレンズアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−118277(P2011−118277A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277512(P2009−277512)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【出願人】(502254796)有限会社メカノトランスフォーマ (22)
【Fターム(参考)】