説明

レンズユニット

【課題】鏡筒を含むレンズユニット全体の低背化を可能としたレンズユニットを提供することが課題である。
【解決手段】光軸方向に配置された複数の光学素子31〜34と、これらの光学素子を保持する鏡筒2とを備えた単焦点光学系のレンズユニット1において、複数の光学素子のうち最も物体側には第1レンズ31が配置され、次いで第2レンズ32が配置され、前記第1レンズ31の結像面10側の面と前記第2レンズ32の物体側の面が同一の曲率を有し、第1レンズ31と第2レンズ32が接着剤を介して面接触して貼り合わせられ、該第1レンズと第2レンズが一体化した貼り合わせレンズは、鏡筒2に対して第1レンズ31が非接触の状態で第2レンズ32により鏡筒2に保持される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学素子を鏡筒に保持した構成を備えるレンズユニットに関し、特に、低背のカメラモジュールに適したレンズユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラモジュールは、デジタルスチルカメラや携帯端末用小型カメラ等の民生機器、監視カメラや画像検査装置等の産業機器などへの搭載が急速に進んでおり、これに伴いカメラモジュールの小型化、低背化の要望が高まっている。カメラモジュールは、CCDやCMOS等の撮像素子の上にレンズが組み付けられて撮像機能を有するものであり、撮像素子がより小型化、高画質化してきたことからカメラモジュールサイズもよりコンパクト化することができるようになっている。その結果、小型のレンズユニットが市場から要求されることとなった。
【0003】
図8は従来のレンズユニットの構成例を示す。レンズユニット100は、筒状の鏡筒110と、該鏡筒110に収容される複数の光学素子101〜104とから構成される。光学素子は光軸方向に配置され、物体側から第1レンズ101、第2レンズ102、第3レンズ103、第4レンズ104の順に配置されている。一般にこれらのレンズには、光軸と直交する方向に平坦なコバ部101a〜104aが外周縁全周に亘って形成されている。これらのレンズ101〜104は、鏡筒110の結像面側開口111から鏡筒110内に圧入される。第1レンズ101は物体側開口112の係止部113にコバ部101aが当接することにより位置決めされる。第2レンズ102はそのコバ部102aが第1レンズ101のコバ部101aに直接又はスペーサ130を介して当接し、同様に、第3レンズ103はそのコバ部103aが第2レンズ102のコバ部102aに直接又はスペーサを介して当接し、第4レンズ104はそのコバ部104aが第3レンズ103のコバ部103aに直接又はスペーサ131を介して当接して配置される。
【0004】
従来のレンズユニットでは、レンズ設計で小型低背化を実現している。低背とは、絶対的な数値による寸法を意味するのではなく、固体撮像素子とレンズ全長(結像面から最も物体側にあるレンズの物体面側の面頂点までの距離)の比を表すことが多い。換言すれば、固体撮像素子が大きくなるとレンズも大きくなる。固体撮像素子を小型化できればレンズも小型化することができる。一般的にこの比率を小さくすることで、同じ固体撮像素子を用いた時のレンズユニットと比べて相対的な小型化を行うことが可能となる。
【0005】
レンズ設計で小型低背化を実現している例として、特許文献1(特開2007−148138号公報)、特許文献2(特開2007−298572号公報)等が挙げられる。特許文献1は、撮像レンズが物体側から順に配置された開口絞り部と、パワーが正となる第1レンズ、パワーが負となる第2レンズ、物体側が凹となるパワーが負の第3メニスカスレンズ、物体側が凹となるパワーが正の両面非球面からなる第4メニスカスレンズおよび撮像部を有する構成となっている。また、特許文献2は、撮像レンズが、物体側から順に配置された、開口絞り部と、正の屈折力を有する第1のレンズ、第1のレンズと接合された負の屈折力を有する第2のレンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第3のレンズ、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第4のレンズ、および少なくとも1面が非球面とされた物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第5のレンズを有する構成となっていおり、何れもレンズ設計において低背化を実現したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−148138号公報
【特許文献2】特開2007−298572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述した各撮像レンズでは、レンズのみに注目した場合小型低背となっているが、鏡筒を含めたレンズユニット或いはカメラモジュールとしては低背化が不十分である。図8に示すように、単焦点において最も物体側に開口絞り120を配置した場合、最も物体側の第1レンズ101は最も小径となることが多く、鏡筒110としては第1レンズ101から順々にレンズを落とし込む構造を有することが多い。この場合、第1レンズ101を鏡筒110の係止部113で受けることになるため、鏡筒110の物体側端部は、第1レンズ101の面頂点より物体側に突き出る形となる。従って、実質的な低背化を求める場合、結像面から鏡筒110の物体側端部までの長さHを短くする必要があるが、この鏡筒の突き出た部分により長さHが大きくなってしまう。
【0008】
さらにまた、鏡筒の突き出た部分が障害となり、第1レンズ101の面頂点から開口絞り120位置までの間隔dが厚くなってしまい、光学系で収差補正する都合上不利となる。加えて、レンズのみで小型低背化を実現しようとするとレンズに付加がかかり製造が困難となり、延いては歩留まりを大きく落とす要因となる。
そのため本発明においては、鏡筒を含めたレンズユニット全体の低背化を可能としたレンズユニットを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、光軸方向に配置された複数の光学素子と、これらの光学素子を保持する鏡筒とを備えた単焦点光学系のレンズユニットにおいて、
前記複数の光学素子のうち最も物体側には第1レンズが配置され、次いで第2レンズが配置され、
前記第1レンズの結像面側の面と前記第2レンズの物体側の面が同一の曲率を有し、前記第1レンズと前記第2レンズが接着剤を介して面接触して貼り合わせられ、該第1レンズと第2レンズが一体化した貼り合わせレンズは、前記鏡筒に対して前記第1レンズが非接触の状態で前記第2レンズにより前記鏡筒に保持されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、鏡筒とレンズの組み合わせにおいて低背化を実現する構造としているため、従来のように鏡筒単体、或いはレンズ単体で低背化させる構造では限界があったカメラモジュールをより小型低背化することができる。即ち、第1レンズと第2レンズを貼り合わせ、且つこの貼り合わせレンズが第2レンズのみで鏡筒に保持されるようにすることで、鏡筒が第1レンズを保持しない構造とすることができる。これにより第1レンズを保持する部位を鏡筒に設ける必要がなく、第2レンズの受け部の厚みを十分に確保することができるため、レンズユニットの低背化、カメラモジュール全長の小型化が実現できる。また、鏡筒と第1レンズを非接触としているため、第1レンズの外縁部に対応して形成された鏡筒の遮光部に第1レンズによる応力がかかることがなく遮光部の厚みを薄くすることができる。さらに、第1レンズと第2レンズの貼り合わせ面が接着剤を介して面接触して貼り合わせられることにより、接着強度が高く且つガス溜り等のような光学上の不具合が生じることが少なくなる。さらにまた、第1レンズと第2レンズを貼り合わせて一体化することにより、鏡筒に組み付けるレンズ枚数が減り製造公差を小さくできる。
【0011】
また、前記第1レンズの物体側の面頂点から前記鏡筒に保持された固体撮像素子までの距離をL1、前記鏡筒の物体側先端より前記固体撮像素子までの距離をL2とした時、下記の関係式が成り立つことを特徴とする。
L1≧L2
このように、従来は第1レンズを保持するために厚く形成されていた鏡筒の物体側先端を、第1レンズの物体側の面頂点より突出しないように構成することで、レンズユニットをより低背化することが可能となる。
【0012】
また、前記第1レンズと前記第2レンズの貼り合わせ面は物体側に凹面であることを特徴とする。
このように、第1レンズと第2レンズの貼り合わせ面が物体側に凹面、即ち物体側面が凹面である第2レンズを用いることにより、研磨等によるレンズの製造上、光軸と直交する方向に平坦なコバ部を第2レンズに形成することが容易となり、このコバ部と、光軸に直交する方向に平坦に形成された鏡筒の受け面とを当接して貼り合わせレンズを固定することにより光軸に対する貼り合わせレンズの位置調整精度を高くできる。
【0013】
また、前記接着剤が紫外線硬化樹脂であり、
前記紫外線硬化樹脂の屈折率をNs、前記第1レンズの屈折率をN1、前記第2レンズの屈折率をN2とした時、下記の関係式が成り立つことを特徴とする。
N1≦Ns≦N2(N1≦N2)
N2≦Ns≦N1(N2≦N1)
このように、第1レンズと第2レンズを貼り合わせる接着剤として、上記関係式を満たす屈折率を有する紫外線硬化樹脂を用いることで、貼り合わせ面による反射を低減し、フレアやゴーストを減少することができる。特に、貼り合わせ面に反射防止のコーティングを施していないレンズにおいて、レンズ性能を向上させることが可能である。さらにまた、光学設計上、貼り合わせ面の屈折率の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0014】
また、前記複数の光学素子より物体側に開口絞りが配置されることを特徴とする。
これは、光学素子間、あるいは光学素子と固体撮像素子との間に開口絞りを配置することは、レンズユニットの低背化の上で非常に困難となり、レンズ設計の上でも困難となる。従って開口絞りを最も物体側に配置することで、固体撮像素子への光線入射角度を緩和することができ、加えて光学素子と物体側の間は実質フリーの領域となるので、空間的な自由度が大きくなり開口絞りを配置しやすくなる。
【0015】
また、前記複数の光学素子より物体側にシャッタが配置されることを特徴とする。
このように、シャッタが光学素子より物体側に配置されることにより、上記した開口絞りの配置と同様に、空間的な自由度が大きくなりシャッタが配置しやすくなる。また、シャッタとともに光学素子より物体側に配置された開口絞りを有する場合、開口絞りにシャッタが隣接していないと周辺光量などに悪影響を及ぼすため、開口絞りとともにシャッタは最も物体側に配置することが好ましい。
【0016】
また、前記シャッタは開度を調整可能とし開口絞り機能を備えるようにしたことを特徴とする。
このように、シャッタが開口絞り機能を備えることにより、シャッタと開口絞りの両方を別個に設ける場合に比べてより低背化が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、鏡筒とレンズの組み合わせにおいて低背化を実現する構造としているため、カメラモジュールをより小型低背化することができる。
即ち、鏡筒が第1レンズを保持しない構造とすることで第2レンズの受け部の厚みを十分に確保することができ、レンズユニットの低背化、カメラモジュール全長の小型化が実現できる。また、鏡筒と第1レンズを非接触としているため、第1レンズの外縁部に対応して形成された鏡筒の遮光部の厚みを薄くすることができる。さらに、第1レンズと第2レンズの貼り合わせ面が接着剤を介して面接触して貼り合わせられることにより、接着強度が高く且つガス溜り等のような光学上の不具合が生じることが少なくなる。さらにまた、第1レンズと第2レンズを貼り合わせて一体化することにより、鏡筒に組み付けるレンズ枚数が減り製造公差を小さくできる。
【0018】
また、鏡筒の物体側先端が第1レンズの物体側面頂点より突出しないように構成することで、レンズユニットをより低背化することが可能となる。
また、第1レンズと第2レンズの貼り合わせ面が物体側に凹面であることにより、光軸と直交する方向に平坦なコバ部を第2レンズに形成することが容易となり、このコバ部と、光軸に直交する方向に平坦に形成された鏡筒の受け面とを当接して貼り合わせレンズを固定することにより光軸に対する貼り合わせレンズの位置調整精度を高くできる。
また、第1レンズと第2レンズを貼り合わせる接着剤として、第1レンズと第2レンズの間の屈折率を有する紫外線硬化樹脂を用いることで、貼り合わせ面による反射を低減し、フレアやゴーストを減少することができ、さらに、光学設計上、貼り合わせ面の屈折率の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0019】
さらに、開口絞り又はシャッタが光学素子より物体側に配置されることにより、空間的な自由度が大きくなりこれらを配置しやすくなる。
さらにまた、シャッタが開口絞り機能を備えることにより、シャッタと開口絞りの両方を別個に設ける場合に比べてより低背化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図2】図1に示した第2レンズのコバ部を示す要部拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図7】絞りシャッタの動作を説明する図で、(a)全開状態を示す図、(b)は閉側へ駆動中の状態を示す図、(c)全閉状態を示す図である。
【図8】従来のレンズユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明のレンズユニットは単焦点光学系であり、デジタルスチルカメラ、携帯端末用小型カメラ、車載カメラ等の民生機器、及び監視カメラ、画像検査装置等の産業機器などを含めた電子画像機器システムに用いられる。尚、本実施形態において、レンズユニットとは複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒とを備え、必要に応じて開口絞り、シャッタを含むものとする。
【0022】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るレンズユニット1の全体構成を示す断面図である。
本発明の第1実施形態に係るレンズユニット1は、複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒2と、を備えている。
【0023】
光学素子は少なくとも3枚以上で構成され、これら複数の光学素子は夫々が光軸上に配置される。また光学素子は、最も物体側(被写体側)に第1レンズが配置され、次いで第2レンズが配置される。第2レンズより結像面10側の光学素子の構成は特に限定されない。図1は複数の光学素子の組み合わせの一例を示している。ここでは、物体側から順に、両凸の第1レンズ31、両凹の第2レンズ32、物体側が凹となるメニスカス状の第3レンズ33、物体側が凹で結像面側が非球面形状の第4レンズ34が配置されている。これらの光学素子は、ガラスレンズ、プラスチックレンズ等が適宜選択されて用いられるが、材質は特に限定されない。図中、10は固体撮像素子が配置される結像面を示す。
【0024】
第1レンズ31の結像面側の面31aと第2レンズ32の物体側の面32aは同一の曲率を有し、第1レンズ31の結像面側の面31aと第2レンズ32の物体側の面32aは、接着剤を介して面接触して貼り合わされている。
好適には、第2レンズ32の物体側の面32aは凹形状とし、これに対応して第1レンズ31の結像面側の面31aは凸形状とする。このとき第2レンズ32は、その外周縁に全周に亘って光軸と直交する方向に平坦なコバ部32bを備える。第2レンズ32のコバ部32bを含めた径は、第1レンズ31の径より大きい。
【0025】
接着剤は、紫外線硬化樹脂や可視光硬化樹脂等の光硬化樹脂、又は天然樹脂などのレンズ貼り合わせに用いられる周知の接着剤が用いられる。好適には紫外線硬化樹脂が用いられ、貼り合わせるレンズの材質やレンズユニットの用途に応じて適宜樹脂の種類が選択される。例えば、携帯端末用小型カメラに搭載されるレンズユニットの場合、光学性能を優先させて後述する屈折率に基づいて紫外線硬化樹脂を選択する。一方、車載カメラや監視カメラに搭載されるレンズユニットの場合、温度や紫外線量等の耐候性を優先させて紫外線硬化樹脂を選択するとよい。
【0026】
また紫外線硬化樹脂は、紫外線硬化樹脂の屈折率Ns、第1レンズ31の屈折率N1、第2レンズ32の屈折率N2とした時、下記の関係式が成り立つ屈折率を有する樹脂であることが好ましい。
N1≦Ns≦N2(N1≦N2の場合)
N2≦Ns≦N1(N2≦N1の場合)
【0027】
上記関係式を満たす屈折率を有する紫外線硬化樹脂を用いることで、第1の利点としてフレア、ゴーストの低減が挙げられる。例えば屈折率が略1.7程度のガラスに対して屈折率1.5の紫外線硬化樹脂と屈折率1.7の紫外線硬化樹脂とでは反射率が10倍以上異なる。紫外線硬化樹脂の屈折率がガラスから離れると1%程度の反射率になることが想定され、1%の反射はフレア、ゴーストの原因となる。よって上記した関係式を満たす紫外線硬化樹脂は反射の低減に有効であり、特にコスト面等の理由により貼り合わせ面に反射防止用のコーティングができないレンズの場合に特に性能を向上する事ができる。第2の利点として、光学設計上レンズ接合面の影響を最小限に抑えることができるという利点が挙げられる。これは光学設計を行う場合、レンズ接合面の接着剤の影響は無視するのが一般的であり、紫外線硬化樹脂の屈折率がレンズ材料の屈折率に近い場合、接着剤の影響は小さく、両者の屈折率差が大きい場合、影響も大きくなってくるためである。尚、第1レンズ31、第2レンズ32がガラスレンズである場合は、紫外線硬化樹脂の屈折率がガラスレンズに近いことが好ましく、これにより上記した利点がより効果的に現れる。
【0028】
鏡筒2は筒形状に形成され、例えば樹脂材料により成型されたものである。該鏡筒2は、結像面側に光学素子群31〜34が挿入可能な結像面側開口21が設けられ、物体側に該結像面側開口21より径が小さい物体側開口22が設けられている。鏡筒2の筒内周面には、段差状の受け面23が形成されている。該受け面23は、光軸と直交する方向に平坦に形成されることが好ましい。また、受け面23より結像面側には、段差部24、25が順に鏡筒2の筒内周面に形成されている。段差状の受け面23、段差部24、段差部25にて、鏡筒2の筒内周径は結像面側に向けて段差状に拡径しており、径の異なる第2レンズ、第3レンズ、第4レンズはそのコバ部32b、33a、34a外周面が鏡筒2の筒内周面に嵌合するようになっている。
鏡筒2の結像面側開口21より圧入された第1レンズ31と第2レンズ32の貼り合わせレンズは、第2レンズ32のコバ部32bが鏡筒2の受け面23に当接することにより位置決めされる。第2レンズ32より結像面側に配置されるレンズについては、隣接するレンズのコバ部が直接又はスペーサを介して当接するようになっている。図1では一例として、第3レンズ33は、そのコバ部33aが第2レンズ32のコバ部32bに直接当接しており、第4レンズ34は、そのコバ部34aが第3レンズ33のコバ部33bにスペーサ29を介して当接している。
【0029】
また、鏡筒2の物体側開口22には、開口中心側へ円環状に突出した遮光部27が設けられていることが好ましい。遮光部27は、第1レンズ31以外の領域から外光が入射することを防止するために設けられている。また遮光部27は第1レンズ31の保護の機能も有している。
図2のA部に示されるように遮光部27及び物体側開口22は、第1レンズ31とは非接触の状態となっている。従って第1レンズ31からの応力を受けることはないため、従来の鏡筒よりも遮光部27の厚さを薄くできる。
【0030】
上記したレンズユニット1の製造においては、まず第1レンズ31と第2レンズ32を接着剤により貼り合わせておき、第1レンズ31と第2レンズ32の貼り合わせレンズを鏡筒2の結像面側開口21より圧入し、第2レンズ32のコバ部32bを鏡筒2の受け面23に当接させ固定する。次いで、第3レンズ33を結像面側開口21より圧入して、該第3レンズ33のコバ部33aを第2レンズ32のコバ部32bに直接又はスペーサを介して当接させた後、第4レンズ34を結像面側開口21より圧入して、該第4レンズ34のコバ部34aを第3レンズのコバ部33aに直接又はスペーサ29を介して当接させ固定する。
【0031】
本発明の第1実施形態によれば、鏡筒2とレンズ31〜34の組み合わせにおいて低背化を実現する構造としているため、従来のように鏡筒単体、或いはレンズ単体で低背化させる構造では限界があったカメラモジュールをより小型低背化することができる。即ち、第1レンズ31と第2レンズ32を貼り合わせ、且つこの貼り合わせレンズが第2レンズ32の受け面23のみで鏡筒2に保持されるようにすることで、鏡筒2が第1レンズ31を保持しない構造とすることができる。これにより第1レンズ31を保持する部位を鏡筒2に設ける必要がなく、第2レンズ32の受け面23の厚みD(図1参照)を十分に確保することができるため、鏡筒2の物体側端部から結像面10までの長さH(図1参照)を短くでき、レンズユニット1の低背化、延いてはカメラモジュール全長の小型化が実現できる。また、鏡筒2と第1レンズ31を非接触としている(図2のA部)ため、鏡筒2の遮光部27に第1レンズ31による応力がかかることがなく遮光部27の厚みを薄くすることができる。さらに、第1レンズ31と第2レンズ32の貼り合わせ面が接着剤を介して面接触して貼り合わせられることにより、接着強度が高く且つガス溜り等のような光学上の不具合が生じることが少なくなる。さらにまた、第1レンズ31と第2レンズ32を貼り合わせて一体化することにより、鏡筒2に組み付けるレンズ枚数が減り製造公差を小さくできる。
【0032】
また、本発明の第1実施形態において、第1レンズ31の物体側の面頂点から結像面10(固体撮像素子)までの距離をL1、鏡筒2の物体側先端より結像面10までの距離をL2とした時、下記の関係式が成り立つように鏡筒2を形成することが好ましい。
L1≧L2
このように、従来は第1レンズ31を保持するために厚く形成されていた鏡筒2の物体側先端を、第1レンズ31の物体側の面頂点より突出しないように構成することで、レンズユニット1をより低背化することが可能となる。
【0033】
さらに、第1レンズ31と第2レンズ32の貼り合わせ面31a、32aが物体側に凹面、即ち物体側面が凹面である第2レンズ32を用いることにより、研磨等によるレンズの製造上、光軸と直交する方向に平坦なコバ部32bを第2レンズ32に形成することが容易となり、このコバ部32bと、光軸に直交する方向に平坦に形成された鏡筒の受け面23とを当接して貼り合わせレンズを固定することにより光軸に対する貼り合わせレンズの位置調整精度を高くできる。
さらにまた、第1レンズ31と第2レンズ32を貼り合わせる接着剤として、第1レンズ31と第2レンズ32の間の屈折率を有する紫外線硬化樹脂を用いることが好ましく、これにより貼り合わせ面31a、32aによる反射を低減し、フレアやゴーストを減少することができ、且つ光学設計上、貼り合わせ面31a、32aの屈折率の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係るレンズユニット1の全体構成を示す断面図である。以下の第2実施形態乃至第5実施形態において、上記した第1実施形態と同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態に係るレンズユニット1は、複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒2と、光学素子より物体側に配置された開口絞り5と、を備えている。図3には一例として物体側より第1レンズ31、第2レンズ32、第3レンズ33、第4レンズ34が順に配置された構成を示している。図中、10は固体撮像素子が配置される結像面を示す。
【0035】
開口絞り5は、複数の可動羽根51と、該可動羽根51が取り付けられる絞り枠52とを備える。可動羽根51は軸ピンを介して絞り枠52に回動可能に取り付けられ、不図示の駆動機構により、軸ピンを中心として可動羽根51を回動させることにより、絞り枠52の開口を開放状態から閉状態まで所望の状態にすることができ、結像面10へ達する光の量を制限することができる周知の装置である。
この開口絞り5は第1レンズ31より物体側に配置され、例えばレンズユニット1を収容するケーシング(図示略)に絞り枠52が固定された構成、あるいは鏡筒2に絞り枠52が固定された構成を備えている。
【0036】
本発明の第2実施形態によれば、開口絞り5が光学素子31〜34より物体側に配置されることにより、低背化がより促進される。これは、光学素子間、あるいは光学素子と固体撮像素子(結像面10)との間に開口絞り5を配置することは、レンズユニット1の低背化の上で非常に困難となり、レンズ設計の上でも困難となる。開口絞り5を最も物体側に配置することで、固体撮像素子への光線入射角度を緩和することができ、加えて光学素子と物体側の間は実質フリーの領域となるので、空間的な自由度が大きくなり開口絞り5を配置しやすくなる。また本実施形態によれば、図8に示す従来のレンズユニットにおける第1レンズ101の面頂点から開口絞り120位置までの間隔dに比べて、第1レンズ1の面頂点から開口絞り5位置までの間隔dを小さくできる。
【0037】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態に係るレンズユニット1の全体構成を示す断面図である。
図3に示すように、第3実施形態に係るレンズユニット1は、複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒2と、光学素子より物体側に配置されたシャッタ6と、を備えている。
シャッタ6は、複数のシャッタ羽根61と、該シャッタ羽根61が取り付けられるシャッタ枠62とを備える。シャッタ羽根61はシャッタ枠62に可動可能に取り付けられ、不図示の駆動機構により、シャッタ羽根61を可動させることにより、シャッタ枠62の開口を開放状態又は閉状態とすることができる周知の装置であり、レンズ露出部を開閉可能となっている。
【0038】
このシャッタ6は第1レンズ31より物体側に配置され、例えばレンズユニット1を収容するケーシング(図示略)にシャッタ枠62が固定された構成、あるいは鏡筒2にシャッタ枠62が固定された構成を備えている。
本発明の第3実施形態によれば、シャッタ6が光学素子31〜34より物体側に配置されることにより、第2実施形態に示した開口絞り5の配置と同様に、空間的な自由度が大きくなり、シャッタ6を配置しやすくなる。
【0039】
(第4実施形態)
図5は本発明の第4実施形態に係るレンズユニット1の全体構成を示す断面図である。
図5に示すように、第4実施形態に係るレンズユニット1は、複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒2と、光学素子より物体側に配置された開口絞り5及びシャッタ6と、を備えている。
開口絞り5は、複数の可動羽根51と、該可動羽根51が取り付けられる絞り枠52とを備え、可動羽根51を回動させることにより、絞り枠52の開口を開放状態から閉状態まで所望の状態にすることができ、結像面10へ達する光の量を制限することができる。
シャッタ6は、複数のシャッタ羽根61と、該シャッタ羽根61が取り付けられるシャッタ枠62とを備え、シャッタ羽根61を可動させることにより、シャッタ枠62の開口を開放状態又は閉状態とし、レンズ露出部を開閉可能となっている。
【0040】
開口絞り5は第1レンズ31より物体側に配置され、シャッタ6は開口絞り5より物体側に隣接して配置される。
開口絞り5及びシャッタ6は、例えばレンズユニット1を収容するケーシング(図示略)に絞り枠52又はシャッタ枠62が固定された構成、あるいは鏡筒2に絞り枠52又はシャッタ枠62が固定された構成を備えている。
本発明の第4実施形態によれば、開口絞り5とシャッタ6が光学素子31〜34より物体側に配置されることにより、低背化がより促進される。
また、開口絞り5にシャッタ6が隣接していることにより、周辺光量などに悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0041】
(第5実施形態)
図6は本発明の第5実施形態に係るレンズユニット1の全体構成を示す断面図である。
図6に示すように、第5実施形態に係るレンズユニット1は、複数の光学素子と、該光学素子を保持する鏡筒2と、光学素子より物体側に配置された絞りシャッタ7と、を備えている。
絞りシャッタ7は、複数の可動羽根71と、該可動羽根71が回動可能に取り付けられる絞りシャッタ枠72とを備える。絞りシャッタ7は、可動羽根71を回動させることにより、絞りシャッタ枠72の開口を開放状態から閉状態まで所望の大きさにして絞り機能を持たせるとともに、高速で開閉させることによりシャッタ機能を持たせている。
【0042】
例えば、図7に示すように4枚の可動羽根71が軸ピン73を介して回動可能に絞りシャッタ枠72に固定された絞りシャッタ7の場合、4枚の可動羽根71を(a)の全開状態から閉方向に駆動させ、(b)に示すように開度を調整した状態で停止することにより開口絞りの機能を発揮し、(a)の全開状態又は(b)の開度調整した状態から(c)の全閉状態に高速で駆動することによりシャッタ機能を発揮する。
本発明の第5実施形態によれば、シャッタ機能と絞り機能を備えた絞りシャッタ7を備えることにより、シャッタと開口絞りの両方を別個に設ける場合に比べてより低背化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のレンズユニットは、鏡筒を含むレンズユニット全体の低背化を可能としたため、デジタルスチルカメラ、携帯端末用小型カメラ、車載カメラ等の民生機器、及び監視カメラ、画像検査装置等の産業機器などを含めた電子画像機器システムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 レンズユニット
2 鏡筒
5 開口絞り
6 シャッタ
7 シャッタ絞り
21 結像面側開口
22 物体側開口
23 受け面
24、25 段差部
27 遮光部
31 第1レンズ
31a 貼り合わせ面
32 第2レンズ
32a 貼り合わせ面
32b、33a、34a コバ部
33 第3レンズ
34 第4レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に配置された複数の光学素子と、これらの光学素子を保持する鏡筒とを備えた単焦点光学系のレンズユニットにおいて、
前記複数の光学素子のうち最も物体側には第1レンズが配置され、次いで第2レンズが配置され、
前記第1レンズの結像面側の面と前記第2レンズの物体側の面が同一の曲率を有し、前記第1レンズと前記第2レンズが接着剤を介して面接触して貼り合わせられ、該第1レンズと第2レンズが一体化した貼り合わせレンズは、前記鏡筒に対して前記第1レンズが非接触の状態で前記第2レンズにより前記鏡筒に保持されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第1レンズの物体側の面頂点から前記鏡筒に保持された固体撮像素子までの距離をL1、前記鏡筒の物体側先端より前記固体撮像素子までの距離をL2とした時、下記の関係式が成り立つことを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
L1≧L2
【請求項3】
前記第1レンズと前記第2レンズの貼り合わせ面は物体側に凹面であることを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記接着剤が紫外線硬化樹脂であり、
前記紫外線硬化樹脂の屈折率をNs、前記第1レンズの屈折率をN1、前記第2レンズの屈折率をN2とした時、下記の関係式が成り立つことを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
N1≦Ns≦N2(N1≦N2)
N2≦Ns≦N1(N2≦N1)
【請求項5】
前記複数の光学素子より物体側に開口絞りが配置されることを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記複数の光学素子より物体側にシャッタが配置されることを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記シャッタは開度を調整可能とし絞り機能を備えるようにしたことを特徴とする請求項6記載のレンズユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−8125(P2011−8125A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152992(P2009−152992)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】