説明

レンズ装置及びそれを用いた撮像システム

【課題】 光学部と撮像部の組合せが、二組以上ある構成で立体撮影を行う時、全ての光学部が撮像部の指令に対して同期して動作し、かつマスター、スレーブの設定を簡素化することを可能にした、光学機器を提供すること。
【解決手段】 撮像素子を含むカメラ装置と、前記カメラ装置に取り付けられ、前記撮像素子に被写体像を導くレンズ装置と、を有する撮像装置を2つ備える撮像システムであって、2つの前記レンズ装置のいずれかは、非合成制御指令又は合成制御指令のいずれかを含む制御指令を受信することによりマスター側レンズ装置に設定され、前記制御指令を、前記マスター側レンズ装置を経由して、前記2つのレンズ装置のうち、前記マスター側レンズ装置ではないレンズ装置であるスレーブ側レンズ装置に送信することにより、前記スレーブ側レンズ装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮影機器を用いて立体撮影を行うレンズ装置、撮像システム、演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体撮影を行う場合に、各々が交換レンズとカメラ本体を持つ2台の撮像装置を用いて撮影することがあった。このように2台の撮像装置、つまり2台の交換レンズを用いて1つの立体映像を得る場合には、この2台の撮像装置を同期して動作させる必要があった。
【0003】
例えば、特開2001−148865号公報では、2台のカメラ本体に対して同一の露出制御を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許第3278667号公報では、二つのズームレンズのうち一方をマスター、他方をスレーブに定め、マスター側のズームレンズの動きに、スレーブ側のズームレンズの動きを追従させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−148865号公報
【特許文献2】特許第3278667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、カメラ本体を制御する演算部が複数あり、かつ各々のカメラ本体が対となる交換レンズを個別に制御する構成の場合、同一の制御指令で複数の交換レンズのレンズ群を同期して動作することは難しい。
【0007】
また、上述の特許文献2に開示された従来技術では、マスターとスレーブを何らかの手段を用いて予め設定する必要があり、手続きが煩雑になっていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、光学部と撮像部の組合せが、二組以上ある構成で立体撮影を行う時、全ての光学部が撮像部の指令に対して同期して動作し、かつマスター、スレーブの設定を簡素化することを可能にした、光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮像システムは、撮像素子を含むカメラ装置と、前記カメラ装置に取り付けられ、前記撮像素子に被写体像を導くレンズ装置と、を有する撮像装置を2つ備える撮像システムであって、2つの前記レンズ装置のいずれかは、2つの前記カメラ装置のいずれかからの非合成制御指令、又は2つの前記カメラ装置のそれぞれからの制御指令を合成することにより生成された合成制御指令のいずれかを含む制御指令を受信することによりマスター側レンズ装置に設定され、前記制御指令を、前記マスター側レンズ装置を経由して、前記2つのレンズ装置のうち、前記マスター側レンズ装置ではないレンズ装置であるスレーブ側レンズ装置に送信することにより、前記スレーブ側レンズ装置を制御する、ことを特徴としている。
【0010】
また、本発明のレンズ装置は、第1の撮像素子を含む第1のカメラ装置と、第2の撮像素子を含む第2のカメラ装置に取り付けられ前記第2の撮像素子に被写体像を導く別レンズ装置に接続されたレンズ装置であって、第1可動光学部材と、前記第1のカメラ装置からの第1制御指令、又は前記第1のカメラ装置からの第1制御指令と前記第2のカメラ装置からの第2制御指令とを合成することにより生成された合成制御指令のいずれかを含む制御指令を受信する第1の通信手段と、前記制御指令に基づいて、前記第1可動光学部材を駆動する駆動手段と、前記制御指令を、前記別レンズ装置に送信する第2の通信手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の演算装置は、第1可動光学部材を含む第1のレンズ装置と、該第1のレンズ装置に接続された第1のカメラ装置と、第2可動光学部材を含む第2のレンズ装置と、該第2のレンズ装置に接続された第2のカメラ装置とを含む撮像システムの中の前記第1のレンズ装置と、前記第1のカメラ装置と、前記第2のカメラ装置とに接続された演算装置であって、前記第1のカメラ装置からの第1の制御指令と前記第2のカメラ装置からの第2の制御指令とを合成することにより生成された合成制御指令を前記第1のレンズ装置に送信すると共に、前記第1可動光学部材の位置情報を受信して前記第1のカメラ装置に送信し、前記第1のレンズ装置を経由して得られた前記第2可動光学部材の位置情報を前記第2のカメラ装置に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学部と撮像部の組合せが、二組以上ある構成で立体撮影を行う時、全ての光学部が撮像部の指令に対して同期して動作するレンズ装置、撮像システム、演算装置を提供することができる。また、マスター、スレーブの設定を簡素化することを可能にした、レンズ装置、撮像システム、演算装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1を示すブロック図である。
【図2】実施例1を示す状態遷移図である。
【図3】実施例1を示すブロック図である。
【図4】実施例2を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
本発明の撮像システムは、2つの部分撮像システムを用いて立体撮影を行うための撮像システムである。第1の部分撮像システム(第1の撮像装置)は、被写体像を結ぶ光学部(第1のレンズ装置)α100と、被写体像を受光する第1の撮像素子を含む撮像部(第1のカメラ装置)α110とを組み合わせたシステムである。この第1の部分撮像システムは左右の目のうち一方の目で観察する画像を撮影するためのシステムである。そして、第2の部分撮像システム(第2の撮像装置)は、被写体像を結ぶ光学部(第2のレンズ装置、別レンズ装置)β200と被写体像を受光する第2の撮像素子を含む撮像部(第2のカメラ装置)β210とを組み合わせたシステムである。この第2の部分撮像システムは、前述の第1の部分撮像システムとは異なる目で観察する画像を撮影するためのシステムである。上記の2つの撮像部(カメラ装置)α、βは、各々撮像素子を備えており、2つの光学部は、各々ズーミング時に移動する変倍レンズ群と、フォーカシング時に移動するフォーカス群とを備えている。これらの2つの部分撮像システムを用いて撮影された映像を、様々な方式で観察者に提供することによって、観察者は立体感のある画像を観察することができる。本発明は、観察者が違和感なく(違和感が少ない状態で)立体感のある画像を観察することができるような画像を撮影することが可能な撮像システム(レンズ装置、演算装置)に関する発明である。
【0016】
本発明の撮像システムは、2つの撮像装置、つまり、上述の光学部α及び撮像部αを有する撮像装置と、光学部β及び撮像部βを有する撮像装置とを備えている。このような構成下で、撮像部αからの制御指令(第1制御指令、非合成制御指令)か、撮像部αと撮像部βからの制御指令(第2制御指令)とを合成して生成した合成制御指令で、光学部(レンズ装置)α、βを制御する点が特徴である。このような構成によって、簡易な構成で立体撮影が可能な撮像システムを実現している。
【0017】
その中でも、これらの制御指令を光学部αに送信し、この光学部αを介して(経由して)光学部βに送信するように構成すると更に好ましい。更には、光学部βからのフィードバック信号(被制御対象の位置や速度等に関する情報)も、同じくこの光学部αを介して(経由して)撮像部α、βに戻ってくるように構成すると好ましい。この際、フィードバック信号を受信するのは、撮像部αでも、撮像部βでも、またこれらからの制御指令を合成する主体となる回路でも構わない。このように構成することにより、光学部βからの被制御対象に関するフィードバック信号(被制御対象の位置情報、速度情報等)を、光学部αの被制御対象に関するフィードバック信号と共に、撮像部αや撮像部βに送ることができる。ここで、光学部α、β内の被制御対象(マスター側被制御対象としての第1可動光学部材、スレーブ側被制御対象としての第2可動光学部材)とは、移動する或いは動作する可動光学部材であれば良い。例えばズーミングに際して、或いは合焦動作に際して移動する可動レンズユニットや、可変絞り等であれば良い。
【0018】
また、上記の構成において、光学部αと光学部βの光学性能が一致していることが望ましいため、光学部αの中の被制御対象(第1の被制御対象)の位置と、光学部βの中の被制御対象(第2の被制御対象)の位置との差分を縮めることが望ましい。このため、通常の制御指令に加えて、両者の位置(速度、加速度でも良い)の差を縮める(差を低減する、差を無くす)ような制御指令に書き換えることが望ましい。つまり、光学部α内の被制御対象の位置情報と、光学部βの中の被制御対象の位置情報(の差分)とに基づいて、両者の差分を縮めるために、通常の制御指令に対して補正指令を加えて(通常の制御指令を修正して)光学部α、βに送信しても構わない。ここでは、光学部βに送信される制御指令を中継する光学部α(制御指令、位置指令の送信ルート上で上流側にある光学部、装置)内での被制御対象の位置に対して、光学部β内の被制御対象の位置を合わせるように光学部βへの制御指令を変更するのが望ましい。このために、光学部α、β内部は、それぞれの被制御対象の位置(並進方向の位置、回転方向の位置等)を検出する検出部(第1の位置検出部、第2の位置検出部)を備えており、この検出結果を用いて前述のような制御を行うことが望ましい。
【0019】
また、本発明の撮像システムにおいて、撮像部αからの第1の制御指令を用いて、光学部α、βの制御を行う場合には、光学部βが受け取る制御指令は、撮像部αから光学部αを経由して光学部βに送信される。また、光学部βからのフィードバック信号(被制御対象の位置検出結果等)は、まず光学部αに送信され、光学部αからのフィードバック信号と合成された上で撮像部αに送信される。この撮像部αに送信されたフィードバック信号は必要に応じて撮像部αが有するビューファインダ等の表示部で表示しても構わない。また、この撮像部αに送信されたフィードバック信号は必要に応じて撮像部βに送信され、撮像部βが有するビューファインダ等の表示装置において表示しても構わない。また、ここでの撮像部α、βにそれぞれ無線送受信器を配置し、それらを用いて制御指令等の信号の送受信を行う無線接続を行っても構わない。
【0020】
次に、本発明の撮像システムにおいて、撮像部αからの第1の制御指令と撮像部βからの第2の制御指令を合成部で合成した合成制御指令を用いて、光学部α、βの制御を行う場合を想定する。この場合においても、光学部βが受け取る制御指令は、前述の合成部から光学部αを経由して光学部βに送信される。また、光学部βからのフィードバック信号は、まず光学部αに送信され、光学部αからのフィードバック信号と合成された上で、合成部に送信される。この合成部に送信されたフィードバック信号は、必要に応じて撮像部αや撮像部βに送信し、それらが有するビューファインダ等の表示部で表示しても構わない。
【0021】
また、本実施例においては、2つの光学部α、β(第1、2のレンズ装置)のうち、撮像部或いは合成部との接続が先に確立された方をマスター(マスター側レンズ装置)とする。たとえば、撮像部αをマスターとした場合には、通常は光学部αの方が撮像部αとの接続の確立(成立)のタイミングが早くなるため、光学部αがマスター(マスター側レンズ装置)、光学部βがスレーブ(スレーブ側レンズ装置)となる。なお、マスターである撮像部、或いは2つの撮像部からの制御指令を合成する合成部からの制御指令を光学部が受信することにより接続は確立される。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例の撮像システム(又はレンズ装置)の構成の概略を示すブロック図である。
【0023】
続いて、100は光学部(第1のレンズ装置)α、110は第1の撮像素子を含む撮像部(第1の撮像装置)αであり、撮像部α110と光学部α100を接続した状態で、映像の撮影を行う(撮影した映像の記録を行う)ことが可能となる。
【0024】
ここで、光学部α(第1の光学部)100は、光学α演算部(第1の制御手段)101を備えている。この光学α演算部101は、光学部α内で可動な光学部材(第1の可動光学部材)の駆動を制御するための演算部であり、撮像部αから受信した制御指令に基づいて光学部材を駆動する駆動部を制御している。ここでの可動な光学部材(第1可動光学部材)とは、不図示の光学部α100の絞り、ズーミングに際して移動する変倍レンズ(群)、合焦動作の際に移動するフォーカスレンズ(群)等のレンズ(群)等である。
【0025】
111は撮像α演算部であり、撮像部α(第1の撮像部)110内に構成されている。撮像α演算部111は、光学α演算部101と電気的に接続されることで、光学α演算部101を介して(経由して)光学部α100の光学部材を制御する(ための制御指令を送信する)ことが可能である。
【0026】
200は光学部β(第2のレンズ装置)、201は光学β演算部(第2の制御手段)、210は第2の撮像素子を含む撮像部(第2の撮像装置)β、211は撮像β演算部である。各々は、光学部α100、光学α演算部101、撮像部α110、撮像α演算部111と同じものであり、撮像α演算部111と同様に、可動な光学部材(第2可動光学部材)の動作を制御する。つまり、光学部α100と撮像部α110、光学部β200と撮像部β210は、組合せを変えて使用することが可能である。
【0027】
11は撮像演算部(合成部)であり、この撮像演算部11は、撮像α演算部111と撮像β演算部211に接続されている。撮像演算部11は、撮像α演算部111と撮像β演算部211の光学部α100と光学部β200への制御指令から、新たな制御指令を生成する。ここで、新たな制御指令とは、予め与えられた設定条件に基づいて、撮像α演算部111と撮像β演算部211からの制御指令を取捨選択して合成した合成制御指令である。例えば、ズーミングに対する制御指令は撮像α演算部111からの制御指令を用い、合焦動作(フォーカシング)に対する制御指令は撮像β演算部211からの制御指令を用いて、新たな制御指令(合成制御指令)を生成しても良い。いずれの撮像演算部(撮像部)からどのような制御指令を受け取って合成するか、については、適宜撮影者が設定することが可能であるが、いずれか一方の撮像演算部(撮像部)からの制御指令のみを光学部に送る制御指令としても良い。
【0028】
撮像演算部11は、光学α演算部101、又は光学β演算部201の何れか一方と電気的に接続することで、光学部α100、又は光学部β200のレンズ群を、新たな制御指令で制御することが可能である。本実施例では、撮像演算部11は、光学部(第1のレンズ装置)α100が有する光学α演算部101とのみ接続されている。つまり、光学β演算部201は、撮像部とは接続されていない。図1中に破線で記載した線は、接続されていない状態を示している。
【0029】
本実施例では、光学α演算部101や光学β演算部201と、撮像部αや撮像部βとは別体の(撮像部α、βの筺体外に配置された)撮像演算部11とを接続したが、この限りではない。例えば、撮像演算部(信号の取捨選択をしたり、合成を行ったりする合成部)11を撮像部α内や撮像部β内に配置しても構わないし、また撮像α演算部111や撮像β演算部211が、撮像演算部11の代わりの機能を果たしても構わない。
【0030】
光学α演算部101と光学β演算部201は、電気的に接続されている。光学α演算部101と光学β演算部201は、各々マスター状態と、スレーブ状態になることが可能である。マスター状態の演算部は、スレーブ状態の演算部に制御指令を与え、スレーブ状態の演算部が構成されている光学部のレンズ群を制御することが可能である。
【0031】
以下、図2を参照して、本発明の第1の実施例による、光学部に構成される光学演算部の状態遷移について説明する。なおここで言う光学演算部とは、光学α演算部101と、光学β演算部201のことであり、各々同様の動作を行う。
【0032】
この処理は、光学演算部に格納されたコンピュータプログラムに従って行われる。また電源ON時には、状態S100の状態から処理が開始され、その後、無条件に状態S101の状態に遷移する。
【0033】
状態S101は、スレーブ状態である。この状態では、前記したスレーブ状態の動作を行う。この状態で、撮像演算部11との接続が成立すると、状態S102に遷移する。
【0034】
ここでいう接続の成立とは、例えば光学演算部と撮像演算部11はシリアル通信で制御指令の受け渡しを行う場合、光学演算部が撮像演算部11から制御指令を受信し、シリアル通信が成立した時を、接続が成立した状態とする。接続が成立すると、撮像演算部11は光学演算部を介して(経由して)光学演算部が構成された光学部のレンズ群を制御することが可能となる。また、シリアル通信が成立した状態から、不成立した状態になった時を、接続が終了した状態とする。
【0035】
状態S102は、マスター状態である。この状態では、前記したマスター状態の動作を行う。この状態で、撮像演算部11との接続が終了すると、状態S101に遷移する。
【0036】
このような処理を行うことで、光学α演算部101はマスター状態に、光学β演算部201はスレーブ状態に自動的に設定されることになる。このマスター状態とスレーブ状態の設定は、電気的な接続を行う時に一意に決定されるため、特別な設定手段を用いる必要がなくなる。
【0037】
つまり、電源投入後、或いはリセット動作後、撮像演算部11は、光学α演算部(光学部α)と光学β演算部(光学部β)の両者と同時に、或いは順次接続を成立させようとする。この動作の中で、撮像演算部11との接続が先に成立(確立)された方を自動的にマスター状態とする。そして、他方をスレーブ状態とする。なお、撮像α演算部111と撮像β演算部211からの制御指令を合成する撮像演算部11からの制御指令を光学演算部(光学部)が受信することにより接続は確立される。
【0038】
このように、撮像部α、βの制御指令を合成して制御指令(合成制御指令)を出力する撮像演算部11に対して先に接続が成立した光学部を自動的にマスター状態とすることによって、2つの光学部からマスターを設定する手間を省略できる。
【0039】
撮像演算部(演算装置)11は、合成制御指令を光学部α(第1のレンズ装置)100の光学α演算部101に送信する。また、光学部α(第1のレンズ装置)100の可動光学部材(第1可動光学部材)の位置情報を受信して撮像部α(第1のカメラ装置)110の撮像α演算部111に送信する。また、光学部α(第1のレンズ装置)100の光学α演算部101を経由して得られた光学部β(第2のレンズ装置)200の可動光学部材(第2可動光学部材)の位置情報を撮像部β(第2のカメラ装置)210の撮像β演算部211に送信する。
【0040】
撮像演算部(演算装置)11は、撮像部α(第1のカメラ装置)110又は光学部α(第1のレンズ装置)100に対して取り付け可能な構成としても良い。また、撮像演算部(演算装置)11は、さらに、撮像部β(第2のカメラ装置)210との間で情報の送受信を行うための無線送受信器を備える構成としても良い。
【0041】
また本実施例に構成において、マスター状態の光学α演算部101は指令分配手段として動作することが可能となる。
【0042】
この状態で動作を行うと、撮像演算部11の制御指令を、光学部(第1のレンズ装置)α100が有する光学α演算部101を介して(経由して)光学β演算部201に受け渡すことが可能となる。その制御指令に従って各々の制御を行うことにより、光学α演算部101が構成された光学部α100のレンズ群と、光学β演算部201が構成された光学部β200のレンズ群は、同期して動作することが可能となる。
【0043】
光学α演算部101、光学β演算部201の構成の一例を図3に示す。
【0044】
以下においては、光学α演算部101をマスター、光学β演算部201をスレーブとして動作させる場合について説明する。光学部α演算部101と光学部β演算部201とは同一の構成を有しており、いずれもマスター又はスレーブとして動作させることが可能である。
【0045】
121は光学α演算部に構成された撮像通信部(第1の通信手段)である。撮像通信部121は、撮像演算部11からの制御指令を受信することが可能である。
【0046】
122は光学α演算部に構成されたデータ処理部、123は光学α演算部に構成されたメモリ部である。データ処理部122は、撮像通信部121に接続されている。また、データ処理部122は、マスター状態として設定されている場合には、撮像通信部121が受信した制御指令を、光学部αの制御指令と、光学部βの制御指令に変換して、メモリ部123に書き込むことが可能である。
【0047】
光学α演算部101は、メモリ部123に記憶された光学部αの制御指令を用いて光学部α100のレンズ群を駆動する。
【0048】
125は光学α演算部に構成されたマスター/スレーブ判定部である。マスター/スレーブ判定部125は、撮像通信部121、データ処理部122に接続されている。マスター/スレーブ判定部125は、光学部α100の電源投入時に、スレーブ状態への設定を指示する信号(スレーブ設定信号)をデータ処理部122に送信する。スレーブ設定信号を受信したデータ処理部122は、スレーブ状態に設定される。
【0049】
撮像演算部11からの制御指令を受信した撮像通信部121は、撮像演算部11との通信が成立したことを伝達する信号(通信成立信号)をマスター/スレーブ判定部125に送信する。通信成立信号を受信したマスター/スレーブ判定部125は、マスター状態への設定を指示する信号(マスター設定信号)をデータ処理部122に送信する。マスター設定信号を受信したデータ処理部122は、マスター状態に設定される。撮像通信部121と撮像演算部11とのシリアル通信が成立している状態ではマスター状態の動作を行う。つまり、制御指令を、自ら(光学部α)に対する制御指令と、スレーブ(光学部β)に対する制御指令に変換する処理を行う。
【0050】
124は光学α演算部に構成された同期通信部(第2の通信手段)である。224は光学β演算部に構成された同期通信部である。同期通信部124は、メモリ部123に記憶されている光学部βの制御指令をデータ処理部122を介して、同期通信部224に送信することが可能である。
【0051】
223は光学β演算部に構成されたメモリ部である。メモリ部223は、同期通信部224が受信した光学部βの制御指令をデータ処理部222を介して記憶することが可能である。
【0052】
このようにして光学β演算部201は、光学α演算部101から光学部βの制御指令を受け取ることが可能となる。また光学β演算部201は、メモリ部223に記憶された光学部βの制御指令を用いて光学部β200のレンズ群を駆動することにより、光学部α100のレンズ群と同期して動作することが可能となる。
【0053】
また、光学α演算部101のメモリ部123、光学β演算部201のメモリ部223には、各々が構成される光学部α100、及び光学部β200のレンズ群の位置情報などのフィードバック信号を記憶することが可能である。
【0054】
メモリ部223に記憶された光学部β200のフィードバック信号は、データ処理部222、同期通信部224、同期通信部124、データ処理部122を介して光学α演算部101のメモリ部123に記憶することが可能である。
【0055】
メモリ部123に記憶された光学部α100、光学部β200のフィードバック信号は、データ処理部122、撮像通信部121を介して撮像演算部11に送信することが可能である。
【0056】
このような構成をとることで、撮像部α110、撮像部β210は、光学部α100、光学部β200のフィードバック信号を用いることが可能となる。
【0057】
撮像通信部121と撮像演算部11とのシリアル通信が成立している状態から、不成立した状態になったら、撮像通信部121は、撮像演算部11との通信が不成立したことを伝達する信号(通信不成立信号)をマスター/スレーブ判定部125に送信する。通信不成立信号を受信したマスター/スレーブ判定部125は、スレーブ状態への設定を指示する信号(スレーブ設定信号)をデータ処理部122に送信する。スレーブ設定信号を受信したデータ処理部122は、スレーブ状態に設定される。
【0058】
221,225はそれぞれ、光学β演算部に構成された撮像通信部,マスター/スレーブ判定部である。これらは、光学β演算部に構成された撮像通信部121,マスター/スレーブ判定部125と同じ機能を有するものである。撮像通信部221が撮像演算部11から制御指令を受信せず、通信成立信号が撮像通信部221からマスター/スレーブ判定部125に送信されない場合においては、マスター/スレーブ判定部225からデータ処理部222へマスター設定信号は送信されない。そして、その結果、データ処理部122はマスター状態として設定されず、スレーブ状態として動作し続けることになる。
【0059】
本発明によれば、光学部と撮像部の組合せが、二組以上ある構成で立体撮影を行う時、全ての光学部が撮像部の指令に対して同期して動作し、かつマスター、スレーブの設定を簡素化することを可能にした、光学機器を提供することができる。
【0060】
ここで、本実施例のレンズ装置の動作について詳細に説明する。ここでのレンズ装置は、撮像部(カメラ本体)に接続されており、且つ別の撮像部(カメラ本体)に接続された別のレンズ装置(別レンズ装置)にも接続されている。ここで、このレンズ装置は、ズーミングやフォーカシング等に際して移動する可動光学部材(第1可動光学部材)と、この可動光学部材の駆動を制御するレンズ制御部(光学演算部)を備えている。ここで、レンズ制御部は、このレンズ装置が接続された撮像部(カメラ本体)からの制御指令に基づいて、又はこの撮像部の制御指令と上述の別の撮像部の制御指令との両者を合成して得られる制御指令に基づいて上述の可動光学部材を制御する。このように、1つの撮像部からの制御指令(非合成制御指令)、又は2つの撮像部からの制御指令を合成した合成制御指令に基づいて、上述の可動光学部材を駆動する駆動手段を備えている点がレンズ装置の特徴である。さらに、このレンズ装置は、1つの撮像部からの制御指令(非合成制御指令)、又は2つの撮像部からの制御指令を合成した合成制御指令を前述の別レンズ装置に送信する通信手段を有し、間接的に別レンズ装置内の可動光学部材の駆動も制御している。レンズ装置と別レンズ装置は、可動光学部材の位置を検出する、マスター側位置検出手段としての位置検出手段とスレーブ側位置検出手段としての位置検出手段をそれぞれ有している。そして、このレンズ装置においては、レンズ装置内の可動光学部材の位置(マスター側位置検出手段の検出結果)と、別レンズ装置内の可動光学部材の位置(スレーブ側位置検出手段の検出結果)とに基づいて、別レンズ装置に送信する制御指令を変更(修正)するのが良い。具体的には、レンズ装置内の可動光学部材の位置と、別レンズ装置内の可動光学部材の位置との差が縮まるように(光学的により近い位置になるように)、別レンズ装置に送信する制御指令を変更(修正)するのが良い。更に、このレンズ装置においては、レンズ装置内の可動光学部材の位置と、別レンズ装置内の可動光学部材の位置とが一致するように(光学的に同じ位置になるように)、別レンズ装置に送信する制御指令を変更(修正)するのがなお良い。
【0061】
また、前述したように、実施例1の変形例として、映像演算部(合成部)11を無くし、撮像α演算部111からの制御指令を直接光学α演算部101(および光学β演算部)に送信する形態も考えられる。この場合には、光学部α、βへの制御指令は全て撮像α演算部111(撮像部α)から出力することとなるため、この撮像α演算部111に対して先に接続が成立した光学部がマスター光学部となる。したがって、ほぼ必然的に撮像部αに対して機械的に接続された光学部αがマスターとなり、光学部βがスレーブとなる。この場合には、撮像β演算部211からの制御指令は無視し、光学部α、βは、撮像部α(撮像α演算部)からの制御指令によってのみ可動光学部材の駆動を行うこととする。また、この場合、撮像部αをマスターとし、撮像部βをスレーブとすれば、前述のように撮像部αからの制御指令に基づいて光学部α、βを制御することとなるが、勿論撮像部βからの制御指令を用いても良い。このマスターとスレーブの設定については、撮像部α、β或いは別途設けられた操作部材で撮影者(操作者)が操作を行うことにより、マスターとスレーブを設定すれば良い。
【0062】
また、この変形例において、撮像部αが撮像部α自身からの制御指令に対して、撮像部βから出力される制御指令を合成して合成制御指令を生成し、光学部αに出力しても構わない。この場合は、撮像α演算部は、撮像β演算部からの出力を受けて、その出力に基づいて演算を行い、その演算結果を光学α演算部に出力する構成とすれば足りる。
【実施例2】
【0063】
以下、図4を参照して、本発明の第2の実施例による、光学装置の構成を示すブロック図について説明する。
【0064】
光学部α(第1の光学部)100に構成される光学α演算部101と、撮像部α(第1の撮像部)110に構成される撮像α演算部111か、撮像部β(第2の撮像部)210に構成される撮像β演算部211の何れか一方に、並列状態で接続される。また、光学部β(第2の光学部)200に構成される光学β演算部201も同様に、撮像部α(第1の撮像部)に構成される撮像α演算部か、撮像部β(第2の撮像部)に構成される撮像β演算部の何れか一方に、並列状態で接続される。本実施例では、光学α演算部101と光学β演算部201は、撮像α演算部111にのみ接続されている。つまり撮像β演算部211は光学部とは接続されていない。
【0065】
また、本実施例では撮像α演算部111と、光学α演算部101、光学β演算部201を接続する構成としたが、撮像α演算部111を、撮像β演算部211や、実施例1の不図示の撮像演算部11に変更しても良い。
【0066】
なお、並列に接続した状態とは、次のような状態をいう。撮像α演算部111から出力した信号は、並列に分配され光学α演算部101と光学β演算部201へ入力される。光学α演算部101と光学β演算部201から出力した信号は、何れか一方の信号のみを撮像α演算部111に入力する。撮像α演算部111の制御指令は、撮像α演算部111から出力する信号のため、光学α演算部101と光学β演算部201に入力することが可能となる。また、撮像α演算部111と、光学α演算部101、光学β演算部201の接続方法は、アナログ的に情報を伝達する(送信する)パラレル接続か、ディジタル的に情報を伝達する(送信する)シリアル接続の何れの方法でも可能である。
【0067】
本構成を行うと、撮像α演算部111の制御指令は、光学α演算部101と光学β演算部201に同時に受け渡しされ、各々の演算部が構成される光学部のレンズ群を、制御指令に従って同期して動作することが可能となる。つまり本実施例では、並列状態に接続した状態が、指令分配手段として機能することになる。また本実施例では、光学部のマスター、スレーブ設定を行わずに、光学部α100と光学部β200の各々のレンズ群を同期して動作させることが可能となる。
【0068】
本発明によれば、光学部と撮像部の組合せが、二組以上ある構成で立体撮影を行う時、全ての光学部が撮像部の指令に対して同期して動作し、かつマスター、スレーブの設定を簡素化することを可能にした、光学機器を提供することができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 光学部α
101 光学α演算部
110 撮像部α
111 撮像α演算部
200 光学部β
201 光学β演算部
210 撮像部β
211 撮像β演算部
11 撮像演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を含むカメラ装置と、
前記カメラ装置に取り付けられ、前記撮像素子に被写体像を導くレンズ装置と、を有する撮像装置を2つ備える撮像システムであって、
2つの前記レンズ装置のいずれかは、2つの前記カメラ装置のいずれかからの非合成制御指令、又は2つの前記カメラ装置のそれぞれからの制御指令を合成することにより生成された合成制御指令のいずれかを含む制御指令を受信することによりマスター側レンズ装置に設定され、
前記制御指令を、前記マスター側レンズ装置を経由して、前記2つのレンズ装置のうち、前記マスター側レンズ装置ではないレンズ装置であるスレーブ側レンズ装置に送信することにより、前記スレーブ側レンズ装置を制御する、ことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記撮像システムが、前記制御指令に基づいて、前記マスター側レンズ装置の被制御対象であるマスター側被制御対象と、前記スレーブ側レンズ装置の被制御対象であるスレーブ側被制御対象を駆動しており、
前記撮像システムが、
前記マスター側被制御対象の位置を検出するマスター側位置検出手段と、
前記スレーブ側被制御対象の位置を検出するスレーブ側位置検出手段と、を備えており、
前記マスター側位置検出手段の検出結果と前記スレーブ側位置検出手段の検出結果とに基づいて、前記スレーブ側レンズ装置に送信される制御指令を修正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記撮像システムが、前記マスター側位置検出手段の検出結果と前記スレーブ側位置検出手段の検出結果とに基づいて、2つの前記検出結果の差を低減するように、前記スレーブ側レンズ装置に送信される制御指令を修正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記2つのレンズ装置のいずれか一方のみ、前記2つのレンズ装置のいずれか他方を経由することなく、前記制御指令を受信することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像システム。
【請求項5】
第1の撮像素子を含む第1のカメラ装置と、第2の撮像素子を含む第2のカメラ装置に取り付けられ前記第2の撮像素子に被写体像を導く別レンズ装置に接続されたレンズ装置であって、
第1可動光学部材と、
前記第1のカメラ装置からの第1制御指令、又は前記第1のカメラ装置からの第1制御指令と前記第2のカメラ装置からの第2制御指令とを合成することにより生成された合成制御指令のいずれかを含む制御指令を受信する第1の通信手段と、
前記制御指令に基づいて、前記第1可動光学部材を駆動する駆動手段と、
前記制御指令を、前記別レンズ装置に送信する第2の通信手段と、
を備えることを特徴とするレンズ装置。
【請求項6】
前記第1可動光学部材の位置を検出する第1の位置検出手段と、前記別レンズ装置が備える第2可動光学部材の位置を検出する第2の位置検出手段からの検出結果を受信し、前記第1の位置検出手段の検出結果と前記第2の位置検出手段の検出結果とに基づいて、前記別レンズ装置に送信する前記制御指令を修正する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記レンズ装置は、
前記第1の通信手段から前記制御指令を受信することによりマスター側レンズ装置に設定され、前記第2の通信手段から前記別レンズ装置に、前記制御指令を送信することを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項8】
第1可動光学部材を含む第1のレンズ装置と、該第1のレンズ装置に接続された第1のカメラ装置と、第2可動光学部材を含む第2のレンズ装置と、該第2のレンズ装置に接続された第2のカメラ装置とを含む撮像システムの中の前記第1のレンズ装置と、前記第1のカメラ装置と、前記第2のカメラ装置とに接続された演算装置であって、
前記第1のカメラ装置からの第1の制御指令と前記第2のカメラ装置からの第2の制御指令とを合成することにより生成された合成制御指令を前記第1のレンズ装置に送信すると共に、前記第1可動光学部材の位置情報を受信して前記第1のカメラ装置に送信し、前記第1のレンズ装置を経由して得られた前記第2可動光学部材の位置情報を前記第2のカメラ装置に送信することを特徴とする演算装置。
【請求項9】
該演算装置は、前記第1のカメラ装置又は前記第1のレンズ装置に対して取り付け可能であって、該演算装置は、前記第2のカメラ装置との間で情報の送受信を行うための無線送受信器を備えることを特徴とする請求項8記載の演算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−54348(P2013−54348A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176005(P2012−176005)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】